| 【発明の名称】 |
スラスト型傾斜法面構造 |
| 【発明者】 |
【氏名】松岡 政幸
|
| 【要約】 |
【課題】傾斜型カゴ枠の種類を増やさずに、任意の大きな傾斜角度をもつ実質平坦な傾斜法面を形成する。
【解決手段】前面が鉛直線に対して後方へ傾斜した傾斜型カゴ枠10を、その前面が形成する正規の傾斜法面に対して上段のカゴ枠ほど後方へ大きくスラストするように積み上げる。正規の傾斜法面の傾斜角度θより大きい傾斜角度αの傾斜法面30が形成される。スラスト量の変更により、傾斜法面30の傾斜角度αが任意に調節される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 前面が鉛直線に対して後方へ傾斜した傾斜型カゴ枠を、その前面が形成する正規の傾斜法面に対して上段のかご枠ほど後方へ大きくスラストするように積み上げることにより、正規の傾斜法面より傾斜角度の大きい傾斜法面を形成することを特徴とするスラスト型傾斜法面構造。 【請求項2】 傾斜型カゴ枠の前面の傾斜角度が5分勾配以下であることを特徴とする請求項1に記載のスラスト型傾斜法面構造。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、擁壁や堰堤等に用いられる傾斜法面構造に関する。 【0002】 【従来の技術】擁壁や堰堤に用いられる傾斜法面構造としてカゴ枠を使用するものがある。この法面構造は、図3に示すように、直方体状のカゴ枠1,1・・を、割栗石2を詰めながら階段状に積み上げることにより、所定の傾斜角度αの傾斜法面3を形成するものである。カゴ枠を使用する傾斜法面構造は、コンクリートによるものと比べて施工が簡単であるだけでなく、アルカリの流出といった環境問題が殆どなく、環境保護の点からも注目を集めている。 【0003】また最近では、図4に示すように、前面が鉛直線に対して後方へ傾斜した傾斜型カゴ枠1′を使用する傾斜法面構造も提案されている。この傾斜法面構造では、各段の傾斜型カゴ枠1′の前面を同一平面内に位置させることにより、所定の傾斜角度αの傾斜法面3が形成される。形成される傾斜法面3の傾斜角度αは、傾斜型カゴ枠1′の前面の傾斜角度θと同一である。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】前者の傾斜法面構造では、形成される傾斜法面3が平坦面にならずに階段状になるという景観上の大きな問題がある。これに対し、後者の傾斜法面構造では、形成される傾斜法面3が違和感のない平坦面になる。 【0005】しかし、傾斜法面3に要求される傾斜角度αは様々であるので、その要求に答えるためには、前面の傾斜角度θが異なる多種多様な傾斜型カゴ枠を容易する必要があり、カゴ枠の製造コストひいては施工コストが増大することになる。 【0006】そればかりか、傾斜型カゴ枠内に充填された割栗石2を転圧する際に、前面の傾斜角度θが大きいと、その下方に大きな死角ができ、前面の裏側での転圧が困難となる。このため、前面の傾斜角度θは5分勾配(1:0.5)が限界、好ましくは3分勾配(1:0.3)以下とされており、これより大きな傾斜角度θのものは、傾斜型カゴ枠では施工が困難とされている。 【0007】本発明の目的は、傾斜型カゴ枠の種類を増やさず、またカゴ枠内に充填される割栗石等の転圧に支障を来すこともなく、任意の大きな傾斜角度をもつ実質平坦な傾斜法面を形成できるスラスト型傾斜法面構造を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のスラスト型傾斜法面構造は、前面が鉛直線に対して後方へ傾斜した傾斜型カゴ枠を、その前面が形成する正規の傾斜法面に対して上段のかご枠ほど後方へ大きくスラストするように積み上げることにより、正規の傾斜法面より傾斜角度の大きい傾斜法面を形成するものである。 【0009】本発明のスラスト型傾斜法面構造では、傾斜型カゴ枠を後方へスラストさせて配置することにより、前面の傾斜角度が異なるカゴ枠を用いずとも、任意の傾斜角度の傾斜法面が形成される。しかも、その傾斜法面は、カゴ枠の前面が形成する正規の傾斜法面より大きく傾斜するので、大きな傾斜角度を確保できる。更に、大きな傾斜角度の場合も、カゴ枠自体の前面傾斜角度は小さく抑制されるので、カゴ枠内に充填される割栗石等に対して問題のない転圧が可能となる。更に又、形成される傾斜法面の段差が僅かで目立たないので、見かけ上は実質平坦な傾斜法面が形成され、植生シート等を用いて緑化型とすれば、段差が一層目立たなくなるので、傾斜型カゴ枠を用いた従来の傾斜法面構造と変わらない雰囲気の傾斜法面が得られる。 【0010】傾斜型カゴ枠の前面の傾斜角度は、支障のない転圧を行うために5分勾配以下が好ましく、3分勾配以下が特に好ましい。その傾斜角度の下限については、1分勾配以上が好ましい。この傾斜角度が極端に小さいと、傾斜法面の傾斜角度を大きくしたときに段差が顕著となる。 【0011】本発明のスラスト型傾斜法面構造に用いられる傾斜型カゴ枠の具体的な構造は特に問わない。 【0012】 【発明の実施の形態】以下に本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態に係るスラスト型傾斜法面構造を示す擁壁の縦断側面図、図2は同スラスト型傾斜法面構造に使用された傾斜型カゴ枠の斜視図である。 【0013】本実施形態に係るスラスト型傾斜法面構造は、例えば擁壁の構築に使用される。この擁壁は、図1に示すように、多数の傾斜型カゴ枠10,10・・を複数段に積み上げることにより構築されている。 【0014】各傾斜型カゴ枠10は、図2に示すように、前面枠10Aと後面枠10Bを組み合わせた構造になっている。前面枠10Aは、溶接金網11Aを折り曲げることにより全体としてL形に形成されており、その前面は底面に直角な面に対して後方へ所定の角度、ここでは3分勾配(1:0.3)で傾斜している。 【0015】L形に折り曲げられた溶接金網11Aは、L形に形成された3本の縦材12A,12A,12A及び1本の水平な横材13Aによって補強されている。3本の縦材12A,12A,12Aは、前面枠10Aの両側部及び中央部に配置されている。各縦材12Aの後端部は、上方へ鉤形に折り曲げられることによりフック部14Aを形成している。横材13Aは、前面の上縁部に設けられている。 【0016】後面枠10Bは、溶接金網11Bを折り曲げることにより全体としてL形に形成されている。その後面は底面に対して直角であり、底面は前面枠10Aの底面と合体して傾斜型カゴ枠10の底面を形成する。溶接金網11Bは、L形に形成された3本の縦材12B,12B,12B及び1本の水平な横材13Bによって補強されている。 【0017】3本の縦材12B,12B,12Bは、後面枠10Bの両側部及び中央部に配置されている。各縦材12Bの前端部には連結板14Bが取付けられている。連結板14Bは、前面枠10Aのフック部14Aを引っ掛けるための貫通孔を有しており、その引っ掛けによって縦材12Bを対応する縦材12Aに連結する。横材13Bは、溶接金網11Bの後面上縁部に設けられており、縦材12Bの上端部は、溶接金網11Bの後面上縁部より上方に突出して、上段の傾斜型カゴ枠10を固定するためのストッパー15Bを形成している。 【0018】前面枠10Aと後面枠10Bを組み合わせて構成された傾斜型カゴ枠10は、3本の連結棒16,16,16により補強される。また図示されない斜材により補強される。3本の連結棒16,16,16は、傾斜型カゴ枠10の両側部及び中央部に配置され、前面枠10Aの前面上縁部に設けられた横材13Aと後面枠10Bの後面上縁部に設けられた横材13Bとの間に架設される。この架設のために、連結棒16の両端部は鉤形に形成されている。 【0019】次に、本実施形態に係るスラスト型傾斜法面構造をもつ擁壁の構築方法を、図1により説明する。 【0020】まず、最下段(1段目)において、所定数の傾斜型カゴ枠10を組み立て横幅方向に配列する。各傾斜カゴ枠10内に割栗石20を充填し、転圧する。これにより、最下段が構築される。 【0021】最下段が構築されると、その上に所定数の傾斜型カゴ枠10を横幅方向に並べる。このとき、傾斜形カゴ枠10を、その前面が、その下の最下段の傾斜型カゴ枠10の前面が形成する正規の傾斜法面より後方へスラスト(変位)するようにして、最下段の傾斜型カゴ枠10の上に載せる。その後、2段目の傾斜カゴ枠10内に割栗石20を充填し、転圧する。これにより、2段目が構築される。 【0022】最下段の傾斜型カゴ枠10に設けられたストッパー15Bが、2段目の傾斜型カゴ枠10の底面(溶接金網)に刺さり、且つその傾斜型カゴ枠10内の割栗石20に挿入されることにより、2段目の傾斜型カゴ枠10が定位置に固定される。 【0023】以下同様にして傾斜型カゴ枠10を後方へスラストさせながら所定段数まで積み上げ、且つ、割栗石20を充填・転圧することにより、傾斜法面30が形成される。 【0024】形成された傾斜法面30の傾斜角度αは、傾斜型カゴ枠10の前面の傾斜角度θより大である。即ち、傾斜型カゴ枠10の前面の傾斜角度θは、ここでは3分勾配とされているが、傾斜型カゴ枠10を後方へスラストさせることにより、3分勾配より大きな傾斜角度αの傾斜法面30が形成される。 【0025】しかも、傾斜型カゴ枠10のスラスト量を変更することにより、傾斜型カゴ枠10の前面の傾斜角度θを固定したままで、傾斜法面30の傾斜角度αが、傾斜角度θより大きい範囲内で任意に調節される。このため、傾斜法面30の傾斜角度αに応じて傾斜型カゴ枠10を造り分ける必要がなくなり、その製造コストが低減する。 【0026】更に、傾斜法面30の傾斜角度αが大であるにもかかわらず、傾斜型カゴ枠10の前面の傾斜角度θは小さく抑制されているので、傾斜型カゴ枠10内に充填された割栗石20の転圧が枠内全体で確実に行われる。 【0027】更に又、形成された傾斜法面30では、その傾斜角度αが大きい割に段差が小さく、平坦であるので、周囲の景観に対する違和感が抑えられる。 【0028】 【発明の効果】以上に説明した通り、本発明のスラスト型傾斜法面構造は、傾斜型カゴ枠を後方へスラストさせて配置することにより、傾斜型カゴ枠を変えずに傾斜法面の傾斜角度を現場での要請に応じて種々変更することができる。このため、傾斜型カゴ枠の種類が少なくなり、その製造コストひいては施工コストが低減する。また、傾斜法面の傾斜角度が大きい場合も、カゴ枠内に充填される割栗石等の転圧が支障なく行われるので、従来より傾斜角度の大きい傾斜法面の形成が可能となる。更に、傾斜角度の大きい傾斜法面を形成する場合にあっても、平坦度の高い傾斜法面が得られる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000101949 【氏名又は名称】住友金属建材株式会社
|
| 【出願日】 |
平成12年5月30日(2000.5.30) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100059373 【弁理士】 【氏名又は名称】生形 元重 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2001−336157(P2001−336157A) |
| 【公開日】 |
平成13年12月7日(2001.12.7) |
| 【出願番号】 |
特願2000−159716(P2000−159716) |
|