| 【発明の名称】 |
Cu基合金、およびこれを用いた高強度高熱伝導性の鋳造物および鍛造物の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】美野 和明
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| 【要約】 |
【課題】成形物の形状寸法に制約がなく、簡単な製造方法によって高強度高熱伝導性の合金成形物を安価に製造することができるCu基合金、およびこれを用いるCu基合金成形物の製造方法を得る。
【解決手段】3〜20%(質量%、以下同じ)のAgと、0.5〜1.5%ののCrと、0.05〜0.5%のZrとを含む鋳造用Cu基合金の溶融物を鋳造により急冷凝固させて成形し、450〜500℃で析出時効処理を施して析出強化させる。または3〜8.5%のAgと、0.5〜1.5%のCrと、0.05〜0.5%のZrとを含む鍛造用Cu基合金の溶融物を鋳造により凝固させ、凝固物またはその熱間加工物に鍛造または圧延による加工熱処理と析出時効処理とを併用して所定の形状に成形すると共に析出強化させる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 3〜20質量%の範囲内のAgと、0.5〜1.5質量%の範囲内のCrと、0.05〜0.5質量%の範囲内のZrとを含み、残部がCuであることを特徴とする鋳造用Cu基合金。 【請求項2】 請求項1記載の鋳造用Cu基合金を溶融する第1工程と、第1工程で得られた溶融物を鋳造により急冷凝固させて所定の形状に成形する第2工程と、第2工程で得られた成形物に、450〜500℃の範囲内の温度で析出時効処理を施して析出強化させる第3工程とを含むことを特徴とする高強度高熱伝導性鋳造物の製造方法。 【請求項3】 3〜8.5質量%の範囲内のAgと、0.5〜1.5質量%の範囲内のCrと、0.05〜0.5質量%の範囲内のZrとを含み、残部がCuであることを特徴とする鍛造用Cu基合金。 【請求項4】 請求項3記載の鍛造用Cu基合金を溶融する第1工程と、第1工程で得られた溶融物を鋳造により凝固させる第2工程と、第2工程で得られた凝固物またはその熱間加工物に鍛造または圧延による加工熱処理と析出時効処理とを併用して所定の形状に成形すると共に析出強化させる第3工程とを含むことを特徴とする高強度高熱伝導性鍛造物の製造方法。 【請求項5】 請求項4において、第3工程の加工熱処理と析出時効処理とを550℃以下の温度で行うことを特徴とする高強度高熱伝導性鍛造物の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、Cu基合金、およびこれを用いた高強度高熱伝導性の鋳造物および鍛造物の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】高強度でしかも熱伝導性の高い金属材料は、例えば片面が3000℃の燃焼ガスと接触し他方の面が液体水素と接触するロケットエンジンのスラストチャンバーや核融合炉内の構造物など過酷な熱疲労を受ける分野の部材に用いられる。 【0003】これらの分野で使用される高強度高熱伝導性合金の例としては、例えば特開平4−198460号公報に記載されているような、Crを0.8%(以下、本明細書中「%」は全て質量%を表す)、Zrを0.2%含有するCu基合金を挙げることができる。このCu基合金は一般に、鋳造した後、鍛造・圧延などにより所定の形状に成形すると共に所定の熱処理を加えることにより高強度高熱伝導性の鍛造物が得られる。このCu基合金は、組成は同じでも加工熱処理の条件を調整することによって、熱伝導度を高いレベルに維持しながら引張強度を増大させることができる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかし最近になると、装置部材の使用条件が熱応力の発生という観点から過酷になると共に、既存材料ではクラック発生までの寿命が短いことが指摘され、より高い耐熱疲労性が要求されるようになってきている。金属材料の熱ひずみの発生を抑制するためには、熱伝導度を高めると共に熱疲労強度を向上させることが必要であるが、前者の熱伝導度の向上についてはほとんど限界に近づいているので、従来の金属材料と比べて熱伝導度を低下させることなく熱疲労強度を向上させることが課題になっている。 【0005】熱疲労強度を高めるには、一般に、使用温度において熱伝導度を低下させずに引張強さおよび引張耐力を高めればよいことがわかっている。そこで前記の要求に対して、前述のCr(0.8%)およびZr(0.2%)を含むCu基合金をベースとして、CrやZrの比率を更に増大させて加工度を高めることにより強度を上昇させることが試みられた。CrやZrの比率を高め、一方向に大きなひずみを与えるスウェージ加工や線引き加工によって繊維状の微細組織を生成させれば高強度が得られる。しかし、このものは延性が低下しているので熱疲労強度は期待するほど向上しないばかりでなく、成形物の形状に制限があるので十分な量の鍛造や圧延加工が施せず、任意形状の成形物として所望の強度を得ることが困難であった。従ってその用途は、高い強度と電気伝導性を利用した電気関係部材に限定されていた。 【0006】一方、新しい合金系として、例えば特開平6−279894号公報や「坂井ら:日本金属学会誌、第55巻(1991年)1382〜1391頁」に記載されているように、多量のAgを添加したCu基合金が開発されている。AgはCrやZrと同様に室温近くではCuへの固溶度が小さく、合金化による熱伝導度の低下は小さい。8.5%以上のAgを添加した前記Cu基合金は凝固時に共晶が生成する。十分な量の共晶組織が得られるように例えば15%のAgを添加したCu基合金は、そのインゴットに、前述のCu−Cr−Zr合金と同様、大きなひずみが一方向に加わるスウェージ加工や線引き加工を施すと、共晶組織が破壊されると共に繊維強化組織が生成するようになる。このとき得られる強度は極めて高いが、例えば鋳造丸棒から直径が1/10以下の線材を得るような強加工が必要となるので、この技術ではある程度以上の肉厚を有する成形物を製造することはできなかった。 【0007】更に、鍛造や熱処理などの繰り返しは製造コストを上昇させるので、強度レベルは従来と同等程度でよいから鍛造工程が不要な鋳造によって高熱伝導性かつ高強度の安価な金属材料が欲しいという要望もある。しかし従来このような金属材料は知られていなかった。 【0008】本発明は前記の課題を解決するためになされたものであって、従ってその目的は、成形物の形状寸法に制約がなく、簡単な鋳造または鍛造・圧延によって高強度高熱伝導性の金属成形物を安価に製造することができる金属材料、およびこれを用いた金属成形物の製造方法を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するために本発明は、3〜20%(質量%、以下同じ)の範囲内のAgと、0.5〜1.5%の範囲内のCrと、0.05〜0.5%の範囲内のZrとを含み、残部がCuである鋳造用Cu基合金を提供する。本発明はまた、前記鋳造用Cu基合金を溶融する第1工程と、第1工程で得られた溶融物を鋳造により急冷凝固させて所定の形状に成形する第2工程と、第2工程で得られた成形物に、450〜500℃の範囲内の温度で析出時効処理を施して析出強化させる第3工程とを含む高強度高熱伝導性鋳造物の製造方法を提供する。ここで「析出時効処理」とは、固溶体を所定温度に所定時間保持することにより組織内部に異相を析出させる処理を意味する。 【0010】本発明の前記鋳造用Cu基合金は、CrおよびZrを少量添加したCu基合金にAgを複合添加することによって、圧延や鍛造などを要しない鋳造によって、高い熱伝導性と高い強度を有する成形物が得られることがわかった。従ってこの鋳造用Cu基合金を用いれば、作業が簡易な鋳造によって大型製品など形状寸法に制限なく高強度高熱伝導性の鋳造物を製造することができる。 【0011】前記成分のCu基合金において、Agが3%未満では、得られる鋳造物の硬さが急激に低下し高強度高熱伝導性鋳造物が得られない。またAgが20%を越えても格段の効果はなく、コスト面から不利となる。前記において、Crが0.5%未満では、得られる鋳造物の硬さが急激に低下し高強度高熱伝導性鋳造物が得られない。Crの最大固溶量は0.7〜0.8%である。これ以上にCrを添加すると共晶反応が起こるが、これを超える量例えば1.5%のCrを添加した合金では冷却速度がかなり緩やかでない限り、完全な共晶反応が起こる前に凝固が終了する。Crが1.5%を越えると第2工程の冷却時に冷却速度によっては過大量のCr初晶が析出し、靱性や延性の点から好ましくない。また前記において、Zrが0.05%未満では400〜600℃での脆化を抑制する効果が不十分である。ZrはCrと同様に析出強化に有効な元素であり、最大固溶量は0.15%である。Zrを0.5%を越えて多量添加することは、前記Crの場合と同様の理由から不利益となる。 【0012】前記本発明の高強度高熱伝導性鋳造物の製造方法においては、第2工程で溶融物を遠心鋳造や金型鋳造などにより急速凝固させ、AgおよびCrを強制固溶させた過飽和固溶体をまず形成する。この際、急冷凝固によって、状態図におけるAg−Cuの共晶点である8.5%を越える量のAgが添加されていても固溶度以上のAgを固溶した組織が得られ、このことが強化に寄与する。その後、第3工程で析出時効処理を施すと、得られた鋳造物は強制固容量が多いので時効によって微細析出物が大量に析出し、このため強度が高くなる。 【0013】本発明はまた、3〜8.5%の範囲内のAgと、0.5〜1.5%の範囲内のCrと、0.05〜0.5%の範囲内のZrとを含み、残部がCuである鍛造用Cu基合金を提供する。本発明は更に、前記の鍛造用Cu基合金を溶融する第1工程と、第1工程で得られた溶融物を鋳造により凝固させる第2工程と、第2工程で得られた凝固物またはその熱間加工物に鍛造または圧延による加工熱処理と析出時効処理とを併用して所定の形状に成形すると共に析出強化させる第3工程とを含む高強度高熱伝導性鍛造物の製造方法を提供する。前記第3工程においては、加工熱処理と析出時効処理とを550℃以下の温度で行うことが好ましい。 【0014】本発明の前記鍛造用Cu基合金は、前記組成を有することによって、安価なCuを基としながら、前記高強度高熱伝導性鍛造物の製造方法に従うとき形状寸法に制限なく簡単な操作によって強度と熱伝導性とが共に優れた成形物を与えることがわかった。 【0015】前記成分のCu基合金において、Agが3%未満では得られる鍛造物の硬さが急激に低下し高強度高熱伝導性鍛造物が得られない。またAgが20%を越える量を添加してもその効果は小さくコスト面から不利となる。前記において、Crが0.5%未満では得られる鍛造物の硬さが急激に低下し高強度高熱伝導性鍛造物が得られない。Crが1.5%を越えると第2工程でCrの粗大な初晶が生成し、熱間鍛造時の鍛造性を著しく低下させる。前記において、Zrが0.05%未満では脆化の抑制に不十分であり、Zrが0.5%を越えるとCrと同様に過大析出により靱性や延性が低下する。 【0016】前記高強度高熱伝導性鍛造物の製造方法は、第2工程で得られた凝固物に鍛造または圧延による加工熱処理を施すことにより、結晶粒を微細化し、転位を導入して硬化する。このとき析出時効処理を併用するので、更に微細共晶相が均一に生成し、鍛造物の強度を更に向上させることができる。前記加工熱処理や析出時効処理は550℃以下のいわゆる温間または冷間で行うことが好ましい。550℃を越えると、加工硬化が小さいという理由だけでなく、AgやCrの析出物が一部固溶して析出物の粗大化を起こすために不都合である。一旦粗大化した析出物は温度を下げても細かくならず、析出強化は著しく減少する。 【0017】 【発明の実施の形態】以下、本発明を実施の形態により更に詳しく説明する。 (実施形態1) Cu基合金の調製それぞれ0%、2%、4%、8%、16%、30%のAgと、0.8%のCrと、0.2%のZrとを含み、残部がCuである合金組成物を溶融し、表1に示す実施例1〜4および比較例1,2のCu基合金を調製した。4%のAgと、それぞれ0%、0.2%、0.5%、1%、1.5%、2.5%のCrと、0.2%のZrとを含み、残部がCuである合金組成物を溶融し、表2に示す実施例5〜7および比較例3〜5のCu基合金を調製した。それぞれ2%、8%のAgと、0.8%のCrとを含み、ただしZrを含まず、残部がCuである合金組成物を溶融し表3に示す比較例6,7のCu基合金を調製した。 【0018】 【表1】
【表2】
【表3】
【0019】(実施形態2) 鋳造物の製造−1(Agの効果)表1に記載した実施例1〜4および比較例1,2の各Cu基合金の試料を溶融し、溶融物を銅製鋳型に流し込んで急冷凝固し、それぞれ約50グラムのインゴットを得た。次に前記各インゴットを480℃で1時間加熱して析出時効処理を施し、室温まで放冷して鋳造物を製造した。それぞれの鋳造物についてビッカース硬さを測定した。測定結果を図1に示す。図1は縦軸がビッカース硬さ、横軸がAg添加量を示している。 【0020】図1の結果から、3〜20%の範囲内のAgと、0.8%のCrと、0.2%のZrとを含み、残部がCuである実施例1〜4の鋳造用Cu基合金は、本発明の鋳造物の製造方法に従うとき硬さの優れた鋳造物を与えることがわかる。これに対してAgを全く含まないか含んでも3%未満である比較例1,2の試料は硬さが低下している。 【0021】(実施形態3) 鋳造物の製造−2(Crの効果)表2に記載した実施例5〜7および比較例3〜5の各Cu基合金の試料を溶融し、溶融物を銅製鋳型に流し込んで急冷し、それぞれ約50グラムのインゴットを得た。次に前記各インゴットを480℃で1時間加熱して析出時効処理を施し、室温まで放冷して鋳造物を製造した。それぞれの鋳造物についてビッカース硬さを測定した。測定結果を図2に示す。図2は縦軸がビッカース硬さ、横軸がCr添加量を示している。 【0022】図2の結果から、4%のAgと、0.5〜1.5%の範囲内のCrと、0.2%のZrとを含み、残部がCuである実施例5〜7の鋳造用Cu基合金は、本発明の鋳造物の製造方法に従うとき硬さの優れた鋳造物を与えることがわかる。これに対してCrを全く含まないか含んでも0.5%未満である比較例3,4の試料は硬さが著しく低下している。また1.5%を越えるCrを含む比較例5の試料は硬さに及ぼす効果が飽和している。 【0023】(実施形態4) 鋳造物の製造−3(引張強さ)表1に記載した実施例1、2および比較例1,6,7の各Cu基合金の試料を溶融し、溶融物を幅40mm、深さ40mm、長さ120mmのボード状の鋳鉄製鋳型で急冷凝固し、それぞれ約2キログラムのインゴットを得た。次に前記各インゴットを480℃で1時間加熱して析出時効処理を施し、室温まで放冷してそれぞれの鋳造物を製造した。 【0024】各鋳造物について引張試験を行った。引張試験は、25℃〜450℃の範囲内で行い、耐力と破断伸びとについて測定した。ここで耐力とは、0.2%の塑性ひずみを与えるための変形応力である。耐力の測定結果を図3に示す。また破断伸びとは、引張試験したときの破断ひずみ(%)である。破断伸びの測定結果を図4に示す。 【0025】図3、4の結果から、それぞれ4%,8%のAgと、0.8%のCrと、0.2%のZrとを含み残部がCuである実施例1および実施例2のCu基合金の鋳造物は、25℃〜450℃の広い温度範囲内で耐力、破断伸びが共に高い値を示し、特にAgを8%添加した実施例2では、鋳造であるにもかかわらず高価な鍛造加工を施した鍛造物に匹敵する高い引張り強度が得られている。一方、Agを添加しない比較例1の鋳造物は中〜高温域において引張り強度が低下し、Agが3%未満でZrを含まない比較例6の試料は測定温度全域で耐力が低く、高温域で破断伸びが急激に低下する。またAgが8%でZrを含まない比較例7の鋳造物は、測定温度全域で破断伸びが低い。 【0026】前記実施例1,2のCu基合金を用いて鋳造により製造した鋳造物について熱伝導度を測定したところ、300℃における熱伝導度はいずれも335〜355W/mKの範囲内という高い値の範囲に入っており、従来の高熱伝導性合金に匹敵する十分高い熱伝導度を有していた。 【0027】(実施形態5) 鍛造物の製造−1(温間圧延)実施例1のCu基合金試料を溶融し、溶融物を鋳型に流し込んで凝固し、得られたインゴットを、550℃で40mm厚から20mm厚まで圧延し、500℃で更に10mm厚まで圧延し、次に480℃に1時間保持して析出強化を行い、室温まで放冷して実施例8の鍛造物を製造した。比較のため、Agを含まない比較例1の試料について前記と同様の鍛造を行い、比較例8の鍛造物を製造した。 【0028】前記各鍛造物について、実施形態4と同様にして引張試験を行った。耐力の結果を図5に、破断伸びの結果を図6に示す。実施例8の鍛造物は、測定した全温度域で、Agを含まない比較例8の鍛造物より高い強度を示している。実施例8の鍛造物は、300℃における熱伝導度が実施例1のCu基合金を用いた鋳造物と同様の高い値を示した。 【0029】(実施形態6) 鍛造物の製造−2(熱間圧延)実施例1のCu基合金試料を溶融し、溶融物を鋳型に流し込んで凝固し、得られたインゴットを、750℃で40mm厚から20mm厚まで圧延し、更に500℃で10mm厚まで圧延し、次いで480℃に1時間保持して析出強化を行い、室温まで放冷して実施例9の鍛造物を製造した。比較のため、Agを含まない比較例1の試料について前記と同様の鍛造を行い、比較例9の鍛造物を製造した。 【0030】前記各鍛造物について、実施形態4と同様にして引張試験を行った。耐力の結果を図7に、破断伸びの結果を図8に示す。実施例9の鍛造物は、測定した全温度域で、Agを含まない比較例9の鍛造物より高い耐力を示し、比較例9の鍛造物と同等の破断伸びを示した。実施例9の鍛造物は、300℃における熱伝導度が実施例1のCu基合金を用いた鋳造物と同様の高い値を示した。 【0031】次に、本発明の鋳造物および鍛造物が高強度・高熱伝導性となる要因について詳しく説明する。本発明の鋳造用Cu基合金を用いて鋳造物を製造するに際しては、Agを含むCu基合金の溶融物を遠心鋳造や金型鋳造などで急速に凝固させることにより、AgおよびCrが強制固溶した過飽和固溶体がまず生成する。次にこの過飽和固溶体に450〜500℃の範囲内の温度で析出時効処理を施すと固溶体組織内に微細な異相が析出する。このとき、急冷凝固によって強制固容量が多くなり、従って析出時効によって析出する微細析出物の量が多くなるために鋳造物の強度が高くなる。 【0032】更に、急冷凝固した合金では、平衡状態の組織を示す一般的な状態図とは異なり、予想以上のAgを固溶した組織が得られる。従ってAgの添加量は、状態図の共晶点である8.5%を越えていても強化に有効に作用する。ただし、20%を越えるAgの添加は、強化に必要な凝固速度が大きすぎるため現実的ではなく、実際上の効果は減少する。 【0033】一方、鍛造または圧延による加工熱処理によって所望の形状に成形すると共に析出時効処理によって析出強化させる本発明の鍛造物の製造方法においては、Agの添加量をAgの共晶やCrの初晶が著しく生成しないように調整する必要がある。すなわち、Agの添加量が過大であるために最初の鋳造凝固時に粗大な共晶や初晶Crが現れた組織は、その後の熱間鍛造における鍛造効率を低下させる。例えば、CuとAgの2元素だけの合金系では、一般的な状態図から、共晶温度780℃で溶融が始まる。この部分溶融は鍛造または圧延の工程での熱間加工割れの要因となり、鍛造温度の上限を規制する必要も出てくる。 【0034】そこで、本発明の鍛造用Cu基合金では、第2工程において鋳造凝固時に過大量の粗大な共晶粒子や初晶Cr粒子が発生しないようにAgの添加量を状態図の共晶点である8.5%以下に規制した。これによって本発明の鍛造物は、鍛造効率が大幅に改善される。 【0035】更に、本発明の鍛造物製造方法の一具体例においては、温間(100℃越え550℃以下、望ましくは500℃以下)または冷間(室温〜100℃)での加工熱処理および析出時効処理によって析出強化を行い強度を向上している。析出強化により強度を高めるためには、組織内析出物の粒径は一般に1/100μmオーダーとすることが理想的であるが、Agの添加量を8.5%以下に規制し、かつ加工熱処理および析出時効処理を温間または冷間で行うことによって、望ましい粒径の異相微粒子が分散した高強度の鍛造物が得られるようになる。 【0036】上記のAgおよびCrの添加量の調整と加工熱処理との二つの強化機構は相互に助長しあっている。すなわち加工熱処理で導入される転位は異相粒子析出の核生成サイトとなって微細粒子の析出に寄与する。また、転位上のAgやCrの析出物は転位が加熱により消滅することを抑制し、高温強度の安定性を高めている。これらの合金元素は多いほど効果が大きい。しかし、これらの多くの元素は単体あるいは化合物の状態で鋳造/凝固時に初晶として析出するため、過大量の使用は後工程における鍛造性の劣化を招く。例えばCu−Crの2元素合金系では、Cr添加量が約0.7%を越えると、平衡状態を保った凝固の場合には初晶が析出する。従ってCrの適正な添加量は平衡状態では0.7%以下ということになる、実際には凝固速度が速いので、1.5%まで添加しても強度を上昇させることができる。本発明の鍛造用合金では、Crを適量添加することによって多量のAgを添加させたと同じ効果が得られ、そのため、鍛造効率を向上させると共に、Agの添加量が少なくて済むのでコストも低くなる。 【0037】本発明の鋳造用または鍛造用Cu基合金を調製するに際しては、CuにAgとCrとZrを添加し、通常の方法で溶融する。Agの単独添加ではなく、0.5〜1.5%の範囲内で適量のCrを添加することにより、Agの添加効果が相乗的に増大する。0.5%未満のCrは強度を向上させる効果が小さい。 【0038】Cu基合金へのZrの添加については、従来から、0.05〜0.2%のZrの添加が脱酸効果や粒界析出物の形状を抑制する効果があることは知られていた。しかし本発明では0.05〜0.5%のZrの添加が、400℃以上での引張延性の向上にも寄与している。 【0039】 【発明の効果】本発明の鋳造用Cu基合金はAgとCrとZrとをそれぞれ適量範囲で含んでいるので、本発明の鋳造物の製造方法により鋳造するとき、高強度高熱伝導性のCu基合金鋳造物が容易に製造できるようになる。本発明の鍛造用Cu基合金はAgとCrとZrとをそれぞれ適量範囲で含んでいるので、本発明の鍛造物の製造方法により鍛造するとき、高強度高熱伝導性のCu基合金鍛造物が容易に製造できるようになる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000099 【氏名又は名称】石川島播磨重工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年4月5日(2000.4.5) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100064908 【弁理士】 【氏名又は名称】志賀 正武 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−288517(P2001−288517A) |
| 【公開日】 |
平成13年10月19日(2001.10.19) |
| 【出願番号】 |
特願2000−103662(P2000−103662) |
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