トップ :: E 固定構造物 :: E03 上水;下水

【発明の名称】 水路の減勢装置
【発明者】 【氏名】西村 哲郎

【要約】 【課題】流体の流れを効果的に減勢し得る水路の減勢装置を提供する。

【解決手段】相互に近接する複数の平行したフィン6と、このフィン6を一体化するベース材7とを有する減勢用フィン5を設ける。これをU字型側溝1の内面に貼り付け多数のフィン6をU字型側溝1の全長に渡って形成する。これにより、流体の流れを減勢して流体の乱流を抑制する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水路の内面に相互に近接した複数の減勢用フィンを設け、この減勢用フィンを前記流体の流れ方向に沿うように前記水路のほぼ全長に渡って形成したことを特徴とする水路の減勢装置。
【請求項2】 前記水路がコンクリート製のU字型側溝であることを特徴とする請求項1記載の水路の減勢装置。
【請求項3】 前記水路が中空状の鋼管であることを特徴とする請求項1記載の水路の減勢装置。
【請求項4】 相互に近接した複数のフィンと、この各フィンを固定するベース材とを一体形成して前記減勢用フィンを構成し、この減勢用フィンを前記水路に内面に取り付けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水路の減勢装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、傾斜面に設置する水路の減勢装置、特に水路内における乱流を抑制するための水路の減勢装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から流体の流速を抑える水路の減勢装置が知られており、例えば、特許第2506334号公報には、中空状の鋼管を継ぎ合わせた配管中にバタフライ弁を組み込んだ弁箱を設けるとともに、この弁箱の下流側において弁箱の内周面に複数の突起をほぼ全周に渡って突設した弁用減勢装置が提案されている。また、特開平7−300893号公報にはコンクリート製U字型側溝において、コンクリート製U字型側溝の底部に全体的に階段状に形成した減勢材を敷設した側溝流水減勢材が提案されている。
【0003】しかし、特許第2506334号公報で開示される弁用減勢装置では、バタフライ弁と複数の突起を有する弁箱を配管中に設ける必要があるから、減勢装置の構造的が極めて複雑であってコスト的に高価となる。
【0004】この点に関して特開平7−300893号公報では、既存のコンクリート製U字型側溝の底部に別途成型した階段状の減勢材を敷設するだけなので、構造的には簡単であるが、減勢材を階段状に形成することから、減勢材が大型化して側溝に内部容積が著しく減少する。このため、通常の側溝より左右の側壁が高い側溝を用いる必要があり、側溝の大型化並びに重量化することから、運搬時や施工時において重い側溝では取り扱いが不便であり、施工性が劣る。また、側溝の底面にのみ減勢材を設けた構造では減勢効果も劣るという問題があった。
【0005】本発明は、このような課題を解決しようとするものであり、施工性に優れるとともに、水路損傷の原因となる乱流を効果的に抑制することができる水路の減勢装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1の水路の減勢装置は、水路の内面に相互に近接した複数の減勢用フィンを設け、この減勢用フィンを前記流体の流れ方向に沿うように前記水路のほぼ全長に渡って形成したものである。
【0007】上記構成により、減勢用フィンにより水路を流れる流体と水路内壁との接触面積が大きくなり、流体の流速が抑制される。また、減勢用フィンに沿って流体が流れ、減勢用フィンの整流作用によって流体の乱流が抑制される。
【0008】本発明の請求項2の水路の減勢装置には、請求項1記載の水路の減勢装置において、前記水路をコンクリート製のU字型側溝によって構成したものでものである。これにより、U字型側溝内の流体を減勢して急斜面に設置したU字型側溝内の乱流が抑制される。
【0009】本発明の請求項3の水路の減勢装置は、請求項1記載の水路の減勢装置において、前記水路を中空状の鋼管によって構成したものである。これにより、鋼管をパイプラインの分岐管などとして用いる場合、本管とこの本管に分岐接続した分水管路との圧力差が解消される。
【0010】本発明の請求項4の水路の減勢装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水路の減勢装置において、相互に近接した複数のフィンと、この各フィンを固定するベース材とを一体形成して前記減勢用フィンを構成し、この減勢用フィンを前記水路に内面に取り付けたものである。これにより、減勢用フィンを水路に取り付けるだけで流体を減勢することができる。また、フィンの長さや間隔を簡単に変えることで流体の流速の調整が可能である。
【0011】
【発明の実施形態】以下、本発明の実施例について、添付図面を参照して説明する。図1〜図4は本発明の第1実施例を示し、同図において1は水路2を構成するコンクリート製U字型側溝である。この側溝1は底部1Aの左右両側から左右一対の側壁1Bを立設した従来から周知の構造であり、底部1Aと側壁1Bの内面角部には面取りした傾斜面4が形成されている。
【0012】5は前記側溝1の内側に設ける減勢用フィンであり、平行する多数のフィン6と、これらのフィン6を一体化するベース材7とをプラスチックなどの合成樹脂で一体形成している。前記ベース7は前記側溝1の内面に嵌合するように左右一対の側面5Aと底面5Bとを有するコ字型に形成され、その側面5Aと底面5Bが交叉する部分に前記側溝1の傾斜面4に沿わせる傾斜面5Cを形成している。一方、前記各フィン6は流体の流れ方向に沿うように相互に近接してベース材7の全長に渡って形成されいる。そして、側溝1の内面にベース材7を嵌め入れ、接着などの適宜手段によって側溝1と前記減勢用フィン5とを一体化する。これにより、側溝1の内周面、すなわち、底部1A及び側壁1Bに形成された前記各フィン6が相互に平行して側溝1の全長に渡って形成される。なお、これら各フィン6はベース材7の側面5A、底面5B及び傾斜面5Cに対してそれぞれ垂直に立ち上がり、各面5A〜5Cの隣接端部に形成されるフィン6は相互に僅かな間隔をおいて傾斜状に切断されている。
【0013】以上のように構成される本実施例では、側溝1の内周面に平行する多数のフィン6を形成することによって、側溝1内の流体を減勢することができる。すなわち、側溝1内を流れる流体の流速は、下式にマニング式によって算出される。
【0014】
【数1】

ここで、Q=流量(m3/sec)、A=流水断面積(m2)、V=流速(m/sec)、R=径深(m)、I=動水勾配、n=粗度係数である。そして、側溝1の幅Bを1.00m、流体の高さhを0.5mとすると、流水断面積Aは1.00×0.5=0.5m2となる。また、長さSが3cmのフィン6を1cmの間隔S1で取り付けた場合、潤辺の倍率は、3+3+1/1=7倍、潤辺は、(1.00+2×0.50)×7=14mとなり、径深Rは、0.05/14.0=0.03571mとなるから、フィン6の粗度係数n(プラスチック=0.012)により算出される流体の流速Vは2.021m/secとなる。
【0015】一方、フィン6のないコンクリート製側溝の流速Vを同一条件で算出すると、潤辺は、1.00+2×0.50=2m、径深Rは、0.05/2.0=0.25mとなり、側溝の粗度係数n(コンクリート=0.015)により算出される流速Vは5.915m/secとなり、本実施例における流速Vのほぼ3倍となる。すなわち、側溝1の内面に平行する多数のフィン6を設けることで流体の流速Vを極めて効果的に抑制することができるとともに、フィン6に沿って流体が流れ、フィン6による整流作用によって流体の乱流をおさえることができる。
【0016】このように、本実施例では側溝1内に平行する多数のフィン6を相互に近接しては側溝1の全長に渡って設けたものであるから、流体との接触面積が大きくなるので流体の流速を抑えることができるとともに、フィン6に沿って流体が流れるから、流体の乱流を抑制することができ、水路2の損傷を抑えることができる。また、一般に水路勾配が1/10から1/20の急勾配では流速が速く、魚類の棲息することが困難な環境であるが、本実施例においては、側溝1内に取り付けた減勢用フィン5によって流速を抑えることが可能であり、その流速もフィン6の長さや間隔を変えることによって簡単に調整することができるから、側溝1をダムなどの魚動用ブッロクとして用いれば魚類の棲息に適した環境を容易に構築することが可能である。また、減勢用フィン5を側溝1と別構成することによって側溝1、減勢用フィン5双方の形成加工も容易であるとともに、既存の側溝1などに減勢用フィン5を敷設するば、側溝1を交換することなく、簡単に減勢することができる。また、図5に示すように、湾曲した水路2においては遠心力によって屈曲部1Rにおいて外壁側を内壁側より高く形成する必要があるが、側溝1内に減勢用フィン5を設けることにより、屈曲部1Rでの乱流を抑えることができるから外壁側を高く形成する必要もない。
【0017】図6〜図8は本発明の第2実施例を示し、前記第1実施例と同一機能を有する部分に同一符合を付し、重複する部分の説明を省略して異なる部分についてのみ説明する。本実施例では、中空状の鋼管10によって水路11を構成している。また、鋼管10の内周面に前記第1実施例と同様、多数のフィン12とベース材13を有するプラスチックなどの合成樹脂で一体形成した減勢用フィン14が組み付けられている。また、本実施例では、鋼管10の内面に減勢用フィン14が組み付けられるから、ベース材13が中空筒型に形成され、このベース材13の内面に形成するフィン12が鋼管10に内面に向かって放射状に一体形成されている。そして、本実施例においては、図8に示すように、鋼管10を上下水道あるいは農業用パイプラインの分岐管として用いる。このような上下水道あるいは農業用パイプラインでは、水源に近い位置には、分水管路20と本管21の接合部分に本管動水位と分水管路必要動水位に大きな圧力差が生じ、上流側に位置する分水管路20に所定流量を大きく上回る水量が流れて本管下流側の水不足の原因となるが、本実施例では、分水管路20を構成する鋼管10の内面に多数のフィン6を形成することによって、鋼管10内を流れる流体の流勢を減勢することができ、これにより、本管21と分水管路20との圧力差を解消することができる。すなわち、前記第1実施例で説明したマニング式に基いて鋼管10の減圧量を下式によって算出する。
【0018】
【数2】

ここで、H=減圧量(m)、R=径深(m)、n=粗度係数、V=管内速度(m/sec)、A=流水断面積(m2)、P=潤辺(m)、β=潤辺の倍率とする。そして、鋼管10の管径rを0.30m、長さLを100mとし、フィン12は7.5cmの長さで1cmの間隔で鋼管10に取り付けた条件でH=減圧量(m)を算出する。なお、管内速度Vは、管径rが0.30mの鋼管10を流れる標準的な1.20m/sec、粗度係数nは前記第1実施例と同様、プラスチックの0.012とする。したがって、潤辺Pの倍率βは7.5+7.5+1/1=16倍、潤辺Pは(π×0.30)×16=15.0797m、流水断面積Aはπ×0.302/4=0.07069m2、径深Rは0.07069/15.0797=0.004688mとなり、減圧量H=26.428mとなる。
【0019】一方、フィン12のない鋼管10では、潤辺Pは、π×0.30=0.94248m、径深Rは、0.07069/0.94248=0.075mとなるから、鋼管10の粗度係数n(鋼管=0.012)により算出される減圧量Hは0.656mとなり、フィン12のない鋼管10とフィン12を有する鋼管10とを比較すると減圧量Hはほぼ40倍となる。したがって、例えば、鋼管10を上下水道あるいは農業用パイプラインの分岐管として用いた場合、本管10Aと、これに分岐接続した分水管路20との圧力差が解消される。また、前記第1実施例と同様、フィン12の長さや間隔を換えることによって、減圧量を簡単に調整することができる。
【0020】以上、本発明の各実施例について詳述したが、本発明は前記各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、前記各実施例では、側溝又は鋼管と減勢用フィンとをそれぞれ別部材で構成し、減勢用フィンのベース材を側溝又は鋼管に接着固定した例を示したが、接着による固定構造に限らず例えばねじ止などでもよく、その固定手段は適宜選定すればよいものである。また、側溝又は鋼管と減勢用フィンとを分離することなく、図9に示すように、例えば、側溝1(鋼管)とフィン6とを一体形成してたり、あるいは図10に示すように、側溝1(鋼管)にフィン6のみを埋設してもよい。また、側溝または鋼管の寸法、形状、材質あるいはフィンの長さや間隔などは前記実施例に限定されるものではなく、図11に示すように、フィン6Aを長く形成してもよい。
【0021】
【発明の効果】本発明の請求項1の水路の減勢装置によれば、水路の内面に相互に近接した複数の減勢用フィンを設け、この減勢用フィンを前記流体の流れ方向に沿うように前記水路のほぼ全長に渡って形成したものであるから、減勢用フィンにより水路を流れる流体と水路内壁との接触面積が大きくなるので流体の流速を抑えることができるとともに、水路に沿った減勢用フィンにより流体の乱流を抑制することができる。
【0022】本発明の請求項2の水路の減勢装置によれば、請求項1記載の水路の減勢装置において、前記水路がコンクリート製のU字型側溝であるから、急斜面に設置したU字型側溝内の流体を減勢することで乱流によるU字型側溝の破損を防止することができる。
【0023】本発明の請求項3の水路の減勢装置によれば、請求項1記載の水路の減勢装置において、前記水路が中空状の鋼管であるから、パイプラインの分水管などとして用いる場合、本管と分水管路との圧力差を解消することができる。
【0024】発明の請求項4の水路の減勢装置によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水路の減勢装置において、相互に近接した複数のフィンと、この各フィンを固定するベース材とを一体形成して前記減勢用フィンを構成し、この減勢用フィンを前記水路に内面に取り付けたものであるから、減勢用フィンを水路に取り付けるだけで流体を減勢することができるとともに、減勢用フィンの成形加工も容易である。
【出願人】 【識別番号】599085471
【氏名又は名称】有限会社ニシムラ技研
【出願日】 平成11年6月18日(1999.6.18)
【代理人】 【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
【公開番号】 特開2001−3437(P2001−3437A)
【公開日】 平成13年1月9日(2001.1.9)
【出願番号】 特願平11−172958