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【発明の名称】 溶接継手部靭性の優れた鋼材の製造方法
【発明者】 【氏名】皆川 昌紀

【氏名】小関 敏彦

【氏名】石田 浩司

【要約】 【課題】複合酸化物の微細分散、個数増加を可能とし、オーステナイト粒細粒化や微細フェライト生成によって優れたHAZ靭性を実現可能な酸化物を安定して分散させ、それと同時にAl量の上限を一般のAlキルド鋼と同等まで高めつつ、HAZ靭性を一層向上させる。

【解決手段】脱酸工程で溶鋼の溶存酸素量を調整し、Ti、Al、Caの順序で脱酸し、さらにAlを添加することで、粒子径が0.005μm〜2.0μmであるTi−Al−Ca酸化物を、粒子数が100〜3000個/mm2均一微細分散させ、最終的に母材および溶接金属の靭性に優れた溶接構造用鋼材の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 溶存酸素濃度が20〜80ppmの溶鋼中に、Tiを添加して脱酸した後、溶鋼中のsol.Alが0.004〜0.02%となるようにAlを添加し、次にCaを添加した後、さらにAlを添加して、質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:≦0.5%、Mn:0.4〜2.0%、P:≦0.02%、S:0.001〜0.01%、sol.Al:0.005〜0.09%、Ti:0.005〜0.02%、Ca:0.0005〜0.004%、N:0.001〜0.006%を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなる溶鋼とし、この溶鋼を連続鋳造工程で鋳造し、粒子径が0.005〜2.0μm、組成としてCa、Ti、Alのいずれか2種以上を含む複合酸化物を100〜3000個/mm2含有することを特徴とする溶接継手部靭性の優れた鋼材の製造方法。
【請求項2】 質量%で、Cu:≦1.0%、Ni:≦1.5%、Nb:≦0.03%、V:≦0.1%、Cr:≦0.6%、Mo:≦0.6%、B:0.0002〜0.002%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の溶接継手部靭性の優れた鋼材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶、海洋構造物、中高層ビルなどに使用される溶接熱影響部(以下HAZと称す)の靭性に優れた溶接構造用鋼材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、船舶、海洋構造物、中高層ビルなどで用いられる大型構造物に使用される溶接用鋼材の材質特性に対する要望は厳しさを増しており、鋼材自身の靭性と同様に、HAZの靭性への要求も厳しさを増している。
【0003】さらにそのような構造物を建造する際、溶接の効率化を促進するため、フラックス−銅バッキング溶接法、エレクトロガスアーク溶接法などに代表されるような大入熱溶接法の適用が希望されている。
【0004】これを受け、大入熱溶接時の鋼材のHAZ靭性に注目した提案は従来から数多くあり、最近では鋼中の酸化物を主体とした微細粒子を活用する技術が盛んに開発されている。
【0005】例えば厚板分野では特開昭61−79745号公報、特開昭62−103344号公報、特開昭62−214126号公報などに例示されているように、Ti酸化物を含有したTi脱酸鋼がある。これらの技術は、主としてTi酸化物をHAZの粒内フェライト生成サイトとして活用するものである。しかしながら、単に溶鋼中にTiを添加するだけでは鋼中のTi酸化物の個数、分散度を制御することは困難であり、Ti脱酸のみによってTi酸化物を分散させた鋼においては、例えば、Ti酸化物の個数が充分でなかったり、厚板の板厚方向の靭性変動を生じる等の問題点が認められる。その原因はTi酸化物の粗大化や凝集合体であり、Ti酸化物の個数を増加させようとすれば5μm以上の粗大なTi酸化物、いわゆる介在物が増加してしまう。この5μm以上の介在物は構造物の破壊の起点となって有害であり、靭性の低下を引き起こす。したがって、さらなるHAZ靭性の向上を達成するためには、粗大化や凝集合体が起こりにくく、Ti酸化物よりも微細に分散する酸化物を活用する必要がある。
【0006】さらに、上記特開昭61−79745号公報などの方法では、Ti酸化物を生成しやすくするために、Al量の上限を、0.005%という非常に少ない量で制限している。鋼材中のAl量が少ない場合、AlN析出物量の不足などの原因により、母材の靭性が低下する場合がある。また、通常使用されている溶接材料を用いてAl量の少ない鋼板を溶接した場合、溶接金属の靭性が低下する場合がある。
【0007】このような課題に対して、発明者らの一部は、特開平6−293937号公報、特開平9−3598号公報においてTi添加直後のAlを添加することで、生成するTi−Al複合酸化物を活用する技術を考案している。この技術は製鋼での脱酸工程において、溶鋼中の溶存酸素を順次段階的に減少させながら脱酸することを思想としており、そのためにTi、Alと脱酸力の弱い順に脱酸を進行させることがポイントである。これにより、Ti脱酸鋼よりも酸化物を微細に分散させることができ、Al量も増加しつつ大入熱溶接HAZ靭性を大幅に向上させることが可能であるが、直近、造船業界、建設業界においては、200kJ/cm以上のさらなる溶接入熱の増加が進められており、より一層のHAZ靭性を有する鋼材が必要とされている。また、この技術においてもAl量の上限は0.02%とされており、一般的なAlキルド鋼と比べればまだAl量は低く、溶接材料の汎用性を完全に克服するにはいたっていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記の従来手法より一層のHAZ特性を向上させられるために、さらなる酸化物の微細分散、個数増加を可能とし、オーステナイト粒細粒化や微細フェライト生成によって優れたHAZ靭性を実現可能な酸化物を安定して分散させ、それと同時にAl量の上限を一般のAlキルド鋼と同等まで高めつつ、HAZ靭性を一層向上させることを課題とした。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、その手段1は、溶存酸素濃度が20〜80ppmの溶鋼中に、Tiを添加して脱酸した後、溶鋼中のsol.Alが0.004〜0.02%となるようにAlを添加し、次にCaを添加した後、さらにAlを添加して、質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:≦0.5%、Mn:0.4〜2.0%、P:≦0.02%、S:0.001〜0.01%、sol.Al:0.005〜0.09%、Ti:0.005〜0.02%、Ca:0.0005〜0.004%、N:0.001〜0.006%を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなる溶鋼とし、この溶鋼を連続鋳造工程で鋳造し、粒子径が0.005〜2.0μm、組成としてCa、Ti、Alのいずれか2種以上を含む複合酸化物を100〜3000個/mm2含有する溶接継手部靭性の優れた鋼材の製造方法である。
【0010】また、手段2は、質量%で、Cu:≦1.0%、Ni:≦1.5%、Nb:≦0.03%、V:≦0.1%、Cr:≦0.6%、Mo:≦0.6%、B:0.0002〜0.002%の1種または2種以上を含有することを前記手段1記載の溶接継手部靭性の優れた鋼材の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】本発明者らはHAZ靭性を向上させる金属組織要因として、溶接ボンド部近傍で1400℃以上に加熱される領域のオーステナイト細粒化、粒内フェライト生成を同時に、酸化物を利用して達成することを検討した。
【0013】オーステナイトを細粒化するためには高温でのオーステナイト粒成長を抑制することが必要である。その手段として、酸化物によりオーステナイトの粒界をピンニングし、粒界の移動を止める方法が考えられる。したがって、オーステナイトを細粒化するためには、酸化物を微細に多数生成させることが有効である。そのような観点で、オーステナイトの粒界に存在する酸化物を詳細に観察したところ、その粒子径は0.005〜1.0μmが主であることを見いだした。すなわち、粒子径0.005〜1.0μmの酸化物が鋼中に存在することで、ピンニングされたオーステナイト粒の細粒化が可能となる。
【0014】粒内フェライト生成について、本発明者らは、オーステナイト粒内で生成する粒内フェライトの組織を観察し、粒内フェライト中に含まれる粒子を調査した。その結果、粒内フェライトの生成核として、0.1〜2.0μmの大きさをもち、Ti、Al、Caのいずれか2種以上を含むTi−Al−Ca酸化物と、その上に析出したTi窒化物+MnSとの複合体が有効に作用することを見いだした。酸化物は高温に加熱したときにおいても安定であり、1400℃以上でも変化することなく安定して鋼中に存在する。また、Ti窒化物+MnSはその後の冷却過程で、Ti−Al−Ca酸化物を核生成サイトとして析出するため、溶接ボンド部近傍での粒内フェライト生成が可能となる。
【0015】以上の知見から、1400℃未満に加熱される領域のオーステナイト粒を細粒化し、さらに溶接ボンド部近傍で1400℃以上に加熱される領域の粒内フェライトを生成させるためには、粒子径が0.01〜2.0μmのTi−Al−Ca複合酸化物が鋼中に存在することが必要である。本発明者らの知見によれば、該粒子径が0.01μm未満ではTi窒化物析出核としての効果は弱く、また2.0μmを超えると、その酸化物が破壊の起点となる可能性が高くなり、HAZ靭性の低下を招く可能性が生じる。
【0016】次に、Ti−Al−Ca酸化物の個数に関して記す。
【0017】図1にTi−Al−Ca酸化物の個数とHAZ靭性との関係を示した。酸化物個数が少なすぎると溶接時に充分な粒界ピンニングおよび粒内フェライトの生成が得られないので、100個/mm2以上の酸化物を存在させることが必要である。酸化物個数が多くなるにしたがってTi窒化物および粒内フェライトの個数は増加しHAZ靭性は向上するが、3000個/mm2を超える過剰な酸化物が存在するとHAZ部および母材の靭性低下を招くことになるので、酸化物個数の上限は3000個/mm2でなければならない。
【0018】該酸化物の大きさおよび個数の測定は以下の要領で行う。母材となる鋼板から抽出レプリカを作製し、それを電子顕微鏡にて10000倍で20視野以上、観察面積にして1000μm2以上を観察することで該酸化物の大きさおよび個数を測定する。このとき鋼板の表層部から中心部までどの部位から採取した抽出レプリカでもよい。
【0019】以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。先ず、本発明者らはTi−Al−Ca酸化物およびTiN、MnS等の析出物を効果的に多数均一微細分散するため、種々の脱酸元素を用いて、種々の順序による脱酸実験を試みた。その結果、脱酸処理を行う際、脱酸力の弱い元素から順に強い元素へと順次脱酸することが酸化物を微細に多数分散するのに有効であるとの知見を得た。これは、溶鋼中の溶存酸素との過飽和度を小さく保ちながら脱酸反応が繰り返されるためで、酸化物の急激な成長、粗大化が抑制されるからである。脱酸元素としてTi、Al、Caを用いた場合、溶存酸素濃度を20〜80ppmに調整した溶鋼中に、最終含有量が0.005〜0.02%となるTiを添加して脱酸した後、直ちに、溶鋼中のsol.Alが0.004〜0.02%となるようにAlを添加し、さらに、その後、が0.0005〜0.004%となるCaを添加する方法が最も多数Ti−Al−Ca酸化物およびTiN、MnS等の析出物が均一微細分散し、得られた鋼材を大入熱溶接したとき、HAZ部の靭性が非常に優れた溶接構造用鋼となる結果を得た。
【0020】Ti投入前の溶存酸素濃度について、溶存酸素濃度が20ppmよりも少なくなるとHAZ靭性を確保するために必要な量の酸化物が形成されず、一方、溶存酸素濃度が80ppmを超えると、粗大化した酸化物が数多く生成し、それらが脆性破壊の起点となることでHAZ靭性の低下を招く。
【0021】sol.Al量について、sol.Al量が0.005%よりも少ないと溶存酸素量の低下が充分でなく、酸化物の微細化効果が減少し、酸化物が粗大化、浮上してしまう。また、0.02%を超えると、先に生成していたTi酸化物を完全に還元してしまい、酸化物がアルミナとなるが、アルミナは凝集合体しやすく、酸化物の粗大化、浮上による個数減少を招く。
【0022】次に、Ti、Alより強い脱酸力を有するCaをさらに添加することにより、すでに生成していた酸化物は一部還元され、Ti−Al−Ca酸化物となる。また、溶存酸素濃度はさらに低下し、Ti−Al−Ca酸化物の成長はより一層抑制され、酸化物は微細なまま分散することが可能となる。このとき、Caの過剰な添加は酸化物の低融点化、粗大化を招くとともに、CaSの生成を促進し、後のMnS析出を阻害するため適切ではない。
【0023】脱酸のタイミングについて、Ti脱酸後の溶鋼サンプルを適宜採取し、酸化物の生成挙動を調査した結果、Ti脱酸後時間の経過とともに生成したTi酸化物は成長・凝集して粗大化し、浮上してしまうことが明らかとなった。したがって、Ti投入後、Tiが溶鋼中に均一に混合してすぐにAlを投入することが酸化物を多く得るためには有効である。したがって、Alは、Ti添加を実施するRHなどの二次精錬設備における脱酸工程で投入添加しなければならない。ただし、Ti脱酸を二次精錬設備で行わない場合、例えば転炉出鋼時などにTi脱酸を行う場合には、Al添加もその直後に実施する。また、Ti脱酸後すぐにAlを投入しなくても5分以内であればTi酸化物の減少量はさほど多くないため、5分以内であることが望ましい。なお、請求の範囲および発明の詳細な説明の中のTiを添加して脱酸した後あるいはTi脱酸後とは、投入したTiが溶鋼中に均一に混合した後のことを意味する。Ca添加についてもAl添加と同様であり、Al添加後短い時間の間に投入することが望ましい。
【0024】次に、発明者らはsol.Al量の上限を大きくすることを検討した。上記した、種々の元素を用いた種々の順序による脱酸実験において、強脱酸元素を用いて一旦充分に溶存酸素量を低減すると、その後に弱脱酸元素を添加しても酸化物の生成状態(大きさ、個数)にはほとんど影響を及ぼさないことを知見した。すなわち、前述したように、酸化物を微細に多数分散させるために、Ti、Al、Caの順序で徐々に強い脱酸元素を添加した後、Caより弱い脱酸元素、例えばAl、Ti、Si、Mn、Mgなどを添加しても、それらの量のほとんどは酸化物生成に関与することなく、鋼中へ固溶することとなる。
【0025】この効果を技術的に活用し、Ti、Al、Caの順序で脱酸した後、Alを添加することで、酸化物を微細分散させた状態で、溶接材料の汎用性に有効なAlを、必要組成だけ付加できることとなった。
【0026】以上より、酸化物の組成、個数および大きさを所定の条件に制御するためには製鋼工程における脱酸方法が重要となる。適当な脱酸方法としては、転炉出鋼後、脱酸処理を行う前の溶存酸素濃度が20〜80ppmになるように調整した溶鋼中に、RHなどの二次精錬工程で、最終含有量が0.005〜0.020%の所定の成分値になるようTiを添加して脱酸した後、同じくRHなどの二次工程で先ず、sol.Al含有量が0.004〜0.020%となるAlを添加し、さらにCaを添加した後、最終成分(sol.Alの場合:0.005〜0.09%)に対して不足する分のAlその他の元素を添加し、最終成分調整をする。
【0027】また鋼材を製造するプロセスとして、通常圧延まま、制御圧延、さらにこれと制御冷却と焼もどしの組合せ、および焼入れ・焼もどしの組合せなどであっても酸化物の効果は影響を受けない。
【0028】次に本発明の基本成分範囲の限定理由について述べる。
【0029】Cは鋼の強度を向上させる有効な成分として下限を0.03%とし、また0.18%を超える過剰の添加は、鋼材の溶接性やHAZ靭性などを著しく低下させるので、上限を0.18%とした。
【0030】Siは母材の強度確保、予備脱酸などに必要な成分であるが、HAZの硬化により靭性が低下するのを防止するため上限を0.5%とした。
【0031】Mnは母材の強度、靭性の確保、および粒内フェライトの変態核を生成させる成分として0.4%以上の添加が必要であるが、溶接部の靭性、割れ性などの許容できる範囲で上限を2.0%とした。
【0032】Pは含有量が少ないほど望ましいが、これを工業的に低減させるためには多大なコストがかかることから、0.02%を上限とした。
【0033】SはMnSを生成する元素として0.001%が必要であるが、溶接部の靭性、割れ性などの許容できる範囲で上限を0.01%としたが、好ましくは上限が0.005%である。
【0034】sol.Alは酸化物個数を増加させること、および溶接金属の靭性低下を抑制するため、下限値を0.005%とした。図2にsol.Al量と溶接金属靭性との関係を示す。また、Alが多量に存在すると、酸化物がすべてアルミナとなり、Ti−Al−Ca酸化物が生成しなくなるため、上限を0.09%とした。
【0035】TiはTi−Al−Ca酸化物、Ti窒化物を形成させるために0.005%以上添加する。しかし、固溶Ti量が増加するとHAZ靭性が低下するため、0.02%を上限とした。
【0036】CaはTi−Al−Ca酸化物を生成させるために0.0005%以上の添加が必要である。しかしながら、過剰の添加は酸化物の低融点化、粗大化を招くとともに、MnSの析出を阻害し、その結果粒内フェライト組織を減少させるため、0.004%を上限とした。
【0037】NはTi窒化物の析出には極めて重要な元素であり、0.001%未満ではTi窒化物の析出量が不足し、フェライト組織の充分な生成量が得られない。また、固溶Nの増大はHAZ靭性の低下を招くことから0.006を上限とした。
【0038】Cuは鋼材の強度を向上させるために有効であるが、1.0%を超えるとHAZ靭性を低下させることから、1.0%を上限とした。
【0039】Niは鋼材の強度および靭性を向上させるために有効であるが、Ni量の増加は製造コストを上昇させるので、1.5%を上限とした。
【0040】Nbは焼入れ性を向上させることにより母材の強度および靭性を向上させるために有効な元素であるが、HAZ部においては過剰な添加は靭性を著しく低下させるため0.03%を上限とした。
【0041】V、Cr、MoについてもNbと同様な効果を有することから、それぞれ0.1%、0.6%、0.6%を上限とした。
【0042】BはHAZ靭性に有害な粒界フェライト、フェライトサイドプレートの成長抑制と、BNの析出によるHAZの固溶Nの固定から0.0002%以上0.002%以下とした。
【0043】
【実施例】表1に示した化学成分で、50キロ鋼を試作した。1〜9が本発明鋼、10〜18が比較鋼である。試作鋼は転炉溶製し、RHにて真空脱ガス処理時に脱酸を行っている。Ti投入前に溶鋼の溶存酸素をSiで調整し、その後、後述する表2記載の脱酸を行ない、連続鋳造により280mm厚鋳片に鋳造した後、加熱圧延を経て、板厚45mmの鋼板として製造した。得られた鋼板を汎用の溶接材料を用いて1パスのSEGARC溶接した。入熱は約200kJ/cm2である。
【0044】
【表1】

【0045】表2には、脱酸前の溶存酸素量、脱酸順序、最初(Ca添加前)のAl量、酸化物の組成、粒子数を示す。表3には、鋼板の圧延条件、母材特性、HAZ靭性、溶接金属(WM)靭性を示す。靭性評価のためのシャルピー値は、フュージョンラインからHAZ1mmの部位およびWM中央部位で9本の試験を行ない、その平均値である。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】表3から明らかなように、1〜9の本発明鋼は比較鋼と比べて優れたHAZ靭性を有することが判る。すなわち、粒子径が0.005〜2.0μmで、Ti−Al−Ca酸化物の粒子数が100〜3000個/mm2の範囲にあり、−20℃のHAZ靭性、WM靭性とも吸収エネルギーが50J以上と極めて優れている。
【0049】一方、比較例の10〜18は、シャルピー試験−20℃でHAZもしくはWMが40J未満の低い靭性しか示さなかった。これらの原因は10は初期の溶存酸素量が本発明の所定の量に達していなかったため、11は溶存酸素量が所定の量を超えたため、12は途中のAl量が所定量を下回ったため、13は途中のAl量が所定量を上回ったためである。また、14、15はTi、Al、Caの添加順序が本発明とは異なったため、16は二度目のAl添加を行わず最終Al量が低かったため、17はCa量が所定量を上回ったため、18はCa量が所定量を下回ったためである。
【0050】
【発明の効果】本発明は、船舶、海洋構造物、中高層ビルなどの破壊に対する厳しい靭性要求を満足する鋼板を供給するものであり、この種の産業分野にもたらす効果は極めて大きく、さらに構造物の安全性の意味から社会に対する貢献も非常に大きい。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成12年3月31日(2000.3.31)
【代理人】 【識別番号】100105441
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 久喬
【公開番号】 特開2001−288509(P2001−288509A)
【公開日】 平成13年10月19日(2001.10.19)
【出願番号】 特願2000−99459(P2000−99459)