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【発明の名称】 建設機械用運転室のシール構造
【発明者】 【氏名】西坂 好夫

【氏名】水野 浩之

【要約】 【課題】グロメットに形成されるスリットや油圧ホース等を束ねた場合の隣接ホース間の隙間等から騒音や埃が侵入してくるのを確実に防止する。

【解決手段】建設機械の運転室と室外とを仕切る床板の貫通孔にグロメット4を装着するものにおいて、グロメット4に複数個の挿通孔を設け、各挿通孔に油圧ホースまたは電気ハーネスを1本ずつ挿通させる。また、油圧ホースを束ねて挿通させる場合にはシール部材を介挿する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 建設機械の運転室と室外とを仕切る仕切板の貫通孔にグロメットを装着し、このグロメットに複数本の油圧ホースおよび/または電気ハーネスを挿通させるようにした建設機械用運転室のシール構造であって、前記グロメットに複数個の挿通孔を設け、各挿通孔に油圧ホースまたは電気ハーネスを1本ずつ挿通させることを特徴とする建設機械用運転室のシール構造。
【請求項2】 前記グロメットに設けられる挿通孔径は、前記油圧ホースまたは電気ハーネスの外径と同等またはそれ以上である請求項1に記載の建設機械用運転室のシール構造。
【請求項3】 建設機械の運転室と室外とを仕切る仕切板の貫通孔にグロメットを装着し、このグロメットに複数本の油圧ホースおよび/または電気ハーネスを挿通させるようにした建設機械用運転室のシール構造であって、前記油圧ホースまたは電気ハーネスを束ねるとともに、これら束ねた油圧ホースまたは電気ハーネスを、互いに隣接する油圧ホース間または電気ハーネス間の隙間を塞ぐシール部材で保持して前記グロメットに設けられる挿通孔に挿通させることを特徴とする建設機械用運転室のシール構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば油圧ショベルのような建設機械に用いられる建設機械用運転室のシール構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、油圧ショベルのような建設機械においては、運転室内の操作レバーから延びる油圧ホースや電気ハーネスなどが床面および隔壁部を貫通して室外に配管もしくは配線されている。この場合、床面等には貫通孔が穿設され、この貫通孔にグロメットが嵌められて前記油圧ホース等を保持するようにされている。
【0003】図7には、従来多用されているグロメットの平面図(a)およびそのC−C断面図(b)がそれぞれ示されている。図示のように、従来のグロメット50は、床面に形成された貫通孔に係合する溝部51を外周部に有するグロメット本体52と、このグロメット本体52の内側を塞ぐようにそのグロメット本体52と一体に形成される仕切膜53とよりなり、この仕切膜53に前後左右方向に数本のスリット54を設け、このスリット54を通して前記油圧ホース等を挿通できるように構成されている。
【0004】また、本願発明に関連する先行技術として、実用新案登録第2541752号公報に開示されたものがある。この公報に記載の技術は、防音効果および防塵効果を得ることを目的として、板部材に穿設した貫通孔部に複数本の油圧ホース等を密着して束ねた密着束管を挿通させるようにしたものにおいて、柔軟性材料からなる中空筒状の隔壁ブーツ部材を設け、この隔壁ブーツ部材の一方の端部をフランジ状となして貫通孔部の一方側に固定し、他方の端部によって密着束管を弾発的に抱持するように構成したものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図7に記載の従来構成のグロメット50においては、油圧ホース等をスリット54を通して挿通したときに、仕切膜53が薄肉である(通常2mm程度)こともあって、これらスリット54が交差する部分でその仕切膜53がめくれあがって、挿通された油圧ホース等の周辺部にどうしても隙間ができ、この隙間から騒音や埃が侵入するという問題点がある。
【0006】一方、本願発明に関連する先行技術として挙げた実用新案登録第2541752号公報に開示されたものでは、油圧ホース等を束ねた密着束管の外周面は隔壁ブーツ部材によって弾発的に保持されることによって騒音や埃の侵入を一定程度阻止できるものの、互いに隣接する油圧ホース間の隙間については完全に密閉することができず、これら隙間からの騒音、埃などの侵入を確実に防ぐことができないという問題点がある。
【0007】本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、グロメットに形成されるスリットや油圧ホース等を束ねた場合の隣接ホース間の隙間等から騒音や埃が侵入してくるのを確実に防止することのできる建設機械用運転室のシール構造を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段および作用・効果】前記目的を達成するために、第1発明による建設機械用運転室のシール構造は、建設機械の運転室と室外とを仕切る仕切板の貫通孔にグロメットを装着し、このグロメットに複数本の油圧ホースおよび/または電気ハーネスを挿通させるようにした建設機械用運転室のシール構造であって、前記グロメットに複数個の挿通孔を設け、各挿通孔に油圧ホースまたは電気ハーネスを1本ずつ挿通させることを特徴とするものである。
【0009】本発明によれば、油圧ホースまたは電気ハーネスがそれぞれ1本ずつグロメットに設けられた挿通孔に挿通されるように構成されているので、これら油圧ホース等を挿通させることによってグロメットの仕切膜がめくれあがるようなことはなく、また互いに隣接する油圧ホース等間に隙間が生じることもない。したがって、挿通させた油圧ホース等の周辺部から騒音や埃が侵入してくるのを確実に防止することができ、運転室内を快適な環境にすることができる。本発明において、グロメットには、このグロメットに設けられた挿通孔の縁から外周部に通じるスリットを形成するのが好ましい。このようにすれば、油圧ホースまたは電気ハーネスをグロメットの挿通孔に挿通する際に、そのスリットを広げることによってグロメットの側方からその挿通孔に挿入することができ、組付け時の作業性を向上させることができる。
【0010】次に、第2発明は、前記第1発明において、前記グロメットに設けられる挿通孔径を、前記油圧ホースまたは電気ハーネスの外径と同等またはそれ以上にしたものである。このようにすれば、種々の外径を有する油圧ホースまたは電気ハーネスであっても、その外径に合わせてほとんど隙間なくグロメットの挿通孔に挿入することができる。また、その油圧ホース等の装着状態で挿通孔の縁と外周部との間に形成されたスリットを押し広げることがなく、グロメット本体に無理な力を及ぼすことがない。
【0011】さらに、第3発明による建設機械用運転室のシール構造は、建設機械の運転室と室外とを仕切る仕切板の貫通孔にグロメットを装着し、このグロメットに複数本の油圧ホースおよび/または電気ハーネスを挿通させるようにした建設機械用運転室のシール構造であって、前記油圧ホースまたは電気ハーネスを束ねるとともに、これら束ねた油圧ホースまたは電気ハーネスを、互いに隣接する油圧ホース間または電気ハーネス間の隙間を塞ぐシール部材で保持して前記グロメットに設けられる挿通孔に挿通させることを特徴とするものである。
【0012】本発明によれば、束ねられた油圧ホースまたは電気ハーネスが、互いに隣接する油圧ホース間または電気ハーネス間の隙間を塞ぐシール部材で保持されてグロメットに設けられた挿通孔に挿通されるように構成されているので、これら油圧ホース等を挿通させることによってグロメットの仕切膜がめくれあがるようなことはなく、また互いに隣接する油圧ホース等間がシール部材で塞がれていて隙間が生じることもない。したがって、挿通させた油圧ホース等の周辺部から騒音や埃が侵入してくるのを確実に防止することができ、運転室内を快適な環境にすることができる。また、これら油圧ホース等を束ねた状態で取り扱うことができるので、組付性を向上させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】次に、本発明による建設機械用運転室のシール構造の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】(第1実施例)図1は、油圧ショベルに適用した本発明の第1実施例に係る運転室のシール構造を示す斜視図、図2は、本実施例のシール構造に用いられるグロメットの斜視図、図3は、同グロメットの平面図(a)およびそのA−A断面図(b)である。
【0015】本実施例のシール構造は、油圧ショベルの運転室内に設けられる操作レバーに対し、この運転室の床面を貫通させて複数本(本実施例の場合、6本)の油圧ホース(PPCホース)1と1本の電気ハーネス2とを通過させる際のシール構造に関わるものであって、この床面3に形成された貫通孔3aに係合させて固定されるグロメット4を主たる構成要素とするものである。このグロメット4は、例えばゴムもしくは軟質プラスチック等の弾性材にて平面視で略長円状に一体成形され、中央部4aが比較的厚肉(例えば12mm)に形成されるとともに、この中央部4aに対して外周部4aが更に厚肉(例えば21mm)に形成されてなる構成とされている。
【0016】前記グロメット4の外周部4bには、床面3の貫通孔3aに嵌り合う溝部5が形成されるとともに、この溝部5の裏側にぬすみ部6が形成されて、グロメット4を床面3の貫通孔3aに嵌める際に外周部4bが変形してその貫通孔3aの孔縁に容易に嵌めることができるようにされている。
【0017】前記グロメット4の中央部3aには、油圧ホース1を挿通させるためにその油圧ホース1の本数(6本)と同数の油圧ホース挿通孔7と、電気ハーネス2を挿通させるためにその電気ハーネス2の本数(1本)と同数の電気ハーネス挿通孔8とが設けられている。これら各挿通孔7,8は、スリット9を介してグロメット4の外周面に連通できるようにされ、このスリット9を広げて外周面側から油圧ホース1または電気ハーネス2を各挿通孔7,8に嵌め合わせることができるようにされている。ここで、前記油圧ホース挿通孔7、電気ハーネス挿通孔8は、それぞれ油圧ホース1もしくは電気ハーネス2の外径寸法と同等もしくは若干大きめにされ(例えば油圧ホース径11mmに対して、油圧ホース挿通孔径11.5mm)、これら油圧ホース1もしくは電気ハーネス2を挿通させたときに、それら油圧ホース1もしくは電気ハーネス2の外周面と各挿通孔7,8の孔縁との隙間が最小限になるようにされている。
【0018】このような構成において、組付け時には、油圧ホース1および電気ハーネス2を1本ずつ、グロメット4の外周面側からスリット9を押し広げつつ各挿通孔7,8に挿通させ、この挿通後にグロメット4を床面3の貫通孔3aに嵌め合わせることにより、グロメット4の外周部4bの溝部5が貫通孔3aの孔縁に嵌り込んで運転室内と運転室外とが確実に遮断される。
【0019】本実施例によれば、油圧ホース1および電気ハーネス2がそれぞれ1本ずつ油圧ホース挿通孔7、電気ハーネス挿通孔8に隙間なく挿通されるので、挿通させた油圧ホース1および電気ハーネス2の外周部から運転室内に騒音や埃が侵入してくるのを確実に防止することができる。
【0020】本実施例におけるシール構造の効果を確認するために、油圧ショベルの床面に本実施例のグロメット4を装着した場合(実施例)と、図7に示される従来のグロメット50を装着した場合(比較例)とにおいて、以下の試験条件にて運転室のプレッシャライズの比較試験を行った。
試験条件:1)エンジン回転数;ハイアイドル回転数(2150rpm)
2)ブロアスイッチ;Hi位置3)内外気切り替えスイッチ;外気位置4)内外気フィルタ;エアにて完全清掃5)空気吹出し口;運転席の足部6)運転室の窓およびドア;全閉この試験の結果、比較例に比べて、実施例ではプレッシャライズが1.0mmAq上昇することが確認された。
【0021】本実施例においては、油圧ホース1によってPPC弁を作動させるものについて説明したが、本実施例の考え方は、電気操作レバーを有する油圧ショベルに対しても適用できるのは言うまでもない。
【0022】(第2実施例)図4は、本発明の第2実施例に係る運転室のシール構造に用いられるグロメットの平面図(a)およびそのB−B断面図(b)である。
【0023】前記第1実施例においては、グロメットが油圧ホース挿通孔7と電気ハーネス挿通孔8の両方を備えるものを説明したが、本実施例では、油圧ホース挿通用のグロメットと電気ハーネス挿通用のグロメットとを別体に構成している。なお,図4に示されているのは、油圧ホース挿通用のグロメット10を示すものである。
【0024】本実施例のグロメット10においては、全体形状が円板状に形成されていて、電気ハーネス挿通孔を備えていない点が第1実施例と異なるだけで、その他の構成等については第1実施例のものと基本的に同様である。したがって、第1実施例のものに対応する部分には図に同一符号を付すに止めてその詳細な説明を省略することとする。
【0025】(第3実施例)図5(a)は、本発明の第3実施例に係る運転室のシール構造を示す分解斜視図である。
【0026】本実施例においては、グロメット11とは別に、油圧ホース1を保持するスポンジ等の柔軟材よりなるシール部材12が設けられている。このシール部材12には油圧ホース1の本数に応じた6本の油圧ホース挿通孔13が設けられ、各油圧ホース挿通孔13がスリット14を介してそのシール部材12の外周面に連通できるようにされ、このスリット14を押し広げて外周面側から油圧ホース1が各挿通孔13に挿通できるようにされている。一方、グロメット11側には前記シール部材12の外径よりやや小さい内径の挿通孔15が形成され、前記シール部材12に油圧ホース1を挿通させた状態で、このシール部材12がグロメット11に形成されたスリット16を押し広げつつそのグロメット11の外周面側から挿通孔15に挿通されるようになっている。
【0027】こうして、油圧ホース1をグロメット11の挿通孔15に装着し、このグロメット11を床面の貫通孔に嵌め合わせると、シール部材12の復元力によってそのシール部材12の外周面と挿通孔15の内周面との間および各油圧ホース相互間が確実にシールされるとともに、油圧ホースの動きに対してもシール部材12がその動きを吸収する役目をする。したがって、油圧ホース1を複数本束ねてグロメット11の挿通孔15に挿通させる態様でありながら、互いに隣接する油圧ホース間の隙間を皆無にすることができ、運転室内への騒音、埃等の侵入をより確実に防ぐことができる。
【0028】なお、図5(b)に示されているように、挿通孔15の周りにフランジ部17を一体形成し、このフランジ部17の周囲をベルト18によって締め付けるようにすれば、シール部材12による油圧ホース1の保持をより確実にすることができる。
【0029】(第4実施例)図6は、本発明の第4実施例に係る運転室のシール構造を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【0030】本実施例においては、前記実施例におけるシール部材12に代えて、スポンジ等の柔軟材よりなるテープ状のシール部材19を各油圧ホース1間に隙間が生じないように巻き付けて、この巻き付け状態で、グロメットの挿通孔に挿通させるようにしたものである。このような構成によっても第3実施例と同様の作用効果を奏し得る。
【0031】前記第3実施例および第4実施例においては、油圧ホース1を複数本束ねた状態でグロメットの挿通孔に挿通させるものを説明したが、第1実施例もしくは第2実施例に示されるように油圧ホース1を1本ずつグロメットの挿通孔に挿通させるようにしたものにおいても、各油圧ホース1の周囲に第3実施例もしくは第4実施例と同様のシール部材を介挿させることができる。このようにすれば、油圧ホースの外径が異なる場合であっても、グロメットの挿通孔の径を一定にしてそのグロメットの挿通孔に合うように油圧ホースの外周部を確実にシールすることができて好適である。
【0032】前記各実施例においては、油圧ショベルの運転室の床面に設けられるシール構造を例にとって説明したが、本発明のシール構造は必ずしも運転室の床面に用いるものに限るものではなく、例えばエンジンルームとその前方のフレーム部分とを仕切る仕切板の貫通孔に装着する等、騒音源を含む画室とその画室外の空間とを仕切るあらゆる仕切板に対して適用することができる。
【0033】また、前記各実施例では、油圧ショベルを例にとって説明したが、本発明は、その他の建設機械に対しても適用できるのは言うまでもない。
【出願人】 【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
【出願日】 平成12年4月5日(2000.4.5)
【代理人】 【識別番号】100097755
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 勉
【公開番号】 特開2001−288781(P2001−288781A)
【公開日】 平成13年10月19日(2001.10.19)
【出願番号】 特願2000−102958(P2000−102958)