| 【発明の名称】 |
耐震性および耐候性に優れた圧延形鋼とその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】山本 定弘
【氏名】横山 泰康
【氏名】諏訪 稔
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| 【要約】 |
【課題】この発明は、軸方向に作用する圧縮応力に対して、局部座屈を起こしにくく、且つ耐候性に優れた圧延形鋼およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:0.01〜1.5%,Mn:0.3〜2.0%、Cr:0.2〜1.0%、Cu:0.2〜1.0%、P≦0.05%、S≦0.01%、Al≦0.08%、N≦0.008%、必要に応じて、Ni:0.02〜1.5%,Mo:0.02〜0.7%,Nb:0.005〜0.1%,V:0.005〜0.3%,Ti:0.003〜0.1%の一種または二種以上を含有し、更にCu+Cr≧0.50%を満足し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、形鋼軸方向の引張試験において降伏強さから公称歪みで5%までの加工硬化指数が0.20以上である耐震性および耐候性に優れた圧延形鋼。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:0.01〜1.5%,Mn:0.3〜2.0%、Cr:0.2〜1.0%、Cu:0.2〜1.0%、P≦0.05%、S≦0.01%、Al≦0.08%、N≦0.008%を含有し、更にCu+Cr≧0.50%を満足し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、形鋼軸方向の引張試験においてフランジの降伏強さから公称歪みで5%までの加工硬化指数が0.20以上である耐震性および耐候性に優れた圧延形鋼。 【請求項2】 鋼組成として、更に、Ni:0.02〜1.5%,Mo:0.02〜0.7%,Nb:0.005〜0.1%,V:0.005〜0.3%,Ti:0.003〜0.1%の一種または二種以上を含有する請求項1記載の耐震性および耐候性に優れた圧延形鋼。 【請求項3】 請求項1または2記載の化学組成を有する鋼をAr3点以上で熱間圧延終了後、オーステナイトとフェライトの2相域から600℃以下まで、3℃/sec以上の冷却速度で冷却することを特徴とする形鋼軸方向の引張試験においてフランジの降伏強さから公称歪みで5%までの加工硬化指数が0.20以上である耐震性および耐候性に優れた圧延形鋼の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、高層建築物などの鉄鋼構造物の梁材などに用いられる形鋼で、特に地震時の耐局部座屈性および耐候性に優れた圧延形鋼およびその製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】今日の高層建築物には、巨大地震に見舞われた時、梁部材の塑性変形により地震エネルギーを吸収させ、大崩壊を回避する人的安全性を重視した限界状態設計法が適用される。建築物の梁部材には巨大地震の際、大きな引張、圧縮応力が加わり局部座屈を起こし、座屈した場所から亀裂が発生し崩壊に至る場合がある。従って、梁部材には優れた耐座屈性が要求される。 【0003】現在、梁部材としては、圧延形鋼の一つであるH形鋼が、大量にかつ安定して製造できるため、その優れた経済性と相俟って広く用いられているが、上述したように、限界状態設計法で使用される場合は、優れた耐座屈性が必要で、さらに外部構造物として用いる場合も多いことから、耐候性も要求されている。 【0004】建築用の耐候性形鋼については、例えば特開平8−199233号公報、特開平8−199289号公報、特開平8−199290号公報などがあるが、表面性状と耐候性の観点からの提案であり、耐座屈性および耐候性については記載されていない。鋼材、鋼管を対象に耐座屈性に着目した提案としては特開平10−331324号公報、特開平10−121653号公報などがあるが、これらの技術はフランジ、ウエブに全く同じ特性の鋼材が使用できる組立てH形鋼において有効な技術であり、圧延H形鋼のようにフランジ、ウエブが一体となっている圧延形鋼に適用することは難しい。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】圧延形鋼の場合、耐座屈性に関与している部位を明確にし、その部位の材質を制御することが重要であるが、上述したように、このような観点からの検討はおこなわれておらず、耐震性に優れた圧延形鋼が望まれている。 【0006】本発明は、軸方向に作用する圧縮応力による局部座屈を起こしにくく、なおかつ、外部構造用としても十分な耐候性を有する耐震性・耐候性に優れた圧延形鋼及びその製造方法を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、主に耐候性圧延H形鋼を対象に、フランジ、ウエブの特性と耐座屈性の関係を詳細に検討し、耐候性形鋼の耐座屈特性はフランジの特性に支配され、ウエブの寄与は極めて小さいことを見出した。すなわち、本発明は上記知見を基に、更に検討を加えてフランジとウエブを有する圧延形鋼についてなされたものである。 【0008】1. 質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:0.01〜1.5%,Mn:0.3〜2.0%、Cr:0.2〜1.0%、Cu:0.2〜1.0%、P≦0.05%、S≦0.01%、Al≦0.08%、N≦0.008%を含有し、更にCu+Cr≧0.50%を満足し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、形鋼軸方向の引張試験においてフランジの降伏強さから公称歪みで5%までの加工硬化指数が0.20以上である耐震性および耐候性に優れた圧延形鋼。 【0009】2. 鋼組成として、更に、Ni:0.02〜1.5%,Mo:0.02〜0.7%,Nb:0.005〜0.1%,V:0.005〜0.3%,Ti:0.003〜0.1%の一種または二種以上を含有する1記載の耐震性および耐候性に優れた圧延形鋼。 【0010】3. 1または2記載の化学組成を有する鋼をAr3点以上で熱間圧延終了後、オーステナイトとフェライトの2相域から600℃以下まで、3℃/sec以上の冷却速度で冷却することを特徴とする形鋼軸方向の引張試験においてフランジの降伏強さから公称歪みで5%までの加工硬化指数が0.20以上である耐震性および耐候性に優れた圧延形鋼の製造方法。 【0011】 【発明の実施の形態】以下、本発明で規定する機械的特性、成分組成、及び製造条件について詳細に説明する。 【0012】1.機械的特性加工硬化指数:0.20以上本発明では、圧延H形鋼において、フランジの降伏強度から公称歪で5%までの加工硬化指数を0.20以上とする。 【0013】図1に、0.12C−1.1Mn−0.32Cu−0.55Cr系鋼を用い、フランジ、ウエブにおける降伏強度から公称歪みで5%までの加工硬化指数(n値)を種々変化させた耐候性圧延H形鋼の耐座屈性を図2に示す試験機を用いた圧縮試験により評価した結果を示す。座屈発生限界歪はフランジの加工硬化指数を0.14から0.22に増加させた場合、1.7倍と大きくなるが、ウエブの加工硬化指数を増加させても大きくならず、すなわち、圧延H形鋼の耐座屈性はフランジの特性に支配され、ウエブの寄与は極めて小さいことが確認された。 【0014】図3は、フランジの加工硬化指数と座屈発生歪の関係を示すもので、フランジの加工硬化指数を0.20以上とした場合、ウエブの特性に関わらず、座屈発生歪は0.8%以上と優れた特性が得られる。このように、耐候性圧延形鋼において、フランジの降伏強度から公称歪みで5%までの加工硬化指数を0.20以上とすることにより、ウエブの特性に関わらず、耐座屈性が飛躍的に向上する。 【0015】2.成分組成C:0.03〜0.18%Cは、鋼の強度を確保するために0.03%以上添加するが、0.18%を超えて多量に含有した場合、靭性あるいは溶接性が劣化するため、0.03%以上、0.18%以下(0.03〜0.18%)とする。 【0016】Si:0.01〜1.5%Siは、脱酸のため必然的に含まれるが、強度を確保するため本発明では含有量を0.01%以上とする。1.5%を超えるとHAZ靭性及び溶接性が劣化するので、0.01〜1.5%とする。 【0017】Mn:0.3〜2.0%Mnは、鋼材の強度・靭性を向上させ、赤熱脆性の原因となるFeSの生成抑制のため、0.3%以上添加するが、2.0%を超えると焼入れ性を増加させ、溶接時に硬化相を生じ、割れ感受性が高くなるため、0.3〜2.0%とする。 【0018】P:0.05%以下、S:0.01%以下P,Sは鋼中に混入する不純物として不可避的に存在するが、Pの低減は粒界破壊の防止に有効であり、Sの低減は溶接熱影響部の水素割れ防止に有効であるため、P,Sの含有範囲をそれぞれ0.05%以下、0.01%以下とする。 【0019】Cu:0.2〜1.0%Cuは、耐候性を向上させるが、含有量が0.2%未満では十分な効果が得られず、1.0%を超えて添加されると析出硬化が著しく、また鋼材表面に割れが生じやすくなるため0.2〜1.0%とする。 【0020】Cr:0.2〜1.0%Crは、耐候性向上に有効であるが、0.2%未満では効果が小さく、1.0%を超えて添加すると溶接性やHAZ靭性を劣化させるので、0.2〜1.0%とする。 【0021】Al:0.08%以下Alは、脱酸のため、添加されるが、多量に含有すると鋼の清浄度を低下させ、溶接部の靭性を劣化させるため0.08%以下とする。 【0022】N:0.008%以下Nは、鋼中に含まれる不可避的な不純物であるが、多量に含まれるとHAZ靭性が劣化し、連続鋳造スラブの疵の発生を助長させるため、0.008%以下とする。 【0023】Cu+Cr≧0.50%本パラメータは、上記成分組成範囲内の形鋼に優れた耐候性を付与するものであり、Cu+Crが0.50%以上で、フランジの降伏強度から公称歪みで5%までの加工硬化指数を0.20以上とする耐候性圧延形鋼において、優れた耐候性が得られる。図4にフランジの降伏強度から公称歪みで5%までの加工硬化指数が0.20以上の耐候性圧延形鋼における耐候性に及ぼすCu,Crの影響を示す。 【0024】耐候性は湿潤、乾燥条件を繰り返した後の試験片の重量減少量を一般的な50キロ級Si−Mn鋼である0.12C−0.25Si−1.5Mn−0.015P鋼(基準材)と比較し、その比として求めた。図4より、Cu≧0.2%、Cr≧0.2%でかつCu+Cr≧0.50%の領域で基準材との重量減少量の比は0.8以下であり、優れた耐候性が得られている。 【0025】本発明は以上を基本成分とすることで、十分な特性が得られるが、更に特性を向上させるため以下の元素を一種又は二種以上添加することができる。 【0026】Ni:0.02〜1.5%Niは、母材の強度ならびに靭性を向上させるため0.02%以上添加するが、1.5%を超えて添加すると鋼材が高価となるため、0.02〜1.5%とする。 【0027】Mo:0.02〜0.7%Moは、焼入れ性を高めるとともに焼戻し軟化抵抗を高め、強度上昇に有効であり、特に中・高温強度に有効であり、0.02%以上添加する。0.7%を超えると溶接性を劣化させるとともに炭化物を析出し降伏比を上昇させるため、0.02〜0.7%とする。 【0028】Nb:0.005〜0.1%未満Nbは、微細炭窒化物の析出効果により強度上昇、靭性向上に有効であるが、0.005%未満では効果が得られず、0.1%以上添加すると、過度の析出効果により降伏比低下が妨げられるため、0.005〜0.1%未満とする。 【0029】V:0.005〜0.3%Vは、少量で常温、高温強度の上昇に有効であるが、0.005%未満ではその効果が十分得られず、0.3%を超えて添加すると溶接性を劣化させるため、0.005〜0.3%とする。 【0030】Ti:0.003〜0.1%Tiは、少量の添加により強度を上昇させ、また、TiNがHAZ部の結晶粒粗大化を抑制し、HAZ靭性を向上させるが、0.003%未満ではその効果が得られず、0.1%を超えて添加すると溶接の冷却過程でTiCが析出し、HAZ靭性が劣化するので、0.003〜0.1%とする。 【0031】3.製造条件本発明では熱間圧延条件、冷却条件を以下のように規定する。これらの規定は少なくともフランジの製造において満足されていれば良く、ウエブについては特にその製造条件は規定しない。 【0032】熱間圧延上記、好適成分の鋼スラブ、ブルーム等を加熱後、熱間圧延を行う。加熱温度は1350℃以上では圧延、冷却後の組織が著しく粗大化し、靭性が大幅に劣化する。一方、1050℃以下の場合、Ar3点以上で圧延を終了させることが難しくなるため、1050℃超え〜1350℃未満とすることが望ましい。熱間圧延は、仕上げ圧延温度がAr3点未満ではフェライトの圧延による加工硬化のため、降伏点が上昇し、0.20以上の加工効果指数が得られないため、Ar3点以上とする。 【0033】冷却条件ミクロ組織をフェライトと硬質相の混合組織とし、0.20以上の加工硬化指数とするため、圧延終了後、オーステナイトとフェライトの2相域から、600℃以下まで、冷却速度3℃/sec以上で冷却する。 【0034】 【実施例】(実施例1)表1に成分を示す鋼を用い、種々の製造条件により圧延H形鋼とし、耐座屈性および耐候性を評価した実施例を表2に示す。鋼1は40キロ級鋼、鋼2は50キロ級鋼を対象とし、試験体は200×200×8×12(mm),300×300×10×15(mm)で長さ800mmの圧延H形鋼とした。 【0035】耐候性は、いずれの鋼も本発明の化学組成範囲内であり、鋼1は40キロ級Si−Mn鋼(0.11C−0.22Si−0.9Mn−0.02P系)、鋼2は50キロ級Si−Mn鋼(0.12C−0.25Si−1.5Mn−0.015P系)と比較し、腐食減量は0.8倍以下で優れている。 【0036】耐座屈性は、本発明の範囲内となるフランジの加工硬化指数(n値)が0.20以上となる実施例3,4,7,8で、いずれのサイズの圧延H形鋼においても、圧縮歪0.8%で座屈が発生せず、優れている。一方、フランジの加工硬化指数(n値)が0.20未満となる実施例1,2,5,6では座屈が生じた。 【0037】 【表1】
【0038】 【表2】
【0039】(実施例2)表3に成分を示す鋼を用い、耐座屈特性および耐候性を評価した結果を表4に示す。試験体は300×300×10×15mm,長さ800mmの圧延H形鋼とした。形鋼圧延後、空冷により製造した実施例9、12,15、及びオーステナイト域(γ域)から加速冷却した実施例13はいずれも加工硬化指数が0.20未満であり、圧縮歪0.8%で座屈が発生した。 【0040】実施例18、19は、本発明の製造条件内であり、圧縮歪0.8%でも座屈は生じないものの、化学成分が本発明範囲外であり、腐食減量が50キロ級Si−Mn鋼の0.9倍以上であり、耐候性におとる。本発明条件を満足する実施例10,11、14,16,17は、優れた耐候性、耐座屈性が得られている。 【0041】 【表3】
【0042】 【表4】
【0043】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、軸方向に作用する圧縮応力に対して、局部座屈を起こしにくく、耐座屈性に優れ、巨大地震の際、大きな引張、圧縮応力が加わる建築物の梁材などに用いた場合、大崩壊を回避し、人的安全性を確保することが可能で、且つ、外部構造物として必要な耐候性を有している圧延形鋼が圧延後のオフラインでの熱処理を必要とすることなく、大量に得られので、産業上極めて有用である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004123 【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年3月6日(2000.3.6) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100058479 【弁理士】 【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外4名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−247935(P2001−247935A) |
| 【公開日】 |
平成13年9月14日(2001.9.14) |
| 【出願番号】 |
特願2000−60281(P2000−60281) |
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