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【発明の名称】 |
耐熱性フェライト系ステンレス鋼材 |
| 【発明者】 |
【氏名】奥 学 【氏名】藤村 佳幸 【氏名】名越 敏郎 |
【課題】燃焼温度1400〜1500℃級ガスタービンの排気ガス経路に適した耐熱鋼材を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.03%以下,Si:1.5%以下,Mn:1.5%以下,Ni:0.6%以下,Cr:11〜19%,Nb:0.3%以下,V:0.1〜0.5%,N:0.02〜0.07%を含み、さらに必要に応じてCu,Mo,Ti,W,Zrの1種または2種以上を合計3質量%以下の範囲で含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、マルテンサイト相が0〜30体積%である金属組織を有する、高温強度,低温靱性および加工性に優れた耐熱性フェライト系ステンレス鋼材、特にガスタービンの排気ガス経路部材用鋼材 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 質量%で、C:0.03%以下,Si:1.5%以下,Mn:1.5%以下,Ni:0.6%以下,Cr:11〜19%,Nb:0.3%以下,V:0.1〜0.5%,N:0.02〜0.07%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、マルテンサイト相が0〜30体積%である金属組織を有する、高温強度,低温靱性および加工性に優れた耐熱性フェライト系ステンレス鋼材。 【請求項2】 さらに、Cu,Mo,Ti,W,Zrの1種または2種以上を合計3質量%以下含む請求項1に記載の鋼材。 【請求項3】 ガスタービンの排気ガス経路部材用である請求項1または2に記載の鋼材。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、発電プラントなどの事業用ガスタービンや産業用の小型ガスタービンなどの出側以降の排気ガス経路部材、例えば排気ディフューザー、排気ダクト、サイレンサー、脱硝装置などの耐熱部位に適する、耐熱性フェライト系ステンレス鋼材に関するものである。 【0002】 【従来の技術】発電プラントは、高い熱効率と優れた環境特性およびプラント運用性が要求されており、LNGコンバインドサイクル発電プラントがこれらを満足するシステムとして、各国で建設が進められている。近年、プラントの発電効率をさらに向上させるため、ガスタービンの燃焼温度を従来の1300℃級から1400〜1500℃級まで上昇させる計画が推進されつつある。 【0003】ガスタービンの出側以降の排気ガス経路部材、例えば、排気ガスダクト部や排気サイレンサー部のガス温度は、従来の1300℃級プラントでは、最高でも600〜700℃程度であった。これらの部材のうち、600℃以下の比較的温度の低い部分にはSUH409鋼が使用されてきた。一方、温度の高い部分には特開平6−228715号公報や特開平6−323108号公報に開示されているような、14Cr−Si−Nbを基本組成とするフェライト系ステンレス鋼が使用されてきた。ところが、1400〜1500℃級の高温燃焼型プラントでは、排気ガス経路部材の温度は650〜800℃程度にまで上昇することが予想される。そうなると、従来の材料および構造のままでは、長時間の使用によって、熱疲労破壊,高温高サイクル疲労破壊,クリープ破壊等の種々の破壊が生じ易くなる。また、長時間の加熱によって組織が大きく変化すると、例えば脆性的な析出物の生成等によって使用後の低温靭性が低下し、稼働時に脆性破壊を起こし易くなるといったことも考えられる。 【0004】これらの各種破壊を防止する手段として、i)排気ガス経路部の設計変更を行うこと、あるいは、ii)材料をより耐熱性および組織安定性の優れたものに変更することが考えられる。 【0005】i)のような設計変更は、基本的には板厚を厚くし、応力集中部には補強材を用いるよう対策を行うことになるが、その場合には材料総重量増加によるコスト増やダクト部組み立て時の溶接施工の負荷が大きくなる。さらに使用材料の厚肉化は当該部位での熱損失の増大を招くことから、高効率発電に支障をきたす要因ともなり得る。 【0006】一方、ii)のような材料面での改善としては、従来の低Crフェライト系ステンレス鋼に代えてマルテンサイト系ステンレス鋼やオーステナイト系ステンレス鋼の適用が考えられる。しかし、マルテンサイト系ステンレス鋼は強度が高いものの加工性に劣るという欠点がある。また、焼き戻しによって加工性を改善したとしても、650〜800℃という高温環境での使用は、フェライトと炭化物への分解を招き、さらにはオーステナイト相の生成を招く恐れがある。前者の場合にはフェライト系ステンレス鋼と同程度の強度しか期待できず、後者の場合には相変態による膨張・収縮と熱による膨張・収縮が重なって部材が局所的に大きく変形する危険性もある。この点は、従来から高温高強度フェライト系耐熱鋼として知られる2.25Cr系鋼,9Cr系鋼および12Cr系鋼を用いても同様である。また、オーステナイト系ステンレス鋼は、フェライト系ステンレス鋼に比べて熱膨張係数が大きいため、毎日稼働と停止を繰り返す発電プラントでは、溶接部などの応力集中部で熱疲労破壊が懸念され、結果として排気ガス経路部の設計変更も必要になると考えられる。さらに、オーステナイト系ステンレス鋼は一般に高価であるため、建設コストの増大を招くことにもなる。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】以上のように、現状では1400〜1500℃級コンバインド発電プラントの建設には、排気ガス経路部において従来の1300℃級からの設計変更、すなわち、部材の肉厚をより厚くすることを基本とした設計変更の必要が十分に考えられる。その際、材料面での改善としては、既存の鋼種の中から耐熱性,加工性等の特性ができるだけ優れたものを選択することで、発電効率の低下,建設コストの上昇および現場施工性の悪化を最小限とすることにとどまるものである。 【0008】従来の1300℃級の排気ガス経路部材と同程度の肉厚の材料によって、1400〜1500℃級プラントの排気ガス経路部を構成することが可能になれば、部材の重量増加や溶接施工の負荷増大によるコスト増を軽減でき、発電効率向上の阻害要因となることも解消されるであろう。しかし、650〜800℃という高温に曝され、かつ機関休止時には常温に戻されるという、厳しい繰り返し環境下での使用に耐えるだけの性能を安定して発揮し得る信頼性の高い材料は、多くの耐熱鋼が開発されている中にあっても、未だ特定されていないのが現状である。すなわち、1400〜1500℃級コンバインド発電プラントのガスタービン排気ガス経路部材用途に適した耐熱材料に関しては、未だ検討の余地が残っていると言える。 【0009】発電プラントに限らず、産業用小型ガスタービン等、他のガスタービン用途においても上と同じことが言える。つまり、ガスタービンの燃焼温度上昇に伴い、排気ガス経路部材に要求される特性は厳しいものとなりつつある。発明者らの検討の結果、このようなガスタービン排ガス用途に適用し得る耐熱材料の開発においては、一般的な耐熱性,加工性,溶接性等の特性を具備させることに加え、特に高温長時間使用時のクリープ破断強度を向上させること、および、長時間加熱後に常温に戻した際の靱性を十分に確保することが極めて重要であることがわかってきた。しかも、熱膨張係数の小さいフェライト系鋼種でこれを実現させる必要がある。 【0010】本発明は、このような要望を満足するガスタービンの排気ガス経路部材に適用可能なフェライト系ステンレス鋼材を提供することを目的とする。より具体的には、現状材14Cr−Si−Nb鋼との比較において、700℃のクリープ特性(破断強度)は1.5倍以上、加工性および長時間加熱後の低温靱性は同等以上であるフェライト系ステンレス鋼材の開発を目的とする。 【0011】 【課題を解決するための手段】発明者らは、1300℃級コンバインドサイクル発電プラントの排気ガスダクト材に適するとされる14Cr−0.8〜1.2Si−0.4〜0.6Nb鋼を用いて、6OO〜8OO℃における時効処理後の析出形態を詳細に調査した。その結果、Nb−Si添加鋼は、時効前にはNbが固溶状態にあり固溶強化により高温強度が改善されること、時効初期には一部のNbは金属間化合物として析出し、析出強化により高温強度が保たれること、長時間時効後には析出強化による強度上昇分が消失していき高温強度が低下することが明らかになった。さらに発明者らは、フェライト系ステンレス鋼の長時間時効後の高温強度に及ぼす合金元素の影響を調査・研究した結果、NとVを所定の量だけ添加することにより、Nb−Si添加鋼よりも析出強化の消失による高温強度の低下が少なく、優れた高温特性を維持するようになることがわかった。また、Nの上限値を厳密に規定することにより、優れた高温強度を有しながら、なおかつ加工性・靭性をも具備した鋼材が得られることを知った。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。 【0012】すなわち前記目的は、質量%で、C:0.03%以下,Si:1.5%以下,Mn:1.5%以下,Ni:0.6%以下,Cr:11〜19%,Nb:0.3%以下,V:0.1〜0.5%,N:0.02〜0.07%を含み、さらに必要に応じてCu,Mo,Ti,W,Zrの1種または2種以上を合計3質量%以下の範囲で含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、マルテンサイト相が0〜30体積%である金属組織を有する、高温強度,低温靱性および加工性に優れた耐熱性フェライト系ステンレス鋼材、特にガスタービンの排気ガス経路部材用鋼材によって達成される。 【0013】 【発明の実施の形態】図1に、フェライト系ステンレス鋼の高温強度特性およぴ靭性に及ぼすN量の影響を把握するため、12〜15Cr−0.05Nb−0.25V鋼を基本組成としてN量を変えた場合の700℃×1000時間のクリープ破断応力、および室温における伸びを示す。ここで、クリープ破断応力は、700℃で種々の応力でのクリープ破断試験を行い、1000時間の破断強さを求めた結果を示したものである。また、室温における伸びは、板厚2.0mmの冷延焼鈍板について室温で圧延方向に引張試験を行った場合の伸び(%)を示したものである。 【0014】図1からわかるように、700℃×1000時間のクリープ破断応力は、N含有量の増加にともない急激に上昇し、N:0.02質量%で約25N/mm2、同0.025質量%で約27N/mm2となる。この27N/mm2の値は、上述した現状の1300℃級発電プラント排気ガス経路の高温部で使用されている14Cr−Si−Nb鋼の約1.5倍、低温部で使用されているSUH409鋼の3倍以上の破断応力に相当する。 【0015】一方、室温での伸びは、N含有量の増加にともなって低下する。特にN含有量が0.07質量%を超えると、その低下は著しくなる。これは、N含有量の増加に伴い鋼が硬質化し延性が劣化するのに加え、本成分系においてはN含有量の増加とともにマルテンサイト量が増加するためであると考えられる。フェライト系ステンレス鋼として十分な加工性を得るためには、少なくとも30%以上の伸びが必要であり、この点から、N含有量は0.07質量%以下に制限される。 【0016】本発明鋼材の時効後(すなわち実際の使用を想定した長時間加熱後)の靱性については実施例にて詳述するが、600〜900℃で1000時間の時効を行っても、板厚2.0mmの場合、0℃で100J/cm2以上のシャルピー衝撃値を示しており、14Cr−Si−Nb鋼と同等以上の低温靱性を有することを確認している。 【0017】発明者らの詳細な調査によると、Nは、Vと結合して窒化物を形成し、高温強度の上昇に有効に寄与する。その効果はN含有量:0.02質量%以上で顕著となる。しかし、Nを過剰に添加すると鋼が硬質化するとともにマルテンサイト相の生成量が増加し、0.07質量%を超えて多量に含有させると延性低下を招く。このため、N含有量は0.02〜0.07質量%の範囲にする必要がある。N含有量の下限については0.025質量%以上とすることがより好ましく、0.03質量%を超える量とすることがさらに一層好ましい。また、N含有量の上限は0.06質量%とすることがより好ましい。 【0018】Cは、一般的にはクリープ強度などの高温強度に対して有効な元素とされている。しかし反面、含有量が多くなると、酸化特性,加工性および靭性が低下する。また、本発明では後述のように固溶Nbによる高温強度の向上作用を利用するので、Cが多いとNbはこれらを固定する分として多くが消費されてしまうため好ましくない。このため、本発明ではCの含有量は低い方が望ましく、上限を0.03質量%に制限している。より好ましいC含有量上限は、0.02質量%である。 【0019】Siは、高温酸化特性の改善に非常に有効な元素である。しかし、Siを過剰に添加すると硬さが上昇し、加工性および靱性が低下することから、Si含有量は1.5質量%以下に制限する。より好ましいSi含有量の上限は1.0質量%である。 【0020】Mnは、フェライト系ステンレス鋼の高温酸化特性、特に耐スケール剥離性を改善する作用を有するが、過剰の添加は加工性および溶接性を劣化させる。また、Mnはオーステナイト相安定化元素であるため、過剰な添加はマルテンサイト相の生成量増加を招いて加工性を劣化させる。このため、Mn含有量のは1.5質量%以下に規定する。好ましいMn含有量範囲は1.0質量%以下である。 【0021】Niは、オーステナイト相安定化元素であるため、フェライト系ステンレス鋼に過剰に添加すると、Mnと同様にマルテンサイト相の増加を招き、加工性が劣化する。また、原料価格も高いため、過剰なNi添加は避けるべきである。そこで本発明では、Ni含有量を0.6質量%以下に規定する。より好ましいNi含有量の範囲は0.5質量%以下である。 【0022】Crは、フェライト相を安定化するとともに、高温材料に重要視される耐酸化性の改善に不可欠な元素である。耐酸化性の面からはCr含有量は多いほど好ましいが、過剰に添加すると鋼の脆化を招き、また硬さの上昇によって加工性も劣化する。本発明ではCrのこのような特性を考慮して、Cr含有量を11〜19質量%に規定している。特に好ましいCr含有量の範囲は12〜15質量%である。 【0023】Nbは、CおよびNを炭窒化物として固定する作用をもつ。また、C,Nを固定した残りの固溶状態にあるNbは、材料の高温強度の上昇に有効に作用する。しかし、本発明ではNを添加しているため、Nbを過剰に添加すると炭窒化物を多く生成し、その結果、靱性が劣化する。また、鋼材の製造コスト上昇にもつながる。したがって、Nbの過剰な添加は好ましくなく、Nb含有量範囲は0.3質量%以下とする。Nb含有量の下限は0.02質量%とすることがより好ましく、また上限は0.20質量%未満とすることがより好ましい。 【0024】Vは、本発明において高温強度の改善のために必要な元素である。本発明鋼材の使用時に想定される600〜800℃の温度範囲では、Vは主に窒化物として微細に分散析出している。このV窒化物はNb−Si添加鋼の場合よりも遅く析出し、なおかつ成長も遅いことから、特に長時間側の高温強度をより一層改善するものと考えられる。高温強度の観点から本発明の目的を達成するには、0.1質量%以上のV含有が必要となる。一方、V含有量の増加に伴い加工性・靱性が低下するため、V含有量の上限は0.5質量%以下に制限する。V含有量のより好ましい下限は0.2質量%、より好ましい上限は0.4質量%である。 【0025】Cu,Mo,Ti,WおよびZrは、高温強度の改善に有効な元素であり、その効果を十分に発揮させるためには、添加量は多いほど好ましい。これらの元素は、単独で用いてもよく、また2種以上を複合で添加してもよい。一方、あまり多量に添加すると鋼が硬質になり、また原料コストも高くなる。このため、Cu,Mo,Ti,WまたはZrを添加する場合は、これらの合計量が3質量%以下となるようにする。より好ましいCu,Mo,Ti,WおよびZrの合計含有量範囲は0.1〜2質量%である。 【0026】一般的な不純物元素であるP,S,Oなどは可能な限り低減することが好ましい。例えば、Pは0.04質量%以下、Sは0.03質量%以下、Oは0.02質量%以下に低減するのが良く、上述した加工性や靭性をさらに高いレベルで確保するためには、これらの不純物元素の上限をさらに厳密に規定しても構わない。また、一般に耐熱性を改善する元素として知られるAl,Y,REMや、熱間加工性や靭性を改善する元素として知られるCa,Mg,B,Co等の元素についても、必要に応じて適宜添加することによってそれぞれの効果を得ることができる。 【0027】マルテンサイト相は、使用温度650℃以下の範囲であれば高温強度の改善に非常に有効であることが知られており、マルテンサイト相の比率を高くすることによって高温強度を改善する試みは古くから行われてきた。しかし、本発明鋼材のように700℃以上の高温に曝されて使用される場合を想定すると、マルテンサイト相は焼き戻されるため高温強度の上昇にはさほど有効ではない。また、Ac1点が低い場合、マルテンサイト相は使用中にオーステナイト相へ変態するため、変態ひずみや鋼材の熱膨張係数が大きくなり、熱疲労特性の劣化原因にもなり得る。さらに、室温でマルテンサイト相が多いとフェライト単相鋼よりも延性が著しく低くなり、加工性に劣る。このため、本発明ではマルテンサイト相は少ないほど良い。発明者らの検討の結果、本発明では、使用前(焼鈍後の状態)において、鋼材中のマルテンサイト量は30体積%以下に制限すべきであることがわかった。フェライト単相である場合など、マルテンサイト相が全く存在しない状態(0体積%)であっても構わない。より好ましいマルテンサイト量は0〜20体積%である。 【0028】ここでいうマルテンサイト相には、焼入れままのマルテンサイト相の他、焼戻しマルテンサイト相も含む。鋼材中のマルテンサイト相は、鋼材断面のエッチングされた金属組織を例えば光学顕微鏡を用いて観察することによって同定できる。鋼材中に占めるマルテンサイト相の割合(体積%)は、上記のような金属組織観察においてマルテンサイト相の面積率を測定することで求まる。その測定には例えばコンピューターを用いた画像解析の手法が利用できる他、JIS G 0552(鋼のフェライト結晶粒度試験方法)におけるフェライトとパーライトの目測による面積百分率の判定法を応用することも可能である。 【0029】本発明鋼材の製造方法については、特に規定しないが、フェライト単相組織の場合は、熱延焼鈍状態のままで優れた耐熱性,加工性および靱性を呈する本発明の鋼材を得ることが可能である。マルテンサイト相を含有する場合は、フェライト単相鋼よりも延性が低くなるため、必要に応じて焼戻し処理をしても構わない。また、熱延のみによって所望の板厚の鋼板が製造できない場合は、冷延および焼鈍を1回または複数回繰り返すことによって熱延焼鈍板と同等の耐熱性を有する鋼板を得ることができる。さらに、このような鋼板を所望の形状に加工あるいは溶接(管の成形等も含む)しても本発明の目的とする特性を確保することができ、本発明の鋼材とすることができる。 【0030】 【実施例】表1に供試材の化学組成を示す。表1中、No.1〜14は本発明鋼材、No.15〜22は比較鋼材である。このうちNo.21はSUH409相当鋼、No.22は14Cr−Si−Nb鋼であり、これらは従来の1100〜1300℃級LNGコンバインドサイクル発電プラントの排気ガスダクト材に適するとされる鋼である。 【0031】 【表1】
【0032】真空溶解炉にて上記各鋼を溶製し、30kgのインゴットに鋳造した。その後、鋼塊を丸棒に鍛造し、焼鈍を行い、クリープ破断試験に供した。また、一部の鋼塊を板に鍛造し、熱間圧延、焼鈍、冷間圧延、仕上焼鈍を施し、得られた板厚2.0mmの冷延焼鈍板を金属組織観察,酸化試験および室温での引張試験に供した。さらに、冷延焼鈍板を700℃で1000時間加熱した後、シャルピー衝撃試験に供した。 【0033】金属組織観察は、鋼材断面をフッ酸と硝酸の混合液でエッチングした後、光学顕微鏡で観察し、JIS G 0052(鋼のフェライト結晶粒度試験方法)におけるフェライトとパーライトの目測による面積百分率の判定法に準拠して、マルテンサイト相の面積率を測定した。測定値は、表1に「マルテンサイト量(体積%)」として記載してある。 【0034】クリープ破断試験は、JIS Z 2272に準拠し、700℃で行った。試験中に付与する応カを試験ごとに変化させ、最長破断時間が5000時間程度となるようにクリープ破断曲線を作成し、1000時間の破断強度、すなわちクリープ破断曲線で破断時間が1000時間となるときの負荷応力を求めた。高温酸化試験は、JIS Z 2281に準拠し、700℃×1000時間の連続加熱によって行った。試験後に異常酸化の発生、すなわち板厚方向に貫通するこぶ状の厚い酸化物の発生の有無を目視にて観察した。シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242に準拠し、700℃×1000時間の時効を行った冷延焼鈍板を板厚2.0mmのサブサイズ試験片に加工して、0℃で試験を行い、シャルピー衝撃値を求めた。なお、シャルピー衝撃試験片は長手方向が圧延方向と垂直となるように採取した。室温での引張試験は、JIS Z 2241に準拠し、板厚2.0mmの冷延焼鈍板を13B号試験片に加工し、引張試験後の破断伸びを求めた。なお、引張試験片は長手方向が圧延方向となるように採取した。これらの結果を表2に示す。 【0035】 【表2】
【0036】発明例であるNo.1〜14の鋼材は、いずれも700℃×1000時間のクリープ破断強度がNo.21,22の現行材よりも優れているとともに、700℃×1000時間連続加熱後の外観(異常酸化の有無),700℃×1000時間時効後の0℃のシャルピー衝撃値も現行材と同程度の特性を有している。また、冷延焼鈍板の室温伸びも30%以上の値が得られており、ガスタービンの排気ガス経路部材等への加工は十分可能であると考えられる。 【0037】これに対し、N含有量が少ないNo.15,21,22はクリープ破断特性に劣っている。N含有量が多いNo.16は700℃×1000時間時効後の0℃のシャルピー衝撃値および冷延焼鈍板の室温伸びが劣るため、製品加工が十分にできなかったり使用中に靱性不足によって不具合を生じる恐れがある。Nb含有量が多いNo.18、およびV含有量が多いNo.20は時効後のシャルピー衝撃値が低い。Vを含有するがその量が少ないNo.19はクリープ破断特性に劣る。また、化学組成は本発明規定範囲にあるがマルテンサイト相の含有量が多すぎるNo.17は、室温伸びが低い。 【0038】 【発明の効果】従来、多くの耐熱鋼が開発されているにもかかわらず、燃焼温度1400〜1500℃級の高温燃焼型ガスタービンの排気ガス経路部材に適した特性を安定して発揮し得る鋼種は存在しなかった。その理由として、このような部材では材料温度が650〜800℃に達し、そのような高温に長時間曝され、その後常温まで戻されるという厳しい熱サイクルを繰り返し受けることが挙げられる。すなわち、材料には、■高温長時間加熱時のクリープ破断強度が高いこと,■長時間加熱後の低温靱性が十分確保されること、という厳しい特性が要求され、しかもこれらの特性を熱膨張係数の小さいフェライト系鋼にて実現しなくてはならない点が材料開発を難しくしていた。本発明は、この点を解決して、高温燃焼型ガスタービンの排気ガス経路部材に好適な新たな鋼種の開発を達成したものである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004581 【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年5月9日(2000.5.9) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100076130 【弁理士】 【氏名又は名称】和田 憲治 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−316774(P2001−316774A) |
| 【公開日】 |
平成13年11月16日(2001.11.16) |
| 【出願番号】 |
特願2000−136359(P2000−136359) |
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