トップ :: D 繊維 紙 :: D06 繊維または類似のものの処理;ラウンドリ−;他に分類されない可とう性材料




【発明の名称】 繊維材料の難燃加工方法及び難燃加工剤
【発明者】 【氏名】山下 孝雄

【氏名】細田 正昭

【氏名】宮崎 孝司

【要約】 【課題】繊維材料に、風合いを損なうことなく、洗濯耐久性を有する難燃性を付与する。

【解決手段】ビニルホスホネート化合物とホスファイト化合物とを、繊維材料に付与した後、電子線を照射することを含む繊維材料の難燃加工方法、及びビニルホスホネート化合物、ホスファイト化合物及び溶剤を含む電子線照射型の繊維材料用難燃加工剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記一般式(1)で表されるビニルホスホネート化合物と、下記一般式(2)及び(3)で表されるホスファイト化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種とを、繊維材料に付与した後、電子線を照射することを含む、繊維材料の難燃加工方法。
【化1】

(上式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R3 は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、nは1又は2であり、mは1〜4の整数である)
【化2】

(上式中、R4 は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R5 は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す)
【化3】

(上式中、R6 及びR7 はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す)
【請求項2】 溶剤100重量部に対して、前記一般式(1)で表されるビニルホスホネート化合物を5〜100重量部、前記一般式(2)及び(3)で表されるホスファイト化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を2〜90重量部含有する処理液を、繊維材料100重量部に対して10〜150重量部付与した後、電子線を照射する、請求項1記載の難燃加工方法。
【請求項3】 請求項2に記載した処理液が、さらに、前記一般式(1)、(2)、(3)の化合物の合計100重量部に対して0.01〜5.0重量部の重合開始剤を含む、請求項1又は2記載の難燃加工方法。
【請求項4】 前記一般式(1)で表されるビニルホスホネート化合物、前記一般式(2)及び(3)で表されるホスファイト化合物からなる群から選ばれるすくなくとも1種及び溶剤を含む、電子線照射型の繊維材料用難燃加工剤。
【請求項5】 溶剤100重量部に対して、前記一般式(1)で表されるビニルホスホネート化合物を5〜100重量部、前記一般式(2)及び(3)で表されるホスファイト化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を2〜90重量部含有する、請求項4記載の難燃加工剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、繊維材料の難燃加工方法及び難燃加工剤に関する。
【0002】
【従来の技術】洗濯の繰り返しによっても難燃性の低下が少ない繊維材料の加工方法として、ビニルホスホネートオリゴマーやビニルホスホネートの溶液で繊維材料を処理した後電子線を照射して重合させることにより、難燃性ポリマーを繊維材料に固着させる方法が知られている。しかしながら、この方法では、難燃性を付与するためのこれらの化合物中のリン含有量が十分でないことから、難燃性を十分に発揮させるためにはかなりの量のポリマーを繊維材料に固着させることが必要となり、その結果風合いが損なわれるという問題が生じる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、繊維材料に、風合いを損なうことなく、洗濯耐久性を有する難燃性を付与することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の如き従来技術の状況に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、ビニルホスホネート化合物と分子量の比較的小さなホスファイト化合物とを繊維材料に付与し、その後電子線を照射して反応させると、繊維材料上で共重合と付加重合がいっしょに起こり、その結果として少ない付着ポリマー量でリン含有量を向上させることが可能となり、従って風合いを損うことなく難燃性に富む繊維材料を得ることができることを見出し、この知見に基づき本発明を完成させるに至ったものである。
【0005】すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるビニルホスホネート化合物と、下記一般式(2)及び(3)で表されるホスファイト化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種とを、繊維材料に付与した後、電子線を照射することを含む、繊維材料の難燃加工方法を提供する。
【0006】
【化4】

【0007】(上式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R3 は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、nは1又は2であり、mは1〜4の整数である)
【0008】
【化5】

【0009】(上式中、R4 は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R5 は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す)
【0010】
【化6】

【0011】(上式中、R6 及びR7 はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す)
本発明は、また、上記一般式(1)で表されるビニルホスホネート化合物、上記一般式(2)及び(3)で表されるホスファイト化合物からなる群から選ばれるすくなくとも1種及び溶剤を含む、電子線照射型の繊維材料用難燃加工剤を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明に用いられる上記一般式(1)で表されるビニルホスホネート化合物としては、例えば、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジエチル−(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジエチル−(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェートなどが挙げられる。
【0013】本発明に用いられる上記一般式(2)で表されるホスファイトとしては、モノメチルホスファイト、モノエチルホスファイト、モノプロピルホスファイト、ジメチルホスファイト、ジエチルホスファイト及びジプロピルホスファイトが挙げられ、これらのうちでは、化合物中のリン含有量の点から、モノメチルホスファイト、モノエチルホスファイト、ジメチルホスファイト及びジエチルホスファイトが好ましい。
【0014】また、本発明に用いられる上記一般式(3)で表されるホスファイトとしては、例えば、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどが挙げられる。本発明においては、上記一般式(1)、(2)、(3)の化合物を繊維材料に付与する際の処理の容易性から、取扱いの容易な溶液の形で用いることが好ましく、かかる溶液の溶剤としては上記一般式(1)、(2)、(3)の化合物を溶解するものであれば制限無く用いることができるが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、エチレングリコール、エーテル類、水などを挙げることができる。
【0015】本発明においては、上記の如き溶剤100重量部に対して、上記一般式(1)で表されるビニルホスホネート化合物を5〜100重量部、上記一般式(2)及び(3)で表されるホスファイト化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を2〜90重量部含有する溶液とするのが好ましい。また、溶液中の上記一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物の合計量は、10〜70重量%であるのが好ましい。合計量が10重量%未満であると、繊維材料を処理した後の乾燥工程における乾燥エネルギーを多く必要とすることとなり、他に特別の利点も得られ難くなる。また、70重量%を超えると、繊維材料に対して均一に付与することが難しくなる恐れがある。
【0016】本発明において用いられる繊維材料としては、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、アクリル、ビニロンなどの合成繊維、アセテート、スフなどの半合成繊維、レーヨンなどの再生繊維、綿、毛、麻、絹などの天然繊維、及びこれらの繊維を混紡、交織、交編などした複合繊維が挙げられ、その形態としてはわた、糸、編物、織物、不織布などが挙げられる。
【0017】本発明において用いられる繊維材料への処理方法としては、従来より行われている方法でよく、例えば、上記一般式(1)の化合物、上記一般式(2)及び/又は(3)の化合物、溶剤、及び場合によっては後述する如き重合開始剤を含む処理剤を用い、パディング処理、スプレー処理などにより繊維材料に付与後、電子線を照射して固着し、その後ソーピング処理及び乾燥をする方法がある。この時、照射する電子線量としては好ましくは1〜80Mrad、さらに好ましくは2〜40Mradであり、電子線照射の際の雰囲気としては窒素雰囲気下が好ましい。また、ソーピング処理、乾燥などの条件については、用いられる繊維材料に対して従来から用いられているような条件でよく、場合により乾燥の後に加熱工程(セット工程)を加えてもよい。
【0018】本発明において使用される上記一般式(1)で表されるビニルホスホネート化合物は重合性を有する化合物であり、また上記一般式(2)又は(3)で表されるホスファイト化合物との反応性が高い化合物であるから、電子線を照射をすることによって、繊維材料上において、上記一般式(1)で表されるビニルホスホネート化合物と、上記一般式(2)及び(3)で表されるホスファイト化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が、ビニルホスホネート化合物自体の重合物及びビニルホスホネート化合物とホスファイト化合物との反応から得られる下記一般式(4)及び/又は(5)の付加重合物を生成して、難燃性に寄与するものと推定される。
【0019】
【化7】

【0020】(上式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R3 は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、R4 は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R5 は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、nは1又は2であり、mは1〜4の整数である)
【0021】
【化8】

【0022】(上式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R3 は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、R6 及びR7 はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、nは1又は2であり、mは1〜4の整数である)
また、本発明においては、これらの反応を促進させるために、処理液に重合開始剤を添加することが好ましい。この時用いられる重合開始剤としては、従来よりビニル系単量体の重合に用いられている重合開始剤を制限無く使用することができ、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩などのアゾ系化合物、t−ブチルパーオキシド、過酸化水素、ベンゾイルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシドなどの過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化物と還元剤との組み合わせによるいわゆるレドックス系開始剤などが挙げられる。重合開始剤は、上記一般式(1)、(2)、(3)の化合物の合計100重量部に対して、0.01〜5.0重量部の量で用いるのが好ましい。
【0023】さらに、本発明においては、難燃性を阻害しない範囲において、柔軟剤、帯電防止剤、抗菌剤やその他の仕上剤を併用して処理を行ってもよい。
【0024】
【実施例】以下に実施例を用いて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1ジフェニル−(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート20重量部及びジメチルホスファイト6重量部をジメチルホルムアルデヒド(DMF)74重量部に溶解した処理液を作成した。この処理液を用いて、ポリエステル100%の織物(目付115g/m2 )をパディング処理(ピックアップ70%)し、次にこれを乾燥せずに、窒素雰囲気下で20Mradの電子線照射を行った。その後、60℃で10分間ソーピングし、120℃で1分間乾燥した。
【0025】実施例2モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート15重量部及びジメチルホスファイト10重量部をジメチルホルムアルデヒド(DMF)75重量部に溶解した処理液を作成した。この処理液により綿100%の織物(目付130g/m2 )をパディング処理(ピックアップ65%)し、次にこれを乾燥せずに、窒素雰囲気下で12Mradの電子線照射を行った。その後、60℃で10分間ソーピングし、120℃で2分間乾燥した。
【0026】実施例3ジフェニル−(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート40重量部及びジエチルホスファイト10重量部をジオキサン50重量部に溶解した処理液を作成した。この処理液によりポリエステル/綿(65/35)の混紡織物(目付125g/m2 )をパディング処理(ピックアップ75%)し、次にこれを乾燥せずに、窒素雰囲気下で10Mradの電子線照射を行った。その後、60℃で10分間ソーピングし、120℃で2分間乾燥した。
【0027】実施例4ジフェニル−(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート20重量部及び9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド15重量部をテトラヒドロフラン(THF)65重量部に溶解した処理液を作成した。この処理液によりポリエステル100%の織物(目付115g/m2 )をパディング処理(ピックアップ70%)し、次にこれを乾燥せずに、窒素雰囲気下で20Mradの電子線照射を行った。その後、60℃で10分間ソーピングし、120℃で1分間乾燥した。
【0028】実施例5モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート15重量部及び9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド10重量部をテトラヒドロフラン(THF)75重量部に溶解した処理液を作成した。この処理液により綿100%の織物(目付130g/m2 )をパディング処理(ピックアップ65%)し、次にこれを乾燥せずに、窒素雰囲気下で12Mradの電子線照射を行った。その後、60℃で10分間ソーピングし、120℃で2分間乾燥した。
【0029】実施例6ジフェニル−(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート20重量部、ジメチルホスファイト6重量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部をジメチルホルムアルデヒド(DMF)74重量部に溶解した処理液を作成した。この処理液によりポリエステル100%の織物(目付115g/m2 )をパディング処理(ピックアップ70%)し、次にこれを乾燥せずに、窒素雰囲気下で20Mradの電子線照射を行った。その後、60℃で10分間ソーピングし、120℃で1分間乾燥した。
【0030】比較例1ビニルホスホネートオリゴマーCR−106(大八化学工業(株)製)50重量部をジオキサン50重量部に溶解した処理液を作成した。この処理液により綿100%の織物(目付130g/m2 )をパディング処理(ピックアップ65%)し、次にこれを乾燥せずに、窒素雰囲気下で12Mradの電子線照射を行った。その後、60℃で10分間ソーピングし、120℃で2分間乾燥した。
【0031】比較例2ジフェニル−(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート45重量部をジメチルホルムアミド(DMF)55重量部に溶解した処理液を作成した。この処理液によりポリエステル100%の織物(目付115g/m2 )をパディング処理(ピックアップ70%)し、次にこれを乾燥せずに、20Mradの電子線照射を行った。その後、60℃で10分間ソーピングし、120℃で1分間乾燥した。
【0032】処理繊維材料の評価実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた処理繊維材料の難燃性、風合いを評価した結果を表1に示す。なお、難燃性は、JIS K−7201に準拠した酸素指数で評価し、風合いは、JIS L−1084 A法(カンチレバー法)に準拠した剛軟度で評価した。酸素指数の数値が大きいほど難燃性に優れており、剛軟度の値が小さいほど柔軟性が大きい。また、洗濯はJIS L−0844に準拠した方法で行った。
【0033】
【表1】

【0034】表1の結果からもわかるように、実施例1〜6の処理繊維材料はいずれも優れた難燃性を示し、洗濯耐久性も良好であった。また、これらの繊維材料は従来の難燃加工処理材料に比較して風合いの変化もあまりなく、良好であった。比較例1の処理繊維材料は実施例のものと比較して難燃性においては同等であるが、風合いは粗硬であった。比較例2の処理繊維材料はリンの含有量が少ないためか難燃性がやや劣る結果であった。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、繊維製品の風合いに影響が少なく、優れた洗濯耐久性を有する難燃性繊維材料を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
【出願日】 平成12年3月6日(2000.3.6)
【代理人】 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外4名)
【公開番号】 特開2001−254272(P2001−254272A)
【公開日】 平成13年9月21日(2001.9.21)
【出願番号】 特願2000−65720(P2000−65720)