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【発明の名称】 合成繊維、布帛、合成繊維の製造方法、および合成繊維布帛の製造方法
【発明者】 【氏名】鶴丸 洋一郎

【氏名】青木 正裕

【要約】 【課題】空気や水の清浄化用フィルター等の環境浄化素材に好適に使用できる合成繊維及びその製造方法を提供する。

【解決手段】合成繊維1の表面に、光触媒として不活性な多孔質膜22で覆われた酸化チタン粉末2を露出させて成る。この合成繊維1は、例えば、光触媒として不活性な多孔質膜22で覆われた酸化チタン粉末2を含有させたポリエステルポリマーを繊維に成形した後、このポリエステル繊維の表面を苛性ソーダで溶解除去することにより該繊維の表面に酸化チタン粉末2を露出させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 繊維表面に、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を露出させていることを特徴とする合成繊維。
【請求項2】 未凝固の溶融状態にある紡出繊維を、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を浮遊分散させてある雰囲気内に通すことにより前記紡出繊維の表面に前記酸化チタン粉末を付着させてあることを特徴とする合成繊維。
【請求項3】 光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を含有させたポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等のアリカリ可溶性の溶融ポリマーを紡出延伸してアリカリ可溶性繊維に成形し、このアリカリ可溶性繊維の表面をアルカリで溶解して前記酸化チタン粉末を前記アリカリ可溶性繊維の表面に露出させてあることを特徴とする合成繊維。
【請求項4】 編織物もしくは不織布等の布帛であって、この布帛の全部または一部が、繊維表面に光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を露出させている合成繊維から構成されていることを特徴とする布帛。
【請求項5】 編織物もしくは不織布等の布帛であって、この布帛の全部または一部が、未凝固の溶融状態にある紡出繊維を、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を浮遊分散させてある雰囲気内に通すことにより前記紡出繊維の表面に前記酸化チタン粉末を付着させてある合成繊維から構成されていることを特徴とする布帛。
【請求項6】 編織物もしくは不織布等の布帛であって、この布帛の全部または一部が、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を含有させたポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等のアリカリ可溶性の溶融ポリマーを紡出延伸してアリカリ可溶性繊維に成形し、このアリカリ可溶性繊維の表面をアルカリで溶解して前記酸化チタン粉末を前記アリカリ可溶性繊維の表面に露出させてある合成繊維から構成されていることを特徴とする布帛。
【請求項7】 未凝固の溶融状態にある紡出繊維を、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を浮遊分散させてある雰囲気内に通すことにより前記紡出繊維の表面に前記酸化チタン粉末を付着させることを特徴とする合成繊維の製造方法。
【請求項8】 光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を含有させたポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等のアリカリ可溶性の溶融ポリマーを紡出延伸してアリカリ可溶性繊維に成形した後、このアリカリ可溶性繊維の表面をアルカリで溶解して前記酸化チタン粉末を前記アリカリ可溶性繊維の表面に露出させることを特徴とする合成繊維の製造方法。
【請求項9】 光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を含有させたポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等のアリカリ可溶性の溶融ポリマーをアリカリ可溶性繊維に成形した後、このアリカリ可溶性繊維を編織物もしくは不織布等の布帛にしてアルカリで前記アリカリ可溶性繊維の表面を溶解することにより前記酸化チタン粉末を前記アリカリ可溶性繊維の表面に露出させることを特徴とする合成繊維布帛の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気や水の清浄化用フィルター等の環境浄化素材に好適に使用できる合成繊維、合成繊維の製造方法、および合成繊維布帛の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、光触媒酸化チタンは光を受けることによって、温度に換算すると3万゜C以上という強力な酸化力を発生し、この力によって消臭、水質浄化、抗菌等の機能を発揮するため、環境浄化素材として有効であることは知られている。しかし、酸化チタンはそのような有益な機能を有する反面、その強力な酸化力によって酸化チタンを担持する素材自体をも劣化させるため、酸化に強いタイルやガラス等の無機の担持素材への応用がほとんどであった。そこで、他の有機の担持素材への応用を広げるべく、光触媒酸化チタン粉末を光触媒として不活性な多孔質膜で覆ったものも提案されている。光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末は、光触媒機能を発揮できるとともに、担持素材と接するところの多孔質膜が不活性であるため担持素材の劣化を抑制できるのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は、上記のような光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を使用することにより合成繊維それ自体に消臭、殺菌、抗菌等の機能を賦与し、以て空気や水の清浄化用フィルター等の環境浄化素材として好適に使用できる合成繊維、布帛、合成繊維の製造方法、および合成繊維布帛の製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の合成繊維は、繊維表面に、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を露出させていることに特徴を有するものである。この場合において、上記合成繊維は、未凝固の溶融状態にある紡出繊維を、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を浮遊分散させてある雰囲気内に通すことにより前記紡出繊維の表面に前記酸化チタン粉末を付着させることで簡単に構成することができる。また、上記合成繊維は、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を含有させたポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等のアリカリ可溶性の溶融ポリマーを紡出延伸してアリカリ可溶性繊維に成形し、このアリカリ可溶性繊維の表面をアルカリで溶解して前記酸化チタン粉末を前記アリカリ可溶性繊維の表面に露出させることができる。
【0005】このように構成された合成繊維は、表面に露出している酸化チタン粉末が光を受けることにより消臭、殺菌、抗菌等の光触媒機能を発揮し、したがって、例えば、空気や水の清浄化用フィルターなどの素材に好適に用いられる。酸化チタン粉末は多孔質膜で覆われているため光触媒機能の発揮を確保するとともに、合成繊維と接するところの多孔質膜は光触媒として不活性であるため合成繊維の劣化を抑制できる。
【0006】本発明の布帛は、編織物もしくは不織布等の布帛であって、この布帛の全部または一部が上記合成繊維から構成されていることに特徴を有するものである。この場合において、上記布帛の全部または一部は、未凝固の溶融状態にある紡出繊維を、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を浮遊分散させてある雰囲気内に通すことにより前記紡出繊維の表面に前記酸化チタン粉末を付着させた合成繊維を使用することにより簡単に構成することができる。また、上記布帛の全部または一部は、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を含有させたポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等のアリカリ可溶性の溶融ポリマーを紡出延伸してアリカリ可溶性繊維に成形し、このアリカリ可溶性繊維の表面をアルカリで溶解して前記酸化チタン粉末を前記アリカリ可溶性繊維の表面に露出させた合成繊維を使用することにより簡単に構成することができる。
【0007】このように構成された布帛においても、合成繊維の表面に露出している酸化チタン粉末が光を受けることにより消臭、殺菌、抗菌等の光触媒機能を発揮することができ、空気や水の清浄化用フィルターなどの素材に好適に用いられる。
【0008】本発明の合成繊維の製造方法は、未凝固の溶融状態にある紡出繊維を、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を浮遊分散させてある雰囲気内に通すことにより前記紡出繊維の表面に前記酸化チタン粉末を付着させることに特徴を有するものである。
【0009】このような合成繊維の製造方法によれば、酸化チタン粉末が繊維表面に強く付着し易く、上記した光触媒機能を発揮する合成繊維を溶融紡糸による成形と同時に簡単かつ能率よく製造することができる。
【0010】また、本発明の合成繊維の製造方法は、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を含有させたポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等のアリカリ可溶性の溶融ポリマーを紡出延伸してアリカリ可溶性繊維に成形した後、このアリカリ可溶性繊維の表面をアルカリで溶解して前記酸化チタン粉末を前記アリカリ可溶性繊維の表面に露出させることに特徴を有するものである。
【0011】このような合成繊維の製造方法によれば、繊維内に埋入している酸化チタン粉末も繊維表面によく露出させることができ、繊維表面への酸化チタン粉末の露出量を増大することができる。
【0012】本発明の合成繊維布帛の製造方法は、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を含有させたポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等のアリカリ可溶性の溶融ポリマーをアリカリ可溶性繊維に成形した後、このアリカリ可溶性繊維を編織物もしくは不織布等の布帛にしてアルカリで前記アリカリ可溶性繊維の表面を溶解することにより前記酸化チタン粉末を前記アリカリ可溶性繊維の表面に露出させることに特徴を有するものである。
【0013】上記合成繊維布帛の製造方法によれば、繊維内に埋入している酸化チタン粉末も繊維表面に露出させることができるとともに、布帛加工前の当該繊維の搬送時や布帛加工時に酸化チタン粉末が繊維表面からこすれ等で脱落して減少するということが無くなる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明に係る合成繊維は、図1に示すように、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの溶融紡糸によって成形される繊維1の表面に、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末2を露出させて成るものである。酸化チタン粉末2は、図2に示すように、酸化チタン粒子21と、この粒子21の表面を被覆する光触媒として不活性な多孔質膜22から構成されている。多孔質膜22は、光触媒として不活性なアルミナ、シリカ等のセラミックスからなり、多数の細孔23を有している。
【0015】このような合成繊維は、図3に示すごとく溶融紡糸するに際し、溶融ポリマーを紡糸口金3の小さな穴から押し出し引っ張って、クーリングチムニー4内に通して冷たい空気で冷却して紡出繊維5にするが、その際、クーリングチムニー4内に吹き込まれる空気中に、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末2を浮遊分散させておき、このクーリングチムニー4内に紡糸口金3から紡出される未凝固状態の前記紡出繊維5を通すことによってその繊維表面に酸化チタン粉末2が付着する合成繊維1を得ることができる。合成繊維の材料としては、前述したようにポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの繊維で、溶融紡糸法によって製造可能なものに適用できる。
【0016】他の製造方法としては、光触媒として不活性な多孔質膜22で覆われた酸化チタン粉末2を含有させた溶融ポリマーを繊維に成形した後、この繊維の表面を苛性ソーダ等のアルカリで溶解する減量加工により酸化チタン粉末2を前記繊維の表面に露出させることによっても製造することができる。この製造方法にあたっては、強アルカリに対して溶解しにくいポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維には不向きであり、溶解性を有するポリエステル、ポリエチレンテレフタレート繊維等が適している。
【0017】アルカリで表面処理できる合成繊維としては長繊維に限らず、短繊維でも可能である。また、アルカリ処理は繊維状態で実施する以外に、光触媒として不活性な多孔質膜22で覆われた酸化チタン粉末2を含有させたポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等のアリカリ可溶性の溶融ポリマーをアリカリ可溶性繊維にした後、この繊維を編物、織物もしくは不織布などの布帛にしたうえで強アルカリで前記アリカリ可溶性繊維の表面を溶解する減量加工により前記酸化チタン粉末2を前記繊維の表面に露出させることによっても製造することができる。
【0018】合成繊維としては、図4に示すごとく溶融紡糸を芯鞘方式のコンジュゲート紡糸で実施して酸化チタン粉末2を含有する芯部1aとこれの外周に同じく酸化チタン粉末2を含有する鞘部1bとを一体に成形し、この後強アルカリで鞘部1bの表面を溶かして酸化チタン粉末2を鞘部1bの表面に露出させることもできる。
【0019】上記のように酸化チタン粉末を表面に露出した合成繊維は、特に空気や水の清浄用フイルターなどの環境浄化素材として好適に使用できるが、その他に同じような目的の用途をも予測するものである。
【0020】
【実施例】(実施例1)平均粒径3〜5μm の酸化チタン粉末を、図3に示すごとくクーリングチムニー4に吹き込む空気の中に浮遊分散させて、この酸化チタン粉末の浮遊する空気を紡糸口金3から紡出される未凝固状態の紡出繊維5に吹きつけて1000m /min の速度でポリエステル糸500D−24F(24本の単繊維からなる500デニールの糸)を紡糸して、巻き取る。この巻き取られたポリエステル糸を約4.5倍に延伸して110D−24Fのポリエステル繊維を製造した。
【0021】(実施例2)5重量%の酸化チタン粉末を含有するポリエステルポリマーを使用して、通常の溶融紡糸延伸法によって200D−10Fのポリエステル繊維を製造した。このポリエステル繊維をかせ状に保持し、20%苛性ソーダ溶液でポリエステル繊維の表面を溶解処理して図1に示すごとく酸化チタン粉末2をポリエステル繊維1の表面に露出させた。
【0022】アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、アンモニア、トリメチルアミンの四大悪臭ガスに対する消臭試験を行った。
【0023】(試料)
(実施例3)縦糸、横糸ともに、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を5重量%含有するポリエステル糸を100%使用することによってフィルターを織り、このフィルターを苛性ソーダで4%減量加工したもの(300mm ×200mm6g) である。
【0024】(実施例4)縦糸に、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を5重量%含有するポリエステル糸を100%使用し、横糸に、前記酸化チタン粉末を5重量%含有するポリエステル糸を50%、前記酸化チタン粉末を含有しないポリエステル糸を50%使用してフィルターを織り、このフィルターを苛性ソーダで4%減量加工したもの(300mm ×200mm 6g) である。
【0025】(実施例5)縦糸に、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を5重量%含有するポリエステル糸を100%使用し、横糸に、前記酸化チタン粉末を含有しないポリエステル糸を100%使用してフィルターを織り、このフィルターを苛性ソーダで4%減量加工したもの(300mm ×200mm 6g) である。
【0026】(比較例1)酸化チタン粉末を含有しないポリプロピレン糸を縦糸、横糸にしてフィルターを織ったもの(300mm ×200mm 6g) である。
【0027】(分析方法)分析方法としては、容量5Lのテフロン(登録商標)製テドラーバックに試料(実施例3〜5、比較例1)を入れて密封し、空気を1.6L入れた。そこへ対象ガス物質(液体)を適量注入し、対象ガス物質がすべて気化しテドラーバック内にほぼ均一に拡散するまで静置した。テドラーバック内の対象ガス濃度を時間をあけて2〜3回ガス検知管により測定し、濃度の時間変化が小さいことを確認した。ブラックライトにより約1.8mW/cm2 の紫外線を照射し、時間を置いて対象ガス濃度を何回か測定した。ただし、対象ガス物質の初期濃度は次の通りである。アセトアルデヒドは約200ppm、メチルメルカプタンは約40ppm、アンモニアは約200ppm、トリメチルアミンは約60ppmである。
【0028】アセトアルデヒドに対する消臭試験の結果は図5に、メチルメルカプタンに対する消臭試験の結果は図6に、アンモニアに対する消臭試験の結果は図7に、トリメチルアミンに対する消臭試験の結果は図8にそれぞれ示す。
【0029】以上の消臭試験の結果から、実施例3〜5のフィルターはポリエステル糸の表面に、光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を露出しているため、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、アンモニア、トリメチルアミンの悪臭ガスを効果的に分解して消臭することを確認できた。
【0030】
【発明の効果】本発明の合成繊維、及びこの合成繊維からなる布帛によれば、繊維表面に光触媒として不活性な多孔質膜で覆われた酸化チタン粉末を露出させているので、光を受けることにより消臭、殺菌、抗菌等の光触媒機能を発揮し、とくに空気や水の清浄化用フィルター等の環境浄化素材に好適に使用できる。本発明の合成繊維及び合成繊維布帛の製造方法によれば、そのような合成繊維や合成繊維布帛を簡単かつ能率よく製造することができる。
【出願人】 【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
【識別番号】598151647
【氏名又は名称】株式会社アオキ企画
【出願日】 平成12年6月9日(2000.6.9)
【代理人】 【識別番号】100072338
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 孝一 (外1名)
【公開番号】 特開2001−355119(P2001−355119A)
【公開日】 平成13年12月26日(2001.12.26)
【出願番号】 特願2000−173597(P2000−173597)