| 【発明の名称】 |
アクリル仮撚加工糸及びその製造方法、並びに該アクリル仮撚加工糸を含む織編物 |
| 【発明者】 |
【氏名】御宮知 直樹
|
| 【要約】 |
【課題】後工程での糸条のばらけのない集束状態に撚固定された未解撚部を有するアクリル仮撚加工糸を提供し、かかるアクリル仮撚加工糸を省エネルギー的に得、並びにアクリルフィラメント糸の特性を保持しながら、シャリ感、ドライ感、張り腰を有し、表面変化のある織編物を提供する。
【解決手段】アクリルマルチフィラメントからなり、糸の長手方向に未解撚部が存在し、該未解撚部は長さ25〜100mmの長未解撚部を含む平均長さ5〜20mmの未解撚部であり、かつ未解撚部が糸全体の30〜50%を占めているアクリル仮撚加工糸、及びこのアクリル仮撚加工糸を、熱応力0cN/Yとなる温度が250℃以下のアクリルフィラメント糸を、T0−40℃≦TF<245℃(T0:熱応力0cN/Yとなる温度(℃)、TF:仮撚加工温度(℃))を満足する条件で仮撚加工することにより得る。またこのアクリル仮撚加工糸を用いた織編物。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アクリルマルチフィラメントからなる仮撚加工糸であって、糸の長手方向に未解撚部が存在し、未解撚部は長さ25〜100mmの長未解撚部を含む平均長さ5〜20mmの撚固定部であり、かつ未解撚部が糸全体の30〜50%を占めていることを特徴とするアクリル仮撚加工糸。 【請求項2】 アクリルマルチフィラメントが、熱応力0cN/Yとなる温度が250℃以下のアクリルフィラメント糸である請求項1記載のアクリル仮撚加工糸。 【請求項3】 熱応力0cN/Yとなる温度が250℃以下のアクリルフィラメント糸を、下記式T0−40℃≦TF<245℃(但し、T0は熱応力0cN/Yとなる温度(℃)、TFは仮撚加工温度(℃)を表す)を満足する条件で仮撚加工することを特徴とするアクリル仮撚加工糸の製造方法。 【請求項4】 請求項1又は請求項2記載のアクリル仮撚加工糸を含み、表面に該仮撚加工糸の未解撚部と過解撚部の混在する解撚部による凹凸外観を有する織編物。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、アクリルマルチフィラメントからなるアクリル仮撚加工糸及びその製造方法、並びに該アクリル仮撚加工糸を含む織編物に関する。 【0002】 【従来の技術】一般に、織編物にシャリ感、ドライ感、張り腰を与える涼感素材といわれる糸は、撚糸機で実撚が付与されたものが多いが、撚糸機による方法は、その生産性が低く、風合いの硬いものとなり易い。そこで、フィラメント糸の仮撚加工により撚固定部と解撚部を交互に存在させる方法が数多く提案されており、例えば、供給するフィラメント糸に先撚りを施し、先撚りの撚り方向と同方向に仮撚加工を施す方法(先撚仮撚法)や供給するフィラメント糸の軟化点以上溶融点以下の温度で仮撚加工を行う方法(融着仮撚法)等がある。 【0003】前者の先撚仮撚法によるものは、アクリルフィラメント糸においてもよく用いられており、供給糸として一本の糸条を先撚りし、或いは複数の糸条を合撚した後、仮撚加工を施している。しかしながら、この方法による仮撚加工糸は、シャリ感、ドライ感、張り腰に優れるものの、染色、織成、編成等の後工程において僅かな張力で撚固定部の撚りがずれ動き、解撚部に至って糸条がばらけ、風合いの低下を招くという問題がある。 【0004】また、後者の融着仮撚法によるものは、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等の熱可塑性フィラメント糸に適用され、糸の一部又は全部が融着されて撚固定部が形成され、優れたシャリ感があり、糸条のばらけがない集束性の良好なものであり、アクリルフィラメント糸に適用した場合でも、アクリルフィラメントには明確な溶融点がなく明瞭な融着は生じないものの、フィラメント相互が熱的に接着又は固着して撚固定部が形成されることも知られている(特開昭57−128226号公報)。しかしながら、従来の融着仮撚法によるアクリルフィラメント糸の仮撚加工糸は、熱による撚固定部のピッチが短く、クビレ状に撚固定部が形成されたものであり、染色、織成、編成等の後工程において僅かな張力で撚固定部が消失或いは減少して集束性が損なわれ、仮撚加工糸の形態や風合いにバラツキが発生するという問題がある。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来技術の問題点を解決し、染色、織成、編成等の後工程での糸条のばらけのない良好な集束状態に撚固定された未解撚部を有するアクリル仮撚加工糸を提供すること、かかるアクリル仮撚加工糸を省エネルギー的に得ること、並びにかかるアクリル仮撚加工糸を用い、アクリルフィラメント糸の特徴である低温での良好なセット性、優雅な光沢感等の特性を保持しながら、シャリ感、ドライ感、張り腰を有し、表面変化のある織編物を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、アクリルマルチフィラメントからなる仮撚加工糸であって、糸の長手方向に未解撚部が存在し、該未解撚部は長さ25〜100mmの長未解撚部を含む平均長さ5〜20mmの撚固定部であり、かつ未解撚部が糸全体の30〜50%を占めていることを特徴とするアクリル仮撚加工糸、及び熱応力0cN/Yとなる温度が250℃以下のアクリルフィラメント糸を、下記式T0−40℃≦TF<245℃(但し、T0は熱応力0cN/Yとなる温度(℃)、TFは仮撚加工温度(℃)を表す)を満足する条件で仮撚加工することを特徴とするアクリル仮撚加工糸の製造方法、並びに、前記のアクリル仮撚加工糸を含み、表面に該仮撚加工糸の未解撚部と過解撚部の混在する解撚部による表面変化のある織編物、にある。 【0007】 【発明の実施の形態】本発明のアクリル仮撚加工糸は、アクリルマルチフィラメントからなり、糸の長手方向に少なくとも未解撚部が存在し、他に未解撚部と未解撚部の間には過解撚部が混じった解撚部が存在する仮撚加工糸である。本発明における未解撚部とは、糸を構成するフィラメントの一部又は全部が融着と同様に熱的に固着されて仮撚加工時の加撚方向の撚りが固定された部分で、フィラメントが集束して細形状をなしている。解撚部は、解撚により開繊した部分であり、また過解撚部は、未解撚部の存在により仮撚加工時の解撚方向の撚りが開繊状態を超えて加わった部分であり、過解撚部の混在する解撚部は、フィラメントが非集束状態にあり太形状をなしている。 【0008】本発明のアクリル仮撚加工糸においては、存在する未解撚部は長さ25〜100mmの長未解撚部を含む平均長さ5〜20mmの撚りが固定された部分であり、かつ未解撚部が糸全体の30〜50%を占める、即ち本発明のアクリル仮撚加工糸には平均長さ5〜20mmの未解撚部が個数でいえば糸長100cm当たり15〜100ケ存在する。未解撚部の平均長さが5mm未満、或いは長未解撚部の長さが25mm未満では、染色、織・編成等の後工程で僅かな張力で糸がばらけ、織編物としたときにシャリ感のある風合いが消失し、未解撚部の平均長さが20mmを超える、或いは長未解撚部の長さが100mmを超えると、織編物としたときに部分的に著しい粗剛感が生じる。 【0009】また、アクリル仮撚加工糸における未解撚部の占める割合が仮撚加工糸全体の30%未満では、織編物としたときにシャリ感のある風合いが得られず、50%を超えると、織編物としたときに粗剛感が生じる。また、解撚部に混在する過解撚部は、この未解撚部の割合に比例し、未解撚部の割合が高いときには、過解撚部が多くなり、未解撚部の割合が低いときには、過解撚部が少なくなる。 【0010】本発明のアクリル仮撚加工糸は、長い未解撚部を有することにより、染色、織・編成等の後工程での張力によっても未解撚部が消失することがなく、また糸の長手方向に未解撚部と過解撚部の混じった解撚部とが交互に存在することにより、外観上糸の長手方向に太細斑のある形態を呈し、織編物としたときに織編物に凹凸外観を与え、また染色された織編物においては、集束状態の未解撚部が非集束状態の過解撚部混在の解撚部より濃色を呈し、濃淡斑を生ずる。 【0011】本発明のアクリル仮撚加工糸を構成するアクリルマルチフィラメントは、主成分がアクリロニトリルであるアクリロニトリル系重合体が、好ましくは乾式紡糸或いは乾湿式紡糸により製糸されてマルチフィラメントの形態をなしているものであり、本発明において好適には熱応力0cN/Yとなる温度が250℃以下のアクリルフィラメント糸である。 【0012】本発明のアクリル仮撚加工糸は、次のようにして製造される。即ち、熱応力0cN/Yとなる温度が250℃以下のアクリルフィラメント糸を、下記式T0−40℃≦TF<245℃(但し、T0は熱応力0cN/Yとなる温度(℃)、TFは仮撚加工温度(℃)を表す)を満足する条件で仮撚加工することにより得ることができる。 【0013】仮撚加工に用いるアクリルフィラメント糸としては、熱応力0cN/Yとなる温度が250℃以下のアクリルフィラメント糸であることが必要であり、熱応力0cN/Yとなる温度が250℃を超えるものであると、必然的に仮撚加工温度が高くなり、形成される未解撚部が平均長さが5mm未満、或いは長未解撚部の長さが25mm未満のものとなり、染色、織・編成等の後工程で僅かな張力で未解撚部が解けて糸がばらけ、織編物としたときにシャリ感、ドライ感のある風合い、張り腰が失われる。 【0014】ここで、アクリルフィラメント糸の熱応力が0cN/Yとなる温度とは、熱応力曲線での熱応力が0cN/Yとなる点での温度で、フィラメント糸が溶融又は炭化して切断が起こる温度をいう。本発明における熱応力0cN/Yとなる温度が250℃以下のアクリルフィラメント糸は、例えばアクリロニトリル90〜92重量%と酢酸ビニル10〜8重量%からなるアクリロニトリル系重合体を乾式或いは乾湿式紡糸等によりマルチフィラメント糸として紡糸することにより得られ、好ましくは熱応力0cN/Yとなる温度が250℃以下140℃以上のアクリルフィラメント糸が用いられる。因みに、共重合成分を7重量%程度含む通常のアクリルフィラメント糸では、熱応力0cN/Yとなる温度は260〜262℃程度である。 【0015】仮撚加工温度が245℃以上となると、形成される未解撚部の平均長さが5mm未満、或いは長未解撚部の長さが25mm未満となり、染色、織・編成等の後工程で僅かな張力で糸がばらけ、織編物としたときにシャリ感のある風合いが消失する。また、仮撚加工温度が(熱応力0cN/Yとなる温度−40℃)未満では、長さ25〜100mmの長未解撚部及び平均長さ5〜20mmの未解撚部が形成されず、織編物での十分なシャリ感のある風合い、凹凸外観効果が得られなくなる。 【0016】仮撚加工における仮撚加工温度以外の他の条件は、未解撚部の長さ等を考慮して設適宜定されるが、仮撚数が低すぎると加工温度が低い場合と同様に満足できるシャリ感のある風合い、凹凸外観効果が得られなくなるため、次式k=Tw×(0.9T)1/2(但し、kは撚係数、Twは仮撚数(t/m)、Tは繊度(dtex)を表す)に示す撚係数が26000以上となるように仮撚数を設定することが好ましい。 【0017】本発明のアクリル仮撚加工糸は、織編物の素材として用いられ、染色、織・編成等を経て得られた本発明のアクリル仮撚加工糸を含む織編物は、アクリルフィラメント糸条の特徴である低温での良好なセット性、優雅な光沢感等の特性を保持しながら、織編物表面が、アクリル仮撚加工糸の未解撚部と過解撚部の混在する解撚部との形状の見掛け太さ斑、更には過解撚部のトルク発生によって、凹凸外観と濃淡斑を呈するものとなり、また表面変化に富んだ外観と相俟って、優れたシャリ感のある風合い、ドライ感、張り腰を有するものである。 【0018】 【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例中の各特性値は、下記の方法により測定した。 【0019】(未解撚部の長さ及び糸での割合)長さ約100cmの試料中の各未解撚部の長さを定規で計測する操作を、5回行い、全試料中での最も長い未解撚部の長さを長未解撚部の長さ(mm)として求め、5回の計測での全未解撚部の長さの平均値を未解撚部の平均長さ(mm)として求めた。また、全試料長に対する全未解撚部の長さの合計の比を糸全体に対する未解撚部の割合(%)として求めた。 【0020】(熱応力0cN/Yとなる温度)(株)東洋ボールドウイン製熱応力測定機を用い、試料長10cm、初荷重0.35cN/Y、昇温速度100℃/分の条件で測定して得た熱応力曲線から、ピークを過ぎて熱応力が0cN/Yとなる点での温度(℃)を求めた。 【0021】(実施例1)2ヒーター方式の三菱重工業(株)製LS−6型仮撚加工機を用い、供給糸としてアクリロニトリル91.1重量%、酢酸ビニル8.9重量%のアクリロニトリル系重合体からなり熱応力0cN/Yとなる温度が239℃の167dtex/60fのアクリルフィラメント糸を、オーバーフィード率−10%で供給し、第1ヒーター温度230℃、第1デリベリーローラー速度80m/分、仮撚数2300t/m(Z方向)、第2ヒーター温度200℃、第2オーバーフィード率+10%の加工条件で仮撚加工を行い、仮撚加工糸を得た。 【0022】得られた仮撚加工糸は、糸の長手方向に未解撚部と過解撚部の混じった解撚部とが交互に存在し、表1に示すような未解撚部を有していた。得られた仮撚加工糸をチーズ染色し、2本引き揃えて14G横編機で編成した。得られた編地は、優れたシャリ感、ドライ感、張り腰があり、また編地表面に凹凸感と濃淡のある表面変化のあるものであった。また、この編地は、蒸気によるスチームセットで常圧で簡単にしわや斜行を伸ばすことができ、セット性に優れるものであった。 【0023】(実施例2〜4)実施例1の方法に準じ、表1に示す加工条件で、仮撚加工を行い、仮撚加工糸を得た。得られた仮撚加工糸は、糸の長手方向に未解撚部と過解撚部の混じった解撚部とが交互に存在し、表1に示すような未解撚部を有していた。得られた仮撚加工糸を用い編成して得た編地は、優れたシャリ感、ドライ感、張り腰があり、また編地表面に凹凸感のある表面変化のあるものであった。なお、実施例4における供給糸には、アクリロニトリル91.1重量%、酢酸ビニル8.9重量%のアクリロニトリル系重合体からなり熱応力0cN/Yとなる温度が245℃の180dtex/60fのアクリルフィラメント糸を用いた。 【0024】 【表1】
【0025】(比較例1)三菱重工業(株)製LS−6型仮撚加工機を用い、供給糸としてアクリロニトリル92.8重量%、酢酸ビニル7.2重量%のアクリロニトリル系重合体からなり熱応力0cN/Yとなる温度が262℃の167dtex/60fのアクリルフィラメント糸を、第1オーバーフィード率−3%で供給し、第1ヒーター温度245℃、第1デリベリーローラー速度80m/分、仮撚数2200t/m(Z方向)、第2ヒーター温度240℃、第2オーバーフィード率+10%の加工条件で仮撚加工を行い、仮撚加工糸を得た。 【0026】得られた仮撚加工糸は、糸の長手方向に解撚部と長さ2〜3mmの未解撚部が交互に存在するものであった。得られた仮撚加工糸を用い、実施例1と同様にして編成したところ、編成工程でかかる張力によって未解撚部が消失してしまい、得られた編地は、シャリ感もドライ感もなく、また編地表面の凹凸感の全くないものであった。 【0027】(比較例2)実施例1において、第1ヒーター温度を180℃、仮撚数を200t/m(Z方向)とした以外は実施例1と同様にして仮撚加工を行い、仮撚加工糸を得た。得られた仮撚加工糸は、未解撚部の全く存在しない均一な捲縮形態を持つものであった。得られた仮撚加工糸を用い、実施例1と同様にして編成して得た編地は、嵩高であるものの、シャリ感やドライ感がなく、また編地表面も均一なものであった。 【0028】 【発明の効果】本発明のアクリル仮撚加工糸は、染色、織成、編成等の後工程での糸条のばらけのない良好な集束状態に撚固定された未解撚部を有するものであり、本発明での方法によれば、かかるアクリル仮撚加工糸を加工温度が比較的低温であることから省エネルギー的に得ることができる。また、かかるアクリル仮撚加工糸を含む織編物は、アクリルフィラメント糸の特徴である低温での良好なセット性、優雅な光沢感等の特性を保持しながら、シャリ感、ドライ感、張り腰を有し、また糸の見掛け太さ斑によって凹凸外観と濃淡斑のある表面変化に富むものである。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000006035 【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
|
| 【出願日】 |
平成12年1月18日(2000.1.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100066533 【弁理士】 【氏名又は名称】田村 武敏
|
| 【公開番号】 |
特開2001−200436(P2001−200436A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月27日(2001.7.27) |
| 【出願番号】 |
特願2000−13888(P2000−13888) |
|