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【発明の名称】 靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法
【発明者】 【氏名】長谷川 俊永

【氏名】冨田 幸男

【要約】 【課題】溶接構造用鋼としての十分な強度を有し、かつ降伏比が低く、一様伸び等の延性特性に優れるとともに、低温靱性にも優れた靭性と延性に優れた高張力鋼の製造方法を提供すること。

【解決手段】鋼組成とDI 値を適正化するとともに、加工熱処理あるいは再加熱処理によって前組織を微細化した上で、靱性を劣化させずに低降伏比化、一様伸び向上が可能な硬質第二層を適正分散させるために、Ac1 変態点+20℃以上、Ac3 変態点+150℃以下に再加熱した後、加速冷却停止温度が300〜600℃で、かつ、冷却速度が1〜100℃/sの加速冷却を行うことを特徴とする熱処理を施す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 重量%で、C :0.01〜0.25%、Si:0.01〜1%、Mn:0.1〜3%、P :0.02%以下、S :0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、N :0.001〜0.01%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、かつ、(1)式で示す理想焼入臨界直径(DI 値)が0.5〜30である鋼片を、Ac3 変態点〜1300℃に加熱後、開始温度が950℃以下、終了温度が700℃以上で、累積圧下率が30〜95%の圧延を含む熱間圧延後、Ac1 変態点+20℃以上、Ac3 変態点+150℃以下に再加熱した後、加速冷却停止温度が300〜600℃で、かつ、冷却速度が1〜100℃/sの加速冷却を行うことを特徴とする、靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法。
I =0.5・(C%)1/2 ・(1+0.64・Si%)・(1+4.10・ Mn%)・(1+0.27・Cu%)・(1+0.52・Ni%)・(1+2 .33・Cr%)・(1+3.14・Mo%)・(1+1.50・W%)
・・・・・(1)
【請求項2】 熱間圧延後、650℃以上から開始し、600℃以下で終了する冷却速度が1〜100℃/sの加速冷却を行った後に再加熱することを特徴とする、請求項1に記載の、靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法。
【請求項3】 重量%で、C :0.01〜0.25%、Si:0.01〜1%、Mn:0.1〜3%、P :0.02%以下、S :0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、N :0.002〜0.01%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、かつ、(1)式で示す理想焼入臨界直径(DI 値)が0.5〜30である鋼片を熱間圧延後、加熱温度がAc3 変態点以上、Ac3 変態点+250以下の焼きならしを施し、その後、Ac1 変態点+20℃以上、Ac3 変態点+150℃以下に再加熱した後、加速冷却停止温度が300〜600℃で、かつ、冷却速度が1〜100℃/sの加速冷却を行うことを特徴とする、靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法。
I =0.5・(C%)1/2 ・(1+0.64・Si%)・(1+4.10・ Mn%)・(1+0.27・Cu%)・(1+0.52・Ni%)・(1+2 .33・Cr%)・(1+3.14・Mo%)・(1+1.50・W%)
・・・・・(1)
【請求項4】 重量%で、C :0.01〜0.25%、Si:0.01〜1%、Mn:0.1〜3%、P :0.02%以下、S :0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、N :0.002〜0.01%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、かつ、(1)式で示す理想焼入臨界直径(DI 値)が0.5〜30である鋼片を熱間圧延後、加熱温度がAc3 変態点以上、Ac3 変態点+250以下で、冷却速度が1〜100℃/sの焼入れを施し、その後、Ac1 変態点+20℃以上、Ac3 変態点+150℃以下に再加熱した後、加速冷却停止温度が300〜600℃で、かつ、冷却速度が1〜100℃/sの加速冷却を行うことを特徴とする、靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法。
I =0.5・(C%)1/2 ・(1+0.64・Si%)・(1+4.10・ Mn%)・(1+0.27・Cu%)・(1+0.52・Ni%)・(1+2 .33・Cr%)・(1+3.14・Mo%)・(1+1.50・W%)
・・・・・(1)
【請求項5】 鋼片が重量%で、Ni:0.1〜6%、Cu:0.05〜1.5%、Cr:0.05〜2%、Mo:0.1〜2%、W :0.2〜4%、V :0.005〜0.5%、Ti:0.003〜0.1%、Nb:0.005〜0.5%、Ta:0.01〜0.5%、Zr:0.005〜0.1%、B :0.0002〜0.005%、の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の、靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法。
【請求項6】 鋼片が重量%で、Y :0.001〜0.1%、Ca:0.0005〜0.01%、Mg:0.0001〜0.01%、REM:0.005〜0.1%、のうち1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の、靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法。
【請求項7】 熱間圧延に先立って、1150〜1300℃で2h〜48h保持する溶体化処理を施すことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の、靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は溶接構造用鋼としての十分な強度を有し、かつ降伏比が低く、一様伸び等の延性特性に優れるとともに、低温靱性にも優れた靭性と延性に優れた高張力鋼の製造方法に関するものである。この方法で製造した鋼は、例えば、海洋構造物、圧力容器、造船、橋梁、建築物、ラインパイプなどの溶接鋼構造物一般に用いることができるが、低降伏比、高延性と靭性とが両立できることから、特に耐震性を必要とする建築、橋梁等の構造物用鋼材として有用である。また、鋼材の形態としては特に問わないが、構造部材として用いられ、低温靭性が要求される鋼板、特に厚板、鋼管素材、あるいは形鋼で特に有用である。
【0002】
【従来の技術】降伏比(降伏応力/引張強度)の低下、延性特性、特に一様伸びの向上には軟質相のフェライト(α)に適量の、マルテンサイト相等の硬質相を分散させることが有効であることが知られている。この軟質αと硬質相からなる二相鋼の製造方法は、従来から種々提案されいるが、焼入れと焼戻し熱処理の間にフェライト(α)+オーステナイト(γ)二相域に加熱する中間熱処理を施す方法(以降、QLT処理)に代表されるように、基本的には軟質相としてのαと硬質相としてのベイナイトあるいはマルテンサイトを混在させることを目的としている。
【0003】そして、全体の強度レベル及び降伏比、延性特性はこれらの相の混在比率を変えることによって制御されてきた。この軟質相と硬質相の混合組織を得るための製造方法は従来から種々提案されており、例えば、特開昭53−23817号公報には鋼板を再加熱焼入れした後、Ac1 変態点とAc3 変態点の間に再加熱してγとαの二相としてから空冷する方法が示されており、また、特開平4−314824号公報には同様に二相域に再加熱した後、焼入れる方法が開示されている。また、再加熱処理を施さずにオンラインで製造する方法としては、例えば、特開昭63−286517号公報にはγ域から二相域にかけて熱間圧延を施した後、Ar3 変態点より20〜100℃低い温度まで空冷してα相を生成させ、その後、急冷する方法が開示されている。
【0004】再加熱焼入れした後、さらにAc1 変態点とAc3 変態点の間に再加熱してγとαの二相としてから空冷または水冷する二相域熱処理を包含するQLT処理は組織制御が比較的容易であるが、二相域熱処理ままでは靭性が極端に劣化するため、さらにAc1 変態点未満で焼戻し処理を施すことが必須となる。このため、QLT処理は工程が複雑であり、生産性の低下が大きな問題となる。また、Ac1 変態点未満で焼戻し処理を施すと、硬質相の強度低下とα母相での析出強化のために、低降伏比化の程度が制限される上、二相域熱処理で得られた高い一様伸びがむしろ劣化する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】二相域熱処理に相当する、軟質相と硬質相とを分散させる熱処理工程において靭性劣化が抑制でき、Ac1 変態点未満での焼戻しを省略できれば、生産性向上、特性向上(降伏比、一様伸び)とが同時に達成可能となることは明白であり、本発明では、二相域熱処理を包含する、再加熱処理法により製造される低降伏比、高延性鋼において靭性を確保するための手段を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来のOLT処理において、二相域熱処理ままで靭性が劣化する機構を詳細に検討し、硬質相の組織を靭性に悪影響が小さく、かつ強度低下の小さい、低温変態ベイナイト主体組織にすることが靭性確保に重要であることを見出した。ただし、構造用鋼としての引張強度を達成できる化学組成において、低降伏比、延性特性を確保するためには、硬質相に比べて軟質相であるα相の割合を比較的高める必要があるが、そのような組織割合とするための二相域熱処理条件では、加熱段階での逆変態γ相中のC濃化が著しいために、該γ相の焼入性は平均化学組成から考えられるよりも非常に高くなっており、均一に低温変態ベイナイト相とすることは容易でないことから、本発明者らは、再加熱処理法を基本とした新たな製造方法を検討し、広い化学組成範囲において、第二相を靭性の良好なベイナイト相として、靭性を損ねることなく、低降伏比、高一様伸びを達成できる、下記に示す新たな手段を見いだし、本発明を完成させたもので、その要旨とするところは以下の通りである。
【0007】(1)重量%で、C :0.01〜0.25%、Si:0.01〜1%、Mn:0.1〜3%、P :0.02%以下、S :0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、N :0.001〜0.01%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、かつ、(1)式で示す理想焼入臨界直径(DI 値)が0.5〜30である鋼片を、Ac3 変態点〜1300℃に加熱後、開始温度が950℃以下、終了温度が700℃以上で、累積圧下率が30〜95%の圧延を含む熱間圧延後、Ac1 変態点+20℃以上、Ac3 変態点+150℃以下に再加熱した後、加速冷却停止温度が300〜600℃で、かつ、冷却速度が1〜100℃/sの加速冷却を行うことを特徴とする、靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法。
I =0.5・(C%)1/2 ・(1+0.64・Si%)・(1+4.10・ Mn%)・(1+0.27・Cu%)・(1+0.52・Ni%)・(1+2 .33・Cr%)・(1+3.14・Mo%)・(1+1.50・W%)
・・・・・(1)
(2)熱間圧延後、650℃以上から開始し、600℃以下で終了する冷却速度が1〜100℃/sの加速冷却を行った後に再加熱することを特徴とする、前記(1)に記載の、靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法。
【0008】(3)重量%で、C :0.01〜0.25%、Si:0.01〜1%、Mn:0.1〜3%、P :0.02%以下、S :0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、N :0.002〜0.01%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、かつ、(1)式で示す理想焼入臨界直径(DI 値)が0.5〜30である鋼片を熱間圧延後、加熱温度がAc3 変態点以上、Ac3 変態点+250以下の焼きならしを施し、その後、Ac1 変態点+20℃以上、Ac3 変態点+150℃以下に再加熱した後、加速冷却停止温度が300〜600℃で、かつ、冷却速度が1〜100℃/sの加速冷却を行うことを特徴とする、靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法。
I =0.5・(C%)1/2 ・(1+0.64・Si%)・(1+4.10・ Mn%)・(1+0.27・Cu%)・(1+0.52・Ni%)・(1+2 .33・Cr%)・(1+3.14・Mo%)・(1+1.50・W%)
・・・・・(1)
【0009】(4)重量%で、C :0.01〜0.25%、Si:0.01〜1%、Mn:0.1〜3%、P :0.02%以下、S :0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、N :0.002〜0.01%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、かつ、(1)式で示す理想焼入臨界直径(DI 値)が0.5〜30である鋼片を熱間圧延後、加熱温度がAc3 変態点以上、Ac3 変態点+250以下で、冷却速度が1〜100℃/sの焼入れを施し、その後、Ac1 変態点+20℃以上、Ac3 変態点+150℃以下に再加熱した後、加速冷却停止温度が300〜600℃で、かつ、冷却速度が1〜100℃/sの加速冷却を行うことを特徴とする、靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法。
I =0.5・(C%)1/2 ・(1+0.64・Si%)・(1+4.10・ Mn%)・(1+0.27・Cu%)・(1+0.52・Ni%)・(1+2 .33・Cr%)・(1+3.14・Mo%)・(1+1.50・W%)
・・・・・(1)
【0010】(5)鋼片が重量%で、Ni:0.1〜6%、Cu:0.05〜1.5%、Cr:0.05〜2%、Mo:0.1〜2%、W :0.2〜4%、V :0.005〜0.5%、Ti:0.003〜0.1%、Nb:0.005〜0.5%、Ta:0.01〜0.5%、Zr:0.005〜0.1%、B :0.0002〜0.005%、の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の、靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法。
(6)鋼片が重量%で、Y :0.001〜0.1%、Ca:0.0005〜0.01%、Mg:0.0001〜0.01%、REM:0.005〜0.1%、のうち1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の、靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法。
(7)熱間圧延に先立って、1150〜1300℃で2h〜48h保持する溶体化処理を施すことを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の、靱性と延性に優れた高張力鋼の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】高延性、特に一様伸びの向上を図ることを目的として、硬さの大きく異なる軟質相と硬質相とを分散させた組織を熱処理によって製造する際の靭性劣化要因と改善指針とを実験的に詳細に検討した結果、二相域処理の加熱段階で形成される逆変態オーステナイトとその他の未変態組織とがともに微細で、かつ、二相域熱処理の冷却中に生じる組織形態が特定の場合において、低降伏比化、高延性(一様伸び、破断伸び)、靭性とがともに改善されることが知見された。すなわち、後述するように、化学組成を適正化した上で、二相域熱処理前の鋼材組織を、加工熱処理あるいは再加熱処理において微細化した上で、さらに軟質相中に硬質相を分散させる熱処理を施すこと、及び、該熱処理において、冷却段階の熱履歴を制御することにより、硬質相の組織を低温変態ベイナイト主体組織とすることで、低降伏比化、高延性(一様伸び、破断伸び)、及び靭性の改善が同時に達成される。
【0012】具体的には、■鋼片をAc3 変態点〜1300℃に加熱後、開始温度が950℃以下、終了温度が700℃以上で、累積圧下率が30〜95%の圧延を含む熱間圧延を行い、必要に応じて、熱間圧延後の冷却を、650℃以上から開始し、600℃以下で終了する冷却速度が1〜100℃/sの加速冷却を行うか、■あるいは、鋼片を熱間圧延後、加熱温度がAc3 変態点以上、Ac3 変態点+250℃以下で、焼きならしを施すか、あるいは、冷却速度が1〜100℃/sの焼入れを施して、前組織を適正に微細化した上で、さらに、「Ac1 変態点+20℃以上、Ac3 変態点+150℃以下に再加熱した後、加速冷却停止温度が300〜600℃で、かつ、冷却速度が1〜100℃/sの加速冷却を行う」、ことが本発明の製造方法に関する要件となる。
【0013】以下、上記製造方法の限定理由を先ず述べ、後に化学組成の限定理由を述べる。先ず、上記■または■の方法によって初期組織を微細化する必要がある。■の方法は加工熱処理による方法であり、■の方法は再加熱処理による方法である。
【0014】■の加工熱処理によって初期組織微細化を図る場合、熱間圧延に先立つ鋼片の加熱温度はAc3 変態点以上、1300℃以下とする。これは、加熱温度がAc3 変態点未満であると、組織が不均一となり、また析出強化元素の溶体化も不十分となるため、強度・靭性の劣化が生じる恐れがある。一方、加熱温度が1300℃超であると、加熱オーステナイト粒径が粗大となって熱間圧延を施しても前組織の微細化が不十分となり、また鋼片表面状態の劣化が生じるため好ましくない。
【0015】鋼片をAc3 変態点〜1300℃に加熱後、開始温度が950℃以下、終了温度が700℃以上で、累積圧下率が30〜95%の圧延を含む熱間圧延を行う必要がある。これは、変態前のオーステナイト粒径を微細化し、かつ、該オーステナイトに加工歪を導入することで変態組織を微細化するためである。圧延の開始温度が950℃超では、オーステナイトが再結晶した上、微細化が不十分となり、逆に終了温度が700℃未満では、加工中にフェライトが生成して粗大な不均一組織となるため、好ましくない。また、該温度域での圧延の累積圧下率は加工の効果が明確となるために、30%以上必要である。圧下率は大きいほど組織微細化に有効であるが、圧下率が90%超では圧延の効果が飽和するためと、鋼材の形状に悪影響があることから、本発明では圧下率の上限を90%とする。なお、開始温度が950℃以下、終了温度が700℃以上で、累積圧下率が30〜95%の圧延を含んでいれば、該圧延前の板厚調整等のために、950℃超での再結晶域での圧延を行うことに問題はない。
【0016】上記熱間圧延後の冷却は放冷でも加速冷却でも構わないが、より組織を微細化して強度・靭性を向上させるためには、加速冷却の方が好ましい。加速冷却を行う場合は、冷却速度を1〜100℃/sの範囲とし、該加速冷却の開始温度は650℃以上、終了温度は600℃以下とする必要がある。
【0017】冷却速度を1〜100℃/sの範囲に限定するのは、1℃/s未満では、加速冷却による組織微細化効果が十分発現されないためであり、100/s℃超では、加速冷却の効果が飽和する一方で、残留応力の増加や鋼板形状の悪化等、悪影響が生じる懸念があるためである。また、該加速冷却の開始温度を650℃以上とするのは、開始温度が650℃未満であると、加速冷却前に変態が開始して、加速冷却の効果が不十分となるためであり、一方、終了温度が600℃以下とする必要があるのは、終了温度が600℃超であると、加速冷却を終了した段階では未変態の割合が過大で、やはり加速冷却の効果が十分発現されないためである。なお、加速冷却条件が本発明を満足していれば、その手段は問わない。すなわち、水冷以外に油冷、その他冷媒等によって冷却しても効果は異ならない。
【0018】次に、■の再加熱処理によって初期組織微細化を図る場合の限定条件を説明する。なお、■の再加熱処理によって初期組織微細化を図る場合、熱間圧延は形状調整のみを目的とすればよく、加工熱処理のように圧延温度、圧下率等を特に限定する必要はない。
【0019】再加熱処理による初期組織微細化は、熱間圧延等で所望の形状に調整した後に、焼きならしあるいは焼入れによって行う。焼きならしによる場合、加熱温度がAc3 変態点以上、Ac3 変態点+250℃以下に再加熱した後に放冷する。焼きならしの再加熱温度をAc3 変態点以上、Ac3 変態点+250℃以下に限定するのは、再加熱温度がAc3 変態点未満であると、未変態の組織が残存し、微細化が不十分となるためであり、一方、Ac3 変態点+250℃超では加熱オーステナイト粒径が粗大となって変態組織の微細化が保証されないためである。
【0020】再加熱後、水冷等によって加速冷却を行う焼入れは、再加熱後放冷する場合よりも、同一板厚では冷却速度を大きくできるため、組織微細化に対してより好ましい手段である。焼入れにって初期組織微細化を図る場合、再加熱温度は焼きならしと同じ理由により、Ac3 変態点以上、Ac3 変態点+250℃以下に限定する。再加熱後の冷却は水冷等によって加速冷却するが、本発明においては、焼入れ条件を冷却速度によって限定する。すなわち、本発明においては冷却速度を1〜100℃/sに限定する。これは、冷却速度が1℃/s未満では加速冷却による組織微細化効果が十分でなく、焼入れを施す意味がないためであり、一方、冷却速度は大きいほど組織微細化効果は大きいが、100℃/s超では組織微細化効果が飽和するためと、工業的に実現することが容易でなくなるためである。なお、焼入れの冷却速度が本発明の範囲内であれば、その手段は問わない。すなわち、水冷以外に油冷、その他冷媒等によって冷却しても効果は異ならない。
【0021】以上の、■の方法によって初期組織の微細化を図った上で、Ac1 変態点+20℃以上、Ac3 変態点+150℃以下に再加熱した後、加速冷却停止温度が300〜600℃で、かつ、冷却速度が1〜100℃/sの加速冷却を行うことを特徴とする熱処理を施す。本熱処理が本発明の目的とする特性を発現させるために最も重要な要件となる。すなわち、本熱処理によって、靭性劣化の少ない微細な低温変態ベイナイト相を硬質相として分散させることが可能となり、降伏比が低く、一様伸び等の延性特性と低温靱性がともに優れた高張力鋼を製造することが可能となる。
【0022】本熱処理おける再加熱温度はAc1 変態点+20℃以上、Ac3 変態点+150℃以下に限定する必要がある。これは、硬質相を生成するためには加熱段階で逆変態オーステナイト相を一定量以上形成させる必要があるためで、Ac1 変態点+20℃未満の再加熱温度では逆変態オーステナイトが生成されないか、生成されてもその量が少ないため、最終的な硬質相の割合も少なく、強度確保、強度−延性バランス向上が望めない。また、Ac3 変態点+150℃超の再加熱温度では、加熱前初期組織を上記の■または■の方法により微細化していても加熱オーステナイト粒径が粗大となり、生成される硬質相が粗大となって靭性を阻害するため、好ましくない。従って、本発明では硬質第二相を形成される熱処理における再加熱温度をAc1 変態点+20℃以上、Ac3 変態点+150℃以下に限定する。
【0023】Ac1 変態点+20℃以上、Ac3 変態点+150℃以下に再加熱した後、変態によって低温変態ベイナイト主体組織を形成させるために、加速冷却プロセスを施すが、該加速冷却の条件としては、冷却速度を1〜100℃/s、加速冷却停止温度を300〜600℃とする必要がある。本発明が目的としている靭性、延性を両立させる低温変態ベイナイト主体の硬質第二相を形成させるには、後述するように化学組成を適正化して、一定以上の焼入性を確保した上で、加速冷却する必要がある。該加速冷却速度が1℃/s未満ではフェライトや靭性に好ましくない粗大な上部ベイナイトを生成する恐れがある。また、冷却速度は大きいほど組織微細化効果は大きいが、100℃/s超では組織微細化効果が飽和するためと、工業的に実現することが容易でなくなるためである。なお、焼入れの冷却速度が本発明の範囲内であれば、その手段は問わない。すなわち、水冷以外に油冷、その他冷媒等によって冷却しても効果は異ならない。
【0024】該加速冷却によって冷却中に硬質相が形成されるが、靭性を劣化させる粗大上部ベイナイトやマルテンサイトの形成を抑制して、硬質相を靭性・延性両立に好ましい低温変態ベイナイト相主体組織とするためには、加速冷却を途中で停止する必要もある。すなわち、300℃未満の低温まで加速冷却を行うと硬質第二相がマルテンサイト主体組織となる恐れが大であり、逆に600℃超では加速冷却を停止した段階で残留オーステナイトの割合が高く、加速冷却停止後に粗大な上部ベイナイトを生成する恐れが高いため、本発明では、靭性・延性の両立のために必須の低温変態ベイナイト相の確保のために、加速冷却停止温度を300〜600℃に限定する。
【0025】以上の本発明によれば、同一強度で比較した場合、既存の方法により製造した鋼に比べて優れた延性、特に一様伸びを達成することができる。すなわち、既存の方法によれば、一様伸びは平均的には、一様伸び(U−El)を%、引張強度(T.S)をMPa で表した場合、 U−El(%)≦20−0.017・T.S(MPa ) ・・・・・・(2)
上記(2)式で表されれるレベルであるのに対して、本発明によれば、(3)式で表される一様伸びが達成される。すなわち、同一強度でみて、既存の方法に比べて平均4%以上一様伸びが良好である。
U−El(%)≧24−0.017・T.S(MPa ) ・・・・・・(3)
【0026】本発明によれば、上記(3)式の一様伸びレベルが達成され、かつ降伏比(降伏応力/引張強度)を80%以下にできるとともに、後続の焼戻し処理を施さなくとも、靭性を、2mmVノッチシャルピー衝撃試験の破面遷移温度で−40℃以下と良好にすることが可能である。
【0027】なお、本発明の中で、硬質第二相形成のための最終の熱処理の再加熱温度をAc1 変態点+20℃以上、Ac3 変態点−50℃以下にさらに限定すれば、降伏比を75%以下でかつ、一様伸びレベルを(4)式で示す程度に向上させることができる。
U−El(%)≧27−0.017・T.S(MPa ) ・・・・・・(4)
【0028】さらに、靭性と、延性の改善のためには、必要に応じて、熱間圧延に先立って、1150〜1300℃で2h〜48h保持する溶体化処理を施すことができる。すなわち、鋼片は不可避的に合金成分が濃化したミクロ偏析部を有するが、該偏析部は加熱変態点が低く、かつ焼入性が高いため、優先的に硬質相の生成箇所となる。従って、ミクロ偏析部が広く、及び/あるいは該偏析部の成分濃化が大きいと、最終の熱処理段階において、粗大なマルテンサイト相を生成して、靭性や延性の劣化につながる。そのため、鋼片のミクロ偏析状態によっては、熱間圧延に先立ってミクロ偏析部の縮小、濃化低減を目的とした溶体化処理を施すことによって靭性、延性が改善される。
【0029】本発明では、溶体化条件を、加熱温度:1150〜1300℃、保持時間:2h〜48hに限定する。加熱温度が1150℃未満では、長時間保持してもMn等の偏析元素の拡散が十分でなく、1300℃超では表面の酸化が著しくなるため、好ましくない。ただし、保持時間が2h未満では加熱温度が1300℃でも溶体化が十分でないため、保持時間の下限を2hとする。保持時間は長いほど偏析の減少に有効であるが、長時間高温に保持することは経済上好ましくなく、表面酸化の問題もあるため、1150℃の加熱でも靭性、延性の向上に効果が明確な保持時間として48hを上限とする。溶体化処理の加熱・保持段階で溶体化が十分達成され、組織調整は、鋼片組織によらず、その後の本発明の製造工程で達成されるため、溶体化処理の加熱・保持後の冷却条件は特に問わない。
【0030】以上が製造方法に関わる本発明の限定理由であるが、溶接構造用鋼として十分な製造を発揮し、低降伏比が低く塑性変形能に優れた低降伏比高張力鋼板を製造するためには、化学成分も併せて規定する必要がある。以下に、それぞれの化学成分の限定理由を述べる。
【0031】先ず、Cは鋼の強度を向上させる有効な成分として添加するもので、0.01%未満では構造用鋼に必要な強度の確保が困難であり、また、0.25%を超える過剰の添加は、硬質相が低温変態ベイナイト相であっても、該ベイナイト中のC量が過大となって靭性が顕著に劣化し、また、耐溶接割れ性なども著しく低下させるので、0.01〜0.25%の範囲とした。
【0032】次に、Siは脱酸元素として、また、母材の強度確保に有効な元素である。0.01%未満の添加では脱酸が不十分となり、また強度確保に不利である。逆に1%を超える過剰の添加は粗大な酸化物を形成して延性や靭性劣化を招く。そこで、Siの範囲は0.01〜1%とした。
【0033】また、Mnは母材の強度、靭性の確保に必要な元素であり、最低限0.1%以上添加する必要がある。しかし、3%を超える過剰な添加は、過剰なC含有と同様、硬質相による靭性劣化を生じ、溶接部の靭性、割れ性なども劣化させるため、上限を3%とした。
【0034】Pは不純物元素であり、極力低減することが好ましいが、溶接熱影響部の靭性確保の点から許容できる量として上限を0.02%とした。
【0035】SはMnSを形成して延性値を劣化せるため、本発明が対象としているような、延性を確保する必要のある鋼板では特に低減が必要な元素である。ただし、延性の劣化が大きくなく、実用的に許容できる上限として、その含有量を0.01%以下とする。
【0036】Alは脱酸、γ粒径の細粒化等に有効な元素であり、効果を発揮するためには0.001%以上含有する必要があるが、0.1%を超えて過剰に添加すると、粗大な酸化物を形成して延性を極端に劣化させるため、0.001%〜0.1%の範囲に限定する必要がある。
【0037】NはAlやTiと結びついてγ粒微細化に有効に働くが、その効果が明確になるためには0.001%以上含有させる必要がある一方、過剰に添加すると固溶Nが増加して降伏比の増加や靭性の劣化につながる。溶接熱影響部の靭性確保の観点から許容できる範囲として上限を0.01%とする。
【0038】以上が本発明鋼の基本成分であるが、硬質第二相を延性・靭性の両立に有効な低温変態ベイナイト相とするために、前記の本発明の製造方法を前提とした上で、鋼の焼入性を適正化する必要がある。鋼の焼入性に対する化学成分の影響は、理想焼入れ臨界直径(DI 値)で一般的に表される。本発明者らは、本発明の製造方法における最終熱処理段階での第二相の焼入性を精度良く表すことができるDI 値を下記(1)式に示すように実験的に求め、該DI 値と延性、靭性に好ましい第二相の出現条件との関係を詳細に検討した。その結果から、(1)式で示されるDI 値を0.5〜30の範囲に限定することとした。すなわち、DI 値が0.5〜30の範囲であれば、本発明の製造方法によって、材質に好ましくないマルテンサイトや粗大な上部ベイナイト相を抑制し、一様伸びが優れ、靭性も確保できる低温変態ベイナイト相を確実に形成できる。DI 値が0.5未満であると、焼入性が過小のため、低降伏比化、強度−一様伸びバランス向上に重要な役割を担う硬質相が形成されないため好ましくなく、一方、30超であると、焼入性が過大となり、靭性の劣るマルテンサイト相を本発明の方法によっても抑制できず、延性、靭性に好ましい第二相を形成することが困難となるため、好ましくない。
I =0.5・(C%)1/2 ・(1+0.64・Si%)・(1+4.10・ Mn%)・(1+0.27・Cu%)・(1+0.52・Ni%)・(1+2 .33・Cr%)・(1+3.14・Mo%)・(1+1.50・W%)
・・・・・(1)
【0039】以上が本発明鋼の基本成分であるが、所望の強度レベルに応じて母材強度の上昇の目的で、必要に応じてNi、Cu、Cr、Mo、W、V、Ti、Nb、Ta、Zr、Bの1種または2種以上を含有することができる。
【0040】先ず、Niは母材の強度と靭性を同時に向上でき、非常に有効な元素であるが、効果を発揮させるためには0.1%以上含有させる必要がある。含有量が多くなると強度、靭性は向上するが6%を超えて添加しても効果が飽和するため、経済性も考慮して、上限を6%とする。次に、CuもほぼNiと同様の効果を有するが、1.5%超の添加では熱間加工性に問題を生じるため、0.05〜1.5%の範囲に限定する。また、Crは母材の強度向上に有効な元素であるが、明瞭な効果を生じるためには0.05%以上必要であり、一方、2%を超えて添加すると、靭性が劣化する傾向を有するため、0.05〜2%の範囲とする。Moも母材の強度向上に有効な元素であるが、明瞭な効果を生じるためには0.1%以上必要であり、一方、2%を超えて添加すると、靭性が劣化する傾向を有するため、0.1〜2%の範囲とする。WもMoと同様に、母材の強度向上に有効な元素であるが、明瞭な効果を生じるためには0.2%以上必要であり、一方、4%を超えて添加すると、靭性が劣化する傾向を有するため、0.2〜4%の範囲とする。V及びNbはいずれも主として析出強化により母材の強度向上に寄与するが、過剰の添加で靭性が劣化する。従って、靭性の劣化を招かずに、効果を発揮できる範囲として、Vは0.005〜0.5%、Nbは0.005〜0.5%とする。TiはTiNの形成によりγ粒を微細化して靭性向上に有効な元素であるが、効果を発揮できるためには0.003%以上の添加が必要である。一方、0.1%を超えると、Alと同様、粗大な酸化物を形成して靭性や延性を劣化させるため、上限を0.1%とする。Taも同様に析出強化や細粒化に有効であるが、効果を発揮するためには0.01%以上必要であり、0.5%超では逆に靱性劣化を生じるため、その範囲を0.01%〜0.5%とする。Zrは析出強化や細粒化に効果を発揮する元素であるが、効果を発揮するためには0.005%以上の添加が必要である。一方、0.1%超の過剰の添加で析出物の粗大化による靱性の劣化を生じるため、0.005%〜01%の範囲に限定する。Bは0.0002%以上のごく微量添加で鋼材の焼入性を高めて強度上昇に非常に有効であるが、過剰に添加するとBNを形成して、逆に焼入性を落としたり、靭性を大きく劣化させるため、上限を0.005%とする。
【0041】さらに、本発明においては、延性や溶接部の靱性(HAZ靱性)を向上させることを目的として、Y、Ca、Mg、REMの1種または2種以上を含有することができる。いずれも酸化物、硫化物の微細分散により延性特性を改善するとともに、溶接熱影響部(HAZ)の組織を微細化してHAZ靱性を向上せしめるが、その効果を発揮するためには、Yは0.001%以上、Caは0.0005%以上、Mgは0.0001%以上、REMは0.005%以上含有させる必要がある。一方、過剰に添加すると、酸化物、硫化物が粗大化して、それ自身が脆性破壊の起点となってHAZ靱性を逆に劣化させるため、上限をMgおよびCaは0.01%、YおよびREMは0.1%に限定する。
【0042】
【実施例】次に、本発明の効果を実施例によってさらに具体的に述べる。実施例に用いた供試鋼の化学組成を表1に示す。本発明の化学成分を有する鋼片番号1〜10と、本発明の化学組成範囲を逸脱している鋼片番号11〜15の鋼片を用いて、表2、表3に示す製造条件により鋼板を製造し、機械的性質を調査した。いずれも板厚中心部より試験片を採取した。採取方向はいずれも熱間圧延方向に平行な方向とした(L方向)。機械試験結果も合わせて表2、表3に示す。なお、表2に示す鋼板は、本発明のうちの加工熱処理による方法とその比較法によるものであり、表3に示す鋼板は、本発明のうちの再加熱処理による方法とその比較法によるものである。
【0043】表2、表3のうちの、鋼材No.A1〜A20は本発明により製造したものであり、鋼材No.B1〜B11は本発明のいずれかの要件を満足していない比較例である。表2、表3に示すように、本発明により製造した鋼はいずれの強度レベルにおいても、低降伏比と良好な靭性が達成されており、かつ、延性特性、特に一様伸びも同一強度レベルで比較して、比較法に比べて顕著に向上していることが明らかである。一方、比較例である、鋼材No.B1〜B11は、本発明の要件を満足していないため、降伏比、一様伸び、靭性のいずれか、あるいは全てが本発明に比べて明らかに劣っている。
【0044】比較例のうち、鋼材No.B1〜B5は、本発明の要件のうち、化学組成が本発明を満足していない例である。鋼材No.B1は、Cが過剰に含有されているため、靭性が劣る。鋼材No.B2は、Mnが過剰であるため、やはり靭性が劣る。鋼材No.B3は、焼入性の指標であるDI 値が過小であるため、本発明の製造方法によっても、硬質相の焼入性が不足であり、降伏比及び一様伸びが十分でない。一方、鋼材No.B4およびB5は、焼入性の指標であるDI 値が過大であるため、本発明の製造方法によっても、硬質相が靭性に好ましくない硬質のマルテンサイト相になること避けられないため、靭性の劣化が著しい。
【0045】鋼材No.B6〜B11は、製造方法が本発明の要件を満足していない例である。鋼材No.B6〜B8は加工熱処理による製造方法における比較例であり、鋼材No.B6は、最終の熱処理の加熱温度が過大であるために一様伸びと降伏比が劣り、鋼材No.B7は、最終熱処理の加速冷却の停止温度が低すぎるために、一様伸びと靭性が劣り、鋼材No.B8は、最終熱処理の加速冷却の停止温度が高すぎるために、硬質相の形成が十分でなく、一様伸びと降伏比が劣り、かつ、靭性も若干劣る。一方、鋼材No.B9〜B11は再加熱処理による製造方法の比較例である。鋼材No.B9は、焼きならし温度が高すぎるため、靭性の劣化が大きく、鋼材No.B10は、最終熱処理の加熱温度が低すぎるため、加熱時に逆変態オーステナイト相が形成されないため、強度も低く、降伏比、一様伸びが劣り、鋼材No.B11は、最終熱処理の加速冷却の停止温度が低すぎるために、靭性の劣化が著しい。
【0046】以上の実施例から分かるように、本発明に係る製造方法により、低降伏比と優れた一様伸び特性を、靭性を劣化させることなく達成できることが明らかである。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【発明の効果】本発明により、溶接構造用鋼としての十分な強度を有し、かつ降伏比が低く、一様伸び等の延性特性に優れるとともに、低温靱性にも優れた靭性と延性に優れた高張力鋼を提供することが可能となる。本発明により製造した鋼は、例えば、海洋構造物、圧力容器、造船、橋梁、建築物、ラインパイプなどの溶接鋼構造物一般に用いることができるが、低降伏比、高延性と靭性とが両立できることから、特に耐震性を必要とする建築、橋梁等の構造物用鋼材として特に有用であり、本発明の、産業上の価値は極めて高い。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成12年4月5日(2000.4.5)
【代理人】 【識別番号】100068423
【弁理士】
【氏名又は名称】矢葺 知之 (外1名)
【公開番号】 特開2001−288512(P2001−288512A)
【公開日】 平成13年10月19日(2001.10.19)
【出願番号】 特願2000−103336(P2000−103336)