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【発明の名称】 糖化アルブミンの測定方法
【発明者】 【氏名】坂本 久

【氏名】坪井 五三美

【氏名】トレンス、デビッド・ジョン

【要約】 【課題】特殊な装置を使用することなく、試料中の糖化アルブミンを簡易に測定することができる糖化アルブミンの測定方法を提供する。

【解決手段】試料中の糖化アルブミンの濃度を酵素を用いて測定し、別途に測定した試料中の総アルブミンの濃度に対する比率を求めることを特徴とする糖化アルブミンの測定方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】試料中の糖化アルブミンの濃度を酵素を用いて測定し、別途に測定した試料中の総アルブミンの濃度に対する比率を求めることを特徴とする糖化アルブミンの測定方法。
【請求項2】試料が、血液である請求項1記載の糖化アルブミンの測定方法。
【請求項3】血液中の糖化アルブミンの濃度を酵素を用いて測定する方法が、血清又は血漿をプロテアーゼで処理し、プロテアーゼ処理試料をケトアミンオキシダーゼで処理し、その反応生成物を測定する請求項2記載の糖化アルブミンの測定方法。
【請求項4】反応生成物が、過酸化水素である請求項3記載の糖化アルブミンの測定方法
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、糖化アルブミンの測定方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、特殊な装置を使用することなく、試料中の糖化アルブミンを簡易に測定することができる糖化アルブミンの測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】血液中のグルコースは血清タンパクと反応し、非酵素的糖化タンパクを生成する。糖化タンパクは、グルコースのカルボニル基に対し、タンパク上の遊離アミノ基の求核反応によりシッフ塩基を生じ、さらにアマドリ転移を受けてケトアミン構造を形成することにより安定化される。タンパクの主な糖化部位は、リジン残基のε−アミノ基とタンパクの末端アミノ酸のα−アミノ基である。アルブミンには、糖化に関与するリジン残基が4個所存在すると報告されている。糖尿病患者の治療では、血糖値の管理が最も重要であり、血糖値を管理することにより、重篤な合併症に罹患する可能性を低減することができる。そのためには、随時血糖値を測定することも重要であるが、随時血糖値は食事や運動の影響を受けて変動するので、過去の平均血糖値を反映する指標である糖化ヘモグロビン(HbA1c)と糖化アルブミン(GA)が臨床的に重要視されている。糖化ヘモグロビンは、過去1〜2カ月間の平均的な血糖値を反映し、一方、糖化アルブミンは、過去1〜2週間の平均血糖値を反映する。このように糖化アルブミンの測定によれば、糖化ヘモグロビンの測定では診断し得ない短期的な血糖値の変動を把握することができ、治療開始時、治療法の変更時、不安定型糖尿病などの治療状態が急激に変化する場合に対応することができ、また糖尿病妊婦の厳密な血糖コントロールを行うことも可能になる。血液中の糖化アルブミンの測定方法として、アルブミンを加水分解して糖結合リジン由来の生成物を定量する方法、アミノフェニルボロン酸を用いて糖化アルブミンを分離する方法などが開発されたが、測定操作が複雑で、測定精度も高くなかったために、臨床的な検査には適用されなかった。近年にいたって、高速液体クロマトグラフィーによる糖化アルブミンの測定方法が開発され、測定装置も市販されるようになった。この測定原理は、まず血清試料からアルブミンをイオン交換クロマトグラフィーにより分離し、次いでアルブミン分画に存在する糖化アルブミンを、糖化部分にあるシスジオール構造がホウ酸と可逆的に結合することを利用し、アフィニティークロマトグラフィーによりアミノフェニルボロン酸ゲルからなるカラムに吸着し、D−ソルビトールを主成分とする溶離液を用いて糖化アルブミンを溶離させ、トリプトファンにもとづく蛍光強度を測定するものである。糖化アルブミンの値は、アフィニティークロマトグラフィーによる分離された糖化アルブミンと非糖化アルブミンのピーク面積から、試料中の総アルブミンに対する糖化アルブミンの比率(%)として表わされる。この方法によれば、比較的短時間で、自動的に精度のよい測定値が得られるが、専用の高価な測定装置が必要であり、広く普及するには至っていない。このために、特殊な装置を必要とせず、簡易に糖化アルブミンを精度よく測定することができる糖化アルブミンの測定方法が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、特殊な装置を使用することなく、試料中の糖化アルブミンを簡易に測定することができる糖化アルブミンの測定方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、試料中の糖化アルブミンの濃度を酵素を用いて測定し、別途に測定した試料中の総アルブミンの濃度に対する比を求めることにより、容易に試料中の総アルブミンに対する糖化アルブミンの比率を求め得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、(1)試料中の糖化アルブミンの濃度を酵素を用いて測定し、別途に測定した試料中の総アルブミンの濃度に対する比率を求めることを特徴とする糖化アルブミンの測定方法、(2)試料が、血液である第1項記載の糖化アルブミンの測定方法、(3)血液中の糖化アルブミンの濃度を酵素を用いて測定する方法が、血清又は血漿をプロテアーゼで処理し、プロテアーゼ処理試料をケトアミンオキシダーゼで処理し、その反応生成物を測定する第2項記載の糖化アルブミンの測定方法、及び、(4)反応生成物が、過酸化水素である第3項記載の糖化アルブミンの測定方法、を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の糖化アルブミンの測定方法においては、試料中の糖化アルブミンの濃度を酵素を用いて測定し、別途に測定した試料中の総アルブミンの濃度に対する比率を求める。本発明方法を適用する試料に特に制限はなく、例えば、血液、尿、唾液、汗、涙などの体液及び分泌物を挙げることができる。本発明方法は、これらの中で、血液に特に好適に適用することができる。本発明方法において、血液中の糖化アルブミンの濃度を酵素を測定するためには、血液から血清又は血漿を分離して試料とすることが好ましい。血清は、受診者から静脈穿刺により採血し、血液を凝固させたのち、遠心分離することにより得ることができる。血漿は、受診者の血液をEDTA管又はヘパリン管に採取し、遠心分離することにより得ることができる。これらの処理と測定は、採血後3時間以内に行うことが好ましいが、試料を2〜8℃の低温に保つことにより、3日間は保存することができる。本発明方法において、血液中の糖化アルブミンの濃度を酵素を用いて測定する方法に特に制限はないが、血清又は血漿をプロテアーゼを用いて処理し、プロテアーゼ処理試料をケトアミンオキシダーゼで処理し、その反応生成物を測定することが好ましい。血液中のアルブミンは、血液中に存在するグルコースと式[1]で表されるように反応し、非酵素的に反応して糖化アルブミンとなる。
【化1】

すなわち、グルコースのアルデヒド基とアルブミンのアミノ基の反応により不安定型糖化アルブミンであるシッフ塩基が形成され、シッフ塩基のアマドリ反応により安定型糖化アルブミンであるケトアミンが形成される。アルブミンにおいて、この反応に関与するアミノ基は、Lys−525、Lys−199、Lys−281及びLys−439であるとされている。この反応は非酵素的な糖化反応であり、質量作用の法則のみに支配され、ケトアミンの生成量はアルブミンとグルコースの血中濃度に比例する。したがって、受診者の血液中の糖化アルブミンの濃度と、総アルブミンの濃度を測定することにより、受診者の血液中のグルコースの濃度を推定することができる。また、血液中のアルブミンの半減期は約3週間なので、血液中の糖化アルブミンを測定することにより、過去1〜2週間の平均血糖値を推定することができる。
【0006】本発明方法において、血清又は血漿をプロテアーゼで処理することにより、糖化アルブミンが分解され、糖化されたままの状態でより低分子量のタンパク質分解物ないしアミノ酸となる。本発明方法に用いるプロテアーゼに特に制限はなく、例えば、プロテイナーゼK、プロナーゼE、アナナイン、サーモシリン、ズブチリシン、ウシ膵臓プロテアーゼなどを挙げることができる。これらのプロテアーゼは、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明方法においては、プロテアーゼ処理試料をケトアミンオキシダーゼで処理し、その反応生成物を測定する。本発明方法に用いるケトアミンオキシダーゼに特に制限はなく、例えば、クレブシエラ属の細菌、フザリウム属又はアクレモニウム属の真菌、デバリオマイセス属の酵母から得られるケトアミンオキシダーゼなどを挙げることができる。測定する反応生成物に特に制限はなく、例えば、発生する過酸化水素、グルコソンなどのほかに、負の反応生成物である消費される酸素を測定することもできる。これらの中で、過酸化水素は、発色原の存在下にペルオキシダーゼで処理して発色させることにより、比色分析することができるので、容易に測定することができる。本発明方法においては、別途に血液中の総アルブミンの濃度を測定し、酵素を用いて測定した糖化アルブミンの濃度と総アルブミンの濃度の比率を求める。血液中の総アルブミンの濃度の測定方法に特に制限はなく、例えば、ブロモクレゾールグリーン(BCG)やブロモクレゾールパープル(BCP)を用いて色素−アルブミン複合体による呈色を測定する方法や、抗アルブミン抗体を用いる免疫比濁法などにより測定することができる。
【0007】図1は、高速液体クロマトグラフィーにより測定した血液中の糖化アルブミンの総アルブミンに対する比率(%)と、酵素を用いて測定した血液中のケトアミンの濃度(μmol/L)の関係を示すグラフの一例である。両者の間の相関係数はそれほど大きくはなく、酵素を用いて測定した血液中のケトアミンの濃度により、高速液体クロマトグラフィーにより測定した血液中の糖化アルブミンの総アルブミンに対する比率を代用することは困難である。血液中の総アルブミン濃度は個体差があり、通常は2〜5g/dLの間に分布している。本発明方法においては、まず酵素を用いて測定したケトアミンの濃度と、別途に測定した血液中の総アルブミンの濃度との比率を求める。ケトアミンの濃度は通常μmol/L単位で測定され、総アルブミンの濃度は通常g/dL単位で測定されるので、ケトアミンの総アルブミンに対する比率は下記の式[2]により計算することができる。
【数1】

図2は、このようにして計算したケトアミンの比率を、高速液体クロマトグラフィーにより測定した糖化アルブミンの比率に対してプロットしたグラフの一例である。両者の間には、強い相関関係が認められる。しかし、この図に見られるように、式[2]より計算したケトアミンの比率は、高速液体クロマトグラフィーにより測定した糖化アルブミンの比率の約3倍の値である。これは、アルブミン1分子にグルコース約3分子が結合しているためと推定される。高速液体クロマトグラフィーによる糖化アルブミンの測定方法は、すでに定着しているので、過去の測定値や異なる医療機関における測定値と対比する上で、高速液体クロマトグラフィーによる測定値との間に整合性がある数値とすることが好ましい。そこで、式[2]より求めたケトアミンの比率より、次のようにして糖化アルブミンの比率を求める。すなわち、高速液体クロマトグラフィーによる糖化アルブミンの比率が既知である標準血清について、ケトアミンの濃度と総アルブミン濃度を測定し、(ケトアミン濃度/総アルブミン濃度)を算出する。次に、測定対象の試料について、同様に(ケトアミン濃度/総アルブミン濃度)を求め、標準血清から得られた糖化アルブミンの比率と(ケトアミン濃度/総アルブミン濃度)の比に基づいて、試料の糖化アルブミンの比率を算出する。図3は、このようにして計算した糖化アルブミンの比率を、高速液体クロマトグラフィーにより測定した糖化アルブミンの比率に対してプロットしたグラフの一例である。両者の間には強い相関関係が認められ、回帰直線は勾配がほぼ1で、かつほぼ原点を通る直線となっている。本発明方法により求めた糖化アルブミンの比率は、従来の高速液体クロマトグラフィーにより測定した糖化アルブミンの比率と整合性があり、測定時期、測定医療機関などが異なっても、共通して支障なく診断に利用することができる。
【0008】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1Genzyme社のGlyProを用いて、血液中の糖化アルブミンの濃度を測定した。GlyProは、試薬(1)と試薬(2)からなり、試薬(1)は、プロテイナーゼK、ペルオキシダーゼ、EPPS緩衝剤、酢酸カルシウム、フェロシアン化カリウム、酢酸銅、バトフェナントロリンジスルホン酸、N−エチル−N−スルホヒドロキシプロピル−m−トルイジンのナトリウム塩、コール酸ナトリウム及びポリオキシエチレン(10)トリデシルエーテルを含有する。試薬(2)は、ケトアミンオキシダーゼ、EPPS緩衝剤、マンニトール、EDTA及び4−アミノアンチピリンを含有する。試薬(1)及び試薬(2)を、それぞれ所定量の脱イオン水に溶解して、試薬溶液(1)と試薬溶液(2)を調製した。糖尿病患者から静脈穿刺により血液を採取し、血清を分離した。自動分析装置[(株)日立製作所、HITACHI 7070]を用いて、血清20μL、希釈液30μL及び試薬溶液(1)280μLを混合し、37℃に5分間保ったのち、546nmにおける吸光度A1を測定し、さらに試薬溶液(2)60μLと希釈液10μLを添加して、37℃に5分間保ったのち、546nmにおける吸光度A2を測定した。自動分析装置は、A2−A1の値からケトアミンの濃度を計算し、ケトアミンの濃度として447.1μmol/Lが得られた。上記の血液中の総アルブミンの濃度を、別途にブロモクレゾールグリーン(BCG)を用いて色素−アルブミン複合体の呈色により測定したところ、4.0g/dLであった。この結果、総アルブミンに対するケトアミンの比率は、(447.1/4.0)× 0.65 = 72.65(%)
と算出された。高速液体クロマトグラフィーにより求めた糖化アルブミンの比率が23.30%である標準血清を、同様にして分析したところ、ケトアミンの総アルブミンに対する比率は63.92%であった。この結果から、上記の血清の糖化アルブミンの比率は、72.65 ×(23.30/63.92)= 26.48(%)
と算出された。また、上記の血液について、高速液体クロマトグラフ[京都第一科学(株)、GAA−2000]を用いて糖化アルブミンの比率を求めたところ、27.1%であり、上記の酵素法により求めた糖化アルブミンの比率とよく一致していた。さらに、合計99名の糖尿病患者と健常者について採血を行い、GlyProを用いるケトアミン濃度の測定、呈色法による総アルブミン濃度の測定、ケトアミンの比率の計算、糖化アルブミンの比率の計算を行うとともに、併せて高速液体クロマトグラフィーによる糖化アルブミンの比率の測定を行った。結果を第1表に示す。
【0009】
【表1】

【0010】
【表2】

【0011】
【表3】

【0012】
【表4】

【0013】第1表に見られるように、本発明方法により求めた糖化アルブミンの比率と、高速液体クロマトグラフィーにより求めた糖化アルブミンの比率はよい一致を示し、医療現場において、本発明方法により求めた数値を従来の高速液体クロマトグラフィーにより求めた数値となんら区別することなく、診断に使用し得ることが分かる。さらに、上記の測定データを、グラフを用いて整理する。図1は、高速液体クロマトグラフィーにより求めた糖化アルブミンの比率(x)と、GlyProにより求めたケトアミンの濃度(y1)の関係を示すグラフである。本図において、回帰直線と相関係数は下記の式により表される。グラフからも、相関係数の値からも、xとy1の間に十分に高い相関係数があるとは言い難い。
1=17.227x−65.314R2=0.7149図2は、高速液体クロマトグラフィーにより求めた糖化アルブミンの比率(x)と、GlyProにより求めたケトアミンの濃度と別途に測定した血液中の総アルブミンの濃度との比率(y2)の相関関係を示すグラフである。本図において、回帰直線と相関係数は下記の式により表される。グラフからも、相関係数の値からも、xと2の間に十分に高い相関係数が認められる。
2=2.9733x−11.55R2=0.9432しかし、図2の回帰直線の勾配は約3であり、このままでは医療現場においてy2の値をxの値と同等に取り扱うことができない。そこで、y2の値より糖化アルブミンの総アルブミンに対する比率(y3)を求め、図3に示すように、高速液体クロマトグラフィーにより求めた糖化アルブミンの比率(x)に対してプロットしグラフ化する。本図において、回帰直線と相関係数は下記の式により表される。グラフからも、相関係数の値からも、xとy3の間に十分に高い相関係数が認められ、かつxとy3はほぼ同じ値となり、従来の高速液体クロマトグラフィーにより求めた数値となんら区別することなく、診断に使用することができる。
3=0.9303x+0.1372R2=0.9432【0014】
【発明の効果】本発明の糖化アルブミンの測定方法によれば、特殊な専用機器を使用することなく、汎用の自動分析装置を用いて、試料中の糖化アルブミンを簡易に測定することができ、本発明方法により得られた糖化アルブミンの総アルブミンに対する比率は、従来の高速液体クロマトグラフィーにより得られた比率と整合性を有し、同様に取り扱うことができる。
【出願人】 【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
【識別番号】591083336
【氏名又は名称】株式会社ビー・エム・エル
【識別番号】500128181
【氏名又は名称】ゼンザイム コーポレーション
【出願日】 平成12年3月22日(2000.3.22)
【代理人】 【識別番号】100075351
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 充
【公開番号】 特開2001−258593(P2001−258593A)
【公開日】 平成13年9月25日(2001.9.25)
【出願番号】 特願2000−80883(P2000−80883)