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【発明の名称】 有機物機能素子デバイスの製造方法、及びそれにより得られる有機物機能素子デバイス
【発明者】 【氏名】堀内 一永

【氏名】丸山 達哉

【氏名】岡田 興昌

【氏名】清水 正昭

【要約】 【課題】低コストで、簡易な有機物機能素子デバイスの製造方法及びそれにより得られる有機物機能素子デバイスを提供すること。

【解決手段】電解重合物質を含む溶液(図示せず)と接触し、且つ微小間隙を有する電極対12に電圧を印加させ、該電極10における微小間隙部位14及びその近傍のみに、電解重合物質を電解により選択的に重合させて、電解重合生成物16を析出或いは堆積させることを特徴とする有機物機能素子デバイスの製造方法及びそれにより得られる有機物機能素子デバイスの製造方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電解重合物質を含む溶液と接触し、且つ微小間隙を有する電極対に電位を印加させ、該電極における微小間隙部位及びその近傍のみに、電解重合物質を電解により選択的に重合させて、電解重合生成物を析出或いは堆積させることを特徴とする有機物機能素子デバイスの製造方法。
【請求項2】 電極対における微小間隙幅L(m)が、L≦10-4であることを特徴とする請求項1に記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【請求項3】 電極対に、交番電位を印加することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【請求項4】 交番電位における正負両電位の印加時間が、それぞれ異なることを特徴とする請求項3に有機物機能素子デバイスの製造方法。
【請求項5】 交番電位における正負両電位の振幅が、それぞれ異なることを特徴とする請求項3又は4に記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【請求項6】 交番電位の周波数H(Hz)と、電極対における微小間隙幅L(m)と、の関係が、L×H≦10を満たすことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【請求項7】 電極におけるの微小間隙部位の少なくとも一部が、絶縁性被膜で覆われてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【請求項8】 電極におけるの微小間隙部位の少なくとも一部が、電荷輸送性被膜で覆われてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【請求項9】 電極対の少なくとも一方を、微小間隙を保持させつつ、移動させることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【請求項10】 電極対が、一つの絶縁体上に設けられてなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【請求項11】 3つ以上の電極相互間で形成される任意の電極対に、同時或いは非同時に電位を印加することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【請求項12】 請求項1〜11のいずれかに記載の有機物機能素子デバイスの製造方法により得られることを特徴とする有機物機能素子デバイス。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機物として電解重合物質を原料とし、電解重合法を用いた有機物機能素子デバイスの製造方法、及びそれにより得られる有機物機能素子デバイスに関する。なお、本発明において、有機物機能素子デバイスとは、IC等の電気回路、並びに、それを構成する整流ダイオード、LED、トランジスター、コンデンサー及びレジスタンス等の素子の双方を意味する。
【0002】
【従来の技術】近年、有機物に導電性や半導電性が見出され、シリコン素子に代わる有機物による有機物機能素子デバイスが提案されている。有機物によれば、製造コストも安く、簡単に作製でき、豊富な有機物の種類によれば、従来とは異なる多用な特性をもつデバイスが実現できるようになる。また有機物は、有機分子の集合体としてとらえられることから、将来的な分子単位で制御できる高性能・高密度・高速なデバイスを実現するための基盤技術となるものである。有機物機能素子デバイスとしては、従来無機物で作製されていた機能素子デバイスと同等のものが作製でき、整流ダイオード、LED、トランジスター等が挙げられる。
【0003】従来、シリコンデバイス等の無機物機能素子で用いられたリソグラフィーによる微細加工技術等を有機物機能素子デバイスの作製に使用した場合には、フォトレジストの露光に使用されるレーザーや電子線描画装置、及び露光後のフォトレジストを除去するための大型エッチング装置等が必要であり、デバイスの製作コストが高くなり、エコロジー的にも好ましくない化学廃棄物を多く排出するものであった。そのため、電子回路等の精密デバイスの作製においては、従来にない簡易製作方法を実現することが重要であり、新規物質を用いた革新的なデバイス作製技術の実現が期待されている。
【0004】現在、有機物機能素子デバイスの作製方法には、蒸着法、分子スパッタリング法、溶液キャスティング法、電解重合法等がある。このうち、電解重合法を実現する構成は、電極と電解液といった非常に簡単なもので足り、中学校の学生実験レベル程度の設備でよく、高価な設備を用いなくとも有機物機能素子デバイスに用いられる有機薄膜を作製できる。そして近年では、電解重合法による新規デバイスが提案されており、電解重合法による有機物機能素子デバイスは実質的な応用段階にあるといえる(「導電性ポリマー技術の最新動向」、東レリサーチセンター調査研究部門、東レリサーチサンター発行、1999年等)。
【0005】しかし、電解重合が電解質を含む電解液と電極間の電荷交換を原理とするために、通常の電解重合法では、重合物は電解液と接触する電極全面に形成される。例えば、電解重合法によって容易に作製できる導電性高分子の一つに、ピロールから生成されるポリピロールがあるが、ピロールは通常の場合、酸化過程を経て電解重合されるので、電位が正の電極表面全体に成膜する。逆に還元過程により重合される物質は負の電極表面全体に成膜する。このように通常の電解重合法では、電極表面の局所部位にのみ選択的に重合物を成膜したり、さらに絶縁性物質表面に重合物を成膜したりすることは困難であった。
【0006】例えば、図15に示すように、絶縁性基板28上に配置された一組の電極対12(2つの電極10、10’)を、電解液(図示せず)に浸漬し、電極対12に可変電位電源30により電位を印加することで、電解重合により電解重合生成物16による薄膜を形成しようとする場合、電解液中で露出している一方の電極10面の全てに電解重合による電解重合生成物16が析出あるいは堆積してしまう結果となる。また、正から負あるいは負から正に電位を逆転させて成膜させることも可能であるが、図16に示すように、交番電源18により電位を印加すると、電解液(図示せず)中で露出している両側の電極10面の全てに電解重合による電解重合生成物16が析出あるいは堆積してしまう結果となる。
【0007】絶縁性物質表面に重合生成物を成膜する手法としては、2つの電極間で形成される間隙における絶縁性物質(絶縁性物基板)表面をオクタデシルトリエトキシシラン等で疎水化処理する方法が提案されている(T.Matsue,et,al.J.Chem.Soc.Chem.Comm.,p.1029,1991)。この場合、ピロール分子の疎水性を利用して、疎水化処理した絶縁性基板表面にピロール分子を吸着させて、電解重合生成物を電極対の間隙におけるにも絶縁性基板表面に析出あるいは堆積させようとするものであった。しかしながら、この方法でも図17に示すように、電極10cと、電極10a及び電極10bと、の間(電極対12a、12b)に、それぞれ可変電位電源30により電位を印加すると、電解重合生成物16は、電極10aと電極10bと間の間隙における疎水性処理32をした絶縁性基板28表面だけではなく、電極10a、10b全体に析出或いは堆積してしまうことが明らかであり、絶縁性基板28表面上に限定して重合生成物を作製することは不可能である。また、この技術では電解重合物質と疎水化処理剤と絶縁性基板の材料の組み合わせごとに効果の検討が必要であり、広範な応用性に欠けるものであった。
【0008】また、図18に示すように、基板20上に一組の電極対12(2つの電極10、10’)を設け、該電極対12で形成される間隙近傍のみが開口した絶縁性被膜22で被覆し、電極対12に交番電源18により交番電位を印加すると、2つの電極10、10’間を電解重合による導電性高分子(導電性を有する電解重合化合物16)で接続することができる(特開平5−283410号公報)と報告されている。しかしながら、この方法では電極対10、10’表面を被覆してかつ間隙を被覆しないという非常に高度な絶縁性被膜22の製作技術が必要であり、シリコンデバイスと同様に高価な微細加工プロセスを必要とするものであった。さらにこの方法では、絶縁性被膜により電解重合部分を限定していることから、長時間の電解液(図示せず)中での使用において絶縁性被膜22が電極10、10’表面から剥離したり、絶縁性被膜22の微細欠陥より電解液が絶縁性被膜22内部へ侵食したりする等の問題点が多く発生し、工業的な応用には不向きであった。
【0009】以上のように、従来の電解重合法による有機物機能素子デバイスの作製過程では、電解重合過程以外のプロセスにリソグラフィー等の高価な微細加工設備等を必要とする場合が多く、必ずしも低価格な作製方法ではなかった。また従来の電解重合法による作製技術によっては、有機物機能素子デバイスの構造や特性の制御を精密に行なうことは困難であり、既存の電解重合法を発展させた新規手法が必要とされていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、低コストで、簡易な有機物機能素子デバイスの製造方法、及びそれにより得られる有機物機能素子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、<1>電解重合物質を含む溶液と接触し、且つ微小間隙を有する電極対に電位を印加させ、該電極における微小間隙部位及びその近傍のみに、電解重合物質を電解により選択的に重合させて、電解重合生成物を析出或いは堆積させることを特徴とする有機物機能素子デバイスの製造方法。
【0011】<2>電極対における微小間隙幅L(m)が、L≦10-4であることを特徴とする前記<1>に記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【0012】<3>電極対に、交番電位を印加することを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【0013】<4>交番電位における正負両電位の印加時間が、それぞれ異なることを特徴とする前記<3>に有機物機能素子デバイスの製造方法。
【0014】<5>交番電位における正負両電位の振幅が、それぞれ異なることを特徴とする前記<3>又は<4>に記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【0015】<6>交番電位の周波数H(Hz)と、電極対における微小間隙幅L(m)と、の関係が、L×H≦10を満たすことを特徴とする前記<3>〜<5>のいずれかに記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【0016】<7>電極におけるの微小間隙部位の少なくとも一部が、絶縁性被膜で覆われてなることを特徴とする前記<1>〜<6>のいずれかに記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【0017】<8>電極におけるの微小間隙部位の少なくとも一部が、電荷輸送性被膜で覆われてなることを特徴とする前記<1>〜<7>のいずれかに記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【0018】<9>電極対の少なくとも一方を、微小間隙を保持させつつ、移動させることを特徴とする前記<1>〜<8>のいずれかに記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【0019】<10>電極対が、一つの絶縁体上に設けられてなることを特徴とする前記<1>〜<9>のいずれかに記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【0020】<11>3つ以上の電極相互間で形成される任意の電極対に、同時或いは非同時に電位を印加することを特徴とする前記<1>〜<10>のいずれかに記載の有機物機能素子デバイスの製造方法。
【0021】<12>前記<1>〜<11>のいずれかに記載の有機物機能素子デバイスの製造方法により得られることを特徴とする有機物機能素子デバイス。
【0022】
【発明の実施の形態】(有機物機能素子デバイスの製造方法)本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法は、電解重合物質を含む溶液と接触し、且つ微小間隙を有する電極対に電位を印加させ、該電極における微小間隙部位のみに、電解重合物質を電解により選択的に重合させて、電解重合生成物を析出或いは堆積させる方法である。以下、図面を参照しつつ、本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法を詳しく説明する。
【0023】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法おいては、微小間隙を有する電極対に電位を印加させると、該特定の微小間隙部位及びその近傍においてのみ、電解による電解重合物質の重合反応が選択的に進行し、電解重合生成物が析出或いは堆積する。これにより、電極対における微小間隙部位以外の電極表面、隣接電極表面及びその近傍に電解重合生成物が析出或いは堆積することなく、電極における微小間隙部位及びその近傍のみに、選択的に電解重合生成物の膜を形成させることができ、精度の高い有機物機能素子デバイスを、低コストで、簡易に製造することができる。なお、印加する電位を、直流或いは交流から選択することで、一方の電極における微小間隙部位及びその近傍においてのみ、電解重合生成物を析出或いは堆積させたり、双方の電極における微小間隙部位及びその近傍に電解重合生成物を析出或いは堆積させたりすることができる。
【0024】具体的には、例えば、図1に示すように、2つの電極10(八角形)を、その互いの一辺が所定の微小間隙を有するように配置した電極対12用いて、これに交番電源18により電位を印加することで、該双方の電極10における微小間隙部位14のみに、電解重合生成物16が析出或いは堆積される。なお、電極10は交番電源18を介して電気的に接続されており、また、図示しないがその周辺は、電解重合物質を含む溶液で満たされている。以下、各図において同じの符号が付してある場合は、相互に同様の機能を有する部材を示し、その説明を省略する。また、電解重合物質を含む溶液は図示しないが、電極対及びその周辺は、電解重合性物質を含む溶液で満たされている。
【0025】このように、特定の微小間隙部位においてのみ、電解による電解重合物質の重合反応が選択的に進行する理由は定かではないが、微小間隙の微細形状による局所的な表面積増加に伴う電荷交換能の増大、微小間隙における電界の集中、或いは微小間隙による物理的な電解重合物質等の物質移動の抑制(閉じ込め)、等が生じるため、微小間隙内部での優先的な電解重合反応が起こるためと推測される。
【0026】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法おいて、電極対における微小間隙とは、2つの電極相互間で形成される間隙を示す。また、既に析出或いは堆積した電解重合生成物が導電性を有する場合、これは電極の一部として機能するため、電解重合生成物相互間又は電解重合生成物と電極との相互間で形成される間隙が、微小間隙となる。また、電極における微小間隙部位とは、微小間隙を形成する電極表面、又は既に析出或いは堆積した電解重合生成物表面を示す。
【0027】微小間隙の幅L(m)は、L≦10-4であることが好ましく、より好ましくは10-8≦L≦5×10-5、さらに好ましくは10-8≦L≦2×10-5である。この微小間隙幅L(m)が、L>10-4であると、本発明で意図するところの微小間隙の機能を果たし得ない場合があり、電極における微小間隙部位以外に、電解重合生成物が析出或いは堆積し、微小間隙部位及びその近傍のみ選択的に、電解重合生成物が析出或いは堆積しないことがある。ここで、微小間隙幅L(m)とは、微小間隙における最短幅を示す。また、電解重合生成物が析出或いは堆積し、電解重合生成物が互いに或いは対向する電極と一部接触しても、微小間隙が存在すれば、電解重合反応はさらに進行すると推測される。なお、電解重合生成物が導電性を有する場合、電解重合生成物が互いに接触或いは対向する電極と接触し、その作用が電極対間の電位差を消失させるまで至ると、電解重合反応は終了すると推測される。
【0028】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法おいては、電極対に、交番電位を印加することが好ましい。電極対に、正と負に交番する電位を印加することで、電解重合生成物が析出或いは堆積し易い電極極性を、断続的に両側の電極に印加するこができる。このため、いずれか一方の電極に偏在させることなく、双方の電極における微小間隙部位に電解重合生成物を析出或いは堆積させることが可能であり、欠陥の少ない有機物機能素子デバイスを得ることができる。具体的には、例えば、図2に示すように、基板20上に設けられた、双方の電極10における微小間隙部位14に、均等に電解重合生成物16を析出或いは堆積させることができる。
【0029】また、電極対に、正と負に交番する電位を印加することで、電極における微小間隙部位に、より効果的に電解重合生成物を析出或いは堆積させることが可能となる。これは、イオン性物質或いは電解により生成された活性分子等が、正と負に交番する電位の極性反転に伴って反転運動するようになる。そして、この反転運動には微小間隙における電解液中のイオン性物質或いは電解により生成された活性分子等を微小間隙内部に閉じ込める作用があり、さらには微小間隙近傍において活性化した電解液中のイオン性物質或いは電解により生成された活性分子等を微小間隙内部に引き込む作用があることから、電極における微小間隙部位に、より効率的に電界重合生成物を析出或いは堆積させることができると推測される。
【0030】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法おいて、交番電位における正負両電位の印加時間は、それぞれ異なるように設定することができる。また、交番電位における正負両電位の振幅が、それぞれ異なるように設定することができる。例えば、図3に示すように、正の電位を印加する時間t1に対して、負の印加する時間t2を短く設定することができる。また、例えば、図4に示すように、正に印加する電位Vaに対し、負に印加する電位Vbを大きく設定することができる。なお、便宜上、「正」及び「負」との表現を用いたが、電極対のいずれの電極を正、或いは負としてもよい。
【0031】このように、交番電位における正負両電位の印加時間及び/又は振幅を、正負両電位間で、それぞれ異なるように適宜設定することで、電解重合生成物の析出量或いは堆積量を、2つの電極における微小間隙部位間で異なるようにすることができ、微小間隙内部において、対称系から非対称系まで自由な形状の電解重合生成物の構造体(析出物或いは堆積物)を形成することができる。この微小間隙内部における電解重合生成物の構造体の形状制御を行うことで、電解重合生成物の有機機能素子化及びそのデバイス化における、所望の形状と電気特性を有する電解重合生成物を、電解重合法により容易且つ直接的に作製可能となる。具体的には、例えば、図5(a)に示すように、非対称系構造の電解重合生成物16を析出或いは堆積させることができるし、図5(b)に示すように、複数個の凸部を有する構造の電解重合生成物16を析出或いは堆積させることもできる。
【0032】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法おいて、交番電位の周波数H(Hz)と、電極対における微小間隙幅L(m)と、の関係は、L×H≦10を満たすことが好ましく、より好ましくはL×H≦1、さらに好ましくはL×H≦0.5を満たすことである。交番電位の周波数H(Hz)は、電解重合生成物の析出或いは堆積部位、即ち、電極における微小間隙部位に対して強い相関関係があり、この交番電位の周波数H(Hz)と電極対における微小間隙幅L(m)との積が10を超えると、電界重合生成物は電極近傍に留まらずに電解液全体に拡散することがあり、好ましくない。これは、交番電位の周波数H(Hz)が大きくなるにつれて、上述した反転運動の周期も速くなり、電解液中の物質が、その反転周期に追随し難くなり、その結果、活性化した電解重合物質を、微小間隙内部に閉じ込める或いは引き込む働きが弱くなり、電極における微小間隙部位のみに電解重合生成物の析出或いは堆積が困難になると推測される。
【0033】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法おいて、電極における微小間隙部位の少なくとも一部は、絶縁性被膜で覆うことができる。この絶縁性被膜は、該絶縁性被膜表面での電解重合物質との電荷交換を抑制するため、電解重合物質の電解による重合反応を抑制することができる。このため、微小間隙部位における任意の部位に絶縁性被膜を覆うことで、微小間隙部位における露出する表面、即ち電解重合生成物の析出或いは堆積させる部位を任意に選択することができる。具体的には、例えば、図6に示すように、電極10における微小間隙部位に所定の間隔で、絶縁性被膜22を設けることで、露出した微小間隙部位のみに電解重合生成物16を析出或いは堆積させることができる。
【0034】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法おいて、電極におけるの微小間隙部位の少なくとも一部は、電荷輸送性被膜で覆うことができる。この電荷輸送性被膜は、電極から供給される電荷のうち、正或いは負のいずれかの電荷のみを輸送することから、電極に印加される電位極性にかかわらず、電荷輸送性被膜被膜表面での、電解重合物質との電荷交換は、正或いは負に限定される。例えば、電荷輸送性被膜の極性と、電解重合物質の電荷交換の極性とを異なるようにすることで、電荷輸送性被膜を覆った部位では、電解重合生成物の析出或いは堆積を抑制させることができる。また、電荷輸送性被膜の極性と、電解重合物質の電荷交換の極性とを一致させることで、電荷輸送性被膜を覆った部位では、より優先的に、電解重合生成物の析出或いは堆積させることができる。このため、微小間隙部位における任意の部位に電荷輸送性被膜を覆うことで、電解重合生成物の析出或いは堆積させる部位、即ち微小間隙部位における露出する表面を任意に選択することができる。具体的には、例えば、図7(a)に示すように、電極10における微小間隙部位に所定の間隔で、電解重合物質の電荷交換の極性とを異なる極性の電荷輸送性被膜24を設けることで、露出した微小間隙部位のみに電解重合生成物16を析出或いは堆積させることができる。また、図7(b)に示すように、電極10における微小間隙部位に所定の間隔で、電解重合物質の電荷交換の極性と一致する極性の電荷輸送性被膜24を設けることで、電荷輸送性被膜24を覆った部位のみに電解重合生成物16を析出或いは堆積させることができる。
【0035】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法おいて、絶縁性被膜、電荷輸送性被膜は、組み合わせて用いることもでき、微小間隙部位においてより選択的に電解重合生成物を析出或いは堆積させることができる。
【0036】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法おいて、絶縁性被膜及び電荷輸送性被膜の材料としては、特に制限はないが、加工が容易なポリマーから選択されることが好ましい。また、絶縁性被膜及び電荷輸送性被膜は、印刷、プリント、シール、コーティング等の方法を用いて、電極における微小間隙部位に成膜することができる。さらに絶縁性被膜、電荷輸送性被膜は、電解液等から電極部材の腐食等を防止することができることから、電極における微小間隙部位以外の部位に覆うこともできる。これにより、長期間安定で、再現性の高い有機機能素子デバイスを得ることができる。
【0037】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法おいて、電極対の少なくとも一方は、微小間隙を保持させつつ、移動させることができる。電極対は、一方を移動させてもよいし、双方を移動させてもよいが、この場合、電極に可動機構を備えることが必要である。具体的には、例えば、図8〜10に示すように行うことができる。
【0038】図8に示すように、一方の電極として導電性基板10’と、他方の電極として可動機構を備えた円柱状電極10とを用い(電極対12)、導電性基板10’と円柱状電極10とで微小間隙を形成し、電位を印可させ、さらに該微小間隙幅を保持させつつ、円柱状電極10を導電性基板10’上で移動させることで(例えば、円柱状電極10の軌跡26)、電解重合生成物16の析出或いは堆積による構造体を、導電性基板10’上に軌跡26と同様の形状に形成することができる。
【0039】図9に示すように、電解重合生成物16が導電性を有する場合、一方の電極として可動機構を備えた電極10と他方の電極として固定化された電極10’とを用い(電極対12)、一方の電極10を微小間隙幅方向に移動させながら(例えば、電極10の軌跡26)、電位を印加し、他方の電極10’における微小間隙部位14に電解重合生成物16を析出或いは堆積させることで、連続的で且つ立体的な電解重合生成物16の構造体を得ることができる。この場合、一方の電極10と他方の電極10’との間隔を広げても、電解重合生成物16が他方の電極10’の一部を担うため、実質的に微小間隙を所定の幅に保持し得ることとなる。
【0040】図10に示したように、絶縁性基板28上に、可動機構を備えた電極対12(2つの電極10)を微小間隙を有するように配置し、この電極対12に電位を印加させ、さらに該微小間隙幅を保持させつつ、絶縁性基板28上で移動させることで(例えば、電極対12の軌跡26)、電解重合生成物16の析出或いは堆積による構造体を、絶縁性基板28上に軌跡26と同様の形状に形成することができる。
【0041】このように、電極対の少なくとも一方を、微小間隙を保持させつつ、移動させる際、電極対における微小間隙幅を適宜可変することで、線幅の異なる構造も形成することができる。また、電極対の移動に対して断続的に電位を印加することで、破線等の構造も形成できるようになり、その電位の強度や印加時間を適宜可変することで、濃淡(析出或いは堆積量)も制御することができる。従って、これらを、組み合わせることで、2次元、3次元構造として定義できるかなる構造をも、作製可能である。このため、使用する電極の形状を自由に選択することができ、複数の電極対を同時に作用させることも可能であるため、工業的利用価値が非常に高い。このとき、同じパターンを複数部位に析出或いは堆積させるスタンプのような使用方法、前後左右回転等を組み合わせて、複数部位に析出或いは堆積させるプロッターのような使用方法も可能であり、有機物機能素子デバイスの大型化や大量生産を実現でき、その製造プロセスの自由度も大幅に向上する。
【0042】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法おいて、3つ以上の電極相互間で形成される任意の電極対に、同時或いは非同時に電位を印加することもできる。この場合、1つの電極は、2以上の電極対における一方の電極の機能を担ってもよい。予め複数の電極を所望の位置に配置し、その電極群相互間で形成される任意の電極対に、同時或いは非同時に電位を印加することで、それぞれ独立して電解重合生成物を析出或いは堆積させることができ、電解重合法によっても高度に集積した電子回路等の素子デバイスを容易に作製することができる。具体的には、例えば、図11に示すように、所望の位置に配置た複数の電極10群相互間で形成される任意の電極対12に、電位を印加して、それぞれの電極対に電解重合生成物16を析出或いは堆積させることができる。このとき、電解重合生成物が導電性を有する場合、電解重合生成物によって相互に絶縁されていた電極における任意の電極対を、電気的に接続することができるため、電位を印加する電極対を適宜選択することで、電極の物理的配置を変更することなく、実質的な電極構造を変化させることができる。
【0043】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法おいて、電極対は、一つの絶縁体上に設けることもできる。このように一つの絶縁体上に、所定の微小間隙を有する電極対を設けることで、直接的に絶縁体上に電解重合生成物を析出或いは堆積させることができる。具体的には、例えば、図12(a)に示すように、1つの電気絶縁性物質からなる絶縁性基板28(絶縁体)上に、所定の微小間隙を有するように電極10を設け、隣り合う電極10相互間で形成される任意の電極対12に、電位を印加して、絶縁性基板28上に電解重合生成物を析出或いは堆積させることができる。また、図12(b)は、絶縁性基板28として基板20に絶縁性被膜22を被覆してなるものを用いた場合を示すものであり、その製造プロセスは図12(a)と同様である。
【0044】このような絶縁体は、電気絶縁性物質からなるものでもよいし、電気絶縁性物質で被覆されてなるものであってもよく、その形状は電気回路基板のようにシート状であることが好ましい。このように、絶縁体を、シート状として電気回路基板の役割を担わせることで、IC等の市販素子と複合して、電気回路を作製することができ、より高次元の機能を有す有機物機能素子デバイスを得ることができる。
【0045】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法おいて、電解重合物質を含む溶液は、通常、電解重合物質と電解質とを含む電解液として用いる。電解質の種類によっては、ドーピング・脱ドーピング能を有するため、電解重合物質及び電解質の種類を適宜選択することで、良導体から、半導体、絶縁体まで、幅広い電気特性を有する電解重合生成物を得ることができる。なお、ドーピング・脱ドーピングは、公知の方法で、電解重合生成物を析出或いは堆積させた後、行ってもよい。具体的に、電解重合物質としては、ポリピロール系、ポリチオフェン系、アセチレン系等の、電解重合が可能な公知の化合物が挙げられ、具体的には、例えば、特開平9−123513号公報における段落番号[0027]に記載のものが挙げられる。また、電解質としては、LiBF4、CuCl2、LiClO4等の無機塩;p−トルエンスルホン酸塩、m−ニトロベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;過塩素酸テトラエチルアンモニウム;等が挙げられる。さらに、これら電解質は、無水物に精製されていることが好ましい。
【0046】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法は、電極の材料は、特に制限はなく、金や他の金属、或いは導電性高分子等の導電性物質であればいずれも用いることができる。また、電極の形状も、特に制限はないが、上述のように板状、柱状等、用途に応じで適宜選択することができる。
【0047】本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法は、上述のように良導体から、半導体、絶縁体まで、幅広い電気特性を有する電解重合生成物を製造することができ、さらに必要に応じて、上述した好適な有機物機能素子デバイスの製造方法を適用することで、IC等の電気回路、並びに、それを構成する整流ダイオード、LED、トランジスター、コンデンサー及びレジスタンス等の素子の双方の多機能な有機物機能素子デバイスを、低コストで、簡易に製造することができる。
【0048】具体的には、例えば、トランジスターを作製する場合、図13に示すように、微小間隙を有する電極対を、ソース電極30及びドレイン電極32として構成し、この電極対に電位を印加させ、該微小間隙に導電性を有する電解重合生成物16を析出或いは堆積させる。次に、必要に応じて、電解重合生成物16を脱ドープすることで、半導体化し、前記電極対及び電解重合生成物16上を絶縁性被膜22で覆い、さらに該絶縁性被膜22を介して微小間隙上にゲート電極34を設けることでトランジスターを作製することができる。
【0049】(有機物機能素子デバイス)本発明の有機物機能素子デバイスは、前記本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法により得られるデバイスである。本発明の本発明の有機物機能素子デバイスは、前記本発明の有機物機能素子デバイスの製造方法により得られるデバイスであるため、低価格なデバイスである。
【0050】本発明の有機物機能素子デバイスは、有機物機能素子デバイスそのものであってもよく、上述の電解重合物質と電解質とを含む電解液を具備する構成とすることもできる。電解重合物質と電解質とを含む電解液を具備する構成とすることで、デバイス使用時或いは使用後に、ドーピング・脱ドーピングを行うことができ、析出或いは堆積させた電解重合生成物を、例えば良導体から半導体、半導体から絶縁体、絶縁体から良導体、半導体から良導体等多様な電気特性を制御することができ、ハードウエア特性を多様に変化させることのできる記憶機能、信号変化機能、整流機能等を付与した新規な有機物機能素子デバイスを実現することができる。また、デバイス使用時或いは使用後に、追加して電解重合生成物を析出或いは析出させることもでき、劣化部分の修復を行うことができる。
【0051】
【実施例】以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0052】(実施例1)膜厚約50nmの一組の金電極をPETフィルム(絶縁体)上に20μmの間隔で配置した。即ち、一組の金電極は、膜厚方向同士が対向して、幅20μmの微小間隙を形成している。上記電極対一式を電解重合槽中の電解液に浸漬し、電極対に±5Vの振幅の正弦波周期特性を持つ交番電位を印加して電解重合を行った。電解液はピロール0.06mol、p−トルエンスルホン酸0.1molを含むアセトニトリルとした。ポリピロールは電極におけるピロールの酸化作用により重合されるので、電極対に±5Vの振幅正弦波周期特性を持つ電位を印加することにより、ポリピロールの生成は両電極における微小間隙部位間で交互に起こる。その結果、ポリピロールは両電極における微小間隙部位から交互に成長し、PETフィルム上に膜厚約30nm、電気伝導度約10ジーメンス/cmのポリピロール薄膜(電解重合生成物)が、図2示すように形成された。図14に、電解重合によって電極対における微小間隙のPETフィルム上に形成されたポリピロール薄膜(電解重合生成物)の重合前後における表面凹凸を計測した結果を示す。図14によれば、金電極における微小間隙部位にのみ、選択的に電解重合生成物が生成していることが分かる。これにより、電極を絶縁性物質等で覆うことなく、電極対の絶縁膜上に電解重合物を選択的に成膜することができることがわかる。
【0053】(実施例2)実施例1と同様に、PETフィルム上に配置された金電極対の20μmの微小間隙にポリピロール薄膜を形成する。この電極対に負電位を印加して電気伝導度が10-7ジーメンス/cm程度となるまでポリピロールを脱ドープする。その後、図13に示すようにこの電極対の上に絶縁性ポリマーをスピンコートし、絶縁性被膜22形成し、これを挟んで微小間隙の上にゲート電極34として金を蒸着する。電極対をソース電極30及びドレイン電極32とすると電界効果型トランジスタが作製された。これにより、容易に電界効果型トランジスタとして動作する有機物機能デバイスを作製することができることがわかる。
【0054】これら実施例から、微小間隙を有する相互に絶縁された電極を配置することで、特別な細工を施すことなく、選択的に電極の微小間隙に電解重合反応物を成膜することができることがわかる。これは低コストで、簡易な有機物機能素子デバイスの製造方法の基礎となるものである。
【0055】
【発明の効果】以上、本発明によれば、低コストで、簡易な有機物機能素子デバイスの製造方法及びそれにより得られる有機物機能素子デバイスを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
【出願日】 平成12年5月31日(2000.5.31)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2001−342594(P2001−342594A)
【公開日】 平成13年12月14日(2001.12.14)
【出願番号】 特願2000−163488(P2000−163488)