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【発明の名称】 コンクリート構造物の補強方法及びそれに用いる配筋・型枠構造体並びに該配筋・型枠構造体を構成する配筋・型枠支持装置
【発明者】 【氏名】小林 志伸

【氏名】山川 博樹

【要約】 【課題】コンクリート構造物を安定的に且つ永続的にしかも施工性よく補強する。

【解決手段】コンクリート構造物4の所要部位に植設したアンカーボルト7に位置決めナット10を螺合させ、該位置決めナット10に設けた鉄筋支持部13で補強鉄筋12を支持させる。該位置決めナット10に連結ボルト20を螺合させ、該位置決めナット10の外端15で型枠部材22の内面を支持させる。型枠部材22から突出した連結ボルトに固定ナット39を螺合し、該固定ナット39を締め付けることによって型枠部材22を位置決めナット10に固定する。その後、コンクリート構造物4の外面と型枠部材22との間にグラウトを充填する。グラウトが硬化した後、固定ナット39を取り外して脱型する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 コンクリート構造物の所要部位に植設したアンカーボルトの外端側部分を、位置決めナットの内端側部分に螺合させ、該位置決めナットに設けた鉄筋支持部で、前記コンクリート構造物の外面から離して配筋した補強鉄筋を支持させ、前記鉄筋支持部の支持部位と前記位置決めナットの外端との間の距離によって該補強鉄筋の被りを所要に設定し、又前記位置決めナットの外端側部分には連結ボルトの内端側部分を螺合させ、且つ、前記位置決めナットの外端で型枠部材の内面を支持させると共に前記連結ボルトを該型枠部材に挿通せしめ、該連結ボルトの、前記型枠部材の外面で突出した部分に螺合した固定ナットを締め付けることによって、前記型枠部材を前記位置決めナットに押圧状態で固定し、その後、前記コンクリート構造物の外面と型枠部材との間にグラウトを充填し、該グラウトが硬化した後に前記固定ナットを取り外し、前記位置決めナットからの前記連結ボルトの取り外しと前記型枠部材の除去を行うことを特徴とするコンクリート構造物の補強方法。
【請求項2】 コンクリート構造物の所要部位に植設したアンカーボルトの外端側部分を、位置決めナットの内端側部分に螺合させ、該位置決めナットに設けた鉄筋支持部で、前記コンクリート構造物の外面から離して配筋した補強鉄筋を支持させ、前記鉄筋支持部の支持部位と前記位置決めナットの外端との間の距離によって該補強鉄筋の被りを所要に設定し、又前記位置決めナットの外端側部分には連結ボルトの内端側部分を螺合させ、且つ前記位置決めナットの外端で、型枠内面構成部の外面に型枠外面構成部を重ね合わせてなる型枠部材の内面を支持させると共に前記連結ボルトを該型枠部材に挿通せしめ、該連結ボルトの、前記型枠部材の外面で突出した部分に螺合した固定ナットを締め付けることによって、前記型枠部材を前記位置決めナットに押圧状態で固定し、その後、前記コンクリート構造物の外面と型枠部材との間にグラウトを充填し、該グラウトが硬化した後に前記固定ナットを取り外し、該グラウトの硬化物に付着状態で前記型枠内面構成部を残して、前記位置決めナットからの前記連結ボルトの取り外しと前記型枠外面構成部の除去を行うことを特徴とするコンクリート構造物の補強方法。
【請求項3】 コンクリート構造物の所要部位に植設したアンカーボルトの外端側部分を、位置決めナットの内端側部分に螺合させ、該位置決めナットに設けた鉄筋支持部で、前記コンクリート構造物の外面から離して配筋した補強鉄筋を支持させ、前記鉄筋支持部の支持部位と前記位置決めナットの外端との間の距離によって該補強鉄筋の被りを所要に設定し、又前記位置決めナットの外端側部分には連結ボルトの内端側部分を螺合させ、且つ前記位置決めナットの外端で、内面にアンカー部が突設された硬質合成樹脂板からなる型枠内面構成部の外面に型枠外面構成部を重ね合わせてなる型枠部材の内面を支持させると共に前記連結ボルトを該型枠部材に挿通せしめ、該連結ボルトの、前記型枠部材の外面で突出した部分に螺合した固定ナットを締め付けることによって、前記型枠部材を前記位置決めナットに押圧状態で固定し、その後、前記コンクリート構造物の外面と型枠部材との間にグラウトを充填し、該グラウトが硬化した後に前記固定ナットを取り外し、該グラウトの硬化物への前記アンカー部の埋入によって前記型枠内面構成部を残して、前記位置決めナットからの前記連結ボルトの取り外しと前記型枠外面構成部の除去を行うことを特徴とするコンクリート構造物の補強方法。
【請求項4】 コンクリート構造物の所要部位に植設したアンカーボルトの外端側部分を、位置決めナットの内端側部分に螺合させ、該位置決めナットに設けた鉄筋支持部で、前記コンクリート構造物の外面から離して配筋した補強鉄筋を支持させ、前記鉄筋支持部の支持部位と前記位置決めナットの外端との間の距離によって該補強鉄筋の被りを所要に設定し、又前記位置決めナットの外端側部分には連結ボルトの内端側部分を螺合させ、且つ、前記位置決めナットの外端で型枠部材の内面を支持させると共に前記連結ボルトを該型枠部材に挿通せしめ、該連結ボルトの、前記型枠部材の外面で突出した部分に螺合した固定ナットを締め付けることによって、前記型枠部材を前記位置決めナットに押圧状態で固定し、その後、前記コンクリート構造物の外面と型枠部材との間にグラウトを充填し、該グラウトが硬化した後に前記固定ナットを取り外し、前記位置決めナットからの前記連結ボルトの取り外しを行うことを特徴とするコンクリート構造物の補強方法。
【請求項5】 硬質合成樹脂板からなる型枠内面構成部の全体又はその一部分が透明であることを特徴とする請求項3記載のコンクリート構造物の補強方法。
【請求項6】 コンクリート構造物の所要部位に植設したアンカーボルトの外端側部分を、位置決めナットの内端側部分に螺合させ、該位置決めナットに設けた鉄筋支持部で、前記コンクリート構造物の外面から離して配筋した補強鉄筋を支持させ、前記鉄筋支持部の支持部位と前記位置決めナットの外端との間の距離によって該補強鉄筋の被りを所要に設定し、又前記位置決めナットの外端側部分には連結ボルトの内端側部分を螺合させ、且つ、前記位置決めナットの外端で型枠部材の内面を支持させると共に前記連結ボルトを該型枠部材に挿通せしめ、該連結ボルトの、前記型枠部材の外面で突出した部分に螺合した固定ナットを締め付けることによって、前記型枠部材を前記位置決めナットに押圧状態で固定したことを特徴とする配筋・型枠構造体。
【請求項7】 コンクリート構造物に植設されるアンカーボルトと、該アンカーボルトの内端側部分に螺合し且つ、前記コンクリート構造物の外面から離して配筋した補強鉄筋を支持する鉄筋支持部を有し、前記鉄筋支持部の支持部位と前記位置決めナットの外端との間の距離によって該補強鉄筋の被りを所要に設定する如く構成された位置決めナットと、該位置決めナットの外端側部分に螺合する連結ボルトと、該連結ボルトを挿通させ得る挿通孔を有する型枠部材と、前記連結ボルトに螺合して前記型枠部材を前記位置決めナットに押圧状態で固定するための固定ナットとを具えることを特徴とする配筋・型枠支持装置。
【請求項8】前記位置決めナットを、鉄筋支持部を具えた前ナット部材と、補強鉄筋の被りを設定する所要長さの後ナット部材との組み合わせで構成したことを特徴とする請求項7記載の配筋・型枠支持装置。
【請求項9】前記位置決めナットを、外周に雄ネジ部を有し且つ内周に雌ネジ部を有するナット本体と、前記雄ネジ部に螺合し得るネジ孔を有し且つ前記補強鉄筋を支持できる鉄筋支持部とからなることを特徴とする請求項7記載の配筋・型枠支持装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水路構造物等の各種のコンクリート構造物を補強する補強方法に関するものであり、又該補強方法に用いる配筋・型枠構造体に関するものである。更に、該配筋・型枠構造体を構成する配筋・型枠支持装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】コンクリート構造物の引っ張り強度を補うための、従来における代表的な補強方法としては、例えば図14に示すように、既存のコンクリート構造物の外面a1にコンクリートの増厚補強部bを形成する方法や、図15に示すように、炭素繊維やアラミド繊維等の繊維からなる補強シートcをコンクリート構造物面a2に接着剤dで固定する方法、又図16に示すように、コンクリート構造物面a3に鋼板eを巻くと共に、該鋼板eとコンクリート構造物面aとの間に樹脂fを充填する方法等が提案されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前記従来の補強方法には、次のような問題点があった。
■ コンクリート構造物の外面に増厚する前記施工方法によるときは、例えばコンクリート構造物が道路下に埋設されたボックスカルバートである場合、道路を掘削して増厚施工を行うことになるために、地下埋設管等が障害になって増厚施工が極めて困難となる問題があった。
【0004】■ 又前記炭素繊維やアラミド繊維等の繊維からなる補強シートで補強する前記施工方法によるときは、これらの補強シートをコンクリート構造物面に接着剤で貼り付けるため、この接着剤が紫外線の影響等で劣化することによって、補強の耐久性が低下する恐れがあり、施工の信頼性を確保できなかった。
【0005】■ 更に、コンクリート構造物面に鋼板を巻き、該鋼板とコンクリート構造物面との間に樹脂を充填する前記施工方法によるときは、重量物である鋼板の取り付けに大型重機等の専用機械が必要となるばかりか、十分な作業スペースが取れない場合は、これらの機械を導入できないこともあって、施工が不可能となる場合もあった。又前記充填樹脂の劣化によって、鋼板とコンクリート構造物の外面との一体化が悪くなって補強の耐久性が低下する恐れもあり、施工の信頼性を確保できなかった。
【0006】本発明は、かかる問題点を解決し得るコンクリート構造物の補強方法及び該補強方法に用いる配筋・型枠構造体の提供を目的とするものであり、更に、該配筋・型枠構造体を構成する配筋・型枠支持装置の提供を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。即ち本発明に係るコンクリート構造物の補強方法は、コンクリート構造物の所要部位に植設したアンカーボルトの外端側部分を、位置決めナットの内端側部分に螺合させ、該位置決めナットに設けた鉄筋支持部で、前記コンクリート構造物の外面から離して配筋した補強鉄筋を支持させ、前記鉄筋支持部の支持部位と前記位置決めナットの外端との間の距離によって該補強鉄筋の被りを所要に設定し、又前記位置決めナットの外端側部分には連結ボルトの内端側部分を螺合させ、且つ、前記位置決めナットの外端で型枠部材の内面を支持させると共に前記連結ボルトを該型枠部材に挿通せしめ、該連結ボルトの、前記型枠部材の外面で突出した部分に螺合した固定ナットを締め付ける(適宜、図2に示す押え管体37等を介在させて締付ける。以下同様)ことによって、前記型枠部材を前記位置決めナットに押圧状態で固定する。その後、前記コンクリート構造物の外面と型枠部材との間にグラウトを充填し、該グラウトが硬化した後に前記固定ナットを取り外し、前記位置決めナットからの前記連結ボルトの取り外しと前記型枠部材の除去を行うことを特徴とするものである。
【0008】又本発明に係るコンクリート構造物の補強方法の他の態様は、コンクリート構造物の所要部位に植設したアンカーボルトの外端側部分を、位置決めナットの内端側部分に螺合させ、該位置決めナットに設けた鉄筋支持部で、前記コンクリート構造物の外面から離して配筋した補強鉄筋を支持させ、前記鉄筋支持部の支持部位と前記位置決めナットの外端との間の距離によって該補強鉄筋の被りを所要に設定し、又前記位置決めナットの外端側部分には連結ボルトの内端側部分を螺合させ、且つ前記位置決めナットの外端で、型枠内面構成部の外面に型枠外面構成部を重ね合わせてなる型枠部材の内面を支持させると共に前記連結ボルトを該型枠部材に挿通せしめ、該連結ボルトの、前記型枠部材の外面で突出した部分に螺合した固定ナットを締め付けることによって、前記型枠部材を前記位置決めナットに押圧状態で固定する。その後、前記コンクリート構造物の外面と型枠部材との間にグラウトを充填し、該グラウトが硬化した後に前記固定ナットを取り外し、該グラウトの硬化物に付着状態で前記型枠内面構成部を残して、前記位置決めナットからの前記連結ボルトの取り外しと前記型枠外面構成部の除去を行うことを特徴とするものである。
【0009】又本発明に係るコンクリート構造物の補強方法のより好ましい態様は、コンクリート構造物の所要部位に植設したアンカーボルトの外端側部分を、位置決めナットの内端側部分に螺合させ、該位置決めナットに設けた鉄筋支持部で、前記コンクリート構造物の外面から離して配筋した補強鉄筋を支持させ、前記鉄筋支持部の支持部位と前記位置決めナットの外端との間の距離によって該補強鉄筋の被りを所要に設定し、又前記位置決めナットの外端側部分には連結ボルトの内端側部分を螺合させ、且つ前記位置決めナットの外端で、内面にアンカー部が突設された硬質合成樹脂板からなる型枠内面構成部の外面に型枠外面構成部を重ね合わせてなる型枠部材の内面を支持させると共に前記連結ボルトを該型枠部材に挿通せしめ、該連結ボルトの、前記型枠部材の外面で突出した部分に螺合した固定ナットを締め付けることによって、前記型枠部材を前記位置決めナットに押圧状態で固定する。その後、前記コンクリート構造物の外面と型枠部材との間にグラウトを充填し、該グラウトが硬化した後に前記固定ナットを取り外し、該グラウトの硬化物への前記アンカー部の埋入によって前記型枠内面構成部を残して、前記位置決めナットからの前記連結ボルトの取り外しと前記型枠外面構成部の除去を行うことを特徴とするものである。
【0010】又本発明に係るコンクリート構造物の補強方法のその他の態様は、コンクリート構造物の所要部位に植設したアンカーボルトの外端側部分を、位置決めナットの内端側部分に螺合させ、該位置決めナットに設けた鉄筋支持部で、前記コンクリート構造物の外面から離して配筋した補強鉄筋を支持させ、前記鉄筋支持部の支持部位と前記位置決めナットの外端との間の距離によって該補強鉄筋の被りを所要に設定し、又前記位置決めナットの外端側部分には連結ボルトの内端側部分を螺合させ、且つ、前記位置決めナットの外端で型枠部材の内面を支持させると共に前記連結ボルトを該型枠部材に挿通せしめ、該連結ボルトの、前記型枠部材の外面で突出した部分に螺合した固定ナットを締め付けることによって、前記型枠部材を前記位置決めナットに押圧状態で固定する。その後、前記コンクリート構造物の外面と型枠部材との間にグラウトを充填し、該グラウトが硬化した後に前記固定ナットを取り外し、前記位置決めナットからの前記連結ボルトの取り外しを行うことを特徴とするものである。
【0011】前記補強方法が、硬質合成樹脂板からなる型枠内面構成部を用いるときは、該硬質合成樹脂板の全体又はその一部分を透明にするのがよい。
【0012】又本発明に係る配筋・型枠構造体は、コンクリート構造物の所要部位に植設したアンカーボルトの外端側部分を、位置決めナットの内端側部分に螺合させ、該位置決めナットに設けた鉄筋支持部で、前記コンクリート構造物の外面から離して配筋した補強鉄筋を支持させ、前記鉄筋支持部の支持部位と前記位置決めナットの外端との間の距離によって該補強鉄筋の被りを所要に設定し、又前記位置決めナットの外端側部分には連結ボルトの内端側部分を螺合させ、且つ、前記位置決めナットの外端で型枠部材の内面を支持させると共に前記連結ボルトを該型枠部材に挿通せしめ、該連結ボルトの、前記型枠部材の外面で突出した部分に螺合した固定ナットを締め付けることによって、前記型枠部材を前記位置決めナットに押圧状態で固定したことを特徴とするものである。
【0013】又本発明に係る配筋・型枠支持装置は、コンクリート構造物に植設したアンカーボルトと、該アンカーボルトの内端側部分に螺合し且つ、前記コンクリート構造物の外面から離して配筋した補強鉄筋を支持する鉄筋支持部を有し、前記鉄筋支持部の支持部位と前記位置決めナットの外端との間の距離によって該補強鉄筋の被りを所要に設定する如く構成された位置決めナットと、該位置決めナットの外端側部分に螺合する連結ボルトと、該連結ボルトを挿通させ得る挿通孔を有する型枠部材と、前記連結ボルトに螺合して前記型枠部材を前記位置決めナットに押圧状態で固定するための固定ナットとを具えることを特徴とするものである。
【0014】前記配筋・型枠支持装置において、前記位置決めナットを、鉄筋支持部を具えた前ナット部材と、補強鉄筋の被りを設定する所要長さの後ナット部材との組み合わせで構成することもある。
【0015】又前記配筋・型枠支持装置において、前記位置決めナットを、外周に雄ネジ部を有し且つ内周に雌ネジ部を有するナット本体と、前記雄ネジ部に螺合し得るネジ孔を有し且つ前記補強鉄筋を支持できる鉄筋支持部とで構成することもある。
【0016】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜3は、本発明に係るコンクリート構造物の補強方法(以下補強方法という)で用いる配筋・型枠構造体1を示すものであり、又図4は、該配筋・型枠構造体1を構成する配筋・型枠支持装置2を示す分解斜視図である。
【0017】前記配筋・型枠構造体1を構成するには、適宜、図1に符号3で示すように、コンクリート構造物4の表面の脆弱部分をはつり取る等して健全なコンクリート部5を露出させる。その後、該露出部分を含めた健全なコンクリート部5にインサート6を埋設し、該インサート6にアンカーボルト7の内端側部分9を螺合させ、これによって該アンカーボルト7を、コンクリート構造物4の表面の所要部位に植設状態とする。なお前記インサート6は、後述の鉄筋コンクリート補強部45による必要な補強強度を考慮して、例えば縦横30cm〜60cmピッチで埋設する。又、植設されたアンカーボルト7の突出方向は、上方向や下方向、横方向等の各種方向であってよい。又前記はつり取りによって、コンクリート構造物の表面に凹凸が形成された場合は、図1に示すように、この凹凸の深さに合わせて、所定長さのアンカーボルトを用いる。
【0018】その後図2に示すように、該アンカーボルト7の外端側部分9を位置決めナット10の内端側部分11に螺合させる。該位置決めナット10は、図2〜4に示すように、その長さ方向の中間部位に、補強鉄筋12を支持するための例えば円板状をなす鉄筋支持部13が溶接され、該鉄筋支持部13の支持部位14と位置決めナット10の外端15との間の距離L1(図2)は、補強鉄筋12の必要な被り(最低20mm程度に設定するのがよい)を考慮して設定されている。そして該位置決めナット10の、アンカーボルトに対する取り付けは、補強鉄筋12とコンクリート構造物4の表面16との間の最低距離L2(図2)を、コンクリート構造物の表面16と補強鉄筋12との間17においても後述のグラウト充填を確実に行い得るように、例えば15mm程度に設定して行う。位置決めナット10をこのように取り付けた後、コンクリート構造物の表面16から離して配筋した補強鉄筋12を、前記鉄筋支持部13に結束等して支持させる。図5は、鉄筋支持部13で支持された縦、横の補強鉄筋12,12の配筋状態を示すものである。
【0019】その後、前記位置決めナット10の外端側部分19に、連結ボルト20の内端側部分21を螺合させる。そして図2に示すように、型枠部材22に設けた挿通孔23に前記連結ボルト20を挿通させ、該型枠部材22の内面25を前記外端15に当接状態にして、該型枠部材22を位置決めナット10で支持させる。
【0020】該型枠部材22は、本実施の形態においては、硬質合成樹脂板26aとしての型枠内面構成部26の外面27に、例えばコンパネ29aとしての型枠外面構成部29を重ね合わせてなる。
【0021】前記硬質合成樹脂板26aとしては、外面27の粗度係数が小さく、防食性に優れ、又耐摩耗性を有する硬質塩化ビニル板(透明のものが好ましい)を用いるのがよい。そしてその内面には、アンカー部31が突設されており、かかる構成の硬質合成樹脂板26a,26aの端部相互は、図1〜2に示すように、板内面側において、連結部材33で適宜連結される。なお前記硬質合成樹脂板26aとしては、ポリエチレンやポリエステル等の素材からなる板(透明のものが好ましい)を用いることもできる。
【0022】そして前記連結ボルト20の、型枠部材22の外面35で突出した部分36に、押え管体37を介在させて固定ナット39を螺合させ、該固定ナット39を締め付けることによって、該型枠部材22を前記位置決めナット10に押圧状態で固定する。
【0023】このようにして配筋・型枠構造体1が構成されるのであるが、該配筋・型枠構造体1を構成した後、前記コンクリート構造物4の表面16と前記型枠内面構成部26との間にグラウトを充填する。該グラウトが硬化した後に前記固定ナット39を取り外し、前記位置決めナット10からの前記連結ボルト20の取り外しとコンパネ29aとしての前記型枠外面構成部29の除去を行う。なお、前記固定ナット39を取り外して後に、コンパネ29aとしての前記型枠外面構成部29の除去を行ない、その後に、前記位置決めナット10からの前記連結ボルト20の取り外しを行うこととしてもよい。硬質合成樹脂板26aとしての前記型枠内面構成部26は、図6〜7に示すように、そのアンカー部31がグラウト硬化部40に埋入状態にあるため、該グラウト硬化物40の表面41を被覆した状態で残る。なお、該連結ボルト20の取り外しによって形成された露出孔部42(図7)は、該露出孔部42への押し込み軸部43を具えた適宜のキャップ44で覆う。
【0024】これにより図6に示すように、鉄筋コンクリート構造物4の補強部45が形成されることになる。このように形成された補強部45は、前記アンカーボルト7を介して既存のコンクリート構造物4に強固に一体化せしめられているため、該構造物4を効果的に補強できる。そしてコンクリート構造物4が、例えば図8に示すような、ボックスカルバート46を連設して構築した水路47であって、その内面全体が前記補強部45で補強された場合は、補強部45が水路47を補強するだけでなく、前記硬質合成樹脂板26aによって構造物の防食性能が向上せしめられると共に、水路内面の粗度係数がコンクリート水路面に比して小さいために流速を増大させることができ、従って排水性能の向上を期し得る。
【0025】図9〜10は、コンクリート構造物4が前記水路47である場合における前記補強部45の形成部位の他の態様を示すものであり、図9においては、水路側部の下半分49と底部50とに一連に補強部45を形成している。又図10は、例えば硫化水素等による水路の腐食防止を目的として、水路の天井部51に一連に補強部45を形成している。なおこの補強部45は、コンクリート構造部の長さ方向全長に亘る場合の他、部分的に構成されることもある。
【0026】なお本実施の形態においては、前記硬質合成樹脂板26aが透明であるために、グラウトの充填状態を目視できる等、施工管理が容易になる他、将来的にも補強部を目視観察できるため、補強部の保守点検が容易になる利点がある。
【0027】〔その他の実施の形態〕
■ 荷重条件の変化に応じてコンクリート構造物を補強する場合は、前記はつり取りを行わないでアンカーボルトを植設することもある。
【0028】■ 鉄筋の被りは施工現場に応じて所要に設定するため、これに合わせて、前記鉄筋支持部13の支持部位14と前記位置決めナット10の外端15との間の距離L1(図2)が異なる所要の位置決めナットを用いる。図11〜12は、位置決めナット10の他の態様を示すものであり、鉄筋支持部13を具える前ナット部材52と、補強鉄筋の被りを設定する所要長さの後ナット部材53とを組み合わせて構成されており、前記被りに応じて、所定長さの後ナット部材53を前ナット部材52に組み合わせる。又図13は、位置決めナット10のその他の態様を示すものであり、外周に雄ネジ部53を有し且つ内周に雌ネジ部55を有するナット本体56と、前記雄ネジ部53に螺合し得るネジ孔57を有し且つ前記補強鉄筋12を支持する鉄筋支持部13とからなるものである。そして該鉄筋支持部13の螺合状態を所要に設定し、前記ナット本体56の長さ方向の所要部位に前記鉄筋支持部13を位置させる。又前記雌ネジ部55の内端側部分及び外端側部分に、前記アンカーボルト7と連結ボルト20が螺合せしめられる。
【0029】■ コンクリート構造物へのアンカーボルトの植設は、該アンカーボルトの内端側部分にインサートを螺合状態とした後に該インサートをコンクリート構造物に埋設して行うこともある。又、アンカーボルトの内端側部分をコンクリート構造物に直接埋設してもよい。
【0030】■ 前記鉄筋支持部13は、前記補強鉄筋を支持し得るものであれば、その形態を問わない。
【0031】■ 前記固定ナット39と前記連結ボルト20を取り外して後、前記型枠部材22をグラウト硬化物に付着状態で残し、これによって、該型枠部材22で被覆された補強部45を形成することもある。この場合における型枠部材の好ましい態様としては、厚手或いは補強された硬質合成樹脂板やレジンコンクリート板、鋼板等を挙げることができ、グラウト硬化物に食い込むアンカー部が内面に突設されたものである。型枠部材が特に鋼板である場合は、それ自体が補強作用を発揮するため、本発明を例えば橋脚の補強に応用して好都合である。
【0032】■ 本発明に係る補強方法は、型枠部材の全体を取り外すことによって、グラウトの硬化物の表面が露出した補強部を形成することもある。
【0033】■ 前記グラウト硬化物の表面を、型枠内面構成部や型枠部材が被覆した状態で構成する場合、該型枠内面構成部や型枠部材の全体を透明にするのが、グラウトの充填状態を目視観察できて施工管理の容易化を図ることができると共に、将来の保守点検の容易化を期し得て好ましい。なお該型枠内面構成部や型枠部材の一部分を透明にしたときも、略同様の効果を期待できる。
【0034】■ 本発明において、鉄筋支持部の支持部位と位置決めナットの外端との間の距離によって補強鉄筋の被りを所要に設定するとは、必ずしも、前記距離が被りに等しいという意味ではなく、補強鉄筋が異形鉄筋等であって表面に凹凸がある場合は、この凹凸を考慮して所要の被りが得られるように、前記距離を設定するという意味である。
【0035】■ 型枠内面構成部がアンカー部を具える場合、該アンカー部は、該型枠内面構成部の内面側に凹溝を所要間隔で並設して形成された凹凸部であってよい他、砂等の粒状物を付着させて形成された凹凸部であってもよい。
【0036】
【発明の効果】本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
■ 本発明に係る補強方法によるときは、鉄筋コンクリート製の補強部を、コンクリート構造物に植設されたアンカーボルトを介して該構造物に強固に一体化させることができる。従って、該補強部によりコンクリート構造物の引張り強度を向上させてコンクリート構造物を安定的に且つ永続的に補強できることになる。炭素繊維やアラミド繊維からなる補強シートを接着剤で貼着する従来の補強方法によるときは、前記したように、接着剤の劣化によって、補強効果を永続させ難い問題があったのであるが、本発明は、かかる問題点を解決して永続的な補強を可能にするのである。又、鋼板を用いて補強する従来の補強方法によるときは、鋼板が重量物であるために施工性が悪い問題があったのであるが、本発明は、かかる問題点も解消できる。又前記した、充填樹脂の劣化によって補強の耐久性が低下するという問題点も解消できる。
【0037】■ 又本発明に係る配筋・型枠支持装置は、鉄筋支持部を具え且つ後端で型枠部材を支持できる位置決めナットを、コンクリート構造物に植設したアンカーボルトに螺合させる構成を採用している。従って、該位置決めナットの螺合状態を調節して前記鉄筋支持部の配置を所要に設定することにより、自ずから、コンクリート構造物の外面からの配筋距離や補強鉄筋の被りを所望に設定でき、補強鉄筋を精度よくしかも容易に配筋できることになる。このように本発明によるときは、アンカーボルトを、前記補強部をコンクリート構造物に一体化させるために利用できるだけでなく、該アンカーボルトと位置決めナットとの組み合わせによって、補強鉄筋の配筋施工の容易化と配筋精度の向上を達成でき、しかも、型枠部材の取り付け施工をも容易化できるのであり、この点が本発明の大きな特徴になっている。
【0038】■ 又本発明は、コンクリート構造物に植設したアンカーボルトを利用して施工するため、例えばコンクリート構造物が、ボックスカルバートを連設して構築した水路である場合、該水路の外部で増厚して補強部を構築する従来施工によるときは、地下埋設管等が障害となる場合であっても、地下埋設物に影響されることなく、構造物の内側から容易に施工できる利点がある。
【0039】■ そして本発明は、アンカーボルトと連結ボルトとを位置決めナットで連結する構成を採用するため、該アンカーボルトと連結ボルトとを一連にしたアンカーボルトを用いる場合とは異なり、コンクリート構造物の外面と型枠部材との間に充填したグラウトが硬化した後に連結ボルトを取り外すことによって、障害物が突出しない平坦な補強部を形成できることになる。又、はつり取りによってコンクリート構造物の表面に凹凸が形成されている場合は、長さの異なるアンカーボルトでこの凹凸に対応でき、連結ボルトの長さは全て同一に設定できるため、位置決めナットに対するアンカーボルトや連結ボルトの螺合状態を所要に設定することにより、型枠部材の外面で突出する連結ボルトの突出量を揃えることができて、施工の容易化を達成できることになる。
【0040】■ 特に型枠部材を、表面の粗度係数が小さく、又防食性に優れる硬質塩化ビニル板等の硬質合成樹脂板を型枠内面構成部として具えるものとし、脱型時に、該硬質合成樹脂板が補強部の表面を形成する状態で残るように構成したり、或いは、該型枠部材の全体を硬質塩化ビニル板等の硬質合成樹脂板やレジンコンクリート板等として、該型枠部材が、補強部の表面を形成する状態で残るように構成する場合は、その表面の粗度係数が小さいことによって排水流量の増大を図ることができると共に、硫化水素等よる水路面の腐食も確実に防止できることになる。
【0041】■ 又該硬質合成樹脂板の全体又はその一部分を透明に構成するときは、該硬質合成樹脂板を透視してグラウトの充填状態等を観察できるため、施工管理の容易性を確保できると共に、将来においても、補強部が正常か否かを容易に確認できることになる。
【0042】■ アンカーボルトに螺合させる位置決めナットを、図11〜12に示すように二分割して、鉄筋支持部を具える前ナット部材と、補強鉄筋の被りを設定する所要長さの後ナット部材との組み合わせで構成する場合は、必要とされる被り毎に、鉄筋支持部を具えた特別の位置決めナットを幾種類も設計製作する必要がなく、長さの異なる単純構成の後ナット部材を幾種類か用意するだけで、これを、鉄筋支持部を具えた一種類の前ナット部材と組み合わせることにより、補強鉄筋の所要の被りを容易に設定できる。同様の効果は、ナット本体と鉄筋支持部とからなる前記位置決めナットを用いることによっても達成される。
【出願人】 【識別番号】598092292
【氏名又は名称】メンテックス株式会社
【識別番号】000137074
【氏名又は名称】株式会社ホクコン
【出願日】 平成11年6月23日(1999.6.23)
【代理人】 【識別番号】100085246
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 清一郎
【公開番号】 特開2001−3435(P2001−3435A)
【公開日】 平成13年1月9日(2001.1.9)
【出願番号】 特願平11−176627