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【発明の名称】 流入量予測装置
【発明者】 【氏名】平林 和也

【要約】 【課題】膨大なデータの算出や多くのパラメータの変更をしない、多大な時間、人などの労力を必要としない、予測精度の高い流入量予測装置を提供する。

【解決手段】本発明の流入量予測装置は、対象流域の降雨量、下水処理場のポンプ井11に流入する下水などの流入量のオンラインで計測して計測値蓄積装置4に蓄積し、計測オンラインデータに基づいて、データ作成装置6により直近数時間のデータ列を作成・加工し、この加工後のデータを基に自己回帰モデル作成装置71により自己回帰モデルを作成し、この自己回帰モデル、予測値算出データ作成装置72のデータおよび降雨量予測装置5のデータを用いることにより予測値演算装置73で流入量の予測値を演算し、稼働後数週間でその下水処理場のポンプ場などに適した流入量の予測を行うものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】対象流域での降雨量の計測値を考慮すると共に、下水処理場のポンプ井に流入する下水または雨水ポンプ場に流入する雨水などの流入量を予測する流入量予測装置において、前記ポンプ井などに流入する流入量を測定する流量計と、前記降雨量の計測値および前記流入量の計測値を蓄積する計測値蓄積装置と、前記計測値蓄積装置で蓄積された降雨量および流入量の直近数時間のデータ列を作成する直近データ作成装置と、前記直近データ作成装置で作成されたデータ列に基づいて、前記降雨量が観測されているかチェックする天候抽出装置と、前記天候抽出装置で抽出されたデータから雨天日の時のみ直近に計測された降雨量および流入量をデータ列として加工するデータ加工装置と、前記データ加工装置で加工されたデータ列を基に自己回帰モデルを作成する自己回帰モデル作成装置と、前記計測値蓄積装置のデータから自己回帰モデルに適用する直近のデータ列を作成する予測値算出データ作成装置と、少なくとも前記自己回帰モデル、前記予測値算出データ作成装置で作成されたデータから前記流入量の予測値を演算する予測値演算装置とを備えたことを特徴とする流入量予測装置。
【請求項2】前記計測値蓄積装置と前記予測値演算装置との間に、前記計測値蓄積装置で蓄積された前記降雨量、気象レーダ等のデータをもとに計算された数時間先の降雨量を数十分間隔で予測して蓄積する降雨量予測装置が設けられ、前記降雨量予測装置で予測されたデータを前記予測値演算装置に入力して前記流入量の予測値を演算するようにしてあることを特徴とする請求項1記載の流入量予測装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、下水処理場のポンプ井に流入する下水または雨水ポンプ場に流入する雨水などの流入量予測を、精度良く行うことができる流入量予測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、浸水防除のためには雨水排水施設の拡大、既存施設を生かした施設運用が必要であり、特に、既存施設の運用では、降雨量からポンプ井への流入量を予測し、その値に見合ったポンプ制御を行う方法が種々提案されている。例えば、降雨をもとに雨水排水路の設計に必要な雨水流出ハイドログラフを算出する修正RRL法を使用した流入量予測装置は、図3のようになっている。図3は従来の流入量予測装置を示すブロック図である。図において、1は雨の降雨量を測定する雨量計、3はポンプ井11に貯留した雨水・汚水を貯留量に応じて汲み上げ吐出する雨水・汚水ポンプ、12は雨量計1で計測された降雨量を蓄積する計測値蓄積装置、9は修正RRL法による流入量予測装置、8はポンプ運転指令装置であって、流入量予測装置9で演算された流入量から最適なポンプ運転指令を出力する。特に、このような流入量予測装置9は、浸透域面積、流下時間、貯留量・流出量曲線を求め、有効降雨量、雨水流入水、流入量の演算を行う。浸透域面積は、排水面積に対する不浸透域面積、浸透域面積の割合を示すものである。ここで、不浸透域面積、浸透域面積は、対象とする排水区域の航空写真に二つの乱数の組み合わせを適当な場所を原点としてプロットし、全プロット数に対する不浸透域プロット数、浸透域プロット数の割合をもって不浸透域面積、浸透域面積を算出するものである。そして、有効降雨量は、図示しない有効面積演算装置で演算された浸透域と不浸透域から管きょに流入する降雨量を演算する。また、流下時間は、排水区域の管きょの位置、形状、管径、こう配などから、満流流速を使って各マンホール間の時間から求める。さらに、貯留量・流出量曲線は、管きょに流入した雨水の管内貯留を考慮に入れた貯留量・流出量の関係を求める。またさらに、雨水流入水は、有効降雨量と流下時間とを用いて、単位図の手法により算出すると共に、流入量は、貯留量・流出量曲線で求められた関数から連続式を解いて求めるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このような修正RRL法による流入量予測では、有効降雨量、流下時間、貯留量・流出曲線などを求めるために、浸透域、不浸透域、流下時間、貯留量・流入量の関係などを膨大なデータの算出が必要となり、その膨大なデータを随時修正しなければならないという問題があった。このうち浸透域、不浸透域などは、住宅状況の変化、道路状況の変化によって、その値を随時修正しなければならず、住宅状況の変化、道路状況などの変化等の多くのパラメータを変更するには、多大な時間、人などの労力を必要とし、しかも常にパラメータを更新することは困難であるため、予測精度も悪くなるという問題があった。本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、浸透域、不浸透域、流下時間、貯留量・流入量の関係などの膨大なデータの算出を必要としない、また、住宅・道路状況などの変化等の多くのパラメータを変更せずに多大な時間、人などの労力を必要としない、予測精度の高い流入量予測装置を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するため、請求項1記載の本発明は、対象流域での降雨量の計測値を考慮すると共に、下水処理場のポンプ井に流入する下水または雨水ポンプ場に流入する雨水などの流入量を予測する流入量予測装置において、前記ポンプ井などに流入する流入量を測定する流量計と、前記降雨量の計測値および前記流入量の計測値を蓄積する計測値蓄積装置と、前記計測値蓄積装置で蓄積された降雨量および流入量の直近数時間のデータ列を作成する直近データ作成装置と、前記直近データ作成装置で作成されたデータ列に基づいて、前記降雨量が観測されているかチェックする天候抽出装置と、前記天候抽出装置で抽出されたデータから雨天日の時のみ直近に計測された降雨量および流入量をデータ列として加工するデータ加工装置と、前記データ加工装置で加工されたデータ列を基に自己回帰モデルを作成する自己回帰モデル作成装置と、前記計測値蓄積装置のデータから自己回帰モデルに適用する直近のデータ列を作成する予測値算出データ作成装置と、少なくとも前記自己回帰モデル、前記予測値算出データ作成装置で作成されたデータを用いて前記流入量の予測値を演算する予測値演算装置とを備えたものである。また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載の流入量予測装置において、前記計測値蓄積装置と前記予測値演算装置との間に、前記計測値蓄積装置で蓄積された前記降雨量、気象レーダ等のデータをもとに計算された数時間先の降雨量を数十分間隔で予測して蓄積する降雨量予測装置を設け、前記降雨量予測装置で予測されたデータを前記予測値演算装置に入力して前記流入量の予測値を演算するようにしたものである。上記手段により、本発明の流入量予測装置では、自己回帰モデルが過去数十日の計測値を使用しているため、稼働後数週間でその下水処理場のポンプ井または雨水ポンプ場に適した予測を行うことができ、雨天日のみの降雨量、流入量を使用して自己回帰モデルを作成していることから、降雨量と流入量の関係を明確に表現したモデルから流入量の予測を行うことができる。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。図1は、本発明の実施例を示す流入量予測装置のブロック図である。なお、従来と同じ構成要素については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる点のみを説明する。本発明が従来技術と異なる構成は、以下のとおりである。図において、2はポンプ井11に流入する流量を測定する流量計、4は降雨量の計測値および流入量の計測値を蓄積する計測値蓄積装置、5は降雨量予測装置であって、気象庁、気象レーダなどのデータを基に計算された数時間先までの降雨量を数十分間隔で予測し、蓄積する。また、6はデータ作成装置であり、計測値蓄積装置4から入力されたデータを統計モデルに適用するためのデータ作成を行う。61は直近データ作成装置であり、計測値蓄積装置4に蓄積された降雨量と流入量の直近数十分のデータを作成する。62は天候抽出装置であり、直近数十分間、雨量計1において、降雨量が観測されたかどうかをチェックする。63はデータ加工装置であり、自己回帰モデル作成装置61に入力するデータ列を作成する。天候抽出装置62において抽出された結果が晴天日の時はデータ列の加工を行わず、雨天日の時は、直近に計測された降雨量、流入量のみをデータ列に追加する。このようにしてデータの加工を行い、降雨量、流入量の関係を明確にモデル化できるようにしている。しかし、雨天期間が終了しても、しばらく雨の影響を受けるため雨天期間終了後、数十分間はデータの追加を行うようにしている。7は予測装置であり、データ作成装置6で作成されたデータ列を入力し、流入量の予測値を演算する。71は、自己回帰モデル作成装置で、データ加工装置63で作成したデータを入力して自己回帰モデルを作成する。この自己回帰モデルは、過去数十日の計測値を使用するようにしている。今、時刻nにおけるプロセスの状態をk次元の全変数ベクトルX(n)、時刻nよりm時点前の全変数ベクトルをX(n-m)、白色ノイズベクトルをU(n)、自己回帰モデルの回帰係数をA(m)、自己回帰モデルの最適次数をMで表すと、その自己回帰表現は次のようになる。
【0006】
【数1】

【0007】ここで、自己回帰モデルの作成とは、自己回帰係数、白色ノイズベクトルの分散および自己回帰モデルの最適次数の決定に帰結される。自己回帰係数A(m)は、要素をAij(m)とし、次の連立方程式をi=1,2,3,・・・・,kについて解くことにより求められる。但し、Xi、Xjの相互分散をRij()、自己回帰係数の要素をAij(m)とすると、次のようになる。
【0008】
【数2】

【0009】上記の連立一次方程式を、i=1,2,...,kについて解けばAij(m)が求められる。また、白色ノイズベクトルU(n)の要素をεi(n)とすると、その残差分散値σi2は次のようになる。
【0010】
【数3】

【0011】なお、モデルの最適次数Mは予測誤差を表す下記の(4)式のMFPE(M)を最小にする値である。
【0012】
【数4】

【0013】但し、Nはデータ数、‖dM‖はU(n)の分散共分散行列推定値である。またMFPEはMultiple Final Prediction Errorの頭文字である。このようにして自己回帰係数、白色ノイズの分散および最適モデル次数が求められ、自己回帰モデルが作成される。従って、流入量の予測を行うために必要な、流入量と降雨量との関係式を自己回帰モデルから求めることができる。自己回帰モデルの更新は、直近のデータを使用することを目的に1日1回行う。72は予測値算出データ作成装置であり、自己回帰モデル作成装置71で作成したモデルに入力するためのデータ列を作成する。73は予測値演算装置であり、自己回帰モデル作成装置71で作成した自己回帰モデルと予測値算出データ作成装置72で作成したデータ列から統計的に類推可能な流入量の数十分先の予測値を演算する。自己回帰モデルを用いた時の数十分先の予測は次のように表される。
【0014】
【数5】

【0015】
但し、Q(i)p:時刻iにおける流入量の予測値Q(i):時刻iにおける流入量の計測値Rain(i):時刻iにおけるの降雨量A11(m) :流入量の予測値に対する残差部分の自己回帰係数A12(m) :流入量の予測値に対する降雨量の自己回帰係数しかし、自己回帰モデルを用いた時の数十分先の予測は、1点先以上の予測を必要とする。そのため1点先以上の予測を行う際は、流入量は予測値を使用し、降雨量は前回の降雨量を使用する。また、数時間先まで予測した降雨量データがあれば、流入量の予測にそれを利用し、数時間先の流入量も予測することができる。このようにして得られた流入量の予測値Q(0)p,Q(1)p・・・をポンプ運転指令装置8に出力する。
【0016】次に、本発明の実施例による流入量予測装置について、簡単に流入量予測の方法をまとめて説明する。まず、対象流域の降雨量、下水処理場のポンプ井11に流入する下水などの流入量をオンラインで計測して計測値蓄積装置4に蓄積する。この計測値蓄積装置4に蓄積された計測オンラインデータに基づいて、データ作成装置6により直近数時間のデータ列を作成・加工する。その後、この加工後のデータを基に自己回帰モデル作成装置71により自己回帰モデルを作成する。続いて、こうして作成された自己回帰モデル、予測値算出データ作成装置72のデータおよび降雨量予測装置5のデータを用いることにより予測値演算装置73で流入量の予測値を演算し、稼働後数週間における下水処理場のポンプ井などに適した流入量の予測を行う。以上説明した流入量予測装置を適用して、実データを用いてシミュレーションを行った。図2は本発明の実施例による流入量予測装置の効果を確認する説明図であって、(a)は実データを用いてシミュレーションを行った流入量予測値と実測値のグラフ、(b)は流入量予測値と実測値グラフに対応した雨量の実測値である。図において、実践は実測値、破線はシミュレーションによる予測値を示している。シミュレーションの実施に際しては、直近数日のデータを使用しただけであるが、図に示すように流入量の実測値と予測値がよく一致していることがわかる。したがって、本実施例による流入量予測装置は、対象流域の降雨量、下水処理場のポンプ井に流入する下水などの流入量の計測オンラインデータに基づいて、データ作成装置により直近数時間のデータ列を作成・加工し、この加工後のデータを基に自己回帰モデルを用いて稼働後数週間でその下水処理場のポンプ井などに適した流入量の予測を行えるようにしたので、過去の実績を基にした流入量予測を行う際の予測精度を向上させることができる。また、従来の修正RRL法を用いた流入量予測装置のように、浸透域、不浸透域、流下時間、貯留量・流入量の関係などの膨大なデータの算出を必要とせず、あるいは住宅・道路状況の変化等の多くのパラメータの変更を必要としないので、多大な時間、人などの労力を不要とすることができる。なお、本実施例では、対象流域での降雨量の計測値を考慮した下水処理場のポンプ井に流入する下水の流入量を予測する流入量予測装置について述べたが、この他に雨水ポンプ場に流入する雨水の予測についても本流入量予測装置を用いることが可能である。
【0017】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、対象流域の降雨量、下水処理場のポンプ井に流入する下水などの流入量の計測オンラインデータに基づいて、データ作成装置により直近数時間のデータ列を作成・加工し、この加工後のデータを基に自己回帰モデルを用いて稼働後数週間でその下水処理場のポンプ場などに適した流入量の予測を行える流入量予測装置を構成したので、過去の実績を基にした流入量予測を行う際の予測精度を向上させる効果がある。また、従来のように浸透域、不浸透域、流下時間、貯留量・流入量の関係などの膨大なデータの算出を必要せず、あるいは住宅・道路状況などの変化等の多くのパラメータを変更する必要がないため、多大な時間、人などの労力を不要とすることができる。
【出願人】 【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
【出願日】 平成11年7月19日(1999.7.19)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−32353(P2001−32353A)
【公開日】 平成13年2月6日(2001.2.6)
【出願番号】 特願平11−204642