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【発明の名称】 糸送りアームのモータ支持構造
【発明者】 【氏名】馬場 健治

【要約】 【課題】糸送りアームの先端に取付けられるモータは、モータ端面をボルトにより締結するのみで固定していたので、糸送りアームの急速な動作や停止が行われるため、モータの固定が緩んでしまったり、モータとギヤヘッド間の固定が緩んでしまうという問題があった。

【解決手段】待機位置と送り位置との間で移動自在であり、一対の糸送りローラ7b・7cを有し、該ローラで把持した糸を、そのローラを駆動させて送り出す糸送りアーム7において、駆動ローラ7bを駆動するモータ7eを糸送りアームに弾性支持する構成とし、モータ軸心方向の一端面を固定部材75により、モータ外周面を弾性体(Oリング72)を介してそれぞれ糸送りアームで支持し、弾性体による支持位置72sをモータ重心Gより軸心方向他端側とした。また、固定部材及び弾性体は共通のブラケット73に設けられる構成とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 待機位置と送り位置との間で移動自在であり、一対の糸送りローラを有し、該ローラで把持した糸を、そのローラを駆動させて送り出す構成の糸送りアームにおいて、糸送りローラを駆動するモータを、糸送りアームに弾性支持する構成としたことを特徴とする糸送りアームのモータ支持構造。
【請求項2】 前記モータの軸心方向の一端面を、糸送りアームに固設される固定部材で固定するとともに、モータ外周面を弾性体を介して糸送りアームで支持することで、該モータを弾性支持し、弾性体による支持位置をモータ重心より軸心方向他端側としたことを特徴とする請求項1記載の糸送りアームのモータ支持構造。
【請求項3】 前記固定部材及び弾性体は共通のブラケットに設けられることを特徴とする請求項2記載の糸送りアームのモータ支持構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紡績機の糸継装置の構成に関するものであり、詳しくは、糸送りローラを具備した糸送りアームの構成に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、紡績機の糸継装置において、糸送りアームを回動自在に構成し、該糸送りアームの先端に1対の糸送りローラを設け、該糸送りローラにより糸を挟持捕捉し、糸送りアームを回動させて、糸継位置まで搬送するようにした構成が公知となっている。この1対の糸送りローラは、駆動ローラと、該駆動ローラに接触して回転する従動ローラより構成され、駆動ローラを駆動するモータが糸送りアームの先端に取付けられていた。そして、従動ローラを駆動ローラから離接可能に構成し、従動ローラの回動によって両ローラ間に糸を挟持し、さらに駆動ローラの駆動によって、挟持した糸を送り出すように構成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来構成においては、糸送りアームの先端に取付けられるモータは、モータの一端面をボルトにより締結するのみで固定する片持ち支持とされていた。しかし、該モータは糸継工程においては、糸送りアームと一体となって回動運動をするものであり、該糸送りアームの急速な動作や停止が行われるため、モータの固定が緩んでしまったり、モータとギヤヘッド間の固定が緩んでしまうという問題があった。そこで、モータの外周面部分においてもボルト等により固定する支持方法も考えられるが、モータ及びギヤヘッドの構造上実現が難しく、また、無理な固定で負荷をかけるとモータの回転が不安定になったり、モータの寿命を低下させる原因となるため、これらの問題を生じさせることなく、モータを安定して支持する構造への改善が必要であった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に課題を解決するための手段について説明する。即ち、請求項1記載の如く、待機位置と送り位置との間で移動自在であり、一対の糸送りローラを有し、該ローラで把持した糸を、そのローラを駆動させて送り出す構成の糸送りアームにおいて、糸送りローラを駆動するモータを、糸送りアームに弾性支持する構成とした。
【0005】また、請求項2記載の如く、前記モータの軸心方向の一端面を、糸送りアームに固設される固定部材で固定するとともに、モータ外周面を弾性体を介して糸送りアームで支持することで、該モータを弾性支持し、弾性体による支持位置をモータ重心より軸心方向他端側とした。
【0006】また、請求項3記載の如く、前記固定部材及び弾性体は共通のブラケットに設けられる。
【0007】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態について、添付の図面を用いて説明する。図1は紡績機の通常の巻取り状態を示す全体図、図2は糸継ぎ動作を示す紡績機の全体図、図3は糸継ぎ動作中の糸送りアームの模式図、図4は本発明に係る糸送りアームの断面図である。
【0008】まず、図1を用いて紡績機の全体構成及び、通常の紡績工程について説明する。紡績機は並設された複数の紡績ユニットより構成される。各紡績ユニット上部には、バックローラ11B、ミドルローラ11M、フロントローラ11Fとからなるドラフト装置11が設けられ、該ドラフト装置11の下流側に接離可能な中空ガイド軸体装置12aと空気噴射ノズル12bとからなる紡績部12が設けられ、該紡績部12により生成された紡績糸Yが、常時回転しているデリベリローラ10aと、該デリベリローラ10aに接触して回転するニップローラ10bとの間に把持されて、巻取パッケージ1方向に送られる。ニップローラ10bは、デリベリローラ10aに対して接離可能に構成されている。
【0009】デリベリローラ10a及びニップローラ10bにより下方に案内された紡績糸Yは、クレードルアーム2に把持された巻取パッケージ1に巻き取られる。該巻取パッケージ1は通常の紡績工程においては、フリクションローラ3に当接しており、該フリクションローラ3の回転駆動により巻取パッケージ1が回転する。また、巻取パッケージ1の近傍位置には、逆転ローラ4が設けられており、糸継工程を行う際には、該逆転ローラ4が巻取パッケージ1に接触して、巻取パッケージ1を逆回転させるように構成している。
【0010】次に、糸継装置の構成及び糸継工程について説明する。糸継装置は玉揚装置等と共に作業台車に収容され、該作業台車が各紡績ユニット間を移動しながら、糸継要求の発生した紡績ユニットにおいて糸継動作を行うものである。糸継装置は吸引管レバー5、糸ガイド6、糸送りアーム7、エアーサッカー装置8等より構成されており、上述した紡績工程において糸切れが発生した場合には、巻取パッケージ1に巻かれた紡績糸Y、又は、別に設置された種糸パッケージから解舒された糸を捕捉して、種糸として紡績部12の糸排出口から挿入し、上流側から送られる繊維束(スライバ)を巻き付けて、糸継工程(ピーシング工程)を行うものである。
【0011】吸引管レバー5は、図1及び図2に示すように、枢軸5aを中心に回動可能に構成されており、図1に示す通常の紡績工程においては、糸道に干渉しない位置まで上方に回動されている。該吸引管レバー5の先端部には、図3に示すようにサクションマウス5bが設けられており、糸継工程においては、図2に示すように吸引管レバー5が巻取パッケージ1近傍位置まで回動して、該サクションマウス5bにより、パッケージ表面の糸を吸引捕捉するよう構成している。
【0012】糸ガイド6は、図示せぬ枢軸を中心に回動可能に構成されており、図1に示す通常の紡績工程においては、糸道に干渉しない位置まで上方に回動されている。糸ガイド6は、図3に示すように上下方向に2段に配設された上下ガイド6a・6bと、上ガイド6aの上面に配設されたカッター6cとを有しており、糸継工程においては、図2に示すように該糸ガイド6が糸道とラップする前方位置まで回動するように構成している。
【0013】糸送りアーム7は、枢軸7aを中心に回動可能、且つ、その軸方向に移動可能に構成されており、該枢軸7aより湾曲状に延設したフレームの先端には、糸送りローラ及びローラ駆動用モータ等からなる糸送り装置70が取付けられている。通常の紡績工程においては、図1に示すように、糸送りアーム7は先端に設けられた糸送り装置70が糸道に干渉しない待機位置に回動されている。
【0014】図3及び図4に示すように、糸送りローラは駆動ローラ7bと、該駆動ローラ7bに接触回転する従動ローラ7cとからなる。駆動ローラ7bには連結軸71bが挿入固定され、該連結軸71bには、糸送りローラ駆動用モータであるモータ7eの駆動軸71aが挿入固定されており、該モータ7eの駆動により、駆動ローラ7bが回転駆動する構成としている。
【0015】従動ローラ7cはソケット77に回転自在に軸支されており、駆動ローラ7bに対して従動ローラ7cを接触離反させるために、該ソケット77が枢軸77aを中心にフレーム76上で図4の矢視Z方向に回動自在に支持されている。ソケット77には凹状に窪んだ係止部77bが形成されており、シリンダ78のピストンロッド79の端部に設けられた係止軸79aが該係止部77bに嵌合しており、ピストンロッド9の伸縮によりソケット77と従動ローラ7cを一体的に矢視Z方向に回動させるようにしている。
【0016】前記フレーム76内には、さらにケース74を介してモータ支持ブラケット73が設けられている。そして、本発明においては、該モータ支持ブラケット73内に複数(本実施例では2つ)の固定部材であるボルト75・75を介して、モータ7eの軸心方向の一端面を固定すると共に、該モータ支持ブラケット73内にOリング72を介して弾性的にモータ7eの外周面を支持する構成としている。このような支持構造とすることで、後述する糸継工程において、糸送りアーム7の回動移動や停止による衝撃を受けた場合にも、衝撃を吸収しながら弾性的にモータ7eを支持するので、モータ7eに無理な負荷や衝撃を与えることなく、また、モータ7eとギヤヘッド7g間の固定を緩めてしまうという問題を解消して、モータ7eの性能を維持しながら確実に支持する構成となった。即ち、Oリング72は、断面形状が変形可能な弾性体で構成されている。
【0017】また、前記Oリング72の支持位置は、モータ7eの重心Gよりも、軸心方向他端側としている。つまり、モータ7eの駆動軸71aとは逆側の端部においてOリング72により支持する構成としているのである。図4に示す実施例においては、Oリング72によるモータ7eの支持位置72sがモータ7eの重心位置Gより先端側となるようにしている。このような支持構造とすることで、簡易な構成でありながら、モータ7eの支持構造を確実なものとすることができた。また、駆動軸71aが位置する一端側は、軸受け等により支持されているので、駆動軸71aとは逆側で支持することにより、バランスよくモータ7eを支持することが可能となった。
【0018】また、前記固定部材であるボルト75とOリング72は、共通のブラケットであるモータ支持ブラケット73を介してモータ7eを支持する構成としているので、別個のブラケットを使用した場合に比べて精度的に有利であり、またOリングの弾性量(変形量)を適正に設定することが可能となった。
【0019】エアーサッカー装置8は、紡績部12内に上流側に向かう空気流を発生させるためのものであり、平行リンク8a・8bにより支持され上下方向回動可能とし、基部8c上にシリンダー8dを載置し、該シリンダー8dのピストンロッド8e先端には、吸引ヘッド8fが装着されている。そして、通常の紡績工程においては、図1及び図2の実線で示す位置に待機しているエアーサッカー装置8が、糸継工程においては、前記平行リンク8a・8bの回動により上方に回動し、吸引ヘッド8fが図2に示す2点鎖線の位置へ移動するよう構成している。尚、エアサッカー装置8と同様の機能を果たすものとして、例えば、中空ガイド軸体装置12aの糸通路に、上流側に向かって圧縮空気を噴射する手段を設けることもできる。
【0020】スラックチューブ9は巻取パッケージ1から巻き戻された紡績糸Yを、所定長さ貯留するためのものであり、前記糸送りアーム7の枢軸7aよりもやや上方に配置され、略水平方向に延設した後端が図示せぬ空気吸引源に接続されている。
【0021】以上の如く構成された紡績機及び糸継装置による糸継工程について説明する。巻取パッケージ1へと至る糸道途中で糸が切断したことを検出した場合、ドラフト装置11のバックローラ11Bの回転を停止させると共に、巻取パッケージ1をフリクションローラ3から離反させる。これにより、回転を停止したバックローラ11Bと、回転を続行しているミドルローラ11M間でスライバー13が切断されると共に、切断された紡績糸Yが巻き込まれた状態で巻取パッケージ1が停止する。また、バックローラ11Bの停止にやや遅れて、紡績部12の駆動も停止される。
【0022】糸継要求を検知して作業台車が当該ユニットに到着すると、作業台車はニップローラ10bをデリベリローラ10aから離反させると共に、前記吸引管レバー5を、図2で示す2点鎖線の待機位置から、実線で示す位置まで回動させる。そして、サクションマウス5bをパッケージ表面に接近させ、前記逆転ローラ4を巻取パッケージ1に圧接させて、巻取パッケージ1を逆回転(通常の巻取り方向に対して逆回転)させながら、糸端の口出しを行いサクションマウス5bで吸引する。尚、ニップローラ10bの軸方向に糸を移動させる手段を設けることで、糸の引き出しを開始する際、両ローラ10a・10bを接触させたまま、側方から糸を挿入することができ、ニップローラ10bとデリベリローラ10aとを離反させる手段を不要にできる。
【0023】作業台車は、糸端の口出し終了後、吸引管レバー5を再び図2の2点鎖線位置で示す待機位置に復帰させる。この状態で吸引管レバー5に捕捉されている糸を図2においてY’で示す。そして、図3に示すように前記糸ガイド6を糸Y’の糸道とラップする位置まで回動させ、上下ガイド6a・6bに形成されたスリットに糸Y’を挿入して、糸Y’を所定位置で維持する。この状態で、糸ガイド6のカッター6cは開いており、糸Y’はサクションマウス5bに吸引されている。
【0024】そして、図2に示すように、糸送りアーム7を2点鎖線で示す待機位置から糸Y’の糸道方向に回動させ、先端の糸送りローラを側面視で上下ガイド6a・6b間となる糸送り位置に移動させる。そして、従動ローラ7cが駆動ローラ7bから離反された状態で、図3及び図4で示すように、糸送りアーム7を矢視X方向(枢軸7aの軸方向)に移動させ、該従動ローラ7cと駆動ローラ7b間に糸Y’を挿入する。次いで、従動ローラ7cと駆動ローラ7bを当接させて、糸Y’を挟持し、カッター6cにより糸Y’を切断する。
【0025】そして、従動ローラ7cと駆動ローラ7bで糸Yを挟持した状態で、逆転ローラ4を駆動して巻取パッケージ1の糸を巻き戻しながら、糸送りアーム7を上方に回動させ、糸送りローラを有する先端の糸送り装置70を図2の2点鎖線に示すように紡績部12近傍に位置させる。この糸送りアーム7の上方への回動中は、糸送りローラは駆動されない。さらに、前記エアサッカー装置8を図2の2点鎖線で示す位置まで回動させ、紡績部12内に上流側(スライバ導入口)に向かう空気流が発生した状態とする。この状態で糸送りローラを所定量だけ駆動させて、巻取り側の種糸を紡績部12の糸排出側からドラフト装置11側に向かって通した後、停止していたドラフトローラを駆動するとともに、紡績部12の駆動を開始し、また、ニップローラ10b及びデリベリローラ10aによる種糸の引き出しを開始して、種糸の周りにドラフト装置11から供給される繊維を巻きつけて糸継(ピーシング)を行うのである。
【0026】このように糸継工程においては、糸送りアーム7が上下に大きく回動動作を行い、また所定位置で停止動作を行うが、前述の如くモータ7eは、Oリング72により弾性的に支持されているので、衝撃を受けることなく、モータ性能を維持したまま、確実に支持される構成となった。また、従動ローラ7cの回動により、従動ローラ7cと駆動ローラ7b間で衝撃が発生するが、これらの衝撃からもモータ7eは保護されることとなり、モータ寿命を長くして耐久性の向上が図られた。また、モータ7eの支持が安定することで、糸送りアーム7を高速で回動させることができ、糸継工程のサイクルタイムを短縮させることが可能となる。
【0027】このように本発明は、先端部に一対の糸送りローラ10a・10bを有すると共に、待機位置と送り位置との間で回動自在であり、糸送りローラ10a・10bで把持した巻取り側の種糸Yを、待機位置から送り位置に回動して紡績部12近傍に送り、糸送りローラ10a・10bを駆動して、把持していた種糸Yを紡績部12の糸排出側から通すための糸送りアーム7において、糸送りローラ駆動用モータ7eを、糸送りアーム7に弾性支持する構成としたので、上述した効果に加えて、モータ7eの回転が安定し、糸継工程において、糸送りローラ10a・10bの駆動による種糸Yの送り量が正確なものとなり、糸継ぎ成功率が向上すると共に、継ぎ目形態が良好なものとなるという効果が得られる。
【0028】
【発明の効果】本発明は以上の如く構成したので、以下のような効果を奏するものである。即ち、請求項1記載の如く、待機位置と送り位置との間で移動自在であり、一対の糸送りローラを有し、該ローラで把持した糸を、そのローラを駆動させて送り出す構成の糸送りアームにおいて、糸送りローラを駆動するモータを、糸送りアームに弾性支持する構成としたので、モータに無理な負荷を与えることなく支持する構成となり、モータ性能を維持したまま確実に支持することが可能となった。これにより糸継工程の精度が向上し、紡績機の性能向上が図られた。
【0029】また、請求項2記載の如く、前記モータの軸心方向の一端面を、糸送りアームに固設される固定部材で固定するとともに、モータ外周面を弾性体を介して糸送りアームで支持することで、該モータを弾性支持し、弾性体による支持位置をモータ重心より軸心方向他端側としたので、簡易な構成でありながら、支持構造を確実なものとすることが可能となった。
【0030】また、請求項3記載の如く、前記固定部材及び弾性体は共通のブラケットに設けられるので、別個のブラケットを使用した場合に比べて、精度的に有利であり、弾性体の弾性量(変形量)を適正に設定することが可能となった。
【出願人】 【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
【出願日】 平成12年1月20日(2000.1.20)
【代理人】 【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
【公開番号】 特開2001−200434(P2001−200434A)
【公開日】 平成13年7月27日(2001.7.27)
【出願番号】 特願2000−11952(P2000−11952)