| 【発明の名称】 |
ポリエステル収縮差混繊糸の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】越智 隆志
【氏名】堺 崇晃
【氏名】村上 確司
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| 【要約】 |
【課題】本発明は自発伸長糸を用いることなく優れた風合いを有する布帛を提供するための収縮差混繊糸を、生産性が高く、簡易に得られるポリエステル収縮差混繊糸の製造方法を提供する。
【解決手段】高伸度側糸が、ポリエステルを鞘部に、該ポリエステルよりも伸長粘度の温度依存性が高いポリマーを芯部に配した芯鞘複合糸であって、低伸度側糸がポリエステル単独糸である伸度差を有する2種類以上の糸条を、同一口金から吐出し、非ポリエーテル系繊維用油剤が糸重量に対し0.1重量%以上付与された未延伸伸度差混繊糸とした後、最も高伸度である糸条の切断延伸倍率の0.40〜0.50倍の延伸倍率、90〜110℃の延伸温度、110〜130℃の熱セット温度で該未延伸伸度差紡糸を延伸することを特徴とするポリエステル収縮差混繊糸の製造方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】高伸度側糸が、ポリエステルを鞘部に、該ポリエステルよりも伸長粘度の温度依存性が高いポリマーを芯部に配した芯鞘複合糸であって、低伸度側糸がポリエステル単独糸である伸度差を有する2種類以上の糸条を、同一口金から吐出し、非ポリエーテル系繊維用油剤が糸重量に対し0.1重量%以上付与された未延伸伸度差混繊糸とした後、最も高伸度である糸条の切断延伸倍率の0.40〜0.50倍の延伸倍率、90〜110℃の延伸温度、110〜130℃の熱セット温度で該未延伸伸度差紡糸を延伸することを特徴とするポリエステル収縮差混繊糸の製造方法。 【請求項2】芯鞘複合糸の芯部に用いるポリマーとしてポリスチレン系ポリマーを用い、その複合比を芯鞘複合糸全体の重量に対し1〜15重量%とすることを特徴とする請求項1記載のポリエステル収縮差混繊糸の製造方法。 【請求項3】芯鞘複合糸の鞘部に用いるポリエステルが内部粒子形成剤を含有することを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル収縮差混繊糸の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はソフト感、ふくらみ感、反発感に優れ、さらに軽量性、保温性といった着用快適性にも優れた布帛を提供できるポリエステル収縮差混繊糸の製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ポリエステルは機械的特性をはじめ様々な優れた特性を有しているため衣料用途をはじめ各種分野に利用されている。衣料用途では天然繊維をターゲットとして品質の改良が行われてきているが、特にふくらみ、ソフト感のある風合いの実現のための手段として、熱による収縮特性の異なる繊維を混繊する、いわゆる収縮差混繊糸が広く用いられている。 【0003】そして、低収縮糸と高収縮糸を紡糸段階で混繊する紡糸混繊法による低コストプロセスが従来から採用されていた。例えば、特開平2−19528号公報には低収縮成分としてホモポリエチレンテレフタレート、高収縮成分としてイソフタル酸(IPA)と2・2 ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン(以下BHPPと略す)を共重合したポリエステルを同一口金から吐出する混繊紡糸を行い、未延伸糸を一旦巻き取った後延伸し、収縮差混繊糸とする方法が開示されている。該方法では紡糸一発で混繊できるため、低収縮糸と高収縮糸を別々に製造した後混繊する後混繊法に比べ大幅なコストダウンができるのである。 【0004】しかしながら、該方法では低収縮糸側も高収縮糸側と同じ延伸倍率、すなわち、糸の伸度が30〜45%程度まで高倍率延伸されるため乾熱収縮率が10%を超えてしまう。そのため、布帛にした際、ふくらみ感、ソフト感が不充分であった。このため、IPA、BHPPの共重合量を増加させ高収縮糸側の収縮率を向上させ、ふくらみ感を改善する方法もあるが、これでは布帛中で糸が過度に高収縮することによりかえって粗硬感が強いものしか得られなかった。 【0005】それを解決する手段として、特開平11−222745号公報に配向度差を有する2種類以上の糸条を同時に紡糸した未延伸配向度差紡糸混繊糸を特定の低倍率で延伸する方法が提案されていた。たしかにこの方法を採用すれば、低収縮糸側が乾熱収縮率0%以下である自発伸長糸を含む収縮差混繊糸が得られ、収縮差の拡大により優れたふくらみ感、ソフト感を有する布帛が得られる。しかしながら、延伸工程の熱セットホットローラー上で自発伸長糸が伸びることにより、糸揺れが大きくなり糸道が不安定となったり、巻き取ったパッケージ上に自発伸長糸によるループが多数発生し、パッケージから糸の解じょ性が不良となる等の問題があった。これは、配向度差のある未延伸糸を同時延伸することにより自発伸長糸を含む収縮差混繊糸を得る方法では避けられない問題であった。 【0006】一方、自発伸長糸や低収縮糸を別々に製造した後、高収縮糸と後混繊する方法が特開平4−352836号公報、特開平2−293410号公報、特開平7−207540号公報、特開平9−273043号公報等に記載されている。しかしながら、これはいづれも弛緩熱処理や接触式の低張力熱処理により自発伸長糸や低収縮糸を得るものであり、糸加工速度が遅く、さらに極低張力で糸が熱処理されるため断糸や毛羽が多数発生し、特開平11−222745号公報記載の紡糸混繊糸を延伸する方法に比べても生産効率が極めて悪く、また後混繊による工程数の増加もあり、高コストとなることが避けられないものであった。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明は自発伸長糸を用いることなく優れた風合いを有する布帛を提供できる収縮差混繊糸を、生産性が高く、さらに簡易に得られるポリエステル収縮差混繊糸の製造方法を提供するものである。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的は、高伸度側糸が、ポリエステルを鞘部に、該ポリエステルよりも伸長粘度の温度依存性が高いポリマーを芯部に配した芯鞘複合糸であって、低伸度側糸がポリエステル単独糸である伸度差を有する2種類以上の糸条を、同一口金から吐出し、非ポリエーテル系繊維用油剤が糸重量に対し0.1重量%以上付与された未延伸伸度差混繊糸とした後、最も高伸度である糸条の切断延伸倍率の0.40〜0.50倍の延伸倍率、90〜110℃の延伸温度、110〜130℃の熱セット温度で該未延伸伸度差紡糸を延伸することを特徴とするポリエステル収縮差混繊糸の製造方法により達成される。 【0009】 【発明の実施の形態】本発明でいう高伸度側糸および低伸度側糸に用いるポリエステルとはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられるが、PETが最も汎用的であり好ましい。また、ジオール成分および酸成分の一部が各々15mol%以下の範囲で他の共重合可能な成分で置換されたものであってもよい。共重合成分がポリエチレングリコールの場合は、共重合比は10重量%以下であることが好ましい。また、これらは他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料などの添加物を含有していても良い。 【0010】さらに、特に高伸度側糸に用いるポリエステルが内部粒子形成剤を含んでいると、形成された内部粒子が繊維内部で光を乱反射し、シルク様の美しい光沢が得られ好ましい。内部粒子形成剤としては酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の弱酸塩が挙げられるが、酢酸カルシウムが最も好ましい。内部粒子形成剤の含有量はポリエステルに対し0.01〜0.10重量%であることが好ましい。なお、本発明で言う内部粒子とは、添加された内部粒子形成剤とポリエステルまたはそれに含まれるオリゴマーや不純物が複合体を形成し、ポリエステル中に析出した微粒子のことを言うものである。そして形成される内部粒子の大きさは、ポリエステルを溶融状態で顕微鏡で観察した時、平均径として0.01〜5μm程度であることが好ましい。 【0011】本発明では、まず紡糸混繊法により未延伸伸度差混繊糸を得ることが、工程の簡略化、低コスト化の点から最も重要であるが、本発明で伸度差混繊糸とは、繊維の伸度が異なる2種類以上の糸条群からなる混繊糸のことを意味する。本発明では、伸度差混繊糸は2群あるいはそれ以上多数の糸条群からなる混繊糸であるが、2群でも充分な効果を奏するので2群で以下説明する。3群以上の場合は、最も伸度の高い糸条と最も伸度の低い糸条で置き換えて考えればよい。 【0012】本発明では未延伸伸度度差混繊糸において、高伸度側糸と低伸度側糸の伸度差が大きい方が、延伸後に低収縮糸と高収縮糸の収縮率差が大きくなり、布帛にした際ふくらみ感、ソフト感が増すため好ましい。高伸度側糸と低伸度側糸の伸度の差は80%以上、好ましくは100%以上である。 【0013】紡糸混繊法により未延伸伸度差混繊糸を得る方法としては、高伸度側糸としてポリエステルを鞘部に、該ポリエステルよりも伸長粘度の温度依存性が高いポリマーを芯部に配した芯鞘複合糸とし、低伸度側糸としてポリエステル単独糸を用いることが重要である。伸長粘度の温度依存性の相対的な大小については、特開平9−176920号公報に記載の方法で判定することができるが、該ポリエステルとしてPETを用いた場合、ポリスチレン系ポリマー、アクリレート系ポリマー、メチルペンテン系ポリマーを採用することが可能である。このようなポリマーをポリエステルに複合することにより、ポリエステルの伸度を飛躍的に増加させられるのである。特に、ポリスチレン系ポリマーが高伸度化効果、製糸性、コストのバランスが最も優れており好ましい。また、芯ポリマーの粘度は高い方が高伸度化効果が大きく好ましい。また、高伸度化効果を向上させる観点から、芯ポリマーの複合比は高い方が好ましいが、複合比が過度に高くなると紡糸性、延伸性が低下し、コストアップともなるため、複合比は1〜15重量%とすることが好ましい。芯ポリマーの複合比はより好ましくは3〜10重量%である。特に三葉断面等の異形断面とした場合は、アルカリ減量により鞘部のポリエステルが除去され、芯ポリマーが繊維表面に露出したり、フィブリル化する等のトラブルが発生しやすくなるため、芯ポリマーの複合比は3〜7重量%とすることがさらに好ましい。 【0014】また、本発明では芯ポリマーとして採用するポリマーは、一般にポリエステルに比べ耐熱性に劣るものが多いため、芯ポリマーが繊維表面に露出しないよう芯鞘複合糸とすることが重要である。形態としては同心円でも偏心でも良いが、同心円の方が複合安定性の点から好ましい。なお、芯ポリマーを芯鞘複合糸でなくポリエステルとのポリマーブレンド糸としても高伸度化効果は得られるが、芯ポリマーの低耐熱性により、延伸や糸加工時に融着が発生したり、染色した際くすみとして布帛欠点になる等の問題が発生してしまう。また、ブレンド斑による物性斑も発生しやすいのである。 【0015】また、低伸度側糸としては、ホモポリエステルを採用することももちろん可能であるが、IPAやBHPP、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(SSIA)等を共重合した高収縮ポリエステルとすると、延伸後の収縮率差が一層大きくなり布帛にした際、ふくらみ感、ソフト感がさらに向上し好ましい。また、PPTやPBTを用いるとさらにストレッチ性が加わるため好ましい。 【0016】また、上記した未延伸伸度差混繊糸は非ポリエーテル系繊維用油剤を付着させることが重要である。ここで、非ポリエーテル系繊維用油剤とは、平滑剤としてポリエーテルをほとんど含まない(20重量%以下)繊維用油剤のことを言うものである。平滑剤としてポリエーテルを多量に用いると、ポリエステル糸と金属表面の摩擦係数(糸/金摩擦係数)が大きくなり、延伸の際、糸が延伸ローラーに巻き付き易く、糸切れが多発する場合がある。ポリエステルとして酸化チタン含量の少ない、いわゆるブライトPETを用いた場合は、糸の摩擦係数自体が増加するため、特に糸切れが発生し易くなるのである。そのため、ポリエーテルの代わりに平滑剤として脂肪酸エステルや鉱物油を使用した繊維用油剤を付着させることが好ましい。これにより、糸/金摩擦係数が低下するため、延伸工程での糸切れを大幅に抑制できるのである。また、繊維用油剤の付着量は糸重量に対して0.1重量%以上とすることが、糸切れ抑制のために重要である。ただし、繊維用油剤付着量が多すぎるとコストアップの原因となるめ、付着量は2.0重量%以下とすることが好ましい。 【0017】また、本発明で採用する紡糸速度は2500m/分以上であれば、生産効率が高く、また巻き取り糸の繊維構造を十分発達させられるため延伸工程での糸切れが減少し好ましい。また、糸斑も減少するのである。 【0018】上記方法により得た未延伸伸度差混繊糸を延伸することにより、低収縮糸と高収縮糸の収縮率差を大きくし、布帛のふくらみ感、ソフト感を向上させた収縮差混繊糸を得るためには以下のことが重要である。すなわち、高伸度側糸の実効延伸倍率(切断延伸倍率を基準)を低下させ、さらに延伸後の熱セット条件を調整することにより、低収縮糸(高伸度側糸)の収縮率を充分低下させることが重要である。 【0019】本発明において、低収縮糸の収縮率を充分低下させ、低伸度側糸(高収縮糸)の収縮応力、強伸度特性等も満足するには延伸倍率を高伸度側糸の切断延伸倍率の0.40〜0.50倍とすることが特に重要である。この時、高配向側糸条から見ると、延伸倍率は高配向側糸条の切断延伸倍率の0.60倍以上とすることができる。このように、混繊糸を同一延伸倍率で延伸しても、糸条の配向度により切断延伸倍率を基準とした実効延伸倍率が異なり、低収縮糸の収縮率を充分低下させることと高収縮糸の強伸度特性を同時に満足することが可能となるのである。延伸倍率が高伸度側糸の切断延伸倍率の0.40倍より小さいと、低収縮糸の低収縮化には有利であっても熱セットホットローラー上で糸揺れが発生し、従来技術のように工程トラブルが発生したり、得られた混繊糸の糸斑が過大となり、布帛にしたとき染色斑となってしまう問題が発生する。一方、延伸倍率が高伸度側糸の切断延伸倍率の0.50倍より高くなると、低収縮糸側の収縮率低下が不充分となり、布帛にしたときふくらみ感が不足してしまう。延伸倍率は、好ましくは低配向側糸条の切断延伸倍率の0.43〜0.47倍である。ここで切断延伸倍率とは“1+DE%/100%”を意味するものである。ただし、DE%とは未延伸糸の残留伸度である。例えば未延伸糸のDE%が180%であれば切断延伸倍率は2.80となる。なお、延伸は一段延伸でも、多段延伸でも良い。 【0020】本発明において、低収縮糸の収縮率を充分低くするためには、熱セット温度を110℃以上とすることが重要である。本発明では熱セット温度は延伸後の糸条の熱処理温度を意味し、ホットローラー延伸機の場合、延伸後の第2ホットローラー温度を指すものである。熱セット温度が110℃より低くなると延伸糸の結晶化が進まないため配向非晶分子鎖の固定が不十分となり、低収縮化するには不利となる。逆に、130℃より熱セット温度が高くなると、ホットローラー上で糸揺れが発生する問題が発生する。熱セット温度は好ましくは118〜125℃である。 【0021】また、延伸した収縮差混繊糸の糸斑を抑制するために、延伸の際の温度を90〜110℃とすることが必須である。本発明では延伸温度は延伸直前の糸条の予熱温度を意味し、ホットローラー延伸機の場合、延伸直前の第1ホットローラー温度を指すものである。延伸温度が90℃より低くなると、延伸前の予熱が不足し分子鎖に不均一な歪みがかかるため糸斑が過大となり、布帛にした際の品位が大きく低下してしまう。また、延伸温度が 110℃より高くなると予熱ローラー上での糸揺れが発生してしまう。延伸のための予熱効率は予熱時間に依存するため、延伸速度が速くなるとそれだけ延伸温度を上昇させることが好ましい。延伸温度は好ましくは0.004×Vd+90℃とすると、より糸斑が良好となる。ただし、Vdは延伸速度、すなわち熱セットローラー速度(m/分)のことを意味するものである。 【0022】また、本発明では、低収縮糸と高収縮糸の糸長差を充分確保し織物のふくらみ感を満足するためには、布帛中の糸長差を大きくし、布帛のふくらみ感を向上させるため低収縮糸と高収縮糸の乾熱収縮率差が大きいことが重要であり、低収縮糸、高収縮糸は以下の収縮特性を持つものとすることが好ましい。布帛中の糸長差を大きくする観点から、低収縮糸の乾熱収縮率は8%以下、高収縮糸の乾熱収縮率は15%以上であることが好ましい。低収縮糸の乾熱収縮率は低い方が布帛中の糸長差を大きく取る意味から好ましいが、乾熱収縮率が0%以下、すなわち自発伸長糸となると従来技術のような問題が発生してしまうため、より好ましくは3〜6%である。また、高収縮糸の乾熱収縮率は高い方が布帛中の糸長差を大きく取る意味から好ましいが、乾熱収縮率が40%を超えると布帛の粗硬化が発生するため、乾熱収縮率はより好ましくは25〜35%である。 【0023】また、布帛の精練(湿熱弛緩処理)過程で織りクリンプを大きく発生させ、布帛の反発感を向上させるためには、高収縮糸の沸騰水収縮率は高い方が有利であり、10〜25%であることが好ましい。高収縮糸の沸騰水収縮率はより好ましくは15〜20%である。このような収縮特性を有する高収縮糸とするためには、IPAやBHPPを共重合することが有効であり、トータル共重合率として7〜15mol%とすることが好ましい。ただし、高率共重合ポリエステルとした場合、融点が下がり乾熱収縮率が高くなりがちであるため、紡糸速度4000m/分以上の高速紡糸により結晶化させることが好ましい。 【0024】さらに、低収縮糸が沸騰水収縮率>乾熱収縮率であると、精練から次工程である中間セット(乾熱緊張処理)で低収縮糸が伸びることを意味し、布帛拘束中でも高収縮糸との糸長差を発現しやすく好ましい。低収縮糸がこの特性を有することにより、乾熱収縮率≦0%の自発伸長糸でなくとも自発伸長糸同等の効果を得ることができるのである。 【0025】本発明では糸断面形状は特に限定されるものではないが、収縮差混繊糸の鞘糸となる低収縮糸、すなわち未延伸伸度差混繊糸において高伸度側の糸を三葉断面とするとシルク様の優雅な光沢が得られ好ましい。 【0026】本発明により得られる収縮差混繊糸の低収縮糸と高収縮糸の混繊割合は特に限定されるものではないが、布帛中での収縮挙動のバランスを考慮すると繊度比率で10/90〜90/10とすることが好ましい。より好ましくは30/70〜70/30である。 【0027】単糸繊度範囲についても特に限定はないが、延伸後の低収縮糸は0.5〜3.0dTex、高収縮糸は2.0〜6.0dTexとすればパウダータッチでしかも張り腰のある布帛が得られる。一方、延伸後の低収縮糸は3.0〜6.0dTex、高収縮糸は2.0〜3.0dTexとすればソフトでしかも弾発性に富む布帛が得られる。 【0028】本発明では糸斑が小さいことが布帛の品位を向上させる点から重要であり、本発明により得られる収縮差混繊糸のウースター斑(U%)は2.0%以下であれば、布帛にした際染色斑が発生せず好ましい。U%はより好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。 【0029】さらに、本発明で得られる混繊糸は、芯鞘複合糸である低収縮糸の芯部に配したポリマーが延伸温度付近では鞘部に配したポリエステルよりも高粘度となるため、芯部に配したポリマーが部分的に切断されていることが特徴である。このような形態とするためには、延伸温度を芯部に配したポリマーの軟化温度以下に設定することが重要である。例えばポリスチレンでは130℃程度である。この一例を図1に示すが、芯部に配したポリマーが存在している中実部と該ポリマーが切断され空孔が発生している中空部が数十μmオーダーで交互に存在している。そして、この数十μmオーダーで中空部が存在していることにより、通常の中実糸に比べ曲げ剛性を低下させ、糸の伸度が100%以下となるまで延伸されていても充分なソフト感を発現させるのである。また、この中空部がクッションの役割を果たし、さらにソフト感を向上させるのみならず、糸の反発感も飛躍的に向上しているのである。この中実部の平均長さは10〜100μm、中空部は平均長さが5〜100μmであればさらにソフト感、反発感が向上し好ましいのである。ここで、中空部とは長さが1μm以上のものを言い、中実部に所々入る場合があるクラックは中空部には含めない。さらに、中空部が若干押しつぶされた形態を採ると、従来の太細糸とは比較にならないほど超微細な、数十μmオーダーで太部/細部が交互に配置された太細糸となり、独特の繊細なソフトでドライな触感、光の乱反射による美しい光沢が得られ好ましい。また、本発明の低収縮ポリエステル糸の偏光顕微鏡下での側面写真を図2に示すが、中実部と中空部で干渉縞の見え方が異なっている。これは、中実部と中空部の配向が異なっていることを示しており、このように数十μmオーダーという超微細なピッチで糸長手方向に配向が異なる糸は従来存在していなかった。これにより、独特の繊細なソフトでドライな触感、光の乱反射による美しい光沢がさらに強調され好ましい。また、通常PET糸は比重が1.37程度であるが、本発明の低収縮ポリエステル糸は中空部を有しており、さらに芯部に配するポリマーとしてポリスチレンやポリメチルペンテン等の軽量性ポリマーを使用すると見かけ比重が通常PET糸に比べ小さくなり、大きな軽量効果を得ることができる点も本発明の特徴の一つである。なお、ポリスチレンは比重1.1、ポリメチルペンテンは0.8である。さらに、この中空部により保温性も通常の中実PET糸に比べ向上するのである。 【0030】また、本発明による得られる収縮差混繊糸は集束性の点からエア交絡や撚糸が施されていることが好ましい。収縮差混繊糸の交絡度は0.1〜15とすると、糸に自由度があるため布帛の加工工程でふくらみ感が発現しやすい。通常、後混繊では糸の集束性を得るためには交絡度は50程度の高度の交絡が必要であるが、本発明では紡糸混繊であるため集束性が良好であり、低交絡度でも十分な集束性が得られるのである。エア交絡は紡糸過程で巻き取りまでの間で施すと工程省略となり好ましい。ただし、高度の交絡を施す場合は延伸後行うことも可能である。 【0031】延伸装置としては公知のものが使用できる。少なくとも1対のホットローラーを有する延伸機を使用すれば、さらに工程が安定化する。ここでいう1対のホットローラーとは、延伸前の予熱のための第1ホットローラー(1HR)と延伸後の熱セットのための第2ホットローラー(2HR)のことをいうものとする。これに、コールドドローローラー(DR)、多段延伸のためのホットローラーが付属していても差し支えない。なお、予熱および/または熱セットに熱板を使用することも可能であるが、熱板/糸条の擦過により糸切れが発生したり、熱板と糸条のスティックスリップにより糸斑が発生しやすくなるのであるため、ホットローラーを使用することが好ましい。 【0032】なお、熱セットのためのホットローラーは梨地表面、鏡面の双方が採用可能であるが、梨地表面であると、延伸時の糸揺れが小さくなり、糸斑がさらに抑制され、また延伸時の糸切れも減少し、鏡面表面であると高収縮糸の収縮応力が向上し、好ましい。 【0033】また、通常の紡糸−延伸2工程法の代わりに、紡糸された未延伸配向度差紡糸混繊糸を一旦巻き取ることなくそのまま延伸する紡糸直接延伸法を採用すると、さらに生産性が向上し好ましい。この時は引き取り、巻き取り装置が延伸装置となる。 【0034】本発明の繊維はブラウス等の薄地用途、スーツ、ジャケット、パンツ、コート等の中厚地用途に好適に用いることができる。 【0035】 【実施例】以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。 A.極限粘度[η] オルソクロロフェノール中25℃で測定した。 B.沸騰水収縮率(BWS)および乾熱収縮率(DSAB) BWS(%)=[(L0−L1)/L0)]×100DSAB(%)=[(L0−L2)/L0)]×100L0:延伸糸をかせ取りし初荷重0.09cN/dtex(0.10gf/d)下で測定したかせの原 長L1:L0を測定したかせを実質的に荷重フリーの状態で沸騰水中で15分間処理し、風乾後初荷重0.09cN/dtex(0.10gf/d)下でのかせ長L2:L1を測定したかせを、さらに乾熱180℃で1.8×10-3cN/dtex(2.0mgf/d)荷重下で 15分間熱処理し、初荷重0.09cN/dtex(0.10gf/d)下でのかせ長C.伸度初期試料長=50mm、引っ張り速度=50mm/分とし、JIS L1013に示される条件で荷重−伸長曲線を求めた。次に伸びを初期試料長で割り伸度とした。 D.ウースター斑(U%) Zellweger社製 USTER TESTER 1 ModelCを使用し、8m/分の速度で糸を給糸しながらノーマルモードで測定を行った。 E.交絡度適当な長さの糸を取り出し、下端に0.089cN/dTex(0.1gf/d)の荷重をかける。次いで適当なニードルを糸に突き刺して静かに持ち上げ、ニードルが停止した距離(cm)を100回測定して平均値L(cm)を求め、次式により交絡度を算出する。 【0036】交絡度=100÷(2×L) F.布帛評価得られた収縮差混繊糸に撚り係数2600のS撚りを施し、経糸および緯糸に用い平織りを製織し、98℃で精練を施した。その後180℃で中間セットを行い、常法により10%のアルカリ減量を施した後染色、最終セットを行った。得られた布帛のふくらみ感、ソフト感、および染色斑を4段階法で官能評価した。 実施例1〜7低伸度側糸として極限粘度0.66のIPA7.0mol%およびBHPP4.0mol%共重合PET(酸化チタン含有せず、以下(IPA+BHPP)共重合PET)、高伸度側糸として内部粒子形成剤として酢酸カルシウムを0.05重量%含み、酸化チタンを含まない極限粘度0.63のホモPET(ブライトPET)とポリスチレン(旭化成社製“スタイロン”685)を用い、該(IPA+BHPP)共重合PETは285℃、該ブライトPETが295℃、該ポリスチレンは220℃で溶融し、絶対濾過径15μmのステンレス製不織布フィルターを用いそれぞれに濾過を行った後、いづれもY孔の口金から吐出し、三葉断面繊維を得た。この時、高伸度側は芯/鞘=ポリスチレン(5.0重量%)/ブライトPET(95重量%)の芯鞘複合糸とした(PS/PET複合糸)。そして、紡糸温度290℃で吐出した後、25℃の風を吹き付けて冷却し、平滑剤として平均分子量500の脂肪酸エステルを50重量%、鉱物油を30重量%含む繊維油剤を糸重量に対し0.7重量%付着せしめた後、インターレースノズルで交絡を付与し、紡糸速度3000m/分で第1ゴデットローラーで引き取った後100dtex−36フィラメントの未延伸配向度差混繊糸を巻き取った(図3)。この時、高配向側、低配向側とも同一繊度、同一フィラメント数(50dtex−18フィラメントずつ)とした。低伸度側糸は伸度=150%、高伸度側糸は伸度=266%と伸度差は116%であった。 【0037】上記未延伸伸度差混繊糸を図4の1対のホットローラーを有する延伸機を用い、第1ホットローラー(1HR)の温度、延伸倍率、第2ホットローラー(2HR)の温度を表1の如く変更して、延伸速度(第2ホットローラー4の周速度)1000/m分として延伸を行った。延伸時の糸揺れ、糸切れ等も無く問題なく製糸できた。またドッフ後の再スタート成功率も良好であった。 【0038】得られた混繊糸の物性を表1に示す。優れた収縮特性を示し、U%も十分低いものであった。また、交絡度は1〜3であった。さらに、低収縮糸であるPS/PET複合糸の芯部に配されたポリスチレンは図1に類似の様に部分的に切断されていた。また、この混繊糸を用いた布帛はふくらみ感、ソフト感、反発感に優れ、さらに染色斑もほとんど発生しなかった。また、シルク様の優雅な光沢を示すものであった。 【0039】 【表1】
【0040】 【表2】
【0041】比較例1〜6表1の如く延伸条件を変更した以外は実施例1〜7と同様に、紡糸、延伸を行った。比較例1では延伸倍率が低いため、延伸工程での糸切れが頻発し、またパッケージからの糸の解じょ性が悪いため撚糸工程でも糸切れが頻発した。また、U%が大きいため染色斑にも劣るものであった。比較例2では延伸倍率が高いため、低収縮糸の低収縮化が不充分でありふくらみ感、ソフト感、反発感に乏しい布帛しか得られなかった。比較例3では延伸温度が低いため、U%が大きくなり染色斑の大きい布帛しか得られなかった。比較例4では延伸温度が高いため、1HR上での糸揺れが大きくなり、延伸工程で糸切れが頻発した。また、得られた収縮差混繊糸もU%が高いため染色斑の大きい布帛しか得られなかった。比較例5では熱セット温度が低いため、低収縮糸の低収縮化が不充分でありふくらみ感、ソフト感に乏しい布帛しか得られなかった。比較例6では熱セット温度が高いため、2HR上での糸揺れが大きくなり、延伸工程での糸切れが発生した。また、得られた収縮差混繊糸の高収縮糸の沸騰水収縮率が低下しすぎ反発感に乏しい布帛しか得られなかった。 比較例7実施例1〜7で高伸度側に用いたPS/PET複合糸を実施例1で用いたブライトPETに変更し、紡糸速度を1500m/分とした以外は実施例1と同様に紡糸を行い177dtex−36フィラメントの未延伸糸を得た。(IPA+BHPP)共重合PETは伸度=300%、ブライトPET側は伸度=303%であった。これを延伸倍率2.58(ブライトPETの切断延伸倍率×0.64)倍、1HR温度95℃、2HR温度125℃とした以外は実施例1と同様に延伸を行い収縮差混繊糸を得た。得られた混繊糸の物性を表1に示す。低収縮糸(ブライトPET)、高収縮糸のDSABがそれぞれ10%、40%を超える高いものであり、この収縮差混繊糸を用いた布帛はふくらみ感は満足できるものの、ソフト感、反発感に乏しく粗硬感の強いものとなった。 実施例8紡糸温度を295℃、紡糸速度を5000m/分、巻き取り糸の繊度を高伸度側糸は67dTex、72フィラメント、低伸度側糸は40dTex、6フィラメントとした以外は実施例2と同様にして未延伸伸度差混繊糸を巻き取った。低伸度側糸は伸度=85%、高伸度側糸は伸度=165%であった。これを延伸倍率を1.20倍(高伸度側糸の切断延伸倍率×0.45)とした以外は実施例2と同様に延伸した。延伸時の糸揺れ、糸切れ等も無く問題なく製糸できた。またドッフ後の再スタート成功率も良好であった。 【0042】得られた混繊糸の物性を表3に示すが、優れた収縮特性を示し、U%も十分低いものであった。また、交絡度は5であった。さらに、低収縮糸であるPS/PET複合糸の芯部に配されたポリスチレンは図1に類似の様に部分的に切断されていた。また、この混繊糸を用いた布帛はふくらみ感、ソフト感、反発に優れ、さらに染色斑もほとんど発生しなかった。また、シルク様の優雅な光沢を示すものであった。 【0043】 【表3】
【0044】 【表4】
【0045】実施例9高伸度側糸を、PS複合比を12重量%とし、PETを酸化チタンを0.30重量%含む[η]=0.63のホモPET(セミダルPET)とした丸断面とし、低伸度側糸を該セミダルPETの丸断面糸とした以外は実施例2と同様にして未延伸伸度差混繊糸を巻き取った。低伸度側糸は伸度=152%、高伸度側糸は伸度=302%であった。これを延伸倍率を1.77倍(高伸度側糸の切断延伸倍率×0.44)とした以外は実施例2と同様に延伸した。許容範囲ではあるが、実施例1に比較すると紡糸、延伸で糸切れが発生した。 【0046】得られた混繊糸の物性を表3に示すが、優れた収縮特性を示し、U%も十分低いものであった。また、交絡度は4であった。さらに、低収縮糸であるPS/PET複合糸の芯部に配されたポリスチレンは図1に類似の様に部分的に切断されていた。また、この混繊糸を用いた布帛はふくらみ感、ソフト感、反発に優れていたが、染色斑は実施例2に比較すると一歩譲るものであった。 実施例10図3の紡糸、巻き取り装置の代わりに図5の紡糸直接延伸装置を用い、第1ホットネルソンローラー(1HNR)速度を3000m/分、1HNR温度を106℃、第2ホットネルソンローラー(2HNR)速度を4720m/分、2HNR温度を130℃としてワインダー速度を4696m/分として巻き取った以外は実施例2と同様に紡糸、延伸を行った。また、延伸時の糸揺れ、糸切れ等も無く問題なく製糸できた。またドッフ後の再スタート成功率も良好であった。 【0047】得られた混繊糸の物性を表3に示すが、優れた収縮特性を示し、U%も十分低いものであった。また、交絡度は10であった。さらに、低収縮糸であるPS/PET複合糸の芯部に配されたポリスチレンは図1に類似の様に部分的に切断されていた。また、延伸時の糸揺れ、糸切れ等も無く問題なく製糸できた。またドッフ後の再スタート成功率も良好であった。また、この混繊糸を用いた布帛はふくらみ感、ソフト感、反発に優れ、さらに染色斑もほとんど発生しなかった。また、シルク様の優雅な光沢を示すものであった。 比較例8繊維用油剤を、平滑剤としてポリエーテルを80重量%含むものに変更した以外は実施例2と同様に紡糸、延伸を行った。しかし、この繊維用油剤は糸/金摩擦係数を大きくするものであり、延伸工程で1HRに糸が巻き付き、糸切れが頻発した。 【0048】 【発明の効果】本発明のポリエステル収縮差混繊糸の製造方法を採用することにより、自発伸長糸を用いることなく優れた風合いを有する収縮差混繊糸を、生産性が高く、簡易に得られるポリエステル収縮差混繊糸の製造方法を提供できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003159 【氏名又は名称】東レ株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年1月14日(2000.1.14) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2001−200442(P2001−200442A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月27日(2001.7.27) |
| 【出願番号】 |
特願2000−5474(P2000−5474) |
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