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【発明の名称】 疲労特性および延性に優れた熱延鋼板およびその製造方法
【発明者】 【氏名】林田 輝樹

【氏名】脇田 淳一

【要約】 【課題】鋼の組成、結晶粒径、熱延条件等を特定の範囲にすることにより優れた延性および疲労特性を持つ熱延鋼板とその製造方法を提供する。

【解決手段】質量比にて、C:0.0009〜0.0045%、Mn:0.05〜0.7%、P:0.04〜0.09%、S:0.002〜0.01%、N:0.006%以下、Ti:(4C+3.4N)×1.2〜0.075%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、さらに鋼板表面より板厚内部に1/4厚みの位置におけるフェライトの平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とする疲労特性および延性に優れた熱延鋼板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 質量比にて、C:0.0009〜0.0045%、Mn:0.05〜0.7%、P:0.04〜0.09%、S:0.002〜0.01%、N:0.006%以下、Ti:(4C+3.4N)×1.2〜0.075%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、さらに鋼板表面より板厚内部に1/4厚みの位置におけるフェライトの平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とする疲労特性および延性に優れた熱延鋼板。
【請求項2】 質量比にて、C:0.0009〜0.0045%、Mn:0.05〜0.7%、P:0.04〜0.09%、S:0.002〜0.01%、N:0.006%以下、Ti:(4C+3.4N)×1.2〜0.075%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる鋳片を熱延工程を経て熱延鋼板とするにあたり、該鋳片を900℃以下860℃以上の温度で熱間圧延を終了し、圧延後の800℃以上の温度範囲では80℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、その後巻き取ることを特徴とする疲労特性および延性に優れた熱延鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、340〜480MPaの引張り強度を持つ熱延鋼板に係わるものであり、鋼板の組成、結晶粒径、鋳片の加熱温度、冷却条件などを特定の範囲にした疲労特性の優れた熱延鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】疲労特性に優れた熱延鋼板の製造技術については、種々考案されており、特開平5−51646号公報や、特開平5−295485号公報に示されるようにフェライトと微細なベナイトとする方法がある。しかし、これらの技術は、引張り強度が490MPa以上の鋼板を対象としたものであり、引張り強度が480MPa以下の鋼板に比べて延性は低く、降伏強度は高いため、高い加工が必要とされる部品には向いていない。自動車等に使用される部品では、480MPa以下の強度で、高い延性を持ち、なおかつ従来よりも高い疲労特性が必要とされるものも多い。
【0003】480MPa以下の引張り強度を持つ熱延鋼板で、疲労特性に優れた熱延鋼板の製造は、特開平5−345948号公報に記載されているように、極低炭素鋼にCuを添加する方法がある。しかし、この方法は、高温での強化を目的として高価なCuを添加したものであり、熱延での割れ防止のために、さらに高価なNi添加も必要となり、これら元素添加による製造コストアップが問題である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者らは、引張り強度が340MPa以上480MPa以下の鋼板について、大幅なコストアップとなる特殊な添加元素を必要としない組成範囲で、引張り強度(MPa)×延性(%)≧15000を保ち、さらに(疲労限度/引張り強度)≧0.53の疲労特性を有する鋼板およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋼の組成、熱延鋼板の結晶粒径、熱延条件などを特定の範囲とすることで良好な延性を保ち、疲労特性がきわめて良好になることを見いだした。
【0006】その要旨は、質量比にて、C:0.0009〜0.0045%、Mn:0.05〜0.7%、P:0.04〜0.09%、S:0.002〜0.01%、N:0.006%以下、Ti:(4C+3.4N)×1.2〜0.075%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、さらに鋼板表面より板厚内部に1/4厚みの位置におけるフェライトの平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とする疲労特性および延性に優れた熱延鋼板であり、これを製造するには、鋳片の熱間圧延において、900℃以下860℃以上の温度で熱間圧延を終了し、圧延後の800℃以上の温度範囲では80℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、その後巻き取ることを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明における鋼の化学成分の限定理由について説明する。
【0008】C量は少ない方が強度−延性バランスが良好になり、0.0045%以下でその効果は大きくなる。しかし、0.0009%未満になると、脱炭のためのコストが高くなるため好ましくない。したがってC量を0.0009%〜0.0045%に限定した。
【0009】Mnは、固溶強化による引張り強度向上や疲労特性向上の役割をはたし、0.05%以上は必要である。しかし、0.7%を超えると延性を低下させる。したがってMnは0.05〜0.7%でなければならない。
【0010】Pは、その添加量を増すことによる引張り強度向上がきわめて大きな元素で、少ないコストでの強度向上に適した元素である。340MPa以上の引張り強度を持たせるためには0.04%以上の添加が有効である。しかし、含有量が0.09%を超えると延性や引張り強度に対する疲労強度の低下が大きくなる。したがって0.04〜0.09%に限定した。
【0011】Sは、硫化物を形成し、割れの起点になる場合があり、延性や疲労特性を低下させる。そのため、0.01%以下が必要である。しかし、0.002%以下では、フェライト平均粒径が大きくなり疲労強度が低下する。したがって、S量を0.002〜0.01%に限定した。
【0012】Nは、強度に対する延性を低下させるので、低い方が好ましく、0.006%以下でなければならない。
【0013】Tiは、鋼中のCおよびNと結び付いて固溶Cおよび固溶Nを低減することで、鋼板の時効劣化を防止し、延性を確保するために必要な元素である。さらに、本発明においては、熱延板の結晶粒の粗大化を防止し、疲労特性を良好にするためにも必要な元素である。CおよびNと完全に結び付かせるには、(4C+3.4N)で表される量が必要であるが、本発明鋼においてはその1.2倍以上の量すなわち、(4C+3.4N)×1.2以上は必要であることを本発明者らは見いだした。Tiがこの量よりも少ないと、TiとC、およびTiとNが結び付いた析出物の量が少なく粗大粒が発生しやすくなり、結晶粒の粗大化によって疲労も低下する。さらに、固溶Cや固溶Nによる時効が起こるため、延性が大幅に低下する。しかし、その量が、0.075%を超えるとその効果が飽和する。したがって、Ti量を(4C+3.4N)×1.2〜0.075%に限定した。従来、Tiは特殊元素とされ、多量に使用すると大幅なコストアップとなるが、本発明は、上述のように使用量を微量とし、CuやNiなどに比べてきわめて低いコストで製造できるようにしたものである。
【0014】前記元素以外に鋼を製造する際に脱酸のために使用されるSiやALが鋼中に残存することはさしつかえない。ただし、延性の大幅な低下を防止するために、Siは0.2%以下、Alは0.1%以下が好ましい。
【0015】以上示した組成の熱延鋼板で、良好な疲労特性と良好な強度−ELバランスを有するためにはフェライトの平均結晶粒径が10μm以下でなければならない。
【0016】表2は、表1に示す本発明範囲内の組成を有する鋳片を1250℃に加熱し、本発明範囲内である860〜900℃を仕上温度とする熱延で3.0mmに仕上げた後、800℃までの温度範囲を7〜230℃/sの種々の冷却速度で冷却し、600℃で巻き取ることで、鋼板表面より板厚内部に1/4厚みの位置におけるフェライト平均粒径を7.6〜17μmの範囲に作り分けた熱延鋼板のフェライト平均粒径、引張り強度、延性を示したものである。冷却において、本発明外の7〜60℃/sで冷却した場合、フェライト平均粒径は、10.5μm以上となり本発明外になる。また、これらの鋼板の強度−延性バランスの良否は、引張り強度(MPa)×EL(%)の値で判定し、本発明で目指す強度範囲の鋼板における良加工性の目安として15000以上を目標にした。表2では、いずれもその値が15000以上となっており、良好である。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】図1は、上記表2に示される鋼板のフェライト平均粒径と疲労限度の関係を示したものであるが、10μm以下の場合に疲労限度が際だって向上していることがわかる。図2は、フェライト平均粒径と疲労限度比の関係を示したものであるが、10μm以下の場合に疲労限度比が、0.53以上となり良好であることがわかる。一方、フェライト平均粒径が10.4μm以上の場合は、引張り強度に対する疲労限度の比率は0.53未満であり、これは従来鋼板並みである。
【0020】このように、本発明組成の鋼板のフェライト平均粒径を10μm以下にすることにより、良好な強度−延性バランスを保ち、疲労限度比を上昇させることができる。その理由は、10μm以下の微細粒化によって疲労き裂の発生および進展を防止することができるためと考えられる。
【0021】なお、鋼板の引張り強度および延性は、JIS5号引張り試験片による測定値である。疲労限度は、30Rのノッチを両端面つけた試験片を繰り返し曲げによる疲労試験を行い、107回の繰り返し後に割れが発生しなかった最大応力を示したものである。フェライト平均粒径は、鋼板の断面をナイタールエッチングした後、光学顕微鏡で1000倍に拡大した写真を撮影し、これをJIS G 0552の切断法によって100における25mm平方中の結晶粒の数を求め、その結晶粒がいずれも同サイズの円であるとした場合の結晶粒1個の直径を示したものである。
【0022】また、本発明の請求項1で示した鋼板を製造するためには、熱延の仕上温度が860℃以上900℃以下でなければならない。900℃を超える仕上温度では、鋼板表面より板厚内部に1/4厚みの位置におけるフェライト粒径が10μm以下を確保するのは困難になり、疲労限度比が低下する。仕上温度が860℃未満では、延性の大幅な低下を招く。熱延後には、少なくとも800℃以上の温度域を80℃/s以上の平均冷却速度で冷却する必要があり、これよりも遅い冷却速度の場合は、フェライト平均粒径が10μmを超え、疲労限度比が低下する。
【0023】
【実施例】以下に本発明の実施例を比較例と共に示す。
【0024】表3に示す化学成分の鋼塊を製造し、同じく表3に示す熱延条件によって2.6mmの熱延鋼板とした。得られた熱延鋼板の鋼板表面より板厚内部に1/4厚みの位置におけるフェライト平均粒径も表3に示す。
【0025】
【表3】

【0026】表3のNo.1〜11は鋼の組成、熱延仕上温度、800℃以上の温度域の平均冷却速度、フェライト平均粒径ともに本発明の範囲内である。No.12〜19は、表3に下線で示される、鋼の組成、熱延仕上温度、800℃以上の温度域の平均冷却速度、フェライト平均粒径、のいずれか一つまたは複数が本発明範囲からはずれている。
【0027】これらの熱延鋼板の引張り強度、延性および疲労限度を前記測定方法と同様な方法で測定した。強度−延性バランスの良否を判定するために、TS(MPa)×EL(%)の値を使い、疲労強度の良否を判定するために、疲労限度/引張り強度の値(疲労限度比)を使った。
【0028】その結果を表4に示す。表4より成分、熱延条件のいずれも本発明の範囲に入っているものは、フェライトの平均粒径も本発明範囲内であり、これらは、TS(MPa)×EL(%)の値は、15000以上となっており良好である。さらに、疲労限度比は、0.53以上であり、これも良好である。
【0029】
【表4】

【0030】一方、組成、フェライト平均粒径などが本発明からはずれたものは、疲労限度比が0.53以上とはなっておらず、本発明鋼よりも疲労限度比が低い。結晶粒径が本発明範囲内に入っていても組成や熱延条件の一方、または複数が本発明範囲内からはずれたものは、TS(MPa)×EL(%)の値が15000未満であり、疲労限度比も本発明鋼より低い。
【0031】このように、組成、熱延条件、フェライト平均粒径のいずれも本発明範囲に入っている鋼板のみが、TS(MPa)×EL(%)の値が15000以上で、疲労限度比は0.53以上で、共に良好になることがわかる。
【0032】
【発明の効果】以上のように、鋼板の組成、フェライト平均粒径などを特定の範囲とすることで、引張り強度(MPa)×延性(%)≧15000を保ち、さらに(疲労限度/引張り強度)≧0.53の疲労特性を有する鋼板とすることができた。また、その鋼板を熱延工程で製造するためには、熱延における仕上温度、800℃以上の温度域における平均冷却速度などを特定範囲とすることにより製造することができた。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成12年5月11日(2000.5.11)
【代理人】 【識別番号】100105441
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 久喬 (外1名)
【公開番号】 特開2001−316765(P2001−316765A)
【公開日】 平成13年11月16日(2001.11.16)
【出願番号】 特願2000−138005(P2000−138005)