| 【発明の名称】 |
内燃機関用バルブシートおよびその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】林 幸一郎
【氏名】河田 英昭
【氏名】坪井 徹
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| 【要約】 |
【課題】高価な硬質粒子を分散させることなく基地組織を最適化して耐摩耗性を確保し、被削性を向上させるとともに低廉化を達成することができるバルブシートを提供する。
【解決手段】金属組織がベイナイト単相のみ、もしくはベイナイトとマルテンサイトの混合相のみからなる組織を呈するとともに、断面におけるベイナイトとマルテンサイトの面積比が100:0〜50:50であって、かつ、基地硬さが250〜850Hvの範囲内である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属組織がベイナイト単相のみ、もしくはベイナイトとマルテンサイトの混合相のみからなる組織を呈するとともに、断面におけるベイナイトとマルテンサイトの面積比が100:0〜50:50であって、かつ、 基地硬さが250〜850Hvの範囲内であることを特徴とする内燃機関用バルブシート。 【請求項2】 質量比で、Mo:0.4〜4%、C:0.2〜1.1%を含むことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用バルブシート。 【請求項3】 Cが共析組成量または亜共析組成量であることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関用バルブシート。 【請求項4】 質量比で、Ni:0.6〜5%、Cu:0.5〜5%、Cr:0.05〜2%、Mn:0.09〜1%およびV:0.05〜0.6%のうち少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする請求項2または3に記載の内燃機関用バルブシート。 【請求項5】 金属組織中に、MnS粒子、珪酸マグネシウム系鉱物粒子、CaF2粒子、BN粒子、MoS2粒子およびFeS粒子のうち少なくとも1種が、質量比で、0.1〜1.5%さらに分散することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関用バルブシート。 【請求項6】 気孔中にアクリル樹脂、および鉛または鉛合金のいずれかが充填され分散していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関用バルブシート。 【請求項7】 質量比で、Mo:0.4〜4%、C:0.2〜1.1%を含み、金属組織がベイナイト単相のみ、もしくはベイナイトとマルテンサイトの混合相のみからなる組織を呈するとともに、断面におけるベイナイトとマルテンサイトの比が100:0〜50:50であって、かつ、基地硬さが250〜850Hvの範囲内であるバルブシートの製造方法において、上記Moの全量に相当する含有量のMoおよび残部Feならびに不可避不純物からなるFe−Mo合金粉末と、上記Cの全量に相当する黒鉛粉末とを混合し、この混合粉末を成形後に焼結して製品とすることを特徴とする内燃機関用バルブシートの製造方法。 【請求項8】 質量比で、Mo:0.4〜4%と、C:0.2〜1.1%と、さらにNi:0.6〜5%、Cu:0.5〜5%、Cr:0.05〜2%、Mn:0.09〜1%およびV:0.05〜0.6%のうち少なくとも1種以上を含み、金属組織がベイナイト単相のみ、もしくはベイナイトとマルテンサイトの混合相のみからなる組織を呈するとともに、断面におけるベイナイトとマルテンサイトの比が100:0〜50:50であって、かつ、基地硬さが250〜850Hvであるバルブシートの製造方法において、バルブシートを構成する成分元素のうち少なくとも上記Moの全量に相当する含有量のMoをFeに固溶させた合金粉末と、上記Cの全量に相当する黒鉛粉末とを混合し、この混合粉末を成形後に焼結して製品とすることを特徴とする内燃機関用バルブシートの製造方法。 【請求項9】 MnS粉末、珪酸マグネシウム系鉱物粉末、CaF2粉末、BN粉末、MoS2粉末およびFeS粉末のうち少なくとも1種を質量比で0.1〜1.5%用いることを特徴とする請求項7に記載の内燃機関用バルブシートの製造方法。 【請求項10】 焼結体の気孔中にアクリル樹脂、および鉛または鉛合金のいずれかを含浸もしくは溶浸することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の内燃機関用バルブシートの製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば内燃機関等に使用して好適な鉄基焼結バルブシートおよびその製造方法に係り、特に、基地を改善して高温耐摩耗性とともに被削性を向上させる技術に関する。 【0002】 【従来の技術】自動車産業は、近年の不況に対処すべく、コスト低減の施策の下、過剰性能を抑制した各部品の最適設計を行っており、内燃機関のバルブシートについても必要な耐摩耗性の確保に加えて、切削性が良好であることおよび安価であることが、より一層厳しく求められている。本出願人も先に、特開平9−195012号、特開平9−195013号、特開平9−195014号、特開平11−335799号において、耐摩耗性とともに被削性を向上させた安価な耐摩耗性焼結合金を提案している。 【0003】特開平9−195012号公報で開示の耐摩耗性焼結合金は、全体組成が、質量比で、Ni:0.736〜9.65%、Cu:0.736〜2.895%、Mo:0.294〜0.965%、Cr:0.12〜6.25%、C:0.508〜2.0%で、■マルテンサイトと、■ソルバイトおよび/または上部ベイナイトの核を有し、その核を取り囲むベイナイトと、■Ni濃度の高いオーステナイトと、■Cr濃度の高いフェライトで覆われた主としてCr炭化物よりなる硬質相からなる組織を呈するものであり、Ni:1〜10%、Cu:1〜3%、Mo:0.4〜1%をFe粉に部分拡散付着させた粉末に、Cr:4〜25%、C:0.25〜2.4%、残部FeのFe−Cr系合金粉末を3〜25%、黒鉛粉を0.5〜1.4%を混合した粉末を用いることを骨子としている。 【0004】特開平9−195013号公報で開示の耐摩耗性焼結合金は、全体組成が、質量比で、Ni:0.736〜5.79%、Cr:0.12〜6.25%、Mo:0.294〜0.965%、C:0.508〜2.0%で、ベイナイトあるいはベイナイトとソルバイトの混合組織の基地中に、主としてCr炭化物よりなる硬質相の核を有し、その核を取り囲むCr濃度の高いフェライトとその周囲を更に取り囲むマルテンサイトの相が分散する組織を呈するものであり、Ni:1〜6%、Mo:0.4〜1%の合金粉末に、Cr:4〜25%、C:0.25〜2.4%、残部FeのFe−Cr系合金粉末を3〜25%、黒鉛粉を0.5〜1.4%を混合した粉末を用いることを骨子としている。 【0005】特開平9−195014号公報で開示の耐摩耗性焼結合金は、全体組成が、質量比で、Ni:0.736〜5.79%、Cr:0.12〜6.25%、Mo:0.368〜1.93%、C:0.508〜2.0%で、■ベイナイトあるいはベイナイトとソルバイトと、■マルテンサイトと、■オーステナイトの混合組織中に、主としてCr炭化物よりなる硬質相の核を有し、その核を取り囲むCr濃度の高いフェライトとその周囲を更に取り囲むマルテンサイトの相が分散する組織を呈するものであり、Mo:0.5〜2%で残部がFeの合金粉末にNi:1〜6%を部分拡散付着させた粉末に、Cr:4〜25%、C:0.25〜2.4%、残部FeのFe−Cr系合金粉末を3〜25%、黒鉛粉を0.5〜1.4%を混合した粉末を用いることを骨子としている。 【0006】特開平11−335799号で開示の耐摩耗性焼結合金は、Fe粉にNi粉を添加することで強化した基地に、前記特開平9−195012号公報、前記特開平9−195013号公報および前記特開平9−195014号公報で用いたFe−Cr系合金粉末を硬質相形成のために添加し、成形−焼結した焼結体に場合によって深冷処理を施すことにより組織中のオーステナイト量を適正化することを骨子としている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】このように本出願人も時代の要請に従い、耐摩耗性と被削性が良好であり、かつ安価であるバルブシート用耐摩耗性焼結合金を提供してきたが、近年の景気の低迷により、より一層の性能の最適化および低廉化が望まれている。 【0008】 【課題を解決するための手段】本出願人は基地組織を最適化することで、硬質相を分散させなくても必要な耐摩耗性が確保できることを見出し、硬質粒子の添加を廃することで、被削性を向上させるとともに価格も抑えたバルブシートの開発に成功した。すなわち、本発明のバルブシートは、金属組織がベイナイト単相のみ、もしくはベイナイトとマルテンサイトの混合相のみからなる組織を呈するとともに、断面におけるベイナイトとマルテンサイトの比が100:0〜50:50であって、かつ、基地硬さが250〜850Hvの範囲内であることを特徴としている。以下、本発明の限定理由を作用とともに説明する。なお、以下の説明において「%」は質量%を示すものとする。 【0009】マルテンサイトは、通常は焼入れ後焼戻したものが用いられるので、硬く強度が高いと一般には考えられている。しかしながら、マルテンサイト組織をバルブシートとして用いる場合には、通常は焼戻しを行わないために強度は他の組織よりも逆に低くなる。また、バルブシートは、通常、バルブガイドとともにエンジンヘッドに組み付けられた後、芯出し調整のため加工されるが、硬質なマルテンサイトは加工性を劣化させるため好ましくない。さらに、マルテンサイトは硬質であるが脆い組織であるため、エンジン運転時において相手材となるバルブを摩耗させるとともに、摩耗した組織が研磨粒子として作用し、相手材とともに自己についても摩耗が促進する。したがって、マルテンサイト単一の組織ではバルブシートとして使用できない。一方、フェライトおよびパーライトは硬さ、強度に乏しく耐摩耗性が低いため、バルブシートとしては不適当である。 【0010】以上の理由より、本発明者等が金属組織として着目したのがベイナイトである。本発明者等の検討によれば、ベイナイトはマルテンサイトに次いで硬く強度が高い組織であり、基地硬さが250Hv以上のベイナイトを単一組織としてバルブシートに用いた場合には、自己の耐摩耗性と相手攻撃性の少なさのバランスがとれて好適である。すなわち、基地がベイナイトであっても、基地硬さが250Hvを下回ると硬さが不足し、摩耗量が増大することが判明している。 【0011】本発明者等は、ベイナイトは単一で用いても良いが、さらに耐摩耗性を向上させるためにはベイナイトの基地組織中にマルテンサイトを50%まで分散させても良いことを見い出した。50%以上のマルテンサイトは、上記の性質が強く表れるようになり相手材攻撃性が高まって、耐摩耗性がかえって低下する。また、マルテンサイトが50%以下であっても基地硬さが850Hvより硬いマルテンサイトは、脆弱で相手攻撃性が高いためバルブシートとして不適である。 【0012】以上のように、ベイナイト単相のみもしくはベイナイトとマルテンサイトの混合相のみの基地で自己の耐摩耗性は十分で、それ以上の硬質相の存在はいたずらにコストの上昇を招く以上に、被削性を悪くし、さらに相手材への攻撃性を高めるため不要である。そして、上記のベイナイト単相もしくはベイナイトとマルテンサイトの混合組織は、冷却速度を操作し、恒温変態させて得ることもできるが、このような操作はコスト的に不利で、通常の焼結後の冷却において上記組織が得られることが理想である。そのためには、以下のような成分組成が望ましい。 【0013】上記バルブシートの金属組織を得易くするために、質量比で、Mo:0.4〜4%、C:0.2〜1.1%を含むとともに、Cが共析組成量または亜共析組成量であることが望ましい。Cが過共析組成量である場合には、セメンタイトが基地中に析出して硬質相として作用し、被削性および強度が低下するとともに相手部品に対する攻撃性が増加する。 【0014】また、一層の耐摩耗性の向上を望む場合には、上記バルブシートにおいて、質量比で、Ni:0.6〜5%、Cu:0.5〜5%、Cr:0.05〜2%、Mn:0.09〜1%およびV:0.05〜0.6%のうち少なくとも1種をさらに含むことが望ましい。さらに、一層の被削性の向上を望む場合には、上記バルブシートの金属組織中に、MnS粒子、珪酸マグネシウム系鉱物粒子、CaF2粒子、BN粒子、MoS2粒子およびFeS粒子のうち少なくとも1種が、質量比で、0.1〜1.5%さらに分散すること、および/または、バルブシートの気孔中にアクリル樹脂、および鉛または鉛合金のいずれかが充填され分散していることが望ましい。 【0015】上記成分の限定理由は以下のとおりである。 Mo:鋼中のMoは、図1に示すように、CCT(連続冷却変態)線図のパーライト領域を冷却速度の遅い側に移行させるとともにベイナイト領域を大きくする作用がある。したがって、適量のMoを含有することにより、焼結後の炉内冷却速度でベイナイト組織が得易くなる。また、Moは基地の焼戻し軟化抵抗を高める作用があり、加熱と冷却が繰り返されるバルブシートでは、使用中のへたりを防止する上で有効である。Moの含有量が0.4%未満であると上記効果が不十分で、基地組織中にパーライトが残留するようになる。また、Moの含有量が4%を超えると上記効果の向上が乏しくなるほか、Mo過共析炭化物(硬質相)が析出し易くなり、被削性を低下させるとともに相手材攻撃性が高まる。このMoの作用を基地全体に均一に得るためには、MoはFe−Mo合金粉末の形態で付与することが望ましい。 【0016】C:Cは、CCT線図のフェライト領域を冷却速度の遅い側に移行させ、焼結後の冷却速度でベイナイト単相の組織を得るため添加する。Cは合金粉末に固溶した形態で与えると粉末が硬くなって圧縮性が低下するため、全量を黒鉛粉末の形態で付与する。基地中のC量が0.2%未満であると上記した効果が不十分でフェライトが残留する。また、1.1%を超えると過共析炭化物(硬質相)が析出し、被削性が低下するとともに相手材攻撃性が高まる。より理想的には基地の共析組成になる量のC量が望ましい。 【0017】基地を強化して耐摩耗性の向上を図るために、下記の元素を追加して添加することができる。 Ni:Niは、基地に固溶して強化するとともに焼結後の冷却速度でマルテンサイトを得やすくするため添加する。この効果を得るためにはNiの含有量は0.6%以上必要である。一方、Niの過度の添加はマルテンサイト量を多くするとともに、耐摩耗性の低いオーステナイトが残留するようになるため、上限を5%とする必要がある。 【0018】Niの付与形態として、Fe−Mo合金粉末に固溶させて与えるとNiが均一になるためベイナイト単相組織が得やすい。一方、Niを単味粉あるいは前記Fe−Mo合金粉末に部分拡散により付着させた粉末の形態で与えると、基地中にNi濃度の高い部分が偏在することとなり、Ni濃度の高い部分がマルテンサイトに変態するためベイナイト組織中にマルテンサイトが分散する組織を得易い。ただし単味粉として用いる場合、Niの拡散が不十分であるとオーステナイトが残留するため焼結時間を長めに設定してNiの拡散を十分に行う必要がある。 【0019】Cr:Crは、Moと同様にCCT線図のパーライト領域を冷却速度の遅い側に移行するとともにベイナイト領域を拡張する作用がある。そのような作用を得るためにはCrの含有量は0.05%以上必要である。その作用を基地全体で均一に得るためと、Crは酸化し易いことから、Fe−Mo合金粉末に固溶させた合金粉末、あるいは他の元素と合金化した合金粉末の形態で付与することが好ましい。ただし過度の添加はCr炭化物の析出を引き起こし、相手材攻撃性が高め、被削性を低下させる。よってCr含有量の上限を2%とする必要がある。 【0020】Cu:Cuは、基地に固溶して強化するとともに焼結後の冷却速度でマルテンサイトを得やすくするため0.5%以上添加する。一方、過度の添加は、基地強化の効果向上に乏しくなるとともに基地中に軟質なCu相が析出するため上限を5%とした。 【0021】Mn:Mnは、基地に固溶して強化して耐摩耗性を向上させるとともに焼結後の冷却速度でマルテンサイトを得やすくする作用がある。そのような作用を得るためには、Mnの含有量は0.09%以上である必要がある。Mnは酸化しやすいのでFe−Mo合金粉末に固溶させた合金粉末、あるいは他の元素と合金化した合金粉末の形態で付与することが望ましい。一方、Mnの過度の添加は基地強化の効果を逆に滅殺するとともに、Mn炭化物の析出を引き起こし、これによって相手材攻撃性が高め被削性を低下させる。よって、Mnの含有量は1%以下とする必要がある。 【0022】V:Vは、Moと同様にCCT線図のパーライト領域を冷却速度の遅い側に移行するとともにベイナイト領域を拡張する作用がある。そのような作用を得るためにはVの含有量は0.05%以上必要である。また、その効果を基地全体で均一に得るためと、Vは酸化しやすいことから、Fe−Mo合金粉末に固溶させた合金粉末、あるいは他の元素と合金化した合金粉末の形態で付与することが好ましい。ただし過度の添加はV炭化物の析出を引き起こし、相手材攻撃性が高め被削性を低下させる。よって、Vの含有量は0.6%以下とする必要がある。 【0023】MnS、珪酸マグネシウム系鉱物、CaF2、BN、MoS2およびFeS:上記バルブシートの金属組織中にMnS、珪酸マグネシウム系鉱物、CaF2、BN、MoS2およびFeSのうちの1種もしくは2種以上の粒子を0.1〜1.5%分散させると好適である。これらは被削性改善成分であり、基地中に分散させることによって切削加工の際に切屑のブレーキングの起点となり、焼結合金の被削性を改善することができる。これら被削性改善成分の含有量は、0.1%未満であるとその効果が不充分であり、1.5質量%を超えて含有するとこれら被削性改善成分が焼結時に粉末どうしの拡散を阻害する結果、焼結合金の強度が低下する。よって、上記被削性改善成分の含有量は0.1〜1.5%とした。 【0024】アクリル樹脂、および鉛または鉛合金:また、上記バルブシートの気孔中に、鉛や鉛合金またはアクリル樹脂を含有させると好適である。これらも被削性改善成分であり、特に、気孔を有する焼結合金を切削すると断続切削となるが、鉛や鉛合金を気孔中に含有させることによって連続切削となり、工具の刃先への衝撃が緩和される。また、鉛や鉛合金は固体潤滑剤としても機能し、アクリル樹脂は切屑のチップブレーキングの起点となる機能がある。 【0025】次に、本発明のバルブシートの製造方法は、Mo:0.4〜4%、C:0.2〜1.1%を含み、金属組織がベイナイト単相のみ、もしくはベイナイトとマルテンサイトの混合相のみからなる組織を呈するとともに、断面におけるベイナイトとマルテンサイトの比が100:0〜50:50であって、かつ、基地硬さが250〜850Hvの範囲内であるバルブシートの製造方法において、Moの全量に相当する含有量のMoおよび残部Feならびに不可避不純物からなるFe−Mo合金粉末と、Cの全量に相当する黒鉛粉末とを混合し、この混合粉末を成形後に焼結して製品とすることを特徴としている。 【0026】また、本発明の他のバルブシートの製造方法は、Mo:0.6〜4%、C:0.2〜1.1%、Ni:0.6〜5%、Cu:0.5〜5%、Cr:0.05〜2%、Mn:0.09〜1%およびV:0.05〜0.6%のうち少なくとも1種以上を含み、金属組織がベイナイト単相のみ、もしくはベイナイトとマルテンサイトの混合相のみからなる組織を呈するとともに、断面におけるベイナイトとマルテンサイトの比が100:0〜50:50であって、かつ、基地硬さが250〜850Hvであるバルブシートの製造方法において、バルブシートを構成する成分元素のうち少なくともMoの全量に相当する含有量をFeに固溶させた合金粉末と、Cの全量に相当する黒鉛粉末とを混合し、この混合粉末を成形後に焼結して製品とすることを特徴としている。 【0027】ここで、上記製造方法において、MnS粉末、珪酸マグネシウム系鉱物粉末、CaF2粉末、BN粉末、MoS2粉末およびFeS粉末のうち少なくとも1種をさらに0.1〜1.5%混合することができる。また、上記製造方法において、焼結体の気孔中にアクリル樹脂、および鉛または鉛合金のいずれかを含浸もしくは溶浸することもできる。 【0028】 【実施例】表1に示す組成のFe−Mo系合金粉末、Ni粉末、Cu粉末、黒鉛粉末を用意し、表1に示す割合で粉末を混合した。この混合粉末を用いて成形圧力6.5ton/cm2で外径50mm、内径45mm、高さ10mmの円筒状に成形し、アンモニア分解ガス雰囲気中1180℃で60分間焼結して、表2に示す成分組成を有する合金(合金番号1〜50)を得た。 【0029】 【表1】
【0030】 【表2】
【0031】以上の合金の表面をナイタールで腐食してその顕微鏡写真から金属組織中のベイナイトとマルテンサイトの面積割合を画像解析装置(キーエンス社製)を用いて測定し、その結果を表3に示した。また、基地の硬さをマイクロビッカース硬度試験機を用いて測定し、基地硬さの最大値と最小値を表3に示した。また、以上の合金について圧環強さを測定するとともに、簡易摩耗試験を行った。その結果を表3に併せて示した。なお、簡易摩耗試験は、アルミ合金製ハウジングにバルブシート形状に加工した焼結合金を圧入嵌合し、バルブをモータ駆動による偏心カムの回転で上下ピストン運動させることにより、バルブのフェース面とバルブシートのシート面とを繰り返し衝突させる試験である。また、この試験での温度の設定は、バルブの傘をバーナーで加熱することにより行い、簡易的にエンジン室内での使用環境を模した試験とした。今回の試験では、偏心カムの回転数を2700rpm、バルブシート部分の試験温度を250℃、繰り返し時間を15時間に設定し、試験後のバルブシートおよびバルブの摩耗量を測定して評価を行った。 【0032】 【表3】
【0033】(1)Moの影響図2はMo量が互いに異なる各合金(合金1〜8)のMo量と基地硬さおよびベイナイト量(ベイナイトとマルテンサイトの混合組織におけるベイナイトの割合)との関係を示したもので、図3は各合金のMo量と摩耗量および圧環強さとの関係を示したものである。図2および図3から判るように、Moの含有量が0.4%になると基地硬さが急増し、バルブシートの摩耗量が急減するとともに圧環強さが増加している。そして、Mo量の増加に伴って基地硬さも増加し、バルブシート摩耗量が減少するとともに圧環強さが増加してゆく。Mo量が1.5%以上になるとマルテンサイトの割合が増加し、それに伴って基地硬さは増加するが、圧環強さは低下する。また、Mo量が3.5%を超えたあたりからバルブの摩耗量が増え始め、4%を超えた合金8ではバルブシートの摩耗も増加している。合金8では、マルテンサイトの割合が50%を超えるとともにMo過共析炭化物が生成して硬さが850Hvを超え、その結果、バルブの摩耗が促進されてバルブシートの摩耗量を増加させている。 【0034】(2)Ni量の影響図4はNi量が互いに異なる各合金(合金5,9〜15)のNi量と基地硬さおよびベイナイト量との関係を示したもので、図5は各合金のNi量と摩耗量および圧環強さとの関係を示したものである。図4および図5から判るように、Niの含有量が0.6%になると基地硬さが急増し、圧環強さが増加する。そして、Ni量の増加に伴ってマルテンサイト量と基地硬さが増加し、バルブおよびバルブシートの摩耗量が低い値で安定するとともに圧環強さも高い。しかしながら、Ni量が5%を上回る合金15では、マルテンサイト量が100%であるためにバルブシートの硬さが850Hvを超え、バルブおよびバルブシートの摩耗量が急増するとともに圧環強さも低下している。 【0035】(3)Fe−Mo系合金粉末中のNi量の影響図6はFe−Mo系合金粉末中のNi量を種々設定した各合金(合金16〜22)のNi量と基地硬さおよびベイナイト量との関係を示したもので、図7は各合金のNi量と摩耗量および圧環強さとの関係を示したものである。図6および図7から判るように、Niを4%含む合金粉末を使用した合金17,20〜22では、Niを1%含む粉末を使用したものと比べて基地が硬くバルブシートの摩耗量も少ない。 【0036】(4)Cr量の影響図8はCr量が互いに異なる各合金(合金16,23〜27)のCr量と基地硬さおよびベイナイト量との関係を示したもので、図9は各合金のCr量と摩耗量および圧環強さとの関係を示したものである。図8および図9から判るように、Crの含有量が0.05%以上で基地硬さが増加し、バルブおよびバルブシートの摩耗量が減少する。また、圧環強さは高い値で安定している。一方、Cr量が2%を超える合金27では、Cr炭化物の析出によりバルブの摩耗を促進し、その結果、バルブシートの摩耗も増加している。 【0037】(5)Cu量の影響図10はCu量が互いに異なる各合金(合金5,28〜33)のCu量と基地硬さおよびベイナイト量との関係を示したもので、図11は各合金のCu量と摩耗量および圧環強さとの関係を示したものである。図10および図11から判るように、Cuの含有量が0.5%以上で基地硬さが増加し、バルブおよびバルブシートの摩耗量が減少する。また、圧環強さは高い値で安定している。一方、Cu量が5%を超える合金33では、マルテンサイト量が50%を超えてバルブの摩耗を促進し、その結果、バルブシートの摩耗も増加している。 【0038】(6)C量の影響図12はC量が互いに異なる各合金(合金34〜39)のC量と基地硬さおよびベイナイト量との関係を示したもので、図13は各合金のC量と摩耗量および圧環強さとの関係を示したものである。図12および図13から判るように、Cの含有量が0.2%以上で基地硬さが増加し、バルブおよびバルブシートの摩耗量が急減するとともに圧環強さが急増する。一方、C量が1.1%を超える合金39では、過共析炭化物が析出するとともにマルテンサイト量が50%を超えてバルブの摩耗を促進し、その結果、バルブシートの摩耗も増加している。 【0039】(7)MnS量の影響図14はMnS量が互いに異なる各合金(合金12,40〜44)のMnS量と基地硬さおよびベイナイト量との関係を示したもので、図15は各合金のMnS量と摩耗量および圧環強さとの関係を示したものである。図12および図13から判るように、MnS量が変化しても基地硬さは250Hv以上で変わらず、また、1%程度まではバルブおよびバルブシートの摩耗量は低い値で安定している。 【0040】(8)被削性改善成分の影響図16は各種被削性改善成分を含有する合金(合金41,45〜48)の基地硬さおよびベイナイト量を示したもので、図17は各合金の摩耗量および圧環強さを示したものである。図16および図17から判るように、被削性改善成分を含んでも基地硬さは250Hv以上であり、バルブおよびバルブシートの摩耗量も低い値で安定している。また、圧環強さも850MPa以上で安定している。 【0041】(9)溶浸・含浸の有無の影響図18は気孔中に被削性改善成分を溶浸または含浸させた合金(合金12,49,50)の基地硬さおよびベイナイト量を示したもので、図19は各合金の摩耗量および圧環強さを示したものである。図18および図19から判るように、被削性改善成分を含んでも基地硬さは250Hv以上であり、バルブおよびバルブシートの摩耗量も低い値で安定している。また、圧環強さも900MPa以上で安定している。 【0042】 【発明の効果】以上説明したように本発明においては、基地組織を最適化して耐摩耗性を確保したことにより高価な硬質粒子を廃することができ、被削性を向上させるとともに低廉化を達成したもので、安価で高品質なバルブシートを提供することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000233572 【氏名又は名称】日立粉末冶金株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年5月2日(2000.5.2) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100096884 【弁理士】 【氏名又は名称】末成 幹生
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| 【公開番号】 |
特開2001−316780(P2001−316780A) |
| 【公開日】 |
平成13年11月16日(2001.11.16) |
| 【出願番号】 |
特願2000−133915(P2000−133915) |
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