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【発明の名称】 管網の地震被害評価システム
【発明者】 【氏名】三好 秀幸

【氏名】藤原 誠司

【要約】 【課題】地震発生時に被害を小さくする管路を容易に抽出できるシステムを合理的に構成する。

【解決手段】管路情報と地震情報に基づいて推定された被害管路から断水人口・断水率を求めておき、又、推定された被害管路を予め設定されたルールに基づいて耐震化を想定し、このように想定した管路情報と地震情報に基づいて推定された被害管路から断水人口・断水率を求め、耐震化前と耐震化後とを比較した結果に基づいて管網の耐震化の評価結果をディスプレイ1やプリンター6に出力する汎用コンピュータ3を備えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 管網における地震による被害管路と被害とを推定する第1推定処理と、このように推定した被害管路を予め設定した優先順位に基づいて耐震化を想定する耐震化想定処理と、この耐震化を想定した状態の管網に対する地震の被害を推定する第2推定処理と、これら第1、第2推定処理による被害の比較結果を出力装置に対して出力する処理装置を備えて構成されている管網の地震被害評価システム。
【請求項2】 前記第1推定処理が、前記管網を複数の領域に区画し、夫々の領域毎における地震動の加速度に基づいて、その領域内の管路の被害確率を求め、この被害確率と乱数とに基づいて夫々の領域における被害管路を推定するよう処理形態が設定されている請求項1記載の管網の地震被害評価システム。
【請求項3】 前記耐震化想定処理が、前記第1推定処理によって推定した被害管路の被害率が高い管路を前記耐震化において高い優先順位に設定するよう処理形態が設定されている請求項1又は2記載の管網の地震被害評価システム。
【請求項4】 前記耐震化想定処理が、前記管網において予め設定された給水点に対して最も多くの水を供給する主要管路を前記耐震化において高い優先順位に設定するよう処理形態が設定されている請求項1又は2記載の管網の地震被害評価システム。
【請求項5】 前記耐震化想定処理が、前記管網において老朽度の高い管路を前記耐震化において高い優先順位に設定するよう処理形態が設定されている請求項1又は2記載の管網の地震被害評価システム。
【請求項6】 前記耐震化想定処理が、前記管網において被害時に水圧低下、低圧化対象人口が大きい水理的重要管路を前記耐震化において高い優先順位に設定するよう処理形態が設定されている請求項1又は2記載の管網の地震被害評価システム。
【請求項7】 前記耐震化想定処理が、布設替え管路の費用を算出するよう処理形態が設定されている請求項1又は2記載の管網の地震被害評価システム。
【請求項8】 前記管網として、記憶手段に保存された複数の管路布設情報を合成して用いるよう構成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の管網の地震被害評価システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、管網の地震被害評価システムに関し、詳しくは、管網に対する地震被害を処理する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】管網に対する地震被害を処理する技術として、特開平9‐259186号公報に示されるものが存在し、この従来技術では、地震計、管路中の圧力を計測する圧力計、管路中の流量を測定する流量計夫々を備え、地震発生後には地震計からの地盤加速度データ、圧力計からの圧力データ、流量計からの流量データのうち少なくとも1つをサーバに取り込み、地域メッシュ毎の管路被害率を推定し、この推定結果から被害管路数を算出し、破断優先順位の高い管路から被害管路数だけの破断管路を割り当てることにより、漏洩発生箇所、漏洩量を決定する処理を行うものとなっており、これに基づいて復旧工事を行えるものとしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術として挙げたものは、地震発生後における被害の程度を即時に判定でき、復旧工事を行う際の計画を立てやすくするものである。そして、このように地震発生後における被害を判断することは重要であるが、それと同様に上水道管の耐震化を促進することも重要である。そこで、耐震化を図ることについて考えても、管路の多くは道路の地下に埋設され、工事を行う際には道路の通行を遮断することや、夜間に工事を行うこと等の措置を講ずる必要があり、又、耐震化のための工事には埋設された管路を交換することになるので工事に多額の費用を要するばかりでなく、工事に長期間を要するものとなる。従って、短期間で多くの管路の耐震化を図ろうとすることは現実的でない。このことを鑑みると、管路を耐震化するにあたって、できるだけ少ない管路の耐震化により地震発生時に被害をできるだけ少なくすることが理想と考えられる。しかし、地震発生時の被害をできるだけ少なくする管路を抽出することは困難であり、被害を少なくする管路を容易に抽出できる技術が望まれている。
【0004】本発明の目的は、地震発生時に被害を小さくする管路を管網から容易に抽出できるシステムを合理的に構成する点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の特徴(請求項1)は、管網における地震による被害管路と被害とを推定する第1推定処理と、このように推定した被害管路を予め設定した優先順位に基づいて耐震化を想定する耐震化想定処理と、この耐震化を想定した状態の管網に対する地震の被害を推定する第2推定処理と、これら第1、第2推定処理による被害の比較結果を出力装置に対して出力する処理装置を備えて構成されている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0006】本発明の第2の特徴(請求項2)は請求項1において、前記第1推定処理が、前記管網を複数の領域に区画し、夫々の領域毎における地震動の加速度に基づいて、その領域内の管路の被害確率を求め、この被害確率と乱数とに基づいて夫々の領域における被害管路を推定するよう処理形態が設定されている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0007】本発明の第3の特徴(請求項3)は請求項1又は2において、前記耐震化想定処理が、前記第1推定処理によって推定した被害管路の被害率が高い管路を前記耐震化において高い優先順位に設定するよう処理形態が設定されている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0008】本発明の第4の特徴(請求項4)は請求項1又は2において、前記耐震化想定処理が、前記管網において予め設定された給水点に対して最も多くの水を供給する主要管路を前記耐震化において高い優先順位に設定するよう処理形態が設定されている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0009】本発明の第5の特徴(請求項5)は請求項1又は2において、前記耐震化想定処理が、前記管網において老朽度の高い管路を前記耐震化において高い優先順位に設定するよう処理形態が設定されている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0010】本発明の第6の特徴(請求項6)は請求項1又は2において、前記耐震化想定処理が、前記管網において被害時に水圧低下、低圧化対象人口が大きい水理的重要管路を前記耐震化において高い優先順位に設定するよう処理形態が設定されている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0011】本発明の第7の特徴(請求項7)は請求項1又は2において、前記耐震化想定処理が、布設替え管路の費用を算出するよう処理形態が設定されている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0012】本発明の第8の特徴(請求項8)は請求項1〜7のいずれか1項において、前記管網として、記憶手段に保存された複数の管路布設情報を合成して用いるよう構成されている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0013】〔作用〕
【0014】上記第1の特徴によると、管網における地震による被害管路と被害とを第1推定処理によって推定すると共に、このように推定された被害管路を予め設定された優先順位に基づき耐震化想定処理で耐震化を想定し、このように耐震化された管網に対する地震の被害を第2推定処理によって推定し、第1推定処理と第2推定処理との被害の比較結果を処理装置が出力装置に出力することになり、この出力結果に基づいて耐震化の有効性を判断できるものとなる。つまり、本発明では、従来の技術のように地震の被害を単純に求めるのではなく、地震が発生する以前に耐震化すべき管路を抽出すると共に、優先順位に基づいて耐震化した際の有効性まで比較判断できるので、耐震化すべき管路の抽出を間違いなくできるものとなる。
【0015】上記第2の特徴によると、管網をメッシュで区画する等の処理により得られた各領域毎に地震動の加速度に基づいて被害確率を求めるので、管網全体での確率を求めるものと比較すると被害確率の精度が高まると共に、この被害確率と乱数とに基づいて夫々の領域における被害管路を推定するので、確率の理論に基づいて被害管路を合理的に推定できるものとなる。
【0016】上記第3の特徴によると、地震発生時の被害率が高い管路の優先順位が高く設定されているので、被害を受けやすい管路を耐震化想定処理の対象として優先的に抽出できるものとなる。
【0017】上記第4の特徴によると、病院や公共施設のように地震発生時に給水を必要とする給水点に対して最も多くの水を供給する主要管路の優先順位が高く設定されているので、この給水のための主要な管路を耐震化想定処理の対象として優先的に抽出できるものとなる。
【0018】上記第5の特徴によると、老朽度が高い管路は放置すれば漏水や赤錆を発生しやすく、このような管路を耐震化処理の対象として優先的に抽出できるものとなる。
【0019】上記第6の特徴によると、被害時に水圧が低下する低圧化対象人口が大きい水理的重要管路の優先順位が高く設定されているので、この水理的重要管路を耐震化処理の対象として優先的に抽出できるものとなる。
【0020】上記第7の特徴によると、布設替え管路の費用の算出が行え、布設替え管路の費用の検討を容易に行える。
【0021】上記第8の特徴によると、記憶手段に保存された複数の管路布設情報を合成して用いるので、大規模となりがちな管網を入力する手間を省け、例えば、布設された管路の位置や管径や管長を記録した既存の情報を用いて管路の抽出を行うことも可能となる。
【0022】〔発明の効果〕従って、地震発生時に耐震化によって被害を小さくする管路を容易に抽出して耐震化前後の地震被害の比較を可能にするシステムが合理的に構成されたのである。又、管網の被害管路を無理なく推定して適正な処理を可能にすると共に、被害を受けやすい管路、重要な施設への水を送る管路、老朽度の高い管路、災害時に水圧低下の影響が大きい管路夫々について耐震化処理を行った場合の有効性を明らかにできるものとなり、又、既存の管路情報に基づいてこれらの処理を行えるものとなった。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、出力装置としてのCRTや液晶表示装置で構成されるディスプレイ1、及び、記憶手段としてのハードディスク2を内蔵した処理装置としての汎用コンピュータ3夫々を有して管網の地震被害評価システムが構成されている。同図に示すように汎用コンピュータ3にはデータ入力用のキーボード4と、ポインティング手段としてのマウス5が付属しており、又、該汎用コンピュータ3は出力装置としてのプリンター6と接続している。
【0024】このシステムは、図2に示す如く水源Sからの水が供給される既存の管網PNにおける地震に対して被害と、耐震化を想定した管網における地震に対して推定された被害とを比較して、前記ディスプレイ1やプリンター6に出力する処理を行うプログラムがセットされている。その処理の概要は図3に示すように、第1推定処理(#A)で既存の管網PNに対する地震シミュレーションを行い、このシミュレーションによって推定された被害管路をディスプレイ1に既に表示されている管網中に表示する処理を行うと共に、この被害管路に基づき被害推定処理(#B)で断水人口、あるいは、断水率を推定して、この推定結果をディスプレイ1に表示する処理を行う。又、推定された被害管路の中から耐震化想定処理(#C)で予め設定された優先順位に従って耐震化を想定する処理を行い、更に、この耐震化想定処理(#C)で想定された想定結果をディスプレイ1の管網中に表示する処理を行うものとなっている。次に、耐震化費用算出処理(#C’)で前記耐震化想定処理(#C)において耐震化を想定した管路を布設するために必要な工事費用を算出すると共に、第2推定処理(#D)で前述のように耐震化を想定した状態の管網に対する地震シミュレーションを行い、このシミュレーションによって推定された被害管路をディスプレイ1の管網中に表示すると共に、この被害管路に基づき被害推定処理(#E)で断水人口、あるいは、断水率を推定し、この推定結果をディスプレイ1に表示する。次に、これら#B・#Eの推定処理の結果を比較処理(#F)で被害の比較を行い、この比較結果を出力処理(#G)で前記ディスプレイ1やプリンター6に出力する処理を行うものとなっている。
【0025】又、この処理において、第1推定処理(#A)、被害推定処理(#B)、耐震化想定処理(#C)夫々の処理を行う際に用いられる情報の流れだけを示すと、図4に示すようになる。つまり、管網PNを構成する管路情報と、後述する補正情報と、所定の地震情報とに基づいて地震シミュレーションを実行して管網PNを構成する各管路の被害率(Rm)を求め、この各管路の被害率(Rm)と管路長さ情報に基づいて管路の被害確率(Pf)を推定し、このように推定された各管路の被害確率(Pf)と乱数とに基づいて被害管路の推定が行われるものとなっている。以上の処理が第1推定処理(#A)の概要であり、このように推定された被害管路の情報と水理解析情報とに基づいて被害推定処理(#B)、つまり、断水人口や断水率が求められ、又、このように推定された被害管路の情報と重み値(K)との情報とに基づいて耐震化想定処理(#C)が行われるものとなっており、以下にこれらの処理を説明する。
【0026】第1推定処理(#A)は、図5のフローチャートに示すように、管網PNを構成する管路情報と補正情報とのセットを行った状態で、地震情報に基づいて管路被害率(Rm)を推定し、この管路被害率(Rm)から管路被害確率(Pf)を推定し、管路被害確率(Pf)と乱数とに基づいて被害管路を推定し、このように推定した被害管路と推定された管路の識別情報をメモリに等にストアする処理を行うものとなっている(#101〜105ステップ)。
【0027】具体的には、#101ステップで管網PNを図6に示す如く所定の距離毎にメッシュ状に区画し、メッシュ状に区画された夫々の領域Zに管路情報をセットする処理と、夫々の領域Zの管路に対して補正情報をセットする処理を行う。ここで、管路情報を保存する管路情報ファイルFaの構造を説明すると、図2に示すように管網PNが存在する領域をは複数のエリアArに分割され、夫々のエリアArに対応する管路情報ファイルFaがハードディスク2に保存されている。ハードディスク2に保存される管路情報ファイルFa(管路布設情報の一例)は、図7に示すように〔ヘッダー〕と〔情報領域〕とを備えて成り、〔ヘッダー〕にはファイル名、作成日、更新日、データ量、エリアArの位置を示すオフセット位置情報等を保存し、〔情報領域〕には管路情報と弁・栓情報と、地理情報とを保存するものとなっており、管路情報として管路の両端の位置、屈曲位置、管種、管径、管長、布設日、埋設深さ、流量(水量)、老朽度、平均圧力変化量、低圧化対象人口、流量比等の情報を含んで成り、弁・栓情報として弁・栓の位置、種類等の情報を含んで成り、地理情報として地形、道路の位置、建造物の位置の情報を含んで成り、地震情報として震度、地震最大加速度、液状化危険度などの情報を含んで成っている。そして、このシステムでは夫々の管路情報ファイルFaの管路情報の位置を座標変換する等の処理により管路が繋ぎ合った状態で、図18に示す如く、ディスプレイ1のウインドウW1内に管網PNとして表示する処理を行い(処理形態は詳述せず)、必要な場合には、別個にウインドウW2を開いて拡大した管路の表示を行うことや、管網PNから選択した管路の情報、即ち、管径、管長、布設年月日等の情報を管路情報ファイルFaから読み出し、その管路の近傍位置に表示する処理を行えるものとなっている。
【0028】前記補正情報とは、図8〜図11に示す如く、「管種に関する補正係数」Cpと、「管径に関する補正係数」Cdと、「地形・地盤に関する補正係数」Cgと、「液状化に関する補正係数」Clとで構成され、これらの補正係数は地震のシミュレーションを行う際に夫々の管路に与えられる。又、地震情報とは、管網PNが存在する地域に影響を及ぼす活断層等を震源とするもののうち、予め想定した震源で、予め想定した規模のデータ(地方自治体等が保有している)を含んで構成されている。
【0029】#102ステップは、地震情報に基づいてメッシュ状の領域Z毎の管路被害率(Rm)を推定する処理を行うものとなっている。この地震情報は前述したデータが用いられ、管路被害率(Rm)を推定するには(社)日本水道協会から発表されている式が用いられ、その式は以下の通りである。
【0030】
Rm(α)=Cp×Cd×Cg×Cl×R(α)、Rm(α):地震動の最大加速度がαにおける被害率、Cp:管種に関する補正係数、Cd:管径に関する補正係数、Cg:地形・地盤に関する補正係数、Cl:液状化に関する補正係数、α :地震動の最大加速度(〔gal 〕あるいは〔cm/sec2 〕)、【0031】この#102ステップの処理では、管網PNを構成する全ての管路について、管路被害率(Rm)を求めるものであることから、管網PNを構成する全ての管路に対して管路情報ファイルFaの情報に基づいて管種、管径を与える処理を行うと共に、これらの管路に対して地形・地盤に関する補正係数(Cg)や、液状化に関する補正係数(Cl)や、地震動の最大加速度(α)に基づく演算処理を行う。尚、これら地形・地盤に関する補正係数(Cg)や、液状化に関する補正係数(Cl)は前記管路情報ファイルFaに保存しておくことも可能であるが、管路情報ファイルFaの情報量を増大させないため、これらの情報を領域毎に管理するレイヤーを用い、このレイヤーを管網PNが存在する領域に重ね合わせ、レイヤーに設定された情報を重ね合わせた管路夫々に与える等の処理を行うよう処理形態を設定することが有効である。又、地震動の最大加速度(α)はレイヤーに対して領域に対応した情報を設定しておき、このレイヤーに設定された情報を管網PNが存在する重ね合わせることで地震動の情報を管路夫々に与えるよう処理形態が設定されている。
【0032】#103ステップでは全ての管路について推定された管路被害率(Rm)と、その管路長さ情報(L)(管長)から管路被害確率(Pf)を推定する処理を行う。又、この管路被害確率(Pf)は以下の式で与えられる。
【0033】Pf=1−EXP(−Rm×L)、L:管路長さ、【0034】#104ステップでは前述のように求めた管路被害確率(Pf)から被害管路を乱数に基づき確率の理論に基づいて推定する。被害管路とは漏水を発生する管路のことであり、夫々の管路に対して設定された管路被害確率(Pf)と、システムで発生させた乱数との大小関係の比較により、具体的には管路被害確率(Pf)の値より乱数の値が小さい場合には被害を受けると推定し、管路被害確率(Pf)の値より乱数の値が大きい場合には被害を受けないと推定するものであり、この推定を100回程度繰り返して行い、1度でも被害を受けると判別した場合には被害を受けると推定する。
【0035】#105ステップでは被害を受けると推定した被害管路(破損管路)の識別情報をメモリ等にストアする処理を行うものとなっている。
【0036】被害推定処理(#B)は、被害を受けた管路の全てについて漏水量を求めると共に、夫々の管路の漏水量を解析し、この漏水による圧力低下から断水する領域を求めるものであり、その処理は図12のフローチャートに示すように、前記#105ステップでストアした夫々の被害管路を特定するため識別情報のセットを行い(#201ステップ)、この後の水理解析の初期設定で、仮水量(Wt)に漏水管の取り出し量(Wo)をセットし、又、仮水圧(Ht)に漏水管の水圧(Ho)を設定する(#202ステップ)。次に、この仮水圧(Ht)から漏水量(Rt)を算出する(#203ステップ)。この算出には図13に示すように水圧と漏水量とが1.15乗の関係にあることを示す式が用いられる(同図には直径が200mmの管路の水圧と漏水量の関係が示されている)。
【0037】次に、管路の取り出し水量(Wo)に漏水量(Rt)を加え、この結果(Wt)から管路水圧(Hpt)を算出し(#204ステップ)、前記仮水圧(Ht)と管路水圧(Hpt)の平均値を仮水圧(Ht)にセットし(#205ステップ)、この仮水圧(Ht)と管路水圧(Hpt)との絶対値が予め設定された閾値より小さくなるまで#203〜#205ステップの処理を繰り返し(反復し)、仮水圧(Ht)と管路水圧(Hpt)との絶対値が予め設定された閾値より小さくなった際に(収束した際に)処理の繰り返しを終え、その管路水圧(Hpt)、あるいは、その管路に連なる管路の水圧、と断水圧との比較を行い、断水状態に陥る管路と給水可能な管路とを弁別して、断水域を示す情報をディスプレイ1に表示すると共に、メモリにストアする処理を行うものとなっている(#206〜208ステップ)。尚、前述した#203〜#205ステップの処理を繰り返しを行った場合には図14のグラフに示すように、仮水圧(Ht)と漏水量(Rt)と管路水圧(Hpt・同図には水圧と記載)とが変化し、繰り返し処理によって仮水圧(Ht)と漏水量(Rt)と管路水圧(Hpt)が収束し、その結果、管路の水圧として与え得るものとなる。
【0038】耐震化想定処理(#C)は、図15のフローチャートに示すように、被害管路の情報と重み付け情報とに基づいて、重み値K1〜K6(重み値Kと総称する)を集計し、この重み値K1〜K6を集計(積算)した結果を比較し、この集計値の最も大きい管路から耐震化すべき管路の優先順位としてディスプレイ1に表示し、次に、設定された重み値K以上の管路、若しくは、設定された管路数に基づいて耐震化すべき管路を想定してディスプレイ1表示し、更に、このように想定された管路の情報をメモリにストアする処理を行うものとなっている(#301〜303ステップ)。尚、この処理のように耐震化すべき管路を自動的に設定する処理を行う際に、重み値Kに基づいて耐震化すべき管路を優先順位に従って表示しておき、このように表示されたものから耐震化すべき管路を上位からオペレータが任意の数だけ選択することや、このように表示されたものから耐震化すべき閾値として重み値をオペレータが入力することで、この閾値より大きい値の重み値となるものを耐震化すべき管路を選択するよう処理形態を設定して実施することも可能である。
【0039】又、この重み値は図16の処理に基づいて夫々の管路に設定されている。具体的には、その管路の被害率(Rm)、その管路の老朽度(Y)、その管路の布設位置(SP)、給水点(DP)、その管路の流量比(Wq)、その管路の平均圧力変化量(Ap)、低圧化対象人口(Lp)に対応して重み値が与えられるものであり、被害率(Rm)については、その管路の補正係数(α1)と被害率(Rm)とを乗じた結果を重み値(K1)として与え、老朽度(Y)については、その管路の補正係数(α2)と老朽度(Y)とを乗じた結果を重み値(K2)として与え、布設位置(SP)については、その管路の補正係数(α3)と重要度点数(N)とを乗じた結果を重み値(K3)として与え、給水点(DP)については、水源Sから給水点DPに至る管路の補正係数(α4)と重要度点数(N)を乗じた結果を重み値(K4)として与え、流量比(Wq)については、その管路の補正係数(α5)と重要度点数(N)とを乗じた結果を重み値(K5)として与え、平均圧力変化量(Ap)については、その管路の補正係数(α6)と重要度点数(N)とを乗じた結果を重み値(K6)として与え、低圧化対象人口(Lp)については、その管路の補正係数(α7)と重要度点数(N)とを乗じた結果を重み値(K7)として与える処理が予め行われている。
【0040】又、被害率(Rm)では被害率(Rm)が高い管路ほど重み値(K1)を大きくするものであり、老朽度(Y)では老朽度が大きいものほど重み値(K2)を大きくするものであり、布設位置(SP)では直ちに復旧工事を行えない緊急道路に布設されているものを大きい値の重要度点数(N)を設定してあり、給水点(DP)に給水を行う管路では病院や災害時に住民が避難する公共施設等の給水点(DP)に送水する管路を抽出し、これらの管路についてオペレータが設定した重要度が高いものほど大きい値の重要度点数(N)を設定するものであり、流量比(Wq)では管路に流れる流量が大きい管路ほど大きい値の重要度点数(N)を設定するものであり、平均圧力変化量(Ap)では被害時に管路全体に及ぼす圧力変化が大きくなる管路ほど大きい値の重要度点数(N)を設定するものであり、低圧化対象人口(Lp)では被害時に低圧化や断水する人口が大きいものほど大きい値の重要度点数(N)を設定するものである。補正係数α1〜α7については重み値の整合化を図るためにオペレータによって任意に設定される。尚、この重み値を設定する際に、例えば、被害率(Rm)の場合、被害率(Rm)と重み値とを対応させテーブル形式で保存しておき、重み値を与える場合にテーブルから読み出すよう処理形態を設定することも可能である。
【0041】次に、水源Sから給水点DPに水を送る主幹線Mを選択するための処理を説明する。この処理を行う際には前述のように管路情報ファイルFaからの情報に基づいて管網全体PNをディスプレイ1に表示すると共に、このように表示された状態において、図19のフローチャートに示すように本発明の主幹線探索手段としての主幹線探査ルーチンを実行することで可能になる。つまり、このルーチンが実行されると、給水点DPを選択すべき旨の表示が行われ、この指示に従って、マウス5やキーボード4の操作によってカーソルを病院や地震時に住民が避難する学校や公共施設や、火災発生時に効率的な消火を可能にする位置の消火栓等の位置にセットしてマウス5のスイッチを操作する等の操作により給水点DPの指定を行うものとなる(#401ステップ)。
【0042】この指定を行う際には図18に示す如く、ディスプレイ1に対して別のウインドウW2を開き、このウインドウW2内に拡大した管網を表示した状態で給水点DPを指定することも可能である。そして、図17に模式的に示された管網PNにおいて、破線で示す経路(主幹線M)に最大の流量が送られるものを例に挙げると、給水点DPが指定されると、この給水点DPに最も近い位置の交点P1が抽出されると共に、この交点P1に接続する全ての経路を抽出し、次に、このように抽出した複数の経路夫々の流向と流量とを水理解析によって求め、この交点に対して水を送り込む経路のうち、最大流量となる経路を抽出する処理を行う。次に、このように抽出した経路における上流側の交点P2を求め、この交点P2おいても接続する全ての経路を抽出し、その経路の流向と流量とを水理解析によって求めて、最大流量となる経路を抽出する処理を、その経路が水源Sと直結することが判別するまで、同図では交点P3〜P6について順次求め、経路が水源Sと直結することが判別した時点で(#402〜#405ステップ)、交点を抽出する処理を停止して、これまで抽出した経路と、最後に抽出された経路を主幹線Mに設定してディスプレイ1に表示し(図を参照)、更に、この給水点DPの名称を付加して、この給水点DPに対する主幹線Mを構成する複数の管路を識別する情報をメモリストア(保存)する処理を行うものとなっている(#408、#409ステップ)。
【0043】このように抽出された主幹線Mはディスプレイ1に表示された管網PNと重複して表示されるものとなっており、この表示の際には主幹線を示す管路の色を異ならせることや、ブリンクさせることにより強調される。又、主幹線は前述のように水源Sから給水点DPに至って形成された複数を管路の組み合わせたものとなっており、前述した管路を識別する情報は、これらの管路を特定するための情報が連続した構造となり、オペレータはこれらの給水点DPに対応する主幹線Mを構成する管路についてオペレータが任意に重要度点数(N)を設定する操作を行うことになる。又、耐震化費用算出処理(#C’)では耐震化想定処理(#C)で耐震化を想定した各管路の布設替えを行う際の夫々の工事費用を積算した金額が保存される。
【0044】第2推定処理(#D)は、耐震化想定処理(#C)で管路の一部が耐震化した点が異なるだけで、行われる処理は前述した第1推定処理(#A)と変わりないものとなっており、この後に行われる被害の推定処理(#E)も前述した被害の推定処理(#B)と変わりないものとなっている。
【0045】そして、比較処理(#F)では、被害の推定処理(#B)で推定した断水領域と断水率と被害の推定処理(#E)で推定した断水領域と断水率とを比較する処理であり、出力処理(#G)その比較結果を、例えば、図20に示す如く、ディスプレイ1に対してウインドウW3を開き「耐震化前」と「耐震化後」との断水人口・断水率を数値で表示すると同時に、管網PNにおいて断水する領域の表示を行い(図中のハッチングの領域)、オペレータが容易に被害の比較を把握できるものにしている。又、このシステムでは比較結果や耐震化に必要な工事費用をプリンター6でプリントすることも可能に構成されている。
【0046】このように、本発明では、地震情報に基づいて管網PNを構成する管路の破損管路を推定するよう基本的な処理形態が設定されているので、震源が異なる地震や、震源が同じでも震度が異なる地震に対するシミュレーションを容易に行えるばかりでなく、このように推定された被害管路を基にした断水人口・断水率を求めて保存しておき、又、推定された被害管路を予め設定されたルールに基づいて耐震化する想定を行い、このように耐震化が想定された管路に対する地震の被害から断水人口・断水率を求めて、保存していた断水人口・断水率と比較することにより、耐震化前と耐震化後との管網の評価を対比した状態で行え、又、耐震化に必要な工事費用の算出まで行えるものとなっている。
【0047】特に、地震に対する被害管路を推定する際に、メッシュ状に分割形成された複数の領域Z毎に、その領域Zに含まれる管路の被害確率を求め、乱数との多数回数の比較により被害管路を推定するので想定が容易で確率の理論に基づいた無理のない管路を抽出するものとなり、このように抽出した被害管路の水圧から漏水量を求める処理と、この漏水量に基づいて水圧を求める処理とを繰り返して(反復して)収束するまで行うことで精度高く管路の水圧を求め得るものとなっており、しかも、地震により推定された複数の被害管路のうち、耐震化すべき管路を予め設定されたルールに従って選択するので選択に手間が掛からないものとなり、このルールに基づいた選択の結果、断水人口・断水率の改善を図るものばかりでなく、被害を受けやすい管路の被害を低減し、老朽度の高い管路の耐震化を促進し、地震災害時には復旧工事に時間を掛けずに済むものとし、地震災害時には病院や公共施設への給水を維持し、地震災害時には断水領域を小さくし、地震災害時には管網PN全体での圧力低下を小さくするものとなっている。又、市町村で管網PNを管理するための管路情報ファイルFaを用いることが可能であるので特別に管網PNをデータ化する必要がなく簡便に処理を行えるものとなっている。
【0048】そして、管網中から病院や公共施設への給水を維持するための主幹線Mを抽出する場合には、ディスプレイ1に表示された管網中に給水点DPを指定する操作を行い、主幹線探索の処理を実行するだけで、主幹線Mが抽出されるものとなっている。
【0049】〔別実施の形態〕本発明は上記実施の形態以外に、例えば、実施の形態の図3に記した制御のステップのうち第2推定処理(#D)を、第1推定処理(#A)で行ったシミュレーションを行わずに管路を耐震化したこと、つまり、破損した管路を復旧したのと同様の状態で断水人口・断水率を求めるよう実施することも可能である。このように処理形態を設定することにより、前述のようにシミュレーションを2度実行せずに済み、処理時間の短縮化を可能にするものとなっている。
【0050】又、本発明は耐震化処理を行う場合の布設替え管路の費用算出が行え耐震化工事費用の算出も容易となる。
【出願人】 【識別番号】500232031
【氏名又は名称】株式会社水道管路総合研究所
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成12年5月22日(2000.5.22)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開2001−329574(P2001−329574A)
【公開日】 平成13年11月30日(2001.11.30)
【出願番号】 特願2000−150013(P2000−150013)