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【発明の名称】 熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料及びその製造方法
【発明者】 【氏名】原田 保
【氏名】塩貝 達也
【氏名】津戸 宏之
【氏名】武井 義文
【氏名】青木 一郎
【課題】単一の材料で熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料を提供し、その製造方法をも提供すること。

【解決手段】一方の表面から他方の表面に向かってセラミックス粉末または繊維の含有率を連続的に変化させた複合材料であることとする熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料。強化材であるセラミックス粉末または繊維の充填率が異なるプリフォームを充填率の高い順、あるいは低い順に複数層積層して形成した後、その積層したプリフォームに700〜1000℃の温度で溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金を含浸させることにより複合材料を作製することとする熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 セラミックス粉末または繊維を強化材とし、アルミニウムまたはアルミニウム合金をマトリックスとする複合材料であって、その複合材料が、一方の表面から他方の表面に向かってセラミックス粉末または繊維の含有率を連続的に変化させた複合材料であることを特徴とする熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料。
【請求項2】 前記セラミックス粉末または繊維の含有率が、一方の表面で20体積%以上、他方の表面で70体積%以下であることを特徴とする請求項1記載の熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料。
【請求項3】 強化材であるセラミックス粉末または繊維の充填率が異なるプリフォームを充填率の高い順、あるいは低い順に複数層積層して形成した後、その積層したプリフォームに700〜1000℃の温度で溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金を含浸させることにより複合材料を作製することを特徴とする熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料の製造方法。
【請求項4】 前記セラミックス粉末または繊維の充填率が、一方の表面で20体積%以上、他方の表面で70体積%以下であることを特徴とする請求項3記載の熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料の製造方法。
【請求項5】 前記積層したプリフォームに溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金を含浸させる方法が、窒素雰囲気中で700〜1000℃の温度で非加圧で浸透させる方法であることを特徴とする請求項3または4記載の熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属−セラミックス複合材料及びその製造方法に関し、特に熱膨張係数を連続的に変化させた傾斜機能を有する金属−セラミックス複合材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から熱膨張係数の差が大きい部材同士をつぎ合わせる場合、機械的に締結したり、有機系、無機系の接着剤で接着したりすることが行われている。また、金属とセラミックスのように、熱伝導率が大きく異なる場合には、熱伝導効率の高い金属ロウで接合することにより、金属とセラミックス間の熱伝達を良くすることが行われている。
【0003】その内機械的に締結する場合には、締結部分で点、または線でしか熱伝達が行なわれず、熱伝達が悪いという問題がある。一方、接着剤で接着する場合には、熱伝導率の悪い接着剤の層によって、部材間の熱伝達が悪くなるという問題がある。これに対して金属ロウで接合する場合には、熱伝達は良いものの、熱膨張係数の大きな差から部材間に亀裂が生じる恐れがあり、ひどい場合には部材間あるいは部材そのものが破壊される恐れがある。
【0004】そのため、前記した金属とセラミックスを接合するような場合には、その部材間に金属とセラミックスとの複合材料からなる緩衝材を挟んで接合することにより、熱膨張係数の差によって生じる熱残留応力を挟んだ緩衝材によって緩和することが行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、部材間の熱膨張係数の差が特に大きい場合には、この緩衝材だけでは緩和できないため、熱膨張係数の異なる複合材料を2層以上熱膨張係数の高い順、あるいは低い順に金属ロウで接合した緩衝材を用いる必要があった。そのため、複合材料同士を接合する手間が増えることに加えて、複合材料と金属ロウとの間で熱膨張差が生じ、複合材料間に亀裂、あるいは破壊が生じ得るという問題があった。
【0006】本発明は、上述した緩衝材である複合材料が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、単一の材料中で熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料を提供し、その製造方法をも提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、複合材料中のセラミックスの含有率を単一の複合材料中で連続的に変化させれば、単一の材料中で熱膨張係数を連続的に変化させた複合材料が得られるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0008】即ち本発明は、(1)セラミックス粉末または繊維を強化材とし、アルミニウムまたはアルミニウム合金をマトリックスとする複合材料であって、その複合材料が、一方の表面から他方の表面に向かってセラミックス粉末または繊維の含有率を連続的に変化させた複合材料であることを特徴とする熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料(請求項1)とし、(2)前記セラミックス粉末または繊維の含有率が、一方の表面で20体積%以上、他方の表面で70体積%以下であることを特徴とする請求項1記載の熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料(請求項2)とし、(3)強化材であるセラミックス粉末または繊維の充填率が異なるプリフォームを充填率の高い順、あるいは低い順に複数層積層して形成した後、その積層したプリフォームに700〜1000℃の温度で溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金を含浸させることにより複合材料を作製することを特徴とする熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料の製造方法(請求項3)とし、(4)前記セラミックス粉末または繊維の充填率が、一方の表面で20体積%以上、他方の表面で70体積%以下であることを特徴とする請求項3記載の熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料の製造方法(請求項4)とし、(5)前記積層したプリフォームに溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金を含浸させる方法が、窒素雰囲気中で700〜1000℃の温度で非加圧で浸透させる方法であることを特徴とする請求項3または4記載の熱膨張係数を連続的に変化させた金属−セラミックス複合材料の製造方法(請求項5)とすることを要旨とする。以下さらに詳細に説明する。
【0009】上記で述べたように、本発明の金属とセラミックスとの複合材料としては、一方の表面から他方の表面に向かってセラミックス粉末または繊維の含有率を連続的に変化させた複合材料とすることにより、熱膨張係数を連続的に変化させた複合材料とした(請求項1)。
【0010】上記のように本発明の複合材料を、アルミニウムまたはアルミニウム合金で連続的に一体化した単一の複合材料中でセラミックス粉末または繊維を連続的に変化させた複合材料としたので、熱膨張係数が連続的に変化した単一の複合材料となり、また、複合材料に亀裂、あるいは破壊が生じ得ない複合材料となる。
【0011】そのセラミックス粉末または繊維の含有率としては、一方の表面で20体積%以上、他方の表面で70体積%以下とした(請求項2)。セラミックス粉末または繊維の含有率が20体積%より低いと、熱膨張係数が高くなりすぎで好ましくなく、70体積%より高いと、複合材料を作製するのが困難である。
【0012】その複合材料の製造方法としては、強化材であるセラミックス粉末または繊維の充填率が異なるプリフォームを充填率の高い順、あるいは低い順に複数層積層して形成した後、その積層したプリフォームに700〜1000℃の温度で溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金を含浸させることにより複合材料を作製することとする製造方法とした(請求項3)。
【0013】上記のように複合材料をセラミックス粉末または繊維の充填率を順次減少、あるいは増加させた複数層のプリフォームにアルミニウムまたはアルミニウム合金を含浸させて作製するため、セラミックス粉末または繊維の含有率を単一の複合材料中で連続的に変化させた複合材料となり、その結果、熱膨張係数を連続的に変化させた単一の複合材料となる。
【0014】その複数層のプリフォーム中のセラミックス粉末または繊維の充填率としては、一方の表面で20体積%以上、他方の表面で70体積%以下とした(請求項4)。このプリフォームに溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金を含浸させれば、複合材料中のセラミックス粉末または繊維の含有率が前述した請求項2の含有率となる。
【0015】その複数層を積層したプリフォームに溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金を含浸させる方法としては、窒素雰囲気中で700〜1000℃の温度で非加圧で浸透させる方法とした(請求項5)。溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金は、セラミックス粉末または繊維への濡れ性が悪いため、高圧で含浸させるのが一般的であるが、後述するようにこれを窒素雰囲気中で含浸させれば、非加圧でプリフォーム中に浸透できることとなり、より好ましい含浸方法となる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法をさらに詳しく述べると、先ずセラミックスとしてSiC、Al23、AlNなどのセラミックス粉末または繊維を、マトリックスとしてアルミニウムまたはアルミニウム合金を用意する。用意したセラミックス粉末または繊維と、アルミニウムまたはアルミニウム合金とを慣用の方法で複合化して複合材料を作製する。
【0017】従来、金属とセラミックスとの複合材料の製造方法としては、粉末冶金法、高圧鋳造法などが知られているが、これらの方法では、セラミックスの含有率が制御できない、あるいは大型の加圧装置が必要である、ニアネット成形が困難などの理由により、いずれも満足できず、またコストもかかるものであった。
【0018】そこで、最近、これら問題を解決した製造方法として注目されているのが、米国ランクサイド社が開発した非加圧金属浸透法(PrimexTM)である。これは、SiCやAl23などのセラミックス粉末または繊維で形成されたプリフォームにアルミニウムまたはアルミニウム合金を接触させ、これを窒素雰囲気中で700〜900℃の温度に加熱して溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金を浸透させる方法であるが、これは、化学反応を利用してセラミックス粉末または繊維へのアルミニウムまたはアルミニウム合金の濡れ性を改善し、機械的な加圧を行わなくてもアルミニウムまたはアルミニウム合金がプリフォーム中に浸透できるという特徴があり、特に本発明のようなセラミックス粉末または繊維の含有率を単一の複合材料中で変化させるものではより好ましい製造方法となる。
【0019】ここでは、その好適な非加圧金属浸透法で複合材料を作製することとする。先ず用意したセラミックス粉末または繊維で20〜70体積%の範囲の充填率を有するプリフォームを形成する。プリフォームの形成方法としては、例えば、セラミックス粉末または繊維に有機バインダーを添加し、プレスにより形成する方法や、セラミックス粉末または繊維に水などの溶媒を加え、フィルタープレスにより形成する方法などを挙げることができる。
【0020】そのプリフォームのセラミックス粉末または繊維の充填率を制御する方法は種々の方法が考えられるが、例えば、充填率を高くする方法としては、セラミックス粉末の粗粒と細粒とを適当な割合で配合する方法や、プレス圧を高くする方法などが挙げられる。逆に充填率を低くする方法としては、ウィスカ、短繊維などを用いる方法などを挙げることができる。
【0021】これらのことを勘案して、セラミックス粉末または繊維の充填率が異なる複数層を積層したプリフォームを形成する。例えば、金型にセラミックス繊維を充填しプレスして所要の厚さのプリフォームを設け、その上にセラミックス粉末を充填し所要の充填率となるようプレスして所要の厚さのプリフォームを設け、その上にセラミックス粉末を充填し所要の充填率となるようさらに高い圧力でプレスして所要の厚さのプリフォームを設け、その上に密に充填するように配合したセラミックス粉末を充填して所要の充填率となるようさらに高い圧力でプレスしてプリフォームを設ければ、充填率を順次増加させた4層の複数層を積層したプリフォームを形成することができる。
【0022】その形成したプリフォームの上または下にアルミニウムまたはアルミニウム合金を置き、それを窒素雰囲気中で700〜1000℃の温度で加熱処理して溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金をプリフォーム中に浸透させることにより、セラミックス粉末または繊維の含有率が一方の表面で20体積%以上、他方の表面で70体積%以下の連続的に変化させた複合材料を作製することができる。
【0023】それによって得られる複合材料は、熱膨張係数が小さい側ではAl23、AlNなどのセラミックスと接するのが一般的であることから、8×10-6/℃以上の熱膨張係数を有することが好ましく、熱膨張係数が大きい側では金属と接するのが一般的であることから、14×10-6/℃以下の熱膨張係数を有することが好ましいが、接合すべき部材はこれ以外にも種々あるので、それら所望の部材に合わせてセラミックス粉末または繊維の含有率を20〜70体積%の範囲で調節して熱膨張係数を合わせる必要がある。
【0024】以上の方法で複合材料を作製すれば、熱膨張係数を連続的に順次変化させた複合材料を得ることができるようになる【0025】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と共に具体的に挙げ、本発明をより詳細に説明する。
【0026】(実施例1)
(1)熱膨張係数を連続的に変化させた複合材料の作製市販のSiCウィスカ(東海カーボン社製 TWS)100重量部に、バインダーとしてコロイダルシリカ液を5重量部添加し、これにイオン交換水100重量部加え、これを混合したスラリーをフィルタープレスしてセラミックス繊維の充填率が25体積%で、寸法がφ200×t5mmのプリフォーム(下層とする)を形成した。
【0027】その上に市販のSiC粉末(信濃電気精錬社製、#1000)を用いてセラミックス粉末の充填率が40体積%のプリフォーム(中下層とする)を、さらにその上に同じく市販のSiC粉末(信濃電気精錬社製、#500)を用いてセラミックス粉末の充填率が50体積%のプリフォーム(中上層とする)を、さらにその上に市販のSiC粉末を混合した粉末(信濃電気精錬社製、#200、#400、#800を1:1:1の割合で混合)を用いて60体積%のプリフォーム(下層とする)を形成し、上記4層を積層したプリフォームを形成した。
【0028】得られたプリフォームを空気中で1000℃の温度で加熱処理してプリフォーム同士をさらに強くつぎ合わせてφ200×20mmの積層されたプリフォームを得た。その上にアルミニウム合金としてJIS AC8Aをプリフォームの重量の2倍量を載せ、これを窒素雰囲気中で750℃の温度で加熱処理してアルミニウム合金をプリフォーム中に浸透させ、冷却して複合材料を作製した。
【0029】(2)評価得られた複合材料のセラミックスの含有率が高い側(上層)にφ200×3mmのAl23板を、セラミックスの含有率が低い側(下層)に同形状のアルミニウム合金板を金属ロウで接合し、複合材料の亀裂の有無及び接合面の亀裂の有無を目視で観察した。その結果を表1に示す。
【0030】(実施例2)積層したプリフォームの形状、厚さを200×10×t20mmとした他は実施例1と同様に複合材料を作製し、セラミックスの含有率が高い側に200×10×−−mmのSUS304の板を金属ロウで接合し、実施例1と同様に評価した。その結果も表1に示す。
【0031】(実施例3)積層したプリフォームの形状、厚さをφ10×t10mmとした他は実施例1と同様に複合材料を作製し、セラミックスの含有率が高い側にSi34からなる動翼を金属ロウで接合し、セラミックスの含有率が低い側に長さ30cmのSUS製の軸を金属ロウで接合し、それを実施例1と同様に評価した。その結果も表1に示す。
【0032】(実施例4)実施例1の上層のプリフォームを実施例1の中上層のプリフォームと同じとした他は、実施例1と同様に複合材料を作製し、評価した。その結果も表1に示す。
【0033】(実施例5)実施例1の下層のプリフォームを実施例1の中下層のプリフォームと同じとした他は、実施例1と同様に複合材料を作製し、評価した。その結果も表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】表1から明らかなように、実施例1では、複合材料には勿論のこと、複合材料とAl23板との接合部にも、またアルミニウム合金板との接合部にも亀裂は認められなかった。また、実施例2では、これも複合材料には勿論のこと、SUS板との接合部にも亀裂は認められなかった。さらに、実施例3では、これも複合材料には勿論のこと、Si34製の動翼との接合部にも、SUS製の軸との接合部にも亀裂は認められなかった。このことは、緩衝材である複合材料自身を含めて接合部にも亀裂や破壊が生じないことを示している。
【0036】これに対して実施例4では、複合材料に亀裂は認められなかったものの、上層のプリフォーム中のSiC粉末の充填率が低すぎて適切でなかったため、Al23板との接合部に亀裂が認められた。また、比較例2では、これも複合材料には亀裂は認められなかったものの、下層のプリフォーム中のSiC粉末の充填率が高すぎて適切でなかったため、これもアルミニウム板との接合部に亀裂が認められた。このことは、熱膨張係数を連続的に変化させた複合材料であっても、接合する部材に合わせて、熱膨張係数を適切に変化させなければならないことを示している。
【0037】
【発明の効果】以上の通り、本発明の複合材料であれば、熱膨張係数を連続的に順次変化させた複合材料とすることができるようになった。このことにより、緩衝材である複合材料自身は勿論のこと、接合する相手側との接合部にも亀裂や破壊が生じない複合材料とすることができるようになった。
【出願人】 【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
【出願日】 平成12年5月23日(2000.5.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−335899(P2001−335899A)
【公開日】 平成13年12月4日(2001.12.4)
【出願番号】 特願2000−151049(P2000−151049)