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【発明の名称】 微生物同定法
【発明者】 【氏名】江崎 孝行

【氏名】河村 好章

【氏名】天野 誠

【要約】 【課題】迅速且つ簡便に微生物を同定し得る方法及びそれに用いられるキットの提供。

【解決手段】担体面上に固定化された互いにGC含量の異なる複数の既知微生物由来染色体DNAと、検体中の未知微生物由来染色体DNAとを反応させ、生じたハイブリダイゼーション複合体を検出することを特徴とする微生物の同定法、及びGC含量の異なる多数の既知微生物由来染色体DNAが同一面上に固定化された担体を含んでなる、微生物同定用キット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 担体面上に固定化された互いにGC含量の異なる複数の既知微生物由来の染色体DNAと、検体中の未知微生物由来の染色体DNAとを反応させ、生じたハイブリダイゼーション複合体を検出することを特徴とする微生物の同定法。
【請求項2】GC含量の異なる複数の既知微生物由来の染色体DNAを担体上に固定化し、次いで検体中の未知微生物由来の染色体DNAを、これが担体面上に固定化された染色体DNAの実質上全てと実質上同時に接触するように、担体面上に供給してハイブリダイゼーションを行わしめ、生成されるハイブリダイゼーション複合体を検出することを特徴とする微生物の同定法。
【請求項3】 GC含量の異なる多数の既知の微生物由来の染色体DNAが同一面上に固定化された担体を含んでなる、微生物同定用キット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微生物の同定方法及びそれに用いられるキットに関する。
【0002】
【従来の技術】現在、微生物、特に細菌の同定には、生化学的テストによる同定法が一般に用いられている。
【0003】この同定法は、微生物固有の生化学的性状に基づいて行われるため、同定対象である微生物の培養、並びに例えば特定酵素や特定物質の産生の有無、特定物質の代謝能等といった種々の生化学的性状についての確認等を行わなければならず、操作が煩雑で同定に長時間を必要とし、また、生化学的性状が未知の微生物については同定不可能であるという問題があった。
【0004】このような問題を解消するために、近年、極小基板上に夫々の微生物に特異的な塩基配列を有するDNAプローブを固定化させたDNAチップを用いた同定法や一穴に一種類の微生物由来の一本鎖染色体DNAが固体化されたマイクロプレートを用いて微生物の同定を行うマイクロプレート法〔Takayuki Ezaki, et al., Int. Syst. Bacteriol., 39, 224-229, (1989)〕等が開発されている。
【0005】しかしながら、これらの同定法に於いては、固定化されたDNAプローブ又は染色体DNAと、検体中の未知の微生物由来DNAとをハイブリダイズさせる前に、固定化するDNAを、そのGC含量に応じていくつかのクラスに分け、夫々のクラスについて特定の条件下でハイブリダイズさせなければならなかった。そのため、これらの方法ではGC含量の異なる種々の固定化DNAを用いて同一条件下で一度に検体中の未知の微生物を同定することは困難であった。
【0006】更に、DNAプローブを固定化させたDNAチップを用いる同定法には、検体から直接特定の微生物を検出するには有用ではあるが、未知の微生物を同定するには多数の微生物に特異的なDNAプローブを準備しなければならず、膨大な手間と費用を要するという問題点があり、また、マイクロプレート法には、固定化する染色体DNA量が多量に必要であり低コスト化が困難であり、また、一穴に一種類の染色体DNAしか固定化されていないので、DNAが固定化されているもの全てに夫々検体を添加しなければならず、操作が煩雑であり多量の検体を必要とするという問題点もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、迅速且つ簡便に微生物を同定し得る方法及びそれに用いられるキットを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決する目的でなされたものであり、担体面上に固定化された互いにGC含量の異なる複数の既知微生物由来の染色体DNAと、検体中の未知微生物由来の染色体DNAとを反応させ、生じたハイブリダイゼーション複合体を検出することを特徴とする微生物の同定法に関する。
【0009】また、本発明は、GC含量の異なる複数の既知微生物由来の染色体DNAを担体上に固定化し、次いで検体中の未知微生物由来の染色体DNAを、これが担体面上に固定化された染色体DNAの実質上全てと実質上同時に接触するように、担体面上に供給してハイブリダイゼーションを行わしめ、生成されるハイブリダイゼーション複合体を検出することを特徴とする微生物の同定法に関する。
【0010】更に、本発明は、GC含量の異なる多数の既知の微生物由来の染色体DNAが同一面上に固定化された担体を含んでなる、微生物同定用キットに関する。
【0011】本発明者等は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、GC含量が異なる多数の既知の微生物由来の染色体DNAが同一面上に固定化された担体と、検体から抽出した未知の微生物由来の染色体DNAとを、ある特定の条件下で反応させると、夫々のDNAのGC含量の程度に関係なく、目的のDNAが高効率にハイブリダイズされることを見出し、その結果、生じたハイブリダイゼーション複合体を検出することにより、煩雑な操作も不必要で、同定までに長時間を要することもなく、迅速且つ簡便に未知の微生物を同定し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】本発明に於いて用いられる互いにGC含量の異なる複数の既知微生物由来の染色体DNAは、細菌類、ウイルス類等の既知微生物に由来する、互いにGC含量が異なる複数の染色体DNAであればよい。既知微生物としては、分離同定され、その存在が確認されているものであればよく、種属の別に関係なく用いることができる。具体的には、例えば連鎖球菌、肺炎球菌、腸球菌、ヘモフィルス、嫌気性菌(バクテロイデス、ペプトストレプトコッカス、クロストリジウム等)、キャンピロバクタ、ブルセラ、髄膜炎菌、結核菌、リステリア、クリプトコッカス、Mycobacterium属、Staphylococcus属、Streptcoccus属、Pseudomonas属、Alcaligenes属、Achromobacter属、Acinetobacter属、Legionella属、腸内細菌(Escherichia属、Arsenophonus属、Budvicia属、Buttiauxella属、Cedecea属、Citrobacter属、Edwardsiella属、Enterobacter属、Erwinia属、Ewingella属、Hafnia属、Klebsiella属、Kluyvera属、Leclecia属、Leminorella属、Moellerella属、Morganella属、Obesumbacterium属、Pantoea属、Photorhabdus属、Pragia属、Proreus属、Providencia属、Rahnella属、Salmonella属、Serratia属、Tatumella属、Trabulsiella属、Xenorhabdus属、Yersinia属、Yokenella属等)、ヘリコバクター、淋菌、カンジダ、レプトスピラ、放線菌、ジフテリア菌、百日咳菌、アスペルギルス、マイコプラズマ、赤痢菌、ビブリオ、真菌、ボツリヌス菌等の細菌類、アデノウイルス科ヒトアデノウイルス種、パポーバウイルス科ヒトパピローマウイルス、オルトミクソウイルス科インフルエンザウイルス等のウイルス類が挙げられる。ここで、互いにGC含量の異なる複数の染色体DNAとは、上記した如き既知微生物から由来する染色体DNAであって、通常この分野に於いて分類されるGC含量約55%以上のいわゆる高GC含量染色体DNA、GC含量約55〜40%のいわゆる中GC含量染色体DNA、及びGC含量約40%以下のいわゆる低GC含量染色体DNAの3種類の分類のうち、少なくとも2種以上の分類に属する2種以上の染色体DNAからなることを意味する。尚、本発明に於いて、既知微生物由来染色体DNAは、市販品を用いても、また、市販の微生物或いは常法により分離した微生物から、自体公知の染色体抽出法(例えば、H.Saito,K.Miura, Biochem.Biophys.Acta,72,619(1963)等に記載の方法等)により抽出したものを用いてもよい。また、これら染色体DNAは、自体公知の加熱変性やアルカリ変性法により一本鎖DNAとして用いられる。
【0013】本発明に於いて用いられる担体としては、同一面上に多数の微生物由来の染色体DNAを固定化し得るものであればよく、その表面に凹凸を有するものでもよいが、好ましくは多数の微生物由来の染色体DNAを固定化し得る平面を有するものであり、例えば板状物、シート状物、膜状物、ディスク状物、円盤状物等が挙げられ、これらには天然、半合成又は合成等の素材を常法により成型することにより得られるもの等が含まれる。これらの素材としては、例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ガラス、金属、シリコンラバー等、例えばニトロセルロース、硝酸セルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、紙、レーヨン、綿、絹、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン等が挙げられる。尚、これら担体に、更にカチオン性化合物やアニオン性化合物等をコート等したものや、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を導入したもの等も本発明の担体に包含されるが、特にpoly-L-リジン等により表面がコートされた担体が好ましい。また、当該担体の形状は、特に限定されないが、矩形乃至方形や円形乃至楕円形が一般的である。また、本発明に於いて使用される担体の大きさは、通常100cm2以下、好ましくは50cm2以下、より好ましくは25cm2以下である。具体的には、例えばスライドガラス等が実用的である。
【0014】本発明に於いて、上記した如き担体に既知微生物由来染色体DNAを固定化する方法としては、通常この分野で用いられる方法であればよく、例えば物理的吸着による固定化方法、担体中の官能基を利用して化学的に固定化する方法、或いは市販のスタンピング装置を用いる固定化方法(例えば、日本レーザー電子(株)等から販売されているスタンピング装置を用いる方法等)等が挙げられる。尚、染色体DNAを担体に固定するにあたっては、これら既知微生物由来染色体DNAが固定化されている位置が夫々明らかになるように、担体上に適当な表示(例えば番号を付す等)をしておくことが好ましい。
【0015】本発明の同定法は、上記した如き、担体面上に固定化された互いにGC含量の異なる複数の既知微生物由来の染色体DNAと、検体中の未知微生物由来の染色体DNAとを、特定の条件下で反応させることにより、夫々のDNAのGC含量の程度に関係なく、GC含量の異なる種々の固定化DNAと検体中の未知微生物由来の染色体DNAとのハイブリダイゼーション反応を、同一条件下で一度に行うことができる。
【0016】本発明の同定法は、例えば50%ホルムアミドを含有するハイブリダイゼーション溶液を用いる場合には、担体面上に固定化された互いにGC含量の異なる複数の既知微生物由来の染色体DNAが、高GC含量の染色体DNA(以下、High GCと略記する場合がある)及び低GC含量の染色体DNA(以下、Low GCと略記する場合がある)を含む場合は通常25〜46℃、好ましくは25〜44℃、より好ましくは40〜44℃、High GC及び中GC含量染色体DNA(以下、Middle GCと略記する場合がある)を含む場合は通常25〜60℃、好ましくは30〜55℃、より好ましくは40〜50℃、Middle GC及びLow GC両方を含む場合は通常15〜46℃、好ましくは15〜44℃、より好ましくは25〜44℃、High GC、Middle GC及びLow GC全てを含む場合は通常25〜46℃、好ましくは25〜44℃、より好ましくは40〜44℃の条件下で、通常10分〜24時間、好ましくは30分〜12時間、担体面上に固定化された互いにGC含量の異なる複数の既知微生物由来の染色体DNAと、検体中の未知微生物由来の染色体DNAとをハイブリダイゼーション反応に供すればよく、これ以外は自体公知の方法に準じて実施すればよく、使用される試薬類やその使用濃度もこれら自体公知の方法に準じて適宜選択すればよい。即ち、例えばGC含量の異なる複数の既知微生物由来の染色体DNAを担体上に固定化し、次いで検体中の未知微生物由来の染色体DNAを、これが担体面上に固定化された染色体DNAの実質上全てと実質上同時に接触するように、担体面上に供給して上記した如き条件でハイブリダイゼーションを行わしめ、生成されるハイブリダイゼーション複合体を検出することにより未知微生物の同定を行えばよい。
【0017】本発明に於いて、同定される微生物を含む検体としては、例えば半導体用洗浄水、例えば血液、血清、血漿、髄液、胃液、胆汁等の体液、尿、糞便、喀たん、膿、皮膚由来物、水道水、工場廃液、食品、飲料、医療器具等を洗浄した後の洗浄液等が挙げられる。
【0018】本発明の方法に於いて、担体面上に固定化された互いにGC含量の異なる複数の既知微生物由来の染色体DNAと、検体中の未知微生物由来の染色体DNAとを反応させるには、同定しようとする未知微生物を含む上記した如き検体から当該微生物及び当該微生物由来の染色体DNAを抽出する必要がある。検体から当該微生物及び当該微生物由来染色体DNAを抽出する方法としては、例えば、H.Saito,K.Miura, Biochem.Biophys.Acta,72,619(1963)等に記載の自体公知の方法に準じてこれを行えばよい。また、これら染色体DNAは、自体公知の加熱変性やアルカリ変性法等により一本鎖DNAとして用いられる。このようにして得られた未知微生物由来DNAは、通常ハイブリダイゼーション反応に適した溶液状態として本発明の方法に供される。当該溶液状態とするには、自体公知のハイブリダイゼーション法に用いられる緩衝液、例えばハイブリダイゼーション溶液等に未知微生物由来染色体DNAを溶解することにより行われる。尚、使用されるハイブリダイゼーション溶液等を調製するために用いられる試薬類や、ハイブリダイゼーション溶液中のこれら試薬類の濃度は、自体公知のハイブリダイゼーション法に於いて用いられるハイブリダイゼーション溶液に準じて適宜選択すればよい。
【0019】検体中の未知微生物由来の染色体DNAを、これが担体面上に固定化された染色体DNAの実質上全てと実質上同時に接触させるには、例えば上記した如き未知微生物由来染色体DNAを含む溶液を、担体上に滴下等して一挙に供給することにより、固定化されている実質的に全ての染色体DNAと実質的に同時乃至は一挙に接触させればよい。
【0020】本発明に於いて、担体面上に固定化された互いにGC含量の異なる複数の既知微生物由来の染色体DNAと、検体中の未知微生物由来の染色体DNAとを反応させることにより生成されるハイブリダイゼーション複合体を検出するには、例えば予め検体中の未知微生物由来の染色体DNAを、例えば酵素類、放射性同位元素、蛍光性物質、発光性物質、紫外部に吸収を有する物質、スピンラベル化剤としての性質を有する物質等の通常この分野で用いられる標識物質により標識し、得られた標識未知微生物由来染色体DNAと、担体面上に固定化された互いにGC含量の異なる複数の既知微生物由来の染色体DNAとを反応させて、生じたハイブリダイゼーション複合体中の標識物質を検出する方法等によりこれを行えばよい。上記した如き標識物質としては、例えばアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、パーオキシダーゼ、マイクロパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ルシフェラーゼ等の酵素類、例えば32P、35S、99mTc、131I、125I、14C、3H等の放射性同位元素、例えばフルオレセイン、ダンシル、フルオレスカミン、クマリン、ナフチルアミン、これらの誘導体、ユウロピウム等の蛍光性物質、例えばルシフェリン、イソルミノール、ルミノール、ビス(2,4,6-トリフロロフェニル)オキザレーロ等の発光性物質、例えばフェノール、ナフトール、アントラセン、これらの誘導体等の紫外部に吸収を有する物質、例えば4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、3-アミノ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシル、2,6-ジ-t-ブチル-α-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキソ-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン)-p-トリルオキシル等のオキシル基を有する化合物に代表されるスピンラベル化剤としての性質を有する物質等が挙げられる。
【0021】また、例えば臭化エチジウム、二ヨウ化プロピジウム等のハイブリダイゼーション複合体の分子内、特に水素結合で結合した鎖間に特異的に取り込まれる物質を、当該ハイブリダイゼーション複合体と反応させて、当該複合体を直接検出する方法によっても、又は上記した如き標識物質により標識された、例えば抗体、抗原、蛋白質結合配位子、ハプテン等のハイブリダイゼーション複合体に特異的に結合する物質を、当該ハイブリダイゼーション複合体と反応させて、生じたハイブリダイゼーション複合体と標識特異的結合物質との複合体中の標識物質を検出する方法、或いはハイブリダイゼーション複合体に、未標識のハイブリダイゼーション複合体特異的結合物質を反応させ、更に標識物質で標識された当該結合物質に対する二次抗体を反応させて、生じたハイブリダイゼーション複合体と特異的結合物質と標識二次抗体との複合体中の標識物質を検出する方法等によっても、担体面上に固定化された互いにGC含量の異なる複数の既知微生物由来の染色体DNAと、検体中の未知微生物由来の染色体DNAとを反応させることにより生成されるハイブリダイゼーション複合体を検出することができる。
【0022】未知微生物由来の染色体DNA、ハイブリダイゼーション複合体に特異的に結合する物質、或いは二次抗体を、標識物質により標識する方法としては、通常この分野で用いられる常法、例えば自体公知のEIA、RIA或いはFIA等に於いて一般的に行われている自体公知の標識方法〔医学実験講座、第8巻、山村雄一監修、第1版、中山書店、1971;図説 蛍光抗体、川生明著、第1版、(株)ソフトサイエンス社、1983;酵素免疫測定法、石川栄治、河合忠、宮井潔編、第3版、医学書院、1987等〕や、アビジン(又はストレプトアビジン)とビオチンの反応を利用した常法等が挙げられる。また、市販の標識キットを用いることもできる。
【0023】また、標識物質を検出するには、通常この分野で用いられる常法、例えば自体公知のEIA、RIA或いはFIA等に於いて一般的に行われている自体公知の標識方法〔医学実験講座、第8巻、山村雄一監修、第1版、中山書店、1971;図説 蛍光抗体、川生明著、第1版、(株)ソフトサイエンス社、1983;酵素免疫測定法、石川栄治、河合忠、宮井潔編、第3版、医学書院、1987等〕等に準じて、標識物質の性質に応じてこれを検出すればよい。
【0024】本発明の同定法は、更に具体的には、例えば以下のようにして行うことができる。先ず、上記した如き抽出・変性して得られた、夫々互いにGC含量が異なる既知微生物由来の一本鎖染色体DNAを複数、5種類以上10000種類未満、好ましくは25〜6000種類、さらに好ましくは50〜500種類、上記した如き通常100cm2以下、好ましくは50cm2以下、より好ましくは25cm2以下の担体上に固定化し、DNA固定化担体を調製する。一方、同定しようとする未知微生物を含んだ検体から、そこに含まれている微生物に由来する染色体DNAを、上記した如き方法により抽出・変性し、一本鎖DNAとする。得られたDNAを上記した如き標識物質で標識し、これを上記した如きハイブリダイゼーション反応を行うのに適した溶液に溶解して溶液状態とする。次いで、この溶液を担体の面上に固定化されている既知微生物由来染色体DNA上に一挙に供給し、固定化されている実質的に全ての染色体DNAと実質的に同時に乃至は一挙に接触させ、上記した如き条件下でハイブリダイゼーション反応を行う。かくして、両染色体DNA間でのハイブリダイゼーション反応が進行し、未知微生物由来の染色体DNAと相同性を有する標識された既知微生物由来染色体DNAとのハイブリダイゼーション複合体が担体面上に形成される。次いで、かくして形成された複合体中の標識物質を上記した方法により検出することによって、未知微生物が同定される。
【0025】尚、本発明の同定法は、染色体DNAを用いているため、複数の相同性の高い微生物由来染色体DNAと、検体中の未知微生物由来染色体DNAとがクロスハイブリダイズする場合があるが、この場合は、クロスハイブリダイゼーションの度合いを比較することにより、未知微生物の同定が可能である。言い換えれば、本発明の方法により属間のみならず、種間の同定が可能となる。
【0026】本発明のキットは、上記した如き検体中の未知の微生物を同定するために使用されるものであり、上記した如きGC含量の異なる多数の既知の微生物由来の染色体DNAが同一面上に固定化された担体を含んでなる以外は、通常この分野で使用される試薬類、例えば緩衝液、洗浄液等の溶液、例えば標識物質が酵素である場合には、その酵素を測定するための基質、酵素反応を停止するための反応停止剤等の試薬類を、含んでいてもよい。尚、このような試薬類に含まれる各成分の使用濃度は、この分野で通常使用される濃度範囲から適宜選択すればよい。
【0027】以下に実施例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。
【0028】
【実施例】実施例1.
(1)染色体DNAの固相化表1に記載の各種細菌からH.Saito,K.Miura, Biochem.Biophys.Acta,72,619(1963)の方法に従い染色体DNAを抽出し、TE緩衝液〔1mMEDTA含有10mMTris−HCl緩衝液(pH8.0)〕で1mg/mlとなるように希釈した後、100℃5分間の加熱後、氷中で急冷する事により1本鎖染色体DNA含有溶液を調製した。この溶液に6×SSC溶液(即ち、0.15M NaCl−0.015M クエン酸三ナトリウム溶液の6倍濃度溶液)を等量加え、各種細菌の染色体DNA溶液(最終DNA濃度が0.5mg/mlの0.45M NaCl−0.045M クエン酸三ナトリウム溶液)32種を調製した。日本レーザー電子製GT−MASSスタンピングマシーンを用いて、これらDNA溶液をMastunami社製 Poly-L-lysine coat slide glass上に順次スポッティングした。
【0029】
【表1】

【0030】(2)プレハイブリダイゼーション(ブロッキング処理)
上記(1)で得た染色体DNA固定化スライドグラスに第1ハイブリダイゼーション溶液[50%ホルムアミド、0.02%ウシ血清アルブミン、0.02%ポリビニルピロリドン(分子量3×103〜4×104)、0.02%フィコール(分子量4×105)及び0.1mg/ml 変性ニシン精巣DNA を含有する2×SSC溶液]15μlを添加し、カバーガラスを気泡が入らないようにかぶせたのち、プラスチック製のハイブリダイゼーション容器に入れ37℃2時間以上プレハイブリダイゼーションを行った。プレハイブリダイゼーション終了後、カバーガラスを取り除き、SSC溶液で染色体DNA固定化スライドグラスを2回洗浄後、遠心分離によりスライドガラス表面上のSSC溶液を除去した。
【0031】(3)標識染色体DNAの作成表1に記載の細菌のうち、No.1、No.6、No.7、No.10、No.11、No.14、No.20、No.22、No.26、No.28についてH.Saito,K.Miura, Biochem.Biophys.Acta,72,619(1963)の方法に従い染色体DNAを抽出し、TE緩衝液で1mg/mlとなるように希釈した後、Mirus社製Label IT Cy3 Nucleic Acid Labeling Kitを用いMirus社推奨の方法で染色体DNAの標識を行ったのちエタノール沈殿により、未反応のCy3と標識染色体DNAの分離を行った。得られた標識染色体DNAを最終濃度が10μg/mlになるように第2ハイブリダイゼーション溶液[50%ホルムアミド、0.02%ウシ血清アルブミン、0.02%ポリビニルピロリドン(分子量3×103〜4×104)、0.02%フィコール(分子量4×105)、0.1mg/ml 変性ニシン精巣DNA 及び2.5%デキストラン硫酸ナトリウムを含有する2×SSC溶液]で希釈し、各種細菌由来の標識染色体DNA溶液10種を得た。
【0032】(4)ハイブリダイゼーション反応上記(2)で調製した染色体DNA固定化スライドグラスに、上記(3)で調製した所定の標識染色体DNA溶液15μlを添加し、カバーガラスを気泡が入らないようにかぶせたのち、プラスチック製のハイブリダイゼーション容器に入れ40℃4時間ハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション終了後、カバーガラスを取り除き、SSC溶液で染色体DNA固定化スライドグラスを3回洗浄後、遠心分離によりスライドガラス表面上のSSC溶液を除去した。
【0033】(5)ハイブリダイゼーションおよびハイブリッド形成の度合の定量GSI Lumonics社製の共焦点レーザースキャナーでCy3標識DNAの量を測定した。
【0034】結果を図1〜10にそれぞれ示す。尚、図1は、 Mycobacterium avium[No.1(表1記載の微生物No.を表す。以下、同じ。):High GC]由来の染色体DNAを標識染色体DNAとして用いた場合のハイブリダイゼーションの結果を、図2はStaphylococcus epidermidis(No.6:Low GC)由来の染色体DNAを、図3はStaphylococcus hominis(No.7:Low GC)由来の染色体DNAを図4は Streptococcus anginosus(No.10:Low GC)由来の染色体DNAを、図5はStreptococcuspyogenes(No.11:Low GC)由来の染色体DNAを、図6はPseudomonas aeruginosa(No.14:High GC)由来の染色体DNAを、図7はAcinetobacter calcoaceticus Acinetobacter calcoaceticus(No.20:Low GC)由来の染色体DNAを、図8はLegionella pneumophilla(No.22:Low GC)由来の染色体DNAを、図9は Legionella anisa(No.26:Low GC)由来の染色体DNAを、図10は Escherichiacoli(No.28:Middle GC)由来の染色体DNAを、夫々用いた場合のハイブリダイゼーションの結果を示す。また、図1〜10に於いて、図中の1〜32及びBは、夫々表1記載の同番号の細菌由来の染色体DNAが固定化されている位置を示す。これらの結果から、一度のハイブリダイゼーション操作でHigh GCからLow GCまでの細菌の同定が可能であること、言い換えればすべての細菌の同定が可能となることが判る。また、図2と図3の結果の比較、図4と図5の結果の比較、並びに図8と図9の結果の比較から、本発明の方法によれば、属間のみならず種間でも微生物の同定が可能となることも判る。
【0035】実施例2表1に記載の細菌のうちNo.1(High GC)、No.10(Low GC)、No.28(MiddleGC)について、ハイブリダイゼーション時の温度を変えた以外は実施例1と同様の染色体DNA固定化スライドグラスを用いた方法で標識DNAの量を測定した。尚、反応時の温度は15℃、20℃、25℃、44℃、46℃、48℃及び50℃として、夫々の標識DNA量を測定した。結果を図11〜26、及び表2にそれぞれ示す。尚、図11〜16は Mycobacterium avium(No.1:High GC)由来の染色体DNAを標識染色体DNAとして用いた場合の所定の温度におけるハイブリダイゼーションの結果を、図17〜20は Streptococcus anginosus(No.10:Low GC)由来の染色体DNAを標識染色体DNAとして用いた場合の所定の温度におけるハイブリダイゼーションの結果を、図21〜26は Escherichia coli(No.28:Middle GC)由来の染色体DNAを標識染色体DNAとして用いた場合の所定の温度におけるハイブリダイゼーションの結果を夫々表す。また、図11〜26に於いて、図中の1〜32及びBは、夫々表1記載の同番号の細菌由来の染色体DNAが固定化されている位置を示す。表2は、図11〜26の結果から求めた、ハイブリダイゼーションによる相対類似度(%)を表したものである。尚、表2中の−は相対類似度が30%未満のものを表す。
【0036】
【表2】

【0037】表2の結果から、No.1: Mycobacterium aviumのDNA染色体(表2中ではHighとしても表示)を用いた場合、15℃、20℃におけるハイブリダイゼーションでは、No.1以外に近縁種へのハイブリダイゼーション(No.3、No.4、No.14等)が見られ、定量解析による同定は不可能であることがわかった。また、No.10: Streptococcus anginosusのDNA染色体(表2中ではLowとしても表示)を用いた場合、近縁種へのハイブリダイゼーションはあまり見られなかったが、46℃以上ではハイブリダイゼーションによる検出が不可能であった。更に、No.28: Escherichia coliのDNA染色体(表2中ではMidとしても表示)を用いた場合、15〜50℃の所定の温度全てにおいてハイブリダイゼーションによる検出、同定が可能であることがわかった。即ち、上記の結果においては、High GC(No.1)では25℃以上50℃以下で、Low GC(No.10)では15℃以上44℃以下で、Middle GC(No.28)では15℃以上50℃以下の温度で、ハイブリダイゼーションによる検出が可能であることが判明した。したがって、全てのDNA染色体(HighGC、Middle GC及びLow GC)を検出するためにはハイブリダイゼーション時の温度を25℃以上44℃以下にすることが好ましいことが判った。
【0038】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明は、迅速且つ簡便に微生物を同定し得る方法及びそれに用いられるキットを提供するものであり、本発明によれば、煩雑な操作も不必要で、同定までに長時間を要することもなく、迅速且つ簡便に未知の微生物を同定し得る。
【出願人】 【識別番号】000252300
【氏名又は名称】和光純薬工業株式会社
【出願日】 平成13年2月16日(2001.2.16)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−299396(P2001−299396A)
【公開日】 平成13年10月30日(2001.10.30)
【出願番号】 特願2001−40175(P2001−40175)