| 【発明の名称】 |
電池の高率放電特性を可能とするAB5型水素吸蔵合金 |
| 【発明者】 |
【氏名】喜多 晃一
【氏名】菅原 克生
【氏名】和田 正弘
【氏名】村井 琢弥
【氏名】磯部 毅
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| 【要約】 |
【課題】電池の負極として実用に供した場合に前記電池の高率放電(高出力)を可能ならしめるAB5型水素吸蔵合金を提供する。
【解決手段】AB5型水素吸蔵合金を、質量%で、Laおよび/またはCeを主体とする希土類元素:27〜38%、Co:0.1〜17%、Al:0.1〜3.5%、Mn:0.5〜10%、Ti:0.05〜5%、水素:0.005〜0.2%、を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる全体組成、並びに素地に、いずれも微細な金属間化合物とTi系水素化物が分散分布した組織を有するNi系合金で構成してなる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 質量%で、 Laおよび/またはCeを主体とする希土類元素:27〜38%、 Co:0.1〜17%、 Al:0.1〜3.5%、 Mn:0.5〜10%、 Ti:0.05〜5%、 水素:0.005〜0.2%、を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びに素地に、いずれも微細な金属間化合物とTi系水素化物が分散分布した組織を有するNi系合金で構成したことを特徴とする電池の高率放電特性を可能とするAB5型水素吸蔵合金。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、特に電池の負極として実用に供した場合に前記電池が高率放電特性(高出力特性)を発揮するAB5型水素吸蔵合金に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、AB5型水素吸蔵合金として、例えば特開昭62−43064号公報に記載される通り、質量%で(以下、%は質量%を示す)、 Laおよび/またはCeを主体とする希土類元素:26〜38%、 Co:3〜12%、 Al:0.7〜3%、 Mn:2.5〜6.5%、 Ti:0.5〜3.5%、を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びに素地に微細な金属間化合物が分散分布した組織をもったNi基合金で構成され、かつ電池として実用に供した場合には、前記電池は素地に分散分布した微細な金属間化合物の作用で、すぐれた水素吸収放出速度および初期活性化特性を発揮するとうになるAB5型水素吸蔵合金が知られている。 【0003】また、上記のAB5型水素吸蔵合金は、所定の成分組成を有する合金溶湯を調製し、この溶湯を、(1)溶湯を水冷鋳型に鋳造してインゴットとする方法、(2)前記インゴットに、例えば真空中、850〜1050℃の範囲内の所定温度に所定時間保持の条件で均質化熱処理を施す鋳型鋳造−均質化熱処理法、(3)水冷ロールの表面に、溶湯を所定の高さから所定の溶湯径で流下させて薄板(箔)にする急冷ロール法、(4)出湯口から流下する溶湯に、例えばArガスを吹き付けて粉末とするガスアトマイズ法、(5)回転水冷ドラムの内面に溶湯を鋳造して円筒材とする遠心鋳造法、以上(1)〜(5)のいずれかの溶湯処理手段によって所定形状の素材とし、ついで前記素材に、通常の機械的粉砕を施して所定粒度の粉末とするか、あるいは加圧水素中、10〜200℃の範囲内の所定温度での水素吸収と、真空排気による水素放出からなる水素化粉砕を施して粉末とすることにより製造されている。さらに、上記のAB5型水素吸蔵合金を、例えば電池の負極に適用する場合には、この水素吸蔵合金が組込まれた前記負極が使用初めから充分な放電容量をもつようにすために、予め加圧水素雰囲気中に所定時間保持の条件で初期活性化が行なわれ、この初期活性化が行なわれた状態で実用に供されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】一方、近年、AB5型水素吸蔵合金を、電動工具や電動アシスト付き自転車、さらに電気自動車などの高出力が要求される電池の負極として適用する試みがなされているが、上記の従来AB5型水素吸蔵合金はじめ、その他のAB5型水素吸蔵合金においては、これを電池の負極として適用しても、前記電池は十分な出力(高率放電特性)を発揮せず、実用に供することができないのが現状である。 【0005】 【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、上述のような観点から、電池の負極として実用に供した場合に前記電池の高出力化(高率放電)を可能ならしめるAB5型水素吸蔵合金を開発すべく、特に上記の水素吸収放出速度が速く、かつ初期活性化特性のすぐれた従来AB5型水素吸蔵合金に着目し、研究を行なった結果、上記の(1)〜(5)のいずれかの溶湯処理手段によって所定形状としたAB5型水素吸蔵合金の素材に、水素雰囲気中、300〜600℃の範囲内の所定の温度に所定時間保持後冷却の条件で水素化熱処理を施すと、素地に微細なTi系水素化物が新たに析出するようになり、かつこの水素化熱処理後のAB5型水素吸蔵合金が、 Laおよび/またはCeを主体とする希土類元素:27〜38%、 Co:0.1〜17%、 Al:0.1〜3.5%、 Mn:0.5〜10%、 Ti:0.05〜5%、 水素:0.005〜0.2%、を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成をもつようにすると、この結果の素地に微細な金属間化合物と共に、微細なTi系水素化物水素が分散分布したAB5型水素吸蔵合金は、これを電池の負極として適用した場合、前記Ti系水素化物の作用で、電池の高率放電(高出力化)を可能とし、かつ前記金属間化合物の作用で電池にはすぐれた水素吸収放出速度および初期活性化特性が保持されるという研究結果を得たのである。 【0006】この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、 Laおよび/またはCeを主体とする希土類元素:27〜38%、 Co:0.1〜17%、 Al:0.1〜3.5%、 Mn:0.5〜10%、 Ti:0.05〜5%、 水素:0.005〜0.2%、を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成、並びに素地に、いずれも微細な金属間化合物とTi系水素化物が分散分布した組織を有するNi系合金で構成してなる、電池の高率放電特性を可能とするAB5型水素吸蔵合金に特徴を有するものである。 【0007】つぎに、この発明のAB5型水素吸蔵合金において、これを構成するNi基合金の組成を上記の通りに限定した理由を説明する。 (a) Laおよび/またはCeを主体とする希土類元素これらの希土類元素は、その主体がNiと共に水素吸蔵作用を有する素地を形成するが、その含有量が27%未満でも、またその含有量が38%を越えても放電容量が低下するようになることから、その含有量を27〜38%、望ましくは28〜32%と定めた。 【0008】(b) CoCo成分には、素地に固溶して、水素の吸収放出時の体積の膨張収縮を抑制し、もって合金の微粉化を防止し、使用寿命の延命化に寄与する作用があるが、その含有量が0.1%未満では、前記作用に所望の効果が得られず、一方その含有量が17%を越えると、放電容量および初期活性化作用に低下傾向が現れるようになることから、その含有量を0.1〜17%、望ましくは6〜12%と定めた。 【0009】(c) AlAl成分には、素地に固溶して、これの耐食性を向上させる作用があるが、その含有量が0.1%未満では所望の耐食性向上効果が得られず、一方その含有量が3.5%を越えると放電容量が低下するようになることから、その含有量を0.1〜3.5%、望ましくは1〜2%と定めた。 【0010】(d) MnMn成分には、素地に固溶して、これの平衡水素解離圧を低下させ、もって放電容量の拡大に寄与する作用があるが、その含有量が0.5%未満では所望の放電容量拡大効果が得られず、一方その含有量が10%を越えると、放電容量に低下傾向が現れるようになることから、その含有量を0.5〜10%、望ましくは3〜8%と定めた。 【0011】(e) TiTi成分には、上記の通り水素化熱処理でTi系水素化物として素地に微細に析出し、電池の負極として実用に供した場合に、前記電池の高率放電(高出力)を可能にする作用があるが、その含有量が0.05%未満では前記作用に所望の向上効果が得られず、一方その含有量が5%を越えると、Ti系水素化物の析出が多くなり過ぎて、放電容量が低下するようになることから、その含有量を0.05〜5%、望ましくは0.1〜2%と定めた。 【0012】(f) 水素水素は、水素化熱処理で優先的にTiと結合して、高率放電特性の向上に寄与するTi系水素化物を形成するが、その含有量が0.005%未満では、前記Ti系水素化物の析出が不充分であって、これのもつ作用効果を十分に発揮することができず、一方その含有量が0.2%を越えると、前記Ti系水素化物の析出が多くなり過ぎ、放電容量に低下傾向が現れるようになることから、その含有量を0.005〜0.2%、望ましくは0.01〜0.15%と定めた。 【0013】 【発明の実施の形態】つぎに、この発明のAB5型水素吸蔵合金を実施例により具体的に説明する。通常の高周波誘導溶解炉にて、原料としていずれも99.9%以上の純度をもったNi、La、Ce、Co、Al、Mn、およびTi、さらにミッシュメタルを用い、真空中で溶解して、それぞれ表1〜3に示される組成をもったNi系合金溶湯を調製し、これらの溶湯を、以下に示す処理手段、すなわち、(A)溶湯を水冷銅鋳型に鋳造してインゴットとし、このインゴットに、真空中、1123〜1325K(850〜1050℃)の範囲内の所定温度に10時間保持の条件で均質化熱処理を施す鋳型鋳造−均質化熱処理法(以下、A法と云う)、(B)溶湯を水冷銅鋳型に鋳造してインゴットとする鋳型鋳造法(以下、B法と云う)、(C)周速:25m/秒の速さで回転している直径:50cmの銅製水冷ロールの表面に、溶湯を20cmの高さから1mmの溶湯径で流下させて薄板(箔)にする急冷ロール法(以下、C法と云う)、(D)周速:15m/秒の速さで回転している直径:100cm×長さ:200cmの銅製水冷ドラムの内面に、溶湯を20cmの高さから流量:120kg/秒の速度で鋳造して円筒材とする遠心鋳造法(以下、D法と云う)、(E)直径:3mmの出湯口から流下する溶湯に、ガス圧:2.45MPa(25kg/cm2)、ガス流量:12Nm3 /分の条件でArガスを吹き付けて粉末とするガスアトマイズ法(以下、E法と云う)、以上A法〜E法のうちのいずれかの溶湯処理手段を、表1〜4に示される組み合わせで適用して、所定形状の素材とし、ついで上記A法〜E法の溶湯処理手段のうちのA法〜D法で得られた素材については、これらを熱処理炉に装入し、まず、水素化熱処理を施すに際して、室温から573〜873K(300〜600℃)の範囲内の所定温度までの昇温をArガス雰囲気中で行い、引続いて前記Arガス雰囲気を0.11〜1.01MPa(1.1〜10気圧)の範囲内の所定の圧力の水素雰囲気に変え、この水素雰囲気および前記所定温度に1時間保持してからArガス雰囲気中で自然冷却の条件で水素化熱処理を施し、さらに前記の冷却過程における10〜200℃の範囲内の所定温度での水素吸収と、これに続く真空排気による水素放出からなる水素化粉砕を行うことにより、いずれも平均粒径:30μmの粒度をもった粉末とし、また、上記E法による粉末については、粒度を同じく30μmの平均粒径に調整した上で、前記の水素化粉砕を行わない以外は同一の条件で水素化熱処理を行うことにより本発明AB5型水素吸蔵合金(以下、本発明合金という)1〜32をそれぞれ製造した。 【0014】また、比較の目的で、Ni系合金溶湯の組成を表4に示される通りとし、かつ上記A法〜E法のうちのいずれかの溶湯処理手段を、表4に示される組み合わせで適用して、所定形状の素材とし、これら素材に、上記の水素化熱処理を施すことなく、A法〜D法で得られた素材については同じ条件で水素化粉砕および粒度調整を行い、また上記E法による粉末については同じく粒度調整だけを行うことにより従来AB5型水素吸蔵合金(以下、従来合金という)1〜10を製造した。 【0015】この結果得られた各種のAB5型水素吸蔵合金の組織を、透過型電子顕微鏡(倍率:5万倍)およびこれの電子線回析像により観察したところ、本発明合金1〜32は、いずれも素地に微細な金属間化合物とTi系水素化物が分散分布した組織を示し、一方従来合金1〜10は前記Ti系水素化物の析出がなく、素地には微細な金属間化合物だけが分散分布した組織を示した。 【0016】つぎに、上記の粉末状の本発明合金1〜32および従来合金1〜10について、以下に示す条件で初期活性化特性および高率放電特性(高出力特性)を評価した。 (1) 初期活性化特性の評価活物質粉末としての上記本発明合金1〜32および従来合金1〜10のそれぞれに、導電剤として酸化第一銅(Cu2 O)、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)を加えてペースト状とした後、95%の気孔率を有する市販の多孔質Ni焼結板に充填し、乾燥し、加圧して、平面寸法:30mm×40mm、厚さ:0.40〜0.43mmの形状(前記活物質粉末充填量:1.8g)とし、これの一辺にリードとなるNi薄板を溶接により取り付けて負極を形成し、一方正極は、活物質としてNi(OH)2 を用い、これに導電剤として一酸化コバルト(CoO)、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)を加えてペースト状とし、これを上記多孔質Ni焼結板に充填し、乾燥し、加圧して、平面寸法:30mm×40mm、厚さ:0.71〜0.73mmの形状とし、同じくこれの一辺にNi薄板を取り付けることにより形成し、ついで、上記負極の両側に、それぞれポリプロピレンポリエチレン共重合体のセパレータ板を介して上記正極を配置し、さらに前記正極のそれぞれの外面から活物質の脱落を防止する目的で塩化ビニール製の保護板で挟んで一体化し、これを塩化ビニール製のセルに装入し、前記セルに電解液として28%KOH水溶液を装入することにより電池を製造した。ついで、上記電池に、充電速度:0.25C、充電電気量:負極容量の135%、放電速度:0.25C、放電終止電圧:−650mVVSHg/HgOの条件で充放電を行ない、前記充電と放電を充放電1回と数え、前記電池が最大放電容量を示すに至るまで前記充放電を繰り返し行なった。表5、6に、この結果測定された最大放電容量を示すと共に、前記最大放電容量の97%の放電容量を示すに要した充放電回数を示し、これによって初期活性化特性を評価した。 【0017】(2) 高率放電特性(高出力特性)の評価上記の本発明合金1〜32および従来合金1〜10のそれぞれが負極として組み込まれ、かつ初期活性化処理された電池に、最大放電容量の105%まで充電速度:0.25Cで充電した後、0℃で上記活物質粉末:1gにつき、10C/h(1C=330mAh/g)の定電流で放電、すなわち「0℃・10C」の放電速度で放電し、負極電圧が−650mVVSHg/HgOに低下するまでの時間(0℃・10C放電容量)を測定することにより高率放電特性を評価した。この測定結果も表5、6に示した。 【0018】 【表1】
【0019】 【表2】
【0020】 【表3】
【0021】 【表4】
【0022】 【表5】
【0023】 【表6】
【0024】 【発明の効果】表1〜6に示される結果から、本発明合金1〜32は、いずれも従来合金1〜10と同等のすぐれた初期活性化特性を示し、かつ素地に分散分布する微細なNi系水素化物によって、前記Ni系水素化物の存在しない従来合金1〜10に比して一段とすぐれた高率放電特性(高出力特性)を発揮することが明らかである。上述のように、この発明のAB5型水素吸蔵合金は、特に電池の負極として適用した場合、前記電池の高率放電を可能ならしめるので、特に高出力が要求される各種機械装置の電池に用いた場合にすぐれた性能を発揮するものである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006264 【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年6月1日(2000.6.1) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100076679 【弁理士】 【氏名又は名称】富田 和夫 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−342529(P2001−342529A) |
| 【公開日】 |
平成13年12月14日(2001.12.14) |
| 【出願番号】 |
特願2000−164492(P2000−164492) |
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