| 【発明の名称】 |
繊維構造体及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】都築 誠
【氏名】安居 義治
【氏名】堀 藤夫
|
| 【要約】 |
【課題】バルク状の繊維構造体を効率良く製造することを可能にする。
【解決手段】繊維構造体1は丸打ち組みひもを扁平に押し潰して断面がほぼ長方形をなすように形成された帯状素材2が、折り畳まれて積層された状態で配置されて所定形状に賦形されている。繊維構造体1の形状保持用の糸3は帯状素材2の面と直交する一方向にのみ配列されている。帯状素材2は折り返し位置がピンにより規制されて配置されるため、折り返し幅が部分的に異なるように折り畳まれて配置される場合も所定形状に精度良く賦形される。帯状素材2の材質には従来より生体材料として試作、実用化されている有機繊維が使用される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 織物、編物、組物等の布で形成した帯状素材を屈曲させて所定の形状に賦形し、その所定形状を保持するように糸で縫った繊維構造体。 【請求項2】 前記帯状素材として丸打ちブレーダで形成された組物を扁平に押し潰して形成されたものが使用されている請求項1に記載の繊維構造体。 【請求項3】 前記帯状素材は折り返し幅が部分的に異なるように折り畳まれて積層された状態に配置されている請求項1又は請求項2に記載の繊維構造体。 【請求項4】 前記帯状素材にはその幅が規則的に変化するように形成されたものが使用されている請求項3に記載の繊維構造体。 【請求項5】 前記折り畳まれた積層部の外周を覆うように前記帯状素材が連続して配置されている請求項3又は請求項4に記載の繊維構造体。 【請求項6】 織物、編物、組物等の布で形成した帯状素材を、ピンを使用してその屈曲位置を決めて所定の形状に賦形した後、所定形状を保持するために前記帯状素材の積層箇所を糸で縫う工程を有する繊維構造体の製造方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は繊維構造体及びその製造方法に係り、詳しくは、例えばインプラント材料や衝撃吸収材として好適な繊維構造体及びその製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】特開平7−148243号公報及びBiomaterials 19 (1998) 617-635には、有機繊維を三次元の織組織もしくは編組織、又はこれらを組み合わせた複合組織としてなる生体適合性を備えたバルク状の構造体を基材としたものが開示されている。図8に示すように、インプラント材料30の形状は、目的にもよるが、例えば、立方体、直方体、断面がほぼ半円状の柱状体あるいは環状体、十字状体等がある。 【0003】特開平7−148243号公報にはインプラント材料として、ブロック状の直交組織からなる三次元繊維組織構造体、あるいはX軸とY軸とがZ軸に対して45°に斜交している三次元繊維組織構造体を手動の模擬装置を使用して織成したことが開示されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】前記公報等では生体適合性に関し、繊維の特性、表面処理の有効性が謳われているが、繊維組織体の製造自体に関しては従来の三次元繊維組織の製法で所定の形状に組織するものである。インプラント材料としての用途の多くは人工骨(軟骨)の補綴や一部の代替材料であり、1個の大きさが数センチ程度のものが多く、小さいものでは厚さが1センチ以下のものもある。このようなものを三次元繊維組織体で1個ずつ製造するのは、インプラント材料形状が立方体や直方体等の単純形状の場合でも効率良く製造するのが難しく、単純形状でない場合はより難しくなる。 【0005】また、インプラント材料に限らず、単純形状でないバルク状の繊維構造体を最初から三次元組織として効率良く製造するのは難しい。本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的はバルク状の繊維構造体を効率良く製造することができる繊維構造体及びその製造方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するため請求項1に記載の発明では、織物、編物、組物(組ひも)等の布で形成した帯状素材を屈曲させて所定の形状に賦形し、その所定形状を保持するように糸で縫った。 【0007】この発明の繊維構造体は帯状素材が屈曲されて所定の形状に賦形され、縫合糸によって形状が保持される。従って、長尺の帯状素材を必要な長さに切断して使用することにより、1個ずつ三次元繊維組織で織成する場合に比較して簡単に製造できる。 【0008】請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記帯状素材として丸打ちブレーダで形成された組物を扁平に押し潰して形成されたものが使用されている。この発明では、帯状素材が組物で構成されているため、帯状素材の物性を組物を構成する繊維(糸)の配向角によって制御できるとともに、帯状素材を屈曲させて所定の形状に賦形する際に形状の自由度が高くなる。 【0009】請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記帯状素材は折り返し幅が部分的に異なるように折り畳まれて積層された状態に配置されている。この発明では、立方体や直方体等の単純形状ではなく斜面を含む複雑な形状にも対応できる。 【0010】請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記帯状素材にはその幅が規則的に変化するように形成されたものが使用されている。従って、この発明でも、立方体や直方体等の単純形状ではなく斜面を含む複雑な形状にも簡単に対応できる。 【0011】請求項5に記載の発明では、請求項3又は請求項4に記載の発明において、前記折り畳まれた積層部の外周を覆うように前記帯状素材が連続して配置されている。従って、この発明では帯状素材を折り畳んで形成された両側の折り返し部の連続した凹凸面が帯状素材で覆われるため、外周が滑らかになる。 【0012】請求項6に記載の製造方法の発明では、織物、編物、組物等の布で形成した帯状素材を、ピンを使用してその屈曲位置を決めて所定の形状に賦形した後、所定形状を保持するために前記帯状素材の積層箇所を糸で縫う工程を有する。 【0013】従って、この発明の製造方法では、帯状素材の屈曲位置の位置決めが、容易にかつ確実に行われ、所望の形状の繊維構造体を精度良く製造できる。 【0014】 【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)以下、本発明をインプラント材料として使用する繊維構造体に具体化した第1の実施の形態を図1及び図2に従って説明する。図1(a)〜(d)に示すように、繊維構造体1は布で形成された帯状素材2が屈曲されて所定の形状に賦形され、その所定形状が保持されるように糸3で縫われている。繊維構造体1は帯状素材2が中心部から渦巻き状に巻き付けられて柱状に形成されている。同じ柱状でも図1(a)の繊維構造体1は楕円柱状に、図1(b)〜(d)の繊維構造体1は直方体状に形成されている。繊維構造体1の形状は帯状素材2を巻付ける際の屈曲位置、屈曲角度及び押圧力を変更することにより変更でき、回転対称形状に限らず、片側のみ円弧面となる柱状形状や、筒状にも形成できる。 【0015】図1(b),(c)の繊維構造体1は帯状素材2の巻き方及び外形は同じであるが、(b)は糸3が一方向に配列されるように縫製され、(c)は糸3が直交する2方向に配列されるように縫製されている点が異なっている。(d)は(b),(c)のものと外形は同じ直方体であるが、(b),(c)のものより広幅の帯状素材2で形成され、同じ形状の材料として使用する場合、繊維構造体1に荷重が加わった際、荷重の方向が異なり、変形量や形状が異なるようになる。例えば、繊維構造体1の最も広い面に荷重が作用するように使用した場合、(b),(c)の繊維構造体1では荷重は帯状素材2の面に平行に作用し、(d)の繊維構造体1では帯状素材2の面に垂直に作用する。 【0016】この実施の形態では帯状素材2として、図2(a),(b)に示すように、丸打ちブレーダで形成された組物(丸打ち組ひも)を扁平に押し潰して断面ほぼ長方形をなすように形成されたものが使用されている。帯状素材2は糸条4が長手方向に対して±θの配向角をなすように、即ちバイアス方向に配列された図2(a)に示す2軸構造、又は配向角が0、±θの図2(b)に示す3軸構造のものが使用される。バイアス方向に配列された糸条4は繊維構造体1の表面で折り返されており、糸条4の端が表面に露出することはない。配向角が0の糸条4はブレーダで形成される際に芯糸4aとして配列される。 【0017】組物はバイアス方向の糸条4の配向角により帯状素材2の物性を制御できる。配向角が大きいと幅方向の強度が大きく、配向角が小さいと長手方向の強度が大きい。3軸構造の場合は長手方向の糸条4が存在するため形状が安定する。2軸構造の場合は3軸構造に比較して形状安定性が低いが、賦形の自由度が高い。また、組物を製造する際の糸条4に加える張力により製造される帯状素材2の空隙率を変更できる。 【0018】糸条4の材質には従来より生体材料として試作、実用化されている有機繊維が使用される。有機繊維としては、例えば、特開平7−148243号公報に開示されているナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリウレタン等の合成繊維、絹、コラーゲン、キトサン等の天然繊維がある。糸条4の太さは繊維構造体1に要求される強度等により異なるが、例えば、0.1〜0.7mm程度のものが使用される。糸条4はモノフィラメントでもマルチフィラメントでもよい。 【0019】前記のように構成された繊維構造体1は帯状素材2の材質により、そのままの状態でも生体不活性の人工骨として使用される。また、材質によっては、インプラント材料として好適な表面処理を行って使用される。 【0020】この実施の形態では以下の効果を有する。 (1) 繊維構造体1は、布で形成された帯状素材2を屈曲させて所定の形状に賦形し、その所定形状を保持するように繊維で縫って形成されている。従って予め長尺に形成した帯状素材2を、使用目的に合わせた繊維構造体1を形成するのに必要な長さに切断して使用することにより、1個ずつ三次元繊維組織で織成する場合に比較して簡単に製造できる。 【0021】(2) 帯状素材2を渦巻き状に巻き付けて所定形状に賦形するため、帯状素材2の屈曲位置、屈曲角度、巻付け力を調整することにより所望の形状に容易に賦形することができる。 【0022】(3) 帯状素材2が組物で形成されているため、帯状素材2の物性を組物を構成する繊維(糸)の配向角によって制御できるとともに、屈曲させて所定の形状に賦形する際に形状の自由度が高くなる。 【0023】(4) 帯状素材2として丸打ちブレーダで形成された組物(丸打ち組みひも)を扁平に押し潰して形成されたものが使用されている。従って、平打ち組みひもに比較して組物の製造が簡単になり、繊維構造体1の製造コストを低くできる。 【0024】(第2の実施の形態)次に第2の実施の形態を図3及び図4に基づいて説明する。この実施の形態の繊維構造体1は、帯状素材2が渦巻き状に巻付けられる代わりに、折り畳まれて積層された状態で配置されて所定形状に賦形されている。図3(a)の繊維構造体1は折り返し幅が一定となるように折り畳まれて直方体状に賦形され、図3(b)の繊維構造体1は折り返し幅が部分的に異なるように折り畳まれて所定の形状に賦形されている。形状保持用の糸3は帯状素材2の面と直交する一方向にのみ配列されている。 【0025】繊維構造体1の製造は図4(a),(b)に示すように、帯状素材2の折り返し位置を規制するピン6が固定されたプレート(治具)5を使用する。そして、帯状素材2をピン6に係合させて折り返し、所定回数屈曲させた後、積層体を糸3で縫製する。その後、ピン6から離脱させると繊維構造体1が完成する。 【0026】この実施の形態では前記実施の形態の(1)、(3)及び(4)の効果の他に次の効果を有する。 (5) 帯状素材2の折り返し幅が部分的に異なるように折り畳んで積層配置することにより、立方体や直方体等の単純形状ではなく斜面や曲面を含む複雑な形状にも簡単に対応できる。 【0027】(6) 繊維構造体1を製造する際、帯状素材2の屈曲位置の位置決めをピン6で行うため、繊維構造体1の形状の精度を上げることが簡単になる。 (7) プレート5に固定されるピン6の配置を変えることにより、所望の形状の繊維構造体1を簡単に製造することができる。 【0028】実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。 ○ 第2の実施の形態において、図5(b)に示すように、帯状素材2としてその幅が規則的に変化するように形成されたものを使用して、図5(a)に示す繊維構造体1を製造してもよい。図5(b)の帯状素材2は同じ大きさの六角形状の部分が連続する形状に形成されているが、製造すべき繊維構造体1の形状に対応して折り返し幅が変更される構成であれば、折り返し幅の変更に合わせて異なる大きさの六角形状の部分が連続する形状とする。また、六角形状に限らず製造すべき繊維構造体1の形状に対応した他の形状の部分が連続する形状の帯状素材2から繊維構造体1を製造してもよい。このような帯状素材2は一定幅の帯状素材2の一部を伸ばしたり縮めたりして形成することが可能である。この繊維構造体1では、前記両実施の形態の繊維構造体1に比較してより複雑な形状の繊維構造体1が得られる。 【0029】○ 帯状素材2を折り畳み状に積層して同じ大きさの直方体状の繊維構造体1を製造する場合、図6(b)に示すように、帯状素材2の幅を直方体の長さLと同じにしてもよい。この繊維構造体1は、形状が図3(a)に示す繊維構造体1と同じであるが、帯状素材2の折り返し位置が直方体の長手方向(図3(a)のもの)と、幅方向(図6(b)のもの)との違いがある。この場合、繊維構造体1の厚さt方向の強度が上がる。 【0030】○ 図6(a)に示すように、折り畳み状に積層された部分の外周を覆うように帯状素材2を配置してもよい。この場合、両側に形成された折り返し部の連続した凹凸面が帯状素材2で覆われるため、外周が滑らかになる。 【0031】○ 帯状素材2の組物として、丸打ちブレーダで形成された組物(丸打ち組ひも)に代えて、平打ちブレーダで形成された組物(平打ち組ひも)を使用してもよい。平打ち組ひもは図7(a),(b)に示すように、断面ほぼ長方形状の帯状素材2が直接形成される。この場合も組物を構成する糸条4の配向角が±θの2軸構成のものと、配向角が0°と±θの3軸構成のものが使用される。 【0032】○ 組物を例えば特開平2−259148号公報、特開平2−307949号公報等に開示されている三次元ブレーダで製造してもよい。三次元ブレーダで形成される組物は、丸打ちブレーダや平打ちブレーダと異なり、組物の厚さ方向内に配列される糸条の本数を自由に変更できるため、剛性を厚さ方向内に配列される糸条の本数の変更で調整できる。また、三次元ブレーダを使用すると、図5(b)に示すような、幅が規則的に変化する帯状素材2の形成が容易になる。 【0033】○ 帯状素材2を折り畳み状に配列して繊維構造体1を形成する場合、帯状素材2の配列開始位置は繊維構造体1の端部に限らず、例えば中央から配列を開始して下半分の配列が完了した後、上半分の配列を行うようにしてもよい。 【0034】○ 帯状素材2を折り畳み状に配列して繊維構造体1を形成する場合に限らず、第1の実施の形態のように帯状素材2を渦巻き状に配列する場合に屈曲位置をピンで規制してもよい。この場合所望の形状に賦形し易くなる。 【0035】○ 帯状素材2を構成する布は組物に限らず、例えば、テープ織機で製織された帯状の織物や、帯状の編物であってもよい。また、平織りや綾織りの普通の織物(布地)を所定幅の帯状に切断したものであってもよい。織物を切断した場合は切断端が鋭いので、端部を溶融処理で丸くするのが好ましい。しかし、組物の方が帯状素材2を所定形状に配列する際の賦形性が高い。 【0036】○ 繊維構造体1はインプラント材料に限らず、衝撃を吸収する衝撃吸収材として使用してもよい。この場合、帯状素材2を構成する糸条の材質は有機繊維に限らず、炭素繊維、セラミック繊維などの無機繊維であってもよい。無機繊維を材質としたものは耐熱性を必要とする用途に適する。また、高強度が必要な場合は炭素繊維が適し、有機繊維は無機繊維に比較して低コストとなる。また、一種類の繊維で繊維構造体1を形成する代わりに、複数種の繊維で繊維構造体1を形成してもよい。 【0037】○ 所定形状に賦形された帯状素材2の形状を保持するための糸3は、必ずしも繊維構造体1全体にわたって配列される必要はなく、使用時に所定形状に保持できれば、帯状素材2の配列始めと終わり部分のみに配列するなど、必要最小限にしてもよい。 【0038】前記実施の形態から把握できる請求項記載以外の発明(技術思想)について、以下にその効果とともに記載する。 (1) 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の繊維構造体であって、前記帯状素材が有機繊維で構成されているインプラント材料。この場合、インプラント材料の製造を簡単、低コストでできる。 【0039】 【発明の効果】以上詳述したように、請求項1〜請求項5に記載の発明の繊維構造体は、所望のバルク状に効率良く製造することができる。また、請求項6に記載の発明の方法では、所望のバルク状の繊維構造体を効率良く製造することができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000003218 【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機製作所
|
| 【出願日】 |
平成12年3月2日(2000.3.2) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100068755 【弁理士】 【氏名又は名称】恩田 博宣 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2001−248048(P2001−248048A) |
| 【公開日】 |
平成13年9月14日(2001.9.14) |
| 【出願番号】 |
特願2000−57433(P2000−57433) |
|