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【発明の名称】 グラファイトナノファイバー、電子放出源及びその作製方法、該電子放出源を有する表示素子、並びにリチウムイオン二次電池
【発明者】 【氏名】村上 裕彦

【氏名】平川 正明

【氏名】田中 千晶

【要約】 【課題】高電子放出密度、低電界電子放出性能を達成できる陰極材料、該材料からなる電子放出源及びその作製方法、該電子放出源を有する表示素子、並びに該炭素質材料を負極の活物質として用いたリチウムイオン二次電池の提供。

【解決手段】先端の切られたアイスクリームコーン形状を有するグラフェンシートが触媒金属を介して積層された円柱状構造や、触媒金属の表面形状に沿った形状を有するグラフェンシートの小片が触媒金属を介して積み重なった構造を有するグラファイトナノファイバー材料。触媒金属が、Fe、Co、又はこれらの金属を少なくとも1種類含む合金からなる。該材料を利用して電子放出源、発光体の所望部分が発光するように構成する表示素子、電池負極用炭素質材料、リチウムイオン二次電池を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 先端の切られたアイスクリームコーン形状を有するグラフェンシートが触媒金属を介して積層された円柱状構造、又は触媒金属の表面形状に沿った形状を有するグラフェンシートの小片が触媒金属を介して積み重なった構造を有することを特徴とするグラファイトナノファイバー。
【請求項2】 前記円柱状構造を有するグラファイトナノファイバーにおいて、その中心に存在する貫通空隙が中空であるか又はアモルファスカーボンで充填されており、また、その直径が10nm〜600nmであることを特徴とする請求項1記載のグラファイトナノファイバー。
【請求項3】 前記触媒金属が、Fe、Co、又はこれらの金属を少なくとも1種類含む合金からなるものであることを特徴とする請求項1又は2記載のグラファイトナノファイバー。
【請求項4】 電極基板表面上に、又はパターニングされた電極基板表面のパターン化部分の上に設けられた炭素膜からなる電子放出源であって、該炭素膜が、請求項1〜3のいずれかに記載のグラファイトナノファイバーからなることを特徴とする電子放出源。
【請求項5】 前記炭素膜を成膜するための電極基板が、Fe、Co、又はこれらの金属を少なくとも1種類含む合金からなるものであることを特徴とする請求項4記載の電子放出源。
【請求項6】 熱CVD法により、炭素含有ガス及び水素ガスを用いて、Fe、Co又はこれらの金属の少なくとも1種を含む合金からなる電極基板表面上に、又はパターニングされた該電極基板表面のパターン化部分の上に、グラフェンシートを成長せしめて、請求項1〜3のいずれかに記載のグラファイトナノファイバーの成長層を得ることを特徴とする電子放出源の作製方法。
【請求項7】 請求項1〜3のいずれかに記載のグラファイトナノファイバーの粉末を溶剤に分散させて調製したペーストを電極基板上に塗布することによって、又は該粉末を溶剤に分散させて調製した分散液に電極基板を浸し、電着法によって、該グラファイトナノファイバーを電極基板に付着せしめて電子放出源を作製することを特徴とする電子放出源の作製方法。
【請求項8】 所定形状にパターニングされた複数の透明導電膜と、請求項1〜3のいずれかに記載のグラファイトナノファイバーからなる炭素膜をパターニングされた電極基板表面のパターン化部分に設けてなる電子放出源と、該炭素膜に対して対向配置された発光体とを有する表示素子であって、該炭素膜と該透明導電膜とを選択して電圧を印加すると、該炭素膜から電子が放出されて、該発光体の特定の部分のみが発光するように構成されていることを特徴とする表示素子。
【請求項9】 請求項1〜3のいずれかに記載のグラファイトナノファイバーからなることを特徴とする電池負極用炭素質材料。
【請求項10】 リチウム遷移金属酸化物を正極活物質とする正極、炭素質材料を負極活物質とする負極、及び有機溶媒系の電解液を有するリチウムイオン二次電池において、該炭素質材料が請求項1〜3のいずれかに記載のグラファイトナノファイバーからなることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、グラファイトナノファイバー、電子放出源及びその作製方法、該電子放出源を有する表示素子、並びにリチウムイオン二次電池に関する。特に、ディスプレイ用途のための電子放出源に応用されるグラファイトナノファイバー、該グラファイトナノファイバーを設けてなる電子放出源及び熱CVD法による該電子放出源の作製方法、該電子放出源を有する表示素子、該グラファイトナノファイバーからなる電池負極用炭素質材料、並びにこの電池負極用炭素質材料を負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池に関する。この電子放出源は、その放出電子量が大きいため、FEDの様なフラットパネルだけでなく、従来のCRT電子源に利用することもできる。
【0002】
【従来の技術】冷陰極源とは、加熱することなしに電子を放出させる電子放出源である陰極を意味する。図1に、代表的な冷陰極源の構成を示す。この場合、円錐状の陰極チップ(W、Mo、Si等からなるチップ)を電極基板上に形成するには、まず基板1上に電極基板(W、Mo、Si等からなる金属電極基板)2を設け、この電極基板2上に絶縁物3としての絶縁体膜とゲート電極(W、Mo、Si等からなるゲート電極)4としての金属ゲート膜とを形成し、さらにその上にレジスト膜を形成してホールパターンをリソグラフィ技術等により作製し、直下の金属ゲート膜および絶縁体膜をエッチングし、電極基板2を露出させる。次いで、この電極基板を基板面に対する垂線を中心軸として回転させながら斜め方向から蒸着を行い、円錐状の陰極チップ5を得る。例えば、エミッタ材料であるMoの堆積においては、Mo原子が自ら開口部を徐々にふさぎながらホール内に堆積するように蒸着方向を調整し、その後、剥離膜とともにホール外に堆積した余分なMo膜を除去してエミッタを作製する。この方法で作製したエミッタでディスプレイ用途のものは現在100V/μmの電界で駆動するに過ぎない。
【0003】上記したように、陰極材料として、今までSiやMo等が検討されてきたが、近年、カーボンナノチューブを陰極材料に用いることが検討されている。カーボンナノチューブは、炭素6員環を主構造としたらせん構造で形成された円筒形状をもち、極めて微細な、同心円状に円筒が配置された多重構造の黒鉛繊維であり、その末端のいずれかが開放しているものである。このカーボンナノチューブは、電子放出特性、耐熱性、化学的安定性等の性能において、他の金属材料よりも優れている。このようなカーボンナノチューブは、通常、アーク放電法、レーザー蒸発法、プラズマCVD法等により作製されており、なかでも、マイクロ波CVD法を利用したカーボンナノチューブ作製法によれば、特定の基板上に、基板に対して垂直にカーボンナノチューブを成長させることが可能になっている。上記方法で作製した冷陰極源(電子放出源)では、電子放出量が、印加電圧3V/μmにおいて1mA/cm2程度と低い。
【0004】また、近年、電子機器の小型化に伴い、電池の高エネルギー密度化が要求されており、そのため、高性能リチウムイオン二次電池が開発されている。例えば、負極に炭素質材料である単層壁面を有する上記したカーボンナノチューブ等を利用することにより作製されうる、サイクル寿命性能に優れ、かつ、放電容量の大きなリチウムイオン二次電池が提案されている。これは、リチウムの炭素層間化合物が電気化学的に容易に形成できることを利用したものである。すなわち、炭素を負極として非水電解液中で充電を行うとリチウムを含む正極中のリチウムは電気化学的に負極炭素の層間にドープされ、そしてこのリチウムのドープされた炭素はリチウム電極として作用し、放電に伴ってリチウムは炭素層間から脱ドープされ、正極中に戻るのである。この時の炭素質材料の単位重量当たりの充電量(mAh/g)はリチウムのドープ量によって決まるので、高い充電量を得るためには、負極ではリチウムのドープ量をできる限り大きくすることが必要となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記したようにして基板に対して垂直に成長せしめたカーボンナノチューブを含めた従来のカーボンナノチューブからなる電子放出源の場合、カーボンナノチューブからの電子放出は、その先端あるいは欠陥箇所から生じるため、CRT用電子源のように高い電流密度が要求される使用方法には、今のところ応用できないという問題がある。
【0006】また、上記したカーボンナノチューブを負極材として利用したリチウムイオン二次電池の場合、リチウムイオンがカーボンナノチューブ中に侵入するには、このナノチューブの欠陥部分、又は開放端が必要になるのであるが、従来のカーボンナノチューブでは必ずしも十分ではない。すなわち、リチウムイオンがカーボンナノチューブ中に十分な量で侵入することができず、リチウムのドープ量が大きくならないので、十分に満足し得る長いサイクル寿命、高速充電が得られないという問題がある。
【0007】本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消することにあり、カーボンナノチューブでは達成できないか、又は達成が困難である高電子放出密度、低電界電子放出性能を達成することのできる陰極材料、この陰極材料からなる炭素系電子放出源及びその作製方法、該電子放出源を有する表示素子、リチウムドープ量の大きな電池負極用炭素質材料、並びにこの炭素質材料を負極の活物質として用いた、サイクル寿命が十分長く、高速充電が可能であり、かつ、放電容量が大きなリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高電子放出密度、低電界電子放出性能を有する陰極材料について、また、従来よりもサイクル寿命が長く、高速充電が可能であり、かつ、放電容量が大きいリチウムイオン二次電池を得るべく、負極の活物質として利用できる炭素質材料について、鋭意、研究・開発を進めてきたが、熱CVD法により炭素含有ガスと水素ガスとを用いて結晶を成長せしめる過程で得られた、従来報告されていない構造を有するグラファイトナノファイバーに、優れた電子放出特性及びリチウムイオン二次電池用負極の活物質としての優れた性能があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】本発明のグラファイトナノファイバーは、先端の切られたアイスクリームコーン形状を有するグラフェンシートが触媒金属を介して積層された円柱状構造、又は触媒金属の表面形状に沿った形状を有するグラフェンシートの小片が触媒金属を介して積み重なった構造を有することからなる。このうち円柱状構造を有するグラファイトナノファイバーにおいては、その中心に存在する貫通空隙が中空であるか又はアモルファスカーボンで充填されており、また、その直径が10nm〜600nmであることが好ましい。直径が10nm未満であるものは、今のところ合成できておらず、また、600nmを超えるものは電子放出性能が劣る。前記触媒金属は、Fe、Co、又はこれらの金属を少なくとも1種類含む合金からなるものであることが好ましい。上記のようなグラファイトナノファイバーは、高電子放出特性、低電界電子放出性能等のような優れた電子放出特性を有する陰極材料として有用である。
【0010】本発明の電子放出源は、電極基板表面上に、又はパターニングされた電極基板表面のパターン化部分の上に設けられた炭素膜からなるものであって、該炭素膜が、上記した構造を有するグラファイトナノファイバーからなるものである。また、前記炭素膜を成膜するための電極基板は、Fe、Co、又はこれらの金属を少なくとも1種類含む合金からなるものであることが好ましい。これらの金属にはグラファイトナノファイバーを形成するための触媒作用がある。このグラファイトナノファイバーを設けた電子放出源により、高電子放出密度、低電界電子放出性能等の優れた電子放出特性が達成される。
【0011】本発明の電子放出源の作製方法は、熱CVD法により、炭素含有ガス及び水素ガスを用いて、Fe、Co又はこれらの金属の少なくとも1種を含む合金からなる電極基板表面上に、又はパターニングされた該電極基板表面のパターン化部分の上に、基板の耐熱温度を超えない程度の成膜温度で炭素膜を成長せしめて、上記した構造を有するグラファイトナノファイバーの成長層を得ることからなる。この成長層を有するものが電子放出源となり、冷陰極源を構成する。
【0012】本発明の電子放出源はまた、上記した構造を有するグラファイトナノファイバーの粉末を採取し、この粉末を溶剤に分散させてペーストを調製し、このペーストを電極基板上に塗布することによって、又は該粉末を溶剤に分散させて調製した分散液に電極基板を浸し、電着法によって、該グラファイトナノファイバーを電極基板に付着せしめて作製することもできる。
【0013】本発明の表示素子は、所定形状にパターニングされた複数の透明導電膜と、前記した構造を有するグラファイトナノファイバーからなる炭素膜をパターニングされた電極基板表面のパターン化部分に設けてなる電子放出源と、該炭素膜に対して対向配置された発光体とを有する。この表示素子では、炭素膜と発光体とが対向配置されているので、該炭素膜と該透明導電膜とを任意に選択して電圧を印加すると、該炭素膜から電子が放出されて、該発光体の特定の部分のみが発光するようになっている。
【0014】本発明の電池負極用炭素質材料は、上記した構造を有するグラファイトナノファイバーからなり、リチウムドープ量が大きいものである。直径が600nmを超えるグラファイトナノファイバーは高容量の性能がでなかった。このようなグラファイトナノファイバーは、従来のカーボンナノチューブとほぼ同程度の微細構造を有するので、大きな比表面積を有する活性炭としての性質を有すると共に、リチウムイオンがグラファイトナノファイバー中に自由に出入り可能な複数の開放面を有するので、グラファイトの理論容量(372mAh/g)を超える大きな充放電容量を有する優れた負極活物質になる。
【0015】本発明のリチウムイオン二次電池は、リチウム遷移金属酸化物を正極活物質とする正極、炭素質材料を負極活物質とする負極、及び有機溶媒系の電解液を有するリチウムイオン二次電池において、該炭素質材料が、上記した構造を有するグラファイトナノファイバーからなるものである。このような炭素質材料を利用することにより、サイクル寿命が長く、高速充電が可能であり、かつ、放電容量が大きいリチウムイオン二次電池が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明のグラファイトナノファイバーは、上記したように、先端の切られたアイスクリームコーン形状、すなわち截頭円錐形状を有するグラフェンシートが触媒金属を介して多数積層された円柱状構造であって、その中心に存在する貫通空隙が中空であるか又はアモルファスカーボンで充填されている構造を有するものであるか、又は触媒金属の表面形状に沿った形状を有するグラフェンシートの小片が触媒金属を介して積み重なった構造を有するものである。また、触媒金属の表面形状が、例えば、角度のない平面状であれば、その表面形状に沿った平板形状のグラフェンシートの小片が積み重なった構造をとり、又は角度を持つ面形状であれば、その面形状に沿った角度を持った板形状のグラフェンシートの小片が積み重なった構造をとる。
【0017】このようなグラファイトナノファイバーは、熱CVD法により作製され得る。例えば、電気炉を備えた熱CVD装置内に、Fe、Co、又はこれらの金属を少なくとも1種類含む合金からなる金属基板を載置し、装置内を真空にした後、装置内に一酸化炭素、二酸化炭素等のような炭素含有ガス及び水素ガスを導入し、通常1気圧で、基板の耐熱温度を超えない程度の成膜温度で、一般には、1500℃以下の温度で、好ましくは400℃〜1000℃の温度で、該基板上にグラフェンシートを成長させることにより作製することができる。このように基板上にグラファイトナノファイバーを堆積させたものが電子放出源となる。この基板金属にはグラファイトナノファイバーを形成するための触媒作用がある。成膜温度が400℃未満であると、グラファイトナノファイバーの成長速度が極端に遅くなり、また、1500℃を超えると、工業応用を考えた場合、熱エネルギーのコストがかかるという問題がある。例えば、ディスプレイ用として用いる場合、ガラス基板の耐熱温度を超えないような温度で、グラファイトナノファイバーを成長させることが必要である。
【0018】金属電極基板上に成長せしめたグラファイトナノファイバーの一本一本の構造は、例えば、図2に模式的に示すように、金属電極基板11上に截頭円錐形状を有するグラフェンシート12が所定の向きに、例えば截頭円錐の先端(頭部)の端縁が電極基板表面上に付着するような状態で、又は截頭円錐の底部の端縁が電極基板表面上に付着するような状態で、又は両方の付着態様が混ざった状態で成長したものであり、積層された円柱状構造を有している。このように積層されたグラファイトナノファイバーでは、その中心に貫通空隙13が存在し、この空隙は中空であるか又はアモルファスカーボンで充填されている。また、調製工程中に電極基板から生じた基板金属粒子14を一部内包した状態で成長し、積層している。
【0019】また、上記グラファイトナノファイバーの一本一本の構造には、図2に示すもの以外に、例えば、図3及び図4に模式的に示すようなものがある。すなわち、図3に示すように、金属基板由来の触媒金属22の表面形状が角度のない平面状である場合には、その表面形状に沿った平板形状のグラフェンシート21の小片が各触媒金属表面上に多数積み重なった構造をとり、また、図4に模式的に示すように、金属基板由来の触媒金属22の表面形状が角度を持つ面形状である場合には、その表面形状に沿った角度を持つ板形状のグラフェンシート21の小片が各触媒金属表面上に多数積み重なった構造をとる。
【0020】本発明で得られるグラファイトナノファイバーは、図2、3及び4に示す構造を混在して有するものである。
【0021】金属電極基板上に上記したようなグラファイトナノファイバーを成膜することで、炭素系電子放出源からの電界電子放出特性について、高性能化することが可能になる。具体的には、従来のカーボンナノチューブと同程度の印加電圧で、より高電流密度の電子放出が可能になり、CRT用電子源に使用できる程度まで十分な高電流密度の電子放出が得られる。例えば、図2に示す構造を有するグラファイトナノファイバーを代表として、その電子放出のモデルを説明する。図5に示すグラファイトナノファイバーの電子放出の模式図から明らかなように、各々のグラファイトナノファイバーの端縁、すなわち各グラフェンシート12の端部から、電界電子放出が生じているものと推測される。図5における符号番号は図2の場合と同じものを示す。このような電子放出は、図3及び4に示すグラファイトナノファイバーの場合も同じである。
【0022】本発明において電子放出源を構成する炭素膜は電極基板表面上に成膜されるが、パターニングされた電極基板表面のパターン化部分の上に成膜された炭素膜の場合には、電極基板表面上に公知の感光性樹脂液を塗布して行うフォトリソグラフ工程によって、又は印刷工程等によって表面に所望のパターニングが施された電極基板を得、次いでこの特定のパターン化部分に上記のようにしてグラファイトナノファイバーを成長させ、所望のパターン形状の炭素膜を成膜して、これを電子放出源とする。
【0023】また、グラファイトナノファイバーの粉末は、電極基板上に作製されたグラファイトナノファイバー成長層を基板から採取し、回収することにより得られる。本発明によれば、この粉末を、例えば銀ペースト等の導電性ペーストに分散させてペーストを調製し、このペーストを電極基板上に塗布し、乾燥することで、グラファイトナノファイバーを電極基板の所定の場所に付着せしめるか、又は該粉末を公知の導電性溶媒に分散させて調製した分散液に電極基板を浸し、電着法によってグラファイトナノファイバーを電極基板の所定の場所に付着せしめることにより電子放出源である冷陰極源を作製することもできる。このように粉末として取り扱うことで、印刷法や電着法により、目的に応じた所望のパターンを有する電子放出源(冷陰極源)を容易に作製することができる。
【0024】本発明の表示素子は、上記したような所望のパターン形状を有する炭素膜を有する電子放出源を備えているので、発光体を所望形状にパターニングされた透明導電膜上に形成すれば、目的に応じて、発光体の特定の部分のみを発光させることができる。
【0025】次に、本発明の電池負極用炭素質材料及びリチウムイオン二次電池について説明する。
【0026】本発明の電池負極用炭素質材料及びリチウムイオン二次電池は、上記した構造を有するグラファイトナノファイバーにリチウムイオンが自由に出入り可能であるという技術に基づいて開発されたものである。
【0027】この炭素質材料であるグラファイトナノファイバーは、上記したようにして調製され得る。本発明の電池負極用活物質を構成するグラファイトナノファイバーとしては、上記のようにして得られたグラファイトナノファイバー成長層を基板から採取し、回収して使用する。この活物質を用いて負極(カーボン電極)を作製するには、まず、グラファイトナノファイバーとバインダー(例えば、電極の作製に際し通常用いられるポリフッ化ビニリデン等の樹脂)とを溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド等)中で混練し、負極ミックスを調製する。次いで、ニッケルメッシュと共にペレットに成形し、負極を作製する。
【0028】正極材料としては、十分な量のリチウムを含んでいればよく、特に制限はされないが、本発明では、リチウム遷移金属酸化物を使用した場合に特に良好な性能が得られる。遷移金属としては、例えばコバルト、ニッケルなどの少なくとも一種が好ましい。
【0029】有機溶媒系の電解液としては、リチウムイオン二次電池において通常電解液として用いられているものであれば良く、特に制限はされない。
【0030】本発明のリチウムイオン二次電池については、図6に本発明の炭素質材料を負極活物質として用いて作製したリチウムイオン二次電池の一例として、コイン型二次電池の断面図を示す。これは公知のコイン型電池の構造と同じであり、公知の方法に従って得られる。すなわち、この二次電池は、負極31を、上記グラファイトナノファイバーを混練した負極ミックス用いて円盤状に形成し、セパレータ32を介して、円盤状の正極33を重ねて、その上下をニッケル等からなる負極集電体34、正極集電体35でガスケット36を絶縁しつつ封止することにより作製される。
【0031】
【実施例】次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
(実施例1)鉄基板を公知の熱CVD装置内に設置し、装置内を1Pa程度の真空にした。その後、水素ガスと一酸化炭素ガスとの混合ガスを装置内に導入し、1気圧でガスフローし、電気炉を用いて基板の温度を650℃にし、この温度で30分間反応させたところ、基板上にグラフェンシートが成長した。その際の一酸化炭素ガスの濃度は、30vol%であった。熱CVD装置から基板を取り出して、得られた試料について、ラマン散乱スペクトルを測定したところ、グラファイトに特徴的なスペクトルを示し、グラファイト物質が生成したことが確認された。また、この試料について、走査型電子顕微鏡(SEM)により観測したところ、多数のグラファイトナノファイバーが基板上にカールした状態で成長していることが分かった。このグラファイトナノファイバーを透過型電子顕微鏡(TEM)により観測したところ、その一本一本の構造は、図2に示すような、先端の切られたアイスクリームコーン形状(すなわち截頭円錐形状)を有するグラフェンシートが金属触媒を介して積層されてなる円柱状構造や、図3に示すような、触媒金属22の表面形状に沿った平板形状のグラフェンシート21の小片が各触媒金属表面上に多数積み重なった構造や、図4に示すような、触媒金属22の表面形状に沿った角度で屈曲している板形状のグラフェンシート21の小片が各触媒金属表面上に多数積み重なった構造を有しており、これらの構造が混在していることが分かった。また、図2に示すような構造を有するグラファイトナノファイバーは、その中心には貫通空隙が存在し、この空隙は中空であるか又はアモルファスカーボンで充填されており、また、グラファイト面が電極基板から生じた基板金属粒子を一部内包した状態の円柱状構造になっていることが分かった(図6)。得られたグラファイトナノファイバーの直径は10nm〜600nmの範囲内にあった。
【0032】次いで、上記のようにして得られたグラファイトナノファイバー膜からなる電子放出源の特性を測定した。その結果、印加電圧が0.8V/μmに達したところで電子放出の開始が確認され、その後印加電圧を大きくするに従って電子放出量が増加し、5V/μmで、100mA/cm2に達した。従来技術におけるカーボンナノチューブを用いる針状の電子放出源では、印加電圧3V/μmにおいて1mA/cm2の電子放出量であったが、本発明の電子放出源では、上記したように非常に小さい印加電圧で大きな電子放出量が得られた。
(実施例2)インコネル(Ni−Cr−Fe合金)基板を、実施例1の場合と同じ熱CVD装置内に設置し、装置内を1Pa程度の真空にした。その後、水素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガスを装置内に導入し、1気圧でガスフローし、電気炉を用いて基板の温度を650℃にし、この温度で30分間反応せしめたところ、基板上にグラフェンシートが成長した。その際の二酸化炭素ガスの濃度は、30vol%であった。熱CVD装置から基板を取り出して観測したところ、実施例1の場合と同様にグラファイトナノファイバーが基板上にカールした状態で成長しており、また、このグラファイトナノファイバーの構造も、実施例1の場合と同様な構造のものが混在していることが分かった。
【0033】このようにして得られたグラファイトナノファイバー膜から成る電子放出源の特性を測定したところ、実施例1と同程度の電子放出量が得られた。
(実施例3)SUS304基板を、実施例1の場合と同じ熱CVD装置内に設置し、装置内を1Pa程度の真空にした。その後、水素ガスと一酸化炭素ガスとの混合ガスを装置内に導入し、1気圧でガスフローし、電気炉を用いて基板の温度を650℃にし、60分間反応させたところ、グラフェンシートが成長した。その際の一酸化炭素ガスの濃度は、30vol%であった。熱CVD装置から基板を取り出して観測したところ、実施例1の場合と同様にグラファイトナノファイバーが基板上にカールした状態で成長しており、このグラファイトナノファイバーの構造も、実施例1の場合と同様な構造のものが混在していることが分かった。
【0034】次いで、得られたグラファイトナノファイバーを採取し、得られた粉末を市販の配線用銀ペースト(ニラコ社製)に分散・混合し、ペーストを調製した後、印刷法でガラス基板に塗布し、乾燥して電子放出源を作製した。
【0035】このようにして得られたグラファイトナノファイバーの塗布膜からなる電子放出源の特性を測定したところ、実施例1と同程度の電子放出量が得られた。
(実施例4)実施例1で得られたグラファイトナノファイバーを採取し、このグラファイトナノファイバーとポリフッ化ビニリデン(バインダー)とをジメチルホルムアミド溶媒中で混練し、負極ミックスを調製した。次いで、ニッケルメッシュと共にペレットに成形し、カーボン電極(負極)を作製した。この負極について、通常の試験用電池を用いて、その充電容量及び放電容量を評価した。この試験用電池(コイン型電池)の構成は以下の通りである。
【0036】
対極:リチウム金属セパレーター:ポリプロピレン多孔質膜電解液:炭酸エチレンと炭酸ジメチルとの混合溶媒(容量比で1:1)に電解質として過塩素酸リチウムを1モル/l溶解して調製。
【0037】電池寸法:直径20mm×厚さ2.5mm上記試験用電池に対して、500μA(電流密度0.26mA/cm2)の定電流で充放電を行った。充電終了及び放電終了は、電池電圧がそれぞれ0V及び1.5Vとなった時点とした。得られたグラファイトナノファイバーの負極容量については、充電容量980mAh/g、放電容量930mAh/gであった。この結果から、グラファイトの理論容量371mAh/gを遙かに上回る放電容量が得られ、また、充放電効率((放電容量/充電容量)×100)も優れたものであった。
(実施例5)実施例2で得られたグラファイトナノファイバーを採取し、実施例4の場合と同様にして負極を作製し、その充電容量及び放電容量を評価した。その結果、実施例4におけるグラファイトナノファイバーの場合と同程度の放電容量、充放電効率が得られた。
(実施例6)実施例3で得られたグラファイトナノファイバーを採取し、実施例4の場合と同様にして負極を作製し、その充電容量及び放電容量を評価した。その結果、実施例4におけるグラファイトナノファイバーの場合と同程度の放電容量、充放電効率が得られた。
(実施例7)図8(A)及び(B)に示すように、ガラス基板41上に、スパッタ法を用いてFeを成膜し、フォトリソグラフィ等の技術を使ってFe膜のライン42を形成し、このFeライン上にガラスリブ43を介して垂直なゲート電極44を作製した。このようにゲート電極の作製された基板を、実施例1の場合と同じ熱CVD装置内に設置し、装置内を1Pa程度の真空にした。その後、水素ガスと二酸化炭素ガスとの混合ガスを装置内に導入し、1気圧でガスフローし、電気炉を用いて基板の温度を650℃にし、この温度で60分間反応させたところ、基板の表面に見えているFeライン42上にグラファイトナノファイバーが成長した。
【0038】このようにグラファイトナノファイバーの成長したカソード基板と蛍光体ラインを持つアノード基板とを平行に保ち、基板間の空間を10-7Torrの真空に引きながら両基板を張り合わせた。
【0039】アノードに数kVの電圧を印加しながら、ゲート電極に電界100Vを加えると、任意のドットから電子放出が確認された。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、特定の構造を有するグラファイトナノファイバーが提供され、これを利用することにより、カーボンナノチューブでは達成できないか、又は達成困難である高電子放出密度、低電界電子放出性能の達成を可能にする炭素系電子放出源(冷陰極源)を作製し、提供することができ、さらにこの炭素系電子放出源を有する、発光体の所望部分の発光を可能とする表示素子を提供することができる。
【0041】また、本発明によれば、上記グラファイトナノファイバーを利用することにより、リチウムに対するドープ量が大きく、充放電効率の大きな電池負極用炭素質材料を提供することができ、この炭素質材料を負極活物質とする負極を用いることによりサイクル性能や、充電性能や、充放電容量に優れたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
【出願日】 平成13年1月12日(2001.1.12)
【代理人】 【識別番号】100060025
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 欣一 (外1名)
【公開番号】 特開2001−288625(P2001−288625A)
【公開日】 平成13年10月19日(2001.10.19)
【出願番号】 特願2001−4550(P2001−4550)