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【発明の名称】 厚地編物およびその製造方法
【発明者】 【氏名】佐藤 慶明

【氏名】岩瀬 喜代治

【要約】 【課題】表地1、裏地2およびそれらをつなぐ接結糸3から成る編物において、前記表地および/または前記裏地を構成する糸条の単糸繊度を極細繊維とすることにより、表面ソフト感にも優れ、かつ軽量、嵩高でクッション性に優れた厚地編物を提供する。

【解決手段】表地1および/または裏地2を構成する糸条の単糸繊度を0.7デニール以下とする。単糸繊度を0.7デニール以下とするには、分割可能な複合紡糸された繊維を用い、編物を形成した後に分割処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 平編系組織で形成される表地、裏地およびそれらをつなぐ接結糸から成る編物において、前記表地および/または前記裏地を構成する糸条の単糸繊度が0.7デニール以下であることを特徴とする厚地編物。
【請求項2】 表地および裏地を形成するコース方向のループ密度が20コース/インチ以上であり、編地厚さが5mm以上である請求項1に記載の厚地編物。
【請求項3】 表地を構成するシリンダー編目のループ長または裏地を構成するダイアル編目のループ長のいずれか短い方のループ長に対し、接結糸の長さが2.5倍以上長い請求項1または2に記載の厚地編物。
【請求項4】 接結糸がポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸である請求項1〜3のいずれかに記載の厚地編物。
【請求項5】 接結糸が実質的にノントルクであるかまたはS方向とZ方向の残留トルクを有する糸を交互に配置させた請求項1〜4のいずれかに記載の厚地編物。
【請求項6】 表地および/または前記裏地を構成する糸条が、分割型複合糸を分割したフィラメント糸条である請求項1〜5のいずれかに記載の厚地編物。
【請求項7】 表地、裏地およびそれらをつなぐ接結糸から成る平編系組織の編物を編成する際に、前記表地および/または前記裏地用に給糸する糸条を分割単位が0.7デニール以下の分割型複合糸を用い、編成後に分割処理して単糸繊度が0.7デニール以下とすることを特徴とする厚地編物の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は軽量、嵩高でクッション性に優れた厚地編物において、特に表面タッチがソフトな高級衣料用及び資材用に好適な厚地編物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】編物において、厚地編物を得る方法としては、編組織に接結リバーシブル(表地、裏地及びつなぎ糸である接結糸から成る3層構造編地)を活用することが広く知られており、衣料用あるいは資材用の厚地生地として用いられてきた。通常のこの方法で得られる編地については、特開昭63−145454号公報、特開平7−11548号公報、特開平7−292547号公報、特開平7−316959号公報などに開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら表地及び裏地を構成する糸状としては、その単糸繊度が3〜5デニール程度であって、ソフトな表面タッチを要求する、クッション性の良い資材用あるいは肌に接する衣料用の厚地編物としては、良好な素材が得られていなかったのが実体である。またこれらの厚地編物を安定して製造する技術についても知られていなかった。
【0004】本発明は、前記従来の問題を解決するため、表面ソフト感にも優れ、かつ軽量、嵩高でクッション性に優れた厚地編物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記した本発明の目的を達成するため本発明の厚地編物は、平編系組織で形成される表地、裏地およびそれらをつなぐ接結糸から成る編物において、前記表地および/または前記裏地を構成する糸条の単糸繊度が0.7デニール以下であることを特徴とする。
【0006】前記編物においては、表地および裏地を形成するコース方向のループ密度が20コース/インチ以上であり、編地厚さが5mm以上であることが好ましい。
【0007】また前記編物においては、表地を構成するシリンダー編目のループ長または裏地を構成するダイアル編目のループ長のいずれか短い方のループ長に対し、接結糸の長さが2.5倍以上長いことが好ましい。
【0008】また前記編物においては、接結糸がポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸であることが好ましい。
【0009】また前記編物においては、接結糸が実質的にノントルクであるかまたはS方向とZ方向の残留トルクを有する糸を交互に配置させたことが好ましい。
【0010】また前記編物においては、表地および/または前記裏地を構成する糸条が、分割型複合糸を分割したフィラメント糸条であることが好ましい。
【0011】次に本発明の厚地編物の製造方法は、表地、裏地およびそれらをつなぐ接結糸から成る平編系組織の編物を編成する際に、前記表地および/または前記裏地用に給糸する糸条を分割単位が0.7デニール以下の分割型複合糸を用い、編成後に分割処理して単糸繊度が0.7デニール以下とすることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の厚地編物は表地、裏地およびそれらをつなぐ接結糸で構成される。表地はシリンダー編目、裏地はダイヤル編目で形成されている。
【0013】図1に本発明の厚地編物の断面概観を示す。表地1と裏地2が接結糸3でつながれた構成となっている。
【0014】本発明の厚地編物は、軽量、嵩高かつクッション性に加え、表面ソフト性を付与させるために、表地および/または裏地を構成する糸条の単糸繊度を0.7デニール以下とする必要がある。際だった表面ソフト性を付与させるためには、表地および/または裏地を構成する糸条の単糸繊度は0.5デニール以下とすることが好ましい。また本発明の狙いの表面ソフト性を得るために、少なくとも表地を構成する糸状の単糸については、0.7デニール以下とすることが好ましく、0.5デニール以下とすることがより好ましい。表地および/または裏地を構成する糸条の単糸繊度を0.7デニール以下とは、構成する単糸の少なくとも60%が0.7デニール以下であることを意味し、構成する単糸の少なくとも80%が0.7デニール以下であることが好ましく、100%が0.7デニール以下であることがより好ましい。
【0015】本発明の厚地編物は、表地及び裏地の組織が平編系組織であることが必要である。平編系組織とは、天竺組織やその変形組織のニット及びウェルトを組合わせたもので、タック組織や目移し組織などを含まない組織のことである。このように、表地及び裏地の編地組織が天竺やニット及びウェルトの組合わせ組織であるために、編地表面が緻密になり、その結果、中間層の接結糸が露出することがなく、厚地編物の物性や風合い、外観を良好に保つことができる。
【0016】本発明の厚地編物は、良好な軽量、嵩高およびクッション性を発揮させるために、編地厚さは5mmとすることが好ましく適用され、6mm以上とすることが更に好ましく適用される。
【0017】衣料用の通常の厚地編地の厚さは2〜3mm程度である。編地の厚さはシリンダー針とダイヤル針の間隔を広くすることによりシリンダー編目とダイヤル編目との対抗する間隔を大きくし、接結糸長を長くすることで対応できる。しかし、接結リバーシブルにおいて接結糸の糸長を長くすると、編成時に接結糸が表地の後ろにかくれず、表地からのぞいて見える、通常「カブリ」と言われる組織崩れが発生する。前述したように平編系組織とすることが組織崩れ対策に有効であるが、更に編地の密度を大きくすることが有効で、表地および裏地を形成するコース方向のループ密度を20コース/インチ以上とすることが好ましく、24コース/インチ以上とすることがより好ましい。また表地を構成するシリンダー編目のループ長または裏地を構成するダイアル編目のループ長のいずれか短い方のループ長に対し、接結糸の長さを2.5倍以上長くすると、編地の厚さが5mm以上、特に6mm以上が安定して得られるので、好ましく適用できる。
【0018】更に、接結糸による表地との連結目数は表地総編目数の50%以上であることが好ましい。接結糸による表地との連結編目数を表地総目数の50%以上とすることで、表地と裏地の中間層における接結糸の密度が大きくなり、クッション性に優れた厚地編物とすることができる。
【0019】本発明の厚地編物の表地及び裏地を構成する糸状は、単糸繊度が0.7デニール以下であれば、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維、または前記合成繊維に羊毛、麻、コットンなどの天然繊維のフィラメント糸や紡績糸などを混紡または混繊して用いることができる。この中では、合成繊維マルチフィラメント糸、特にポリエステルマルチフィラメント糸が編地の形態安定性、耐久性、抗ピル性、コストなどの点で優れており好ましく適用できる。さらに仮撚り加工糸であることが編地の伸縮性の点で好ましい。
【0020】本発明の厚地編物の接結糸についても、一般に用いられるポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維、あるいは羊毛、麻、コットンなどの天然繊維のフィラメント糸や紡績糸などを用いることができるが、合成繊維マルチフィラメント糸、特にポリエステルマルチフィラメント糸が編地の形態安定性、耐久性、コストなどの点で優れており好ましく適用できる。良好な嵩高性と対圧縮ヘタリ性を付与するために、ポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸が好適に使用できる。厚地編物の対圧縮ヘタリ性を向上させかつソフトなクッション性を付与させるために、接結糸の単糸繊度は、1.5から4デニールの範囲とすることが好ましい。
【0021】また接結糸が実質的にノントルクであるかまたはS方向とZ方向の残留トルクを有する糸を交互に配置させて編成することにより、表地と裏地の間で接結糸が一定の方向に倒れることを防ぎ、表地と裏地の間で安定するために嵩高性に優れた厚地編物を得ることが可能で、好ましいことである。
【0022】残留トルクは、試料長50cmのほぼ中央部に0.001g/D(Dはデニール)に相当する荷重を掛け、試料の両端を合わせた時に発生する2重撚りの回数を回/25cmとして求めたものである。ここで実質的にノントルクであるとは残留トルクが20回/25cm以下のものをいう。
【0023】本発明の厚地編物は、一般衣料、スポーツ衣料などの外、防寒具、ブラインドなどの断熱材、カーペット、シートマット、アンダーカーペット、、天井材などの内装材、ヘルメットの内張、メディカルテープなどのクッション材、ベッドカバー、芯材、ケースなどの成形品などに好適に使用できる。
【0024】次に本発明の厚地編物を製造する好適な製造方法について説明する。厚地編物を編成する際に、表地用および/または裏地用糸状として、単糸繊度が0.7デニール以下の単糸で構成される糸状を直接給糸することも可能であるが、単糸繊度が小さくなるほど毛羽立ちが多くなり、編成性が低下するとともに、得られた厚地編物にも毛羽立ちが目立つ問題がある。
【0025】これらの問題を回避するために、表地、裏地およびそれらをつなぐ接結糸から成る平編系組織の編物を編成する際に、前記表地および/または前記裏地用に給糸する糸条を分割単位が0.7デニール以下の分割型複合糸とし、編成後に分割処理する。このようにすると、表面ソフトな厚地編物の製造方法を好ましく適用できる。
【0026】分割型複合糸の一例を示すと、図2に示すように1つの単糸の横断面において、溶出成分4によって分割成分5(繊維として後に残る成分)が複数個の分割単位5に分割された形状を有する糸である。分割数を多くするほど、分割型複合糸を使用する効果は大きく、5分割以上が好ましく、6分割以上がより好ましい。
【0027】厚地編物を編成する際に、表地用および/または裏地用糸状として編成し、その後分割成分の少なくとも一部を溶解除去して分割処理することで、分割成分が表地および/または裏地となった厚地編物を得ることができる。分割単位の繊度を0.7デニール以下としておけば、0.7デニール以下という極細糸を直接編成するという困難なことをせずに表地および/または裏地が0.7デニール以下となった厚地編物を得ることができる。分割単位の繊度をより小さくして、0.5デニール以下として厚地編物とした際に表面のソフト感を向上させることは、より好ましいことである。
【0028】分割型複合糸を構成するポリマは、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの公知の合成繊維原料を使用できる。分割処理は分割成分をより選択的に溶解する処理であり、通常ポリエステルに適用されているアルカリ減量処理を好ましく適用できる。分割単位をポリエステルとするために、分割成分を通常のポリエステルとし、溶出成分をアルカリ易溶解性ポリエステル(例えば5−ソディウムスルフォイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート)とすると、好ましく適用できる。
【0029】
【実施例】以下実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0030】(実施例1)20G、30インチのダイヤルーシリンダー式の厚地専用丸編機(56口給糸)を使用して編成した。表地用および裏地用にはトータル繊度:100デニール、フィラメント数:24(以下100デニール−24フィラメントのように表示する)の分割型複合糸で構成されるポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸を使用した。この分割型複合糸は、溶出成分に5−ソディウムスルフォイソフタル酸を5モル%共重合したポリエチレンテレフタレート(17重量%)を使用し、分割成分にポリエチレンテレフタレート(83重量%)を使用し、分割成分は5つの分割単位からなる海島型の横断面形状とした。接結糸には100デニール48フィラメントのポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸を使用し、S撚りとZ撚りの双糸合糸とした。接結糸の残留トルクは0回/25cmであった。これらのフィラメントのポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸を使用して天竺に編成し、しかる後にアルカリ減量処理(98℃、5重量%NaOH水溶液で40分間)し、溶出成分を溶解除去した。編地の厚さは6.5mm、表地と裏地のコース方向のループ密度は、それぞれ25コース/インチ、26コース/インチ、表地および裏地を構成する糸状の単糸繊度は0.68デニールであった。またダイヤルループ長、シリンダーループ長及び接結糸の糸長は、それぞれ4.9mm、4.6mm及び19.0mmであった。
【0031】得られた厚地編物は、表面タッチがソフトな軽量、嵩高でクッション性が良好な編物で、編地表面には毛羽や組織乱れもなく、また対圧縮ヘタリ性も良好で高級厚地編物素材として好適であった。
【0032】(実施例2)実施例1において、分割型複合糸を7つの分割単位に分割した海島型の横断面形状とした以外は実施例1と同様に編成し、しかる後にアルカリ減量処理し、溶出成分を溶解除去した。
【0033】編地の厚さは6.4mm、表地と裏地のコース方向のループ密度は、それぞれ25コース/インチ、25コース/インチであった。表地および裏地を構成する糸状の単糸繊度は0.49デニールであった。またダイヤルループ長、シリンダーループ長及び接結糸の糸長はそれぞれ5.0mm、4.8mm及び18.6mmであった。
【0034】得られた厚地編物は、表面タッチが極めてソフトな軽量、嵩高でクッション性が良好な編物であった。編地表面には毛羽や組織乱れもなく、また対圧縮ヘタリ性も良好でソフトに溢れた高級厚地編物素材として好適であった。
【0035】(比較例1)実施例1において、分割型複合糸を4つの分割単位に分割した海島型の横断面形状とした以外は実施例1と同様に編成し、しかる後にアルカリ減量処理し、溶出成分を溶解除去した。
【0036】編地の厚さは6.6mm、表地と裏地のコース方向のループ密度は、それぞれ26コース/インチ、26コース/インチであった。表地および裏地を構成する糸状の単糸繊度は0.83デニールであった。またダイヤルループ長、シリンダーループ長及び接結糸の糸長はそれぞれ4.9mm、4.7mm及び18.7mmであった。
【0037】得られた厚地編物は、軽量、嵩高でクッション性のある編物であったが、表面タッチは従来の厚地編物の硬いレベルで、高級感のある素材とは認められなかった。
【0038】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明の厚地編物は従来にない表面ソフト性を有し、嵩高性、クッション性に優れており、衣料用のみならず、資材用に好適に使用できる。更に編地組織の点で表面外観の均一性も良好で、審美性にも優れた効果を示す。また従来にない大きな厚さとしても、対圧縮ヘタリに優れており、繰り返し使用、長期使用に耐える実用的な編物構造とすることも可能である。
【出願人】 【識別番号】000219255
【氏名又は名称】東レ・テキスタイル株式会社
【出願日】 平成12年3月6日(2000.3.6)
【代理人】 【識別番号】100095555
【弁理士】
【氏名又は名称】池内 寛幸 (外1名)
【公開番号】 特開2001−254250(P2001−254250A)
【公開日】 平成13年9月21日(2001.9.21)
【出願番号】 特願2000−59896(P2000−59896)