トップ :: D 繊維 紙 :: D01 天然または人造の糸または繊維;紡績




【発明の名称】 塩基性染料可染型共重合ポリエステル繊維
【発明者】 【氏名】清水 有三

【氏名】松村 由隆

【氏名】近野 吉宏

【要約】 【課題】高強度、高弾性回復性(ストレッチ性)を有し、塩基性染料の染色性に優れ、スポーツ衣料、インナー衣料等に好適で、さらに他の繊維との混繊・混用等の用途に適したポリエステル繊維を得ることを課題とする。

【解決手段】プロピレンテレフタレートを主たる構成単位とし、塩基性染料染着座席成分と芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸および脂環式ジカルボン酸成分よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が共重合されポリエステルからなる繊維であって、該繊維のヤング率が31cN/dtex以下、10%伸長時の伸長弾性回復率が80%以上である塩基性染料可染型共重合ポリエステル繊維。
【特許請求の範囲】
【請求項1】プロピレンテレフタレートを主たる構成単位とし、塩基性染料染着座席成分が全酸成分に対して0.1〜10モル%および芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸成分よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が全酸成分に対して0.1〜20モル%共重合されたポリエステルからなる繊維であって、該繊維のヤング率が31cN/dtex以下、10%伸長時の伸長弾性回復率が80%以上である塩基性染料可染型共重合ポリエステル繊維。
【請求項2】塩基性染料染着座席成分がスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、スルホイソフタル酸のホスホニウム塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の塩基性染料可染型共重合ポリエステル繊維。
【請求項3】芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸成分よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が炭素数4〜36の脂肪族ジカルボン酸である請求項1または2に記載の塩基性染料可染型共重合ポリエステル繊維。
【請求項4】ポリエステル中のジプロピレングリコール含有量が3重量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩基性染料可染型共重合ポリエステル繊維。
【請求項5】ポリエステル中のアルカリ金属元素含有量が得られるポリエステルの全酸成分に対して3モル%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の塩基性染料可染型共重合ポリエステル繊維。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塩基性染料可染型共重合ポリエステル繊維に関するものである。詳しくは高弾性回復率(ストレッチ性)を有し、高強度で、塩基性染料の染色性に優れたポリエステルからなる繊維で、スポーツ衣料、インナー衣料として好適に使用できる塩基性染料可染型共重合ポリエステル繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維は機械的強度、耐薬品性などに優れるため、衣料用途や産業用途などを主体に広く使用されている。
【0003】しかしながら、ポリエチレンテレフタレート繊維は伸長弾性回復率、屈曲回復率が低いため、ストレッチ性が要求されるインナー、スポーツ衣料、パンストなどの用途には好適に用いられなかった。このストレッチ性を改良するために、種々の提案がなされている。
【0004】その一つとして、従来から、エチレングリコールの代わりに1,3−プロピレングリコールを用いたポリプロピレンテレフタレート繊維によって伸長弾性回復率、屈曲回復率を高くできることが特開昭52−5320号公報等に開示されている。しかし、この方法では伸長弾性回復率、屈曲回復率は高くできるが、染色性が不十分であり、常圧では濃色に染色することができない。
【0005】そこで、常圧での染色性を改良する技術が特開平11−61562号公報、特開平11−61563号公報に開示されている。これらはポリプロピレンテレフタレートにポリオキシアルキレングリコールあるいは炭素数が12以下の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、ο−フタル酸から選ばれる1種を特定量共重合し、常圧での染色性を向上するものである。これらの方法では、常圧で濃色に染色可能となるものの、分散染料にしか染色できないといった点があげられる。分散染料は元来発色性に劣り、これらの方法では、より鮮明性を要求される分野への展開が制限されているのが実状である。
【0006】この問題点に関しポリエチレンテレフタレート繊維では、特公昭34−10497号公報等に開示されている通り、スルホン酸金属塩基を含有するイソフタル酸成分を共重合することにより塩基性染料で染色可能にする方法が知られている。しかし、前述したようにポリエチレンテレフタレートを基本骨格とした場合、要求されているストレッチ性を付与することが困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記従来技術の問題点を克服し、高弾性回復性(ストレッチ性)を有し、高強度で、塩基性染料の染色性に優れ、スポーツ衣料、インナー衣料等に好適で、さらに分散染料で染色した場合、他の繊維へ染料が移行してしまうといった問題点があるが、塩基性染料可染型ポリエステルでは移行昇華の問題がないことから、ポリウレタン等の他の繊維との混繊・混用等の用途に適した商品価値の高いポリエステル繊維を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記した課題を解決するために、プロピレンテレフタレートを主たる構成単位とし、塩基性染料染着座席成分が全酸成分に対して0.1〜10モル%および芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が全酸成分に対して0.1〜20モル%共重合されたポリエステルからなる繊維であって、該繊維のヤング率が31cN/dtex以下、10%伸長時の伸長弾性回復率が80%以上である塩基性染料可染型共重合ポリエステル繊維を特徴としたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明における共重合ポリエステル繊維は、プロピレンテレフタレートを主たる構成単位とし、塩基性染料染着座席成分が全酸成分に対して0.1〜10モル%および芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸成分よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が全酸成分に対して0.1〜20モル%共重合されたポリエステルからなる繊維である。
【0010】本発明のプロピレンテレフタレートを主たる構成単位としたポリエステルは、その構成成分として、酸成分がテレフタル酸またはこれから誘導されるエステル形成性誘導体であり、グリコール成分としては1,1−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、2,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールを挙げることができる。これらのゴリコール成分の中では、得られる繊維のストレッチ性、染色性の点から1,3−プロパンジオールが好ましい。また、ポリエステルに占めるプロピレンテレフタレートの単位は、弾性回復性等の点から70モル%以上が好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上である。
【0011】本発明の共重合ポリエステル繊維は、上述したように塩基性染料の染色性を向上せしめるために、塩基性染料染着座席成分が共重合されたポリエステルからなる繊維である。
【0012】本発明の塩基性染料染着座席成分としては、スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、スルホイソフタル酸のホスホニウム塩およびこれから誘導されるエステル形成性誘導体を挙げることができる。具体的には、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸等のスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、5−(テトラアルキル)ホスホニウムスルホイソフタル酸およびこれから誘導されるエステル形成性誘導体等が挙げられる。中でも染色性の点から5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、5−(テトラブチル)ホスホニウムスルホイソフタル酸およびこれから誘導されるエステル形成性誘導体が好ましい。
【0013】また、塩基性染料染着座席成分の共重合量は、染色性の点から、全酸成分に対して0.1〜10モル%であり、好ましくは0.2〜7モル%、より好ましくは0.3〜5モル%、さらに好ましくは0.5〜2モル%である。共重合量が0.1モル%未満であると塩基性染料の染色性に劣り、10モル%を越えると、染色性は良好なものの、繊維の強度に劣る。
【0014】さらに、本発明の共重合ポリエステル繊維は、上述した塩基性染料染着座席成分とともに芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸および脂環式ジカルボン酸成分よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が共重合されたポリエステルからなる繊維である。
【0015】芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸および脂環式ジカルボン酸成分よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を併用共重合することで、塩基性染料染着座席成分のみが共重合されたポリエステル繊維に比較し、塩基性染料の染色性に優れるとともに、塩基性染料染着座席成分の共重合量を減量せしめることが可能で、得られる繊維の強度が向上する。
【0016】本発明における芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸および脂環式ジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸およびこれから誘導されるエステル形成性誘導体を挙げることができる。これらのジカルボン酸成分の中では、塩基性染料の染色性、繊維の強度の点から、アジピン酸、ダイマー酸等の炭素数4〜36の脂肪族ジカルボン酸およびこれから誘導されるエステル形成性誘導体が好ましく、より好ましくは炭素数14〜36の脂肪族ジカルボン酸およびこれから誘導されるエステル形成性誘導体である。
【0017】本発明における芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸および脂環式ジカルボン酸成分よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物の共重合量は、染色性、強度の点から、全酸成分に対して0.1〜20モル%であり、好ましくは0.5〜15モル%、より好ましくは1〜10モル%、さらに好ましくは2〜5モル%である。共重合量が0.1モル%未満であると繊維の強度が低く、さらに塩基性染料の染色性に劣る。一方、共重合量が20モル%を越えると、染色性向上効果は飽和に達し、逆に繊維の強度が劣る。
【0018】本発明は上述したようにポリプロピレンテレフタレートに塩基性染料染着座席成分および芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸成分よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が共重合されたポリエステルからなる繊維であって、耐アルカリ加水分解性はポリエチレンテレフタレートに該化合物を共重合した繊維に比較し優れており、ポリエチレンテレフタレート繊維や天然繊維と同浴でアルカリ処理してもほぼ同レベルの減量加工が可能であり、ポリエチレンテレフタレート繊維や天然繊維との混繊用途に優れているという特徴がある。
【0019】また、本発明の共重合ポリエステル繊維は、耐熱性、弾性回復性、機械特性の点から、繊維を構成するポリエステル中のジプロピレングリコールの含有量を特定量とすることが好ましく、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2.8重量%以下、さらに好ましくは2.5重量%以下、特に好ましくは2.3重量%以下である。ポリエステル中のジプロピレングリコール含有量がかかる範囲を超えると耐熱性、弾性回復性、機械特性(強度など)などに劣る場合がある。
【0020】さらに本発明の共重合ポリエステル繊維を構成するポリエステルは、塩基性染料染着座席成分を共重合していることに起因していると推定される繊維製造時における紡糸時の濾過圧上昇・糸切れがあり、これらの抑制、あるいはポリエステル製造中に副生するジプロピレングリコールの抑制の点から、得られるポリエステルの全酸成分に対してアルカリ金属元素を3モル%以下の範囲で含有することが好ましく、より好ましく0.01〜3モル%、さらに好ましくは0.05〜2モル%、特に好ましくは0.1〜1.5モル%である。アルカリ金属元素含有量がかかる範囲を超えると繊維を製造する際の紡糸時の濾過圧上昇、糸切れの抑制効果に劣る場合がある。上述したようにポリエステル中にアルカリ金属元素を含有せしめることは繊維を製造する際の紡糸時の濾過圧上昇、糸切れ抑制に対して有効である。これはアルカリ金属元素と塩基性染着座席成分との相互作用によって生じた結果と推定できる。このことから、ポリエステル中のアルカリ金属元素含有量(モル%)/ポリエステルに共重合する塩基性染料染着座席成分量(モル%)の比は重要であり、アルカリ金属元素含有量(モル%)/塩基性染料染着座席成分量(モル%)の比は0.01〜200が好ましく、より好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.05〜50である。この比がかかる範囲を超えると繊維を製造する際の紡糸時の濾過圧上昇、糸切れの抑制効果に劣る場合がある。また、ポリエステル中にアルカリ金属元素を含有せしめる方法としては、アルカリ金属元素を有する化合物をポリエステルに配合・添加する方法等を挙げることができる。この際に用いるアルカリ金属元素を有する化合物としては、酢酸塩、水酸化物、塩化物、アルコキシド等の化合物、例えば酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、塩化リチウム等の塩化物等が挙げられる。特に、これらのアルカリ金属元素を有する化合物は、ポリエステルを製造する際の反応工程の任意の段階で添加する方法が好ましく、またポリエステルの反応触媒として使用してもよい。これらの化合物は、ポリエステル中のアルカリ金属元素含有量として、得られるポリエステルの全酸成分に対して3モル%以下となるようにポリエステルに添加すればよい。
【0021】さらに、本発明の共重合ポリエステル繊維には、本発明の目的を損なわない範囲で該共重合ポリエステルを構成する成分以外に、脂肪族グリコールおよび脂環族グリコール等のグリコール成分、ポリオキシアルキレングリコール、多官能成分を共重合・含有させることができる。
【0022】本発明における共重合ポリエステル繊維を構成するポリエステルは、任意の方法によって製造することができる。例えば、(1)ポリエステルをカルボン酸のジメチルエステルとグリコールとのエステル交換ならびに引き続く重縮合反応によって製造する方法、(2)ポリエステルをジカルボン酸とグリコールとのエステル化反応ならびに引き続く重縮合反応によって製造する方法等を挙げることができる。この際、本発明の共重合成分である塩基性染料染着座席成分および芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸成分よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を上記したポリエステル反応工程の任意の段階で添加し、共重合せしめることができる。
【0023】また、ポリエステルの反応に使用する触媒等は、ポリエステルを製造する際の一般的な反応触媒を使用することができる。例えば、エステル化、エステル交換反応触媒としては、アルカリ土類金属、亜鉛、マンガン、コバルト、チタン等の金属化合物、重縮合反応触媒としては、アンチモン、チタン、ゲルマニウム化合物等を用いることができる。
【0024】本発明の共重合ポリエステル繊維は、該繊維のヤング率が31cN/dtex以下、10%伸長時の弾性回復率が80%以上であることを同時に満足することが必要がある。ヤング率が31cN/dtexを越えると本発明の特徴である風合いの柔らかさが失われてしまい、好ましくは18〜26cN/dtexである。さらに、10%伸長時の弾性回復率が80%を下回るとストレッチ性に欠けてしまう。好ましくは90%以上である。
【0025】また本発明の共重合ポリエステル繊維は、風合い、他の繊維との混繊などの点から、繊維の強度が2.4cN/dtex以上が好ましく、より好ましくは2.5cN/dtex以上、さらに好ましくは2.6cN/dtex以上、特に好ましくは2.7cN/dtex以上である。
【0026】また本発明の共重合ポリエステル繊維は、本発明の目的を損なわない範囲で酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の界面活性剤、従来公知の抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
【0027】本発明における共重合ポリエステル繊維は従来公知の方法で製造することができる。例えば、500〜2500m/分の速度で溶融紡糸し、次いで延伸、熱処理する方法、1500〜5000m/分の速度で溶融紡糸し、延伸と仮撚加工とを同時、または延伸後、仮撚加工を行う方法、5000m/分以上の高速で溶融紡糸し、用途によっては延伸工程を省略する方法、など任意の製糸条件を採用することができる。
【0028】本発明の共重合ポリエステル繊維の断面形状は丸以外に、三角、偏平、多葉型、多角、H型、Π型などの異形断面でもよい。また、該繊維の糸状形態は、フィラメント、ステープルのどちらでもよく、用途によって適宜選定される。
【0029】本発明のポリエステル繊維は、その用途に応じて織物、編物、不織布などの布帛形態で使用することができる。
【0030】さらに本発明のポリエステル繊維を染色するための塩基性染料としては、'Aizen Cathilon'(保土ヶ谷化学工業(株)製)、'Kayacryl'(日本化薬(株)製)、'Estrol,Sumiacryl'(住友化学工業(株)製)、'Diacryl'(三菱化成工業(株)製)、'Maxilon'(チバガイギー(株)製)、'Astrazon'(バイエルジャパン(株)製)等の冠称名染料が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、分散型塩基性染料、分散染料を用いることもできる。本発明の効果を阻害しない範囲内の少量であれば他の染料を併用してもよい。
【0031】
【実施例】以下本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法によって求めた。
A.ポリエステルの極限粘度 [η]
オルトクロロフェノール溶液とし、25℃で求めた。
B.ポリエステル中のジプロピレングリコールの定量VARIAN社UNITYINOVA600型を用いて、1H−NMRを測定 し、得られるシグナルの積分比から定量した。
C.ポリエステル中のアリカリ金属の定量ポリエステルを湿式分解し、原子吸光法によって定量した。
D.ヤング率、強度、伸度東洋ボールドウィン社製テンシロン引張り試験機を用いて試長20cm、引張り速度10cm/分の条件で応力−歪み曲線から値を求めた。
E.伸長弾性回復率試料を自記記録装置付定速伸長形引張試験機を用い、1.11dtex当たり1/30gの初荷重をかけた状態で20cmのつかみ間隔に取り付け、引張速度をつかみ間隔の10%にして所定の伸度まで引き伸ばす。直ちに、同じ速度で除重し、記録した応力ー歪曲線から、所定の伸度までの一定伸びをα、応力が初荷重と等しくなるまで低下した回復伸びをβとすると下式で求められる。
【0032】伸長弾性回復率(%)=β/α×100F.染色性の評価得られたポリエステル繊維を2本引き揃えて24ゲージ天竺筒を作製し、”サンデット”G−29(三洋化成(株)製)2g/l、ソーダ灰5g/l、”デトロール”WR−14(明成化学工業(株)製)2g/lを含む処理浴中で精練を行い染色試料布帛とした。さらに上記染色試料布帛を、塩基性染料Malachite Greenシュウ酸塩 5%owf、助剤として酢酸(80%) 0.5cc/lの浴で110℃で60分間染色した(浴比1:100)。その後冷 却し、編地を取り出しソーピングした後、水洗風乾し、次式により染料吸尽率 を求めた。染色性は、染料吸尽率が高いほど良好である。
【0033】染料吸尽率=(染色前の染液の617.2nmの吸光度−染色後の染液の617.2nmの吸光度)/染色前の染液の617.2nmの吸光度×100実施例1ジメチルテレフタレート87.1重量部、脂肪族ジカルボン酸成分としてアジピン酸ジメチル4.2重量部、塩基性染料染着座席成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル2.86重量部、1,3−プロパンジオール73.4重量部とをエステル交換反応触媒として、テトラブチルチタネート0.02重量部、アルカリ金属化合物として酢酸リチウム2水和物0.2重量部を用い、140〜230℃まで撹拌しながら4時間かけて昇温し、エステル交換反応を終了し、着色防止剤としてリン酸0.03重量部、テトラブチルチタネート0.05重量部を添加した。次いで、減圧下、温度250℃で重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。この時の諸条件および得られたポリエステル特性を表1,2に示した。
【0034】得られたポリエステルを乾燥後、通常の溶融紡糸法により紡糸温度260℃にて孔径0.3mmφ×24孔の口金を用い、紡糸引き取り速度1800m/分で紡糸を行い、未延伸を得た。得られた未延伸糸を通常のホットロール延伸機を用いて、1HR60℃、2HR90℃、延伸比3.1倍で延伸して、83dtex24フィラメントの延伸糸を得た。紡糸時(24時間)の濾過圧上昇も認められず、糸切れもなかった。得られた繊維特性を表2に示した。強度2.6cN/dtex、ヤング率23.8cN/dtex、弾性回復率95%、染料吸尽率91%と、強度、ストレッチ性、染色性の良好な繊維を得た。
【0035】比較例1塩基性染料染着座席成分、脂肪族ジカルボン酸成分のいずれも使用せず、さらに酢酸リチウムを添加しないこと以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルおよび繊維を得た。この時の諸条件および得られたポリエステル、繊維特性を表1,2に示した。得られた共重合ポリエステル繊維は、強度、弾性回復性は良好なものの、塩基性染料の吸尽率が極めて低く、染色後の繊維を水洗すると塩基性染料が洗い出され、染色性に劣るものであった。
【0036】実施例2〜11,比較例2〜4共重合成分の種類および量、アリカリ金属化合物の種類および量を変更した以外は、実施例と同様の方法でポリエステルおよび繊維を得た。この時の諸条件および得られたポリエステル、繊維特性を表1,2に示した。実施例2〜11は、いずれも本発明の範囲内で、得られた共重合ポリエステル繊維の強度、ヤング率、弾性回復率、染色性ともに良好であった。
【0037】一方、比較例2〜4は、本発明の範囲外であり、ポリエステル繊維特性に劣るものであった。また、比較例4は紡糸時(24時間)の濾圧上昇(4.9MPa)が激しく、糸切れも多発した。
【0038】比較例5ジメチルテレフタレート93.5重量部、脂肪族ジカルボン酸成分としてアジピン酸ジメチル4.5重量部、塩基性染料染着座席成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル3.1重量部、エチレングリコール64重量部とをエステル交換反応触媒として、テトラブチルチタネート0.02重量部、アルカリ金属化合物として酢酸リチウム2水和物0.2重量部を用い、140〜230℃まで撹拌しながら4時間かけて昇温し、エステル交換反応を終了し、着色防止剤としてリン酸0.03重量部、テトラブチルチタネート0.05重量部を添加した。次いで、減圧下、温度280℃で重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。この時の諸条件および得られたポリエステル特性を表1,2に示した。
【0039】得られたポリエステルを乾燥後、通常の溶融紡糸法により紡糸温度290℃にて孔径0.3mmφ×24孔の口金を用い、紡糸引き取り速度1800m/分で紡糸を行い、未延伸を得た。得られた未延伸糸を通常のホットロール延伸機を用いて、1HR85℃、2HR120℃、延伸比3.1倍で延伸して、83dtex24フィラメントの延伸糸を得た。紡糸時(24時間)の濾過圧上昇も認められず、糸切れもなかった。得られた繊維特性を表2に示した。強度3.5cN/dtex、ヤング率84cN/dtex、弾性回復率55%、染料吸尽率60%と、ヤング率が高く、ストレッチ性、染色性に劣っていた。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【発明の効果】本発明によって得られる繊維は、高強度、高弾性回復性(ストレッチ性)を有し、塩基性染料の染色性に優れ、スポーツ衣料、インナー衣料等に好適で、さらに他の繊維との混繊・混用等の用途に適する。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成12年3月7日(2000.3.7)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−254228(P2001−254228A)
【公開日】 平成13年9月21日(2001.9.21)
【出願番号】 特願2000−61525(P2000−61525)