| 【発明の名称】 |
エアバッグ用基布およびエアバッグ |
| 【発明者】 |
【氏名】本母 義哉
【氏名】藤山 友道
【氏名】関 昌夫
|
| 【要約】 |
【課題】本発明は、エアバッグとしての機械的特性を保持しつつ、スムーズな膨張展開性に優れるエアバッグ用基布およびエアバッグを提供せんとするものである。
【解決手段】本発明のエアバッグ用基布は、合成繊維織物からなるエアバッグ用基布において、本文に定義する静摩擦係数の関係が、20℃の静摩擦係数に対する80℃の静摩擦係数の比率が1.3以下であることを特徴とするものである。また、本発明のエアバッグは、かかるエアバッグ用基布を用いて構成されていることを特徴とするものである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 合成繊維織物からなるエアバッグ用基布において、本文に定義する静摩擦係数の関係が、20℃の静摩擦係数に対する80℃の静摩擦係数の比率が1.3以下であることを特徴とするエアバッグ用基布。 【請求項2】 該エアバッグ用基布において、本文に定義する動摩擦係数の関係が、20℃の動摩擦係数に対する180℃の動摩擦係数の比率が1.3以下であることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ用基布。 【請求項3】 該エアバッグ用基布の20℃の静摩擦係数が0.5〜1.2で、80℃の静摩擦係数が0.65〜1.5であることを特徴とする請求項1または2記載のエアバッグ用基布。 【請求項4】 該エアバッグ用基布の20℃の動摩擦係数が0.1〜0.3で、180℃の動摩擦係数が0.13〜0.4であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ用基布。 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載のエアバッグ用基布を用いて構成されていることを特徴とするエアバッグ。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、バッグ展開性に優れたエアバッグ用基布およびそれからなるエアバッグに関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、各種交通機関、特に自動車の事故が発生した際に、乗員の安全を確保するために、種々のエアバッグが開発され、その有効性が認識され、急速に実用化が進んでいる。通常エアバッグは、車両衝突時に乗員の衝撃を吸収するため展開するが、理想的な衝撃吸収から、より優れたバッグの展開性が求められている。 【0003】従来、エアバッグには334〜1112デシテックスのナイロン6・6またはナイロン6フィラメント糸を用いた平織物に、耐熱性、難燃性、空気遮断性などの向上のため、クロロプレン、クロルスルホン化オレフィン、シリコーンなどの合成ゴムなどのエラストマー樹脂を塗布、積層した基布を裁断し、袋体に縫製して作られていた。 【0004】しかしながら、これらのエラストマー樹脂を塗布、積層する際、一般にナイフコート、ロールコート、リバースコートなどによるコーティング方式が採用されているが、フィラメント織物で構成されているエアバッグ基布に対して、通常、クロロプレンエラストマー樹脂の場合では、基布表面に90〜120g/m2 塗布されており、厚みが厚くなり、収納性の面においてもパッケージボリュームが大きくなる問題があった。またクロロプレンエラストマー樹脂に比べ、より耐熱性、耐寒性の優れたシリコーンエラストマー樹脂の場合では、塗布量が40〜60g/m2 で軽量化しつつ、収納性コンパクト性の面でもかなり向上したがまだ不十分であり、またバッグをパッケージに折り畳んで収納する際に折り畳みにくいという問題があった。またさらにエラストマーの塗布、積層の工程が繁雑で生産性の面にも問題があった。 【0005】そこで、近年、このような問題点を解消するために高密度製織によるノンコート基布を使用したエアバッグが注目されてきた。その対応技術として、ナイロン6・6、ナイロン6などのポリアミド繊維織物あるいはポリエステル系繊維織物から構成される高密度ノンコートエアバッグの検討が進められている。特開平9−279437号公報にはノンコートエアバッグの特性について開示されているが、表面性については記載がない。したがって、スムーズな膨張展開性のための表面性についての提案がされておらず、展開性の面で十分とは言えないのが実状である。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来のエアバッグの欠点に鑑み、エアバッグとしての機械的特性を保持しつつ、スムーズな膨張展開性に優れるエアバッグ用基布およびエアバッグを提供せんとするものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、本発明のエアバッグ用基布は、合成繊維織物からなるエアバッグ用基布において、本文に定義する静摩擦係数の関係が、20℃の静摩擦係数に対する80℃の静摩擦係数の比率が1.3以下であることを特徴とするものである。また、本発明のエアバッグは、かかるエアバッグ用基布を用いて構成されていることを特徴とするものである。 【0008】 【発明の実施の形態】本発明は、強力、低通気性、収納性はもとより、エアバッグがスムーズに膨張展開できるエアバッグ用基布について鋭意検討したところ、エアバッグの膨張展開時に、該基布にかかる表面摩擦係数に着目し、20℃の静摩擦係数に対する80℃の静摩擦係数の比率を1.3以下に制御してみたところ、意外にも、上述課題を一挙に解決することを究明したものである。 【0009】本発明における合成繊維布帛としては、ナイロン6・6、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン4・6およびナイロン6とナイロン6・6の共重合、ナイロン6にポリアルキレングリコール、ジカルボン酸やアミンなどを共重合したポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのホモポリエステル、ポリエステルの繰り返し単位を構成する酸成分にイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸またはアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを共重合したポリエステル繊維、パラフェニレンテレフタルアミドおよび芳香族エーテルとの共重合に代表されるアラミド繊維、レーヨン繊維、ポリサルフォン系繊維、超高分子量ポリエチレン繊維および上記合成繊維を主体とする海島構造を有する高分子配列体繊維から構成される合成繊維布帛が用いられる。これらの中でもポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維が好ましく、さらにはナイロン6・6、ナイロン6が耐衝撃性の面から好ましい。かかる繊維には、原糸の製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のために通常使用されている各種添加剤を含んでもよい。たとえば熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、顔料、難燃剤などを含有せしめることができる。 【0010】かかるエアバッグ用基布の表面摩擦係数については、新東化学(株)製表面性測定機トライボギア(TYPE:HEIDON−14DR)を用い、湿度65%、室温20℃で、移動速度6000mm/min、垂直荷重0.4kgの条件下により測定し、その記録から静摩擦係数と動摩擦係数を求めた。 【0011】本発明のエアバッグ用基布の表面摩擦係数の関係については、20℃の静摩擦係数に対する80℃の静摩擦係数の比率が1.3以下であることが必須である。該エアバッグ用基布の20℃の静摩擦係数に対する80℃の静摩擦係数の比率が1.3より小さいと、夏場など車内が暑くなって、エアバッグの温度が80℃まで上がったときに展開しても、80℃の時の静摩擦が20℃の時の静摩擦と大きく変わっていないため、エアバッグをスムーズに膨張展開させることができるのである。 【0012】また、上記のようにエアバッグがスムーズに展開するためには、該エアバッグ用基布の20℃の静摩擦係数が0.5〜1.2で、80℃の静摩擦係数が0.65〜1.5であることが好ましい。20℃の静摩擦係数に対する80℃の静摩擦係数の比率が1.3より大きく、20℃の静摩擦係数が0.5〜1.2、80℃の静摩擦係数が0.65〜1.5より大きいと、エアバッグが展開する際に、該エアバッグ用基布の表面性が悪いため、展開開始時間が遅くなり、スムーズに膨張展開させることができない。 【0013】また、該エアバッグ用基布の20℃の動摩擦係数に対する180℃の動摩擦係数の比率が1.3以下であることが好ましい。20℃の動摩擦係数に対する180℃の動摩擦係数の比率が1.3より小さいと、インフレータから出る高温のガスにより、エアバッグの温度が上がって180℃になっても、180℃の時の動摩擦が20℃の時の動摩擦と変わらないため、エアバッグをスムーズに膨張展開させることができるのである。 【0014】また、上記のようにエアバッグをスムーズに展開させるためには、該エアバッグ用基布の20℃の動摩擦係数が0.1〜0.3で、180℃の動摩擦係数が0.13〜0.4であることが好ましい。20℃の動摩擦係数に対する180℃の動摩擦係数の比率が1.3より大きく、20℃の動摩擦係数が0.1〜0.3、180℃の動摩擦係数が0.13〜0.4より大きいと、エアバッグの展開時、表面性が悪いため、展開時間が遅くなり、スムーズに膨張展開させることができない。 【0015】また、本発明の該エアバッグ用基布の目付が、約300g/m2以下であることが、軽量化の面で好ましく、剛軟度については、タテ糸方向およびヨコ糸方向ともに約100mm以下であることが柔軟性の面で好ましい。また、該エアバッグ用基布の引張強力が、約300N/cm以上、破断伸度が約15%以上、引裂強力が約50N以上であることがエアバッグとして利用する際の、エアバッグの収納性および破裂の防止の点から好ましい。 【0016】かかる要求を満足するエアバッグの製法の一例を以下に示す。まず、該エアバッグ用基布から直径725mmの円状布帛2枚を打ち抜き法にて裁断し、一方の円状布帛の中央に同一布帛からなる直径200mmの円状補強布帛を3枚積層して、直径110mm、145mm、175mm線上を上下糸ともナイロン6・6繊維の462デシテックス/1×3から構成される縫糸で本縫いによるミシン縫製し、直径90mmの孔を設け、インフレーター取り付け口とした。さらに中心部よりバイアス方向に、255mmの位置に相反して同一基布からなる直径75mmの円状補強布帛を1枚当て直径50mm、60mmの線上を上下糸ともナイロン6・6繊維の462デシテックス/1×3から構成される縫糸で本縫いによるミシン縫製し、直径40mmの孔を設けたベントホールを2カ所設置する。次いで、本円状布帛の補強布帛側を外にし、他方の円状布帛と経軸を45度ずらして重ね合わせ、直径700mm、710mmの円周上を上下糸ともナイロン6・6繊維の1390デシテックス/1から構成される縫糸で二重環縫いによるミシン縫製した後、袋体を裏返し60L容量のエアバッグを作成する。 【0017】かかるエアバッグ用基布を用いたエアバッグは、運転席用エアバッグ、助手席用エアバッグ、後部座席用エアバッグ、側面用エアバッグなどに使用することができる。 【0018】本発明のエアバッグの特徴は、機械的特性を保持しつつ、展開性に優れると言う点にある。 【0019】 【実施例】次に実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。なお、実施例中における各種評価は、下記の方法に従って行なった。 【0020】表面摩擦係数:新東化学(株)製表面性測定機トライボギア(TYPE:HEIDON−14DR)を用い、湿度65%、室温20℃で、移動速度6000mm/min、垂直荷重0.4kgの条件下で測定し、その記録から静摩擦係数と動摩擦係数を求めた。 【0021】引裂強力 :JIS L1096(6.15.1A法)により求めた。 【0022】引張強力 :JIS L1096(6.12.1A法)により求めた。 【0023】引張伸度 :JIS L1096(6.12.1A法)により求めた。 【0024】膨張展開特性 :ダイセル化学製の電気着火式インフレータを用いて、エアバッグの膨張展開時間とバッグ内圧を測定した。 実施例1総繊度が467デシテックス、72フィラメント、強度が8.8g/デシテックス、伸度が23.0%からなるナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を用い、ウォータージェットルームにてタテ糸とヨコ糸の織密度が54本/インチの平織物を得た。次いで該織物をアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g/lおよびソーダ灰0.5g/lを含んだ80℃温水浴中に3分間浸漬した後、130℃で3分間乾燥させ、次いで180℃で1分間熱ヒートセットし、エアバッグ用基布を得た。 【0025】しかる後、該エアバッグ用基布から直径725mmの円状布帛2枚を打ち抜き法にて裁断し、一方の円状布帛の中央に同一布帛からなる直径200mmの円状補強布帛を3枚積層して、直径110mm、145mm、175mm線上を上下糸ともナイロン6・6繊維の462デシテックス/1×3から構成される縫糸で本縫いによるミシン縫製し、直径90mmの孔を設け、インフレーター取り付け口とした。さらに中心部よりバイアス方向に255mmの位置に相反して同一基布からなる直径75mmの円状補強布帛を1枚当て直径50mm、60mmの線上を上下糸ともナイロン6・6繊維の462デシテックス/1×3から構成される縫糸で本縫いによるミシン縫製し、直径40mmの孔を設けたベントホールを2カ所設置する。次いで、本円状布帛の補強布帛側を外にし、他方の円状布帛と経軸を45度ずらして重ね合わせ、直径700mm、710mmの円周上を上下糸ともナイロン6・6繊維の1390デシテックス/1から構成される縫糸で二重環縫いによるミシン縫製した後、袋体を裏返し60L容量のエアバッグを作成した。 【0026】このようにして得られたエアバッグ用基布およびエアバッグの特性を評価し表1に示した。表1から明らかなように、膨張展開特性が良く展開性に優れていた。 実施例2総繊度が350デシテックス、72フィラメント、強度が8.6g/デシテックス、伸度が22.5%からなるナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を用い、エアージェットルームにてタテ糸の織密度が60本/インチ、ヨコ糸の織密度が55本/インチの平織物を得た。次いで、該織物を実施例1と同様の方法にて精練、乾燥、熱セットし、エアバッグ用基布を得た。次いで、該エアバッグ用基布を実施例1と同様に60L容量のエアバッグを作成した。 【0027】このようにして得られたエアバッグ用基布およびエアバッグの特性を評価し表1に示した。表1から明らかなように、膨張展開特性が良く展開性に優れていた。 実施例3総繊度が350デシテックス、72フィラメント、強度が8.6g/デシテックス、伸度が22.5%からなるナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を用い、エアージェットルームにてタテ糸とヨコ糸の織密度が60本/インチの平織物を得た。次いで、該織物を実施例1と同様の方法にて精練、乾燥、熱セットし、エアバッグ用基布を得た。次いで、該エアバッグ用基布を実施例1と同様に60L容量のエアバッグを作成した。 【0028】このようにして得られたエアバッグ用基布およびエアバッグの特性を評価し表1に示した。表1から明らかなように、膨張展開特性が良く展開性に優れていた。 比較例1総繊度が467デシテックス、72フィラメント、強度が8.6g/デシテックス、伸度が22.5%からなるナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を用い、エアージェットルームにてタテ糸とヨコ糸の織密度が45本/インチの平織物を得た。該織物の片面にアクリル系樹脂をナイフコーターで塗布し130℃で乾燥した。アクリル樹脂の付着量は20g/m2であった。次いで、該エアバッグ用基布を実施例1と同様に60L容量のエアバッグを作成した。 【0029】このようにして得られたエアバッグ用基布およびエアバッグの特性を評価し表1に示した。表1から明らかなように、膨張展開特性が悪く展開性に劣っていた。 【0030】 【表1】
【0031】 【発明の効果】本発明によれば、エアバッグ用基布としての必要な機械的特性を保持しつつ、展開性に優れたエアバッグを提供でき、エアバッグによる乗員保護システムを普及促進させることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000003159 【氏名又は名称】東レ株式会社
|
| 【出願日】 |
平成12年3月9日(2000.3.9) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2001−254243(P2001−254243A) |
| 【公開日】 |
平成13年9月21日(2001.9.21) |
| 【出願番号】 |
特願2000−64875(P2000−64875) |
|