| 【発明の名称】 |
ポリフェニレンサルファイド繊維および工業用織物 |
| 【発明者】 |
【氏名】山上 隆之
【氏名】木下 明
【氏名】山田 廣徳
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| 【要約】 |
【課題】高強度でかつ屈曲耐久性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維、特にPPSモノフィラメント、およびこれを用いた工業用織物を提供する。
【解決手段】本発明のPPSモノフィラメントは、JIS−L1013−7.5の規定に準じて測定した引張強度が3.0CN/dtex以上で、かつJIS−L1095−7.10.2Bに規定の屈曲摩耗試験により測定した繊維が切断するまでの往復摩耗回数が5500回以上であることを特徴とし、炭酸カルシウムを0.01〜2.0重量%含有するポリフェニレンサルファイド組成物からなる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 JIS−L1013−7.5の規定に準じて測定した引張強度が3.0CN/dtex以上で、かつJIS−L1095−7.10.2Bに規定の屈曲摩耗試験により測定した繊維が切断するまでの往復摩耗回数が5500回以上であることを特徴とするポリフェニレンサルファイド繊維。 【請求項2】 炭酸カルシウムを0.01〜2.0重量%含有するポリフェニレンサルファイド組成物からなることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンサルファイド繊維。 【請求項3】 前記炭酸カルシウムの平均粒子径が0.05〜5μmであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリフェニレンサルファイド繊維。 【請求項4】 前記繊維が直径50〜2500μmのモノフィラメントであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリフェニレンサルファイド繊維。 【請求項5】 織物を構成する緯糸および/または経糸の少なくとも一部が、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリフェニレンサルファイド繊維からなることを特徴とする工業用織物。 【請求項6】 前記織物が、抄紙ドライヤーキャンバス、サーマルボンド法不織布熱接着工程用ネットコンベア、および乾燥機または熱処理機内搬送用ベルトおよびフィルターから選ばれたいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の工業用織物。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、高強度でかつ屈曲耐久性に優れたポリフェニレンサルファイド繊維、特にモノフィラメントおよびこのポリフェニレンサルファイド繊維を使用した抄紙ドライヤーキャンバス、サーマルボンド法不織布熱接着工程用ネットコンベア、乾燥機または熱処理機内搬送用ベルトおよびフィルターなどの工業用織物に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ポリフェニレンサルファイド(以下、PPSという)は、耐熱性と耐薬品性に優れたポリマであることから、これらの特性を必要とする工業用部品、繊維、工業用織物、フィルム、シートおよびプレートなどの各種成形品として広く用いられてきた。 【0003】しかしながら、PPSからなる繊維、特にモノフィラメントは、繰り返し屈曲と擦過を受けた時の耐摩耗性の点や、工業用織物に製織する時に経糸が繊維軸方向に割れやすい点などの屈曲耐久性に問題があり、特に、PPSモノフィラメントの場合は引張強度を高くするほど屈曲耐久性が著しく低下する傾向があることから、従来からこの点の改善がしきりに求められていた。 【0004】従来知られているPPSモノフィラメントの屈曲耐久性改善手段としては、PPSモノフィラメントの製糸時での延伸や熱セット工程において、PPSの融点以上を含む高温で短時間熱処理する方法(特開平4−222217号公報)があるが、この方法では適性な条件が取りにくく、生産性が低いばかりか、十分な屈曲耐久性向上効果が得られないという問題を有していた。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した従来技術における問題点を解決するために検討した結果なされたものであり、これまで高強度化により低下していた屈曲耐久性を大幅に改善したPPSモノフィラメントなどの繊維およびこの繊維を使用した抄紙ドライヤーキャンバス、サーマルボンド法不織布熱接着工程用ネットコンベア、乾燥機、熱処理機内搬送用ベルトおよびフィルターなどの各種工業用織物の提供を目的とするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明のPPSモノフィラメントは、JIS−L1013−7.5の規定に準じて測定した引張強度が3.0CN/dtex以上で、かつJIS−L1095−7.10.2Bに規定の屈曲摩耗試験により測定した繊維が切断するまでの往復摩耗回数が5500回以上であることを特徴とし、かかる特性を満たすには、炭酸カルシウムを0.01〜2重量%含有するポリフェニレンサルファイド組成物からなることを必須の要件とする。 【0007】なお、本発明のPPSモノフィラメントにおいては、前記炭酸カルシウムの平均粒子径が0.05〜5μmであること、および前記繊維が直径50〜2500μmのモノフィラメントであることが好ましい条件であり、これらの条件の適用によって、一層優れた効果の取得を期待することができる。 【0008】また、本発明の工業用織物は、織物を構成する緯糸および/または経糸の少なくとも一部が、上記のポリフェニレンサルファイド繊維からなることを特徴とし、これら工業用織物の具体例としては、抄紙ドライヤーキャンバス、サーマルボンド法不織布熱接着工程用ネットコンベア、および乾燥機または熱処理機内搬送用ベルトおよびフィルターから選ばれたいずれかが挙げられる。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。 【0010】本発明の繊維を構成するPPSとは、ポリマの繰り返し単位の90%以上がp−フェニレンサルファイドからなるポリマであり、工業的には、p−ジクロルベンゼンに硫化ナトリウムを重縮合反応させて得ることができる。また、p−ジクロルベンゼンの10モル%未満のトリクロルベンゼンを分岐成分として共重縮合させたポリマであってもよい。 【0011】PPSのメルトフローレート(以下、MFRという)は、5〜500g/10分の範囲のものを使用することができる。ここでいうMFRとは、ASTM D1238−86に準拠して、温度:316℃、オリフィス径2.095mm、オリフィス長さ:8.00mm、荷重:5Kgの条件にて測定したものであり、10分当りの流出ポリマ量(g)で表される値である。 【0012】PPSは、通常粉末で得られるポリマであるが、溶融紡糸に供する前に、エクストルダーなどで粉末PPSを融点以上の温度に加熱して溶融・混練した後に、必要に応じてフィルター類でろ過して異物を取り除き、ガット状に押し出して冷却後カッティングするなどの方法により、ペレット状に加工して用いることができる。 【0013】また、PPS粉末あるいはPPSペレットからオリゴマー類を除去する目的で、溶融紡糸などの成形に供する前に、PPS粉末あるいはPPSペレットを、概ね100〜180℃で1〜24時間、減圧下で乾燥して用いることが好ましい。 【0014】本発明の高強度でかつ屈曲耐久性に優れたPPS繊維は、特定の平均粒子径を有する炭酸カルシウムを特定量含有するPPS組成物を溶融紡糸に供することによって得ることができる。 【0015】本発明のPPS繊維における炭酸カルシウムの平均粒子径および添加量は任意に設計することができるが、平均粒子径が0.05〜5μm、特に0.1〜2μm、PPSに対する添加量が0.01〜2.0重量%、特に0.05〜1.5重量%の範囲であることが好ましく、この範囲であれば、目的とする高強度かつ優れた屈曲耐久性の特性を十分に満たすことができる。 【0016】すなわち、炭酸カルシウムの平均粒子径および添加量が上記の範囲未満では、屈曲耐久性が十分に向上せず、またこれらが上記の範囲を越えると、引張強度および製糸性の低下が招かれることになる。 【0017】なお、使用する炭酸カルシウムの平均粒子径の調整に当っては、平均粒子径の異なる2種以上の炭酸カルシウムを混合することもできる。 【0018】本発明のPPS繊維中における炭酸カルシウムは、PPSの末端基などとは反応せずに、均一に分散した形で存在しているものと考えられる。 【0019】本発明のPPS繊維は、モノフィラメントの他に、マルチフィラメント、不織布、ステープルファイバーおよび綿状などの形態を包含するものである。また、繊維の形態としては、単一構造の他に、芯鞘複合糸、海島型複合糸、バイメタル複合糸および多層複合糸などの種々の形態を含むものである。 【0020】本発明のPPS繊維は、直径50〜2500μmのモノフィラメントである場合に最良の効果を発揮する。 【0021】モノフィラメントに代表される本発明のPPS繊維の繊維軸方向に垂直な断面の形状(以下、断面形状もしくは断面という)としては、円、扁平、正方形、半月状、三角形、5角以上の多角形、多葉状、ドッグボーン状、繭型などが挙げられ、いかなる断面形状を有するものであってもよい。 【0022】本発明のPS繊維、特にPPSモノフィラメントを工業用織物の構成素材として用いる場合には、モノフィラメントの断面形状が円もしくは扁平の形状であることが望ましい。特に、PPSモノフィラメントを抄紙用ドライヤーキャンバスの経糸として使用する場合には、防汚性を有効に発現させることと、キャンバスの平坦性という観点から、PPSモノフィラメントの断面形状が扁平であることが望ましいい。 【0023】本発明における扁平とは、楕円、正方形もしくは長方形のことであるが、数学的に定義される正確な楕円、正方形もしくは長方形以外に、概ね楕円、正方形もしくは長方形に類似した形状、例えば正方形および長方形の4角を丸くした形状を含むものである。また、楕円の場合には、この楕円の中心で直角に交わる長軸の長さ(LD)と短軸の長さ(SD)とが、正方形もしくは長方形の場合には、長方形の長辺の長さ(LD)と短辺の長さ(SD)とが、いずれも式1.0≦(LD)/(SD)≦10を満足する関係にあることが好ましい。 【0024】ここで、PPSモノフィラメント断面の重心を通る線分の長さは、用途によって適宜選択することができるが、なかでも50〜2500μmの範囲にあることが好ましい。 【0025】本発明のPPS繊維の製造は、公知の溶融紡糸方法を採用することができる。例えば、PPSモノフィラメントは、原料であるPPSチップと、所定量の炭酸カルシウム粉末またはPPSに炭酸カルシウムを高濃度に添加したマスターバッチとを、エクストルダーに供給しながら混練し、ついでエクストルダの先端部に設置したポリマ流線入替器、濾過層などを経て紡糸口金より押出し、冷却・延伸・熱セットを行う方法などにより製造することができる。 【0026】本発明の工業用織物とは、本発明のPPS繊維、特にPPSモノフィラメントを、織物の緯糸および/または経糸の少なくとも一部に使用したものであり、それらの具体例としては、抄紙ドライヤーキャンバス、サーマルボンド法不織布、熱接着工程用ネットコンベア、乾燥機または熱処理機内搬送用ベルトおよび各種フィルターなどが挙げられる。そして、これらの工業用織物は、屈曲耐久性が優れるという有用な特性を発揮するものである。 【0027】ここで、抄紙ドライヤーキャンバスとは、平織り、二重織および三重織など様々な形態の織物(相前後する緯糸と緯糸とがスパイラル状の経糸用モノフィラメントによって織継がれたスパイラル状織物を含む)として、抄紙機のドライヤー内で紙を乾燥させるために使用される織物のことである。また、不織布の熱接着工程用ベルト布とは、不織布を構成する低融点のポリエチレンのような熱接着性繊維を融着させるために、不織布を炉中に通過させるための織物であり、平織り、二重織などの形態の織物である。さらに、乾燥機または熱処理機内搬送用ベルトとは、各種半製品の乾燥、熱硬化、殺菌。加熱調理のなどのために高温ゾーン内において半製品を搬送する織物のことである。さらにまた、各種フィルターとは、高温の液体、気体、粉体などをろ過する織物のことである。 【0028】 【実施例】本発明の繊維の好ましい形態の一つであるPPSモノフィラメントについて、以下に実施例を挙げてさらに詳細に説明する。 【0029】なお、実施例におけるモノフィラメントの屈曲耐久性の尺度となる屈曲摩耗切断回数、および引張強度の測定は次の方法で行なったものである。 1.屈曲摩耗切断回数の測定JIS L−1095−7.10.2Bに規定の屈曲摩耗試験に準じて、固定されたφ3mmの摩擦子の上に接触させたモノフィラメントを、該摩擦子の左右各55度の角度で斜め下に設けたフリーローラー2個の下に掛け、別の1個のフリーローラーの上を介して該モノフィラメントの一端に、モノフィラメント1d当たり0.2gの荷重をかけてセットする。このモノフィラメントを往復回数105回/分、往復ストローク20mmの条件で摩擦子に接触往復させて、同一試料につき各10本のモノフィラメントについて、夫々切断するまでの往復摩耗回数を測定し、その平均値を求めた。この平均値が大きいほど屈曲耐久性が良好なことを表す。 2.引張強度(CN/dtex)の測定JIS L1013 7.5項に準じて測定した。 3.製糸時の糸切れ状態を観察し、糸切れが生じない場合を○、糸切れが頻発した場合を×として評価した。 [実施例1]PPSペレットとして、MFRが 70g/10分のペレット(以下、MFR70という)およびMFRが130g/10分のペレットを(以下、MFR130という)用意した。 【0030】150℃で10時間、減圧乾燥した100%のMFR130と、このMFR130に平均粒子径が0.5μmの炭酸カルシウムを添加したマスターバッチとを、PPSに対して炭酸カルシウムが0.5重量%の添加量になるように計量しながら、φ40mmの1軸エクストルダーに連続供給し、320℃で約2.5分間混練した溶融ポリマをギアポンプを経て、紡糸パック内の濾過層を通して、円形断面糸用紡糸口金より繊維状に押し出し、80℃の温水で冷却した。次いで、冷却糸条を100℃の湿熱雰囲気中で3.8倍に第1段延伸を行ない、160℃の熱風中で1.22倍に第2段延伸し、次いで、140℃で1.00倍に緊張熱処理することにより、直径0.40mmの円形断面を有するPPSモノフィラメントを得た。 【0031】得られたPPSモノフィラメントの引張強度、屈曲耐久性および製糸性の評価結果を表1に示した。 [実施例2]実施例1において、炭酸カルシウムの添加量を0.1重量%に変更した以外は、同様にして得られたPPSモノフィラメントの評価結果を表1に併記した。 [比較例1]実施例1において、炭酸カルシウムの添加量を4.0重量%に変更した以外は、同様にして得られたPPSモノフィラメントの評価結果を表1に併記した。 [比較例2]実施例1において、炭酸カルシウムの添加を省略した以外は、同様にして得られたPPSモノフィラメントの評価結果を表1に併記した。 [実施例3〜4]実施例1〜2におけるMFR130をMFR70に変更した以外は、同様にして得られたPPSモノフィラメントの評価結果を表1に併記した。 [比較例3]実施例3において、炭酸カルシウムの添加量を4.0重量%に変更した以外は、同様にして得られたPPSモノフィラメントの評価結果を表1に併記した。 [比較例4]実施例3において、炭酸カルシウムの添加を省略した以外は、同様にして得られたPPSモノフィラメントの評価結果を表1に併記した。 [比較例5]実施例1において、炭酸カルシウムの平均粒子径を0.01μmに変更した以外は、同様にして得られたPPSモノフィラメントの評価結果を表1に併記した。 [比較例6]実施例1において、炭酸カルシウムの平均粒子径を8.0μmに変更した以外は、同様にして得られたPPSモノフィラメントの評価結果を表1に併記した。 【0032】 【表1】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜2および3〜4の本発明の炭酸カルシウムを含有するPPSモノフィラメントは、炭酸カルシウム無添加のPPSモノフィラメント(比較例2,4)に比べて、高強度化による屈曲耐久性の低下が極めて少ない。また、炭酸カルシウムの添加量が多くなると(比較例1,3)、引張強度および製糸性の低下が招かれる。 [比較例7]実施例1において、炭酸カルシウムを、平均粒子径が0.4μmの酸化チタンに変更した以外は、同様にして得られたPPSモノフィラメントの評価結果を表2に示した。 [実施例5]実施例1において、炭酸カルシウムと共に、平均粒子径が0.4μmの酸化チタンを00.5重量%添加した以外は、同様にして得られたPPSモノフィラメントの評価結果を表2に併記した。 【0033】 【表2】
表2の結果から明らかなように、添加剤として炭酸カルシウム以外の無機物質(酸化チタン)を使用したPPSモノフィラメントの場合(比較例7)は、屈曲耐久性の向上効果が認められないが、この酸化チタンと炭酸カルシウムを併用添加した場合(実施例5)には、屈曲耐久性の向上効果が認められる。 【0034】 【発明の効果】以上説明したように、本発明のPPS繊維、特にPPSモノフィラメントは、高強度化による屈曲耐久性の低下を効果的に抑制して、高強度でかつ屈曲耐久性に優れるという従来にない特性を発揮することから、抄紙ドライヤーキャンバス、サーマルボンド法不織布熱接着工程用ネットコンベア、乾燥機または熱処理機内搬送用ベルトおよびフィルターなどの工業用織物としてきわめて有用である。 【0035】したがって、本発明によれば、これまで屈曲耐久性の低下のために制約のあったPPS繊維の、抄紙用ドライヤーキャンバスなどの工業用織物用途に対する性能設計の範囲を広げることが可能であり、しかもこれら工業用織物用途における大幅な性能向上を期待することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000219288 【氏名又は名称】東レ・モノフィラメント株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年3月7日(2000.3.7) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100093665 【弁理士】 【氏名又は名称】蛯谷 厚志
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| 【公開番号】 |
特開2001−254227(P2001−254227A) |
| 【公開日】 |
平成13年9月21日(2001.9.21) |
| 【出願番号】 |
特願2000−61308(P2000−61308) |
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