| 【発明の名称】 |
キチン繊維及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】木船 紘爾
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| 【要約】 |
【課題】生体で融解しにくいキチン繊維を得ること、加えてかかる繊維からキチン繊維集合体を得ること、及びキチン繊維集合体から医療材料を得ること、及びキチン繊維集合体から創傷被覆保護材を得ることを課題とする。
【解決手段】キチンを湿式紡糸してキチン繊維を作成するに際し、特定の分子量のキチンを使用すると、生体に使用した際、融解し難いことを見出し、従来得られなかったキチン繊維で有る事を確認した。即ち、キチン繊維を製造するに際し、8重量%の塩化リチウムを含むジメチルアセトアミド溶液に、0.2重量%溶解したときの溶液粘度が30°Cで、2−48センチポイズであるキチンを使用することを特徴とするキチン繊維の製造方法、及びかかる方法で得られたキチン繊維である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】キチンを溶剤に溶かし、湿式紡糸によりキチン繊維を製造するに際し、8重量%の塩化リチウムを含むジメチルアセトアミド溶液に、0.2重量%溶解したときの溶液粘度が30°Cで、2−48センチポイズであるキチンを使用することを特徴とするキチン繊維の製造方法。 【請求項2】請求項1に記載の製造方法により製造されたキチン繊維。 【請求項3】請求項2に記載のキチン繊維を加工して得られる事を特徴とする医療材料。 【請求項4】請求項2に記載のキチン繊維を加工して得られる事を特徴とする創傷被覆保護材。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、主として医療材料、例えば創傷治療材料などに使用可能な耐久性、治療効果の改善されたキチン繊維、及びその製造方法、及びそれから得られる医療材料に関するものである。 【0002】 【従来の技術】キチンは、近年良好な溶剤の開発などにより、新しく成形の技術が改善され、比較的良質な成形品の作成が可能な状況にある。そして、生体親和性が優れている為、生体材料として利用する為の多くの研究がなされている。特に繊維から成るものとしては、不織布や綿状物が創傷被覆保護材として開発され、製品化されている。 【0003】これらは、実際の創傷を治療する臨床の場に使用されているが、創傷治癒促進効果、止血効果、生体親和性、密着性などの好ましい特性を有すため治療効果が大きく、医療機関で高い評価を受けている。 【0004】一方、キチンの生体吸収性は、生体に異物としての認識を弱める為、組織反応が低く、キチンの好ましい特性の一つになっている。しかし、この生体吸収性の速度が早過ぎると、治療途中で融解を受けるため創の保護作用としての機能が低下するので、好ましくない。従来のキチン繊維からなる創傷被覆保護材は、創傷などの生体と接触されると、吸収性が早く、比較的早く分解し、特に生体反応の激しい深い傷などを治療する場合、滲出液により融解を受けやすい欠点があった。即ち、創傷の治癒が完了する前に溶解してしまう為、治療途中で保護材としての機能が消失することがあった。 【0005】これらの原因は、キチン繊維が製造される際のキチンの分子量にあったと考えられる。即ち、従来のキチン繊維は、次のような溶液粘度を有する原料から製造されている。例えば特開昭58−127736号の特許請求の範囲には、塩化リチウム2gを25gのジメチルアセトアミドに溶解した溶液を溶媒として、濃度0.2g/100g(0.2重量%)ジメチルアセトアミド溶液、30°Cで測定した溶液粘度が50−600センチポイズにあるキチンを使用することが記載されており、さらに特開昭59−125908の特許請求の範囲には、同一の条件下で測定した溶液粘度が50−800センチポイズにあるキチンの使用が記載され、特公平6−53151の3頁、左欄17行からには塩化リチウムを8重量%含むジメチルアセトアミド溶液に0.2重量%の濃度になるように溶解した粘度が、30°Cにおいて110センチポイズである記載があり、特開平7−102458の3頁、右欄下から15行、及び特開平10−52481の3頁、右欄下から8行には溶液粘度が265センチポイズのキチンの記載がある。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】かかる製造方法によって得られるキチン繊維からなる医療材料、特に創傷被覆保護材は、生体中での吸収性が早い為、特に深い創に使用した場合、創傷治癒の途中に、溶解しやすい欠点を有している。本発明はかかる欠点を、材料の有する分子量に重点を置き、検討した結果、生体での吸収性が遅い良質なキチン繊維を製造する方法を見出し、本発明にいたったものである。 【0007】 【課題を解決する為の手段】本発明者は、この課題を解決する為に、キチン繊維を製造する方法についての検討に鋭意努力した。その結果塩化リチウム8重量%を含むジメチルアセトアミド溶液に0.2重量%を溶解した溶液粘度が、30°Cで2−48センチポイズであるキチンを原料として湿式紡糸すれば、生体吸収速度の遅いキチン繊維を得る事ができることを見出した。更にこれら繊維から加工した不織布や綿状物などの創傷被覆保護材は創傷に使用しても融解しにくく良質なものであることも分かった。 【0008】この方法によって良質な繊維が得られる理由についは、常識的には溶液粘度から推定される分子量の高いほうが良好な繊維が得られると予想されるが、かえって、分子の密度が粗くなり、結晶化度が低下する為と考えられる。それに対して、本発明の分子量のキチンでは、適切な条件下で湿式紡糸を行うと、高い結晶化のため、強度、伸度が高く良質なキチン繊維を得ることができるものである。又この繊維から加工される綿状、不織布、布状などの創傷被覆保護材は、創傷の治療に使用した場合、生体液により分解されにくく、良好な治療が可能なものである。 【0009】 【発明の実施の形態】本発明に係わる実施の形態について、以下に説明する。キチンとは、甲殻類の外骨格等に含まれるアミノ多糖類のことで、化学式はポリーN−アセチルグルコサミンである。一般には、これら甲殻類の外骨格などを、塩酸などの酸処理で脱カルシウム、カセイソーダなどのアルカリ処理で、除蛋白することによって製造される。本発明を達成する為のキチンは、これを基本として、キチン製造者が、一般的に行っている通常の処理条件で製造されたものが使用できるが、最終的には、粉末等の固体状態で作成される。 【0010】現在、キチンの標準的な分子量の測定方法は確立されていないが、過去キチンを脱アセチル化して作成されるキトサンの酢酸溶液から分子量を測定した例があり、その場合、約100万である。従って、通常の処理で得られたキチンは大体この付近の分子量だと推察される。現在、キチンの分子量を推定するには、絶対値ではなく、溶剤であるジメチルアセトアミドと塩化リチウムとの混合溶液に溶解したものの溶液粘度を測定して、相対的に比較し、分子量の目安としているのが現状である。 【0011】本発明のキチンは、8重量%の塩化リチウムを含むジメチルアセトアミド溶液に、0.2重量%溶かした液の溶液粘度が、30°Cで、2−48センチポイズである。好ましくは、10−40センチポイズである。この溶液粘度は通常市販のB型粘度計で測定される。 【0012】通常の精製によって得られるキチンは、本発明の粘度より遥かに高いので、あらかじめ製造時又は製造後に、粘度を調整する必要がある。調整は、通常塩酸などの酸処理によって行う。従って、好ましくは、精製時に行う脱カルシウム工程の処理条件をより強く行うことで調整できる。例えば通常より、酸の濃度を高くしたり、処理温度を高くしたり、処理時間を長くすることによって作製が可能である。具体的な処理条件は原料が天然物のため、分子量にも変動があるので、特定されるものではないが、一般的には、塩酸濃度5−7容積%、40−70°C、1−5時間の処理条件で本発明のキチンを製造することが可能である。 【0013】これらのキチンから湿式紡糸を行ってキチン繊維を得る方法に関しては、既に知られている一般的な方法を、採用することが出来る。キチンの溶剤としては、通常に知られているものを使用することが出来る。例えば、ジメチルアセトアミドと塩化リチウムとの混合溶液、N−メチルピロリドンと塩化リチウムとの混合溶液、トリクロル酢酸とハロゲン化炭化水素との混合溶液がその例であり、それぞれ最適な混合割合で使用する。通常キチンは、これら溶剤に5−10重量%混合溶解して使用する。更に、濾過及び脱泡を行うと透明な高粘度の溶液となる。 【0014】湿式紡糸はこの溶液をタンクに入れギヤーポンプなどで計量輸送し、ノズルから、凝固液中に押し出して凝固することによって行う事ができる。凝固液はキチンの非溶剤の中から広い範囲の物質を使用できるが、通常は水である。一般にキチン溶液の粘度は高い為、輸送される溶液及び、凝固液の温度は40°C以上の、比較的高い状態が好ましく、かつ溶液及び凝固液の温度は、各工程を通じて、類似した温度に設定した方が紡糸しやすい。従来の特許に述べられている様に、溶液粘度の高いキチンで紡糸する場合しか過去に良好な繊維が得られなかったのは、紡糸する際の温度など、紡糸全般の条件の選択が悪かったと考えられる。 【0015】凝固された繊維は、回転ローラーなどで、2−20m/minの速度で、引取られ、ワインダーなどで巻き取られるか、又はそのまま必要な長さにカットされる。得られる繊維は、単糸デニールが0.5−5デニール程度の一般的なものである。得られた繊維は熱水などで洗浄し十分に溶剤を除去したのちそのまま加工するか、繊維を、カセイソーダで処理し、表面のみ脱アセチル化して、アミノ基で活性化した後加工しても良い。 【0016】加工も、通常に知られた繊維の加工方法で実施することができる。例えば、不織布は、繊維を数mmに切断した後、バインダーと共に水に分散し、水を除去して積層体を作成し、加圧熱処理するなどの方法等で作成される。また、綿状物は、やはり、短く切断した繊維を、開繊したのちカード機でカーディングを行い、ニードルパンチで形状を固定して作成される。又、長繊維とした後、織物、編物等の布状とする事もできる。なお、このようにして得られた繊維についても、本発明に言う溶液粘度を有する物である事は明らかである。 【0017】これらを医療用品として使用するには、必要なサイズに切断し、包材に入れ、放射線やエチレンオキサイドガスなどで滅菌したのち使用される。例えば、不織布は、皮膚などに発生する比較的浅い創傷、例えば、熱傷、採皮創、外傷性削皮創、植皮創、剥削創等に直接被覆して使用される。綿状物は、深い創傷、例えば、褥瘡、下腿潰瘍、重度熱傷、静脈性潰瘍等の治療材として使用できるものである。なお本発明は医療品以外の用途、例えば、衣料用品等の一般的な繊維の使用分野にも使用しても差し支えはない。 【0018】本発明のキチン繊維から得られる繊維加工品は、これら創傷の治療に使用した場合、従来使用された溶液粘度から得られる繊維に比べ、生体によって、溶解しにくく、長い間、傷に保持できるので治療効果をより上げることができる。なお、本発明の内容は、繊維に関してのみ適用できるもので、他の成形体の製造に応用できるものではない。即ち、結晶配向を伴う、繊維の製造に適用できるものである。以下実施例により本発明の内容を説明する。 【0019】 【実施例】(実施例1、比較例1)ベニズワイ蟹の外骨格を、5重量%のカセイソーダ水溶液、80°Cで3時間処理した。更に、6容積%の塩酸水溶液で60°C、3時間処理してキチンフレークを得た。それを30メッシュパスの粒度に粉砕し、白色キチン粉末を得た。この粉末を8重量%の塩化リチウムを含むジメチルアセトアミド溶液に0.2重量%溶解して、B型粘度計で30°C溶液粘度を測定すると31センチポイズであった。 【0020】この粉末を、8重量%の塩化リチウムを含むジメチルアセトアミド溶液に、7重量%混合し、ニーダーで混練して溶液を作成した。溶液は、脱泡、濾過すると高粘度の透明溶液となった。溶液をタンクに入れ、70°Cに加熱されたパイプラインを通じて、径0.1mmφ、6、000ホールのノズルを通じて、70°Cの熱水中に押し出して凝固し、5m/minの速度で、ワインダーにて巻き取った。 【0021】得られた繊維を、90°Cの熱水で、8時間処理し、乾燥の上、長さ5mmにカットした。繊維の単糸デニールは2.0dであった。この繊維に、熱融着バインダーを混合し、水に分散、積層、圧縮乾燥させる方法で抄紙を行い、厚み0.08mmの不織布を得た(実施例1)。 【0022】一方、外骨格を精製してキチンを得る際に、6容積%の塩酸水溶液処理を40°Cで行い、それ以外は実施例1と同じ条件でキチン粉末を作成した。このキチンは、塩化リチウムを8重量%含むジメチルアセトアミド溶液に0.4重量%を溶解した際の、溶液粘度は、30°Cで280センチポイズであった。さらに、この粉末を、実施例1と同じ方法で溶液を作成し、同じ条件で湿式紡糸したところ,紡糸性が若干悪かったものの、単糸 2.1dの繊維を得た。更に、抄紙により厚み約0.08mmの不織布を得た(比較例1)。実施例1、及び比較例1の両方の不織布を、医療用包材に入れ、エチレンオキサイドガスで滅菌した。 【0023】これらの不織布を、採皮創の治療に使用した。重度の熱傷を受傷した患者に対して、植皮の為に、下腿部から、デルマトームにより、厚さ1、000分の15インチの皮膚を採取した。その際採皮部の大きさは、縦20cm、横10cmであった。その創の半分を、実施例1の不織布で被覆し、他の半分を比較例1の不織布で被覆し、その上から、ガーゼで密着固定し、更に包帯を巻く方法で治療を行った。 【0024】治療に際して、包帯及びガーゼは創面から滲み出る液により汚れる為、はじめのうちは毎日交換した。治療を続けると、治療の初期は両方の不織布ともに、創面にしっかり密着していたが、8日目から、比較例1側の不織布の一部が融解し、ガーゼと治癒の完了していない創面が、直接密着を起こし、治療を続けるのが難しい状況と成ったため、新しいものを追加した。一方実施例1の不織布は、創面にしっかりと密着し、融解は発生していなかった。その後、傷面はだんだん乾燥が進み、やがて不織布の一部は創面から剥離して行き、両方の創面とも15日目には、治癒が完了した。しかし、比較例1側は、治癒面に凹凸があり、瘢痕状の組織が残った。しかし、実施例1側は、治癒した皮膚は滑らかで、瘢痕などは無く、正常な治癒状態を示した。両者には明らかに、生体液による耐融解性の点で、差が見られた。 【0025】 【実施例】(実施例2、比較例2)ベニズワイ蟹の外骨格をフレーク状として、7重量%のカセイソーダ水溶液で90°Cで3時間処理し、蛋白を除去した。更に、5容積%の塩酸水溶液で40°Cにて2時間処理し、カルシウムを除去した。更に、この工程を再度繰り返し、十分な除蛋白、脱カルシウムを行った。得られたものを粉砕して、30メッシュパスの粒度のキチン粉末を得た。 【0026】得られたキチンは、8重量%の塩化リチウムを含むジメチルアセトアミド溶液に0.2重量%溶解させ30°Cにて、B型粘度計で溶液粘度を測定するとき、18センチポイズであった(実施例2の原料)。これとは別に、上記の除蛋白、脱カルシウムの工程を1回のみにし、塩酸処理の際の温度を50°Cとし、それ以外は実施例2の原料と同一条件で処理すると、得られたキチンの溶液粘度は85センチポイズであった(比較例2の原料)。 【0027】これらの原料をそれぞれ、7重量%の塩化リチウムを含むジメチルアセトアミド溶液に、7重量%溶解し、キチンドープを作成し、1480ステンレスメッシュで濾過、及び減圧脱泡したのち、ギヤーポンプで押し出し0.07mmφ、6、000ホールのノズルから80°Cの熱水の中に押し出した。これを8m/minの速度でワインダーにて巻き取った。更に、90°Cの熱水で6時間処理した。得られた繊維は、実施例2が単糸1.8d、比較例2が、1.9dの光沢のある繊維であった。 【0028】それぞれの繊維を、長さ6cmにカットし、開繊したのち、カード機で通常の条件でカーディングを行い綿を作成した。更にニードルパンチ機で固定したところ、厚み約5mmの綿状物ができあがった。これらを縦10cm 、横10cmの大きさにカットし、包装滅菌した後、褥瘡の治療材として使用した。 【0029】褥瘡は、通常寝たきりで、体位交換ができない患者に発生し、創が深く、治癒の遅れる創傷である。キチン綿状物は、創面に充填して治療され、治癒の促進、滲出液の吸収排除及び乾燥の目的で使用される。実施例2及び、比較例2の綿状物を、重度の褥瘡患者に使用した。創の面積は、約30cm2、深さ約3mmで、滲出液が多く、毎日交換が必要な症例であった。実施例2と比較例2のものを、1日交替で交互に使用した。 【0030】その結果、実施例2のものは、創面を安定して保護することができ、取り出す際も、滲出液による劣化が少なかったのに対し、比較例2は材料が、治療中に融解する傾向にあり、取り出す際に、破損する場合があった。比較例の効果に不満が残ったものの、30日後には、傷はほとんど閉鎖し、治療効果が確認された。 【発明の効果】本発明によれば、物性が良好で、生体に使用した場合、従来の繊維より生体吸収性の緩やかなキチン繊維を得ることができる。従ってかかる繊維から作成されたキチン繊維集合体は、緩やかな生体吸収性を要求される医療材料、例えば創傷被覆保護材等として好ましく使用することができるので、不充分な創傷の治療の為、痛み、傷跡の残留などに悩んでいる患者、例えば重度の熱傷、褥瘡、下腿潰瘍などの患者に対して使用でき、良好な治癒が期待出来る。
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| 【出願人】 |
【識別番号】391003130 【氏名又は名称】甲陽ケミカル株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年3月10日(2000.3.10) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2001−254231(P2001−254231A) |
| 【公開日】 |
平成13年9月21日(2001.9.21) |
| 【出願番号】 |
特願2000−114409(P2000−114409) |
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