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水素および硫黄の製造方法 - 特開2001−214288 | j-tokkyo
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【発明の名称】 水素および硫黄の製造方法
【発明者】 【氏名】田島 吉雄

【氏名】水田 美能

【要約】 【課題】硫化水素溶液から効率的に硫黄および水素を製造する方法を提供する。

【解決手段】硫化水素溶液を該溶液中においてプロトン脱離しうる酸化・還元機能を有する遷移金属錯体の存在下に電気分解することによって硫黄と水素を生成させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 硫化水素溶液を電気分解することにより硫化水素溶液から硫黄および水素を製造する方法であって、該電気分解反応が遷移金属錯体の存在下にて行われ、該遷移金属錯体が該溶液中においてプロトン脱離しうる酸化・還元機能を有することを特徴とする硫黄および水素の製造方法。
【請求項2】 硫化水素溶液が、硫化水素含有ガスが供給されることにより得られたものであることを特徴とする請求項1記載の硫黄および水素の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、硫化水素溶液から硫黄および水素を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、水素はクリーンエネルギーとして注目されているが、現在のところナフサの分解により水素を製造する方法が一般的である。しかしながら、ナフサの分解による方法は製造コストが高いという問題点がある。更に、近年水素の需要が弱電、化学、金属、ガラス分野で大幅に伸びており、より効果的な水素の製造方法の確立が求められている。一方、硫化水素を無害化し、価値ある水素を工業的に回収することができれば、環境面と需給面の両面から工業的な価値が極めて大きい。
【0003】硫化水素の分解技術という観点では、典型的なものとして、クラウス法が挙げられる。この方法は硫化水素ガス中の硫化水素を直接酸化して水と硫黄に転換することにより硫黄を回収するものである。硫化水素の他の分解方法としては、熱分解法、熱化学法、電気分解法、光分解法、熱化学法と電気分解法を組あわせたハイブリッド法などが提案されている。しかしながら、従来提案されている分解方法は一長一短があり、現在のところ企業化されているプロセスはない。
【0004】熱接触分解法としては、例えば特開昭50−71593号公報に提案されている方法があり、そこには『該硫化水素をイオウの沸点以上の温度でモリブデン、タングステンおよびルテニウムの中から選ばれた金属の硫化物のすくなくとも1種と接触させて硫化水素、水素およびイオウからなるガス状反応生成物を生成すること』と記載されている。この方法によれば触媒により硫化水素の分解を早めるという利点があるが、硫化水素の熱解離平衡を分解の方向に移動させるため生成物を分離する必要があり、しかも硫化水素、イオウ、水素の混合ガスから純度の高い水素を得るには耐硫化水素性のある分離膜が必要である。さらには分解反応器の耐硫化水素性も要求されかつイオウを除去する際、系を冷却するため熱損失が生じるといった問題点もある。
【0005】熱化学法としては、例えば特表平6−510737号公報に提案されている方法があり、そこには『硫化水素ガスを硫黄錯化剤を含有する水溶液に溶解させたキノンと反応させ、硫黄と、対応するヒドロキノンを生成させ、後者から水素ガスを離脱させてこれをキノンへと復帰させるものである』と記載されている。この方法によれば硫黄を分離する反応は定量的に進むと考えられるが、ヒドロキノンから水素ガスを離脱させる工程で副生成物を生成しキノンの損失が懸念される。
【0006】電気分解法としては、例えば米国特許第3409520号に提案されている方法を挙げることができる。電気分解法は硫化水素の分解のΔG0 (298K)は8kcal/molであり水の電気分解に比較し容易に分解できることや高純度の硫黄(S8 )を回収できる利点があるものの、電極上に生成する硫黄を分離する方法の確立等に問題がある。
【0007】熱化学法と電気分解法を組あわせたハイブリッド法としては、例えば特開昭58−181706号公報に提案されている方法があり、そこには『硫化水素の分解において、硫化水素と3価の鉄イオンを含む鉄塩溶液との反応によってイオウと2価の鉄イオンを含む溶液を生成させ、次いでこの2価の鉄イオンを電気化学的に3価の状態に再生すると同時に水素を発生させる』と記載されている。この方法によれば電解電圧が低いことイオウを分離する際固液分離できるなど長所があるものの、固液分離する際水溶性である鉄塩の損失があり、実用化するには更なる改良が必要である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記したような従来の硫化水素分解方法に指摘される欠点を解消し、簡易な手段で分解可能であるうえに、かつ取扱いが容易で、しかも、従来提案されている方法に比較してエネルギー効率が良好で、副生物が生成せず、高純度の硫黄と共に高収率で水素を製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、硫化水素溶液を電気分解することにより硫化水素溶液中から硫黄および水素を製造する方法であり、該電気分解反応が、遷移金属錯体の存在下にて行われ、該遷移金属錯体が該反応溶液中においてプロトン脱離しうる酸化・還元機能を有することを特徴とする硫黄および水素の製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、特定の遷移金属錯体の存在下、硫化水素溶液を電気分解することにより硫化水素溶液中から硫黄および水素を製造することを特徴とする。かかる遷移金属錯体は、当該反応溶液中においてプロトン脱離しうる酸化・還元機能を有することを必須とする。かかる機能を反応式にて示せば一例として、以下の通りとなる。
【0011】
【数1】

【0012】即ち、この例の場合、プロトン解離可能なリガンドを用い電気エネルギーにより活性化しプロトンを脱離した後、硫化水素溶液中のHS- イオンと錯体とが反応することにより硫黄を分離する。錯体はプロトンキャチャーとして配位し再生される。
【0013】上記からも理解されるように、遷移金属錯体としては酸化・還元機能を有する適宜の錯体を用いることができる。このような遷移金属錯体の金属種としてはRuやOsなどが挙げられる。錯体としては、これらの遷移金属の単核あるいは多核錯体がある。
【0014】また、遷移金属錯体の配位子(リガンド)としては、例えば、2,2’−ビス(ピリジル)−ビベンズイミダゾール基(2,2’−bis(2−pyridyl)−bibenzimidazole)、2,2’−ビス(ベンズイミダゾール−2−イル)−4,4’−ビピリジン基、(2,2’−bis(benzimidazole−2−yl)−4,4’−bipyridine)、6,6’−ビス(ベンズイミダゾール−2−イル)−2,2’−ビピリジン基、(6,6’−bis(benzimidazole−2−yl)−2,2’−bipyridine)、2,2’:4’,4”:2”,2”’−4級ピリジン(2,2’:4’,4”:2”,2”’−quaterpyridine)基などが挙げられる。また、単核錯体を配位子として利用し錯体オリゴマーとし集積したものも用いることもできる。
【0015】具体的な遷移金属錯体の例としては、次のものを例示できる。〔(bpy)2 Ru(bbbpyH2 )Ru(bpy)2 〕(ClO4 4 ・4H2 O,〔(bpy)2 Ru(bbbpyH2 )Ru(bpy)2 〕(ClO4 4 ,〔(bpy)2 Ru(bpbimH2)Ru(bpy)2 〕(ClO4 4 ,〔{Os(bpy)2 (bbbpyH2 )}3 Ru〕(ClO4 8 ,〔(bpy)2 Os(bbbpyH2 )Os(bpy)2 〕(ClO4 4 ,〔Ru(phen)2 (bpbimH2 )Ru(phen)2 〕(ClO4 4・4H2 O,〔Os(bpy)2 (bpbim)Os(bpy)2 〕(ClO4 4 ・4H2O,〔Ru(btfmb)2 (bbbpyH2 )Ru(btfmb)2 〕(ClO44 ・4H2 ここで略記した詳細は以下である。
bpy=2,2’−ビピリジンbbbpyH2 =2,2’−ビス(ベンズイミダゾール−2−イル)−4,4’−ビピリジンbpbimH2 =2,2’−ビス(2−ピリジル)ビベンズイミダゾールbtfmb=4,4’−ビス(トリフルオロメチル)−2,2’−ビピリジンphen=フェニル【0016】なお、遷移金属錯体は硫化水素溶液に溶解していても実質的に不溶の状態でもいずれでもよいが、後者がより好ましい。また、遷移金属錯体を担体、すなわち高分子化合物などに例示される有機単体上、あるいはシリカ、アルミナなどの無機酸化物に例示される無機単体上に、公知の方法により固定化させて用いることもできる。また、遷移金属錯体を電極上に組織化、すなわち電極上に例えば、錯体LB多層膜を形成させて用いることも可能である。その具体例としては長鎖アルキル基を有する錯体から安定なLB膜を電極上に累積させて用いる例が挙げられる。
【0017】本発明における硫化水素溶液は、硫化水素水溶液の他、硫化水素を極性溶媒に溶解した溶液も用いることもできる。かかる極性溶媒としては、硫化水素を溶解しうるものであれば特に制限はなく、例えば、ジエチルアミン、キノリン、アセトフェノン、ピロリドン、ジエチルアセトアミド等が挙げられ、なかでも極性溶媒としてピロリドンが好ましい。
【0018】さらに非水溶媒中とくに硫化水素と錯化合物をつくる極性溶媒中で電気分解を行い硫黄と水素に分解することも可能である。硫化水素溶液における硫化水素の濃度は、特に制限はなく、上限は飽和濃度であり、また、下限は通常硫化水素として10mass%程度が好ましい。
【0019】硫化水素溶液は、硫化水素ガスを溶解したものが一般的であるが、工業的には、連続的または断続的に硫化水素ガスを供給することによって形成される硫化水素溶液が好ましい。電気分解反応における、遷移金属錯体の使用量は溶媒1kgあたり通常0.1〜100g、好ましくは0.5〜10gが望ましい。電解槽は通常のものが使用できる。電極材料としては白金電極などの金属電極、黒鉛電極などの炭素電極、ITO電極などが挙げられる。
【0020】また、正極、負極の間に水素発生を効率化するなどの目的で隔膜を設置してもよい。かかる隔膜としては、特に限定されなく、水素イオン選択透過性を設置し、具体的にはナフィオン膜と称される膜((ナフィオン−125(デュポン社製)やNEOSEPT C66−5T(徳山ソーダ製)など)などが挙げられる。電気分解は、反応温度が通常20〜200℃、好ましくは30〜100℃の範囲で行われる。硫黄および水素が発生しうる条件である限りその他の条件も特に制限はなく、定電流電解、定電位電解のいずれでもよい。電解セル電圧は、通常0.1〜2ボルト、好ましくは0.5〜1.5ボルトであり、電流密度は、50mA/cm2 〜100mA/cm2 程度の範囲が一般的である。
【0021】かくして前記した遷移金属錯体の存在下、硫化水素溶液を電気分解することにより、硫黄が陽極に析出し、陰極から水素が発生する。陽極に析出する硫黄を公知の方法により連続的または断続的に適宜回収することにより硫黄を製造することができ、また陰極近傍から水素を回収することにより高純度の水素を製造することができる。
【0022】
【発明の効果】本発明の製造方法により、高純度の硫黄および高純度の水素が効率的に得られる。遷移金属錯体は、製造時におけるロスがなく工業的にメリットが大きく、電気分解時電圧が低くても反応がたやすく進行するなどの数多くのメリットを有する。
【0023】
【実施例】実施例1〔遷移金属錯体の合成〕Inorganic Chemistry,Vol.30,No.20(1991)3844ページ記載の方法により〔(bpy)2 Ru(bpbimH2)Ru(bpy)2 〕(ClO4 4 を合成した。上記錯体と硫化水素飽和水溶液(PH3.6)との反応を説明すると200mlのガス吸収装置に純水100mlを入れ錯体5gを加えたのち50℃で硫化水素ガスを10分間吹き込んだところ硫黄が析出した。そのときの溶液のPHが3.6であった。このことから、上記錯体が硫化水素飽和水溶液中において酸化・還元能を有することが確認された。
【0024】電解槽として縦、横それぞれ10センチ深さ15センチの槽に純水を1リッター入れ、硫化水素で飽和させた。その時の液のPHは4.1であった。陰極電極として白金電極、陽極電極として黒鉛を用い隔膜としてナフィオン膜を設置した。陽極サイドに上記Ru錯体を5g入れた。50℃で0.8ボルトの条件で電気分解を行い電流密度は100mA/cm2であった。陰極で発生した水素ガスをガスクロマトグラフィーで分析し99%以上の純度であり、電流効率は96%であった。また硫黄純度は99.9mass%であり回収率は99%であった。
【出願人】 【識別番号】000004444
【氏名又は名称】日石三菱株式会社
【出願日】 平成12年1月28日(2000.1.28)
【代理人】 【識別番号】100071755
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 武彦 (外1名)
【公開番号】 特開2001−214288(P2001−214288A)
【公開日】 平成13年8月7日(2001.8.7)
【出願番号】 特願2000−24717(P2000−24717)