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【発明の名称】 既存杭破砕撤去方法及びその装置
【発明者】 【氏名】西 進

【要約】 【課題】基礎構造物を破壊してビル等を建て替える工事において、既存杭を作業スペース少なくして軽便容易に撤去できる方法とその装置を提供する。

【解決手段】ケリーバー8に連結したケーシング2を既存杭Pの頭端部に冠して回転させながら既存杭Pの周囲を掘削刃13にて掘り下げるとともに、ドリルヘッド25で既存杭Pを破砕し、破砕片を螺旋羽根28でケーシング2の内部上方へ押し上げ、かつ、所要深さ分掘り下げると、ケーシング2の回転を継続しながらカッター15,15の切削刃16,16を既存杭P内の縦筋51に押し付けて切断する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 既存杭の頭端部に有底円筒状体を嵌合して回転させながら既存杭の周囲を有底円筒状体の下端部に設けた掘削刃にて掘り下げるとともに、有底円筒状体の軸芯部に設けた螺旋羽根付きドリルヘッドで既存杭を破砕し、その破砕片を螺旋羽根で有底円筒状体の内部上方へ押し上げ、かつ、所要深さ分掘り下げると、有底円筒状体の回転を継続しながら有底円筒状体の内部に設けたカッターの切削刃を既存杭内の鉄筋に押し付けて切断することを特徴とする既存杭破砕撤去方法。
【請求項2】 既存杭の頭端部に有底円筒状体を嵌合して回転させながら既存杭の周囲を有底円筒状体の下端部に設けた掘削刃にて掘り下げるとともに、有底円筒状体の軸芯部に設けた螺旋羽根付きドリルヘッドで既存杭を破砕し、その破砕片を螺旋羽根で有底円筒状体の内部上方へ押し上げ、かつ、所要深さ分掘り下げると、有底円筒状体の回転を継続しながら有底円筒状体の内部に設けたカッターの切削刃を既存杭内の鉄筋篭に押し付けて切断し、切断した鉄筋篭をカッターの切削刃でケーシング内に保持した状態でケーシングを引き上げ、地上において切削刃を引き込めて鉄筋篭を排出することを特徴とする既存杭破砕撤去方法。
【請求項3】 既存杭の頭端部に嵌合する所要深さのケーシングと、ケーシングの上端部を閉じた上底に結合した回転駆動軸の連結部と、上底に結合してケーシング内の軸方向へ所定長さで延伸するハウジングと、ケーシングの内周面に向けて進退移動可能にハウジング内に配設したカッターと、ハウジングの下端部に結合してケーシングの軸中心で軸方向へ所定長さで延伸するドリルシャフトと、ドリルシャフトの下端部に着脱可能に取り付けた螺旋羽根付きドリルヘッドとからなることを特徴とする既存杭破砕撤去装置。
【請求項4】 カッターは、ハウジングの内底部に一対の油圧シリンダを点対称配置で並設し、それらの油圧シリンダのピストンロッドにはそれぞれ切削刃を着脱可能に取付けるとともに、それらの切削刃は直径方向で互いに前記ケーシングの内周面に向いて水平に保持されていることを特徴とする請求項3記載の既存杭破砕撤去装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は既存杭破砕撤去方法及びその装置に関するもので、とりわけ、老朽化したビル等の基礎構造物を壊して建て替える工事において、既存杭を作業スペース少なくして軽便容易に撤去できる方法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】老朽化したビル等の基礎構造物を破壊して建て替える工事が増えて来た現今にあっては、既存杭をも撤去して新規な基礎杭を打設する必要性が生じている。既存杭は鉄筋かごを埋設した場所打ち杭、又はPCコンクリートパイルであり、地中深く打設してあるからこれを抜去することは容易ではない。
【0003】例えば、既存杭を抜き取るために、既存杭の近傍に既存杭よりも長いタワーを立設し、タワーの頂部に滑車を配置してワイヤロープを掛け回し、ワイヤロープの一端部を既存杭の頭部に連結し、ワイヤロープの他端部を地上に固定した巻上げ機のドラムに巻き付け、巻上げ機を駆動してドラムにワイヤロープを巻き取る抜去装置で既存杭が地中から軽便容易に抜け出るようなケースは希である。
【0004】そのため、既存杭の頭部に起振機を取り付けてワイヤロープの引き抜き力が作用している間に、起振機を駆動して既存杭を振動させることにより、既存杭と地山との摩擦抵抗をなるべく小さくする必要性など、実施の上で種々の装置が必要となる。したがって、それらの機器装置を設置するための作業スペースは広大に必要となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のタワーを用いた抜去装置では、既存杭の構造や状態如何により種々の制約を受けてその実用性が問題視される。また、ワイヤロープの切断事故など引き抜き施工の安全性を確保する必要性が生じる等々の種々の困難な問題を抱えているので実用性に乏しい。さらに、大型車が通行・進入できないような狭い場所における既存杭を撤去することは作業スペースがなくて実質的には不可能となる。
【0006】一方、既存杭を掘削しながら破壊する方式では、既存杭の周囲の土砂を掘り進むための顕著な効果を有する特殊装置がいまだ開発されていないから、バックホーや掘削バケットによる大型の重機工事に頼る以外になく、さらに、掘削と破壊及び掘削物の排除の行程が必要で工事が大型化及び複雑化して、作業スペースも大きく必要とするほか、非能率的である。
【0007】そこで、この発明は既存杭を軽便容易かつ迅速に撤去できる装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は上記課題を解決するため、既存杭の頭端部に有底円筒状体を嵌合して回転させながら既存杭の周囲を有底円筒状体の下端部に設けた掘削刃にて掘り下げるとともに、有底円筒状体の軸芯部に設けた螺旋羽根付きドリルヘッドで既存杭を破砕し、その破砕片を螺旋羽根で有底円筒状体の内部上方へ押し上げ、かつ、所要深さ分掘り下げると、有底円筒状体の回転を継続しながら有底円筒状体の内部に設けたカッターの切削刃を既存杭内の鉄筋に押し付けて切断することを特徴とする既存杭破砕撤去方法を提供する。
【0009】この方法によれば、既存杭を頭端部から順次有底円筒状体内で破砕するとともに、既存杭内の鉄筋までも一連の工程として切り取り撤去できる。しかも、有底円筒状体は小型コンパクトにできるから、作業車も大型重機でなく小型重機で足り、したがって、作業スペースも小さくて足りる。
【0010】また、既存杭の頭端部に有底円筒状体を嵌合して回転させながら既存杭の周囲を有底円筒状体の下端部に設けた掘削刃にて掘り下げるとともに、有底円筒状体の軸芯部に設けた螺旋羽根付きドリルヘッドで既存杭を破砕し、その破砕片を螺旋羽根で有底円筒状体の内部上方へ押し上げ、かつ、所要深さ分掘り下げると、有底円筒状体の回転を継続しながら有底円筒状体の内部に設けたカッターの切削刃を既存杭内の鉄筋篭に押し付けて切断し、切断した鉄筋篭をカッターの切削刃でケーシング内に保持した状態でケーシングを引き上げ、地上において切削刃を引き込めて鉄筋篭を排出することを特徴とする既存杭破砕撤去方法を提供する。
【0011】この方法によれば、既存杭を頭端部から順次有底円筒状体内で破砕するとともに、既存杭内の鉄筋までも一連の工程として切り取り撤去できる。しかも、有底円筒状体は小型コンパクトにできるから、作業車も大型重機でなく小型重機で足り、したがって、作業スペースも小さくて足りる。さらに、既存杭内の鉄筋篭をケーシング内に収容した状態で地中孔外に排出できる。
【0012】そして、既存杭の頭端部に嵌合する所要深さのケーシングと、ケーシングの上端部を閉じた上底に結合した回転駆動軸の連結部と、上底に結合してケーシング内の軸方向へ所定長さで延伸するハウジングと、ケーシングの内周面に向けて進退移動可能にハウジング内に配設したカッターと、ハウジングの下端部に結合してケーシングの軸中心で軸方向へ所定長さで延伸するドリルシャフトと、ドリルシャフトの下端部に着脱可能に取り付けた螺旋羽根付きドリルヘッドとからなることを特徴とする既存杭破砕撤去装置を提供する。
【0013】この装置によれば、ケーシングを既存杭の露出した頭端部に嵌合して回転駆動することにより、頭端部を螺旋羽根付きドリルヘッドで破砕できるとともに、カッターで既存杭内の鉄筋を切断することができる。また、鉄筋篭をケーシング内に収容した状態で地中孔から引き上げ、かつ、排出できる。しかも、ケーシングは小型コンパクトにできるから、作業車も大型重機でなく小型重機で足り、したがって、作業スペースも小さくて足りる。
【0014】さらに、前記カッターは、ハウジングの内底部に一対の油圧シリンダを点対称配置で並設し、それらの油圧シリンダのピストンロッドにはそれぞれ切削刃を着脱可能に取付けるとともに、それらの切削刃は直径方向で互いに前記ケーシングの内周面に向いて水平に保持されていることを特徴とする既存杭破砕撤去装置を提供する。したがって、油圧制御によるカッターの作動で既存杭内の鉄筋の切削ができるので、頭端部の破砕が容易となる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下この発明の実施の形態を図に基づき説明する。図1は既存杭破砕撤去装置1の正面図、図2はそのA−A断面図、図3は平面図及び図4は図1のB−B断面図である。図において、2は有底円筒状体としてのケーシングである。このケーシング2は既存杭Pの頭部に嵌合する円筒体からなり、上部は開口して内周縁に環状のフランジ部3を有し、下部は開いて既存杭Pを嵌合できる。フランジ部3の上面には係合凸部4が周方向へ一定間隔で形成されている。ケーシング2の深さは、単体として小型トラックにても搬送するのに都合のよい適宜の深さとする。ケーシング2の上部外周面には透孔10が肉盗みとして適宜形成され、その下部には窓孔11が直径方向で相対向して開設されている。窓孔11はケーシング2を2分割構成して上部2aとバンド12で結合した下部2bに開設されている。また、ケーシング2の下端部には掘削刃13が周方向へ一定間隔にて取付け固定されている。掘削刃13は土砂や岩石を掘削できる周知のものである。
【0016】フランジ3の係合凸部4に係合する係合凹部5を周縁部に一定間隔で形成した上底6がフランジ部3上に載置してボルト7で締結固定されている。上底6の上面中心部には回転駆動軸(ケリーバー)8の連結部9が設けられている。上底6の下面中心部には断面小判型のハウジング14が結合されて軸方向へ所定長さで延伸し、そのハウジング14の底部23には一対のカッター15,15が点対称配置で固定され、それらの切削刃16,16がケーシング2の内周面に向け互いに直径方向へ相対向して進退移動可能に配置されている。そのため、図5に示すように、ハウジング14の円弧状の側壁部にはカッター15,15に対面する開口部17,17が直径方向で相対向して開設されている。カッター15の上部には仕切壁18が水平に配設され、仕切壁18の上部には連結部9と結合した補強部14aが横断面十字状に形成され、開口部17,17以外は閉じられて仕切壁18から上部は密室空間に形成されている。
【0017】カッター15,15は、図2及び図4に示すように、ハウジング14内で底部23上に油圧シリンダ19,19を点対称配置で並列し、それらの一端部はブラケット20で底部23に固定され、他端部のピストンロッド21の自由端部には切削刃16が着脱可能に取り付けられている。この切削刃16の移動を案内するガイド22,22がハウジング14の底部23に相対向する側壁状に固定されている。切削刃16は楔形をしてその刃先は水平に位置している。この刃先がケーシング2の内周面に向けて進退移動する最大のストロークは、既存杭Pの外径までの半径長で足りる。なお、既存杭Pの直径に大小の差異が有る場合には、切削刃16の最大移動ストロークも変化しなければならないので、切削刃16を長いものと交換できるように、ピストンロッド21に脱着可能である。
【0018】ハウジング14の下端部にはドリルシャフト24が軸方向へ所定長さで延伸し、そのドリルシャフト24にはドリルヘッド25がロック部26で着脱可能に結合している。ロック部26はケーシング2の窓孔11に面しており、その窓孔11からドリルヘッド25の脱着操作を行うことができる。ドリルヘッド25は先端部にドリル27を設けるとともに、その上部に2枚の螺旋羽根28,28を直径方向で相対向してスパイラル状に巻き付けたシャフト29からなる。螺旋羽根28の下端部には複数個の掘削刃30が取り付けられている。
【0019】上記構成にかかる既存杭破砕撤去装置1の施工例を説明する。図6(A)に示すように、既存杭Pの打ち込まれた地表Eにおいて、既存杭Pの少なくとも頭端部が露出するように、バックホー又は掘削バケットで地中孔Qを所定深さに掘削し、かつ、その地中孔Q内に土留めのための土留ケーシング31を挿入する。
【0020】次に、その土留ケーシング31内に向け既存杭破砕撤去装置1を下降させて挿入する。ケーシング2は作業車32のクレーン33から吊支された回転駆動機34に係合するケリーバー等の回転駆動軸8の下端部に連結部9を介して連結されている。作業車32は小型重機で足り、したがって、作業スペースを多く必要としない利点を有する。
【0021】図6(B)に示すように、ケーシング2を既存杭Pの頭端部に軸心を一致させて嵌合し、回転駆動軸8を回転駆動機34で回転駆動するとケーシング2が回転する。ケーシング2の下端部に取付けられている掘削刃13が既存杭Pの外周部の土砂を掘削して既存杭Pの長手方向に掘り進んで既存杭Pを周囲の土砂から切り離す。また、ドリルヘッド25のドリル27が頭端部を破砕して分解し、破砕片は螺旋羽根28,28でケーシング2の内部上方へ押し上げられる。押し上げられた破砕片はハウジング14が断面小判型であるから、その平坦な側面とケーシング2との間に形成される所定容積の空間部に収容される。また、掘削刃30や螺旋羽根28,28の及ばない範囲にある鉄筋篭50(図2,図4参照)及びそれに付着したコンクリートはケーシング2の内周面とハウジング14との間の空間部に収容される。
【0022】ドリルヘッド25で所要の長さの頭端部を破砕した後、図2に示すように、既存杭P内の鉄筋篭50の縦筋51がケーシング2のフランジ部3に達してケーシング2が進まなくなる。そこで、油圧シリンダ15,15を駆動してピストンロッド21,21を押し出すと、切削刃16,16がガイド22,22に案内されて開口部17,17からケーシング2の内周面に向けて突出し、鉄筋篭50に圧接し、ケーシング2は回転しているので、図4に示すように切削刃16の刃先が鉄筋篭50の長手方向に組まれている縦筋51を切断する。縦筋51は切削刃16の刃先でケーシング2の内周面に押し付けられるように移動するが、ケーシング2の内周面がそれを阻止して効果的な切断ができる。
【0023】カッター15,15が回転してすべての縦筋51を切断した後、切削刃16,16がケーシング2の内周面付近へ最大ストロークに延伸した状態で、回転駆動軸8の回転を止めて上方へ引き、既存杭破砕撤去装置1を地中孔Qから引き揚げると、切断された鉄筋篭50の横筋52(図4参照、なお図2では省略)が切削刃16,16に引っ掛かることでケーシング2内に保持されたまま引き揚げられる。そこで、地上Eにおいてカッター15,15を作動させて切削刃16,16を開口部17,17内に引き込めると、ケーシング2内の鉄筋篭50は支持を失って地上に落下する。さらに、地中孔Q内の破砕された破砕片を公知の掘削バケット等にて地上Eへ搬出する。
【0024】次に、図6(C)に示すように、既存杭破砕撤去装置1を再び地中孔Q内に挿入し、かつ、地中孔Q内にベントナイト溶液40を注入して前記同様の作業を繰り返しながら、既存杭Pを完全に破砕撤去する。ベントナイト溶液40は地上に設けてある水槽からポンプにて送り込まれる(図示略)。かくして既存杭Pの完全撤去が終了するのであるが、既存杭Pの直径に大小の差異があることがあり、その場合には直径の異なる他のケーシングと置換して上記同様の作業を行う。
【0025】ケーシング2の置換は、ケーシング2のフランジ部3の係合凸部4に、係合凹部5が係合する上底6がフランジ部3上に載置されてボルト7で締結固定されているので、ボルト7の脱着によりケーシング2のみを変更することである。ケーシング2は予め大小のものが作成してあり、それらのフランジ部には係合凹部5が係合すべき係合凸部4が共に形成されている。また、ケーシング2の直径が大きくなると、カッター15の切削刃16の移動ストロークでは鉄筋篭50の縦筋51に届かないことも有り得るので、その場合にはカッター15,15を用意された長尺のものに置換する。
【0026】なお、既存杭Pの破砕撤去工事完了後における地中孔Qは、図7(A)〜図7(B)に示すように、回転駆動軸8の下端部にフック42でトレミー管41を吊支し、これを地中孔Q内に挿入してベントナイト溶液40を水槽に回収しつつ、砂ソイルフィックス剤43を注入する。最後に、図7(C)に示すように、土留ケーシング31を引き抜くことによって埋め戻し工事が完了する。
【0027】
【発明の効果】以上説明したこの発明によれば、既存杭をその頭端部から順次破砕しながら全体を撤去することができるから、すべて機械的な作業にて安全で軽便容易かつ迅速な既存杭撤去ができる。また、ケーシングが既存杭の直径とほとんど大差のない直径とするとともに、所要の深さを有するもので足りるから、装置全体としては極めて小型、コンパクトとなるため、作業機も小型重機で足りるから、作業スペースも広大に必要とせず、狭い現場で小さい重機にて既存杭の破砕撤去工事を施工できる。
【出願人】 【識別番号】500137851
【氏名又は名称】江戸川基礎工事株式会社
【出願日】 平成12年4月10日(2000.4.10)
【代理人】 【識別番号】100062199
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 富士弥 (外3名)
【公開番号】 特開2001−288746(P2001−288746A)
【公開日】 平成13年10月19日(2001.10.19)
【出願番号】 特願2000−107740(P2000−107740)