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【発明の名称】 黄鉄鉱含有地盤の地盤膨張防止法
【発明者】 【氏名】川口 正人

【氏名】堀内 澄夫

【氏名】浅田 素之

【要約】 【課題】地盤の切土を行なうことなく地盤の膨張を食い止めることができる黄鉄鉱含有地盤の地盤膨張防止法を提供する。

【解決手段】ベントナイトスラリーを注入または混合することによって、ベントナイト改良地盤層2を地表面または任意深さに形成することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ベントナイトスラリーを注入または混合することによって、ベントナイト改良地盤層を地表面または任意深さに形成することを特徴とする黄鉄鉱含有地盤の地盤膨張防止法。
【請求項2】 ベントナイト成分を多く含む鉱石を用いベントナイト改良地盤層を地表面または任意深さに形成することを特徴とする黄鉄鉱含有地盤の地盤膨張防止法。
【請求項3】 上記ベントナイトスラリーの材料は、ベントナイトと水を主成分とするスラリーまたはベントナイトとアルコールなどの有機溶剤を主成分とするスラリーであることを特徴とする請求項1に記載の黄鉄鉱含有地盤の地盤膨張防止法。
【請求項4】 モルタルを注入し、または地盤と混合し、または任意深さの地盤表面に吹き付けることによって、改良地盤層を地表面または任意深さに形成することを特徴とする黄鉄鉱含有地盤の地盤膨張防止法。
【請求項5】 モルタルに繊維を混入することを特徴とする請求項4に記載の黄鉄鉱含有地盤の地盤膨張防止法。
【請求項6】 ベントナイトスラリー材料中、またはベントナイト成分を多く含む鉱石中、またはモルタル中にゼオライトを主成分とするイオン交換能力の高い物質を混入することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の黄鉄鉱含有地盤の地盤膨張防止法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、黄鉄鉱含有地盤の地盤膨張防止法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、黄鉄鉱などの硫化鉄が含まれる地盤には、空気や酸素を多く含む地下水に触れることによって硫酸が発生することが知られている。そして、発生した硫酸が地盤中に含まれるカルシウムなどと反応して石膏などを生成し、地表面付近では水分の蒸発により析出し、地盤が膨張する場合がある。
【0003】すなわち、通常は地下水には酸素が少なく、空気との接触が閉ざされた状態では硫化鉄は酸化されず風化はしないが、根切り工事などで、硫化鉄を含む地盤が空気と接触すると硫酸が生成される。そして、硫酸により地盤中に含まれるカルシウムが溶解し、石膏を溶かしこんだ地下水が生成し、これが毛細管現象等で地表面付近に上昇して乾燥する際に結晶が土粒子間隙に生成するため周辺の土粒子を押しやり、地盤の膨張、風化が発生するのである。
【0004】上述した地盤の膨張が生ずると、当該地盤上に各種建造物が建設された後に地盤が隆起現象などを引き起こし、建物に被害を及ぼしてしまう。このような問題の対策法として、当該地盤面を掘削し、地盤をときほぐすことで地盤内に空隙を生じさせ、この空隙によって膨張を抑えることを基本とし、さらに合成樹脂シートの敷設、コンクリートの敷設、不良地盤の入れ替え、油膜層による空気遮断するものがある(この技術としては、例えば、特許第2515682号、特許第2549345号等に示されたものがある)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来技術にあっては、基本的に対策工が必要とされる地盤を切土する必要があるため、作業工数が多くなるという問題がある。そこで、この発明は地盤の切土を行なうことなく地盤の膨張を食い止めることができる黄鉄鉱含有地盤の地盤膨張防止法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために請求項1に記載した発明は、ベントナイトスラリーを注入または混合することによって、ベントナイト改良地盤層(例えば、実施形態におけるベントナイト改良地盤層2)を地表面または任意深さに形成することを特徴とする。このように構成することで、ベントナイトスラリーにより低透水性のベントナイト改良地盤層を形成することが可能となり、このベントナイト改良地盤層により地下水の上昇、蒸散を防止することが可能となる。
【0007】請求項2に記載した発明は、ベントナイト成分を多く含む鉱石を用いベントナイト改良地盤層を地表面または任意深さに形成することを特徴とする。このように構成することにより、ベントナイト成分を多く含む鉱石を用いたベントナイト改良地盤層の当該ベントナイト成分による低透水性を利用して、地下水の上昇、蒸散を防止することが可能となる。
【0008】請求項3に記載した発明は、上記ベントナイトスラリーの材料は、ベントナイトと水を主成分とするスラリーまたはベントナイトとアルコールなどの有機溶剤を主成分とするスラリーであることを特徴とする。このように構成することで、ベントナイトと水を主成分とするベントナイトスラリー、あるいはベントナイトとアルコールなどの有機溶剤を主成分とするスラリーにより、低透過性を有するベントナイト改良地盤層を形成でき、地下水の上昇、蒸散を防止することが可能となる。
【0009】請求項4に記載した発明は、モルタルを注入し、または地盤と混合し、または任意深さの地盤表面に吹き付けることによって、改良地盤層(例えば、実施形態におけるモルタル層5)を地表面または任意深さに形成することを特徴とする。このように構成することにより、モルタルによる不透水空気層を形成でき、空気及び酸素を含む雨水が、黄鉄鉱含有地盤(例えば、実施形態における黄鉄鉱含有地盤1)中の硫化鉄と接触するのを防止できる。
【0010】請求項5に記載した発明は、モルタルに繊維を混入することを特徴とする。このように構成することで、モルタルを繊維により補強することが可能となる。
【0011】請求項6に記載した発明は、ベントナイトスラリー材料中、またはベントナイト成分を多く含む鉱石中、またはモルタル中にゼオライト等を主成分とするイオン交換能力の高い物質を混入することを特徴とする。このように構成することで、イオン交換能力の高い物質により、石膏生成原料である硫酸を固定化することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】地盤膨張を防止するためには、(1)原因となる物質である硫化鉄を除去すること、(2)硫酸生成を阻止するため当該地盤に空気を触れさせないこと、(3)析出の原因となる地盤中のカルシウム分を除去すること、(4)硫酸酸性を中和すること、(5)生成石膏の毛細管現象による地表部への上昇を阻止すること、(6)地表面の乾燥を防止すること、(7)地下水位を上昇し当該地盤を飽和させること、(8)地下水位面を下げ、毛細管現象によって上昇する膨張を引き起こす化合物等の溶質分を抑えること、のそれぞれ及び組み合せで実施できる。
【0013】以下に述べる実施形態は、上記方法のうち(2)硫酸生成を阻止するために当該地盤に空気を触れさせないこと、(5)生成石膏の毛細管現象による地表部への上昇を阻止することを基本として、かつ、当該地盤を切土することなく地盤の膨張を抑えることができるものである。
【0014】以下、この発明の発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、黄鉄鉱含有地盤層1が存在している対象地盤の所定深さに、図2に示すように、ポンプPによりベントナイトスラリーを圧送しベントナイトスラリーによる注入工法を施しベントナイト改良地盤層2を形成する。この注入工法はコラムジェット工法などに習った湿式地盤改良工法である。この実施形態では、図3に示すように駆体3に地下部分がある場合や、揚水ピットなどの設置が考えられている場合を例にしているため、根切り床付け面となる位置にベントナイトスラリーによる注入を行なうものである。
【0015】ここで、ベントナイトスラリーの材料は、例えば、ベントナイトと水を主成分とするスラリーやベントナイトとアルコールなどの有機溶剤を主成分とするスラリーを用いることができる。また、ベントナイトスラリーに換えてベントナイト成分を多く含む鉱石(破砕したベントナイト原鉱(0−20mm)など)を用いて上記ベントナイト改良地盤層2を形成しても良い。さらに、ベントナイトスラリーの材料中、あるいはベントナイト成分を多く含む鉱石中にゼオライト等を主成分とするイオン交換能力の高い物質を混入して、石膏生成原料である硫酸を固定化することもできる。
【0016】このようにして所定の深さにベントナイト改良地盤層2を形成した後、駆体3の地下部分、あるいは揚水ピットの設置場所に対応する根切り床付け面まで、地盤を掘削し、ベントナイトスラリー、あるいはベントナイト成分を多く含む鉱石を撒き出し、転圧する(図示省略)。
【0017】次に、図3に示すように、掘削した地盤の部分に駆体3を施工して、埋設土Uにより埋戻しを行ない工事を終了する。尚、上記駆体3は脚部3aがベントナイト改良地盤層2の下方に位置している。
【0018】したがって、上記実施形態によれば、ベントナイト改良地盤層2によって地盤改良を行ない、地下水の上昇、蒸発を防止することができるため、地盤の膨張や風化による駆体3への悪影響が発生しなくなる。すなわち、ベントナイト改良地盤層2におけるベントナイトの低透水性により、ベントナイト改良地盤層2の上側に地下水が上昇したり、蒸発することがなくなるため、仮に石膏が溶け込んだ地下水が生じても、これが地表面付近に上昇することはないので、石膏が溶け込んだ地下水が析出して地盤の膨張などが起きる余地がなくなるのである。
【0019】次に、この発明の第2実施形態を図1,図3を援用し図4に基づいて説明する。尚、前記実施形態と同一部分に同一符号を付して説明する。この実施形態は、図1に示すように対象となる黄鉄鉱含有地盤層1が存在している地盤に、駆体3の地下部分、あるいは揚水ピット等の設置場所に対応する根切り床付け面まで、地盤を掘削し、この掘削された地盤の表面4にモルタルをシール工法により吹き付けてモルタル層5を形成する。
【0020】ここで、このシール工法に換えてモルタルに繊維を混入した繊維強化モルタル吹きつけ工法としてもよい。モルタルに繊維を混入することによりモルタル層5を補強することができる。また、第1実施形態と同様に、モルタル中にゼオライトを主成分とするイオン交換能力の高い物質を混入して、石膏生成原料である硫酸を固定化することもできる。このようにして所定の深さにモルタル層5形成した後、図3に示すように駆体3を施工して、埋戻しを行ない工事を終了する。
【0021】したがって、上記実施形態によれば、モルタル層5によって地盤改良を行なうことにより、モルタル層5が不透水空気層(水も空気も透過させない層)として機能するため、直下の硫化鉄地盤と、空気及び酸素を含む雨水との接触を阻止でき、地盤の膨張や風化による駆体3への悪影響が発生しなくなる。すなわち、硫化鉄を含む地盤が空気や酸素を含む雨水と接触することによる硫酸の生成が阻止されるため、その後のカルシウムの溶解が起きないのである。尚、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、改良地盤を任意の深さに形成する場合について説明したが、地表面に形成する場合にも適用することができる。
【0022】
【発明の効果】以上説明してきたように、請求項1に記載した発明によれば、ベントナイトスラリーにより低透水性のベントナイト改良地盤層を形成することが可能となり、このベントナイト改良地盤層により地下水の上昇、蒸散を防止することが可能となるため、石膏が溶け込んだ地下水が地表面に上昇して地盤が膨張するのを防止できる効果がある。
【0023】請求項2に記載した発明によれば、ベントナイト成分を多く含む鉱石を用いたベントナイト改良地盤層の当該ベントナイト成分による低透水性を利用して、地下水の上昇、蒸散を防止することが可能となるため、石膏が溶け込んだ地下水が地表面に上昇して地盤が膨張するのを防止できる効果がある。
【0024】請求項3に記載した発明によれば、ベントナイトと水を主成分とするベントナイトスラリー、あるいはベントナイトとアルコールなどの有機溶剤を主成分とするスラリーにより、低透過性を有するベントナイト改良地盤層を形成でき、地下水の上昇、蒸散を防止することが可能となるため、石膏が溶け込んだ地下水が地表面に上昇して地盤が膨張するのを防止できる効果がある。
【0025】請求項4に記載した発明によれば、モルタルによる不透水空気層を形成でき、空気及び酸素を含む雨水が黄鉄鉱含有地盤の硫化鉄に接触するのを防止できるため、雨水に含まれる空気及び酸素が原因となる硫酸の生成を阻止して地盤が膨張するのを防止できる効果がある。
【0026】請求項5に記載した発明によれば、モルタルを繊維により補強することが可能となるため、モルタルによる不透水空気層の強度を高めることができる効果がある。
【0027】請求項6に記載した発明によれば、イオン交換能力の高い物質により、石膏生成原料である硫酸を固定化することが可能となるため、カルシウムを溶解させることがなくなり、その結果、結晶の析出する要因をなくし、地盤が膨張するのを防止できる効果がある。
【出願人】 【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
【出願日】 平成12年4月6日(2000.4.6)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外3名)
【公開番号】 特開2001−288733(P2001−288733A)
【公開日】 平成13年10月19日(2001.10.19)
【出願番号】 特願2000−104819(P2000−104819)