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【発明の名称】 非鉄金属材料の塑性加工用超硬合金
【発明者】 【氏名】日隈 正信

【要約】 【課題】非鉄金属材料の塑性加工に適した工具材料を提供する。

【解決手段】非鉄金属材料の塑性加工用工具材料を、炭化クロムおよび/または炭化モリブデンを含有する炭化タングステン−ニッケル系の高耐食性超硬合金とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 炭化タングステンを硬質相成分とし、結合相成分をニッケルとした超硬合金において、これに炭化クロムおよび/または炭化モリブデンを含有させた非鉄金属材料の塑性加工用超硬合金。
【請求項2】 合金中のニッケル含有量が5〜25質量%、炭化クロムおよび/または炭化モリブデンの含有量がニッケルとの合計量に対して5〜15質量%であり、かつ炭化クロムと炭化モリブデンの合計含有量がニッケルとの合計量に対して5〜20質量%である、請求項1に記載の超硬合金。
【請求項3】 ニッケルの30質量%までをコバルトで置換した、請求項1または請求項2に記載の超硬合金。
【請求項4】 チタンまたはチタン合金の塑性加工用の、請求項1、請求項2または請求項3に記載の超硬合金。
【請求項5】 ジルコニウムまたはジルコニウム合金の塑性加工用の、請求項1、請求項2または請求項3に記載の超硬合金。
【請求項6】 マグネシウムまたはマグネシウム合金の塑性加工用の、請求項1、請求項2または請求項3に記載の超硬合金。
【請求項7】 亜鉛合金の塑性加工用の、請求項1、請求項2または請求項3に記載の超硬合金。
【請求項8】 銅または銅合金の塑性加工用の、請求項1、請求項2または請求項3に記載の超硬合金。
【請求項9】 アルミニウムまたはアルミニウム合金の塑性加工用の、請求項1、請求項2または請求項3に記載の超硬合金。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チタン、チタン合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、亜鉛合金、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの非鉄金属材料の、圧延、曲げ、ロール成形、絞りなどの塑性加工に適した超硬合金に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の非鉄金属材料の塑性加工用工具材料としては、炭化タングステン−コバルト(WC−Co)系超硬合金、工具鋼または銅−アルミニウム(Cu−Al)系合金などが用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の非鉄金属材料の塑性加工用工具材料にあっては、WC−Co系超硬合金や工具鋼などの硬質材料を用いる場合は工具表面に被加工材が凝着しやすく、比較的軟質のCu−Al系合金などを用いる場合には、被加工材の凝着は生じ難いが工具の摩耗が早く、いずれの場合も再研削までの工具寿命が短いという問題点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の問題点を解決するために、従来の非鉄金属材料の塑性加工において、工具が短寿命である理由を検討した結果、まずWC−Co系超硬合金や工具鋼などの硬質材料の場合は、硬質ゆえに耐摩耗性には優れるものの加工液に対する耐食性に問題があり、使用中に工具表面が腐食されて微小な凹凸が生じ、そこに被加工材が凝着するため、被加工材の表面に傷が入るようになり工具寿命となることが分かった。またCu−Al系合金などの銅合金製工具は、耐食性に優れるので工具表面への被加工材の凝着は生じ難いが、比較的軟質なため摩耗しやすく、被加工材の寸法精度が低下してきて、工具寿命となることが分かった。本発明は、これらの知見に基づき、非鉄金属材料の塑性加工に適した工具材料を提供するものである。
【0005】従来、金属材料の塑性加工用の超硬合金には、WC−Co系超硬合金が用いられてきているが、炭化タングステン−ニッケル(WC−Ni)系超硬合金は用いられていない。この理由は、WC−Co系超硬合金が強さ、硬さなどの機械的性質に優れ、結合相量やWC平均粒度が同一の場合、WC−Ni系超硬合金はWC−Co系超硬合金に比べて強さや硬さが劣るため、金属材料の塑性加工には適さないと考えられてきたからと思われる。
【0006】しかし、非鉄金属材料は鉄鋼材料に比べて総じて軟質であり加工しやすいことと、前記のようにWC−Co系超硬合金は加工液に対する耐食性に問題があることから、WC−Ni系超硬合金の耐食性を炭化クロム(Cr)や炭化モリブデン(MoC)の添加によって向上させれば、本系合金はWC−Co系超硬合金に比べて機械的性質に劣るものの、非鉄金属材料の塑性加工に優れた性能を発揮し得ると想到した。
【0007】本発明において、合金中Ni量を5〜25質量%(以下、単に%と略記)としたのは、5%未満では合金強さが不足するからであり、25%を超えると硬さが低下して耐摩耗性が劣化するからである。
【0008】CrやMoCをWC−Ni系超硬合金に添加すると、これら炭化物がNi中に固溶して合金の耐食性を向上させることはよく知られているが、非鉄金属材料の塑性加工用の加工液には種々あり、超硬合金に対する腐食性は一定ではないので、それぞれの加工液に適した組成の合金とする必要がある。
【0009】ここで合金中Crおよび/またはMoC量をNiとの合計量に対して5〜15%としたのは、5%未満では耐食性の向上効果が不十分であり、15%を超えるとCrやMoを含む粗大炭化物が析出するようになって合金強さが低下するからであり、更にCrとMoCとの合計含有量をNiとの合計量に対して5〜20%としたのも同様の理由による。
【0010】上記のような組成範囲内で、それぞれの加工液に適し、かつ非鉄金属材料の塑性加工に必要十分な程度の機械的性質を有する超硬合金を得ることができる。
【0011】CrやMoCは、合金炭素量の調整のためにそれらの一部または全部に金属Crや金属Mo粉末を用いて添加してもよいが、その場合は炭化物に換算して含有量を求める。
【0012】また、結合相成分のNiの一部をCoで置換すると機械的性質が改善されるが、Coによる置換量が多くなるほど耐食性が低下するので、30%を超えて置換することは好ましくない。この場合のCrやMoC含有量はNiおよびCoとの合計量に対するものとすることは言うまでもない。
【0013】上記の超硬合金は、非鉄金属材料の中でも、特にチタン、チタン合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、亜鉛合金、銅、銅合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金の塑性加工用工具に適す。
【0014】
【実施例】種々粒度のWC粉末、平均粒度約2.5μmのNi粉末、同約1.5μmのCo粉末、同約1.5μmのCr粉末、同約3.5μmのMoC粉末を用いて、通常の超硬合金製造方法の工程を経て、1360〜1450℃−1時間の真空焼結、1350℃での熱間静水圧プレスにより、表1に示すような組成の本発明合金および比較合金試料を作製した。表中には合金中のWC平均粒度と、CrとMoCの合計含有量のNiとCoとの合計量に対する質量%も併示した。
【0015】
【表1】

【0016】これら試料の抗折力、硬さの測定結果、および各種加工液に対する耐食性を相対的に比較評価した結果を表2に示した。表中の加工液Aはチタンまたはチタン合金、Bはジルコニウムまたはジルコニウム合金、Cはマグネシウムまたはマグネシウム合金、Dは亜鉛合金、Eは銅または銅合金、Fはアルミニウムまたはアルミニウム合金の塑性加工に用いられる代表的な加工液である(但し、液組成は不詳)。本発明合金は比較合金に比べて、機械的性質と耐食性のバランスがよいことが分かる。
【0017】
【表2】

【0018】次に、本発明合金No.4の組成の合金を用いてチタンのチューブフォーミングロールを作製し、ベリリウム入りアルミニウム青銅製のロールと工具寿命を比較した。このときの加工液にはAを用いた。その結果、後者では約10トンの加工で摩耗により再研削が必要となったが、前者では約50トンの加工後でもなお寿命に至っていなかった。
【0019】また、本発明合金No.2と比較合金No.6の組成の合金を用いて、銅の仕上げ圧延用のロールを作製し、加工液Eを用いた場合のロール寿命を比較したところ、後者では約20トンの圧延で圧延材の表面に傷が入るようになり再研磨が必要になったが、前者では約70トンの圧延が可能であった。
【0020】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように、非鉄金属材料の塑性加工において顕著な効果を発揮するので、産業上極めて有用である。
【出願人】 【識別番号】000238016
【氏名又は名称】冨士ダイス株式会社
【出願日】 平成12年4月7日(2000.4.7)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−294968(P2001−294968A)
【公開日】 平成13年10月26日(2001.10.26)
【出願番号】 特願2000−144134(P2000−144134)