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【発明の名称】 吊りフックを備えた油圧ショベル
【発明者】 【氏名】西村 悟

【氏名】永原 拓巳

【要約】 【課題】運転者の視認性を向上させて良好なクレーン作業が実施できると共に、バケットシリンダの保持力を確保して吊り荷重によるバケットの自由落下を未然に阻止することができると共に、クレーン作業の安全性を図った吊りフックを備えた油圧ショベルを提供する。

【解決手段】吊りフックは、アームの先端にバケットを取り付けるアームトップピンに配され、バケット掬い面側に吊り下げられている。バケットシリンダ(9) の少なくともヘッド側にはシリンダ内圧を保持して前記バケットの自由落下を防止するバケット落下防止弁(20)が備えられている。前記バケットをアームの背面側に最もダンプさせた状態で吊りフックによるクレーン作業を行なう。クレーン作業時に万一、前記バケットシリンダ(9) における保持圧発生側の油室に接続された油圧ホースが外力により破断したとしても、前記バケット落下防止弁(20)が瞬時に機能して、ヘッド側の油室と外部の油路とが完全に遮断され、ヘッド側の保持圧を確実に維持して、バケットの下方への急激な回動が阻止される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 旋回体上で起伏するブーム、同ブームの先端に連結され、垂直方向に揺動するアーム及び同アームの先端に取り付けられ、同じく垂直方向に揺動するバケットを備えた油圧ショベルであって、前記アームの先端に前記バケットを取り付けるアームトップピンに配され、アーム先端部に吊設される吊りフックと、前記ブーム、アーム及びバケットはそれぞれが作動シリンダにより独立して作動され、前記バケット用のシリンダの少なくともヘッド側に、ヘッド側の保持圧を維持して前記バケットの下方への自由回動を防止するバケット落下防止手段と、が設けられてなることを特徴とする吊りフックを備えた油圧ショベル。
【請求項2】 前記アーム用のシリンダのボトム側に、ボトム側の保持圧を維持して、前記アームの下方への自由回動を防止するアーム落下防止手段が設けられてなる請求項1記載の吊りフックを備えた油圧ショベル。
【請求項3】 前記アームの背面とは反対側の先端面には、開口を有し、前記吊りフックを格納可能な吊りフック収容部と、前記開口の周縁部に配される補強部材と、前記吊りフックのフック部を引っ掛けて係止させる係止部材と、を有してなり、前記アームトップピンはアームの先端に回動可能に支持され、前記吊りフックの基端がアームトップピンに軸支されてなる、請求項1記載の吊りフックを備えた油圧ショベル。
【請求項4】 前記吊りフックは、同アームトップピンを回動中心として回転駆動するフック回転駆動機構に連結されてなる請求項3記載の吊りフックを備えた油圧ショベル。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の技術分野】本発明は吊りフックを備えた油圧ショベルに係わり、特に、バケットシリンダの保持力を維持して吊りフックによるクレーン作業時の安全性を確保した吊りフックを備えた油圧ショベルに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、油圧ショベルは土砂の掘削作業や運搬作業等の各種の作業に使われている。一方、土砂の掘削作業や運搬作業等の他に、クレーン作業を可能にした油圧ショベルがある。クレーン機能をもつ油圧ショベルは、例えば実公昭58−11826号公報に開示されている。同公報に開示された油圧ショベルは走行体と、同走行体上に垂直軸線回りに旋回自在に装着された旋回体と、同旋回体に装着された作業機とを備えている。この作業機は前記旋回体に取り付けられたブームシリンダにより上下方向に起伏させるブームと、同ブームに取り付けられたアームシリンダにより前記ブームの先端を支点として上下方向に揺動させるアームと、同アームに取り付けられたバケットシリンダにより左右一対の2節リンクを介して前記アームの先端を支点として上下方向に揺動させるバケットと、バケット掬い面側のアーム先端に吊り荷を吊り上げ・吊り下げる吊りフックとを有している。
【0003】前記旋回体の後部寄りにはエンジンが搭載されると共に、同エンジンにより駆動される可変容量形ポンプと、同可変容量形ポンプからの吐出圧油を前記作業機の作動シリンダに選択的に供給して駆動する複数の操作弁とを備えている。同操作弁は前記作業機の作動シリンダに対応して接続されている。前記旋回体の前部中央から左右のいずれかに偏った位置に配されたキャブには前記操作弁を独立して切換える複数の操作レバーが配されている。
【0004】前記バケットの後壁部の左右にはバケットランドセルが設けられている。前記アームの先端部は左右に離間した二股状に形成されている。同二股部の内側には前記バケットランドセルの一端を回動自在に支持するアームトップピンが設けられている。前記バケットランドセルの他端は左右の上記リンクを介して前記バケットシリンダのロッド端に揺動可能に支持されている。
【0005】前記ブームの背面には一対のウインチが設けられている。前記ブームの先端とアームとを回動自在に支持するアーム用支軸には一対の第1プーリが支承されており、前記アームトップピンには一対の第2プーリが支承されている。各ウインチの2本のワイヤは前記ブーム及びアームの内部に導かれて各第1及び第2プーリに巻き掛けられると共に、前記吊りフックのブラケットに支承された一対の第3プーリに巻き掛けられて、そのワイヤの先端が前記アームに固定されている。前記吊りフックは前記ワイヤを介してアーム下面側に懸垂支持され、前記ウインチによりワイヤを引込み・引出すことにより吊りフックが上下動する。
【0006】クレーン作業時には、前記バケットと前記吊りフックとの干渉を避けるため、前記バケットの最大ダンプ位置となるまで前記バケットシリンダを収縮動作させ、前記バケットを前記アームの背面側に最もダンプした姿勢を維持させながら、前記吊りフックによるクレーン作業を行う。前記吊りフックの未使用時は、前記ウインチによりワイヤを巻き上げて前記アームの二股部の内側に設けられた引っ掛けバーに前記吊りフックを引っ掛けて係止させ、その吊りフックを前記アームの二股部内に格納する。
【0007】一方、土砂の掘削作業や運搬作業の際には、前記吊りフックを格納した状態で、前記ブームシリンダ及びアームシリンダを作動させて前記ブームとアームとをそれぞれ上下に回動させ、同時に前記バケットシリンダを作動させて前記バケットをアーム先端で上下方向に首振り動作させる。油圧ショベルは地盤面を所望の深さまで掘削して、その掘削土砂をダンプ位置まで運搬してダンプする。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記油圧ショベルによりクレーン作業を行うには、既述したとおりバケットと吊り上げワイヤとの干渉を避けるべく、バケットシリンダを収縮限まで収縮動作して、バケットを最もダンプさせた位置に保持する。そのため、バケットシリンダのヘッド側に常に最大保持圧が発生している。
【0009】このバケットのダンプ姿勢を維持した状態で、例えば、仮にバケットシリンダのヘッド側の油室に接続された油圧ホースが破損すると、バケットシリンダのヘッド側の保持圧が瞬時に失われ、バケットが下方向に自由回動するし、吊り荷の吊り上げ途中であれば、吊り上げワイヤに大きな衝撃を与え、同ワイヤを損傷させ或いは切断しかねない。その結果、吊りフック及び吊り荷を伴ってワイヤが大きく揺動し或いは落下する。
【0010】一方、油圧ショベルの本来的作業である掘削及び運搬の作業中、例えば掘削の途中に、前記バケットシリンダのボトム側の油室に接続された油圧ホースが外力により破損したとしても、バケットによる掘削効率が低下するに過ぎないため、作業員などに対する危険性は少ない。また、ダンプ位置までの搬送途中で前記油圧ホースが破損するようなことが発生しても、せいぜいバケット内の土砂が落下する程度であって、周辺への影響は極めて少ない。
【0011】しかるに、ダンプ時には、前記バケットシリンダを収縮方向に動作させるため、バケットの自重や土砂の重量によりヘッド側に保持圧が発生している。このとき、例えば、前記バケットシリンダのヘッド側の油室に接続された油圧ホースが外力により破損されたとき、同バケットシリンダの保持圧が瞬時に失われ、前記バケットが下方向に急激に回動し、作業周辺の機器などの損傷を招きかねない。
【0012】通常、従来の油圧ショベルは、ブームシリンダの伸長動作によりブームを起立方向に作動させ、収縮動作によりブームを倒伏方向へと作動させる。前記ブームを起立状態としても、ブーム、アーム及びバケットからなる作業機の重心位置が機体の前方にあるため、ブームシリンダにはブームを倒伏させる収縮方向の力が作用し、常にそのボトム側に保持圧が発生している。従って、前記ブームシリンダのボトム側に接続された油圧ホースが外力により破損すれば、同ブームシリンダによる保持力が失われ、ブームは倒伏方向に急激に回動する。通常は、この急激な回動を防止するため、前記ブームシリンダのボトム側の内圧を保持する落下防止弁が装着されている。
【0013】また、前記油圧ショベルはアームシリンダの伸長動作によりアームをブームとの連結部を支点として下方に回動させ、収縮動作によりアームを上方へと回動させる。例えば、掘削を終えてダンプ作業に移行する最中に、前記アームシリンダのヘッド側の油室に接続された油圧ホースが外力により破損した場合には、同アームシリンダの保持圧が失われ、前記バケットと一緒に前記アームが下方向に急激に回動する。この急激な回動を避けるため、通常はアームシリンダのヘッド側には落下防止弁が装着されている。
【0014】ところで、土砂の掘削作業の際には、前記ブームシリンダ及びアームシリンダを作動させてブームとアームとをそれぞれ上下に回動させ、同時にバケットシリンダを作動させてバケットをアーム先端で首振り動作させる。このときのアーム先端部の動作範囲は、下方に回動したときのアームの垂直姿勢から機体前方側の回動上限位置までの回動範囲内であり、掘削時にはバケットシリンダが伸長動作されるため、前記バケットシリンダには常に収縮方向の力が作用してボトム側に保持圧が発生している。
【0015】掘削土砂をダンプ位置まで運搬する際には、前記バケットシリンダを伸長動作させ、バケットをアーム側に掻い込んだ状態で停止したときの姿勢(最大掘削姿勢)でダンプ位置まで運搬する。この場合に、アームの情報への回動のため、運搬初期では前記保持圧は最大となり、ダンプ位置に達する間にその保持圧は漸減する。
【0016】吊り荷を吊り上げるときのアーム先端部の動作範囲も、既述したとおり油圧ショベルのアームは垂直姿勢から機体前方側の回動上限位置までの回動範囲内に制限されている。そのため、掘削作業や運搬作業と同様に、クレーン作業時には常にアームシリンダのヘッド側に保持圧が発生している。
【0017】アームの垂直姿勢から機体前方側の回動上限位置までの回動範囲内で吊り荷を吊り上げるとき、アームシリンダは収縮方向に動作してアームを上方向に回動させる。この回動の途中で、例えば、前記アームシリンダのヘッド側の油室に接続された油圧ホースが外力により破損したときには、同アームシリンダのヘッド側の保持圧が瞬時に失われ、前記アームが下方向に急激に回動する。それに追随して、吊り上げた吊り荷は前記アームの先端を支点として大きく揺動する。
【0018】一方、機体の前方直近位置までアームを回動させてクレーン作業や掘削等の作業が可能とあれば、オペレータの目前で作業ができるようになり、作業能率の点から一段と好ましい。しかしながら、現状では前述のごとくアームの上方から下方への回動がアームの垂直姿勢となる位置よりも前方に制限されているため、機体の前方直近位置までアームを回動させることができず、掘削作業能率を向上させることが難しい。また、吊り荷を吊り上げる際には、前記アームの回動範囲が制限されていることから、吊りフックをアームの回動範囲内で移動させざるを得ない。これがため、前記アームの回動範囲が小さいことに伴って機体とは離れた位置でクレーン作業を行うことになり、クレーン作業の効率が著しく低下する。
【0019】また、上述の公報に開示されたアームの先端部は、左右に離間した二股部の内側に設けられたアームトップピンに上記バケットランドセルの一端を回動自在に支持すると共に、前記アームトップピンに設けられた一対の第2プーリに巻き掛けられた2本のワイヤを介して前記吊りフックを吊り下げている。このため、アーム先端部はバケットや吊りフックの自重、吊り荷重等に耐え得る強度を有していなければならない。更にまた、クレーン作業から掘削作業に移行するとき前記吊りフックを人手を要することなく格納させることが望ましい。
【0020】本発明は、かかる従来の課題を解消すべくなされたものであり、その具体的な目的は、バケットシリンダの保持力を確保してバケットの自由回動を未然に防止することができると共に、作業機の作業範囲を拡大可能にした吊りフックを備えた油圧ショベルを提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段及び作用効果】本件請求項1に係る発明は、旋回体上で起伏するブーム、同ブームの先端に連結され、垂直方向に揺動するアーム及び同アームの先端に取り付けられ、同じく垂直方向に揺動するバケットを備えた油圧ショベルであって、前記アームの先端に前記バケットを取り付けるアームトップピンに配され、アーム先端部に吊設される吊りフックと、前記ブーム、アーム及びバケットはそれぞれが作動シリンダにより独立して作動され、前記バケット用のシリンダの少なくともヘッド側に、ヘッド側の保持圧を維持して前記バケットの下方への自由回動を防止するバケット落下防止手段とが設けられてなることを特徴とする吊りフックを備えた油圧ショベルにある。
【0022】クレーン作業時にバケットと吊りフックとの干渉を避けるため、前記バケットをアーム背面側に最もダンプさせた状態(最大ダンプ位置)となるまで上記バケットシリンダを収縮動作させる必要があり、前記バケットの掬い面側を下方に向けた姿勢で前記吊りフックによるクレーン作業を行なう。この吊り荷を吊り上げるとき、そのブーム及びアームの回動範囲内の殆どの領域で、前記バケットには常にシリンダ伸長方向の力が作用して前記バケットシリンダのヘッド側に最大保持圧が発生している。
【0023】本発明によれば、バケット用のシリンダの少なくともヘッド側にバケット落下防止手段を直付けしているため、仮にクレーン作業時にバケットシリンダのヘッド側に接続された油圧ホースが外力により破断したとしても、前記バケット落下防止手段が瞬時に機能して、ヘッド側の油室と外部の油路とが完全に遮断され、ヘッド側の保持圧を確実に維持して、バケットの下方への急激な回動が阻止される。
【0024】また、前記操作弁を作動させているときに、例えばヘッド側に接続された油圧ホースが破断したことを検知して、前記操作弁を不作動位置に自動的に復帰させることもできる。この場合も前記バケット落下防止手段によりヘッド側の保持圧が確実に維持されると共に、圧油の供給と排出が自動的に停止する。
【0025】前記吊りフックはバケットとアームとを取り付けるアームトップピンに配され、アーム先端部に吊設されており、クレーン作業時にはバケットがダンプ姿勢にあり、フックが運転者の前方で直視できるため、バケットにより前方視界が妨げられず、クレーン作業が効率よく且つ安全になされる。
【0026】一方、土砂の掘削作業を行うときは、上記アームシリンダの作動によりアームを上下方向に回動させる一方、バケットシリンダの作動により前記バケットを上下に首振り動作させる。バケットシリンダのヘッド側及びボトム側の双方に、前記落下防止手段を設ける場合には、前記バケットシリンダを収縮動作させてダンプ位置で作業するとき、又は前記バケットシリンダを伸長動作させて掘削位置で作業するとき、たとえ前記バケットシリンダにおける保持圧発生側に接続された油圧ホースが外力により破損した場合があっても、前記バケット落下防止手段によりシリンダの内部を完全に閉鎖して前記バケットシリンダの最大保持圧を維持する。このため、前記バケット等の自重や掘削土砂の荷重等により作用するシリンダ伸長方向或いは収縮方向の保持圧を維持することができ、同バケットが急降下することを確実に防止することができ、作業の安全性を高めることができる。
【0027】例えば、掘削土砂をダンプ位置まで運搬する際には、前記バケットシリンダを伸長動作させ、バケットをアーム下面側に掻い込んだ状態で停止した最大掘削姿勢に維持する。この場合には、前記バケットには常にシリンダ収縮方向の力が作用して前記バケットシリンダのボトム側に保持圧を発生させている。そのダンプ位置で、前記アームシリンダを収縮動作して前記アームを上方向に回動させる一方、前記バケットシリンダを収縮動作して前記バケットを最大掘削姿勢から最大ダンプ姿勢に移行させる。このダンプ姿勢にあるとき、前記バケットシリンダには常に伸長方向の力が加わり、前記バケットシリンダのヘッド側に保持圧を発生させている。
【0028】前記バケットを最大掘削姿勢から最大ダンプ姿勢に移行させるとき、たとえ前記バケットシリンダのヘッド側に接続された油圧ホースが外力により破損しても、前記バケット落下防止手段によりシリンダの内部を完全に閉鎖して前記バケットシリンダの最大保持圧を維持する。このため、シリンダ伸長方向の保持圧を支持することができることに加えて、同バケットが下方向に急激に回動することを確実に防止することができ、作業の安全性を高めることができる。
【0029】請求項2に係る発明は、前記バケットシリンダに加えて、前記アーム用のシリンダのボトム側に、ボトム側の保持圧を維持して、前記アームの下方への自由回動を防止するアーム落下防止手段が設けられている。
【0030】アームを機体の前方直近位置まで回動させる場合には、アームが下方へ回動して垂直姿勢位置となり、その後に手前に向けて再び上方へと回動することになり、アームシリンダの保持圧は前記垂直姿勢位置を挟んでヘッド側からボトム側へと移行する。上述のようにアームが前方から手前側に回動できる範囲を、その垂直姿勢となる位置までに制限される理由は、現状はヘッド側だけでアームシリンダの保持圧が保障されているがためである。
【0031】しかるに、クレーン機能を備えた油圧ショベルでは、掘削作業や運搬作業だけではなく、特にクレーン作業時にも機体の直近位置で作業が行えるようにすることが好ましく、そのためにはブーム、アーム及びバケットの各シリンダに最大保持圧がかかった場合にも、その保持圧を確実に維持すると共に、万一、油圧ホースが破損するようなことが起こったときも、その保持圧を維持すべく対応する油室側に、ブーム、アーム及びバケットの落下防止手段を設けることが望ましい。
【0032】アームが下方に回動して垂直姿勢に達するまでは、アームシリンダは伸長動作するが、このときアームの保持圧は常に同シリンダのヘッド側に発生している。そのため、従来はアームシリンダのヘッド側に落下防止弁を装着している。しかるに、クレーン作業であれ、掘削作業であれ、アームが前記垂直姿勢から機体後方側の回動上限位置までの回動させる場合には、アームシリンダは伸長動作を続ける一方で、そのアームの保持圧はボトム側に移る。従って、このようにアームを機体後方側の回動上限位置まで回動させて、これを保持するには、本発明のようにアームシリンダのボトム側にもヘッド側と同様に落下防止手段を装着する必要がある。
【0033】本発明にあっては、上記バケットと同様に、前記アーム落下防止手段はアーム用のシリンダの少なくともボトム側に直付けされており、アームが機体後方側の最大回動位置まで回動させている途中で、アーム用シリンダのボトム側に接続された油圧ホースが破断して、ボトム側の油圧が抜けようとしても、前記アーム落下防止手段によりシリンダのボトム側油室と外部の油路とが完全に遮断され、同ボトム側油室の保持圧が維持される。
【0034】これは上記アームシリンダの作動によるアーム垂直姿勢を含む機体の前方側だけではなく、機体の後方側の機体直近位置でクレーン作業を行なうことができることを意味する。機体近傍でクレーン作業を行なうことができ、前記吊りフックと吊り荷との位置関係が目視により確認できるために作業効率を著しく向上させることができる。また、同時にクレーン作業の範囲が広がり、狭小な現場でのクレーン作業を効果的に且つ安全に行うことができる。
【0035】また、土砂の掘削・運搬作業を行うとき、上記アームシリンダの作動によりアームを機体前方側の作業範囲内だけではなく、機体後方側を含む全回動範囲内で上下方向に回動させる一方、バケットシリンダの作動により前記バケットを上下に首振り動作させる。従来のごとく、アームを垂直姿勢から機体前方側へと回動させる回動範囲内だけで作業を行なう場合に較べて、上記構成を備えることにより、前記アームの回動範囲が大きくなることと相まって、前記バケットの掘削回動範囲を大きくすることができ、その掘削範囲も拡がる。
【0036】また同時に、前記アームの限界作業範囲を従来のごとく設定する必要もなくなり、前記アームシリンダの作動によりアーム垂直姿勢を含む機体前方側及び機体後方側の回動限度内を自由に回動させることができるため、安全性が担保されて作業範囲を拡大させることができ、効率的な土砂掘削及び運搬作業が行える。
【0037】アームシリンダのヘッド側及びボトム側の双方に、前記落下防止手段を設ける場合には、前記アームや掘削土砂などの荷重によりシリンダ伸長方向及び収縮方向の保持圧が前記落下防止手段により瞬時に支持されるため、前記アームが下方向に急激に回動することが防止でき、拡大された上記全作業範囲において安全性が確保される。
【0038】請求項3に係る発明は、前記アームの背面とは反対側の先端面には、開口を有し、前記吊りフックを格納可能な吊りフック収容部と、前記開口の周縁部に配される補強部材と、前記吊りフックのフック部を引っ掛けて係止させる係止部材とを有してなり、前記アームトップピンはアームの先端に回動可能に支持され、前記吊りフックの基端がアームトップピンに軸支されている。
【0039】本発明にあっても、クレーン作業時の機能は上述の機能と実質的に変わるところがない。既述したように、例えば、仮にクレーン作業時にバケットシリンダのヘッド側に接続された油圧ホースが破断したとしても、上記バケット落下防止手段が瞬時に働いて、ヘッド側の油室と外部の油路とが完全に遮断され、ヘッド側の保持圧を確実に維持して、バケットの下方への急激な回動が阻止される。
【0040】上記構成によれば、前記アームにおける吊りフック収容部の開口周縁部を閉鎖する補強部材を有しているため、アーム先端の強度を充分に確保することができる。前記アームの吊りフック収容部内に吊りフックを格納できるため、掘削作業時に、前記バケットと前記吊りフックとの干渉を避けることができ、前記吊りフックが邪魔にならず、障害物に当たって損傷することが防止できると共に、前記吊りフック収容部内への土砂の浸入が防止できる。
【0041】請求項4に係る発明にあっては、前記吊りフックは、同アームトップピンを回動中心として回転駆動するフック回転駆動機構に連結されていることを規定している。
【0042】上記構成によれば、上記ブームやアームの内部空間を有効に利用して、例えば前記ブームやアームの内部にワイヤ等が巻き掛けられたプーリやそのプーリを連動させるモータ等を有する簡単な構造の回転駆動機構を設けることができる。クレーン作業から掘削作業に移行するとき、人手を要することなく前記吊りフックを前記アームトップピンを回動中心として上記吊りフック収容部内に自動的に格納することができる。
【0043】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。図1〜図6は本発明の代表的な実施形態を示している。図1は同吊りフックを備えた油圧ショベルの一例を模式的に示す全体図であり、図2は同油圧ショベルにおける吊りフック収納部を示す部分拡大図、図3は図2のA−A線断面拡大図であり、図4は同油圧ショベルの油圧回路図であり、図5は同油圧ショベルにおける作業機の動作態様を模式的に示す全体図であり、図6は同油圧ショベルにおける吊りフックの回転駆動機構の一例を示す模式図である。
【0044】図1において、第1実施形態における油圧ショベル1は、走行体2、同走行体2上に垂直軸線回りに旋回自在に装着された旋回体3、同旋回体3に設置されるキャブ3aやエンジン3c等を備えた機体13と、同機体13に取り付けられた作業機4とを備えている。同作業機4は、前記機体13の略中央から立ち上がるブーム6と、同ブームの自由端に枢支され、上下方向に揺動するアーム8と、同アーム8の先端にアームトップピン8aに支持され、上下方向に首振り動作するバケット11とを備えている。
【0045】ブーム6は旋回体3との間に設けられた一対のブームシリンダ5,5により、その基端を中心として上下方向に起伏動作し、アーム8はブーム6との間に取り付けられたアームシリンダ7により、ブーム6の先端を支点として上下方向に揺動し、バケット11は左右一対の2節リンク10,10を介して、アーム8との間に取り付けられたバケットシリンダ9により、前記アーム8の先端を支点として上下方向に揺動させる。
【0046】前記バケット11の後壁部の左右にはバケットランドセル11a,11aが設けられている。同バケットランドセル11aの一端は前記アーム8のアームトップピン8aを介して揺動可能に支持されている。同バケットランドセル11aの他端は左右の前記リンク10,10を介して前記バケットシリンダ9のロッド端に揺動可能に支持されている。
【0047】図2及び図3に示すように、前記アーム8の下面側先端部は、その長手方向後側に形成された開口8bを有しており、前記吊りフック12を格納可能な吊りフック収容部8cが備えられている。同吊りフック収容部8cの内部には前記アームトップピン8aを挿通可能な円筒状をなす左右一対の第1ボス部8d,8dが対向して突設されている。同第1ボス部8dの後方の前記アーム8の内部には左右のリンク10,10の一端を回動自在に支持する支持ピン18を挿通可能な円筒状をなす単一の第2ボス部8eが固着されている。各第1及び第2ボス部8d,8eの間の前記アーム8の左右側壁部には挿通孔8fが穿設されており、円柱状をなす係止部材14がロックピン14aにより挿脱自在に固定されている。
【0048】前記吊りフック12は前記アーム8のアームトップピン8aに支持された筒状をなすブラケット15を介して前記第1ボス部8d内に上下に回動自在に固定されている。前記ブラケット15には、その回動軸方向に沿って一対の腕部15a,15aが平行に突設されている。前記吊りフック12は各腕部15a,15aに架設された取付ピン15bを介して左右に揺動自在に軸支された基部12aと同基部12aに突設されたフック部12bとを有している。同フック部12bの開口部に有する外れ止め片12cはキャブ方向に向かって配されている。
【0049】前記吊りフック収容部8cの開口周縁部には、一端が滑らかに湾曲した板状をなす補強部材16が4本のボルト17,…,17により固定されている。この補強部材16は前記アーム8の下面側先端部の形状と合致した形状をなしている。前記補強部材16の略中央部には前記吊りフック12を挿脱可能な略U字状をなす挿脱開口16aが形成されている。前記吊りフック収容部8cの開口周縁部を閉鎖する補強部材16を有しているため、前記アーム8の先端開口の強度を充分に確保することができる。
【0050】クレーン作業時には、上記吊りフック12の外れ止め片12cを上記アーム8の吊りフック収容部8cに取り付けられた係止部材14から抜き取り、吊りフック収容部8c内に格納された吊りフック12を回動させ、吊りフック収容部8c内から外部に露呈させる。吊りフック12の未使用時は、前記吊りフック収容部8c内に格納され、吊りフック12は、前記外れ止め片12cを介して前記係止部材14に引っ掛けて係止される。
【0051】上記構成を採用することにより、前記吊りフック収容部8c内に前記吊りフック12を格納できるため、掘削作業時に、前記バケット11と吊りフック12との干渉を避けることができ、同吊りフック12が邪魔にならず、しかも障害物に当たって損傷することが防止できると共に、前記吊りフック収容部8c内への土砂の浸入が防止できる。また、前記吊りフック12は前記アームトップピン8aのバケット掬い面側に吊下げて配されており、運転者が前記バケット11により前方視界を遮られず、前記吊りフック12を直視することができるため、クレーン作業が効率よく且つ安全になされる。
【0052】図4に示すように、前記油圧ショベル1は可変容量形ポンプ24と、上記作業機4の各シリンダ5,7,9に前記可変容量形ポンプ24からの吐出圧油を選択的に供給する3つの操作弁25〜27と、同操作弁25〜27を独立して切換え操作する3つのマニュアル操作部28〜30とを備えている。更に、前記油圧ショベル1は、上記吊りフック12が前記アーム8の吊りフック収容部8c内に格納されていないとき、即ちクレーン作業時には前記バケット11の掘削動作(シリンダ伸長動作)を禁止する電磁切換弁31と、安全荷重を確認するためのブームシリンダ5のボトム側の油圧を検出する圧力センサ32とを備えている。
【0053】前記可変容量形ポンプ24は斜板式ポンプからなり、図示せぬ容量制御部材により斜板24aの傾斜角度を変化させて吐出油量を制御する。前記可変容量形ポンプ24から吐出される圧油は出力回路33を経て前記操作弁25〜27に選択的に供給され、各シリンダ5,7,9からの戻り油はドレン回路34を介して油タンク35に還流する。
【0054】前記操作弁25〜27は前記ブームシリンダ5に対応するブーム操作弁25、前記アームシリンダ7に対応するアーム操作弁26、及び前記バケットシリンダ9に対応するバケット操作弁27により構成されている。これらの操作弁25〜27は操作位置によりボトム側、ヘッド側又は不作動位置(中立位置)に切換える4ポート3位置クローズドセンター形の流量制御弁からなる。
【0055】前記マニュアル操作部28〜30は、前記ブーム操作弁25に対応するブーム操作部28、前記アーム操作弁26に対応するアーム操作部29及び前記バケット操作弁27に対応するバケット操作部30からなっている。この操作部28〜30は同じ構造及び機能をもっている。各操作部28〜30は操作レバー36と、同操作レバー36の操作量(角度)に応じてパイロット油圧を出力する図示せぬ第1及び第2パイロット比例制御弁を有している。各操作部28〜30は図示せぬセンサーの作動により第1及び第2パイロット回路37,38へのパイロット圧油の供給を断つようになっている。
【0056】前記操作レバー36は、上記旋回体3の前部中央から左右のいずれかに偏った位置に配された運転室3a内に配されている。同じく図示を省略したパイロットポンプから前記パイロット比例制御弁に供給されるパイロット油は前記操作レバー36の操作量に従って増え、その増量したパイロット流のパイロット圧により前記操作弁25〜27のスプールの開度が大きくなり、その開度に従って各シリンダ5,7,9に供給する吐出圧油の流量が増える。
【0057】前記ブーム6及びアーム8の各操作部28,29の第1パイロット比例制御弁からのパイロット圧油は第1パイロット回路37を介して各操作弁25,26の第1受圧部25a(下げ側)、26a(ダンプ側)にそれぞれ作用する。前記第2パイロット比例制御弁からのパイロット圧油は第2パイロット回路38を介して各操作弁25,26の第2受圧部25b(上げ側)、26b(掘削側)にそれぞれ作用する。
【0058】前記バケット操作部30の第1パイロット比例制御弁からのパイロット圧油は第1パイロット回路37を介して前記バケット操作弁27の第1受圧部27a(掘削側)に作用する。前記第2パイロット比例制御弁からのパイロット圧油は第2パイロット回路38から上記電磁切換弁31を経て前記バケット操作弁27の第2受圧部27b(ダンプ側)に作用する。
【0059】バケット11の掘削動作を禁止する電磁切換弁31のソレノイド31aは、上記ブーム6のボトム側油圧検出用の圧力センサ32や図示せぬブーム角度センサ、同じく図示せぬアーム角度センサ、上記アーム8の吊りフック収容部8c内に設けられた図示せぬフック挿脱検出用のリミットスイッチやキャブ3aに配された同じく図示を省略したクレーンモードスイッチ等の出力信号に基づいて制御信号を出力する同じく図示せぬコントローラに電気的に接続されている。
【0060】前記コントローラは前記キャブ3a内のモニタ3b、ブザーやランプ等の図示せぬ警報表示装置に電気的に接続されている。このコントローラは前記圧力センサ32やブーム角度センサ等の各出力信号に基づいて実荷重を演算し、その演算値と予め決められた定格荷重値とを比較して吊り荷による負荷状態を監視している。吊り荷が過負荷状態であると判断されると前記警報表示装置が作動する。前記コントローラは図示せぬクレーンモードスイッチやリミットスイッチのオン・オフの組合せの関係等を記憶している。これらの信号を入力することにより制御プログラムの指令に基づいて上記電磁切換弁31のソレノイド31aを励磁又は消磁する。
【0061】前記電磁切換弁31のソレノイド通電時に、同電磁切換弁31は図4に示した位置の反対側位置に切換えられ、上記バケット操作弁27とバケット操作部30とを連通する第2パイロット回路38を閉鎖する。同第1パイロット回路37内のパイロット圧油は前記電磁切換弁31を介して上記油タンク35に戻る。このとき、前記バケット操作部30を前記バケット操作弁27の掘削側に操作しても、同バケット操作弁27の掘削側にパイロット圧は作用しない。これにより上記バケット11は掘削側に動かない。
【0062】本実施形態によれば、前記バケット操作弁27の接続口と前記バケットシリンダ9のヘッド側とを接続する第2油路40の油圧を検出する圧力センサ45が備えられている。前記電磁切換弁31は前記第2油路40に所定の油圧を超える油圧が生じたとき作動中の前記バケット操作弁27を図4に示した不作動位置に自動的に復帰させる機能をも有している。前記第2油路40内の油圧が変動すると、前記圧力センサ45により漏れの圧力を検出し、その油圧検出信号を上述の図示せぬコントローラに出力する。同コントローラでは前記圧力センサ45から出力された検出油圧値と予め決められた正常な油圧値とを比較して、前記第2油路40内の油圧が正常な油圧値であるか否かが判断される。前記第2油路40内に所定の油圧を超える油圧が生じたとき前記コントローラは前記電磁切換弁31に切換信号を出力する。
【0063】更に前記油圧ショベル1は、本発明の特徴部をなす落下防止手段20を各シリンダ5,7,9に直付けしている。この落下防止手段20は各シリンダ5,7,9を駆動する操作弁25〜27からの圧油を供給する図示せぬチューブを有する油圧ホースにそれぞれ接続されている。前記落下防止手段20はシリンダ内圧を保持して上記作業機4の自由落下を防止する機能をもっている。本実施形態にあっては、図1に示すごとく前記落下防止手段20は前記ブームシリンダ5のボトム側、前記アームシリンダ7のボトム側及びヘッド側、前記バケットシリンダ9のヘッド側にそれぞれ直付けされている。
【0064】図4に示すように、本実施形態における落下防止手段20は各シリンダ5,7,9内の圧油を遮断又は外部へ排出する絞り41cを有する切換弁41と、同切換弁41の前後を接続して上記可変容量型ポンプ24からの圧油を前記シリンダ5,7,9に供給するチェック弁42と、同シリンダ5,7,9内の設定圧力を保障する安全弁43とを備えている。各シリンダ5,7,9に直付けされる各落下防止手段20は、実質的に同じ構造と機能とを有している。従って、以下に説明する落下防止手段(以下、落下防止弁という。)20には同じ部材に対して同一の符号と部材名を付している。
【0065】前記バケットシリンダ9のボトム側と前記バケット操作弁27の接続口とは第1油路39を介して接続されている。前記バケットシリンダ9のヘッド側と前記バケット操作弁27の接続口とを接続する第2油路40は前記切換弁41を接続している。同切換弁41の第1受圧部41aは、上記電磁切換弁31を介して前記バケット操作弁27の第1受圧部27aと上記バケット操作部30の掘削側とを接続する第1パイロット回路37に接続されている。同切換弁41の第2受圧部41bは上記ドレン回路34に接続されている。
【0066】前記切換弁34は常に図4に示す閉位置に保持されており、前記バケット操作部30の操作により供給されるパイロット圧油により開位置に切換えられる。前記電磁切換弁31が図4に示す不作動状態にあるとき、前記バケット操作部30を掘削側に操作すると、前記第1パイロット回路37を介してパイロット圧油が前記切換弁41の第1受圧部41aに作用する。
【0067】前記切換弁41の前後を接続する通路44は前記チェック弁42を接続している。上記バケット操作部30を操作することにより上記可変容量形ポンプ24からの吐出油は、前記チェック弁42を介して前記バケットシリンダ9のヘッド側に供給される。前記チェック弁42の出力側の前記通路44と前記第2油路40との交差部は前記安全弁43を接続している。同安全弁43の出力側は前記ドレン回路34に接続されている。同安全弁43は常に閉位置に保持されている。同安全弁43は前記バケットシリンダ9内の圧力を予め設定された設定圧に維持する。前記バケット操作弁27が中立位置(不作動状態)にあるとき、前記安全弁43と前記チェック弁42と前記切換弁41とにより前記バケットシリンダ9のヘッド側を接続する第2油路40を閉鎖して、前記ヘッド側油室からの外部への圧油の流れが遮断される。
【0068】前記第1パイロット回路37は、上記吊りフック12が前記アーム8の吊りフック収容部8c内に格納されていないとき前記バケット11の掘削側動作を禁止する電磁切換弁31を接続している。上記バケット操作弁27の接続口に連通する第2油路40に接続された切換弁41の第1受圧部41aは、前記電磁切換弁31を介して上記バケット操作部30(掘削側)に連通された第1パイロット回路37に接続されると共に、その第2受圧部41bは前記ドレン回路34に接続されている。
【0069】上記電磁切換弁31が、図4に示す不作動状態にあるとき、上記バケット操作部30の操作レバー36を掘削側に操作すると、前記第1パイロット回路37を介してパイロット圧油が前記切換弁41の第1受圧部41a及び前記バケット操作弁27の掘削側に作用する。既述したごとくクレーン作業時のクレーンモードスイッチによる誤操作等に応答して前記電磁切換弁31が切換わると、前記第1パイロット回路37は閉鎖されることになる。そのため、前記バケット操作弁27にパイロット圧が作用せず、前記バケット操作部30の掘削側操作を不能にする。
【0070】いま、上記バケット操作部30をダンプ側に操作すると、前記第2パイロット回路38を介してパイロット圧油が前記バケット操作弁27の第2受圧部27bに作用する。同バケット操作弁27はダンプ側に切換えられる。上記可変容量形ポンプ24からの吐出圧油は、上記出力回路33、上記第2油路40及び通路44を介して前記バケット操作弁27の接続口から上記チェック弁42を経て上記バケットシリンダ9のヘッド側に供給される。一方の前記バケットシリンダ9のボトム側の圧油は前記第1油路39から前記バケット操作弁27の接続口を経て上記ドレン回路34を通り上記油タンク35に戻る。
【0071】これとは逆に、いま、前記バケット操作部30を掘削側に操作すると、前記第1パイロット回路37を介してパイロット圧油が前記バケット操作弁27の第1受圧部27a及び前記切換弁41の第1受圧部41aに作用する。前記バケット操作弁27は掘削側に切換えられ、前記切換弁41は開位置に切換えられる。前記可変容量形ポンプ24からの吐出圧油は前記第1油路39を経て前記バケットシリンダ9のボトム側に供給される。一方の前記バケットシリンダ9のヘッド側油室内の圧油は前記切換弁41の絞り41cにより流量が調整され、前記第2油路40を通り、前記バケット操作弁27の接続口から前記ドレン回路34を経て前記油タンク35に還流する。この戻り油は前記絞り41cにより流量が調整されるため、前記バケットシリンダ9を微速動作させることができる。
【0072】前記バケット操作部30の操作レバー36と上記アーム操作部26の操作レバー36とを互いを逆方向に操作するとき、前記バケットシリンダ9と上記アームシリンダ7とは実質的に同一方向に伸縮する。上記アームシリンダ7のヘッド側と上記アーム操作弁26の接続口とを接続する第1油路39は前記切換弁41を接続している。同切換弁41の第1受圧部41aは、前記アーム操作弁26の第2受圧部26bと上記アーム操作部29の掘削側とを接続する第2パイロット回路38に接続されている。同切換弁41の第2受圧部41bは上記ドレン回路34に接続されている。一方の前記第2油路40における前記切換弁41の第1受圧部41aは前記アーム操作部29(ダンプ側)に連通された第1パイロット回路37に接続されており、同第2受圧部41bは前記ドレン回路34に接続されている。前記切換弁41は常に閉位置に保持されており、前記アーム操作部29の操作により供給されるパイロット圧油により開位置に切換えられる。
【0073】前記アーム操作弁26が中立位置(不作動状態)にあるとき、前記安全弁43、前記チェック弁42、前記切換弁41により前記アームシリンダ7のヘッド側及びボトム側に接続する第1及び第2油路39,40を閉鎖して、前記ヘッド側及びボトム側油室からの外部への圧油の流れが遮断される。
【0074】いま、上記アーム操作部29をダンプ側に操作すると、前記第1パイロット回路37を介してパイロット圧油が前記アームシリンダボトム側の切換弁41の第1受圧部41a及び前記アーム操作弁26の第1受圧部26aに作用する。同アーム操作弁26はダンプ側に切換えられ、前記切換弁41は開位置に切換えられる。前記可変容量形ポンプ24からの吐出油は、前記第1油路39及び通路44を介して前記アーム操作弁26の接続口から前記チェック弁42を経て前記アームシリンダ7のヘッド側に供給される。一方の前記アームシリンダ7のボトム側油室内の圧油は、ボトム側の前記切換弁41の絞り41cにより流量が調整され、前記アーム操作弁26の接続口から前記ドレン回路34を経て前記油タンク35に戻る。
【0075】上記アーム操作部29を掘削側に操作すると、前記第2パイロット回路38を介してパイロット圧油が前記アームシリンダ7のヘッド側に接続された切換弁41の第1受圧部41a及び前記アーム操作弁26の第2受圧部26bに作用し、同アーム操作弁26は掘削側に切換えられる。ヘッド側の前記切換弁41は開位置に切換えられる。上記可変容量形ポンプ24からの吐出油は前記第2油路40及び前記通路44を介して前記アームシリンダ7のボトム側に供給される。一方の前記アームシリンダ7のヘッド側の圧油は、ヘッド側の前記切換弁41から上記アーム操作弁26の接続口を経て前記ドレン回路34を通り前記油タンク35に戻る。
【0076】一方、左右一対の上記ブームシリンダ5,5の各ボトム側と単一のブーム操作弁25とを接続する第2油路40はブーム落下防止弁20をそれぞれ接続している。また、前記バケットシリンダ9のボトム側を接続する第1油路39はバケット落下防止弁20を接続している。上記ブーム操作弁25の接続口に連通する第1油路39はその中間部で分岐して上記ブームシリンダ5のヘッド側に接続している。一方の第2油路40はその中間部で分岐して前記ブーム落下防止弁20を介して上記ブームシリンダ5のボトム側に接続している。
【0077】いま、上記ブーム操作部28の操作レバー36を上げ側に操作すると、同ブーム操作部28からのパイロット圧油は前記第2パイロット回路38を介して前記ブーム操作弁25の第2受圧部25bに作用し、同ブーム操作弁25を上げ側に切換える。上記可変容量形ポンプ24からの吐出油は前記第2油路40の中間部で分流し、前記ブーム落下防止弁20のチェック弁42を介して各ブームシリンダ5のボトム側に供給される。一方のヘッド側の圧油は前記第1油路39の中間部で合流し、前記ブーム操作弁25を介して前記ドレン回路34を通り前記油タンク35に戻る。
【0078】前記ブーム操作部28の操作レバー36を下げ側に操作すると、同ブーム操作部28からのパイロット圧油は前記第1パイロット回路37を介して前記ブーム操作弁25の第1受圧部25aに作用すると共に、中間部で分岐された第1パイロット回路37を介して各切換弁41の第1受圧部41aに作用する。前記ブーム操作弁25を下げ側に切換えると共に、各切換弁41を開位置に切換える。前記可変容量形ポンプ24からの吐出油は前記第1油路39の中間部で分流し、各ブームシリンダ5のヘッド側に供給される。一方のボトム側の圧油は前記切換弁41を経て前記第2油路40の中間部で合流し、前記ブーム操作弁25を介して前記ドレン回路34を通り前記油タンク35に戻る。
【0079】本実施形態の油圧ショベル1は、上記ブームシリンダ5を伸長させた起立姿勢で上記ブーム6の基部を機体13に装着して、同ブームシリンダ5を伸縮動作させることによりブーム6を上下方向に起伏させている。これがため、前記ブームシリンダ5には上記作業機4等の自重により収縮方向の力が常に作用してボトム側に保持圧を発生させている。しかしながら、上記アーム8やバケット11は、前記作業機4の作業姿勢により上記アームシリンダ7やバケットシリンダ9の伸長方向或いは収縮方向に作用する力を保持するための保持圧が発生する。
【0080】図5に示すように、前記アーム8の支軸8g及び前記バケット11のリンク取付用支持ピン11bを結ぶ直線αと前記支軸8gを起点として上方に向かう地盤面に垂直な線βとのなす傾斜角度θが、アーム8の垂直姿勢から機体前方側(θ1>180°)の範囲内にあるとき、即ちアーム8の垂直姿勢から機体前方側の回動上限位置に達するまでの回動範囲内では前記アーム8には常にシリンダ伸長方向の力が作用してヘッド側に保持圧を発生させている。
【0081】また、前記傾斜角度θがアーム垂直姿勢から機体後方側(θ2<180°)の範囲内にあるとき、即ちアーム8を前記垂直姿勢から機体後方側の回動上限位置まで掻い込むようにして回動させる場合には、アームシリンダ7は伸長動作を続ける一方で、そのアーム8の保持圧はボトム側に移る。従って、前記アーム8には常にシリンダ収縮方向の力が加わり、ボトム側に保持圧が発生している。
【0082】一方、前記バケットシリンダ9を収縮動作して前記バケット11を最大掘削姿勢から最大ダンプ姿勢に移行させると、前記アーム8の傾斜角度θにかかわらずアーム8の全回動範囲内で、前記バケットシリンダ9には常に伸長方向の力が加わり、前記バケットシリンダ9のヘッド側に保持圧が発生している。これに対して、バケットシリンダ9を伸長動作させ、バケット11をアーム下面側に掻い込んだ状態で停止した最大掘削姿勢を維持するときは、前記アーム8の傾斜角度θにかかわらずアーム8のほぼ全回動範囲内で、前記バケット11には常にシリンダ収縮方向の力が作用して前記バケットシリンダ9のボトム側に保持圧を発生させている。
【0083】本発明は、上記作業機4等の構造や作動形態に応じて異なる所望のシリンダの保持圧発生部位に上記落下防止弁20を直付けすることにあり、特に前記バケットシリンダ9の少なくともヘッド側やアームシリンダ7のボトム側に前記落下防止弁20を直付けしたことを最も重要な構成としている。これらの構成を採用することにより、前記アームシリンダ7の作動によりアームの垂直姿勢を含む機体前方側及び機体後方側の全回動範囲内を安全性を確保して前記アーム8を上下方向に回動させると共に、前記バケットシリンダ9を作動させたときの安全性を確保して、前記バケット11を上下に首振り動作させることができる。
【0084】クレーン作業時には、上記吊りフック12の外れ止め片12cを上記アーム8の吊りフック収容部8cに取り付けられた係止部材14から抜き取り、吊りフック収容部8c内に格納された吊りフック12を回動させて吊りフック収容部8c内から外部に露呈させる。このとき、前記バケット11と上記吊りフック12との干渉を避けるため、前記バケット11をアーム背面側に最もダンプした位置までバケットシリンダ9を収縮動作させる必要がある。バケットシリンダ9を最大に収縮動作させると、バケット11の自重により、常にバケットシリンダ9のヘッド側に最大保持圧が発生している。このバケット11の掬い面側を下方に向けた姿勢を維持して、吊りフック12によるクレーン作業を行なう。
【0085】吊り荷を吊り上げるとき、例えばバケットシリンダ9のヘッド側に接続された油圧ホースが破断したとしても、前記バケット落下防止弁20が瞬時に機能して、ヘッド側の油室と外部の油路とを完全に遮断し、シリンダヘッド側の保持圧は確実に維持され、バケット11の下方への急激な回動が阻止され、吊り荷の落下も防止される。なお、前記落下防止弁20は前記アーム8のアームトップピン8aに支持された吊りフック12に代えて、例えばウインチによりブームやアームの内部に導きられたワイヤをブームやアームの内部に支承されたプーリに巻き掛けてアームトップピン位置から引出し・引込むことにより前記吊りフック12を上下動させるワイヤ式の吊りフックを備えた油圧ショベルにも採用できる。
【0086】一方、土砂の掘削作業や運搬作業を行っているとき、アーム8が機体後方側の最大回動位置まで回動させる途中で、仮にアームシリンダ7のボトム側に接続された油圧ホースが破断してボトム側の油圧が抜けようとしても、前記アーム落下防止弁20が瞬時に作用して、シリンダボトム側油室と外部の油路とを完全に遮断し、同ボトム側油室の保持圧が維持される。このため、アーム8の下方に向かう急激な回動が回避できる。
【0087】アームシリンダ7のヘッド側及びボトム側の双方に前記アーム落下防止弁20を設ける場合には、前記アーム8や掘削土砂等の荷重によりシリンダ伸長方向及び収縮方向の保持圧が前記アーム落下防止弁20により瞬時に支持されるため、前記アーム8が下方向に急激に回動することが防止できる。そのため、本実施形態にあってはアーム8の作業範囲が垂直姿勢を含む前後方向の最大揺動限位置まで拡大でき、拡大された前記全作業範囲において安全性が確保される。従って、前記アーム8の限界作業範囲を従来のごとく設定する必要もなくなり、前記アームシリンダ7の作動によりアーム垂直姿勢を含む機体前方側及び機体後方側の全作業範囲(図5に示した符号A,B)を自由に回動させることができる。このような作業範囲の拡大は効率的な土砂掘削及び運搬作業につながる。
【0088】また、掘削土砂をダンプ位置まで運搬する際には、前記バケットシリンダ9を伸長動作させ、バケット11を最大掘削姿勢に維持する。この場合には、既述したように前記バケット11には常に、シリンダ収縮方向の力が作用して前記バケットシリンダ9のボトム側に保持圧を発生させている。前記バケットシリンダ9のボトム側にバケット落下防止弁20を直付けしているため、前記バケット11の自重と掘削土砂等により作用するシリンダ収縮方向の力を支持することに加えて、万一、前記ボトム側油室に接続された油圧ホースが破断しても、バケット落下防止弁20によってボトム側油室内の保持圧が維持され、同バケット11が下方向に急激に回動することを防止することができる。
【0089】そのダンプ位置で、上記アームシリンダ7を収縮動作して上記アーム8を上方向に回動させる一方、前記バケットシリンダ9を収縮動作して前記バケット11を最大掘削姿勢から最大ダンプ姿勢に移行させる。このダンプ姿勢にあるとき、既述したように前記バケットシリンダ9には常に伸長方向の力が加わり、前記バケットシリンダ9のヘッド側に保持圧を発生させている。前記バケット11を最大掘削姿勢から最大ダンプ姿勢に移行させるとき、たとえ前記バケットシリンダ9のヘッド側に接続された油圧ホースが外力により破損しても、前記バケット落下防止弁20の機能によりシリンダの内部を完全に閉鎖して前記バケットシリンダ9の最大保持圧を維持する。このため、バケット11が下方向に急激に回動することを確実に防止することができ、作業の安全性を高めることができる。
【0090】上記アーム8と同様に、バケットシリンダ9のヘッド側及びボトム側の双方に前記バケット落下防止弁20を直付けした場合には、前記アーム8の回動範囲が拡大することと相まって、前記バケット11の掘削回動範囲を大きくすることができ、その掘削範囲も拡がる。前記アーム8の作業範囲の拡大により、機体近傍でクレーン作業を行なうことができるため、前記吊りフック12と吊り荷との位置関係を目視により確認することができるようになり、作業効率を著しく向上させることができる。また、同時にクレーン作業の作業領域が広がるため、狭小な現場でのクレーン作業も効率的に且つ安全に行うことができる。
【0091】図6は本発明の代表的な実施形態である上記吊りフック12を自動的に格納する回転駆動機構50を模式的に示している。同図において、上記アーム8の内部は上記アームトップピン8aの一端に支承された第1プーリ51と、上記ブーム6の先端に上下方向に揺動させる支軸8gに支承された左右に並列した第2及び第3プーリ52,53とを配している。各第1及び第2プーリ51,52に掛け回された1本のチェーン等からなる無端状の第1ベルト55は前記アーム8内の内側壁に沿って配されている。前記ブーム6の内部は前記第3プーリ53に対応する第4プーリ54を支軸6aに固着している。前記第3及び第4プーリ53,54に掛け回された第2ベルト56は前記ブーム6内の内側壁に沿って配されている。前記第4プーリ54は減速機構57を介してモータ58に連結固定されている。
【0092】同モータ58に設置された図示せぬ位置・検出センサ、同じく図示を省略したフック挿脱検出用の近接スイッチやキャブ3aに配された同じく図示せぬクレーンモードスイッチ等の出力信号に基づいて制御信号を出力する同じく図示せぬコントローラに電気的に接続されている。同コントローラは図示せぬ位置・検出センサ、クレーンモードスイッチや近接スイッチのオン・オフの組合せの関係等を記憶している。これらの信号を入力することにより制御プログラムの指令に基づいて上記モータ48を回転駆動又は停止させることにより上記吊りフック12を自動的に格納する。
【0093】上記ブーム6やアーム8の内部空間を有効に利用して、上記ブーム6やアーム8の内部にワイヤ等が掛け回されたプーリ51〜54や同プーリ51〜54を回転駆動させるモータ58等を有する簡単な構造の回転駆動機構50を設けることができる。クレーン作業から掘削作業に移行するとき、人手を必要とすることなく前記吊りフック12を前記アームトップピン8aを回動中心として上記吊りフック収容部8c内に円滑に格納することができる。
【0094】以上の説明からも明らかなように、本実施形態における吊りフック12を備えた油圧ショベル1によれば、上記作業機4の自重や吊り荷重等により発生するバケットシリンダ9やアームシリンダ7におけるヘッド側或いはボトム側の保持圧を常に確実に維持することができるため、各シリンダ9,7の保持圧発生側の油室に接続された油圧ホースが外力により破断したとしても、各落下防止弁20が瞬時に機能して、各シリンダ9,7の油室と外部の油路とが完全に遮断され、充分に且つ有効なクレーン作業、土砂掘削及び運搬作業が行えると共に、作業の安全性をも高めることができる。なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、それらの実施形態から当業者が容易に変更可能な技術的な範囲をも当然に包含するものである。
【出願人】 【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
【出願日】 平成12年5月26日(2000.5.26)
【代理人】 【識別番号】100091948
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 武男
【公開番号】 特開2001−336172(P2001−336172A)
【公開日】 平成13年12月7日(2001.12.7)
【出願番号】 特願2000−156140(P2000−156140)