| 【発明の名称】 |
捲縮糸 |
| 【発明者】 |
【氏名】水木 達郎
【氏名】井上 正三
【氏名】北 純子
|
| 【要約】 |
【課題】染着性が速く、連続染色やプリント染色において、鮮明で均一な染色を可能とするカーペットを形成し得る捲縮糸を提供する。
【解決手段】単糸繊度が9〜45dtexでかつ沸騰水処理後の捲縮伸長率が12%〜35%のポリアミドマルチフィラメント捲縮糸であり、レーザーラマン分光法による単糸断面の結晶性測定において、単糸表層部の結晶性内部層の最も低い結晶性部分の1.05倍以上であることを特徴とする捲縮糸。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】単糸繊度が9〜45dtexでかつ沸騰水処理後の捲縮伸長率が12〜35%のポリアミドマルチフィラメント捲縮糸であり、下記レーザーラマン分光法による単糸断面の結晶性測定において、単糸表層部の結晶性が内層部の最も低い結晶性部分の1.05倍以上であることを特徴とする捲縮糸。レーザーラマン分光法による単糸断面の結晶性測定:単糸の断面にレーザー光をあて、得られるラマン散乱光のなかで、1640cm-1付近のカルボニルモード(アミドIモード)の半価幅を結晶性の指標とする。測定は単糸断面において表層部から中心部に向かい、約3μおきに測定し、断面方向の結晶性を比較する。 【請求項2】単糸断面形状がY型もしくは星型であり、その変形度が1.8〜4であることを特徴とする請求項1に記載の捲縮糸。 【請求項3】捲縮糸に30〜120PPMの銅を含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の捲縮糸【請求項4】総繊度が600〜2500dtexであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の捲縮糸。 【請求項5】アミノ末端基量が5×10-5mol/g以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の捲縮糸。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、捲縮糸、特にカーペット用に適した捲縮糸に関する。さらに詳しくは、染料の染着性が速く、連続染色やプリント染色において、鮮明で均一な染色を可能とする捲縮糸に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年カーペットは、その求められる機能が多様化し、使用目的に応じた商品開発が求められている。染色方法も、従来の連続染色やウィンス染色、スペースダイ、チーズ染色、プリント染色などの手法が用いられている。 【0003】特に最近は、プリント染色を使用した製品がより数多く出回るようになってきた。具体的には直接白糸をタフトしたものをプリント染色したり、一度連続染色やウィンス染色で下地を着色したタフト反に、さらにデザイン性や意匠性を付与するためにプリント染色を施すことが行われている。また、さらに比較的淡色の原着糸を用い、ベース色が付いたタフト反において、メリハリをつけたり製品としての価値を高めるためにさらにプリントを施すと言った手法が採用されている。プリント染色の特徴としては、いろいろな柄、特に込み入った模様や鮮やかな柄が、タフト反の任意の場所に容易に作製できる点が挙げられ、高級カーペットの分野で広まっているが、その他にも多量の染色液を使わなくてすむため、環境に優しいことなどが挙げられる。 【0004】しかしながら、このようなプリント染色されたカーペットに求められる特性には厳しいものがある。まず第1にきれいな柄を出す必要がある。高級カーペットの分野では特に撚糸セットした捲縮糸をカットパイル糸として用いるサキソニーカーペットが主流であるが、該サキソニーカーぺットにおいて、柄をきれいにかつ鮮明に表現することが必要である。また、柄が経時的に劣化しないよう、耐候性、染色堅牢に優れていることも要求される。従って、カーペットを構成する捲縮糸に対する要求も厳しくなっている。柄を鮮明に表現する柄切れ性において、特に前述の撚糸セット糸の場合、パイルの先端が製造工程並びに使用中に開きにくいこと、すなわちペンシルポイント性に優れた捲縮糸が求められる。また、他の染色法法に比較してプリント染色法は実質的な染色時間が短いため、速やかに染料が繊維内部に移行・固着し、染色されることが求められる。さらにまた、隣接するパイルに不必要に染料を拡散させないために、すなわち染料が望ましい箇所にのみ保持されることも要望されている。また、前述の染着性が速いと染料が入った点は、往々にして、吸着斑につながりカーペットの表面に筋を発生させる懸念があり、これらを両立させる必要がある。さらには耐候性、染色堅牢性が高いことも必要とされている。 【0005】これらの問題を解決するために、従来においてもプリント染色用の捲縮糸の提案はいくつかなされている。 【0006】例えば、原糸の延伸倍率を低くするなどして結晶性を低め、染料が入りやすくなる非晶部を多くする糸構造にする試みもなされている。しかしこの場合、カーマット用途のように耐候性に厳しく分子量の高い含金染料を使用する場合において、染料の染着斑による筋の発生がしやすいという問題が生じていた。一般に含金染料は分子量が大きいため、繊維の微細部分において染料の吸着性に差がでやすく従って、カーペットの表面として筋が発生しやすいという問題があった。またこの場合、繊維構造の固定が不十分であるため、染色堅牢性に劣るという問題も生じていた。 【0007】このため、最終的なアミノ末端量を増やすことで染着性を高めようとする試みがなされている。しかし、上述のような短時間での染色手法においては、染料の平衡吸着量を高くしても、実際の染着性にはほとんとど効果がないばかりか、染料の吸着量にバラツキを生じ、筋が出やすいと言うことにしかならなかった。 【0008】特公平6−37741号公報には、吹き付け染色されたカットパイルカーペットとして、ペンシルポイント性に優れた断面に1個以上の中空部の存在する単糸断面を有するマルチフィラメントを使用し、特定の撚糸セット条件と組み合わす提案がなされている。この特許では確かにバルキー性は改善されるものの、中空部の存在により逆にペンシルポイント性は良好でなく、そのために吹き付け染色による柄は不鮮明なものとなっていた。また使用する捲縮糸の単糸としては特に公知のものを使用しているため染着性の速さには限界があった。 【0009】また、特許第2530805号公報には、ナイロン6とナイロン66の共重合体を用い、高温により捲縮加工を施した後に飽和水蒸気処理を施し、濃色での染色を可能にする特許が開示されている。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】しかし、この特許においては、記載されている特徴の処理が捲縮後の処理のため、それまでの工程で繊維構造がほとんど固定されており、染色における明度の改善はわずかなものである。また、チップが共重合であるためチップの重合が難しくかつ製糸が困難であるという問題点も有していた。 【0011】以上のように現状では、プリント染色用捲縮糸として、通常の耐候性能等の機能を保持しつつ高い染着性を示し柄を鮮明に出す捲縮糸は提案されていなかった。 【0012】本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。したがって、本発明の課題は、プリント染色用途などに好適な染着性の速い捲縮糸を提供することにある。 【0013】 【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明の捲縮糸は、主として次の構成を有する。すなわち、単糸繊度が9dtex〜45dtexでかつ沸騰水処理後の捲縮伸長率が12〜35%のポリアミドマルチフィラメント捲縮糸であり、下記レーザーラマン分光法による単糸断面の結晶性測定において、単糸表層部の結晶性が内層部の最も低い結晶性 部分の1.05倍以上であることを特徴とする。 【0014】ただし本発明におけるレーザーラマン分光法による単糸断面の結晶性測定は、単糸の断面にレーザー光をあて、得られるラマン散乱光のなかで、1640cm-1付近のカルボニルモード(アミドIモード)の半価幅を結晶性の指標とした。 【0015】そして、本発明の混繊捲縮糸においては、次の(1)〜(4)がそれぞれ好ましい態様である。 (1)単糸断面形状がY型もしくは星型であり、その変形度が1.8〜4であること。 (2)捲縮糸に30〜120PPMの銅を含有していること。 (3)総繊度が600〜2500dtexであること。 (4)アミノ末端基量が5×10-5mol/g以下であること。 【0016】 【発明の実施の形態】本発明の捲縮糸は、後述する沸騰水中で処理したときの捲縮の発現率を指す捲縮伸長率が、12〜35%、好ましくは15〜25%であることが必要である。かかる沸騰水処理後の捲縮伸長率がかかる範囲であると、捲縮の発現が十分で、バルキー性のあるカーペットとすることができる。また、撚糸セット用途に使用した際にパイルの先端が開かない程度のペンシルポイント性を保持することができる。35%以上にしようとすると風合いが堅くなりフェルトライクになるとともに、製造上熱処理を厳しくするために工程安定性が悪くなる。 【0017】本発明でいう沸騰水処理後の捲縮伸長率とは、捲縮糸を巻き取り後、チーズ形状で室温(20〜35℃)、相対湿度50〜75%の雰囲気中に、20時間以上放置した後、沸騰水中で処理したときの捲縮の発現率を示し、具体的には以下の方法で測定した値である。 【0018】すなわち、測定しようとする捲縮糸を、無荷重状態で30分間沸騰水で浸漬処理した後、乾燥して平衡水分率となし、該試料に2mg/dの初荷重をかけ、30秒経過の後に試料長50cm(L1)を測定しマーキングし、ついで同試料に100mg/dの定荷重をかけ、30秒経過後の伸び(L2)を測定する。前記L1,L2の値から、{(L2−L1)/L2}×100として、無荷重下における処理糸の捲縮伸長率を求める。 【0019】なお、沸騰水処理前に糸条を放置する際の雰囲気条件は、実際のカーペット製造工程において使用される時の捲縮糸状態、即ち吸湿により捲縮特性が平衡状態に達した状態とするためのものであり、平衡状態に達するのに時間がかかり過ぎず、かつ結露を生じないという点から選定したものである。 【0020】本発明の捲縮糸は、マルチフィラメントを構成する単糸の繊度が9〜45dtex、より好ましくは15〜30dtexであることが必要である。 【0021】9dtex未満であると単糸が細く、後述する繊維断面方向に結晶性の差を持たせることが困難になる。また比表面積が増えるので染着速度は増加するが、表面の反射散乱光が目立ち、深みのある色が得られにくくなる。一方、45dtexを越えると、得られたカーペットの風合いが堅いものとなり風合いに劣り、またマルチフィラメントとしたときの収束性が低く、毛細管現象に基づく染料の移行が遅く、鮮明性に劣るカーペットとなってしまう。 【0022】本発明の最大の特徴は、特定の捲縮伸長率を示す捲縮糸の単糸の断面方向において結晶性に差をつけ、特に繊維の表層部に比べて内部の結晶性が低い部分を存在させることにある。 【0023】具体的には、表層部の結晶性を示す部分の内側に表層部よりも一定以上に結晶性が低くなった部分が存在することが必要である。本発明者らは、レーザーラマン分光法にて単糸断面の結晶性を測定することにより、特定の結晶性の構成を示す断面構造になっている場合、プリント染色に好適な捲縮糸とすることが可能なことを見いだし本発明に至ったのである。 【0024】本発明における単糸断面における結晶性の測定とは、後述するように単糸断面の微少箇所にレーザー光を照射して、該箇所から生じるラマン散乱光を測定することで測定する。該ラマンスペクトルにおいて特定の波長における振動スペクトルの半価幅から結晶性を定量的に算出し、結晶性として評価するものである。本発明においては、1640cm-1のカルボニルモード(アミドIモード)の半価幅を結晶性の指標とした。半価幅が小さいほど結晶性が高く、大きいほど低い。測定は単糸断面において表層部から中心部に向かい、約3μおきに測定した。図1に単糸断面における測定箇所のモデル図を示す。 【0025】本発明においては、上記測定方法で求めた結晶性を示すパラメータが表層部と内層部の最も低い箇所を比較において、表層部が1.05倍以上、より好ましくは1.1倍以上高いことが必要である。1.05倍未満であると繊維の断面方向における構造差が小さく染着性に差が生じにくいため、繊維全体としての染着性も上がらない。 【0026】本発明においては、繊維の内部の一部に繊維表層より本発明で定義するところの結晶性の低い箇所が存在していればよく、全ての内部の結晶性が低い必要はない。また、後述するように、通常カーペット用捲縮糸の断面形状は非円形であるため、結晶性の低い内層部分が必ずしも繊維断面において点対称に配置されている必要もない。 【0027】捲縮繊維の単糸断面方向の構造において、上述したように表層部に比較して内層に結晶性の低い部分を存在させるために、表層部に偏光顕微鏡で観察できる結晶層を厚み1μ以上10μ以下において形成させると、より内外層の差を発現させることが可能となり好ましい。一見表層部に結晶層があると染料の浸透を妨げるように思われるが、本発明者らは逆にこの結晶層の存在により、単糸の染着性は速くなることを見いだした。理由は定かではないが、該結晶層のすぐ内部の結晶性が逆に低くなることによるためと思われる。 【0028】本発明における単糸断面の表層部の結晶層は、公知の方法で確認することが可能である。単糸を数μの厚さにカットしたものを偏光顕微鏡を用いて観察することで結晶層を白い反射している部分として確認することができる。丸太十字形の球晶として確認できる場合もある。単糸断面全面に上記偏光顕微鏡で観察できる結晶層が出現していたのでは染着性の改善とはならず、表層のみに存在することが必要である。また、繊維内部に斑点状に存在する球晶は、その箇所の平均的な結晶性に影響を与えない程度の数で存在する場合、例え繊維内層に存在しても本発明の効果に影響は与えない。 【0029】本発明の捲縮糸においては、上述の高い捲縮性能と高い染着性を両立させるため捲縮糸を構成するポリマはポリアミドであることが必要である。本発明でいうポリアミドとは、ポリカプラミドやポリヘキサメチレンアジパミドなどが挙げられる。染着性がより速いという点でポリカプラミドが特に好ましい。また、本発明の効果を損なわない程度に5重量%以下の共重合成分を含むポリアミドのコポリマーであってもよい。具体的な共重合成分としては、ε−カプロアミド、テトラメチレンアジパミド、ヘキサメチレンセバカミド、ヘキサメチレンイソフタラミド、テトラメチレンテレフタラミド、キシリレンフタラミド等がある。さらには製糸性改善や最終製品の品質改善のために共重合成分を添加したり、その他カーペット上でベースとなる淡色を表す目的で顔料を添加したポリアミドであっても何ら差し支えない。顔料は有機物でも無機物でもどらちでも差し支えないが、一般にはカーボンブラックやベンガラ、フタロシアニン系の顔料が目的の色に応じた濃度で用いられる。また、汚染性を改善するためにUSP第5108684号に記載のようにアルカリ金属塩を含有するスルホン化した共重合体を使用しても良い。 【0030】ポリマー中には必要に応じて艶消し剤、例えば酸化チタン、帯電防止剤、耐候剤、耐熱剤、酸化防止剤等を併用させてもよい。 【0031】本発明の捲縮糸の単糸断面形状は特に制限なく種々の断面形状において適用可能である。丸断面、三角断面、扁平断面、Y型断面、多角形断面、星形断面、田型中空断面、などが挙げられる。中でもカーペットとして、高いバルキー性を発現させることができる点でY型断面もしくは星形断面が好ましい。特に撚糸セット品の場合高いペンシルポイント性を付与できる点からも中空部の存在しないY型もしくは星形断面はより好ましい断面形状といえる。 【0032】本発明で言うY型もしくは星形断面形状は、公知の断面形状である。繊維断面の中心から、ほぼ同形の3本以上の突起が放射状に突出したものをいう。この場合、変形度は1.8〜4がより好ましい。変形度をこの範囲にすることにより、ヘ゜ンシルポイント性が良好でバルキー性に富んだの1.8以上4以下であると、プリント染色での柄が鮮明であるばかりか、バルキー性や風合いにも優れたバランスのとれたカーペットを得ることが出来る。 【0033】本発明の捲縮糸は、糸中に耐候剤として銅を30〜120PPM、より好ましくは50〜90PPMの量で含有することが好ましい。 【0034】銅を含有させる方法は特に制限ないが、分散性のよい銅化合物を紡糸前にブレンドもしくは練り込むことが好ましい手法である。製糸中に安定で利用可能な銅化合物として、有機・無機化合物のどちらでもよい。好ましい例として、ベンゾイミダーゾール、沃化銅、酢酸銅等が挙げられる。銅成分として上記の量が含まれることが好ましく、30PPM以上120PPMとすることで、製糸性に影響を及ぼすことなく、より高い耐候性、より染色堅牢性を発現させることが可能となる。 【0035】本発明における捲縮糸の繊度は、600〜2500dtex、より好ましくは800〜2000dtexであることが好ましい。この範囲の繊度であると、バルキー性やボリューム感を伴い、かつカーペットとしての好ましい柄を容易に作り出せるとともに、タフト時の単糸切れやバイル抜けなどを防止でき、工程安定性に優れる。さらにまた、よりしっかりした腰が要求される用途やより高い耐久性が要求される用途においては、本発明の捲縮糸マルチフィラメントを定法により2プライもしくは3プライの諸撚りとすれはばよいが、上記繊度であるとまた風合いやペンシルポイント性に優れたカーペットにすることができる。諸撚りの撚り数は特に制限なく目的とする柔軟性と腰に合わせればよいが、通常上撚り、下撚り数とも150〜230t/mが好ましく、170〜210t/mの条件がより好ましく採用される。230t/mを越えると、カーペット表面でパイルが側面を向きやすくした、柄切れ性の劣ったものになる。 【0036】本発明においては、用いるポリアミドポリマのアミノ末端基量が5×10-5mol/g以下であれば更により好ましい。一般にアミノ末端基量が高くなるほど平衡吸着量は多くなるが、プリント染色のような場合には、平衡吸着量よりも染着速度が速いことがより重要で、末端基量が多くても該染着速度はほとんど変わらない。むしろ、一旦通常の浴中染色をした後でその上にプリント染色を施したり、無地部分をあらかじめ浴中染色で染色しておく場合など種々の製品形態およびそのプロセスを考慮すると、アミノ末端基量が多いと染料分子の染着のバラツキを生じ、斑や筋が出やすくなる。この点から、アミノ末端基量は必要以上に存在することは好ましくなく、5×10-5mol/g以下、より好ましくは4.5×10-5mol/g以下で有ることが好ましい。 【0037】本発明の捲縮糸を用いることで、プリント染色において柄が鮮明で、すなわち柄切れ性に優れたカーペットを提供することが可能となる。特に撚糸セットしたサキソニー調のカーペットにおいて、その効果の発現が大きいものとなるが、もちろん、本発明の捲縮糸ほをカーペットを構成するパイルの一部として使用するものであっても適用可能である。 【0038】以下に、本発明の染着性が速く、堅牢性に優れた捲縮糸を得るための製法の例について説明する。本発明の捲縮糸を作製するには、溶融紡糸、紡糸油剤、延伸、捲縮、各工程からなる通常公知の方法を採用する。 【0039】本発明に用いる溶融紡糸装置は、エクストルーダー型紡糸機およびプレッシャー型紡糸機のどちらも使用可能であるが、製品の均一性および製糸工程における収率の点から前者が好ましい。特に原着ポリマーを用いる場合は、エクストルーダー型紡糸機が有利となる。 【0040】該原着糸の製造に当たっては、原着チップは、あらかじめまたは紡糸機中でポリマーに顔料を所定量ブレンドすることにより得られるが、好ましい手法としては、公知のマスターチップ方式が挙げられる。この場合、糸中の顔料濃度とブレンド比からマスターチップ中の顔料の濃度を設計すればよい。 【0041】本発明でいう単糸断面方向に結晶性の差を持たせ、内部に結晶性の低い箇所を設けるためには、特定の単糸繊度の繊維において繊維形状が固定される紡糸冷却時の冷却を空気による冷却より強化させることが必要であり、特に水等の液体を介在させて冷却を行うことで達成することができる。この場合、介在させる液体は40℃以下で糸と接触させることが好ましい。例えば糸条形成直後に付与する油剤において水を含んだ含水系の油剤を用いる、また冷却時に水を噴霧する、等の方法が採用されうる。このとき水を介在させるときの糸温度と液体の量・液温に相関する冷却速度との兼ねあわせで、結晶層形成の有無さらには結晶層の厚みをコントロールすることが可能となる。従って、製造時のポリマの吐出量、引き取り速度等の条件に合わせて、液体を介在させる条件を適宜決定すればよい。含水給油を用いる場合、製糸性に影響を及ぼさない範囲で、できるだけ紡出に近い場所で付与することが好ましくなる。 【0042】このようにして作られた糸は、後述の延伸・捲縮付与後においても断面構造は保持され、表層の結晶層が存在する糸とすることができる。 【0043】この糸を単糸断面方向に結晶性を測定すると、結晶層の内部は表層に比べて結晶性の低い構造となり、レーザーラマン分光分析では、表層に比べて1.05倍以上結晶性の低い箇所が内部に存在する。 【0044】該糸状となったポリマーには、必要に応じて延伸、熱固定を施す。延伸に際しては、補助的に延伸点を固定するなどの目的で、スチーム処理装置などを併用することは何ら差し支えない。 【0045】使用するポリマーがポリアミドの場合には、後の工程で目的の捲縮を付与するために、ある程度の配向と結晶化をさせておくことが必要となるため、通常2倍から4倍の延伸を行うことが好ましい。2倍より低倍率であると、繊維構造の固定が不十分でなく、後工程で実施する捲縮も弱いばかりか、耐候性の劣ったものとなってしまう。 【0046】次いで、延伸糸に捲縮を付与する。捲縮は公知の加熱流体加工処理により付与することができ、ジェットノズルタイプ、ジェットスタッファタイプさらにはギヤ方式など各種の捲縮付与方法を採用し得るが、高い捲縮を容易に付与できる点からは、ジェットノズル方式およびジェットスタッファ方式がより好ましくなる。特公昭58−28380号公報に記載の捲縮ノズルが使用される。また、捲縮を固定する目的から、特開平5−321058号公報に記載されるような冷却装置、さらにはロータリーフィルタを組み合わせることにも何ら制限はない。捲縮付与においては、延伸糸をそのまま巻き取らずに連続して捲縮付与させてもよいし、未延伸糸あるいは延伸糸段階で一端巻き取ったものを解除して、捲縮工程に供してもよい。 【0047】捲縮糸を製造する場合、その工程通過性や捲縮特性をコントロールする目的で、捲縮ノズルに導入する糸条にあらかじめ交絡を付与しても差し支えない。高い捲縮を付与するためには、逆に捲縮ノズルに供する糸条にはほとんど交絡を施さないことが好ましくなり、捲縮レベルと工程通過性、さらには最終の混繊捲縮糸の柄の点から、原糸交絡程度を設定すればよい。 【0048】捲縮ノズルに導入する糸速度は、通常500から3500m/min範囲が好ましい。かかる糸速度の範囲とすると効率的な生産が可能で、またノズル通過後の捲縮の固定が容易であるとともに、安定な走行が容易である。 【0049】得られる捲縮糸には、その後のタフト時の工程通過性のために必要に応じて巻き取り前に交絡(原糸交絡)を付与ことは何等差し支えない。原糸交絡は、公知の圧空を用いた交絡ノズルを使用することにより付与することができる。空気圧力は、糸の繊度や張力との兼ねあわせにより、所定の交絡数になるように適宜設定すればよい。 【0050】本発明の捲縮糸をパイル糸として使用したカーペットは、高い染着性を示すカーペットとなる。すなわち、プリント染色等に用いた場合、単糸内部への染料の移行が速やかに起こり周辺に移動せず、鮮明な柄を発現させたカーペットが得られる。 【0051】一般には目付を700〜1500g/m2 、パイル高さを3.0〜10.0mmの範囲とした場合に、柄が鮮明に表現でき、さらにはタフトが容易で、かつ風合い、ボリューム感にもすぐれたカーペットとなる。 【0052】本発明の捲縮糸を用いた上述のカーペットは、風合いや柄、さらには色調を損ねない範囲であれば、静電気抑制のためなどの目的として、他の糸を混繊することが可能である。特に好ましくは比抵抗の低い導電性繊維などを混繊することができる。本発明の捲縮糸を用いた上述のカーペットは、特に撚糸セットを施したサキソニータイプのカーペットの場合にすぐれた性能を発揮する。 【0053】 【実施例】以下本発明を実施例を用いて詳細に説明する。なお、本発明に記載されている物性は、いずれも下記の方法で測定した。 (1)硫酸相対粘度:試料を98%硫酸に1重量%の濃度で溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。 (2)総繊度:JIS L 1090に従って測定した。 (3)Y型糸、星形断面糸の変形度:Y型糸もしくは星形糸の断面において、外接円の直径と内接円の直径の比を変形度として算出する。単糸5本の測定の平均値とする。 【0054】(4)レーザーラマン分光分析による結晶性測定:Ramaonor T-64000(Jobin Yvon)を用い、アルゴンレーザーを用いて測定した。得られるラマン散乱光のなかで、1640cm-1付近のカルボニルモード(アミドIモード)の半価幅を結晶性の指標とした。半価幅が小さいほど結晶性が高いことを示す。測定は図1に示すように単糸断面において表層部から中心部に向かい、3μおきに測定した。 (5)断面の結晶層観察:マルチフィラメントから1本の単糸を取り出し、パラフィンで固めた後、ミクロトームにて約5μの厚みに断面をカットする。次いで、該切片を偏光顕微鏡にて観察した。 【0055】(6)染着性98℃に恒温した1リットルの湯浴に酸性染料:Kayanol Navy blueを 0.5g加え、助剤としてリン酸二水素ナトリウムを1.6g/L、リン酸水素二ナトリウムを0.4g/L添加し、pHを6〜7に調整する。枷取りした捲縮糸を長さで30cm(約0.3g)サンプリングし、上記湯浴に5分間浸漬する。5分後に取り出し、常温の水常温で2回洗浄後自然乾燥する。得られたサンプル用い、下記の方法にて切片を切り出し単糸断面を観察する。 (1) 包埋枠に糸をセットする。5〜10T/10cmのヨリをかけ糸を束ね、また糸に適度の張力をかける。(1/10g/d程度) (2) 120℃〜130℃のパラフィンを包埋枠に流し込む。10分ほど放冷固化する。 (3) 固化したフ゛ロックをミクロトーム試料台に取り付け5〜10(μ)の厚さでカットする。 (4) カットした試料を卵白を塗ったスライドグラスに乗せた後、105℃の乾燥機に10分入れる。 (5) 乾燥機から取り出したスライドグラスをキシロ−ルに1分間浸し、次いで流動パラフィンを1滴落としカバ−グラスを乗せる。 (6) 顕微鏡で断面を観察し、染料の表面からの浸透程度を3段階で評価する。 5点は、繊維の中心部まで染料が浸透している状態、1点は全く繊維内部に浸透していない状態を示し、2〜4点はその中間を示す。3点以上が合格である。 【0056】(7)ペンシルポイント性捲縮糸に、190t/mの下撚り・上撚りを施し、125℃でスペルバセットを行う。該セット糸を用いてカーペットを作製し、パイル先端の開きを相対的に目視により評価。先端の開きを5段階の相対評価とした。5点が最高点で、3点以上が合格である。評価は10人の平均値とした。 (8)アミノ末端基量試料を2g採取し、フェノール・エタノールの混合溶液に溶解させる。N/50規定のの塩酸にて中和滴定することにより求める。 【0057】[実施例1]硫酸相対粘度2.8、アミノ末端基量が4.3×10-5mol/gのレギュラータイプのナイロン6チップにヨウ化銅を200ppm添加したものをエクストルーダー型の紡糸機で265℃の紡糸温度で溶融紡糸した。このとき口金はY型吐出孔の口金、ホール数は80の口金を用いた。吐出したポリマは糸条と垂直方向に40m/minにて流れる冷風にて冷却され、次いで口金から3.5m下部の箇所に設置した油剤ロールにて油剤を付与した。このときの油剤は特開平8−226074号公報に記載の、エステル成分の平滑剤、および多価アルコールの非イオン活性剤成分を含有するエマルジョン濃度15重量%の水系エマルジョン油剤を使用した。油剤の温度は25℃で、巻取後の油剤成分の付着量が糸に対して、1.2重量%となるよう付着させた。 【0058】引き続き巻き取ることなく、延伸・熱固定を行い、続いて特公昭58−28380号公報に記載のタスラン(登録商標)型捲縮ノズルにより捲縮加工を施し巻き取った。延伸倍率は3.0、延伸速度は3000m/minで実施し、最終的に単糸断面の変形度が3.0、繊度1170dtex、54フィラメント、沸騰水処理後の捲縮伸長率が22%の捲縮マルチフィラメントを得た。 【0059】得られた捲縮糸の単糸断面を前述のごとく偏光顕微鏡にて観察したところ、表層に4μの結晶層が観察された。得られた単糸のレーザーラマン分光分析による結晶性測定の結果を図2に示す。表層の最も結晶性の高い箇所の半価幅が13.0cm-1、表層から10μの箇所の最も結晶性の低い箇所の半価幅が16cm-1であった。表層部の結晶性が内部の低い箇所に比較し、1.23倍低いことが観察される。 【0060】この捲縮糸をマルチフィラメントのまま30cmの長さで切り取り、上述の方法で染色バスに5分間浸漬し、染色性を評価した。その結果を表1に示す。 【0061】[実施例2]実施例1において、ポリマを口金から紡出後の冷却において、口金から1mの箇所でスプレーにより糸条に水を霧状に吹きかけ、冷却を施し、次いで、実施例1と同じ含水油剤を付与後、同様の条件でにして延伸・捲縮・巻き取りを行った。延伸倍率は3.0、延伸速度は2500m/minで実施し、最終的に単糸断面の変形度が2.5、繊度1170dtex、54フィラメント、沸騰水処理後の捲縮糸の捲縮伸張率(後)が18%の捲縮マルチフィラメントを得た。 【0062】得られた捲縮糸の単糸断面を前述のごとく偏光顕微鏡にて観察したところ、実施例1と同様に表層に結晶層が観察された。得られた単糸のレーザーラマン分光分析による結晶性測定の結果、ならびに5分間の染色後の染色性の結果をあわせて表1に示す。 【0063】[実施例3]実施例1においてフィラメント数を90本にして、単糸繊度を細くした。口金直下の冷却が実施例1に比較して速く起こり、変形度は3.5と実施例1に比較し大きくなった。その後の実施例1と同様にして含水給油を付与し、捲縮加工を行った。用いた該捲縮糸の結果を表1に示す[比較例1]実施例1において、紡糸冷却を冷風による空気冷却のみで行った。 【0064】[比較例2]実施例1において捲縮工程での熱処理を甘くし、捲縮レベルの低い糸とした。 【0065】表1に示すように、実施例1〜3においては、本発明の捲縮レベルとレーザーラマン分光分析において内層の結晶性が表層の結晶性より1.05倍以上の両者を満足し、染着性も速く、カーペットとしたときの柄切れ性が良好である。 【0066】比較例1においては、単糸断面の内層に結晶性の低い部分がなく、染着性に劣る捲縮糸であった。 【0067】また、比較例2においては、捲縮伸長率が低いためセット性が悪く、カットパイルにしたときにパイル先端が開いたものとなり、このために柄切れ性が悪い結果となった。 【0068】 【表1】
【0069】 【発明の効果】本発明の捲縮糸によれば、プリント染色用途などに好適な染着性が速く、柄が鮮明となるカーペットを形成することができる。そして、本発明の捲縮糸を用いて得られるカーペットは、特にプリント染色されたカーペットの場合にすぐれた性能を発揮する。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000003159 【氏名又は名称】東レ株式会社
|
| 【出願日】 |
平成12年6月9日(2000.6.9) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2001−355134(P2001−355134A) |
| 【公開日】 |
平成13年12月26日(2001.12.26) |
| 【出願番号】 |
特願2000−172856(P2000−172856) |
|