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【発明の名称】 畳じわの発生しない高加工性熱延鋼板及びその製造方法
【発明者】 【氏名】土師 純治

【氏名】脇田 淳一

【要約】 【課題】本発明は、低コストのB添加低炭素鋼を用い、固溶C量と固溶N量を十分に低減して畳じわの発生をなくした上で十分な延性を確保した加工用熱延鋼板およびその製造方法を提供する。

【解決手段】重量%で、C:0.015〜0.08%、Mn:0.05〜0.5%、Si:0.003〜0.5%、P:0.05%以下、S:0.005〜0.02%、Al:0.005〜0.3%、N:0.006%以下、B:0.8≦B/N≦2.5を含み、残部はFeおよび不可避的不純物から成り、固溶C量と固溶N量の合計が1.5ppm以下であることを特徴とする畳じわの発生しない高加工性熱延鋼板。また、前記成分の鋼片を再加熱した後、Ar3 変態点以上で圧延を完了し、30℃/秒以上の冷却速度で冷却して580℃以上で巻き取ることを特徴とする畳じわの発生しない高加工性熱延鋼板の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 重量%で、N :0.006%以下、B :0.8≦B/N≦2.5を含む通常の低炭素Alキルド鋼から成り、固溶C量と固溶N量の合計が1.5ppm以下であることを特徴とする畳じわの発生しない高加工性熱延鋼板。
【請求項2】 重量%で、C :0.015〜0.08%、Mn:0.05〜0.5%、Si:0.003〜0.5%、P :0.05%以下、S :0.005〜0.02%、Al:0.005〜0.3%、N :0.006%以下、B :0.8≦B/N≦2.5を含み、残部はFeおよび不可避的不純物から成り、固溶C量と固溶N量の合計が1.5ppm以下であることを特徴とする畳じわの発生しない高加工性熱延鋼板。
【請求項3】 重量%で、C :0.015〜0.08%、Mn:0.05〜0.5%、Si:0.003〜0.5%、P :0.05%以下、S :0.005〜0.02%、Al:0.005〜0.3%、N :0.006%以下、B :0.8≦B/N≦2.5を含み、残部はFeおよび不可避的不純物から成る鋼片を再加熱した後、Ar3変態点以上で圧延を完了し、30℃/秒以上の冷却速度で冷却して580℃以上で巻き取ることを特徴とする畳じわの発生しない高加工性熱延鋼板の製造方法。
【請求項4】 重量%で、C :0.015〜0.08%、Mn:0.05〜0.5%、Si:0.003〜0.5%、P :0.05%以下、S :0.005〜0.02%、Al:0.005〜0.3%、N :0.006%以下、B :0.8≦B/N≦2.5を含み、残部はFeおよび不可避的不純物から成る鋼片を1000〜1150℃の温度域で再加熱した後、Ar3 変態点以上で圧延を完了し、20℃/秒以上の冷却速度で冷却して580℃以上で巻き取ることを特徴とする畳じわの発生しない高加工性熱延鋼板の製造方法
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Bを添加した低炭素鋼による畳じわの発生しない加工用軟質熱延鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車や電機等の加工用鋼板を使用している業界では、冷延鋼板に替えて、安価な熱延鋼板あるいはそれを酸洗した鋼板を使用したいという要望が強い。そこで、熱延鋼板の品質に対する要求も冷延鋼板と同様に厳しくなりつつある。また、熱延鋼板の製造者側ではこの鋼板をいかに安く作るかが課題である。低炭素Alキルド鋼を用いた従来の加工用熱延鋼板の製造方法では、巻取り後にスキンパスラインを通板する。薄手材の場合は形状矯正の目的もあるが、板厚によらず、残留した固溶Cや固溶Nによる降伏現象が元で発生する腰折れとよばれる縞模様や畳じわとよばれるしわ模様を防止するという目的がある。スキンパスラインを通板して鋼板に均一歪みを与え可動転位を導入することにより降伏現象を抑えることができるのである。
【0003】ところで、ピッチが数mmから数cmもある腰折れに対して、畳じわはピッチが1mm以下程度の文字通り畳の目の様なしわ模様であって程度は軽い。しかしながら、上記のように冷延鋼板に替えて使用するような場合には、表面状態に対する要求は厳しく、腰折れは当然のことながら畳じわの存在も許されない。上記のようにスキンパスラインを通板するという方法では、通板工程が増えるために製造コストが高くなるという欠点がある。畳じわが発生しなければ、形状矯正の必要のない鋼板を熱延したまま使用する場合や、酸洗ラインでレベラーによって形状矯正する場合は、スキンパスラインを通板する必要がなく、製造コストを低く抑えることが可能である。腰折れの発生しない熱延鋼板の製造方法に関しては、いくつか提案されている。たとえば、特開平4−56732号公報では、B添加鋼を用いてAr3 変態点以上で圧延し、圧延後の冷却速度を制御した後300〜500℃で巻き取るという方法が提案されている。しかしながら、畳じわの発生しない熱延鋼板やその製造方法に関して提案している例は見当たらない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、低コストのB添加低炭素鋼を用い、固溶Cと固溶Nを十分に低減して畳じわの発生をなくした上で十分な延性を確保した加工用熱延鋼板およびその製造方法の提供を課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】(1)重量%で、N:0.006%以下、B:0.8≦B/N≦2.5を含む通常の低炭素Alキルド鋼から成り、固溶C量と固溶N量の合計が1.5ppm以下であることを特徴とする畳じわの発生しない高加工性熱延鋼板。
(2)重量%で、C:0.015〜0.08%、Mn:0.05〜0.5%、Si:0.003〜0.5%、P:0.05%以下、S:0.005〜0.02%、Al:0.005〜0.3%、N:0.006%以下、B:0.8≦B/N≦2.5を含み、残部はFeおよび不可避的不純物から成り、固溶C量と固溶N量の合計が1.5ppm以下であることを特徴とする畳じわの発生しない高加工性熱延鋼板。
【0006】(3)重量%で、C:0.015〜0.08%、Mn:0.05〜0.5%Si:0.003〜0.5%、P:0.05%以下、S:0.005〜0.02%、Al:0.005〜0.3%、N:0.006%以下、B:0.8≦B/N≦2.5を含み、残部はFeおよび不可避的不純物から成る鋼片を再加熱した後、Ar3 変態点以上で圧延を完了し、30℃/秒以上の冷却速度で冷却して580℃以上で巻き取ることを特徴とする畳じわの発生しない高加工性熱延鋼板の製造方法。
【0007】(4)重量%で、C:0.015〜0.08%、Mn:0.05〜0.5%、Si:0.003〜0.5%、P:0.05%以下、S:0.005〜0.02%、Al:0.005〜0.3%、N:0.006%以下、B:0.8≦B/N≦2.5を含み、残部はFeおよび不可避的不純物から成る鋼片を1000〜1150℃の温度域で再加熱した後、Ar3 変態点以上で圧延を完了し、20℃/秒以上の冷却速度で冷却して580℃以上で巻き取ることを特徴とする畳じわの発生しない高加工性熱延鋼板の製造方法にある。
【0008】以下に本発明を詳細に説明する。本発明者らは、B添加低炭素鋼を用いて熱間圧延条件を種々変化させた実験を行った結果、Ar3 変態点以上で圧延を終了し、その後の冷却速度を十分にとった上580℃以上で巻き取ることにより、全く畳じわが発生しなくなることを発見した。この時、図1に示したように、畳じわが発生していない鋼板では、降伏現象の要因となる固溶Cと固溶Nの合計量が1.5ppm以下であることを見いだした。なお、この固溶Cと固溶Nの合計量は内部摩擦測定装置を用いて測定することができる。
【0009】上記の圧延条件の場合、BNは巻取り後に析出する。580℃以上でコイルに巻き取った後は非常に遅い速度で温度が低下するため、BNの析出ノーズから離れている温度域ではあるが、BNが十分に析出可能なのである。また、巻取り後にBNだけでなく、セメンタイトも十分に析出する。この温度域で析出したBNは比較的粗大であり、セメンタイトの析出核となるためにセメンタイトが析出し易いものと考えられる。よって、巻取り後のBNの析出量を増やすことが最も重要であり、そのためには、再加熱温度と圧延後の冷却速度の制御が必要となる。
【0010】再加熱温度はBNの析出核となるMnSの析出状況に影響を及ぼし、1000〜1150℃程度のMnSの析出ノーズ近傍では、BNの析出核となる大きさのMnSが析出し易い。また、圧延後の冷却速度を速めることにより、過冷による析出のエネルギーの増大をもたらし、BNの析出量が増える。この再加熱温度と圧延後の冷却速度による畳じわ発生の有無は図2のようになり、1000〜1150℃程度の再加熱温度であれば、冷却速度は20℃/秒以上であればよい。1150℃以上または950℃以下の再加熱温度であれば、30℃/秒以上の冷却速度が必要である。また、固溶Cと固溶Nを低減したことにより、延性も向上する。同程度の強度レベルの鋼板に対して5%以上も良好な伸びが得られる。
【0011】本発明が対象とする鋼板の成分及び成分範囲を限定した理由を述べる。Cは、硬化元素であり、C量が少ない程加工性に有利であるが、C量を低下させる脱炭処理の経済性を考慮してC量の下限を0.015%とした。また、C量が多くなると硬質になり加工性が劣化するので、C量の上限を0.08%とした。Mnは、靭性を付与するために必要な元素であると共に、BNの核となるMnSの構成元素であり、0.05%以上の量が必要である。また、Mn量が多くなると硬化して伸びを向上させる効果が飽和するので、上限を0.5%とした。
【0012】Siは、鋼の脱酸剤として添加されるが、多くなると硬化して加工性を劣化させるので、その範囲を0.003〜0.5%とした。Pは、不純物として不可避的に含有され伸びに悪影響を与えるので、上限を0.05%とした。SはBNの核となるMnSを析出させるのに必要な元素であり、0.005%以上必要である。しかし、多くなると硬化して加工性を劣化させるので、その上限を0.02%とした。
【0013】Alは、鋼の脱酸剤として添加され鋼中に含有されるが、Alは鋼中の固溶NをAlNとして析出させるため、Bと共に固溶N低減のためには重要な元素であって、0.005%以上必要である。一方、Al量が多くなるに応じて伸びが向上するが、0.3%を超えると硬化して加工性を劣化させるので、Alは0.005〜0.3%とした。Nは不可避的不純物として含有されるが、固溶Nのまま残留すると畳じわの発生原因となる。Bを添加することによってBNとして析出させることができるが、N量が多いとBNの量も多くせざるを得ず材質の劣化を招く。そのバランスからN量の上限を0.006%とする。
【0014】Bは、鋼中のNをBNとして析出させ、更にそれを核としてセメンタイトを析出させるので、本発明においては最も重要な元素である。BNは優先的に析出するが、AlNも一部析出するので、B/Nが0.8以上であれば固溶Nを十分に低減することができる。ただし、B/Nが高すぎても固溶Bが増えるだけで、経済性や加工性の低下を招くので上限を2.5とした。
【0015】
【発明の実施の形態】次に、発明の実施の形態を説明する。本発明は、加熱炉・粗圧延・仕上圧延・冷却帯・巻取り機からなる通常の連続熱間圧延プロセスにおいて実施される。その後は、そのまま出荷しても良いし、直接酸洗ラインを通板しても良い。溶鋼は通常の高炉法で溶製されたものの他電炉法のようにスクラップを多量に使用したものでもよい。スラブは、通常の連続鋳造プロセスで製造されたものでもよいし、薄スラブ鋳造で製造されたものでもよい。また、粗圧延後に粗バーを巻き取って保持するコイルボックスは、MnSの析出に有効であって、本発明に有利となる。更に巻き取った粗バーを巻き戻す際に先行する粗バーと接合して圧延する、いわゆる熱延連続化プロセスは材質ばらつきや生産性の観点から好ましい。
【0016】
【実施例】表1に示す成分の鋼片を用いて、表2に示す条件で加工用熱延鋼板を製造した。その結果を表2中に併せて記載している。本発明の成分範囲を外れるE〜Iの鋼種を用いて本発明で規定する製造条件で製造した比較例No.7〜11、本発明で規定する成分範囲の鋼種を用いて本発明で規定する製造条件を外れて製造した比較例No.12〜15では、いずれも腰折れや畳じわが発生している。それに対して、本発明例のNo.1〜6では畳じわが発生せず、伸びも良好であった。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の方法によれば、畳じわの発生しない高加工性熱延鋼板を低コストで提供することができ、さらにスキンパス工程の省工程化を図ることができる。よって、経済的なメリットは非常に大きい。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成12年4月4日(2000.4.4)
【代理人】 【識別番号】100074790
【弁理士】
【氏名又は名称】椎名 彊
【公開番号】 特開2001−288537(P2001−288537A)
【公開日】 平成13年10月19日(2001.10.19)
【出願番号】 特願2000−101854(P2000−101854)