| 【発明の名称】 |
機械強度特性および磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板 |
| 【発明者】 |
【氏名】河野 雅昭
【氏名】河野 正樹
【氏名】本田 厚人
【氏名】藤田 明男
【氏名】小森 ゆか
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| 【要約】 |
【課題】リラクタンスモータ等の鉄心素材に必要とされる、高磁束密度、低鉄損および高強度を高い次元で兼ね備えた機械強度特性および磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板を提供する。
【解決手段】質量百分率で、C:0.005 〜0.030 %、Siおよび/またはAl:0.03〜0.5 %、Mn:0.5 %以下、Sbおよび/またはSn:0.01〜0.40%、P:0.40%以下を、0.005 %以下に抑制したSおよび 0.005%以下に抑制したNと共に含み、かつV:0.0010〜0.015 %を、0.0030%以下に抑制したTiおよび0.0050%以下に抑制したNbと共に含有し、残部は鉄および不可避的不純物の組成とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 質量百分率でC:0.005 〜0.030 %、Siおよび/またはAl:0.03〜0.5 %、Mn:0.5 %以下、Sbおよび/またはSn:0.01〜0.40%、P:0.40%以下を、次の範囲に抑制したS, NS:0.005 %以下、N:0.005 %以下と共に含み、かつV:0.0010〜0.015 %を、次の範囲に抑制したTi, NbTi:0.0030%以下、Nb:0.0050%以下と共に含有し、残部は鉄および不可避的不純物の組成になることを特徴とする、機械強度特性および磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板。 【請求項2】 質量百分率でC:0.005 〜0.030 %、Siおよび/またはAl:0.03〜0.5 %、Mn:0.5 %以下、Sbおよび/またはSn:0.01〜0.40%、Ni:0.3 〜3.0 %、P:0.80%以下を、次の範囲に抑制したS, NS:0.005 %以下、N:0.005 %以下と共に含み、かつV:0.0010〜0.015 %を、次の範囲に抑制したTi, NbTi:0.0030%以下、Nb:0.0050%以下と共に含有し、残部は鉄および不可避的不純物の組成になることを特徴とする、機械強度特性および磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電気機器の鉄心材料として用いられる無方向性電磁鋼板、中でもリラクタンスモータなどの高速で運転するモータの鉄心素材として好適な、機械的強度が高く、かつ磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、省エネルギーに対する要請が強まるに伴って、電気機器類の高効率化指向が高まってきている。電動モータの分野でも効率アップのために、モータの鉄心素材である電磁鋼板について、その磁気特性の改善すなわち低鉄損、高磁束密度化が進められてきた。 【0003】一方、モータ自体も、従来のAC誘導モータに対し、より高効率なDCブラシレスモータやリラクタンスモータといった新しい構造のモータ開発が進められ、高特性化される趨勢にある。特にリラクタンスモータは、固定子だけでなく回転子にも電磁鋼板を用い、固定子との間に発生するリラクタンストルクを利用するタイプのモータで、DCブラシレスモータと比較すると効率は若干及ばないものの、高速回転時には極めて高い効率を有し、構造が簡単で組み立ても容易であるため安価でリサイクル性にも優れることから、現在注目を浴びている。リラクタンスモータの高効率化には、その構造上、低鉄損であることに加えて、特に磁束密度が高いことが求められる。また、回転子となる電磁鋼板には、上記のような優れた磁気特性に加えて、高速回転時の遠心力に耐え得る強度が必要とされる。 【0004】これまで、上記したような強度、磁束密度および鉄損等の諸特性に関し、個々の特性を改善することについては、種々の努力が払われてきた。例えば、無方向性電磁鋼板の高強度化に関しては、高合金化が主体に検討されてきた。例えば、特開昭60−238421号公報では、Siを 3.5〜7.0 %と高め、さらにMn:0.1 〜11.5%、Ni:0.1 〜20.0%、Co:0.1 〜20.0%、Ti:0.05〜3.0 %、W:0.05〜3.0 %、Mo:0.05〜3.0 %、Al:0.5 〜13.0%のうちから選んだ1種または2種以上を 1.0〜20.0%含有した素材を提案している。また、特開昭61−84360 号公報では、Ni:8〜20%、Mo:0.2 〜5.0 %、Al:0.1 〜2.0 %、Ti:0.1 〜1.0 %、Cr:1.0 〜10.0%と、NiとCrを多量に含有する溶鋼を急冷凝固法により製造することを提案している。しかしながら、これらの鋼板はいずれも、合金元素を多量に添加するものであるため、飽和磁束密度の低下を招き、ひいては磁束密度の低下を余儀なくされていた。 【0005】一方、磁気特性のうち、低鉄損化に関しては、従来から介在物の低減や焼鈍温度の高温化などにより、製品板の結晶粒を成長させ、磁壁の数を減らすことによって、履歴損を低減することが行われている。しかしながら、材料の強度σと結晶粒径dとの間には、Hall−Petch の式σ=σ0 +kd-1/2 (σ0 、k:定数) として知られる関係があるため、このような結晶粒を大きくする方法では、低鉄損化は達成されるにしても、強度が低下するため、リラクタンスモータのような強度が要求される部材には適用できない。 【0006】また、低鉄損化のための別の手法として、渦電流損を低減する目的でSi, Al,Mnなどの含有量を高め、鋼板の比抵抗を上げることも一般に行われてきた。しかしながら、これらの元素の添加により、鋼板の飽和磁束密度が低下するため、磁束密度の低下が避けられない。とはいえ、これらの元素の含有量が低い鋼板は、比較的高い磁束密度を有するものの、鉄損特性は劣化する。 【0007】一方、鋼板の磁束密度を改善する手法としては、熱延板の結晶粒径を粗大化する方法や、特公昭57−59293 号公報に開示されているような、SbやSnといった元素を微量添加して、集合組織を改善する方法などが知られているが、これらの技術を併用しても、強度、鉄損、磁束密度の全てを満たすことはできなかった。また、特表平6−507617号公報には、最大で 3.5%までのSi、 0.7%までのAl、1%より少ないMnを含む鋼に、Ni,Cu, Sb, Sn等を添加した、磁束密度の高い無方向性電磁鋼板が開示されている。しかしながら、この鋼は、製造段階では脱炭効率を考慮して、最大で0.06%までのCを含有することができると記載されているが、時効による磁気劣化を防止するためには望ましくは 0.003%以下まで脱炭処理を行う必要があった。また、この鋼によっても、リラクタンスモータに必要な強度および磁気特性を兼備させることはできなかった。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の実状に鑑み開発されたもので、リラクタンスモータ等の鉄心素材に必要とされる、高磁束密度、低鉄損および高強度を高い次元で兼ね備えた機械強度特性および磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板を提案することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、無方向性電磁鋼板の磁気特性および機械的特性に及ぼす合金元素および製造条件の影響、特に時効に起因した強度、磁気特性に及ぼす微量不純物元素の影響に着目して、詳細な検討を行った結果、(1) 適量のCを含有した素材に、Sb, Snの1種または2種を添加することによって、磁束密度を著しく改善できる、(2) また、この適量のCを含有した素材に、適量のVを含有させると共に、不純物として混入するTi, Nb量をそれぞれ0.0030%以下、0.0050%以下に抑制することによって、時効処理後の磁気特性を劣化させずに、強度の向上が図れることを見出し、固溶強化により強度を上昇させる反面、飽和磁束密度を大きく低下させてしまうSiやMn,Al等の合金元素を多量に添加することなしに、優れた磁気特性と機械強度特性を兼ね備えた無方向性電磁鋼板が得られることの知見を得た。 【0010】さらに、(3) この素材に適量のNiを添加することにより、上記(1) および (2)の素材あるいは適量のCを含有しない素材にNiを添加した場合と比較して、格段に優れた磁束密度の改善効果が得られる、(4) また、適量のNiを複合添加することにより、固溶強化効果は高いものの、素材を脆化させ、鋼板の製造あるいは加工が困難となるため多量添加が難しいとされたPの添加限界を拡張できることを見出し、かくして、時効後であっても優れた磁気特性(高磁束密度、低鉄損)と機械強度を高い次元で兼ね備えた無方向性電磁鋼板が、良好な製造性の下に得られることが究明されたのである。本発明は上記の知見に立脚するものである。 【0011】すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。 1.質量百分率でC:0.005 〜0.030 %、Siおよび/またはAl:0.03〜0.5 %、Mn:0.5 %以下、Sbおよび/またはSn:0.01〜0.40%、P:0.40%以下を、次の範囲に抑制したS, NS:0.005 %以下、N:0.005 %以下と共に含み、かつV:0.0010〜0.015 %を、次の範囲に抑制したTi, NbTi:0.0030%以下、Nb:0.0050%以下と共に含有し、残部は鉄および不可避的不純物の組成になることを特徴とする、機械強度特性および磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板。 【0012】2.質量百分率でC:0.005 〜0.030 %、Siおよび/またはAl:0.03〜0.5 %、Mn:0.5 %以下、Sbおよび/またはSn:0.01〜0.40%、Ni:0.3 〜3.0 %、P:0.80%以下を、次の範囲に抑制したS, NS:0.005 %以下、N:0.005 %以下と共に含み、かつV:0.0010〜0.015 %を、次の範囲に抑制したTi, NbTi:0.0030%以下、Nb:0.0050%以下と共に含有し、残部は鉄および不可避的不純物の組成になることを特徴とする、機械強度特性および磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板。 【0013】 【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明する。まず、本発明において、鋼材の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、以下に示す化学組成の%表示は全て質量百分率である。 C:0.005 〜0.030 %Cは、本発明の構成上重要な要素である。従来、Cは時効効果を有し、鋼板製造後、時間の経過と共に磁気特性(鉄損)を劣化させる元素であるので、無方向性電磁鋼板においては少ない方がよいとされてきた。しかしながら、発明者らの検討の結果、以下に述べるように、不純物として混入するTiとNbを極力抑制し、適量のVと共存させることによって時効磁気特性の劣化を回避でき、しかも時効による強度上昇を有効に利用できることが見出された。それと同時に、Cは、以下に示すSbやSnと共存した場合に、鋼板の集合組織を改善し、磁束密度を高める効果が大きいことも併せて見出された。鋼の製造過程において、鋼中に固溶しているCは圧延時に粒内歪みを蓄積させ、粒内変形帯の生成を促進するため、再結晶焼鈍時に粒内変形帯からの{100}近傍の再結晶を促進するものと考えられる。この効果は、後述するように、鋼の圧延−再結晶において磁化困難軸を有する{111}集合組織の発達を抑制する働きがあるSbやSnとの共存下で、とりわけ顕著となる。 【0014】上述した効果を得るには、Cは最低でも 0.005%が必要である。そして、C量は、必要とされる強度、磁性レベルに応じて適宜選択することができる。しかしながら、C量が 0.030%を超えると鋼板製造時の焼鈍冷却工程においてセメンタイト (Fe3C) として析出する量が増加し、時効効果が得られなくなるばかりか、鉄損も劣化させるので、その上限を 0.030%に規制した。 【0015】Siおよび/またはAl:0.03〜0.5 %SiおよびAlはそれぞれ、鋼に添加すると脱酸効果を有するので脱酸剤として単独または複合して使用される。その効果を得るには、単独添加または複合添加いずれの場合においても0.03%以上が必要である。一方、Si,Alは比抵抗を増加させ鉄損を改善する作用もあるが、同時に磁束密度を低下させるため、その上限を0.5 %に規制した。 【0016】Mn:0.5 %以下Mnは、添加量の増大に伴い磁束密度の低下を招くが、MnSとしてSを固定し、FeSに起因する熱間圧延中の脆化を抑制する効果がある。また、比抵抗を増大させ鉄損を改善する効果もある。よって、0.5 %以下で含有させるものとした。 【0017】Sbおよび/またはSn:0.01〜0.40%SbおよびSnはいずれも、粒界に偏在し、鋼の再結晶に際して結晶粒界からの{111}方位の再結晶核の生成を抑制することにより、磁束密度および鉄損を改善する効果がある。また、前述したように適量のCと共存することにより、圧延中の粒内変形帯からの{100}近傍の再結晶を促進する効果があり、磁束密度の一層の向上に有効に寄与する。この効果を得るためには、最低でもSbとSnのうちの1種または2種合計で0.01%の含有が必要である。一方、過剰に含有してもその効果は飽和すると共に、単独添加または複合添加いずれにおいても 0.4%を超えると脆化し、冷間圧延の際に割れを生じるようになるため、その上限を0.4%に限定した。 【0018】P:0.40%以下Pは、本発明において有効な元素の一つである。Pは鋼に対する固溶強化能が高く、強度を上昇させるのに有効である。また、集合組織を改善し磁束密度を上昇させる効果、および電気抵抗を増加し鉄損を改善する効果も有するので、必要とする強度、磁気特性レベルに応じて適正量に調整して含有することができる。ここで、Pを0.02%未満に抑制することは脱燐処理時間の増大を招くなどコスト的に不利となるので、下限は0.02%とすることが好ましい。一方、Niを含有しない場合、0.4 %を超えると鋼板が脆化し圧延が困難になるので、0.4 %以下に規制した。また、後述するように、0.3 %以上のNiとの複合添加により脆化が抑制され、0.8 %の添加までは問題なく製造することが可能となる。従って、Niと複合添加する場合には、その添加上限を 0.8%とした。 【0019】S:0.005 %以下Sは、不可避的不純物であり、上述のようにFeSとして析出した場合には熱間脆性の原因となったり、MnSとして微細に析出した場合には粒成長性を劣化させ鉄損を低下させるので、その混入は極力低減することが望ましいが、0.005 %以下で許容できる。 【0020】N:0.005 %以下Nも、不可避的不純物であり、AlNとして微細に析出した場合、粒成長を阻害し鉄損を劣化させるので、0.005 %以下に規制した。 【0021】V:0.0010〜0.015 %Vは、0.015 %までは熱延、焼鈍中の炭化物生成が著しく少なく、Cは鋼中に固溶した状態で存在するため、圧延時の粒内歪み蓄積による集合組織改善に有効に寄与することができる。この固溶Cは、鋼板製造後の時間の経過とともに時効析出し、強度の上昇、磁気特性(鉄損)の劣化といった時効現象をもたらすが、0.001 %以上のVが存在している条件下では、強度の上昇現象は示すものの、磁性(鉄損)の劣化は抑制される。この理由は、明らかではないが、鋼板製造中に僅かに析出するV炭化物の析出形態や鋼中に固溶したV原子がCの時効析出状態を変化させる効果を有するものと推測される。この効果を得るには、Vは0.001 %以上必要であり、一方、0.015 %を超えると鋼板製造中のV炭化物の析出が増加し鉄損を劣化させるので、V量は0.0010〜0.015 %の範囲に限定した。 【0022】Ti:0.0030%以下、Nb:0.0050%以下一方、TiおよびNbは、Vと比較すると強力な炭化物形成元素であり、例えば鋼中における 900℃での炭化物の溶解度積(平衡濃度積)はそれぞれ 8.1×10-5、8.5 ×10-4であり、Vの 4.2×10-2に比較して著しく大きい。従って、これらの元素は熱延、焼鈍中に炭化物を生成し易いため、粒成長性を阻害して鉄損を低下させる要因となる。これを抑制するには、Ti,Nbの含有量をそれぞれ0.0030%以下、0.0050%以下(0を含む)に制限する必要がある。 【0023】上述したように、Ti,Nb量をそれぞれ0.0030%以下、0.0050%以下に抑制すると共に、Vを0.0010〜0.015 %の範囲で添加することにより、時効による磁気特性の劣化を抑制しつつ、時効による強度上昇を図ることができるのである。 【0024】Ni:0.3 〜3.0 %Niは、鋼の集合組織を改善し、磁束密度を高める効果がある。その効果は、C量が 0.005%未満の極低炭素鋼にNiを添加した場合よりも、0.0050〜0.030 %の適量のCと複合添加した場合の方が大きい。この理由は、結晶粒内に固溶したCおよびNiの相乗効果により、磁気特性に良好な{100}近傍の再結晶核の生成基点となる剪断変形帯が冷間圧延中に一層形成し易くなるためであると考えられる。また、Niは、鋼の電気抵抗を増加して鉄損を低下させると共に、固溶強化により鋼の強度を高める点でも有効である。さらに、鋼の高強度化に有効であるが脆化し易くなるため添加量が最大 0.4%に制限されるPに、Niを複合添加することによって脆化が抑制され、P添加量を最大 0.8%にまで拡大できる効果もある。 【0025】上述したように、Niは、本発明の目的(高強度、高磁束密度、低鉄損)に非常に有用な元素であり、積極的に添加することができる。しかしながら、含有量が0.3 %に満たないとその添加効果に乏しく、一方Niは高価な元素であるだけでなくオーステナイト生成元素として作用するため、あまりに多量添加するとコストアップ要因となるだけでなく、α/γ変態温度が低下し熱延板および冷延板の粒成長性が低下するので、Ni量は 0.3〜3.0 %の範囲に限定した。 【0026】次に、本発明の好適製造条件について説明する。本発明の電磁鋼板は、一般的な無方向性電磁鋼板の製造方法で製造することができる。例えば、次のような製造方法である。素材のスラブを所定温度に加熱後、熱間圧延により熱延板とする。ここでスラブ加熱温度は1050〜1250℃、熱延仕上げ温度は 700℃以上のα相領域とすることが望ましい。熱間圧延後のコイル巻き取り温度を 600℃以上として、自己焼鈍することによって熱延板焼鈍を省略することもできる。得られた熱延コイルは、磁気特性の改善のために熱延板焼鈍を施してから圧延に供することもできる。この場合、熱延板の焼鈍温度は連続焼鈍で行う場合には800 〜1100℃、箱焼鈍で行う場合にはA1 点〜900 ℃程度が適当である。 【0027】熱延板を酸洗したのち、冷間または温間で1回圧延あるいは中間焼鈍を挟む2回の圧延を行う。圧延後は再結晶と結晶粒の成長のための仕上げ焼鈍および絶縁被膜のコーティングを行う。その後、得られたコイルは、必要な幅、寸法にスリット加工された後、ユーザーにてモータ固定子、回転子形状に打ち抜き加工、製品化され、使用に供される。強度を得るために必要な時効時間は、仕上げ焼鈍後、製品として実使用に供されるまでの期間として、夏季で10日間程度、冬季でも1ケ月程度あれば十分であり、格段特別な処理は必要としないが、 100〜200 ℃で数〜数十時間程度の時効促進処理を実施しても良い。 【0028】 【実施例】実施例1表1に示すような成分組成になる溶鋼(特にCとSb,Snの添加量を変化させた)を、溶製、鋳造し、これらのスラブを1100℃に加熱した後、仕上げ温度:800〜850 ℃で 2.3mm厚まで熱間圧延した。ついで、これらの熱延板を 900℃, 1分均熱の連続焼鈍後、酸洗し、 0.5mm厚まで冷延したのち、 800〜900 ℃で仕上げ焼鈍して結晶粒径をほぼ30μm に揃えた。その後、エプスタイン試験片および引張試験片を切り出し、時効のため10日間の室温放置後、磁気測定および引張試験を行った。なお、引張試験においてYSは 0.2%耐力を用いた。かくして得られた結果を表2に示す。また、この結果を、C量と磁束密度B50(T)との関係として、Sb,Sn添加の有無(発明例、比較例)で区別して図1に示す。 【0029】 【表1】
【0030】 【表2】
【0031】表2および図1に示したとおり、SbやSnの添加により磁束密度は大きく向上することが分かる。また、C含有量の増加に伴い磁束密度は向上するが、SbやSnを添加していない比較例の向上代は小さい。これに対し、SbやSnを添加した場合は、C量が0.0018%と少ないNo.2(比較例)に対し、C量が0.0050%以上のNo.4, 6,8,10(発明例)では磁束密度が著しく向上しており、CとSbおよびSnの複合添加による相乗効果により磁束密度が大きく改善されることが分かる。 【0032】実施例2表3,4に示す成分組成になる溶鋼を、溶製、鋳造し、これらのスラブを1100℃に加熱した後、仕上げ温度:800 〜850 ℃で 2.3mm厚まで熱間圧延した。ついで、これらの熱延板を 900℃, 1分均熱の連続焼鈍後、酸洗し、 0.5mm厚まで冷延したのち、 800〜900 ℃で仕上げ焼鈍して結晶粒径をはぼ30μm に揃えた。その後、エプスタイン試験片および引張試験片を切り出し、時効のため10日間の室温放置後、磁気測定および引張試験を行った。なお、引張試験においてYSは 0.2%耐力を用いた。かくして得られた結果を表5に示す。また、図2,3,4には、表3,4に示した試験例のうち本発明の範囲内のSb,Snを含有している鋼について、含有C量と磁束密度B50、鉄損W15/50 およびYS(0.2%耐力)との関係について調べた結果を示す。 【0033】 【表3】
【0034】 【表4】
【0035】 【表5】
【0036】表3において、No.11, 16 は、Sb,Snの含有量が本発明範囲を満足しないものであり、本発明の範囲内のSb,Snを含有した鋼と比較すると、磁束密度が著しく劣っている。また、磁束密度は、時効による磁性劣化を避けるために従来より推奨されてきた極低C(0.005 %以下)材(No.12, 14)よりも、Sb,Snと 0.005〜0.030 %のCとが共存する本発明範囲の素材の方が優れる。さらに、Ti,Nbの含有量が本発明の範囲を外れる鋼(No.21, 30, 33)は、Cの増加により、強度が上昇するものの、同時に鉄損も劣化してしまう。0.029 %までTi量を高めた No.22(比較例)は、時効効果は起きないものの、磁束密度、鉄損とも発明例より劣っており、強度も低い。Ti,Nb量が本発明範囲内でも、V量が0.0010%未満である No.23, 29(比較例)は、磁束密度、強度は比較的良好なものの鉄損が劣っており、またV量が0.015 %を超える No.20, 31(比較例)は、磁束密度、鉄損ともに劣る。これに対し、本発明の成分組成範囲を満足する鋼はいずれも、Cの増加と共に強度が上昇するが、鉄損の劣化は抑制されており、C添加による時効効果が有効に活用できることが明らかである。なお、C量が本発明の上限を外れた No.35,36(比較例)は、製造中にFe3C(セメンタイト)として多量に析出するため、磁束密度と鉄損は大幅に劣化し、時効による炭化物の微細析出が減少する結果、強度も低下する。 【0037】実施例3表6に示すような成分組成になる溶鋼(特にP量とNi量を変化させた)を、溶製、鋳造し、これらのスラブを1100℃に加熱した後、仕上げ温度:800 〜850 ℃で 2.3mm厚まで熱間圧延した。ついで、これらの熱延板を 900℃, 1分均熱の連続焼鈍後、酸洗し、0.5mm 厚まで冷延したのち、 800〜900 ℃で仕上げ焼鈍して結晶粒径をほぼ30μm に揃えた。その後、エプスタイン試験片および引張試験片を切り出し、時効のため10日間の室温放置後、磁気測定および引張試験を行った。なお、引張試験においてYSは 0.2%耐力を用いた。かくして得られた結果を表7に示す。また、図5,6,7には、Ni添加鋼と無添加鋼における、P含有量と磁束密度B50、鉄損W15/50 およびYSとの関係について調べた結果を示す。 【0038】 【表6】
【0039】 【表7】
【0040】表7および図5〜7に示したとおり、Pは、磁束密度をほとんど劣化させずに鉄損と強度を大きく向上させる元素であり、本発明の目的を達成する上で非常に有効の元素であることが分かる。また、本発明の鋼にNiを添加すると(No.43〜48)、磁束密度、鉄損、強度がさらに向上することが分かる。さらに、Ni無添加では、P量が本発明範囲の0.40%を超えてた場合(No.41,42) には、熱間圧延までは問題なく製造できたものの、冷間圧延中に激しい耳割れを生じ、製品化することができなかったのに対し、Niを同時に添加した場合(No.47, 48)には、冷延性が改善され、良好な特性の製品が得られており、Niの添加はP添加鋼の製造性を改善する効果があることが明らかである。 【0041】 【発明の効果】本発明は、従来技術では鉄損が劣化するために積極的に利用できなかったCによる時効効果現象を、鉄損劣化を抑制しつつ、強度向上に利用することを可能ならしめたもので、本発明によれば、リラクタンスモータの鉄心素材に求められるような、高磁束密度、低鉄損および高強度を高い次元で兼ね備える、特に高磁束密度と高強度を同時に満足する無方向性電磁鋼板を提供することができる。また、本発明は、従来技術では難圧延材とされた高濃度のP含有鋼の圧延性を改善し、かつ磁気特性、機械特性の向上を達成することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001258 【氏名又は名称】川崎製鉄株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年2月28日(2000.2.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100059258 【弁理士】 【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−234302(P2001−234302A) |
| 【公開日】 |
平成13年8月31日(2001.8.31) |
| 【出願番号】 |
特願2000−50781(P2000−50781) |
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