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【発明の名称】 管渠連結部の減勢装置
【発明者】 【氏名】鈴木 茂

【要約】 【課題】施工性、経済性の観点からできるだけ簡易な構造の減勢装置を得ること及び標準タイプのマンホール内に簡単に設置できる減勢装置を得ること。

【解決手段】急勾配管渠13からの水流を減勢枡本体20内で減勢し、緩勾配管渠14へ流し込むようにした装置において、減勢枡本体20の底板部24に急勾配管渠13からの水流を分散する手段と、分散した水流を跳水現象により減勢し隙間28から緩勾配管渠14側へ送りこむシル部27とを具備したものである。水流分散手段は、傾斜底部25と分散突条部26とで構成され、シル部27は、中央に隙間28を有するように、左右に2個形成されている。減勢枡本体20は、マンホール内にそのまま設置できる大きさである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 減勢枡本体20の前板側管取り付け部40に連結した急勾配管渠13からの水流を減勢枡本体20内で減勢し、減勢枡本体20の後板側管取り付け部41に連結した緩勾配管渠14へ流し込むようにした管渠連結部の減勢装置において、前記減勢枡本体20の底板部24に急勾配管渠13からの水流を分散する手段と、分散した水流を跳水現象により減勢し隙間28から緩勾配管渠14側へ送りこむシル部27とを具備してなることを特徴とする管渠連結部の減勢装置。
【請求項2】 減勢枡本体20は、上面開口した細長箱状をなし、この減勢枡本体20の前板部21に前板側管取り付け部40を、後板部22に水流入り口側42を、底板部24に水流分散手段と隙間28付きシル部27を、それぞれ設けてなることを特徴とする請求項1記載の管渠連結部の減勢装置。
【請求項3】 水流分散手段は、前板側管取り付け部40の下端部からの傾斜底部25と、この傾斜底部25から続いて水の流れ方向に伸び、かつ、左右へ下りの傾斜部を有する分散突条部26とで構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の管渠連結部の減勢装置。
【請求項4】 シル部27は、中央に隙間28を有するように、底板部24の略中間部位置の左右に2個形成され、このシル部27は、上流側の衝突面部29と隙間28を形成する側面部33とが直立し、かつ、前記衝突面部29は、減勢枡本体20の側板部23に近い側が水流を中央へ寄せるような角度を有し、中央部が水流に対して略直交していることを特徴とする請求項1、2又は3記載の管渠連結部の減勢装置。
【請求項5】 減勢枡本体20は、FRPにより成形加工されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の管渠連結部の減勢装置。
【請求項6】 減勢枡本体20における水流入り口側42と水流出口側43との間の流路を直線状、湾曲状又は所定角度で形成し、急勾配管渠13と緩勾配管渠14とを互いに直線状又は所定角度で連結できるようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の管渠連結部の減勢装置。
【請求項7】 1つの減勢枡本体20に、2つ以上の水流入り口側42と1つの水流出口側43とを形成し、2つ以上の急勾配管渠13と1つの緩勾配管渠14とを連結できるようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の管渠連結部の減勢装置。
【請求項8】 減勢枡本体20は、標準タイプのマンホール本体34内に嵌合する大きさに形成し、このマンホール本体34の底部に減勢枡本体20を載せ、この減勢枡本体20の前板部21における前板側管取り付け部40を急勾配管渠13取り付け用の管取り付け孔39に臨ませ、また、後板部22における後板側管取り付け部41を緩勾配管渠14取り付け用の管取り付け孔39に臨ませて固定してなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の管渠連結部の減勢装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、下水道などの上流の急勾配管渠と下流の緩勾配管渠との間に介在して水流の勢いを減少させるための管渠連結部の減勢装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、急勾配管渠13からの勢いのある水を緩勾配管渠14へ流し込むとき、連結部分に水流の勢いを減じるための装置が介在される。雨水の場合には、図9に示すように、深さの深い雨水枡15を介在し、急勾配管渠13と緩勾配管渠14を雨水枡15の底面よりも少し上に連結して貯溜部18とする。急勾配管渠13からの勢いのある水は、貯溜部18内の貯溜水に落下して勢いが減じられ、緩勾配管渠14へ流れ込む。この貯溜部18には、急勾配管渠13から水と一緒にながれてきた泥、小石、ごみなどの汚泥物17が貯溜される。そして、ときどき蓋体16をとって汚泥物17を除去するようになっている。
【0003】これに対し、下水の場合には、図8(a)(b)に示すように、深さの浅いインバート本体10を介在し、急勾配管渠13と緩勾配管渠14との間には、通過溝部12が形成され、上面に蓋体11を被せてなるものである。そして、急勾配管渠13からの勢いのある下水は、通過溝部12を通り緩勾配管渠14へ流れ込む。このとき、図9と異なり、下水の汚物を貯溜することは避けなければならないので、通過溝部12は半円形をなしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図9に示す雨水タイプのものは、下水や汚物が貯溜部18に貯溜するので使用することができない。
【0005】図8に示す下水タイプのものは、下水や汚物が貯溜することがないが、急勾配管渠13からの勢いのある下水の勢いを減ずるのが不十分で、緩勾配管渠14への入り口部分で溢れて円滑に流れ込まなくなることがあった。
【0006】本発明の第1の目的は、施工性、経済性の観点からできるだけ簡易な構造の減勢装置を得ることにある。本発明の第2の目的は、標準タイプのマンホール内に簡単に設置できる減勢装置を得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、急勾配管渠13からの水流を減勢枡本体20内で減勢し、緩勾配管渠14へ流し込むようにした管渠連結部の減勢装置において、前記減勢枡本体20の底板部24に急勾配管渠13からの水流を分散する手段と、分散した水流を跳水現象により減勢し隙間28から緩勾配管渠14側へ送りこむシル部27とを具備し、水流分散手段は、前板側管取り付け部40の下端部からの傾斜底部25と、この傾斜底部25から続いて水の流れ方向に伸び、かつ、左右へ下りの傾斜部を有する分散突条部26とで構成され、シル部27は、中央に隙間28を有するように、底板部24の略中間部位置の左右に2個形成され、このシル部27は、上流側の衝突面部29と隙間28を形成する側面部33とが直立し、かつ、前記衝突面部29は、減勢枡本体20の側板部23に近い側が水流を中央へ寄せるような角度を有し、中央部が水流に対して略直交していることを特徴とする管渠連結部の減勢装置である。
【0008】以上のような構成において、急勾配管渠13から流れ込んできた勢いのある水流は、減勢枡本体20の傾斜底部25に沿ってやや広がりながら流れ落ち、この流れ落ちた水流は、分散突条部26の両側の傾斜面と中央の水平面とで左右、中央へ十分に分散される。左右に分散された水流は、シル部27の衝突面部29へ衝突し、跳水現象がおき、水流は、通常の勢いになる。この両側で跳水現象で減勢された水流は、底板部24の中央部に集められて隙間28を通り下流へ送られる。この隙間28を通り抜けた水は、通常の流れで溝部31を通り緩勾配管渠14へ流れ込む。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。図1ないし図4において、20は、上部開口した前板部21、後板部22、側板部23及び底板部24からなる細長い箱形の減勢枡本体で、FRPにより成形されたものである。この減勢枡本体20の前板部21と後板部22は、連結する急勾配管渠13、緩勾配管渠14の直径よりやや幅が広く、また、後述するマンホール本体34に嵌め込むときには、マンホール本体34の内壁と同じ弧状をなしている。このマンホール本体34は、円形のみならず、4角形、6角形などの多角形、その他の形状の場合もあり、このような場合には、減勢枡本体20の前板部21と後板部22は、弧状ではなく、直線状、その他、マンホール本体34の内壁に合致する形状とする。
【0010】前記減勢枡本体20の前板部21には、急勾配管渠13を嵌め込むためのU字形又は円形の前板側管取り付け部40が形成され、また、前記後板部22には、緩勾配管渠14を嵌め込むためのU字形又は円形の後板側管取り付け部41が形成されている。前記減勢枡本体20の底板部24には、前記前板側管取り付け部40の下端部から略45度の傾斜底部25が形成され、さらに、この傾斜底部25から続いて水の流れ方向に伸びた分散突条部26が形成されている。この分散突条部26は、急勾配管渠13からの水を左右に分散するためのもので、図4(c)に示すように、中央部の幅の狭い平坦部と左右の下り傾斜部と、さらに先端部の下り傾斜部とで構成されている。この傾斜底部25と分散突条部26により水流分散手段が構成されている。
【0011】前記減勢枡本体20の底板部24の略中間部には、図4(b)に示すように、中央に隙間28が有するように、左右にシル部27が形成されている。このシル部27は、上流側の衝突面部29と隙間28に面した側面部33とが直立している。このうち、衝突面部29は、側板部23に近い側が水流を中央へ寄せるような角度を有し、中央部が水流に対して略直交し、分散突条部26で左右に分散された水流が衝突面部29に衝突して跳水を生じさせて勢いを減じつつ中央へ寄せられるようになっている。
【0012】前記隙間28の後方直後の拡開部30は、図4(a)に示すように角形樋状をなしているが、緩勾配管渠14の入り口に近づくにしたがって緩勾配管渠14の内径と一致する半円形となるような溝部31が形成され、この溝部31の両側の斜面部32は、溝部31側が後板側管取り付け部41の半径と略同じ高さで、また斜面部32は、側板部23側に向かって次第に高くなっている。前記シル部27の上面の高さは、緩勾配管渠14の直径よりやや低い平坦部であり、この平坦部から後方へのやや下り傾斜部を経て前記斜面部32に連続している。
【0013】前記減勢枡本体20の底板部24の下面には、マンホール本体34への取り付けのとき、モルタル38との結合をより強固にするためにアンカー部35が一体に設けられる。
【0014】次に標準マンホールへの組み込みを説明する。地中に設置されたマンホール本体34の底部にモルタル38を敷き詰め、このモルタル38の上に減勢枡本体20を載せる。このとき、減勢枡本体20の前板部21における前板側管取り付け部40を上流側の管取り付け孔39に臨ませ、また、後板部22における後板側管取り付け部41を下流側の管取り付け孔39に臨ませる。前記上流側の管取り付け孔39から前板側管取り付け部40に急勾配管渠13の端部を差し込み、また、前記下流側の管取り付け孔39から後板側管取り付け部41に緩勾配管渠14の端部を差し込み、隙間にモルタル38を詰め込んでマンホール本体34に、減勢枡本体20、急勾配管渠13、緩勾配管渠14を固定する。さらに、減勢枡本体20の側板部23の外側とマンホール本体34の内側の間にもモルタル38を詰め込む。この側板部23の外側とマンホール本体34の内側の間のモルタル38は、減勢枡本体20から溢れたり、上方から流れ込んだ水を減勢枡本体20へ流し込むように中央に向かって下りの傾斜面とする。マンホール本体34の上には、連結筒体36が載せられ、その上面には、道路と同一高さでマンホール蓋体37が被せられる。
【0015】次に、水流の勢いを減ずる作用を説明する。急勾配管渠13から流れ込んできた勢いのある水流は、傾斜底部25と分散突条部26が形成されていないと、自由落下で底板部24の水たたき面の圧力で水脈を広げようとし、水流の広がりが不十分になる。本発明では、減勢枡本体20の傾斜底部25に沿ってやや広がりながら流れ落ち、この流れ落ちた水流は、分散突条部26の両側の傾斜面と中央の水平面とで左右、中央へ十分に分散される。
【0016】左右に分散された水流は、両側の斜面部32の内壁に向かって流れ、シル部27の衝突面部29へ衝突する。このシル部27に衝突すると跳水現象がおき、水流は、通常の勢いになる。このとき、衝突面部29は、側板部23側が中央に向かって傾斜しているので、跳水の際に渦流が発生したり、汚泥が滞積したりすることなく中央へ導かれる。この両側の跳水現象で減勢された水流と分散突条部26の平坦部から流れ込んできた水は、底板部24の中央部に集められて隙間28を通り下流へ送られる。この隙間28を通り抜けた水は、通常の流れで溝部31を通り緩勾配管渠14へ流れ込む。
【0017】なお、隙間28の幅は、急勾配管渠13からの沈殿物や夾雑物がつまることなく流れるためには広いことが望ましいが、両側のシル部27が十分な跳水現象で水流の勢いが減じられる必要があり、使用目的に応じて設定される。
【0018】急勾配管渠13からの水量が多すぎて隙間28をすべて通過できない場合には、シル部27の衝突面部29を乗り越えて上面を流れ、溝部31の両側の斜面部32に流れ込み、ここで中央に寄せられて緩勾配管渠14へ導かれる。
【0019】ちなみに、図7は、本発明の管渠連結部の減勢装置を用いたときの平均水位を示したもので、下側の各特性線は、計画水量を急勾配管渠13から流し込んだときにおける減勢枡本体20の中央の平均水位(1点鎖線)、左岸の水位(実線)、右岸の水位(点線)がすべて略同一の水位であり、減勢効果が十分表れていることを示している。また、上側の各特性線は、計画水量の4倍を急勾配管渠13から流し込んだときにおける減勢枡本体20の中央の平均水位(1点鎖線)、左岸の水位(実線)、右岸の水位(点線)である。この場合、シル部27部分で跳水が衝突面部29を乗り越えており、水位がやや波を打っているが、計画水量の4倍でも減勢効果が十分表れていることを示している。
【0020】前記実施例では、減勢枡本体20が直線状で、急勾配管渠13と緩勾配管渠14を180度対向した位置に取り付けた例を示したが、本発明は、これに限られるものではなく、図5に示すように、減勢枡本体20を急勾配管渠13の接続する水流入り口側42と緩勾配管渠14の接続する水流出口側43をθ度だけ角度をつけてくの字状に構成したものであってもよい。また、くの字状ではなく湾曲したものであってもよい。
【0021】前記実施例では、減勢枡本体20に、急勾配管渠13と緩勾配管渠14をそれぞれ1つずつ取り付けた例を示したが、本発明は、これに限られるものではなく、図6に示すように、減勢枡本体20に1つの緩勾配管渠14と2つの急勾配管渠13を連結するための1つの水流出口側43と、2つの水流入り口側42a、42bを取り付けできるようにY字状に形成するようにしてもよい。この場合、2つの水流入り口側42a、42bには、それぞれ傾斜底部25と分散突条部26を設け、それぞれの水流は、水流出口側43のシル部27直前でそれぞれの流水が合流し、減勢されるように構成する。なお、3つ以上の水流入り口側42と1つの水流出口側43とを連結できるようにしてもよい。
【0022】
【発明の効果】本発明は、上述のように構成したので、以下の効果を有する。
(1)減勢枡本体20の底板部24に急勾配管渠13からの水流を分散する手段と、分散した水流を跳水現象により減勢し隙間28から緩勾配管渠14側へ送りこむシル部27とを具備しので、急勾配管渠13からの勢いのある水流が確実に減勢されて緩勾配管渠14へ流れ込む。
【0023】(2)従来、急勾配管渠13から流れ込んできた勢いのある水流は、自由落下で枡本体の底部の水たたき面の圧力で水脈を広げようとするが、水流の広がりが不十分になる。これに対し、本発明では、水流分散手段は、前板側管取り付け部40の下端部からの傾斜底部25と、この傾斜底部25から続いて水の流れ方向に伸び、かつ、左右へ下り傾斜部を有する分散突条部26とで構成されているので、傾斜底部25に沿ってやや広がりながら流れ落ち、この流れ落ちた水流は、分散突条部26の両側の傾斜面で左右へ十分に分散され、左右に分散された水流は、両斜面部32の内壁に向かって流れ、シル部27の衝突面部29へ衝突し、跳水現象がおき、水流は、通常の勢いになる。
【0024】(3)シル部27は、中央に隙間28を有するように、底板部24の略中間部位置の左右に2個形成され、このシル部27は、上流側の衝突面部29と隙間28を形成する側面部33とが直立し、かつ、衝突面部29は、減勢枡本体20の側板部23に近い側が水流を中央へ寄せるような角度を有し、中央部が水流に対して略直交しているので、跳水現象が確実で、しかも、下水や汚物が貯溜することがない。
【0025】(4)減勢枡本体20は、FRPにより成形加工することにより施工性、経済性にすぐれた簡易な構造の減勢装置を得ることができる。
【0026】(5)1つの減勢枡本体20に、2つ以上の水流入り口側42と1つの水流出口側43とを形成し、2つ以上の急勾配管渠13と1つの緩勾配管渠14とを連結することができる。
【0027】(6)減勢枡本体20は、標準タイプのマンホール本体34内に嵌合する大きさに形成し、このマンホール本体34の底部に減勢枡本体20を載せ、この減勢枡本体20の前板部21における前板側管取り付け部40を急勾配管渠13取り付け用の管取り付け孔39に臨ませ、また、後板部22における後板側管取り付け部41を緩勾配管渠14取り付け用の管取り付け孔39に臨ませて固定するようにしたので、標準タイプのマンホール内に簡単に設置できる。
【出願人】 【識別番号】593153532
【氏名又は名称】財団法人下水道新技術推進機構
【出願日】 平成11年7月26日(1999.7.26)
【代理人】 【識別番号】100076255
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 俊明 (外1名)
【公開番号】 特開2001−32356(P2001−32356A)
【公開日】 平成13年2月6日(2001.2.6)
【出願番号】 特願平11−211252