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【発明の名称】 ノンコートエアバッグ用織物
【発明者】 【氏名】北村 守

【氏名】小西 辰男

【要約】 【課題】低目付で、コンパクト性に優れ、しかも低通気度であり、経済性に優れたノンコートエアバッグ用織物を提供する。

【解決手段】熱可塑性繊維織物からなり、構成する繊維により形成された細孔において、細孔の孔径の分布、即ちポア分布を2.0以下とし、かつ20kPaの差圧で通気度が2.5L/cm2/min以下であるエアバッグ用織物とする。ポア分布は、PD=(FDmax−FDmin)/FDaveにより定義される。ここに、FDmax:最大ポアサイズ(μm)、FDmin:最小ポアサイズ(μm)、FDave:平均流量ポアサイズ(μm)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱可塑性繊維にて形成された織物であり、前記熱可塑性繊維により形成された細孔の式(数1)にて表されるポア分布値(PD)が2.0以下であり、かつ差圧20kPa時の通気度が2.5(L/cm2/min)以下であることを特徴とする低通気度のノンコートエアバッグ用織物。
【数1】
PD=(FDmax−FDmin)/FDaveFDmax:最大ポアサイズ (μm)
FDmin:最小ポアサイズ (μm)
FDave:平均流量ポアサイズ (μm)
【請求項2】 タテ及びヨコの織り縮み率の差が4%以下であることを特徴とする請求項1に記載のノンコートエアバッグ用織物。
【請求項3】 前記熱可塑性繊維がポリアミド繊維であることを特徴とする請求項1又は2に記載のノンコートエアバッグ用織物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車用安全装置の一つであるエアバッグ用織物に関するものであり、更に詳しくは、必要な機械的特性を保持しつつ、コンパクト化、低通気度化が可能であり経済性に優れたことを特徴とするノンコートエアバッグ用織物を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車安全部品の一つとして急速に装着率が向上しているエアバッグは、自動車の衝突事故の際、衝撃をセンサーが感知し、インフレーターから高温、高圧のガスを発生させ、このガスによってエアバッグを急激に展開させて運転者や同乗者の身体、特に頭部が衝突した方向へ飛び出してハンドル、フロントガラス、ドアガラス等に衝突することを防止し、保護するものである,従来、エアバッグにはクロロプレン、クロルスルフォン化オレフィン、シリコーンなどの合成ゴムが被覆されたコーティング基布が、耐熱性、空気遮断性(低通気度)、難燃性が高いという理由により使用されていた。
【0003】しかしながら、これらのコーティング基布は基布重量が高く、柔軟性が満足できるものではなく、製造コストも高く、しかもリサイクル不可であるため、エアバッグ用基布として使用するには不具合な点が多かった。
【0004】現在でも一部で使用されているシリコーンコーティング基布は上記不具合点がかなり改善されてはいるが、まだ満足できるものではない。
【0005】そこで、最近はコーティングを施さないノンコートエアバッグ用基布を使用したノンコートエアバッグが主流になっており、軽量化、良好な収納性、低通気度化のために以下のような提案がなされている。
【0006】1)高密度織物を製織した後に収縮加工やカレンダー加工を施すことで軽量、低通気度基布を得ようとする方法(特開平1−122752号公報)。
2)両面カレンダー加工することで軽量かつ124Pa差圧で0.5cc/cm2/s以下の低通気度基布を得ることができる方法(特開平4−2835号公報)。
3)織物に化学収縮処理を施すことによって、布を構成する糸条を膨潤させて低通気度基布を得ようとする方法(特開平6−41844号公報)。
4)単糸繊度が1.5d〜7.0dの熱可塑性合成繊維Aと、0.2d〜1.5dの熱可塑性合成繊維Bとを混合する方法(特開平8−325888号公報)。
【0007】しかしながら、車両の軽量化、コンパクト化の要求に伴い、ノンコートエアバッグについても、より一層の軽量化、コンパクト化が求められるが、低目付で、コンパクト性に優れ、低通気度となり、経済性に優れたエアバッグ用織物を製造することは、例えば低い差圧条件では低通気度であっても、高差圧ではポアサイズが変動する結果通気度が高くなる等の理由により、上記1)〜4)までの従来の方法では達成できない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、低目付で、コンパクト性に優れ、しかも低通気度であり、経済性に優れたエアバッグ用織物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、織物を構成する繊維によりできる細孔のポア分布PDをコントロールすることにより低目付で低通気度のノンコートエアバッグ用織物が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0010】本発明は上記従来の方法では達成できなかった課題を解決するために、次のような構成を有する。すなわち、本発明のエアバッグ用織物は、熱可塑性繊維織物からなり、構成する繊維により形成された細孔において、細孔の孔径の分布、即ちポア分布を2.0以下とし、かつ20kPaの差圧で通気度が2.5L/cm2/min以下であることを特徴とするものである。
【0011】ポア分布は、下記の式(数2)により定義される。
【数2】
PD=(FDmax−FDmin)/FDaveここに、FDmax:最大ポアサイズ (μm)
FDmin:最小ポアサイズ (μm)
FDave:平均流量ポアサイズ (μm)
である。
【0012】詳細には、本発明のエアバッグ用織物の特徴は、熱可塑性繊維で構成された布帛の織り縮み率及びマルチフィラメントの太さに対する単繊維の太さ及び織り密度を調整し、かつ加温して適切な収縮加工をすることによりポア分布をコントロールすることにある。織り密度の調整は生機の密度と織り縮み率を製織条件にて調整することにより行うことが好適である。ポア分布は、1.9以下であることがより好適であり、通気度は1.4以下であることがノンコートエアバッグ用織物としてより好適である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明に用いられる熱可塑性繊維の原糸沸水収縮率は、5〜15%で有ることが必要である。原糸沸水収縮率が、5%より小さいと目的とする低通気度が得られず、15%より大きいと収縮後の織物の厚さが厚くなりコンパクト性を損ねることとなり好ましくない。原糸沸水収縮率の値は、5〜15%程度であることが好ましいが、さらに好ましくは、8〜12%である。
【0014】本発明における収縮処理を行うための加熱処理温度は特に限定されるものではなく、通常100〜200℃で行われる。好ましくは、160℃以下で処理をするのが低通気性を得るのに好適である。収縮処理を行うための装置は、ヒートセッター、沸水バス等特に限定されないが、縦及び横のオーバーフィードが、2〜15%程度可能な装置を用いる。本発明は、織物を構成ずる繊維でできたポアサイズの分布を調整することが必要になるため、かかる調整に対応できる設備の使用が特に好適である。加熱処理温度のコントロールとオーバーフィード率の限定により、ポアサイズの調整、均一化が可能となり、低目付で低通気度のノンコートエアバッグ用織物を製造することが可能となる。
【0015】本発明のポア分布値は、布帛を構成する繊維でできた細孔の分布を示す数値であり、(数2)にて示したように、最大ポアサイズと最小ポアサイズの差を平均流量時の孔径(平均流量ポアサイズ)で割ることにより求めた値である。本発明のポア分布値PDは、2.0以下であることが必要でり、好ましくは、1.5以下であり、さらに好ましくは、1.3以下である。ポア分布値が、2.0より大きくなると低通気度の織物が得られなくなり好ましくない。
【0016】製織の仕方としては特に限定されるものではないが、基布物性の均一性を勘案すると平織りが好適である、製織に使用する織機は、エアージェットルーム、レピアルーム、ウォータージェットルーム等が例示され、特に限定されるものではない。
【0017】本発明におけるエアバッグを構成する熱可塑性繊維としては、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−4,6、ナイロン−12等の脂肪族ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維が例示されるが、特に限定されるものではない。ただし、経済性や耐衝撃性を勘案するとナイロン−6,6、ナイロン−4,6、ナイロン−6等のポリアミド繊維の使用が特に好ましい。また、これらの合成繊維には原糸製造工程や後加工工程での工程通過性を向上させるために、各種添加剤を含有または付与されていても何ら問題はない。かかる添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、平滑剤、帯電防止剤、難燃剤等が例示される。
【0018】また、使用する原糸の総繊度および単糸繊度は総繊度が100〜700d、単糸繊度が8d以下であることが好ましい,更に好ましくは使用する原糸の総繊度は150〜420d、単糸繊度4dは以下であることが好適である。
【0019】総繊度が100d未満の場合には布帛の引張強力及び引裂強力が不足し、700dを超える場合には織物の柔軟性が損なわれ、収納性にとって不利になり、エアバッグのコンパクト化の要請に十分対応できない。
【0020】単糸繊度が8dを超える場合には、これも織物の柔軟性が損なわれ、収納性にとって不利になる。
【0021】本発明における通気度は、差圧20kPaにおいて、2.5L/cm2/min以下であり、好ましくは、1.5L/cm2/min以下であり、さらに好ましくは、1.0L/cm2/min以下であることが好適である。通気度が2.5L/cm2/minより大きいとノンコートエアバッグとしたときの展開性が好ましくない。
【0022】また、原糸は実質的に無撚あるいは甘撚が好ましく、更に好ましくは無撚が使用される。これは低単糸繊度糸を使用して低通気度織物を得ようとした場合、撚りを加えると単糸の拡がりを阻害し、低通気度化が困難になるためである。
【0023】本発明の織物のタテ及びヨコの織り縮み率差は、4%以下であることが好ましい。4%より大きいとポア分布における最大ポアサイズが大きくなり低通気度の織物を得ることが難しい場合が多い一本発明の織り縮み率は、2〜6%であることがポア分布を小さくするには、好ましいが、限定するものではない。
【0024】
【実施例】次に実施例により、本発明を更に詳しく説明する。なお、実施例中の物性は下記の方法で測定した。
目付:JIS L1096 6.4.2織密度:JIS L1096 6.6通気度:(株)OEMシステム製 通気量測定機にて測定剛軟度:JIS L1096 6.19.1.A法(45°カンチレバー法)
沸水収縮率:JIS L1013 熱水収縮率B法 100℃ポアサイズ(FDmax、FDmin、FDave):COULTER ELECTRONICS LIMITED製COULTER POROMETERを使用して測定。
【0025】(実施例1)経糸に無撚の420d/144f(単糸繊度2.9d)、沸水収縮率=9.5%を使用し、緯糸には無撚の420d/144f(単糸繊度2.9d)、沸水収縮率=9.5%を用いてウオータージェットルームにて平織り物を製織後、沸水にてオーバーフィード率を調整し収縮加工し、次いで140℃で乾燥セット仕上げすることにより、ポア分布値=1.0となるように調整しノンコートエアバッグ用織物を得た。このノンコートエアバッグ織物の物性評価結果を表1に示す。
【0026】(実施例2)経糸に無撚の315d/108f(単糸繊度2.9d)沸水収縮率=9.5%を使用し、緯糸は無撚の315d/108f(単糸繊度2.9d)、沸水収縮率=9.5%を用いてウォータージェットルームにて平織り物を製織後、沸水にてオーバーフィード率を調整し収縮加工し、ついで130℃で乾燥セット仕上げすることにより、ポア分布値=1.2となるように調整しノンコートエアバッグ用織物を得た。このノンコートエアバッグ織物の物性評価結果を表1に示す。
【0027】(実施例3)経糸に無撚の315d/72f(単糸繊度4.4d)沸水収縮率=10.5%を使用し、緯糸に無撚りの315d/72f(単糸繊度4.4d)、沸水収縮率=10.5%を用いてウォータージェットルームにて平織り物を製織後、沸水にてオーバーフィード率を調整し収縮加工し、次いで140℃で乾燥セット仕上げすることにより、ポア分布値=1.8となるように調整しノンコートエアバッグ用織物を得た。このノンコートエアバッグ織物の物性評価結果を表1に示す。
【0028】(比較例1)経糸に無撚の315d/144f(単糸繊度19d)沸水収縮率=9.5%を使用し、緯糸に無撚の420d/144f(単糸繊度2.9d)、沸水収縮率=9.5%を用いてウォータージェットルームにて平織り物を製織後、沸水にてオーバーフィード率を調整し収縮加工し、次いで160℃で乾燥セット仕上げすることにより、ポア分布値=2.1となるように調整しノンコートエアバッグ用織物を得た。このノンコートエアバッグ織物の物性評価結果を表1に示す。
【0029】(比較例2)経糸に無撚り315d/72f(単糸繊度4.4d)沸水収縮率=10.5%を使用し、緯糸に無撚り315d/72f(単糸繊度4.4d)、沸水収縮率=10.5を用いてウォータージェットルームにて平織り物を製織後、沸水にてオーバーフィード率を調整し収縮加工し、次いで180℃で乾燥セット仕上げすることにより、ポア分布値=2.4となるように調整し、ノンコートエアバッグ用織物を得た。このノンコートエアバッグ織物の物性評価結果を表1に示す。
【0030】(比較例3)経糸に無撚り315d/108f(単糸繊度2.9d)沸水収縮率=9.5%を使用し、緯糸に無撚の315d/108f、沸水収縮率=9.5%を用いてウォータージェットルームにて平織り物を製織後、沸水にてオーバーフィード率を調整し収縮加工し、次いで170℃で乾燥セット仕上げすることにより、ポア分布値=2.2となるように調整しノンコートエアバッグ用織物を得た。このノンコートエアバッグ織物の物性評価結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

表1から明らかなように、本発明の織物が目付が低く、低通気度織物であることが判る。
【0032】
【発明の効果】本発明によれば、エアバッグ用織物として必要な機械的特性を保持しつつ、柔軟かつ低通気度化が可能で、低目付の経済的に優れたエアバッグ用織物を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡績株式会社
【出願日】 平成11年7月19日(1999.7.19)
【代理人】 【識別番号】100092266
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇生 (外4名)
【公開番号】 特開2001−355145(P2001−355145A)
【公開日】 平成13年12月26日(2001.12.26)
【出願番号】 特願2001−124693(P2001−124693)