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【発明の名称】 艶消しポリエステル繊維
【発明者】 【氏名】塚本 亮二

【要約】 【課題】従来の酸化チタンを用いた艶消しポリエステル繊維に比べて、風合い、軽量感に優れ、アルカリ減量加工しやすい艶消しポリエステル繊維を提供すること。

【解決手段】構成炭素数3〜40のジカルボン酸金属塩化合物を0.1〜5.0重量%含み、X線回折によって測定された配向度が80%以上、密度が1.320〜1.365g/cm3の範囲である、艶消しポリエステル繊維。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 構成炭素数3〜40のジカルボン酸金属塩化合物を0.1〜5.0重量%含むポリエステル繊維であって、該金属塩化合物がナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも一種を金属として含む化合物であり、且つX線回折によって測定された配向度が80%以上、密度が1.320〜1.365g/cm3の範囲にあることを特徴とする、艶消しポリエステル繊維。
【請求項2】 ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル、ポリエチレンナフタレート系ポリエステル、ポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート系ポリエステルからなる群のいずれかを主体とするポリマーである、請求項1記載の艶消しポリエステル繊維。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は艶消しポリエステル繊維に関する。更に詳しくは、従来の酸化チタンを用いた艶消しポリエステル繊維に比べて、風合い、軽量感に優れ、アルカリ減量加工しやすい艶消しポリエステル繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルはその耐熱性、力学的特性、耐溶剤性、耐光性、寸法安定性などの優れた特性より、繊維、フィルム、ボトルなどの各種樹脂成形品用途等に多く用いられてきた。特にポリエステル繊維は寸法安定性に優れ、強く且つしわになりにくい等の優れた特性を有する事から、衣料のあらゆる分野で活用されている。
【0003】一方でポリエステル繊維は通常そのままでは、衣料品とした場合、艶が強すぎて多くの衣料品では好まれない。その為、艶消し剤として酸化チタンを練り込んだポリエステル繊維が一般的となっている(特開昭55−133431号公報等)。
【0004】しかしながら、酸化チタンは微粒子が凝集して異物となり繊維特性を低下させる、酸化チタンは比重が高く、繊維化したのちに重量感を感じる、フルダル調となるまで酸化チタンを添加すると曳糸性が低下し、極細に近い繊維の製糸が困難である等の問題を抱えている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来の酸化チタンを用いた艶消しポリエステル繊維に比べて、風合い、軽量感に優れ、アルカリ減量加工しやすい艶消しポリエステル繊維を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記従来技術が有していた問題点を解消すべく、鋭意研究した結果、特定のジカルボン酸金属塩化合物を添加剤として分散させたポリエステルポリマーを繊維化し、特定の配向度とすることによって得られた繊維は、上記問題点を解決することが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】即ち、本発明の目的は、構成炭素数3〜40のジカルボン酸金属塩化合物を0.1〜5.0重量%含むポリエステル系繊維であって、該金属塩化合物がナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも一種を金属として含む化合物であり、且つX線回折によって測定された配向度が80%以上、密度が1.320〜1.365g/cm3の範囲にあることを特徴とする、艶消しポリエステル系繊維によって達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明において、ポリエステルとはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはこれらを主体としたポリエステルをいう。ここで、”主体とした”とは、該ポリエステルが全ポリエステルを基準として90%以上を占めていることをいう。
【0009】本発明において、構成炭素数3〜40のジカルボン酸金属塩化合物とは、脂肪族ジカルボン酸金属塩あるいは芳香族ジカルボン酸金属塩のいずれかからなる化合物であって、その構成炭素数は3〜40の範囲にある必要がある。ここで該構成炭素数が3より小さいとポリエステル中での分散性が不良となり、40より大きいと本発明の特徴でもある艶消し性が不十分となる。該ジカルボン酸金属塩化合物を構成する炭素数は6〜29の範囲が好ましく、7〜28の範囲が更に好ましく、8〜26の範囲が特に好ましい。
【0010】ここで、ジカルボン酸金属塩化合物として脂肪族ジカルボン酸金属塩を採用する場合には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の金属塩を挙げることができ、芳香族ジカルボン酸金属塩を採用する場合には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の金属塩を挙げることができる。
【0011】ここで、これらの金属塩化合物は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛の群から選ばれる金属の化合物である必要がある。これらの金属塩化合物を用いたときに、初めて本発明の目的を達成することが可能となる。
【0012】本発明においてジカルボン酸金属塩化合物をポリエステルに分散させる添加量は0.1〜5.0重量%の範囲にあることが必要である。添加量が0.1重量%未満の場合、本発明の特徴でもある艶消し性が不十分となり好ましくなく、5.0重量%を越える場合、ポリエステル中での分散性が不良となるばかりか製糸工程も不安定となり好ましくない。ジカルボン酸金属塩化合物の添加量は0.2〜4.0重量%の範囲が好ましく、0.3〜3.0重量%の範囲が更に好ましい。
【0013】本発明のポリエステル繊維はX線回折によって得られた配向度が80%以上である必要がある。配向度が80%未満であると得られる繊維の艶が高すぎる為好ましくない。配向度は85%以上が好ましく、90%以上が更に好ましい。
【0014】本発明のポリエステル繊維は密度が1.320〜1.365g/cm3の範囲ある必要がある。密度が1.365g/cm3以上であると、最終的に得られる繊維製品の軽量感が低くなり、また1.320未満であると繊維自体の強力も低下する傾向にあるので好ましくない。密度は1.323〜1.362g/cm3の範囲が好ましく、1.325〜1.360g/cm3の範囲であることが更に好ましい。
【0015】上記のようなポリエステル系繊維は、ジカルボン酸金属塩化合物を分散させたポリエステルを溶融紡糸することによって得られるが、溶融紡糸の方法は、得られる繊維の配向度及び密度が上記した範囲となるかぎり特に制限はなく従来公知の方法を用いることが出来、例えば、紡糸速度200〜2000m/分、好ましくは400〜1600m/分で紡糸後、未延伸糸を巻き取り別途2.5〜5.5倍、好ましくは3.0〜5.0倍の延伸倍率にて延伸する方法、未延伸糸をいったん巻き取ることなく連続して2.5〜5.5倍、好ましくは3.0〜5.0倍の延伸倍率にて直接延伸を行う方法、紡糸速度2000〜5000m/分、好ましくは2500〜4500m/分で紡糸後、別途1.1〜3.5倍、好ましくは1.2〜3.0倍の延伸倍率で延伸又は高次加工する方法、4000m/分、好ましくは5000m/分以上の高速で溶融紡糸し延伸過程を省略する方法、溶融紡糸後、凝固浴中で未延伸糸を冷却固化した後、加熱媒体中又は加熱ローラー等の接触加熱下、あるいは非接触型ヒーターで延伸する方法などをいずれも採用することができる。
【0016】本発明のポリエステル繊維の固有粘度に特に制限はないが、一般的に用いられるポリエステル繊維と同様に0.5〜1.0の範囲にあることが好ましい。
【0017】本発明のポリエステル繊維には必要に応じて滑剤、顔料、染料、酸化防止剤、固相重合促進剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤等の添加剤を配合することが出来る。
【0018】本発明に使用するポリエステルの製造方法については特に制限はなく、エステル交換法、直接エステル化法等従来公知の方法が用いられる。
【0019】また、ジカルボン酸金属塩化合物をポリエステルに分散させる際の手法については特に制限はなく、ポリエステル製造時のエステル交換反応あるいはエステル化反応の初期から末期、重合反応の初期から末期、更には予め公知の方法で製造されたポリエステルをエクストルーダー等で溶融させた後、ジカルボン酸金属塩を粉体あるいは溶液、スラリーとしてサイドフィーダーなどから定量的に供給する方法、ポリエステルチップとジカルボン酸金属塩を粉体ブレンドした後に溶融混合する方法、重合反応器のような反応器でポリエステルチップを溶融後、ジカルボン酸金属塩を添加し溶融撹拌下反応させる方法などが用いられる。
【0020】また、ポリエステルとジカルボン酸金属塩の溶融混練温度は特に制限はないが、好ましくはポリエステルポリマーの融点以上310℃以下、更に好ましくはポリエステルポリマーの融点以上300℃以下である。
【0021】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが本発明はこれにより何等限定を受けるものでは無い。なお、例中の各値は次の方法により求めた。
【0022】(1)固有粘度:オルトクロロフェノール中、35℃にて常法に従って測定した。
【0023】(2)ジエチレングリコール(DEG)の含有量:抱水ヒドラジンを用いてポリマーを分解し、ガスクロマトグラフィーとしては日立製作所製「263−70型」を用いて常法に従って定量を行った。
【0024】(3)配向度:理学電気工業社製「Rigaku Rotaflex」を用い、繊維試料の任意の部分を中心として、長手方向が360度回転するように、該試料を回転させて回折の強度分布を測定して得られる、横軸を回折角とし、縦軸を回折強度とするチャート図から下記数式に従って求めた。
【0025】
【数1】

【0026】(4)引張強伸度:JIS L1070記載の方法に準拠して測定した。
【0027】(5)艶消し度合い:試料(単繊維1本)をプレパラート上にサンプリングし実体顕微鏡(Nikon社製 「AFX−IIA」)を用いて200倍の倍率下、反射光下にて観察し、繊維全体がほぼ白化しているものを○、部分的に白化しているものを△、ほぼ全体が透明になっているものを×とした。
【0028】(6)繊維密度:硝酸カルシウム水溶液密度勾配管を用いて測定した。
【0029】(7)アルカリ減量速度:得られた糸を用いてメリヤス編地を製造し、これを常法により精練、プリセット(180℃×1分)して編地とし、得られたメリヤス編地を100℃、1wt%水酸化ナトリウム水溶液中で減量率が20%となるようにアルカリ減量を施し、その際のアルカリ減量速度を求めた。
【0030】(8)断糸率:紡糸工程において100分間/巻の糸巻きを100巻製造し、そのうち、断糸の発生した糸巻きの個数を製造した糸巻きの個数に対して百分率で示した。
【0031】[実施例1〜2]テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール67部、酢酸マンガン4水塩0.032部(ジカルボン酸ジメチル成分を基準として0.025モル%)を、蒸留装置を備えた反応容器に仕込み、反応系中に生成するメタノールを系外に除去しながら常法に従いエステル交換させた。エステル交換反応終了後、反応混合物に安定剤としてリン酸トリメチルを0.020部(ジカルボン酸ジメチル成分を基準として0.028モル%)添加した。このエステル交換反応物を撹拌装置、窒素導入口、減圧口、蒸留装置を備えた反応容器に移し、反応混合物に三酸化アンチモン0.04部(ジカルボン酸ジメチル成分を基準として0.027モル%)及び添加剤としてアジピン酸モノナトリウム塩を表1に示す量添加し、窒素置換した後、285℃まで昇温し、常圧で約30分、2000〜2700Paで約30分、更に7〜70Paで反応させ、その後系の溶融粘度が所定の値に達するまで重合した。得られたポリマーは常法によりチップ化した。得られたポリマーの固有粘度、DEG含有量を表1に示す。
【0032】得られたチップを常法により乾燥した後、孔径0.3mmの円形紡糸孔を36個備えた紡糸口金を有する押出紡糸機を用いて287℃で溶融し、引取速度1400m/分で紡糸し、得られた未延伸糸を、85℃の加熱ローラーと160℃のプレートヒーターとを有する延伸処理機に供し、表2に示す延伸倍率で延伸処理し、83dtex/36filamentsの延伸糸を得た。得られた糸の物性を表2に示す。
【0033】[実施例3〜4]実施例1において、アジピン酸モノナトリウム塩から代えてアジピン酸カルシウム塩(モル比2:1で調製)を用いたこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、2に示す。
【0034】[実施例5〜6]実施例1において、アジピン酸モノナトリウム塩から代えてセバシン酸モノナトリウム塩を用いたこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、2に示す。
【0035】[実施例7]常法によって製造された固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートチップを乾燥後二軸ルーダーに送り込み、アジピン酸モノナトリウム塩の粉体をサイドフィーダーから表1に示す割合となる速度で添加し、290℃で15分間溶融混練した。溶融したポリマーはチップ化することなくそのまま孔径0.3mm孔数36ホールの口金を用いて287℃で溶融紡糸を行い、1400m/分で引き取った。得られた未延伸糸を、85℃の加熱ローラーと160℃のプレートヒーターとを有する延伸処理機に供し、表2に示す延伸倍率で延伸処理し、83dtex/36フィラメントの延伸糸を得た。得られた糸の物性を表2に示す。
【0036】[実施例8]実施例1において、溶融紡糸時の巻き取り速度を5000m/分とし、延伸処理を施さなかったこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、2に示す。
【0037】[実施例9〜10]実施例1において、添加剤としてアジピン酸モノナトリウム塩から代えてセバシン酸ジナトリウム塩を用い、表1に示す量添加したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、表2に示す。
【0038】[実施例11〜12]実施例1において、添加剤としてアジピン酸モノナトリウム塩から代えて、セバシン酸カルシウム塩(モル比1:1で調製)を用い、表1に示す量添加したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、表2に示す。
【0039】[実施例13〜14]実施例1において、添加剤としてアジピン酸モノナトリウム塩から代えてドデカンジカルボン酸ジナトリウム塩を用いたこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、表2に示す。
【0040】[実施例15]実施例7において、アジピン酸モノナトリウム塩の粉体から代えてセバシン酸ジナトリウム塩の粉体を用いたこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、表2に示す。
【0041】[実施例16]実施例9において、溶融紡糸時の巻き取り速度を5000m/分とし、延伸処理を施さなかったこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、2に示す。
【0042】[比較例1]実施例1において、アジピン酸モノナトリウム塩を添加しなかったこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、2に示す。
【0043】[比較例2]実施例1において、アジピン酸モノナトリウム塩の添加量を表1に示すように変更したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、2に示す。
【0044】[比較例3]実施例1において、アジピン酸モノナトリウム塩から代えてアジピン酸を添加したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、2に示す。
【0045】[比較例4]実施例1において、アジピン酸モノナトリウム塩から代えてシュウ酸モノナトリウム塩を添加したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、2に示す。
【0046】[比較例5]実施例1において、アジピン酸モノナトリウム塩から代えて酸化チタン0.3部を添加したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、2に示す。
【0047】[比較例6]実施例9において、セバシン酸ジナトリウム塩の添加量を表1に示すように変更したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、2に示す。
【0048】[比較例7]実施例9において、セバシン酸ジナトリウム塩から代えてセバシン酸を用いたこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、2に示す。
【0049】[比較例8]実施例9において、セバシン酸ジナトリウム塩から代えてシュウ酸ジナトリウム塩を添加したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、2に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】表1、2より明らかなとおり、本発明のポリエステル繊維はポリエステル繊維が従来有している強伸度、外観を有したまま艶消し繊維を与えることがわかる。
【0053】
【発明の効果】本発明の艶消しポリエステル繊維によれば、従来の酸化チタンを添加した艶消し繊維並の艶消し度合いを有し、更に軽量でアルカリ減量加工性の改善された繊維を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
【出願日】 平成12年6月14日(2000.6.14)
【代理人】 【識別番号】100077263
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 純博
【公開番号】 特開2001−355129(P2001−355129A)
【公開日】 平成13年12月26日(2001.12.26)
【出願番号】 特願2000−178085(P2000−178085)