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【発明の名称】 ポリエステル異染性混繊糸
【発明者】 【氏名】小林 靖希

【氏名】佐藤 正幸

【氏名】松村 正英

【要約】 【課題】染色性の異なる少なくとも2種の繊維群からなる混繊糸において、明瞭な杢調または霜降調に加え、ドライ感、軽量感および吸水性等の機能性を有するポリエステル異染性混繊糸を提供する。

【解決手段】染色性の異なる少なくとも2種の繊維群からなり、その少なくとも一方の繊維群の断面形状が3個以上の凹部を持つ多葉断面形状をした異型断面繊維であって、異形度が1.7〜6.0であること特徴とする異染性混繊糸を用いることによって、杢調に加え、吸水性および軽量感を得ることが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】染色性の異なる少なくとも2種の繊維群からなる混繊糸であり、その少なくとも一方の繊維群の断面形状が3個以上の凹部を持つ多葉断面形状をした異形断面繊維であって、異形度が1.7〜6.0であることを特徴とするポリエステル異染性混繊糸。
【請求項2】多葉断面形状をした異形断面繊維群の混繊比率が総繊度の30〜80%であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル異染性混繊糸。
【請求項3】ポリエステル異染性混繊糸を構成する少なくとも2種の繊維群のうち、1種の繊維群(A)は、金属スルホネート基を有するイソフタル酸、またはその誘導体成分を全エステル成分に対して0.15〜1.00重量%共重合した共重合ポリエステルであり、他の1種の繊維群(B)は85重量%以上がエチレンテレフタレートからなるポリエステルからなることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル異染性混繊糸。
【請求項4】交絡度が5〜60個/mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル異染性混繊糸。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、染色性の異なる少なくとも2種の繊維群からなり、少なくとも一方の繊維群が異形断面繊維であるポリエステル異染性混繊糸に関し、更に詳しくは、杢調の特異な外観に加え、ドライ感、軽量感、吸水性等の機能性を有するポリエステル異染性混繊糸に関する。
【0002】
【従来の技術】染色性の異なる複数の合成繊維フィラメント糸からなる混繊糸は、これを織編した後、染色を施すことにより染色部分が不均一に現れ、杢調の外観が得られるため、従来より種々の提案がなされている。
【0003】杢調織編物用糸条を得るためには、例えば、特開昭49−72485号公報には、紡糸混繊により紡糸した2種の糸条を交絡処理した後、加熱処理して霜降調繊維を得る方法、また特開昭50−116708号公報には、染色性の異なる2種のポリマを使用し、1種のポリマからなる糸条と、2種のポリマを用いた芯鞘複合繊維を紡糸混繊する方法、更には、特開平9−316744号公報には、配向差のある2種の糸条を延伸工程で混繊し、濃淡染着性差を利用して杢外観を得る方法などが開示されている。これらの提案による混繊糸では確かに杢調や霜降調の織編物を得ることはできるが、明瞭な杢感、更にはドライ感、軽量感、吸水性といった機能性を付与することはできない。
【0004】また、断面形状の異なる繊維を混繊し、毛細管現象を発現させることで、吸水性を向上させる方法が特開平7−34341号公報等で開示されている。この提案により得られた混繊糸は確かに吸水性が向上するが、単一ポリマから構成されているため、杢調外観を付与することはできなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記従来技術では達成できなかった明瞭な杢調に加え、ドライ感、軽量感、吸水性等の機能性を有するポリエステル異染性混繊糸を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、染色性の異なる少なくとも2種の繊維群からなる混繊糸であり、その少なくとも一方の繊維群の断面形状が3個以上の凹部を持つ多葉断面形状をした異形断面繊維であって、異形度が1.7〜6.0であることを特徴とするポリエステル異染性混繊糸によって達成することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】本発明のポリエステル異染性混繊糸は、杢調を得るために、少なくとも染色性の異なる2種の繊維群で構成されていることが必要である。染色性の異なる少なくとも2種の繊維群で構成されていないと杢感が得られない。好ましくは、ポリエステル異染性混繊糸を構成する少なくとも2種の繊維群のうち、繊維群(A)は全てエステル成分に対するS成分の割合(以下S分率とする)が0.15〜1.00重量%となるように金属スルホネート基を有するイソフタル酸またはその誘導体を共重合せしめた共重合ポリエステルとすることが好ましい。更に、ポリエステルあるいはポリエチレンテレフタレートは製造工程において副生成される範囲でジエチレングリコールなどを主鎖に含んでいても構わない。また、他の一種の繊維群(B)は、85重量%以上がエチレンテレフタレートからなるポリエステルとすることが好ましい。
【0009】本発明のポリエステル異染性混繊糸は、より明瞭な杢調および霜降調を発現させ、落ち着いた杢調の外観を発現するために、繊維群(B)に艶消し剤を含有することが好ましく、その含量を0.3重量%以上8.0重量%以下、より好ましくは艶消し剤含有量が1.5重量%以上6.0重量%以下であり、特に繊維群(B)の白色がより強調されるため、杢調が明瞭になり好ましい。艶消し剤としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アンチモン、酸化亜鉛、タングステン酸鉛、タングステン酸カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられるが中でも、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウムが好ましい。添加する艶消し剤の平均粒径は、分散性の観点から、1.0μm以下が好ましく、更に好ましくは、0.7μm以下である。更に、製糸性の観点から最大粒径は0.5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.3μm以下である。
【0010】本発明において、ポリエステル異染性混繊糸を構成する少なくとも1種の繊維群(A)に用いられる金属スルホネート基を有するイソフタル酸またはその誘導体としては、ジメチル(5−ナトリウムスルホ)イソフタレート、ビス−2−ヒドロキシエチル(5−ナトリウムスルホ)イソフタレート、ビス−4−ヒドロキシブチル(5−ナトリウムスルホ)イソフタレートおよびジメチル(5−リチウムスルホ)イソフタレート等が例示できるが、とりわけジメチル(5−ナトリウムスルホ)イソフタレートおよびビス−2−ヒドロキシエチル(5−ナトリウムスルホ)イソフタレートが好ましい。また、カチオン染料に難染の繊維群(B)に含まれるポリエチレンテレフタレート以外の成分は、製糸性を損なうことがなければ特に限定するものではない。
【0011】本発明のポリエステル異染性混繊糸において、ドライ感、軽量感および吸水性を付与するために、少なくとも2種類の繊維群のうち、少なくとも一方の繊維群の断面形状が3個以上の凹部をもつ多葉断面形状とすることが必要である。例えば、図1に示すような多葉断面形状が挙げられる。断面形状の凹部が3個未満の場合、繊維単糸間に形成される空隙が少ないため、毛細管現象による吸水性および繊維単糸間の空隙による軽量感や多葉断面化によるドライを発現させることができないのである。ドライ感、軽量感および吸水性の効果をより発現させるためには凹部を4個以上有する多葉断面形状とすることが好ましい。
【0012】更に、本発明のポリエステル異染性混繊糸を構成する少なくとも2種の繊維群のうち、少なくとも一方を構成する異形断面繊維の異形度は1.7〜6.0とすることが必要である。異形度を1.7以上にすることによって、繊維単糸間の空隙が形成でき、吸水性が付与できる。また、空隙が多くなることで、軽量感を付与することもできるのである。但し、あまり異形度を大きくすると繊維が割れたり、フィブリル化が起こり、製織性不良や製品品位の低下を招くため、異形度は6.0以下とすることが必要である。更に、両繊維群の断面形状差により明瞭な杢感も得ることができる。吸水性、軽量感の効果をより発現し、かつ製織性を維持するためには、異形度は2.0〜4.0が好ましい。尚、本発明でいう異形度は以下の方法によって求める。
【0013】(異形度)=L1/L2ただし、L1:繊維横断面の外接円の直径L2:繊維横断面の内接円の直径本発明において、明瞭な杢調かつ吸水性および軽量感を付与するために異形断面形状をした繊維群の混繊比率は総繊度の30〜80%であることが好ましい。異形断面形状をした繊維群の混繊比率を総繊度の30〜80%とすることによって、明瞭な杢調が得られ、ドライ感、軽量感および吸水性をより発現することができるのである。
【0014】異形断面形状をした繊維群の混繊比率が30〜80%であると、吸水性を得るための繊維間空隙が十分形成され、更に、異形断面形状の比率が明瞭な杢調を発現するのに十分である。本発明の効果をより発現させるためには異形断面形状をした繊維群の混繊比率は45〜70%が好ましい。
【0015】本発明のポリエステル異染性混繊糸は、製編織における工程通過性を向上させるために流体交絡処理を付与していることが好ましく、好ましい交絡度の範囲は5〜60個/mである。特に、混繊糸であるとその傾向が高く、また、交絡度を60個/m以下とすることにより、製糸性、製織性、製編性を改善できるばかりでなく、各繊維群の単糸同士の別れ具合を明瞭にでき、杢感を明瞭にする効果がある。製糸性、製織性、製編性を向上させるためには、交絡度は15〜40個/mが好ましい。尚、交絡度の測定方法は特開昭48−28708号公報に示された方法に従う。
【0016】本発明のポリエステル異染性混繊糸の製造方法としては、いわゆる紡糸混繊法や紡糸と延伸を別々に行う後混繊法のいずれによっても製造可能である。紡糸混繊法としては、1つの口金から異なる2種のポリマを同時に製糸する方法および別々の口金からそれぞれ単成分のポリマを製糸し、巻取時に合糸して巻き取る方法、後混繊法としては、2種のポリマを別々に紡糸巻取し、延伸工程で合糸する方法が挙げられるが、製造コスト、混繊糸における繊維群のこなれを向上させるためには、1つの口金から異なる2種のポリマを同時に製糸する方法が好ましい。
【0017】本発明のポリエステル異染性混繊糸は、高次加工技術に適用することによって、本発明の目的である、杢調、ドライ感、軽量感、吸水性の風合い特性を向上できる。尚、高次加工技術としては、通常の延伸、T&T延伸、エア加工、仮撚等が挙げられる。
【0018】
【実施例】以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
【0019】A.固有粘度[η]
オルトクロロフェノール中(25℃)で測定した値である。
【0020】B.吸水性バイレック法で長さ12cm×幅1cmの短冊状サンプルの下端を20±2℃の蒸留水中に浸漬し、10分後の吸水高さ(cm)を測定した。
【0021】C.風合い特性(杢感、ドライ感、軽量感)
各項目とも、試料を基準試料との一対比較による官能試験を実施し、「極めて優れている」は○○、「優れている」は○、「普通」は△、「劣っている」は×の4段階評価で示した。尚、基準試料にはポリエチレンテレフタレートからなる167dtex−72filの丸断面糸の延伸糸を用いて、上記試料と同様に製織、加工を施したものを用い、これを「劣っている:×」とした。
【0022】D.操業性各水準(各200本)を糸加工した際の糸切れやタルミの発生状況から評価した。
【0023】
糸切れ、タルミ発生率2%未満 ○○糸切れ、タルミ発生率2%以上5%未満 ○糸切れ、タルミ発生率5%以上10%未満 △糸切れ、タルミ発生率10%以上 ×実施例1〜5および比較例1,2カチオン性染料に易染のポリエステル繊維群(A)を形成するポリマーとして、ポリエチレンテレフタレートに5−スルホイソフタル酸をS分率が0.20重量%となるように共重合した固有粘度[η]=0.68の変性ポリエステルとカチオン染料に難染のポリエステル繊維群(B)を形成するポリマーとして、酸化チタンを2.0重量%含有し、固有粘度[η]=0.65のポリエチレンテレフタレートを同一の口金から紡糸引取速度1,500m/分で引き取った後、延伸し、交絡を20〜30個/m付与して巻き取った。
【0024】得られた混繊糸を用いて、断面形状の凹部の個数(以下、凹部数とする)、繊維群(A)の混繊比率、異形度について変更し、織物を作成した。得られた織物の特性を表1に示す。
【0025】実施例1,2は、異染性の繊維群の混繊比率がよく、極めて優れた杢感が得られ、また、異形度が高く、凹部が3個であるため、優れたドライ感、軽量感および吸水性のあるものであった。更に、操業性に問題はなかった。
【0026】実施例3は、異染性の繊維群の混繊比率に若干偏りがあるため、杢がややおとなしいが、高い異形度と凹部が3個であるため、優れたドライ感、軽量感および吸水性のあるものであり、操業性に問題はなかった。
【0027】実施例4は、異染性の繊維群の混繊比率がよく、極めて優れた杢感の織物であり、高い異形度と凹部が4個であったので、優れたドライ感、軽量感および吸水性があったが、異形度がやや高く、若干繊維のフィブリル化が見られ、操業性がやや低くなった。
【0028】実施例5は、本発明の効果を発現するには非常に適した混繊比率、異形度、凹部数であり、極めて優れた杢感、ドライ感、軽量感および吸水性があるものであった。更に、操業性にも問題はなかった。
【0029】比較例1は、カチオン染料に易染の繊維群の混繊比率が高すぎて、明瞭な杢感が得られず、異形度が高いにもかかわらず、混繊比率が低いので、ドライ感、軽量感および吸水性は得られなかった。更に、異形度が高すぎるため、繊維が割れて操業性に問題が生じてしまった。
【0030】比較例2は、丸断面のみの混繊糸であったが、混繊比率が適しており、杢感を得ることができたが、異形度がないため、ドライ感、軽量感および吸水性のないものであった。
実施例6〜10および比較例3,4繊維群(A)、繊維群(B)をそれぞれの製糸条件のうち、繊維群(B)の異形度および混繊糸の交絡度(個/m)を変更することにより織物を作成し、得られた織物の特性を表2に示す。
【0031】実施例6は、繊維群(A)と繊維群(B)の混繊比率がよく、交絡もかかっているので、優れた杢感が得られた。また、高い異形度、凹部数が4個であるので、極めて優れたドライ感、軽量感および吸水性のあるものであった。しかし、交絡がやや少なく、若干タルミが発生し、操業性のやや低いものとなった。
【0032】実施例7は、繊維群の混繊比率がよく、異形度も高く、凹部数が3個であったので、優れた杢感、ドライ感、軽量感および吸水性のあるものとなった。また、交絡がかかっていたので、タルミは見られず、操業性に問題はなかった。
【0033】実施例8は、本発明の効果をより発現するのに適した混繊比率、異形度、凹部数、交絡であるため、極めて優れた杢感、ドライ感、軽量感および吸水性、操業性のものであった。
【0034】実施例9は、混繊比率がよく、高い異形度、凹部数が4個であるため、極めて優れた杢感、ドライ感、軽量感および吸水性が得られたが、交絡がやや少ないため、タルミが発生し、操業性が若干低いものであった。
【0035】実施例10は、混繊比率がよく、異形度も高く、凹部数も4個あるので、優れた杢感、ドライ感、軽量感および吸水性を有するが、交絡がやや多いため、毛羽や糸切れが発生し、操業性のやや低いものであった。
【0036】比較例3は、混繊比率は適しているが、異形度が低いため、杢調はあるが、ドライ感、軽量感および吸水性のないものであり、更に、交絡がないため、タルミが発生し、操業性が悪いものとなった。
【0037】比較例4は、混繊比率は適しているが、異形度が低くいため、杢感はあるが、ドライ感、軽量感および吸水性のないものであり、更に、交絡が多すぎ、毛羽が多く、操業性の悪いものとなった。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【発明の効果】本発明によれば、従来のポリエステル異染性混繊糸を織編物とした際の杢感に加え、吸水性および軽量感を持つポリエステル異染性混繊糸の織編物を得ることができる。また、この織編物は衣料用途をはじめ、様々な用途に好適であり、優れた品位を持つ織編物を提供するばかりでなく、ドライタッチおよび軽量感といった機能性のある原糸を提供することが可能である。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成12年1月18日(2000.1.18)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−200439(P2001−200439A)
【公開日】 平成13年7月27日(2001.7.27)
【出願番号】 特願2000−8681(P2000−8681)