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【発明の名称】 耐食耐摩耗性高強度Ni基合金
【発明者】 【氏名】井 山 和 昌

【氏名】▲高▼橋 栄

【要約】 【課題】耐食性、耐摩耗性に優れ、かつ高強度を有する射出成形機、押出成形機用の部材に適した合金材料を提供する。

【解決手段】重量%で、B:0.6〜3.2%、Si:0.5〜8%、Mo:5〜37%、Cr:0.1〜6%、残部Niおよび不可避的不純物からなり、Ni基の結合相にNi硼化物、Mo硼化物およびCr硼化物が分散していることを特徴とする耐食耐摩耗性高強度Ni基合金。
【特許請求の範囲】
【請求項1】重量%でB:0.6〜3.2%、Si:0.5〜8%、Mo:5〜37%、Cr:0.1〜6%、残部Niおよび不可避的不純物からなり、Ni基の結合相にNi硼化物、Mo硼化物およびCr硼化物が分散していることを特徴とする、耐食耐摩耗性高強度Ni基合金。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、射出成形機や押出成形機のシリンダ、スクリュおよびプランジャ等の耐食性、耐摩耗性および強度が同時に必要とされる部材に好適に用いることができる耐食耐摩耗性Ni基合金に係り、特に、その強度を向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】射出成形機や押出成形機のシリンダ、スクリュおよびプランジャのような部材は、高圧力、高速度で圧送される流動体と接触するため、それに抗するために耐食性、耐摩耗性が要求される。
【0003】従来からこのような用途に対応する材料として(1)Ni基自溶合金、(2)WC粒子分散Ni基自溶合金、(3)Mo−Ni系複硼化物合金および(4)耐食・耐摩耗Ni基合金が使用されてきている。
【0004】前記4種の合金のうちNi基自溶合金としてはNi−Cr−B−Si合金が挙げられ、この合金は耐食性および耐摩耗性に優れているため、鋼材表面の硬化材料として広く用いられている。しかしこの合金は、過酷な使用条件下における耐食性および耐摩耗性については必ずしも十分とは言えない。また、その強度も抗折力で約0.8GPaと小さい。
【0005】また、WC粒子分散Ni基自溶合金は、上記のNi基自溶合金に微細なWC粒子を分散させたものであり、優れた耐食性および耐摩耗性を示すため、プラスチック成形機のバレル等の機械部品として用いられている(例えば、本件出願人による特許出願に係る特開昭62−17264号公報参照)。しかし、この合金も材料強度が抗折力で約0.9GPaと小さい。
【0006】また、Mo−Ni系複硼化物合金は、MoNiBを主体とした硬質相をNi基の結合相によって結合した合金であり、耐食性および耐摩耗性に優れているため高腐食環境下における使用に適している(特公平5−5889号公報参照)。しかしこの合金も抗折力が約1.5GPaとやや低い。焼結温度も1125〜1225℃と高く、焼結と同時に鉄鋼材と接合して複合材料とするには不向きである。この焼結温度下では鉄鋼材の結晶粒粗大化により鋼材が劣化するからである。
【0007】また、耐食・耐摩耗Ni基合金としては、例えばCr−Mo−W−V−B−Si−Ni合金が知られている(特開平6−57360号公報参照)。しかし、この合金も耐食性および耐摩耗性は優れているものの抗折力は十分とはいえない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来知られている合金は、耐食性および耐摩耗性についてはある程度満足できるレベルにあるものの、強度上必ずしも十分なレベルにはなく、高い負荷が加わる機械部品への適用が難しいという問題がある。
【0009】本発明は、上記実状に鑑みなされたものであり、耐食性および耐摩耗性のみならず高強度を有するNi基合金を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、重量%でB:0.6〜3.2%、Si:0.5〜8%、Mo:5〜37%、Cr:0.1〜6%、残部Niおよび不可避的不純物からなり、Ni基の結合相にNi硼化物、Mo硼化物およびCr硼化物が分散していることを特徴とするNi基合金を提供する。
【0011】なお、本発明によるNi基合金を鉄鋼材と金属結合により複合化させてNi基合金複合材料を構成することも可能である。この場合、本件出願人による特許出願に係る特開平8−134569号公報に開示された複合化手法を同様に適用することができる。
【0012】以下に、本発明によるNi基合金の各成分元素の機能およびその適正範囲について述べる。なお、本明細書において、特に断わらない限り組成比を示すパーセンテージは重量%を意味する。
【0013】まずBは、焼結温度を低下させると共に、NiおよびMoと硼化物を形成し、合金の耐摩耗性を高める。B含有量は高くても低くても抗折力を低下させるので、0.6〜3.2%、好ましくは1.0〜3.1%とする。
【0014】また、Siは、Bと同様、焼結温度を低下させるので、鉄鋼材との複合化を焼結と同時に行うことに効果がある。焼結温度が低いと鋼材を劣化させずに焼結と複合化を同時に行うことが出来るので経済的に有利である。Si量の増加と共に焼結温度は低下するが、8%を超えると急激に抗折力が低下する。Si量が少ない場合も抗折力の低下と焼結温度の上昇をきたすので、下限を0.5%とする。従って、Si含有量は0.5〜8%、好ましくは2.5〜7%にする。
【0015】また、Moは、Bと硼化物を形成し、耐摩耗性を高めると共にNiを主とする結合相の耐食性を改善する効果がある。また、合金の結晶粒を微細化し、かつ強度、抗折力を著しく高める効果を有する。このような効果はMoが5%から生じ、40%超では逆に抗折力が低下する。この抗折力の低下は、Moの増加により焼結温度が高くなり、その結果高温焼結により結晶粒が粗大化するためと考えられる。したがって、Mo含有量は、5〜37%、好ましくは15〜32%とする。
【0016】また、Crは、Bと硼化物を形成し、耐摩耗性を高めるとともに抗折力も上昇させる。このような効果はCrが0.1%から生じ、6%超では逆に抗折力が低下する。この抗折力の低下はCrの上昇により焼結温度が高くなり、その結果高温焼結により結晶粒が粗大化するためと考えられる。従って、Mo含有量は、0.1〜6%とする。
【0017】次に、本発明によるNi基合金の製造法について説明する。Ni基合金は、NiB、Si、Mo、Cr、Niの粉末、もしくはこれらの元素のうち2種以上含有する合金粉を所定の分量秤量し、回転ボールミルによって48時間粉砕混合し、その後プレス成形し、焼結して製造される。
【0018】焼結は、真空中、還元性ガス中で行う。また、熱間静水圧焼結等の他の方法で行ってもよい。焼結温度は、合金の組成によって異なるが、1000〜1080℃で行う。焼結温度が低すぎると緻密化が完全ではなく、性能が低下し、また高すぎると結晶粒の粗大化により抗折力が低下する。
【0019】焼結された合金は、MoB、MoNiB、NiB、NiB、CrBなど硼化物の微細粒子をNi結合相に均一に分散した組織になっている。Ni結合相には、MoおよびSiが固溶している。
【0020】
【実施例】以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明のNi基合金を製造するに際し、表1に示す原料粉の配合比率からなる試料番号1〜6の合金粉末を配合し、ボールミルによりエチルアルコール中で混合粉砕した。次いで、この混合合金粉末を乾燥し、プレス成形し、真空中で焼結した。
【0021】
【表1】

【0022】本発明合金の試料番号1〜6の焼結温度を、表2に示す。焼結時間は、いずれも10分間である。
【0023】このようにして得た試料1〜6について、硬さ、比摩耗量、耐食性、抗折力の各種の性能試験を行った。これらの試験結果を、表2に併せて示す。
【0024】
【表2】

【0025】各種の性能試験の条件は、下記の通りである。
(1)摩耗試験試験機:大越式迅速摩耗試験機試験条件:摩擦速度 2.0m/sec摩擦距離:600m最終荷重:18.6kgf相手材料:SKD11(HRC58)
(2)腐食試験腐食液:塩酸20%溶液(22℃)
浸漬時間:5Hr(3)抗折試験試験方法:JIS H5501による3点曲げ坑折試験試験片の寸法:4×8×24mm、研削加工【0026】また、本発明合金と、比較例として4種の従来例合金との焼結温度、腐食減量、比摩耗量、硬度、抗折力を比較した。その結果を、表3に示す。
【0027】
【表3】

【0028】表3から分るように、本発明合金は、従来合金に比較して、耐腐食性、耐摩耗性、強度が万遍無く上位を占めており、総合的に優れている。特に腐食減量は、0.1mg/cm・hr以下と極めて優れた耐食性を示し、耐摩耗性、強度(抗折力)の面からみても従来合金に比べ同程度あるいは優れた性能を持っている。さらに、比較的低温での焼結が可能であるので鉄鋼材との複合化を焼結と同時に行うことができる利点を有している。
【0029】なお、本発明合金は、焼結温度が比較的低いので鋼材との複合化を焼結と同時に行うことができ、効率的生産、コスト面で有利である。
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、耐食性、耐摩耗性、かつ高強度を有し、高負荷のかかる機械部品に適した合金材料が得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
【出願日】 平成12年4月3日(2000.4.3)
【代理人】 【識別番号】100064285
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 一雄 (外3名)
【公開番号】 特開2001−288520(P2001−288520A)
【公開日】 平成13年10月19日(2001.10.19)
【出願番号】 特願2000−101475(P2000−101475)