| 【発明の名称】 |
電気絶縁用アラミド繊維シート状基材及びその製造法 |
| 【発明者】 |
【氏名】平岡 宏一
【氏名】車谷 茂
【氏名】牧村 訓男
|
| 【要約】 |
【課題】ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維又はこれを主体とする電気絶縁用アラミド繊維シート状基材の異物生成を抑え、製品歩留まりを上げる。
【解決手段】本発明が特徴とするところは、ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維がプレッシャークッカー処理(圧力2000hPa程度、温度120℃程度で20時間程度)されている点にある。まず、結晶サイズを大きくし強度を高めたポリパラフェニレンテレフタラミド繊維をプレッシャークッカー処理し、当該繊維又は当該繊維を主成分としてシート状基材(不織布や織布)を構成する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維又は当該繊維を主成分としてなるシート状基材であって、前記ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維がプレッシャークッカー処理されていることを特徴とする電気絶縁用アラミド繊維シート状基材。 【請求項2】シート状基材が不織布である請求項1記載の電気絶縁用アラミド繊維シート状基材。 【請求項3】ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維をプレッシャークッカー処理し、当該繊維又は当該繊維を主成分としてシート状基材を構成することを特徴とする電気絶縁用アラミド繊維シート状基材の製造法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、熱硬化性樹脂を含浸し、プリント配線板の電気絶縁層を形成するのに適した電気絶縁用アラミド繊維シート状基材及びその製造法に関する。 【0002】 【従来の技術】電子機器は部品組込みの高密度化により小型軽量化され、電子機器に使用されるプリント配線板も多層プリント配線板となっている。そして、多層プリント配線板への電子部品の搭載も表面実装方式が主流となってきた。多層プリント配線板の層間の絶縁層は、一般に、ガラス繊維織布を基材としてこれにエポキシ樹脂を含浸し硬化させたもので構成されている。多層プリント配線板に電子部品を搭載する場合、電子部品と絶縁層の熱膨張係数をできるだけマッチングさせる必要があるが、ガラス繊維織布とエポキシ樹脂の組合せによる絶縁層は、搭載する電子部品より熱膨張係数がかなり大きい。絶縁層とこれに半田付により搭載した電子部品の間の熱膨張係数差が大きいと、使用中の冷熱サイクルで前記熱膨張係数差に起因して発生した応力が半田接続部に集中し、半田接続部にクラックを生じることがある。このような観点から、多層プリント配線板の絶縁層として、負の熱膨張係数を有するパラ系アラミド繊維不織布や織布をシート状基材とし、これにエポキシ樹脂を含浸した構成が注目されるようになってきた。 【0003】上記パラ系アラミド繊維は、ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維(例えば、デュポン製「ケブラー」)と、ポリパラフェニレン3,4−ジフェニルエーテルテレフタラミド繊維(例えば、帝人製「テクノーラ」)が代表的である。ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維とポリパラフェニレン3,4−ジフェニルエーテルテレフタラミド繊維を比較すると、両者にはそれぞれ特徴があり、その繊維製造上の違いから、前者の繊維は加熱収縮が少なく、これを基材とする絶縁層は、加熱処理を受けてもそりねじれが小さいと認識されている。パラ系アラミド繊維は、一般に芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸クロライドとを重合反応して得られる重合溶液を湿式紡糸して製造されるが、前記ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維は、具体的には、重合溶液からポリマを単離し濃硫酸などの無機酸に溶解した溶液を紡糸して製造される。無機酸は水酸化ナトリウムで中和され、その後、水洗によりイオン分(ナトリウムの無機塩)が除去される。しかし、結晶サイズを大きく(70オングストローム)し高強度にしたポリパラフェニレンテレフタラミド繊維から水洗によりイオン分を除去することは難しく、このようなポリパラフェニレンテレフタラミド繊維からなる又は当該繊維を主成分としてなるシート状基材に熱硬化性樹脂を含浸し加熱加圧成形してなる絶縁層は、残留したイオン分の存在で耐湿絶縁性が十分でない。イオン分の残留は、ポリパラフェニレン3,4−ジフェニルエーテルテレフタラミド繊維には見られない、ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維の不利な点である。 【0004】そこで、結晶サイズを大きくする前(40オングストローム)にポリパラフェニレンテレフタラミド繊維を水洗してイオン分を抽出除去し、このようなポリパラフェニレンテレフタラミド繊維を用いてシート状基材を構成することが提案されている。このままでは繊維強度が小さいので、シート状基材を構成してから、これに高温(390℃程度)の熱処理を施してポリパラフェニレンテレフタラミド繊維の結晶サイズを大きくし、繊維強度を高めるのである。しかし、シート状基材を高温で熱処理すると、構成成分が一部炭化して異物となりやすい。殊に、シート状基材が不織布の場合は、繊維同士を結着しているバインダ成分が炭化して異物となりやすい。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】上記異物の生成は、製品歩留まりを低下させる。また、シート状基材に含まれた異物は、このようなシート状基材に樹脂を含浸して絶縁層を構成し、その絶縁層上に形成したプリント配線の短絡の原因にもなる。 【0006】本発明が解決しようとする課題は、ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維又はこれを主体とする電気絶縁用アラミド繊維シート状基材の異物生成を抑え、製品歩留まりを上げることである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明が対象とする電気絶縁用アラミド繊維シート状基材は、ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維又は当該繊維を主成分としてなるシート状基材である。上記課題を達成するために、本発明が特徴とするところは、ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維がプレッシャークッカー処理されている点にある。このようなシート状基材の製造は、まず、ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維をプレッシャークッカー処理し、当該繊維又は当該繊維を主成分としてシート状基材を構成することにより行なう。 【0008】プレッシャークッカー処理は、大気圧より高圧の雰囲気で100℃を越える水中にポリパラフェニレンテレフタラミド繊維を浸漬する処理である。プレッシャークッカー処理によれば、結晶サイズを大きくしたポリパラフェニレンテレフタラミド繊維からもイオン分を良好に抽出除去することができる。本発明に係るシート状基材は、結晶サイズを大きくしたポリパラフェニレンテレフタラミド繊維を用いてシート状基材を構成してあり、その後に、繊維の結晶サイズを大きくするための高温の熱処理を必要としない。これによって、高温の熱処理による異物の生成を回避することができる。このようにして、ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維を用いつつ、耐湿絶縁性低下の原因となるイオン分の残留が少なく、プリント配線短絡の原因となる異物の存在も少ない電気絶縁用アラミド繊維シート状繊維基材の提供が可能となる。 【0009】 【発明の実施の形態】ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維又は当該繊維を主成分としてなる本発明に係るシート状基材は、不織布や織布である。前記ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維はプレッシャークッカー処理されたものであるが、当該処理は、結晶サイズを大きくし強度を高めたたポリパラフェニレンテレフタラミド繊維を、大気圧より高圧の雰囲気で100℃を越える水中に浸漬して実施する。例えば、圧力2000hPa程度、温度120℃程度で20時間程度、水中に浸漬処理する。このような処理によれば、結晶サイズを大きくしたポリパラフェニレンテレフタラミド繊維からも、内部に残留しているイオン分を抽出除去することができる。 【0010】上記のように既に結晶サイズを大きくして強度を高めてあり、しかもイオン分の残留が少ないポリパラフェニレンテレフタラミド繊維で又は当該繊維を主成分として、不織布や織布形態のシート状基材を構成する。不織布は、前記ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維のチョップを水中に分散し抄造して製造するが、繊維同士を結着するために適宜バインダを適用する。バインダは、例えば、不織布にスプレーして加熱硬化させるエポキシ樹脂、繊維同士の絡み合いを実現するために混抄するアラミド繊維等のパルプ、熱融着性を有する熱可塑性の繊維やフィブリドである。熱融着性を有する熱可塑性の繊維やフィブリドは、これを混抄した不織布に熱を加えたカレンダ処理を施すことによりポリパラフェニレンテレフタラミド繊維チョップに熱融着しバインダ機能を発揮する。不織布には、厚み調整や前記熱融着のためのカレンダ処理工程で熱が加えられるが、この熱はバインダ成分等を炭化させるほど高温ではない。 【0011】上記のシート状基材に熱硬化性樹脂を含浸乾燥したプリプレグを加熱加圧成形してプリント配線板の絶縁層とする。 【0012】 【実施例】実施例十分に結晶サイズを大きくしたポリパラフェニレンテレフタラミド繊維のチョップ(デュポン製「ケブラー」)を、1960hPa、121℃の条件で20時間プレッシャークッカー処理した。この繊維を水中に分散させ、シート状に抄造し、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製)を主成分とする樹脂バインダを水分散媒のエマルジョン形態でスプレーし、160℃−30分間乾燥して、60g/m2(樹脂バインダ付着量8質量%)の不織布とした。この不織布は、厚み調整のために、温度300℃,線圧200kg/cmでカレンダ処理を施してある。上記不織布に含浸するエポキシ樹脂組成物として、三官能エポキシ樹脂20質量部、ビスフェノールA型二官能エポキシ樹脂31質量部、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂19質量部及び臭素化フェノールノボラック樹脂30質量部硬化促進剤として2−エチル4−メチルイミダゾール0.2質量部をメチルエチルケトン30質量部に溶解し、ワニスを調製した。このワニスを上記不織布に含浸し、150℃−5分間乾燥してプリプレグ(樹脂含有量52質量%)を得た。このプリプレグを5枚重ねた両側に18μm厚の銅箔を配し、温度170℃、圧力4.9MPaの条件で60分間加熱加圧成形し0.5mm厚の銅張り積層板を得た。この銅張り積層板は、銅箔を所定の配線パターンにエッチング加工してプリント配線板とする。 【0013】従来例結晶サイズの小さいポリパラフェニレンテレフタラミド繊維のチョップ(デュポン製「ケブラー」)を水洗した後、水中に分散させ、シート状に抄造し、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製)を主成分とする樹脂バインダを水分散媒のエマルジョン形態でスプレーし、160℃−30分間乾燥して、60g/m2(樹脂バインダ付着量8質量%)の不織布とした。この不織布は、厚み調整のために、温度300℃、線圧200kg/cmでカレンダ処理を施してある。さらに、ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維の結晶サイズを大きくするために、温度390℃で熱処理を施してある。この不織布を用いて、以下、実施例と同様に銅張り積層板を得た。 【0014】参考例ポリパラフェニレン3,4−ジフェニルエーテルテレフタラミド繊維のチョップ(帝人製「テクノーラ」)を水中に分散させ、シート状に抄造し、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製)を主成分とする樹脂バインダを水分散媒のエマルジョン形態でスプレーし、160℃−30分間乾燥して、60g/m2(樹脂バインダ付着量8質量%)の不織布とした。この不織布は、厚み調整のために、温度300℃,線圧200kg/cmでカレンダ処理を施してある。この不織布を用いて、以下、実施例と同様に銅張り積層板を得た。 【0015】上記実施例、従来例、参考例の不織布の異物(炭化物)発生状況を観察した結果を表1に示した。観察には、100μmの大きさまで検知できる外観検査機を用いた。不良品かどうかの判定は、340×510mmのプリプレグに0.6mm以上の異物が一点でもあれば、不良として判定する。表1には、200枚のプリプレグを検査した結果の不良率を示す。また、プリント配線板の絶縁層の耐湿絶縁性を評価した結果を表1に併せて示した。評価には、ライン幅/ライン間スペース=100μm/100μmの評価パターンを用いる。これを、50Vの電圧を印加した状態で85℃―85%RHの恒温恒湿槽におき、ライン間の抵抗が108Ωまで低下する時間を測定する。 【0016】 【表1】
【0017】表1から、本発明に係る実施例においては、異物発生が少なく製品歩留りが向上していることを理解できる。また、実施例においては、絶縁層の耐湿絶縁性が良好であり、ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維からイオン分が十分に除去され残留イオン分が少ないことも理解できる。実施例の耐湿絶縁性は、参考例と同等である。 【0018】 【発明の効果】上述のように、本発明に係るアラミド繊維シート状基材は、ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維を用いつつ、残留イオン分を少なくすることとに伴う異物生成が回避され、製品歩留りを高くすることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000001203 【氏名又は名称】新神戸電機株式会社
|
| 【出願日】 |
平成12年3月21日(2000.3.21) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2001−271287(P2001−271287A) |
| 【公開日】 |
平成13年10月2日(2001.10.2) |
| 【出願番号】 |
特願2000−77457(P2000−77457) |
|