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【発明の名称】 下水管渠の保護装置
【発明者】 【氏名】平山 照康

【要約】 【課題】下水管渠内における汚濁物の沈積を未然に防止することのできる下水管渠の保護装置を提供する。

【解決手段】下水管渠1の底部に設けられるとともに、下水管渠1内を流下する汚水2の内部に気泡を供給するための散気装置12と、散気装置12に対して空気を供給するブロワー14とを備えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下水管渠に対して設けられて、該下水管渠を腐蝕から保護するための下水管渠の保護装置であって、前記下水管渠の底部に設けられるとともに、前記下水管渠内を流下する汚水の内部に気泡を供給するための散気装置と、該散気装置に対して空気を供給するブロワーとを備えたことを特徴とする下水管渠の保護装置。
【請求項2】 請求項1記載の下水管渠の保護装置であって、前記散気装置は、前記下水管渠の底部に対して、該下水管渠の延在方向と同方向に延在するように配置されたパイプからなり、かつ、該散気装置は、前記パイプの側面に設けられた複数の孔部から前記気泡を発生する構成とされていることを特徴とする下水管渠の保護装置。
【請求項3】 請求項1または2記載の下水管渠の保護装置であって、前記下水管渠内に設けられた電極と、該電極に接続されるとともに前記ブロワーに対する電源の投入または切断を行うレベルスイッチとを備え、前記汚水が前記電極に達したか否かに基づいて、前記レベルスイッチによる前記電源の投入または切断を行う構成とされていることを特徴とする下水管渠の保護装置。
【請求項4】 請求項3記載の下水管渠の保護装置であって、前記電極は、前記下水管渠内において上下位置に複数配置され、前記電極が前記汚水に接触したか否かをもって、前記汚水の水深を検知し、前記汚水の水深が所定範囲内であると検知された場合に、前記レベルスイッチによる前記電源の投入を行うことを特徴とする下水管渠の保護装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、下水管渠を腐蝕から保護するための下水管渠の保護装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】都市部においては、下水道により家庭や事業所等からの汚水を処理するのが一般的である。汚水の発生源から終末処理場まで汚水を運ぶ手段として下水管渠がある。汚水は、発生源から終末処理場までの間の高低差を利用して自然流下で流れる。また、勾配がとれない場所では、ポンプにより流下のためのエネルギーを付与し、流下させる場合もある。汚水には、種々の有機性の汚濁物が含まれており、勾配の足りない場所では、汚濁物が下水管渠底部に沈積し、腐敗することがある。汚濁物の腐敗には、各種の嫌気性細菌が関与するが、その一つに硫酸還元菌がある。
【0003】一方、下水の断面はほとんどの場合円形であり、常時満管流の状態で流れているわけではなく、殆どの時間帯においては、その流下断面積は、下水管渠の断面積の半分以下である。そのため、管渠内の上部は、湿度の高い空間となっている。
【0004】このような状態の下水管渠を模式的に表したのが図3である。図3中、符号1は、コンクリート製下水管渠を、2は、下水管渠1内を流下する汚水を、3は、下水管渠1の底部に沈積した汚濁物を示す。
【0005】沈積した汚濁物3の腐敗が進行すると、硫酸還元菌により汚濁物3から硫化水素が発生する。発生した硫化水素は、汚水2の水面2aに浮上し、さらに、水面2a上の上部空間4に漂う。硫化水素は、上部空間4内の酸素と以下の式のように化学反応し、硫酸に変化する。
2S+2O2 → H2SO4【0006】このようにして発生した硫酸が、下水管渠1内の上部空間4の水蒸気に溶解して水素イオンが生じる。この水素イオンが下水管渠1の内壁面のコンクリートに対して腐蝕部分5を生じさせるため、下水管渠1の寿命が劣化することが大きな問題となっていた。
【0007】従来、このような腐蝕対策としては、下水管渠を耐酸性の材料で形成する手法が採用されていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように耐酸性の材料で形成された下水管渠は、コストの面で問題があった。そこで、本発明においては、下水管渠内における汚濁物の沈積を未然に防止することのできる下水管渠の保護装置を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明においては以下の手段を採用した。すなわち、請求項1記載の下水管渠の保護装置は、下水管渠に対して設けられて、該下水管渠を腐蝕から保護するための下水管渠の保護装置であって、前記下水管渠の底部に設けられるとともに、前記下水管渠内を流下する汚水の内部に気泡を供給するための散気装置と、該散気装置に対して空気を供給するブロワーとを備えたことを特徴としている。
【0010】このような構成により、汚水を撹乱して、下水管渠の底部への汚濁物の沈積を防止することができる。
【0011】請求項2記載の下水管渠の保護装置は、請求項1記載の下水管渠の保護装置であって、前記散気装置は、前記下水管渠の底部に対して、該下水管渠の延在方向と同方向に延在するように配置されたパイプからなり、かつ、該散気装置は、前記パイプの側面に設けられた複数の孔部から前記気泡を発生する構成とされていることを特徴としている。
【0012】このような構成により、下水管渠内の一定領域に確実に散気を行うことが可能となる。
【0013】請求項3記載の下水管渠の保護装置は、請求項1または2記載の下水管渠の保護装置であって、前記下水管渠内に設けられた電極と、該電極に接続されるとともに前記ブロワーに対する電源の投入または切断を行うレベルスイッチとを備え、前記汚水が前記電極に達したか否かに基づいて、前記レベルスイッチによる前記電源の投入または切断を行う構成とされていることを特徴としている。
【0014】このような構成により、簡易な構成により、下水管渠内の水深に応じて、散気装置の運転および停止を制御することが可能となる。
【0015】請求項4記載の下水管渠の保護装置は、請求項3記載の下水管渠の保護装置であって、前記電極は、前記下水管渠内において上下位置に複数配置され、前記電極が前記下水に接触したか否かをもって、前記下水の水深を検知し、前記下水の水深が所定範囲内であると検知された場合に、前記レベルスイッチによる前記電源の投入を行うことを特徴としている。
【0016】このような構成により、最も効果的に汚水を撹乱できる水深において、汚水に対する散気を行うことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。なお、上記従来の技術と共通する構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0018】図1は、本発明の一実施の形態を模式的に示す図であり、図中符号11は、下水管渠1を腐蝕から保護するための保護装置を表す。保護装置11は、下水管渠1の底部に配設された散気装置12と、散気装置12に対して送気管13を介して空気を供給するためのブロワー14と、ブロワー14に対する電源の投入または切断を行うレベルスイッチ15とを備えている。
【0019】レベルスイッチ15は、下水管渠1の内部に配置された電極17,18,19に対して接続されている。レベルスイッチ15は、電極17,18,19のうち、下水管渠1の底部に配置された電極17および下水管渠1の上部に配置された電極19に対して汚水2が接触した際に、ブロワー14に対する電源の供給を遮断するようになっており、また、電極17および19の中間に配置された電極18に対して汚水2が接触した際に、ブロワー14に対して電源を投入するようになっている。
【0020】また、散気装置12は、下水管渠1の延在方向(図1中x方向)に間隔をおいて複数配置されている。図2に、散気装置12の構成を拡大して示す。散気装置12は、下水管渠1の底部に対して、下水管渠1の延在方向(x方向)と同方向に延在するように配置されたパイプ21を備えている。パイプ21の側面には、複数の孔部22,…が設けられており、ブロワー14から供給された空気が、この孔部22,…から排出されることにより、汚水中に気泡を発生させることができるようになっている。
【0021】このような構成の保護装置11においては、汚水2の流量が増大し、水面2aが上昇して、電極18に到達すると、レベルスイッチ15により電源が投入されることにより、ブロワー14の運転が開始される。さらに、水面2aが上昇して電極19に達すると、レベルスイッチ15により電源が切断されて、ブロワー14の運転が停止される。反対に水面2aが低下して電極17に達しても電源が切断されることにより、ブロワー14の運転が停止される。
【0022】ブロワー14の運転時には、下水管渠1に配置された散気装置12から気泡が発生し、この気泡が、汚水2を撹乱するので、汚水2に含まれる有機汚濁物が下水管渠1内に沈積することを防止できる。これにより、下水管渠1内部における水素イオンの発生に起因した下水管渠1の腐蝕を防止することができ、従来と異なり、下水管渠1に対して耐酸性の材料を用いること無く、より少ないコストで腐蝕対策を実施できる。加えて、散気装置12による曝気を行うことにより、汚水2中に含まれる好気性細菌の働きにより、汚濁物濃度を減少することができ、終末処理場での汚濁物負荷量を減少させることができる。
【0023】また、保護装置11においては、散気装置12がパイプ21により形成され、なおかつ、パイプ21に設けられた孔部22から気泡を発生する構成とされているために、パイプ21を、下水管渠1のうち勾配の取りにくい部分の一定領域に確実に配置することができ、簡易な構成により低コストでの腐蝕対策を実現できる。
【0024】さらに、保護装置11においては、下水管渠1内に設けられた電極17,18,19と、これら電極17,18,19に接続されたレベルスイッチ15とが備えられており、汚水2が電極17,18,19に達したか否かに基づいて、レベルスイッチ15によるブロワー14への電源のON/OFFが行われるようになっている。このため、下水管渠1内の汚水2の水深が適当な値となった際にのみ、散気装置12の運転を行うことができ、効果的に汚水2を撹乱することができる。
【0025】また、保護装置11においては、複数の電極17,18,19を上下に配置することにより、下水管渠1内の水深がどの程度であるかを検知することができ、水深が電極17の高さ位置より低いか、あるいは、電極19の高さ位置よりも高いときには、散気装置12の運転を停止することができる。これにより、汚水2を撹乱しても汚濁物3の除去効果の少ない水深の低い場合や、下水管渠1内に大流量で汚水2が流れ、沈積汚濁物のフラッシュアップ効果が期待できる水深の大きい場合に、散気装置12を停止してランニングコストの減少を図ることができる。
【0026】なお、上記実施の形態において、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で他の構成を採用するようにしてもよい。例えば、上記実施の形態において、散気装置12がパイプ12により構成されていたが、これに代えて散気装置12を多孔質の散気板を用いて平板状に形成してもよい。
【0027】また、上記実施の形態におけるブロワー14およびレベルスイッチ15等は、地上と下水管渠1とを連絡するマンホール内の空間に配置するようにしてもよい。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係る下水管渠の保護装置においては、散気装置から気泡が発生し、この気泡が、汚水を撹乱するので、汚水に含まれる有機汚濁物が下水管渠内に沈積することを防止できる。これにより、下水管渠内部における水素イオンの発生に起因した下水管渠の腐蝕を防止することができ、従来と異なり、下水管渠に対して耐酸性の材料を用いること無く、より少ないコストで腐蝕対策を実施できる。加えて、散気装置による曝気を行うことにより、汚水中に含まれる好気性細菌の働きにより、汚濁物濃度を減少することができ、終末処理場での汚濁物負荷量を減少させることができる。
【0029】請求項2に係る下水管渠の保護装置においては、散気装置がパイプにより形成され、なおかつ、パイプに設けられた孔部から気泡を発生する構成とされているために、パイプを、下水管渠のうち勾配の取りにくい部分の一定領域に確実に配置することができ、簡易な構成により低コストでの腐蝕対策を実現できる。
【0030】請求項3に係る下水管渠の保護装置においては、下水管渠内に設けられた電極に汚水が達したか否かに基づいて、ブロワーへの電源のON/OFFが行われるため、下水管渠内の汚水の水深が適当な値となった際にのみ、散気装置の運転を行うことができ、効果的に汚水を撹乱することができる。
【0031】請求項4に係る下水管渠の保護装置においては、複数の電極を上下に配置することにより、下水管渠内の水深がどの程度であるかを検知し、水深が所定範囲内であるときに散気装置を運転するようにしたために、汚水を撹乱しても汚濁物の除去効果が少ない水深の低い場合や、沈積汚濁物のフラッシュアップ効果が期待できる水深の大きい場合に、散気装置を停止してランニングコストの減少を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
【出願日】 平成11年7月5日(1999.7.5)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外3名)
【公開番号】 特開2001−20369(P2001−20369A)
【公開日】 平成13年1月23日(2001.1.23)
【出願番号】 特願平11−190999