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【発明の名称】 ブレージング用フィン材の製造方法
【発明者】 【氏名】土公 武宜

【氏名】川原 晃

【要約】 【課題】高強度、高熱伝導材料の合金であるAl−Ni−Fe系合金からなる薄肉化フィン材の連続鋳造圧延法による製造方法を提供する。

【解決手段】Ni、Fe、Si、Zn、In、Sn、Co、Cr、Zr、Ti、Cu、Mn、Mgのうち1種または2種以上を含有し、残部アルミニウムよりなるアルミニウム合金を、連続鋳造圧延法で鋳造後、冷間圧延工程の途中で250℃以上500℃以下の焼鈍を2回以上行う冷間圧延工程を行って厚さ0.10mm以下のアルミニウム合金フィン材を製造するに当たり、連続鋳造圧延法で厚さ2.5mm以上9mm以下で鋳造コイルを製造し、冷間圧延工程中の最後から2番目に行う焼鈍を厚さ0.4mm以上2mm以下で行い、最終の焼鈍を再結晶が完了しない加熱条件で行うブレージング用アルミニウム合金フィン材の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 0.1wt%を越え3wt%以下のNi、1.5wt%を越え2.2wt%以下のFe、及び1.2wt%以下のSiを含み、さらに4wt%以下のZn、0.3wt%以下のIn及び0.3wt%以下のSnからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、これに加えて必要により3.0wt%以下のCo、0.3wt%以下のCr、0.3wt%以下のZr、0.3wt%以下のTi、1wt%以下のCu、0.3wt%以下のMn、1wt%以下のMgのうち1種または2種以上を含有し、不可避的不純物と残部アルミニウムよりなるアルミニウム合金を、連続鋳造圧延法で鋳造後、冷間圧延工程の途中で250℃以上500℃以下の焼鈍を2回以上行う冷間圧延工程を行って厚さ0.10mm以下のアルミニウム合金フィン材を製造するに当たり、連続鋳造圧延法で厚さ2.5mm以上9mm以下で鋳造コイルを製造し、冷間圧延工程中の最後から2番目に行う焼鈍を厚さ0.4mm以上2mm以下で行い、最終の焼鈍を再結晶が完了しない加熱条件で行うことを特徴とするブレージング用アルミニウム合金フィン材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐食性と強度と熱伝導性に優れたAl−Ni−Fe系合金ブレージング用フィン材の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、特性を向上させながら、薄肉化フィン材を生産性よく製造可能とするフィン材用Al−Ni−Fe系合金圧延コイルの連続的製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用熱交換器の多くはAlおよびAl合金が使用されておりろう付法により製造されている。通常、ろう付はAl−Si系のろう材が用いられ、そのためろう付は600℃程度の高温で行われる。ラジエーター等の熱交換器は例えば図1に示すように複数本の偏平チューブ(1)の間にコルゲート状に加工した薄肉フィン(2)を一体に形成し、該偏平チューブ(1)の両端はヘッダー(3)とタンク(4)とで構成される空間にそれぞれ開口しており、一方のタンク側の空間から偏平チューブ(1)内を通して高温冷媒を他方のタンク(4)側の空間に送り、チューブ(1)およびフィン(2)の部分で熱交換して低温になった冷媒を再び循環させるものである。
【0003】ところで、近年、熱交換器は軽量・小型化の方向にあり、そのためには熱交換器の熱効率の向上が必要であり、材料の熱伝導性の向上が望まれている。特に、フィン材の熱伝導性の向上は検討されており、合金成分を純アルミニウムに近づけた合金のフィン材が熱伝導フィンとして提案されている。しかしながら、フィンを薄肉化した場合、フィンの強度が十分でないと熱交換器の組付け時にフィンが潰れたり、熱交換器として使用時に破壊してしまうという問題がある。純アルミニウム系合金フィンの場合、強度が不足してしまう欠点を有しており、高強度化にはMn等の合金元素の添加が有効であるが、熱交換器を製造する工程に600℃付近まで加熱されるブレージングがあるため、ブレージング加熱中に、強度向上の目的で合金に添加した元素が再固溶し熱伝導性の向上を阻害する問題がある。
【0004】これらを解決したフィン材として、Al−Si−Fe合金にNiやCoを添加した合金が提案されており、優れた強度と熱伝導性を有した特性を示している(特開平7−216485号、特開平8−104934号など)。しかし、これらのフィン材は、ろう付中の耐溶融性を確保するために、特開平9−157807号に示されたように特殊な製造工程を取る必要がある。特にこれらのフィン材の中でも1.5%(wt%を示す。以下同様。)を越えるFeを含有した場合、ろう付時の溶融を防止するには、最終の冷間圧延率を小さくする必要がある。特開平9−157087号の実施例で試料No.7がそれに当たるがここでも9.8%という低い冷間圧延率となっている。すなわち、薄肉アルミニウム合金材の工業的な圧延において軽圧延率のパスを行うと圧延中に板のフラットが出にくいために工業的に圧延が困難という問題と、最終冷間圧延率が小さいとO材状態からの強度差が小さいためにコルゲート成形自体が難しいという問題が生じている。
【0005】さらに、1.5%を越えたFeを、Niを一緒に添加したアルミニウム合金では、Al−Fe−Ni系の金属間化合物が生じ、これらは強度と熱伝導性を向上させる要因ではあるが、フィン材自体の耐食性を低下させるという問題が発生している。フィン材は犠牲防食材としてチューブを保護するが、フィン材自体の腐食量が大きいと早期にフィンが腐食によりなくなり、長期に渡り、チューブを防食できなくなる。さらに、これらの合金を連続鋳造圧延法により鋳造したコイルを使用してフィン材を製造する試みも行われているが、フィン材まで冷間圧延する途中でコイルが切れてしまう問題が生じている。また高速での圧延中にコイルが切れると製品が得られないのみならず、冷間圧延機の油が発火することなど危険である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明の目的は、Al−Ni−Fe系合金からなり連続鋳造圧延法を用い高強度、高熱伝導で耐食性に優れた薄肉化フィン材を製造しうる方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は下記の手段により達成される。すなわち、本発明は、(1)0.1wt%を越え3wt%以下のNi、1.5wt%を越え2.2wt%以下のFe、及び1.2wt%以下のSiを含み、さらに4wt%以下のZn、0.3wt%以下のIn及び0.3wt%以下のSnからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、これに加えて必要により3.0wt%以下のCo、0.3wt%以下のCr、0.3wt%以下のZr、0.3wt%以下のTi、1wt%以下のCu、0.3wt%以下のMn、1wt%以下のMgのうち1種または2種以上を含有し、不可避的不純物と残部アルミニウムよりなるアルミニウム合金を、連続鋳造圧延法で鋳造後、冷間圧延工程の途中で250℃以上500℃以下の焼鈍を2回以上行う冷間圧延工程を行って厚さ0.10mm以下のアルミニウム合金フィン材を製造するに当たり、連続鋳造圧延法で厚さ2.5mm以上9mm以下で鋳造コイルを製造し、冷間圧延工程中の最後から2番目に行う焼鈍を厚さ0.4mm以上2mm以下で行い、最終の焼鈍を再結晶が完了しない加熱条件で行うことを特徴とするブレージング用アルミニウム合金フィン材の製造方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法に用いられる合金の成分元素について以下に説明する。本発明において、0.1wt%を越え3wt%以下のNiおよび1.5wt%を越え2.2wt%以下のFeを含有するとしたのは、FeとNiの添加によりろう付後の強度と熱伝導性を高めたフィン材の問題点を解決するためである。特にFe量を1.5wt%を越える合金に限定したのは、1.5wt%以下であれば、従来の製造方法で製造可能であり、わざわざ本工程を行う必要がないためである。また、Feの上限を2.2wt%としたのは上限を越えると本発明法を用いても、フィン材の耐食性を向上できないためである。Niの下限は、Feと共存することで強度と導電率を向上する効果を有する量により定めた。Niの上限はFeと同様に本発明範囲を越えると本発明法を用いても、フィン材の耐食性を向上できないためである。
【0009】以上によりNiとFeの添加量を定めているが、高強度を確保するために0.6wt%以上のNiが推奨され、特に0.9wt%以上が推奨される。また、後述する連続鋳造の安定性のために2wt%以下のNiが推奨される。また、Feは連続鋳造の安定性を高め、薄肉化フィン材の耐食性をより高めるために2.0wt%以下が特に推奨される。以上のNi、Feの他に、4wt%以下のZn、0.3wt%以下のIn、および0.3wt%以下のSnから選ばれる少なくとも1種を含有する。また、これ以外の成分は必須ではないが発明の目的を損わない範囲で含有していてもよい。そのような任意成分としては、3.0wt%以下のCo、0.3wt%以下のCr、0.3wt%以下のZr、0.3wt%以下のTi、1wt%以下のCu、0.3wt%以下のMn、1wt%以下のMgのうち1種または2種以上および不可避的不純物を含有してもよい。これらの元素は合金をフィン材とする際に特性上重要な働きを示すものである。以下に各元素毎の働きと限定理由を述べる。
【0010】Siは、その添加により強度を向上させる。Siそのものが固溶硬化して強度を向上させるに加え、特に、FeやNiおよびCoと共存する場合、FeやNiおよびCoの析出を促進する作用を有する。本発明フィン材では、Al−Fe系の金属間化合物を粗大化させないことが重要である。Siを添加すると多量の金属間化合物が析出するために、個々の金属間化合物の大きさはSiを添加しない場合と比較して小さくなる。このような析出の促進作用はSiが0.03wt%以下では不十分となり、1.2wt%を越えるとろう付加熱時にフィンが溶融してしまう。したがって、Siを添加する場合は0.03wt%を越え1.2wt%以下とするのが好ましいが、上記析出の促進作用はSiが0.3wt%以上で効果が大きくなる。また、Siを増やしすぎると固溶したSiがフィンの熱伝導性を低下させるために0.8wt%以下が望ましい。
【0011】CoはNiと同様な働きを有する。従って、Coを添加する場合、添加量は0.1wt%を越え3.0wt%以下とするが、特に0.3wt%〜2wt%の範囲で優れた特性を示す。しかし、CoはNiと比較し、熱伝導性が若干低下することとAl−Fe系の化合物を分断する効果が弱い。また、Niよりも高価な金属である。本発明では、Niの代わりにCoを用いたり、NiとCoの同時添加を行うことは可能であるが、Niのみの添加の方が特性上、コスト上の効果が大きいのでNiを添加することを推奨する。Co添加量の下限は好ましくは0.1wt%であるが、これは単独に添加する場合で、Niと複合して添加する場合は、それ以下でも添加可能である。0.3wt%以下のZrとCrの添加は強度を向上させることおよびZrはろう付時に生じるフィン材の再結晶粒を粗大化し、フィンの垂下性ならびにフィンへのろうの拡散を防止する働きのために添加する。しかし、連続鋳造を行う際にZrおよびCrを添加した合金はノズルの目詰まりを起こし、鋳造ができなくなることがある。従って、ZrおよびCrは添加しない方が望ましく、添加する場合は0.08wt%以下の添加を特に推奨する。
【0012】0.3wt%以下のTiの添加は強度を向上させることを主な目的として添加する。しかし、連続鋳造を行う際にTiを添加した合金はノズルの目詰まりを起こし、鋳造ができなくなることがある。従って、Tiは添加しない方が望ましく、添加する場合は0.08wt%以下の添加を特に推奨する。また、鋳造組織の微細化を目的として添加することもあるが、その場合、0.02wt%以下で十分に目的を達成する。4wt%以下のZn、0.3wt%以下のIn、0.3wt%以下のSnはフィン材に犠牲防食効果を付与するために添加する。添加量と添加する元素はそのフィン材に要求される防食特性や熱伝導性によって決めればよい。InおよびSnは少量の添加で十分な犠牲効果を発揮するが、高価であり、合金の屑を他の合金材料にリサイクルできなくなるという問題がある。従って、本発明では特にZnの添加を推奨する。Znは添加量を増すとフィン材自体の腐食性を低下させるために2wt%以下が推奨され、特に1wt%以下が推奨される。各元素の下限は防食を行う相手の材料により決めればよいが、通常0.3wt%以上添加することが望ましい。本発明ではさらにCuを添加する場合がある。Cuは主に強度を向上させるために添加する。添加する場合、0.05wt%以下では強度向上の効果がない。また、添加量を増すと犠牲陽極効果を減じる働きが強くなるため、1wt%以下とするが、0.3wt%以下が特に推奨される。Cuはフィン材の電位を貴にし、犠牲陽極効果を減じる働きがあるので、Cuを添加する場合、Zn、In、Snのいずれかの元素と一緒に添加する必要がある。
【0013】Mnは強度を向上させるために添加する場合があるがわずかな添加で熱伝導性が大きく低下する。したがって、Mnの添加は0.3wt%以下とするが、熱伝導性の上から添加しない方が望ましい。Mgも強度を向上させるために添加する場合があるが、NBろう付ではフラックスと反応し、ろう付性を低下させるために、NBろう付用のフィン材とする場合にMgを添加してはならない。また、真空ろう付用とする場合、1wt%以下のMgとするが、ろう付中に蒸発し、その効果は小さいので添加しないことを推奨する。さて、本合金の不可避不純物および上記以外の理由で添加される元素であるが、鋳塊組織の微細化のためにTiと共に添加されるB等があり、これらの元素はそれぞれ0.03%以下であれば含有していても差し支えない。以下に本発明の製造方法について説明する。
【0014】本発明では、まず、上記合金を連続鋳造圧延法で2.5mm以上9mm以下の厚さで連続鋳造圧延コイルを作製する。連続鋳造圧延法とはアルミニウム合金溶湯から、厚さ数mmのストリップを連続的に鋳造し、そのままコイルを作製する方法であり、ハンター法とは3C法等がその代表的な工法として知られている。DC鋳造法でインゴットを作製し、熱間圧延により数mmの板厚のコイルを製造する場合と比較し、連続鋳造圧延法では鋳造時の冷却速度が大きいために、鋳造時に金属間化合物を微細に晶出させることが可能であり、本発明に用いられる合金のようにFeを多く含有している合金の場合、強度の向上効果を有する方法である。さらに、発明者らが検討を行ったところ、連続鋳造圧延法ではDC鋳造法と比較して過飽和にFeおよびNiが固溶するために、その後の工程を最適化することでフィン材自体の耐食性を向上することが可能なことが判明した。ここで、連続鋳造圧延法での鋳造厚さを2.5mm以上9mm以下のコイルとしたのは、2.5mm未満では連続鋳造時に板にうねりが生じ後の冷間圧延の工程で圧延できないためであり、9mmを越えると十分な急冷効果が得られず、過飽和に固溶する元素量が少なくなるために、フィン材自体の耐食性が向上しないためである。連続鋳造圧延で得られたコイルは、冷間圧延工程により0.10mm以下まで圧延し、フィン材とするが、その途中で250℃以上500℃以下の温度での焼鈍を2回以上行う。その際に、最後から2番目に行う焼鈍を0.4mm以上2mm以下で行い、最終の焼鈍を再結晶が完了しない加熱条件で行う。この条件の組み合わせにより、フィン材自体の耐食性向上、フィン材の生産性向上(冷間圧延途中での破断の防止)、フィン材の最終冷間圧延率を高めることを可能にしたのである。
【0015】まず、焼鈍の回数について述べる。焼鈍が1回では過飽和に固溶したFeとNiが十分析出しないため、フィン材をろう付加熱する際に再結晶粒界にFe、Niが析出する。ろう付後のフィンの再結晶粒界に沿って析出物が増えると、腐食が生じる際に結晶粒界に沿った腐食が多くなる。この合金系のフィン材では厚さ方向の結晶粒は一つであることが多いので、粒界に沿って腐食が進行するとフィン全体が腐食しなくとも、フィンがぼろぼろと崩れてフィン材自体の耐食寿命が低下するのである。1回の焼鈍で十分な析出量を確保する温度条件は存在するが、そのような条件で焼鈍を行った場合、析出物は成長し、粗大化するために、フィン材自体の強度が低下する上に、析出物周りでの腐食が発生しやすくなり、フィン材自体の耐食性は低下する。以上に加え、最後から2回目(2回の焼鈍では最初の焼鈍)の板厚限定理由を後述する際に述べる冷間圧延時の破断防止により、冷間圧延途中の焼鈍は2回以上とする。なお、3回以上行っても特性上問題はない。しかし、工程が増えると製造コストが増すので3回以下を推奨し、特に2回を推奨する。最後から2回目(2回の焼鈍では最初の焼鈍)の焼鈍の板厚を0.4mm以上2mm以下とした理由は、発明者らが、連続鋳造圧延コイルを冷間圧延を行う際に生じる破断について鋭意検討し、以下の原因をつきとめ、その対策として本発明を完成するに至った。以下に詳しく述べる。本発明では連続鋳造圧延で用いたコイルを用いるが、連続鋳造圧延は数時間から数十時間に渡って連続的に鋳造を行う方法であるために、本発明で用いる合金を鋳造すると、コイル内に数十μm以上の金属間化合物が、時として1箇所以上に存在することがあることが判明した。これは、ノズルチップ内等に少しづつ溜まった金属間化合物が一定量以上となった際にアルミニウム溶湯と共に流れてきて、鋳造コイル内に存在するようになったものと推定された。このような金属間化合物は材料が薄い板厚まで圧延された際に破断の起点となるものであるが、鋳造時にその発生を防止することは難しい。
【0016】発明者らは、このような金属間化合物が一定の確率で連続鋳造コイル内に存在することを前提に、金属間化合物近傍で局部的な亀裂をできるだけ発生させないようにすることと亀裂が生じても幅方向全体の破断に至らないようにすることを検討した。そのために焼鈍を行って金属間化合物付近のアルミニウム合金の部分を柔らかくしておくことが有効であること、特に、0.4mm以上2mm以下で焼鈍を行うことが最も効果があることを見出したのである。2mmを越えた板厚で焼鈍を行うと、その後の冷間圧延よりマトリックスのアルミニウム合金部分が硬化するために、上記板厚範囲で再度の焼鈍を行わないと板厚が0.1mm程度に達した際に破断が生じる。すなわち、上記範囲で焼鈍を行わず、また0.4mm未満の板厚で焼鈍を行ったとしても、2mmから0.4mmの間の冷間圧延により金属間化合物の周囲で微視的な亀裂が生じ、0.1mm程度の板厚になった際に、この亀裂を起点として冷間圧延中に破断が生じるのである。0.4mm以上2mm以下で行う焼鈍を最後から2回目の焼鈍としたのは、最後の焼鈍とした場合、その後の最終冷間圧延率が大きくなりすぎ、最終の冷間圧延パス付近で破断が生じやすくなるためである。また、この板厚範囲で焼鈍を行えば、そこより先での焼鈍は1回行えば十分であり、最後から3回目以上前の焼鈍として行うのはエネルギー的に無駄であるからである。以上より最後から2回目(2回の焼鈍では最初の焼鈍)の焼鈍を行う板厚を0.4mm以上2mm以下と定めるが、0.6mm以上1.2mm以下で行うと特に冷間圧延工程での破断防止に効果がある。
【0017】最終の焼鈍温度はフィン材の再結晶が完了しない温度で実施する。この再結晶が完了しない温度で実施するとは、好ましくは板表面位置での再結晶粒の大きさが20μm以上の再結晶粒が30%以下の状態をいう。30%を超えると急激に再結晶が進行し、完了する場合があるためである。理由の一つは、焼鈍の加熱時に過飽和に固溶したFeとNiを析出させるのであるが、これらの元素は再結晶が完了せずに転位が残存していると転位に沿って拡散するために析出量が増えるためである。さらに、再結晶が完了した後での析出は再結晶が完了する前に生じている析出粒子を粗大化させるように進むため、フィン材の強度を向上させる効果が小さく、フィン材自身の耐食性を低下させる要因となる。さらに、3番目の理由として、焼鈍を再結晶が完了する条件で行った場合、その後の冷間圧延を経てフィン材となった後に、ろう付加熱時にフィン材の再結晶粒界に存在する析出物の数が増え、フィン材自体の耐食性が減じるためである。これは、焼鈍時に再結晶した場合、その後の冷間圧延で導入された転位はろう付加熱時に移動しやすく、再結晶粒を形成するが、その際に析出粒子が粒界の移動を妨げるために粒界に多くの析出物が存在するようになるためである。したがって、最終の焼鈍温度は250℃以上500℃以下の温度範囲の中で再結晶が完了しない温度範囲で行うものとする。250℃未満では析出が十分に進まずに、前述した理由より、フィン材自身の耐食性が低下する。500℃を越えると析出粒子が粗大化し、強度が低下する上に、フィン材自身の耐食性が低下する。以上より最終の焼鈍温度範囲は250℃以上500℃以下とするが、350℃以上460℃以下の温度範囲が析出物を微細に十分な量の析出させる点で特に望ましい範囲である。具体的な再結晶温度は合金組成や最終焼鈍以前の熱履歴により変化するために、上記温度範囲内でも再結晶が完了することがあるので、実際には再結晶が完了しない温度をあらかじめ確認した上で最終焼鈍条件を確定するものとする。
【0018】最終の焼鈍の時間は30分〜4時間が望ましいがこれに限定するものでない。30分未満ではコイル全体の温度を安定させるのが難しく、4時間を超えるのはエネルギーが無駄なためである。最終の焼鈍の板厚はその後の冷間圧延率が10%以上となる板厚で行う。10%未満ではコルゲート成形性が不安定となるためである。上限は特に定めないが、通常60%以下の冷間圧延率で行えばよく、30%以下が特に推奨される。以上が最終の焼鈍条件であるが、最終焼鈍より前の焼鈍は最終焼鈍よりも低い温度で行うことを推奨する。最終焼鈍温度よりも高い温度で行うと最終焼鈍時に析出が生じにくくなり、フィン材自身の耐食性が低下しやすいためである。最終焼鈍時に析出を生じさせるので、それ以前の焼鈍では、その核となる微細な析出物を多く析出させた方がよいので、温度は特に400℃以下が推奨される。また、軟化を十分に行って、冷間圧延中の破断を防止する意味では270℃以上が推奨される。焼鈍の時間は30分〜4時間が望ましいがこれに限定するものでない。30分未満ではコイル全体の温度を安定させるのが難しく、4時間を越えるのはエネルギーが無駄なためである。
【0019】本発明では、この焼鈍後の材料を冷間圧延して薄肉ブレージング用フィン材(好ましくは0.1mm以下)とする。本発明は高強度高熱伝導のブレージングシートフィンの製造法であり、0.1mm以下のフィン材にする際に生じる問題を解決し、また、そのようなフィン材自体の耐食性を高めた発明であるから、当然、0.1mmを越える厚さのフィン材の製造方法とすることは可能であるが、本発明の製造条件で得られる特性が必要でない限り、本発明の条件で製造したコイルを使用する必要はない。0.1mmを越える板厚であれば、わざわざ、本発明の成分の合金を本発明の製造方法で製造する必要はないのである。本発明ではブレージング用アルミニウム合金フィン材を製造する。ブレージング用フィン材として、特性が向上することが知られている合金の問題点を解決することを目的とした製造方法のためである。ここで、ブレージングとは従来より行われているNB法、VB法等であればよく、特にNB法が推奨される。NB法の方が生産性がよいためである。
【0020】
【実施例】次に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。表1に示す組成のアルミニウム合金を表2に示す製造工程により加工して厚さ0.06mmのフィン材を作製した。使用した連続鋳造圧延装置のロール径は618mmで、製造した連続鋳造圧延コイルの幅は1000mmである。冷間圧延の状況を表3に示す。途中で破断した材料は残部よりラボ的にフィン材を作製した。得られたフィン材を600℃にて3分のNBろう付加熱後CASS試験を1週間行い、フィン材の腐食減量を調査した。結果を表3に合わせて示す。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】表3の結果から明らかなように本発明を行って製造したフィン材では途中で破断なく、0.06mmまで圧延加工可能であるが、条件が異なる比較例では途中で圧延できず、破断が生じた。また、本発明例は比較例と比べて腐食減量が少なく、フィン材自身の耐食性が優れている。
【0025】
【発明の効果】以上のように本発明方法によれば高強度、高熱伝導のフィン材用合金であるAl−Ni−Fe系合金の薄肉化フィン材を連続鋳造圧延法を用いて製造することが可能となり、得られたフィン材はフィン材自身の耐食性に優れており、工業上で顕著な効果を奏するものである。
【出願人】 【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
【出願日】 平成13年3月23日(2001.3.23)
【代理人】 【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
【公開番号】 特開2001−335901(P2001−335901A)
【公開日】 平成13年12月7日(2001.12.7)
【出願番号】 特願2001−86167(P2001−86167)