| 【発明の名称】 |
特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】石橋 要
【氏名】辻 明彦
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| 【要約】 |
【課題】細胞にマーカーとして使用可能な細胞表面分子が存在しない場合や、存在しても細胞間で区別ができない場合、さらにはマーカーとなるべき分子が細胞外液中に遊離してしまう場合であっても、目的とする細胞、すなわち特定の遺伝子を発現した細胞を生きたままの状態で選択的に分離取得することが可能な分離方法を提供すること。
【解決手段】特定のmRNAを発現した生細胞を含む生細胞群の細胞中に、該mRNAを標識可能な標識剤を導入する第1の工程と、前記標識剤で前記mRNAを標識することにより、標識化mRNAを含有する生細胞を含む生細胞群を得る第2の工程と、前記標識化mRNAを検出することにより該標識化mRNAを含有する生細胞を同定し、同定した該生細胞を前記第2の工程で得られた前記生細胞群から選択的に分離する第3の工程とを含むことを特徴とする特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 特定のmRNAを発現した生細胞を含む生細胞群の細胞中に、該mRNAを標識可能な標識剤を導入する第1の工程と、前記標識剤で前記mRNAを標識することにより、標識化mRNAを含有する生細胞を含む生細胞群を得る第2の工程と、前記標識化mRNAを検出することにより該標識化mRNAを含有する生細胞を同定し、同定した該生細胞を前記第2の工程で得られた前記生細胞群から選択的に分離する第3の工程と、を含むことを特徴とする特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法。 【請求項2】 前記第1の工程における標識剤が、前記mRNAと相補的な塩基配列を有し、且つ蛍光色素で標識されたプローブであり、前記第2の工程における標識化mRNAが、該プローブと前記mRNAとのハイブリッド体であり、前記第3の工程において、該ハイブリッド体を含有する生細胞を含む生細胞群に光を照射して、該ハイブリッド体の形成に基づく前記蛍光色素の蛍光変化を検出することにより該蛍光変化を生じる生細胞を同定し、同定された該生細胞を前記第2の工程で得られた前記生細胞群から選択的に分離することを特徴とする請求項1記載の特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法。 【請求項3】 前記プローブが、第1のプローブおよび第2のプローブからなり、該第1のプローブと、該第2のプローブとは、前記mRNAに対して隣接してハイブリダイズ可能な塩基配列を有し、該第1のプローブがエネルギードナー蛍光色素で標識され、そして該第2のプローブがエネルギーアクセプタター蛍光色素で標識されたものであり、前記蛍光変化が、該第1のプローブのエネルギードナー蛍光色素から、該第2のプローブのエネルギーアクセプター蛍光色素への蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により生じるものであることを特徴とする請求項2記載の特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法。 【請求項4】 前記第3の工程における、前記蛍光変化を生じる生細胞の選択的分離が、セルソーター(FACS)により実施されることを特徴とする請求項2または3記載の特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法。 【請求項5】 前記mRNAが、サイトカインをコードするmRNAであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法。 【請求項6】 前記mRNAが、インターロイキン−2(IL−2)をコードするmRNAであり、前記第1のプローブが配列表の配列番号9に記載の塩基配列を有するプローブであり、さらに、前記第2のプローブが配列表の配列番号10に記載の塩基配列を有するプローブであることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法。 【請求項7】 前記第3の工程において選択的に分離される生細胞が、Tヘルパー1(TH1)細胞であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法。 【請求項8】 前記mRNAが、インターロイキン−4(IL−4)をコードするmRNAであり、前記第1のプローブが配列表の配列番号17に記載の塩基配列を有するプローブであり、さらに、前記第2のプローブが配列表の配列番号18に記載の塩基配列を有するプローブであることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法。 【請求項9】 前記第3の工程において選択的に分離される生細胞が、Tヘルパー2(TH2)細胞であることを特徴とする請求項1〜5、8のいずれか一項に記載の特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法に関する。 【0002】 【従来の技術】特定の遺伝子を発現した細胞を生きたままで選択的に分離する方法としては、当該遺伝子の翻訳産物が細胞表面分子である場合は、同表面分子に蛍光標識抗体を結合させフローサイトメーターにより蛍光を発する細胞を同定し、同定された細胞をセルソーター(Fluorescence Activated Cell Sorter、FACS)により分離する方法を挙げることができる。また、細胞表面分子に特異的に結合する抗体が敷き詰められたディッシュ底面上に目的細胞のみを吸着させるパニング法も知られている。 【0003】一方、遺伝子の翻訳産物として細胞表面分子を生じることなく、翻訳産物が専ら細胞内(細胞質内もしくは諸器官内)に局在する分子である場合は、上記の方法を採用することができない。この場合は、細胞内に局在する分子に特異的な蛍光標識抗体をマイクロインジェクション法により細胞内に導入して遺伝子発現細胞を蛍光標識し、レーザー光などの照射により生じた蛍光強度の格差に基づいて、上記のセルソーターにより目的遺伝子発現細胞を分離することは理論的には可能である。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、マイクロインジェクションによる上記の細胞標識法は、1回の実験あたり1個ないしは数個の細胞に蛍光標識抗体を導入するのが実験手技上の限界であり、また、一度に多くを標識できる手法ではなく、分子量12万以上の高分子である抗体の高濃度溶液は粘性が高く細胞内への導入は容易ではないことから、実用化の観点で問題がある。 【0005】また、遺伝子の翻訳産物が細胞表面分子ではなく、翻訳産物が細胞外液中に遊離され、細胞内や細胞膜付近に止まらないような分子である場合は、特定の遺伝子を発現した細胞を上述の手法で選択的に捕らえ、他の分子と分離することは非常に困難である。これは、遺伝情報に基づいて翻訳されて生じたポリぺプチド鎖が折り畳まれて細胞外へ分泌される過程で、その構造は細胞内で時々刻々変化するため、既存の抗体では生細胞の細胞内もしくは細胞表面で効率よくこのポリペプチド鎖に結合できないからである。また、遺伝子翻訳産物が細胞表面に存在する場合であっても、その分子が特定の細胞の細胞表面に特異的に存在するものでなければ、細胞の選択的分離は困難である。 【0006】上記のような問題点が生じる典型的な例として、以下に述べる、遺伝子の翻訳産物としてサイトカインを分泌する細胞を選択的に分離する場合が挙げられる。 【0007】生体内に抗原が侵入した場合、その抗原を異物として認識したヘルパーT細胞(CD4+T細胞)は活性化され、相互に免疫機能を異にするTH1(T Helper 1、マクロファージ等を活性化し異物を貪食させて排除するなど細胞性免疫機能を担当する)と、TH2(T Helper 2、B細胞を活性化し異物を中和する抗体分子の産生等を促すなど液体性免疫機能を担当する)とに分化する(図94参照)。TH1およびTH2は、サイトカインとしてそれぞれインターロイキン−2(IL−2)およびインターロイキン−4(IL−4)を生じる。健常な状態では、TH1とTH2は相互に機能を抑制し、均衡を保っているが、この関係が破綻すれば、さまざまな感染症や自己免疫疾患の原因となる。 【0008】TH1またはTH2を選択的に分離取得することができれば、免疫機能補充等への応用をはかることができるため医学的な重要性が高い。したがって、TH1やTH2の細胞表面に存在し、分離取得のために用いることが可能な分子を見出す試みが様々なされてきた。 【0009】例えば、接着分子、P-ならびにE-セレクチン(selectine)依存的な組織浸潤がヒトTH1に特異的に観察されることが報告されている(Austrup, F. et al.Nature, 385, 81-83, 1997)。これは、TH1の細胞表面特異的に前記セレクチンと接着するリガンドが存在することを意味する。しかしながら、P-ならびにE-セレクチンに対する反応性をフローサイトメトリーで調べてみると、P-セレクチンについてはTH1:TH2=131:52、E-セレクチンについてはTH1:TH2=668:88との結果が得られるため、当該特異性は完全なものではなく、炎症を引き起こした組織(皮膚、関節)に特有な生理的条件下でTH1において特に顕著なP-ならびにEに対するリガンドの発現誘導が起きることが反映された結果であると解釈される。 【0010】また、CC−ケモカイン、エオタキシン(eotaxin)受容体(CCR3)がヒトTH2の細胞表面において略特異的に存在するとの報告もある(Sallusto,F.et al. Science, 277, 1997)。しかしながら、CCR3陰性のT細胞群の中でもIL−4を産生するTH2型が1.9%の割合で混在することから、当該特異性は完全なものではない。また、好酸球、好塩基球の細胞表面にはTH2よりも格段に多くの同受容体が存在することから、血液中から粗精製されたTリンパ球からCCR3陽性細胞を分離しただけでは、TH2以外の細胞が混入する可能性が懸念される。 【0011】さらに、他のCC−ケモカイン、MIP-1βもしくはIP10の受容体であるCCR5、およびCXC−ケモカイン、SDF-1の受容体であるCXCR3がヒトTH1の細胞表面に略特異的に存在するとの報告もある(Loestscher, P.et al. Nature, 391, 344, 1998)。しかしながら、得られた9株のTH2クローンの中の1株はCCR5陽性であったことから、当該特異性は完全なものではない。また、CXCR3の遺伝子発現とCXC−ケモカイン依存的な遊走活性のレベルではTH1がTH2よりも高いものの、調べたTH2の全クローンにおいてCXCR3の遺伝子発現が確認されたことから、当該特異性は完全ではない。また、CCR5、CXCR3は好中球の細胞表面にも存在することから、血液中から粗精製されたTリンパ球から分離されるCCR5もしくはCXCR3陽性細胞中に好中球が混入する可能性が懸念される。 【0012】また、IL−12(インターロイキン12)の受容体(IL−12R)はヒトTH1の細胞表面に略特異的に存在するとの報告がある(Rogge, L. et al. J.Exp.Med, 185, 825, 1997)。しかしながら、TH1の細胞表面にはIL−12に対する高親和性受容体(Kd値=27 pM)と低親和性受容体(Kd値=5 nM)が1細胞表面あたりそれぞれ140分子、450分子存在するが、同様の低親和性受容体(Kd値=2 nM)がTH2にも1細胞表面あたり220分子存在する。このことから、IL−12RもTH1の細胞表面マーカーとして完全なものとは言えない。また、NK細胞の細胞表面にもIL−12Rが存在することから、血液中から粗精製されたTリンパ球から分離されるIL−12R陽性細胞中にNK細胞が混入する可能性が懸念される。 【0013】また、IL−18(インターロイキン18)の受容体(IL−18R)は、オバルブミン(ovalbumin)に対するT細胞受容体のトランスジェニックマウスから樹立したTH1クローンの細胞表面に特異的に存在するとの報告がある(Xu,D. et al. J.Exp.Med, 188, 1485, 1998)。しかしながら、IL−18Rと同様にインターロイキン1の受容体(IL−1R)ファミリーに属する分子ST2LがTH2の細胞表面に存在することが知られている。IL−1Rファミリー間の遺伝子相同性はヒトでは特に高いため、ヒトではIL−18RがTH1の決定的な細胞表面マーカーとは言えず、これまでのところヒトTH1の細胞表面に特異的に存在することを報告した例はない。また、単球、好中球、NK細胞の細胞表面にはTH1よりも格段に多くのIL−18Rが存在することから、血液中から粗精製されたTリンパ球から分離されるIL−18R陽性細胞中には、TH1以外の細胞が混入する可能性が懸念される。 【0014】上記の報告は、総じてTH1もしくはTH2の細胞表面に存在するサイトカイン、ケモカインなどの受容体が、量(細胞表面あたりの数)的もしくは質的(リガンドに対する受容体の親和性もしくはリガンドの結合にともなう刺激の細胞内伝達性)に顕著に変化し、その結果、該受容体の分布がTH1もしくはTH2のいずれかに極度に偏ることを述べているものと解釈される。このようなTH1もしくはTH2の細胞表面分子の偏りを生じる原因は、ヘルパーT細胞をとりまく生体内の環境(生理的条件)にあると考えられる。 【0015】例えば、前記サイトカイン受容体のリガンドの一つであるIL−12は感染初期にマクロファージ等によって分泌されるサイトカインであり(Walker, W. etal. J. Immunol., 162, 5894, 1999)、IL−18も活性化されたマクロファージやクッパー細胞によって産生される(Yoshimoto, T. et al. J. Immunol., 161, 3400, 1998)ことが知られている。当然のことながら、これらの両サイトカインは細胞性免疫機能を司るTH1との間にTH2と比較してより多くの接点を有し、マクロファージからTH1への生理的情報の伝達を担う(生体内でTH1を活性化する)因子であると解釈される。 【0016】このことから、TH1がマクロファージを活性化することが、マクロファージから返される刺激(IL−12やIL−18)を受けることに繋がり、逆に、TH1によって活性化されたマクロファージは生体内の異物を排除しながらもTH1を活性化することになる。このような相互に依存し合う関係が生体内の炎症部位で成立していく中で、IL−12やIL−18に対する受容体数ならびに受容体分子の活性がTH1の細胞表面において顕著に増すことは充分に予想されることである。一方のTH2は、生体内でTH1と同じ条件下に曝されることがないため、IL−12やIL−18を受けとめる必要性すら無いと解釈される。しかしながら、たとえ僅かであれIL−12やIL−18の受容体がTH2の細胞表面に検出される以上、TH2もIL−12やIL−18に対応する潜在能力を有することは否定できない。 【0017】したがって、これらのサイトカイン受容体はTH1とTH2両者の中からTH1を識別するための決定的なマーカーであるとは考えられない。このことに加え、TH1もしくはTH2に分布が偏る前記ケモカイン、サイトカイン受容体は、NK細胞等ヘルパーT細胞以外の細胞種にも分布することから、TH1もしくはTH2を識別するマーカーとして実用的ではないと考えられる。例えば、ヒトから採血して得られた血液サンプルから通常の方法で分離精製されるCD4陽性細胞(ヘルパーT細胞)の細胞試料中には単球や顆粒球が混在していることが多く、これらが疑似陽性細胞となり、TH1もしくはTH2と見誤ることが予想されるからである。 【0018】上記のように、TH1とTH2とを表面分子を利用して選択的に分離するのは非常に困難である。また、TH1およびTH2が産生するサイトカイン(IL−2およびIL−4)は細胞内や細胞膜付近に止まらず、細胞外液中に遊離してしまうため、サイトカインを用いてTH1とTH2とを選択的に分離することも困難である。 【0019】本発明は、上記の従来技術の問題点を鑑みてなされたものであり、細胞にマーカーとして使用可能な細胞表面分子が存在しない場合や、存在しても細胞間で区別ができない場合、さらにはマーカーとなるべき分子が細胞外液中に遊離してしまう場合であっても、目的とする細胞、すなわち特定の遺伝子を発現した細胞を生きたままの状態で選択的に分離取得することが可能な分離方法を提供することを目的とする。 【0020】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記従来技術の問題点は、特定の遺伝子の翻訳産物(ポリぺプチド)を標的(マーカー)として用い、遺伝子発現細胞を分離しようとするために生じるものであることを見出した。そして、この見解に基づいて鋭意研究を重ねた結果、翻訳産物(ポリぺプチド)に代えて、遺伝子の転写産物であり、主として細胞質中に浮遊状態で存在するmRNAを標的(マーカー)として用いることにより、マーカーとして使用可能な細胞表面分子が存在しない場合や、存在しても細胞間で区別ができない場合、さらにはマーカーとなるべき分子が細胞外液中に遊離してしまう場合であっても、特定の遺伝子を発現した細胞を生きたままの状態で選択的に分離することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。 【0021】すなわち、本発明の特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法は、特定のmRNAを発現した生細胞を含む生細胞群の細胞中に、該mRNAを標識可能な標識剤を導入する第1の工程と、前記標識剤で前記mRNAを標識することにより、標識化mRNAを含有する生細胞を含む生細胞群を得る第2の工程と、前記標識化mRNAを検出することにより該標識化mRNAを含有する生細胞を同定し、同定した該生細胞を前記第2の工程で得られた前記生細胞群から選択的に分離する第3の工程とを含むことを特徴とするものである。 【0022】本発明の特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法においては、前記第1の工程における標識剤が、前記mRNAと相補的な塩基配列を有し、且つ蛍光色素で標識されたプローブであり、前記第2の工程における標識化mRNAが、該プローブと前記mRNAとのハイブリッド体であり、前記第3の工程において、該ハイブリッド体を含有する生細胞を含む生細胞群に光を照射して、該ハイブリッド体の形成に基づく前記蛍光色素の蛍光変化を検出することにより該蛍光変化を生じる生細胞を同定し、同定された該生細胞を前記第2の工程で得られた前記生細胞群から選択的に分離することが好ましい。 【0023】また、前記プローブが、第1のプローブおよび第2のプローブからなり、該第1のプローブと、該第2のプローブとは、前記mRNAに対して隣接してハイブリダイズ可能な塩基配列を有し、該第1のプローブがエネルギードナー蛍光色素で標識され、そして該第2のプローブがエネルギーアクセプタター蛍光色素で標識されたものであり、前記蛍光変化が、該第1のプローブのエネルギードナー蛍光色素から、該第2のプローブのエネルギーアクセプター蛍光色素への蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により生じるものであることが好ましい。 【0024】さらに、本発明の特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法においては、前記第3の工程における、前記蛍光変化を生じる生細胞の選択的分離が、セルソーター(FACS)により実施されることが好ましい。 【0025】また、前記mRNAが、サイトカインをコードするmRNAであることが好ましく、さらには、前記mRNAが、インターロイキン−2(IL−2)をコードするmRNAであり、前記第1のプローブが配列表の配列番号9に記載の塩基配列を有するプローブであり、さらに、前記第2のプローブが配列表の配列番号10に記載の塩基配列を有するプローブであることが好ましい。 【0026】また、前記mRNAが、インターロイキン−4(IL−4)をコードするmRNAであり、前記第1のプローブが配列表の配列番号17に記載の塩基配列を有するプローブであり、さらに、前記第2のプローブが配列表の配列番号18に記載の塩基配列を有するプローブであることが好ましい。 【0027】本発明においては、前記第3の工程において選択的に分離される生細胞が、Tヘルパー1(TH1)細胞、または、Tヘルパー2(TH2)細胞であることが好ましい。 【0028】 【発明の実施の形態】本発明の特定の遺伝子を発現した生細胞の選択的分離方法は、特定のmRNAを発現した生細胞を含む生細胞群の細胞中に、該mRNAを標識可能な標識剤を導入する第1の工程と、前記標識剤で前記mRNAを標識することにより、標識化mRNAを含有する生細胞を含む生細胞群を得る第2の工程と、前記標識化mRNAを検出することにより該標識化mRNAを含有する生細胞を同定し、同定した該生細胞を前記第2の工程で得られた前記生細胞群から選択的に分離する第3の工程とを含む方法である。 【0029】本発明において細胞中に導入する標識剤は、mRNAを標識できるものであればよく、特に制限されない。標識剤は細胞内でmRNAと結合することにより標識化mRNAが生じるが、細胞中にmRNAが存在しない場合や、mRNAが存在したとしても標識剤を過剰量導入したような場合は、mRNAとの結合に関与しない標識剤が細胞中に残存することが考えられるため、標識剤は、mRNAと結合したときのみに検出可能となるようなものであるか、もしくは、mRNAと結合したものとmRNAに結合しないものとを別々に検出できるようなものであることが好ましい。 【0030】本発明においては、標識剤として、mRNAと相補的な塩基配列を有し、且つ蛍光色素で標識されたプローブ(以下、場合により蛍光標識プローブと呼ぶ)を使用することが好ましい。このようなプローブは細胞内でmRNAとハイブリッド体を形成するが、上記のようにハイブリッド体を形成しないプローブと分離して検出する必要があるために、本プローブはハイブリッド体が形成されたことに基づいて蛍光変化を生じるようなものを用いることが好ましい。 【0031】このようなプローブとしては、それぞれ別種の蛍光色素で標識したプローブを組み合わせて用いることが好ましい。すなわち、第1のプローブおよび第2のプローブからなるプローブであって、該第1のプローブと、該第2のプローブとは、前記mRNAに対して隣接してハイブリダイズ可能な塩基配列を有し、該第1のプローブがエネルギードナー蛍光色素で標識され、そして該第2のプローブがエネルギーアクセプタター蛍光色素で標識されたプローブを用いることが好ましい。 【0032】第1のプローブを標識するエネルギードナー蛍光色素と、第2のプローブを標識するエネルギーアクセプタター蛍光色素とを、適当な距離(例えば8nm以下)に接近させることにより、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が可能となる。したがって、プローブにおけるそれぞれの蛍光色素の標識位置は、第1のプローブと第2のプローブとmRNAの3者がハイブリッド体を形成したときに、エネルギードナー蛍光色素とエネルギーアクセプタター蛍光色素の間でFRETが生じうる距離になるようにすることが好ましい。前記2種類の蛍光色素間の好適な距離は、蛍光色素の種類や、mRNAにおいてハイブリダイズする部位等により変化するが、一般的には、2つの蛍光色素は20塩基以内の距離に位置することが好ましく、2〜4塩基以内の位置とすることがより好ましい。FRETを生じうるプローブを設計する場合においては、例えば、Lakowicz, J. R. "Principles of Fluorescence Spectroscopy" (1983), Plenum Press, New York を参照することができる。 【0033】本発明において用いられるエネルギードナー蛍光色素としては、4,4−ジフロロ−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−8−プロピオン酸(4,4-difluoro-1,3,5,7-tetramethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacene-8-propionic acid)およびその誘導体(これらはBodipy 493/503シリーズとしてモレキュラープローブス社から入手可能);テトラメチルローダミンイソチオシアネート(5−イソチオシアネートおよび6−イソチオシアネートの混合物であってもよい)(tetramethylrhodamine-5-(and-6)-isothiocyanate)およびその誘導体(これらはTRITCシリーズとしてモレキュラープローブス社から入手可能);及び4,4−ジフロロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオン酸(4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacene-3-propionic acid)およびその誘導体(これらはBodipy FLシリーズとしてモレキュラープローブス社から入手可能)が挙げられる。 【0034】また、本発明において用いられるエネルギーアクセプター蛍光色素としては、1,1’−ビス(ε−カルボキシペンチル)−3,3,3’,3’−テトラメチル インドジカルボシアニン−5,5’−二スルホン酸カリウム塩(1,1'-bis(ε-carboxypentyl)-3,3,3',3'-tetramethyl indodicarbocyanine-5,5'-disulfonate potassium salt)およびその誘導体(これらはCy5シリーズとしてアマシャム ファルマシア バイオテク社から入手可能);1,1’−ビス(ε−カルボキシペンチル)−3,3,3’,3’−テトラメチル インドカルボシアニン−5,5’−二スルホン酸カリウム塩(1,1'-bis(ε-carboxypentyl)-3,3,3',3'-tetramethyl indocarbocyanine-5,5'-disulfonate potassium salt)およびその誘導体(これらはCy3シリーズとしてアマシャム ファルマシア バイオテク社から入手可能);X−ローダミンイソチオシアネート(5−イソチオシアネートおよび6−イソチオシアネートの混合物であってもよい)(X-rhodamine-5-(and-6)-isothiocyanate)およびその誘導体(これらはXRITCシリーズとしてモレキュラープローブス社から入手可能);6−(((4,4−ジフロロ−5−(2−チエニル)−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−イル)スチリロキシ)アセチル)アミノヘキサン酸(6-(((4,4-difluoro-5-(2-thienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacene-3-yl)styryloxy)acetyl)aminohexanoic acid)およびその誘導体(これらはBodipy 630/650シリーズとしてモレキュラープローブス社から入手可能);6−(((4,4−ジフロロ−5−(2−ピローリル)−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−イル)スチリロキシ)アセチル)アミノヘキサン酸(6-(((4,4-difluoro-5-(2-pyrrolyl) -4-bora-3a,4a-diaza-s-indacene- 3-yl)styryloxy)acetyl)aminohexanoic acid)およびその誘導体(これらはBodipy 650/665シリーズとしてモレキュラープローブス社から入手可能)等が挙げられる。 【0035】本発明においては、エネルギードナー蛍光色素としてはBodipy 493/503を用いることが好ましく、また、エネルギーアクセプター蛍光色素としてはCy5またはXRITCを用いることが好ましい。 【0036】本発明において、1本のプローブを構成するオリゴヌクレオチドの塩基数には特に厳しい制限はない。ただし、塩基数が極端に少ない場合、例えば10塩基未満である場合は、十分安定なハイブリッド体を形成することが困難になる傾向にある。また、プローブの塩基数が50塩基を超すほど多い場合には、プローブの合成が困難になるばかりか、プローブの安定性も低下し、ハイブリッド体形成に要する時間も長くなる傾向にある。 【0037】プローブの塩基数は、用いる生細胞中のmRNAの濃度やハイブリダイゼーション時の温度等のハイブリダイゼーションの条件を考慮して決定する。一般に、プローブとmRNAとで形成されるハイブリッド体の融点は、プローブの塩基数が増えるにつれ上昇する。例えば、プローブの塩基数が15程度である場合は、室温において十分に高い効率でハイブリッド体が形成される傾向にあるが、37℃においてはハイブリッド体の形成率は必ずしも高くない。したがって、37℃でハイブリッド体の検出を行うためには15塩基以上、好ましくは20塩基以上の長さを有するプローブを使用することが望ましい【0038】ただし、塩基数が多くなるほどmRNAとハイブリッド体を形成する速度が小さくなる傾向は、プローブの塩基数が15〜20の範囲でも同様である。例えば、室温において、20塩基のプローブとmRNAのハイブリダイゼーションが終了するために必要な時間は、15塩基のプローブを用いる場合に比べて数倍長い。 【0039】これらの要件を総合的に判断すれば、使用するプローブの塩基数は、10〜50塩基であることが好ましく、15〜20塩基であることがさらに好ましい。 【0040】プローブを設計する場合においては、上述したようにプローブの塩基数が重要となるが、これに加えて、プローブがmRNAのどの位置でハイブリダイズするかも重要となる。すなわち、一般に、mRNAはそれ自体が複雑な立体構造をとっている分子であるため、用いるプローブがmRNAのある部位と相補的な塩基配列を有していても、その部位が分子内の他の部位と相互作用する場合には立体構造的にハイブリダイゼーションに障害が生じることがある。したがって、本発明において、プローブがハイブリダイズするmRNAの部位を適宜選択することが好ましい。 【0041】ハイブリダイズする部位は、例えば以下に述べるような手法により決定することができる。まず、目的のmRNAの塩基配列をデータベース等から入手する。データベースが利用できない場合は公知の方法によりmRNAの塩基配列を決定する。そして、その情報をもとにmRNAの2次構造をシミュレーションする。これは、例えば、DNAsis(日立ソフトエンジニアリング株式会社製)等のRNAの2次構造予測用の市販のコンピュータプログラムを使用することにより可能である。得られた2次構造図を用いて立体構造的に障害のない部分を中心に、適当な数の塩基配列を選択し、その塩基配列に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、それを蛍光標識してプローブとして用いる。 【0042】コンピュータプログラムにより得られた2次構造図をもとに、FRETを生じうる一組のプローブを設計する場合においては、mRNAの立体構造的に障害のない部分を中心として、例えば、30〜40塩基の部位を数箇所選択し、それぞれの部位をさらに2つに分割し(各15〜20塩基)、2分割された部位のそれぞれに相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、それを蛍光標識して第1のプローブおよび第2のプローブとして用いることが好ましい。 【0043】このようにして合成した数組のプローブの中から最適なプローブの組を選別するためには、例えば、以下のような方法を用いることができる。すなわち、上記の方法により合成した第1のプローブと第2のプローブの混合溶液を調製して蛍光スペクトルを測定する。次いで、目的のmRNAをこの混合溶液に添加して、蛍光スペクトルの変化を観察する。第1のプローブ、第2のプローブおよびmRNAでハイブリッド体が形成されれば2種類の蛍光色素間でFRETが生じ、その結果、エネルギードナー色素の蛍光強度が減少し、エネルギーアクセプター色素の蛍光強度が増大した蛍光スペクトルが得られる。次に、第1のプローブと第2のプローブの何種類かの組について上記の作業を行い、蛍光スペクトルの変化量を比較して、変化量が大きいプローブの組を選択する。なお、上記の測定に使用するmRNAは、対応するcDNAを組み込んだプラスミドDNAを用いてインビトロ転写反応により合成することが可能である。 【0044】また、mRNAへのハイブリダイゼーションの効率を正確に評価するためには、それぞれのプローブとmRNAとを水溶液中で混合し反応させた後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等により、ハイブリッド体と遊離したままのプローブを分離し、ハイブリッド体を構成するプローブのプローブ全体に対する比率を求めることが可能である。 【0045】以上、蛍光標識プローブの最適化について詳述したが、上述したように蛍光標識プローブは本発明において用いられる標識剤の好ましい一形態である。本発明においては標識剤を調製した後に、これを特定のmRNAを発現した生細胞中に導入する。標識剤を生細胞中に導入する方法に関しては特に制限はなく、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法など公知の方法が適用可能である。本発明においては、一度に100万個以上の生きた細胞に短時間で標識剤を導入する方法である、エレクトロポレーション法を用いることが好ましい。 【0046】標識剤を生細胞に導入した後は、細胞中において当該標識剤によりmRNAを標識する。標識剤として蛍光標識プローブを用いた場合においては、当該プローブとmRNAをハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションを行う条件は特に制限されないが、例えば、蛍光標識プローブを導入した生細胞を室温にて数分間保持すればよい。 【0047】細胞内でmRNAを標識した後は、標識化mRNAを検出することにより、該標識化mRNAを含有する生細胞を同定し、同定した該細胞を選択的に分離する。本発明において、標識化mRNAを検出する方法には特に制限はない。ただし、標識剤を導入した生細胞群はその全てがmRNAを発現しているとは限らず、また、mRNAが存在したとしても標識剤を過剰量導入したような場合は、mRNAと結合していない標識剤が細胞中に残存するため、検出時においては、標識化mRNAと、mRNAと結合していない遊離の標識剤とを、分離して検出することが必要である。 【0048】標識化mRNAと、mRNAと結合していない遊離の標識剤とを、簡単且つ高感度に分離して検出する方法としては、エネルギードナー色素で標識された第1のプローブと、エネルギーアクセプター色素で標識された第2のプローブを組み合わせて使用する方法が好ましい。すなわち、これらのプローブを生細胞中に導入し、プローブとmRNAがハイブリダイズする条件で生細胞を保持した後に、第1のプローブのエネルギードナー蛍光色素の励起光を生細胞群に照射し、FRETに基づく第2のプローブのエネルギーアクセプター蛍光色素からの蛍光を観測することにより、簡単且つ高感度に分離検出が可能である。 【0049】励起光の照射によって、mRNAとハイブリダイズしている第1のプローブのエネルギードナー色素も、mRNAとハイブリダイズしていない第1のプローブのエネルギードナー色素も同時に励起されるが、第1のプローブに隣接して第2プローブがハイブリダイズしている場合にのみFRETが生じ、このときは第2のプローブのエネルギーアクセプター蛍光色素から蛍光が生じる。すなわち、エネルギーアクセプター蛍光色素からの蛍光が観察されたときは、第1のプローブと第2のプローブが隣接していることを意味するから、生細胞中でmRNAが標識化されたこと、すなわち、生細胞中にmRNAが発現していることがわかる。 【0050】このようにして検出された特定のmRNAを発現した生細胞は選択的に分離されるが、この分離方法に関しては特に制限はない。本発明において、蛍光標識プローブを用いる場合においては、セルソーター(Fluorescence Activated CellSorter、FACS)を用いて、特定のmRNAを発現している生細胞を検出するとともに、選択的に分離することが好ましい。 【0051】セルソーターは、フローサイトメーターと細胞分取装置とを備えたものであり、特定物質を蛍光標識プローブで染色した個々の細胞に、細い流路の途中でレーザー光を照射することにより、散乱光(前方散乱光や側方散乱光)や蛍光のシグナル情報を個々の細胞ごとに測定し、その結果を、例えば度数分布(ドットプロット)として表示する機能を有しており、特定のシグナル情報を発する細胞にゲートをかけ所望の細胞を分取することができる。なお、以上のような方法はフローサイトメトリーと呼ばれている。 【0052】本発明において、FRETを生じうる蛍光標識プローブを用いてセルソータにより特定のmRNAを発現した生細胞を選択的に分離する場合においては、例えば以下に述べる方法を適用することができる。すなわち、セルソーターにより個々の生細胞における、エネルギードナー蛍光色素(例えば、Bodipy 493/503)を励起するレーザーを照射したときの同蛍光色素の相対的蛍光強度、およびFRETに基づくエネルギーアクセプター蛍光色素(例えば、Cy5)の相対的蛍光強度のシグナル情報を得て、例えば、前者を横軸、後者を縦軸としてドットプロットを行い、後者が高い値をとる細胞群を選択し、R2として領域指定する。さらに、測定対象の生細胞の細胞サイズに基づく前方散乱光と、生細胞の内部構造の複雑さに基づく側方散乱光のシグナル情報を得て、例えば、前者を横軸、後者を縦軸としてドットプロットを行い、測定対象の生細胞を表わしていると考えられる細胞群を選択し、R1として領域指定する。そして、R1およびR2の両選択条件を満たす(R1かつR2に属する)生細胞のみを分取できるようにセルソーターをセッティングすることにより、特定のmRNAが発現した細胞のみを選択的に分離することができる。 【0053】以上で説明した方法により、様々な種類の生細胞が選択的分離の対象となる。また、様々な種類のmRNAが対象となる。抗原を異物として認識し活性化されたヘルパーT細胞から派生するTH1とTH2は、識別のための決定的な細胞表面抗原(マーカー)が存在せず、さらに、TH1およびTH2が産生するサイトカイン(IL−2およびIL−4)は細胞内や細胞膜付近に止まらず、細胞外液中に遊離してしまうため、TH1またはTH2は、本発明の選択的分離方法の適用対象として最適である。すなわち、本発明の選択的分離方法は、サイトカインをコードするmRNAを保有する生細胞を含む生細胞群を対象とすることが好ましい。 【0054】なかでも、インターロイキン−2(IL−2)をコードするmRNAを保有する生細胞を含む生細胞群を対象とし、配列表の配列番号9に記載の塩基配列を有しエネルギードナー蛍光色素で標識された第1のプローブと、配列表の配列番号10に記載の塩基配列を有しエネルギーアクセプター蛍光色素で標識された第2のプローブを用い、これらのプローブのFRETを利用して選択的分離を行うことが好ましい。 【0055】配列表の配列番号9に記載の塩基配列は、IL−2を生じるmRNAの塩基配列における342〜356番目の塩基配列に相補的であり、配列表の配列番号10に記載の塩基配列は、IL−2を生じるmRNAの塩基配列における357〜371番目の塩基配列に相補的である。エネルギードナー蛍光色素で標識された第1のプローブと、エネルギーアクセプター蛍光色素で標識された第2のプローブをmRNAの上記の位置で隣接させることにより、FRETに伴う検出を非常に高感度に行うことができる。 【0056】また、インターロイキン−4(IL−4)をコードするmRNAを保有する生細胞を含む生細胞群を対象とし、配列表の配列番号17に記載の塩基配列を有しエネルギードナー蛍光色素で標識された第1のプローブと、配列表の配列番号18に記載の塩基配列を有しエネルギーアクセプター蛍光色素で標識された第2のプローブを用い、これらのプローブのFRETを利用して選択的分離を行うことが好ましい。 【0057】配列表の配列番号17に記載の塩基配列は、IL−4を生じるmRNAの塩基配列における265〜279番目の塩基配列に相補的であり、配列表の配列番号18に記載の塩基配列は、IL−4を生じるmRNAの塩基配列における280〜294番目の塩基配列に相補的である。エネルギードナー蛍光色素で標識された第1のプローブと、エネルギーアクセプター蛍光色素で標識された第2のプローブをmRNAの上記の位置で隣接させることにより、FRETに伴う検出を非常に高感度に行うことができる。 【0058】 【実施例】以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0059】(1) IL-2 mRNAと相補的なオリゴヌクレオチドの蛍光色素標識体の調製IL-2 mRNAおよびIL-4 mRNAの全塩基配列から任意に30塩基の連続した配列を5箇所選び、これらと相補的な配列を有し、Bodipy493/503(エネルギードナー蛍光色素)、Cy5(エネルギーアクセプター蛍光色素)、もしくはXRITC(エネルギーアクセプター蛍光色素)で蛍光標識されたオリゴDNAプローブ(15mer)を設計した。 【0060】DNA/RNAシンセサイザー(Perkin Elmer:Model 394もしくはPerceptive:Model18909)を用いて、βシアノエチルアミダイト法により、設計したプローブの核酸合成を行った。なお、IL-2 mRNAの全塩基配列とオリゴDNAプローブの塩基配列を図1に示し、IL-4 mRNAの全塩基配列とオリゴDNAプローブの塩基配列を図2に示す。また、設計したIL-2に関する10種類のオリゴDNAプローブの塩基配列(配列番号1〜10)と、該オリゴDNAプローブがハイブリダイズするIL-2 mRNAの塩基番号(ハイブリダイズ位置)を以下の表1に示し、IL-4に関する10種類のオリゴDNAプローブの塩基配列(配列番号11〜20)と、該オリゴDNAプローブがハイブリダイズするIL-4 mRNAの塩基番号(ハイブリダイズ位置)を以下の表2に示す。 【0061】 【表1】
【0062】 【表2】
【0063】なお、以下に述べる(4A)においては、上記配列番号1〜10の塩基配列の5’末端をBodipy493/503で標識して得られたプローブを用い、(8)においては、上記配列番号1〜10の塩基配列を蛍光色素で標識せずにプローブとして用いた。(9)においては、上記配列番号1、3、5、7、9の5’末端をBodipy493/503で標識したプローブと、上記配列番号2、4、6、8、10の3’末端から4−5塩基間にXRITCで標識したプローブを用いた。また、(11)においては、上記配列番号1、3、5、7、9の5’末端をBodipy493/503で標識したプローブと、上記配列番号2、4、6、8、10の3’末端から4−5塩基間にCy5で標識したプローブを用いた。また、Bodipy493/503、XRITC、Cy5による標識方法は、以下に述べる(a)〜(c)の方法に従った。 【0064】本発明においては、エネルギードナー蛍光色素で標識したオリゴDNAプローブをドナープローブと略称し、エネルギーアクセプター蛍光色素で標識したオリゴDNAプローブをアクセプタープローブと略称する場合がある。また、配列番号1の塩基配列をエネルギードナー蛍光色素で標識したプローブは、配列番号1がIL-2 mRNAの228〜242番目の塩基配列に相補的であることから、IL-2 228-242(D)と表記する場合がある(Dはドナーを意味する)。また、配列番号2の塩基配列をエネルギーアクセプター蛍光色素で標識したプローブは、配列番号2がIL-2 mRNAの243〜257番目の塩基配列に相補的であることから、IL-2 243-257(A)と表記する場合がある(Aはアクセプターを意味する)。なお、蛍光色素で標識しない場合は、例えば、単にIL-2 228-242と表記する。したがって、以下に述べる(9)および(11)においては、用いるプローブは以下の表3に示すプローブ名で表わすことができる。 【0065】 【表3】
【0066】IL−4用プローブも上記と同様に表記する場合がある。例えば、以下に述べる(3B)においては、用いるプローブは以下の表4に示すプローブ名で表わすことができる。 【0067】 【表4】
【0068】(a)ドナープローブ(Bodipy493/503標識)の作製2.5mgのNHSS(N-Hydroxysulfosuccinimide sodium salt)を30μlの滅菌水に溶かしたものと、5mgのEDAC(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide)を50μlの滅菌水に溶かしたものと1mgのBodipy493/503プロピオン酸を50μlのDMFに溶かしたものを混合し、室温で30分間反応させた。 【0069】一方、5'末端アミノ化試薬6-(トリフルオロアセチルアミノ)ヘキシル-(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)-ホスホロアミダイトを用いて上記塩基配列を有するオリゴDNAの5'末端にヘキシルアミノ基が導入したもの(凍結乾燥品)を200μlの0.5 M Na2HCO3/NaH2CO3緩衝液(pH9.3)に溶解させた。 【0070】これらを混合して遮光条件下で一晩反応させ、反応液をゲル濾過し、未反応の色素を除去した後、CAPCELL PACK18(資生堂、カラムサイズは6mm内径×250mm全長)を用いた逆相高速液体クロマトグラフィー(流速;1ml/分、カラム温度;40℃、移動相組成;5 mM TEAA入りのCH3CNの5%溶液Aと40%溶液Bを用意しBの比率を20分の間に30-80%の濃度勾配をかけた)により、260nmと493nmに吸収をもつ反応生成物を分取し、凍結乾燥した。 【0071】(b)アクセプタープローブ(Cy5標識)の作製1チューブ分のCy5色素(Amersham, Fluorolink Cat. No. PA25001)を100μlの滅菌水に溶解した。一方、Uni-Link AminoModifier (Clontech社製)を用いて上記塩基配列を有するオリゴDNAの3’末端から4と5塩基の間にヘキシルアミノ基を導入したもの(凍結乾燥品)を200μlの Na2HCO3/NaH2CO3緩衝液(0.5M、pH9.3)に溶解させた。そして、これらを混合し、遮光して一晩反応させた。 【0072】反応液をゲル濾過し、未反応の色素を除去した後、CAPCELL PACK18(資生堂、カラムサイズは6mm内径×250mm全長)を用いた逆相高速液体クロマトグラフィー(流速;1ml/分、カラム温度;40℃、移動相組成;5 mM TEAA入りのCH3CNの5%溶液Aと40%溶液Bを用意しBの比率を20分の間に15-60%の濃度勾配をかけた)により、260nmに吸収をもつ成分を分取し、その吸収スペクトルを220-700nmの範囲で測定し、650-700nmにおけるCy5の最大吸収を確認後、凍結乾燥した。 【0073】(c)アクセプタープローブ(XRITC標識)の作製100μlのXRITC色素溶液(溶媒;100% DMSO、Perkin Elmer, ROX-NHS)を、(b)と同様にヘキシルアミノ基が導入された上記塩基配列を有するオリゴDNAと反応させた。反応生成物を逆相高速液体クロマトグラフィーにかけ、260nmに吸収をもつ成分を分取し、その吸収スペクトルを220-650nmの範囲で測定し、550-600nmにおけるXRITCの最大吸収を確認後、凍結乾燥した。 【0074】(2A)ヒトIL-2 RNAの試験管内合成ヒトIL-2 mRNAと同等の塩基配列を有するヒトIL-2 RNAを取得するために、ヒトIL-2 cDNAを有するプラスミドDNA、pTCGF-II(ATCC#39673)より制限酵素pstIで切り出したIL-2 cDNA断片を、RNA合成用ベクターpBluescript KS(+)のpst I消化部位にT3プロモーター下流に同cDNAが位置するようにライゲーションキット(タカラ社製)を用いて連結した。得られた組換体プラスミドを大腸菌JM109株のコンピテントセル(タカラ社製)に導入し、得られた同大腸菌の形質転換体を培養し、100 mlの同培養液からPlasmid Midi Kit(QIAGEN社製)を用いて46.2μgのプラスミドDNAを抽出・精製した。 【0075】同組換体プラスミドを制限酵素Sma I消化により線状化し、同プラスミド溶液中に存在する蛋白質をproteinase Kで分解後、フェノール/クロロホルムを用いて変性・除去した。この精製遺伝子断片(0.66 μg)を鋳型とするRNAを合成するために、インビトロ転写反応キット(Megascript T3 Kits、Ambion社)を用いてヒトIL-2 mRNAを構成する各塩基(A(アデニン)、C(シトシン)、G(グアニン)、U(ウラシル))の組成(A::C:G:U=35:18:14:32%)に基づいて、それぞれ105、54、42、96 mM(終濃度)のA、C、G、Uを、T3 RNAポリメラーゼとともに前記鋳型に添加し、 RNAポリメラーゼ反応溶液を調製した。37℃で6時間ポリメラーゼ反応を行い、ヒトIL-2 RNAを合成した。反応終了後、DNase I(Megascript T3 Kits、Ambion社製)で鋳型DNAを分解し、転写反応溶液中の蛋白質をフェノール/クロロホルムを用いて変性・除去した。得られたRNA溶液に等容のイソプロパノールを加え、遠心(14krpm、7分間)による沈殿物としてヒトIL-2RNAを回収し、未反応の酵素反応基質である各ヌクレオチド等を除去した。70%エタノールで1回すすいだヒトIL-2 RNA沈殿物(139 μg)をRNase を含有しない水(Megascript T3 Kits、Ambion社製)で溶かし、5 μg/μlのヒトIL-2 RNA溶液を調製し、以降のハイブリダイゼーション実験に使用した。 【0076】(2B)ヒトIL-4 RNAの試験管内合成次に、ヒトIL-4 mRNAと同等の塩基配列を有するIL-4 RNAを取得するために、ヒトIL-4 cDNAを有するプラスミドDNA、pcD-hIL-4(ATCC#57593)より制限酵素BamHIおよびXho Iで切り出したIL-4 cDNA断片を、RNA合成用ベクターpBluescriptKS(+)のBamHIおよびXho I消化部位にT3プロモーター下流に同cDNAが位置するようにライゲーションキット(タカラ社製)を用いて連結した。得られた組換体プラスミドを大腸菌JM109株のコンピテントセル(タカラ社製)に導入し、得られた同大腸菌の形質転換体を培養し、100 mlの同培養液からPlasmid Midi Kit(QIAGEN社製)を用いて152 μgのプラスミドDNAを抽出・精製した。 【0077】同組換体プラスミドを制限酵素Sma I消化により線状化し、同プラスミド溶液中に存在する蛋白質をproteinase Kで分解後、フェノール・クロロホルムを用いて変性・除去した。この精製遺伝子断片(0.49 μg)を鋳型とするRNAを合成するために、インビトロ転写反応キット(Megascript T7 Kits、Ambion社)を用いてヒトIL-4 mRNAを構成する各塩基の組成(A::C:G:U=29:24:21:26%)に基づいてA、C、G、Uをそれぞれ87、72、63、78 mM(終濃度)をT7 RNAポリメラーゼとともに前記鋳型に添加し、 RNAポリメラーゼ反応溶液を調製した。37℃で6時間ポリメラーゼ反応を行い、ヒトIL-4 RNAを合成した。 【0078】反応終了後、DNase I(同キット、Ambion社)で鋳型DNAを分解し、転写反応溶液中の蛋白質をフェノール・クロロホルムを用いて変性・除去した。得られたRNA溶液にイソプロパノールを2倍容加え、遠心(14krpm、7分間)による沈殿物としてヒトIL-4 RNAを回収し、未反応の酵素反応基質である各ヌクレオチド等を除去した。70%エタノールで1回すすいだRNA沈殿物(183 μg)をRNase free water(同キット、Ambion社)で溶かし、5 μg/μlのRNA溶液を調製し、以降のハイブリダイゼーション実験に使用した。 【0079】(3A)蛍光標識プローブとヒトIL-2 RNAのハイブリダイゼーションによる蛍光スペクトル変化ドナープローブとアクセプタープローブが隣接してハイブリダイズすることにともなう蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づく蛍光スペクトルの変化を測定するために、300 nM(終濃度)のBodipy493/503標識ドナープローブおよびXRITC標識アクセプタープローブの組とヒトIL-2 RNAとを混合し、100μlの1×SSC(150 mM 塩化ナトリウム, 17 mM クエン酸ナトリウム, pH 7.0)溶液とし、室温で15分間放置した後に蛍光スペクトルを測定した。ドナープローブとアクセプタープローブの組としては、IL-2 228-242(D)とIL-2 243-257(A)、IL-2 198-212(D)とIL-2 213-227(A)、IL-2 77-91(D)とIL-2 92-106(A)、IL-2 287-301(D)とIL-2302-316(A)、IL-2 342-356(D)とIL-2 357-371(A)を用いた。また、対照として、300 nMの上記プローブ単独の蛍光スペクトルを同様に測定した。なお、蛍光スペクトル測定条件は以下の通りであった。 蛍光分光光度計;F4500(日立) 励起波長;480nm蛍光測定波長;500-750nm温度;室温【0080】その結果、全てにおいてヒトIL-2 RNAを加えると、エネルギードナー蛍光色素を励起したときのドナー色素の蛍光強度はFRETにより減少し、エネルギーアクセプター色素の蛍光波長領域(580-650nm)に顕著な蛍光スペクトルの変化(蛍光強度が増大)が認められた(図3〜7)。図3、4、5、6、7には、それぞれIL-2 228-242(D)とIL-2 243-257(A)の組、IL-2 198-212(D)とIL-2 213-227(A)の組、IL-2 77-91(D)とIL-2 92-106(A)の組、IL-2 287-301(D)とIL-2 302-316(A)の組、IL-2 342-356(D)とIL-2 357-371(A)の組を用いたときの蛍光スペクトルを示す。図2〜6を比較することによりわかるように、蛍光スペクトルはプローブの各組の間で格差が見られ、IL-2 342-356(D)とIL-2 357-371(A)の組を用いたときが最も顕著であった。 【0081】(3B)蛍光標識プローブとヒトIL-4 RNAのハイブリダイゼーションによる蛍光スペクトル変化ドナープローブとアクセプタープローブが隣接してハイブリダイズすることにともなう蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づく蛍光スペクトルの変化を測定するために、300 nM(終濃度)のBodipy493/503標識ドナープローブおよびCy5標識アクセプタープローブの組とヒトIL-2 RNAとを混合し、100μlの1×SSC(150mM 塩化ナトリウム, 17 mM クエン酸ナトリウム, pH 7.0)溶液とし、室温で15分間放置した後に蛍光スペクトルを測定した。ドナープローブとアクセプタープローブの組としては、IL-4 70-84(D)とIL-4 85-99(A)、IL-4 119-133(D)とIL-4 134-148(A)、IL-4 176-190(D)とIL-4 191-205(A)、IL-4 265-279(D)とIL-4 280-294(A)、IL-4 376-390(D)とIL-4 391-405(A)を用いた。また、対照として、300 nMの上記プローブ単独の蛍光スペクトルを同様に測定した。なお、蛍光スペクトル測定条件は以下の通りであった。 蛍光分光光度計;F4500(日立) 励起波長;480nm蛍光測定波長;500-750nm温度;室温【0082】その結果、全てにおいてヒトIL-2 RNAを加えると、エネルギードナー蛍光色素を励起したときのドナー色素の蛍光強度はFRETにより減少し、エネルギーアクセプター色素の蛍光波長領域(650-700nm)に顕著な蛍光スペクトルの変化(蛍光強度が増大)が認められた(図8〜12)。図8、9、10、11、12には、それぞれIL-4 70-84(D)とIL-4 85-99(A)の組、IL-4 119-133(D)とIL-4 134-148(A)の組、IL-4 176-190(D)とIL-4 191-205(A)の組、IL-4 265-279(D)とIL-4 280-294(A)の組、IL-4 376-390(D)とIL-4 391-405(A)の組を用いたときの蛍光スペクトルを示す。図8〜12を比較することによりわかるように、蛍光スペクトルはプローブの各組の間で格差が見られ、IL-4 265-279(D)とIL-4 280-294(A)の組を用いたときが最も顕著であった。この測定結果をBodipy493-503を励起したときのCy5の蛍光強度と、Bodipy493-503の蛍光強度の比(Cy5の蛍光強度/Bodipy493-503の蛍光強度)を百分率(概算値)で表すと以下の表5の通りとなった。 【0083】 【表5】
【0084】(4A)プローブとヒトIL-2 RNAとのHPLCによるハイブリダイゼーション効率の測定上記配列番号1〜10の塩基配列を有するオリゴDNAをBodipy493/503で標識したドナープローブの各々3 pmolを、等モルの(2A)で合成したヒトIL-2 RNAと混合し、10μlの1×SSC(150 mM 塩化ナトリウム, 17 mM クエン酸ナトリウム, pH 7.0)溶液とし、室温で15分間放置した。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、ヒトIL-2 RNAと上記プローブとからなるハイブリッド体を、遊離のプローブから保持時間の差異を利用して以下の条件で分離した(同条件下での保持時間は遊離のプローブが約4〜5分、ハイブリッド体が7.5分前後である)。 カラム:TSKgel DEAE-NPR(東ソー、内径4.6mm×全長35mm) カラム流速:1ml/分カラム温度:25℃移動相:A液;20 mM Tris-HCl (pH9.0)移動相:B液;0.5 M NaCl、20 mM Tris-HCl (pH9.0)【0085】上記A液に対するB液の比率について、10分の間に25-100%(0.125-0.5 M NaClに相当)の濃度勾配をかけ、溶出される成分について紫外吸収(260nm)による核酸を示すピークと励起波長475nm/蛍光測定波長515nmによる標識色素Bodipy493/503に関するピークの検出を同時に行い、検出された全蛍光ピーク面積の中でハイブリッド体のピーク面積が占める割合(%)を求め、ハイブリダイゼーション効率の指標とした。 【0086】図13にIL-2 342-356(D)を用いた場合のHPLCクロマトグラムを示し、図14にIL-2 357-371(D) を用いた場合のHPLCクロマトグラムを示す。また、各プローブに関するハイブリッド体のピーク面積が占める割合(%)をまとめて表6に示す。 【0087】 【表6】
【0088】表6に示した結果から、IL-2 213-227(D)、IL-2 342-356(D)、そしてIL-2 357-371(D)が個別で比較的効率よく標的RNAにハイブリダイズするプローブであることが判明した。(3A)において、IL-2 342-356(D)、IL-2 357-371(A)はそれぞれドナープローブ、アクセプタープローブとしてハイブリダイゼーションの効率を司る蛍光スペクトル変化が最も顕著であったことから、(3A)と(4A)の両実験結果は整合性がとれていると考えられる。 【0089】(4B)プローブとヒトIL-4 RNAとのHPLCによるハイブリダイゼーション効率の測定上記配列番号11〜20の塩基配列を有するオリゴDNAをBodipy493/503で標識したドナープローブの各々3 pmolを、等モルの(2B)で合成したヒトIL-4RNAと混合し、10μlの1×SSC(150 mM 塩化ナトリウム, 17 mM クエン酸ナトリウム, pH 7.0)溶液とし、室温で15分間放置した。その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、ヒトIL-4 RNAと上記プローブとからなるハイブリッド体を、遊離のプローブから保持時間の差異を利用して分離した(同条件下での保持時間は遊離のプローブが約4〜5分、ハイブリッド体が7.5分前後である)。分離の条件およびハイブリダイゼーション効率の測定方法は上記(4A)と同様であった。 【0090】図15、16、17、18に、IL-4 119-133(D)、IL-4 134-148(D)、IL-4 265-279(D)、IL-4 280-294(D)を用いた場合のHPLCクロマトグラムをそれぞれ示す。また、各プローブに関するハイブリッド体のピーク面積が占める割合(%)をまとめて表7に示す。 【0091】 【表7】
【0092】表7に示した結果から、IL-4 265-279(D)およびIL-4 280-294(D)が個別で比較的効率よく標的RNAにハイブリダイズするプローブであることが判明した。(3B)において、IL-4 265-279(D)、IL-4 280-294(A)はそれぞれドナープローブ、アクセプタープローブとしてハイブリダイゼーションの効率を司る蛍光スペクトル変化が最も顕著であったことから、(3B)と(4B)の両実験結果は整合性がとれていると考えられる。 【0093】(5)ヒトT細胞白血病株細胞Jurkat E6-1におけるIL-2遺伝子発現の誘導細胞密度が1×106/mlのJurkat E6-1細胞に0.5 mg/ml(終濃度)の抗CD3抗体(イムノテック社製)、同濃度の抗CD28抗体(イムノテック社製)、10 nM PMA(シグマ社製)を添加して3日間(72時間)37℃、5% 二酸化炭素存在下で培養した。 【0094】(6) IL-2蛋白分子の産生量の測定(5)のIL-2遺伝子発現誘導処理に依存して多くのIL-2分子が産生され培養上清中に放出されれば、その細胞内ではIL-2 mRNAが活発に合成されたものと判断される。そこでIL-2遺伝子発現の確認のために、(5)の処理が施されたJurkatE6-1細胞(以下、場合によりIL-2発現誘導細胞と呼ぶ)の培養上清を採取し、上清中のIL-2 (pg/ml/107 cells)をヒトインターロイキン-2測定キットを利用した以下に述べるELISAサンドイッチ法により定量し、未処理細胞(以下、場合によりIL-2発現未誘導細胞と呼ぶ)の場合と比較した。 【0095】抗ヒトIL-2モノクローナル抗体が固相化されている96ウェルプレート(抗体プレート)の使用するウェルを洗浄液で2回洗浄し、使用する各ウェルに150 μlの緩衝液を加えた。各ウェルに50 μlのスタンダードIL-2(0-1,600 pg/ml、前記測定キットの付属品)および上記培養上清を加え、37℃で一晩インキュベートした。ウェル内の反応液を除去し、洗浄液で3回洗浄した。第一抗体(抗ヒトIL-2ウサギ血清)溶液を100 μl/ウェルになるように加え、室温で2時間インキュベートした。次いで、ウェル内の抗体液を除去し、洗浄液で3回洗浄した。 【0096】第二抗体(ペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgG抗体)溶液を100 μl/ウェルになるように加え、室温で2時間インキュベートした。ウェル内の抗体液を除去し、洗浄液で3回洗浄後、各ウェルを充分乾燥させた。ペルオキシダーゼ基質(o-フェニレンジアミン)の0.015%過酸化水素水溶液を100 μl/ウェルになるように加え、室温で10-20分間反応させた。反応停止液(1 N H2SO4)を100 μl各ウェルに加え、反応を停止させ、各ウェルの492 nmにおける吸光度をマイクロプレート用吸光度計で測定した。スタンダードIL-2の吸光度値から作成される検量線を基に、培養上清中のIL-2を定量した。 【0097】その結果、IL-2発現誘導細胞は6157±168 (pg/ml/107 cells)のIL-2分子が培養液中に検出されたのに対して、IL-2発現未誘導細胞の上清中のIL-2は検出限界以下(<0.1 pg/ml/107 cells)であった。 【0098】(7)IL-2遺伝子発現量の測定本実験には、スタンダードとしてIL-2 RNA、測定試料としてJurkat E6-1細胞の全RNA、さらにIL-2 RNAもしくはmRNA検出用のプローブとしてIL-2リボプローブ(ジゴキシゲニン標識体)が実験材料として必要であったため、以下の(a)〜(c)のようにしてこれらを取得した。 【0099】(a)スタンダードIL-2 RNAスタンダードIL-2 RNAは、(2A)で合成されたヒトIL-2 RNA(1 μg/μl)を1×dilution buffer(RNase を含有しない滅菌蒸留水:20×SSC:ホルムアミド= 5:3:1)で(104倍、105倍、106倍、107倍に)順次希釈された後に、同希釈RNA溶液を68℃で10分間加熱後急冷されたものをブロッテイングに用いた。 【0100】(b)Jurkat E6-1細胞の全RNAJurkat E6-1細胞の全RNAは、RNeasy Kit(QIAGEN社製)を利用して抽出した。(5)の条件下で0、24、48、72、96時間IL-2発現誘導処理を施された細胞(0.8-1.2×107個)を1,500rpmで5分間の遠心により沈殿として回収し、10μlのβメルカプトエタノールを加えた1,000μlのホモジナイゼーションbufferに細胞を懸濁し、18-gaugeの注射針で吸引/噴出しを繰り返し、充分に変性させた。同ホモジネートに1,000μlの70%エタノールを加え、RNA吸着用カラムに加え、4,000×gで5分間遠心し、さらに洗浄用bufferを加え、同様に遠心しカラムを洗浄した。 【0101】カラムにRNase を含有しない滅菌蒸留水を加え、吸着RNAを溶出させた。その溶出RNA溶液に1/10倍容の4 Mの酢酸ナトリウムと1倍容のイソプロパノールを加え、RNAは15,000×gで15分間遠心し沈殿物として回収した。同RNAはRNase を含有しない滅菌蒸留水に溶解した後、等容の2×dilution buffer(RNase を含有しない滅菌蒸留水:20×SSC:ホルムアミド = 1:6:2)で希釈し、68℃で10分間加熱後急冷した。 【0102】(c)ジゴキシゲニン(DIG)標識IL-2リボプローブDIG標識IL-2リボプローブは、DIG RNA Labeling Kit(Boehringer Mannheim社製)を利用して合成した。EcoRI消化により完全に線状化された10 μgのヒトIL-2 cDNA組み換えプラスミド(pTCGF#2)DNAをフェノール/クロロホルム抽出による蛋白質変性除去後にエタノール沈殿により精製し、リボプローブ合成のための鋳型とした。同鋳型DNA(5 μg)と1.8 mM ATP、0.9 mM CTP、0.7 mM GTP、1.1mM UTP、0.58 mM UTP(DIG標識体)をT7 RNA ポリメラーゼ存在下で混和し、37℃で2時間インキュベートした後、DNase I溶液を加え10分間反応させ、鋳型DNAを破壊した。同反応溶液に1/10倍容の5 Mの酢酸ナトリウムと1倍容のイソプロパノールを加え、合成RNAは15,000×gで15分間遠心し沈殿物として回収した。同RNAはRNase を含有しない滅菌蒸留水に溶解した。 【0103】(d)IL-2遺伝子発現量の測定上記(a)〜(c)で取得した材料を用いてIL-2遺伝子発現量を測定した。細胞全RNA試料溶液をスタンダードIL-2 RNA溶液とともにナイロン膜にドットし、5×SSCで2回洗った後、ナイロン膜上のRNAをUV-クロスリンカー(Biorad社製)により固定した。同ナイロン膜をPrehybridization buffer(5×SSC、5% SDS、50 mMリン酸ナトリウム (pH7.0)、 50% ホルムアミド、2% Blocking Reagent (Boehringer Mannheim社製)、1% N−ラウロイルサルコシネート(N-lauroyl sarcosinate))とともにハイブリバッグ(井内社製、耐湯バッグL)に封入し、68℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った。 【0104】終濃度100 ng/mlになるようにDIG標識IL-2リボプローブをPrehybridization bufferで希釈し、10分間煮沸後急冷し、ハイブリダイゼーション液とした。ハイブリパック内のプレハイブリダイゼーション液をハイブリダイゼーション液と交換し、68℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。ナイロン膜を2×Washing solution(2×SSC、0.1% SDS)で各5分間2回洗った後、0.2×Washing solution(0.2×SSC、0.1% SDS)で68℃で各15分間2回洗った。Buffer I(100 mM マレイン酸、150 mM NaCl(pH7.5))による1分間の洗いの後、ナイロン膜をBuffer II(Blocking Reagent (Boehringer Mannheim社製)をbuffer Iで1%溶液としたもの)で30分間ブロッキングを行った。 【0105】DIG標識RNAハイブリッドの化学発光検出は、DIG Luminescent Detection Kit(Boehringer Mannheim社製)を使用して行った。アルカリフォスファターゼ標識抗DIG抗体のBuffer II溶液(150 mU/ml)でナイロン膜を室温で1時間処理後、Buffer Iで各15分間2回洗い、CSPD(disodium 3- (4-methoxyspiro[1,2-dioxetane-3,2'- (5'-chloro) tricyclo [3.3.1.13, 7] decan] -4-yl) phenylphosphate)をBuffer III(0.1 M Tris, pH 9.7, 0.1 M NaCl, 0.05 M MgCl2)で希釈して得られた250 μMの基質溶液とともにバッグ(LIFETECHNOLOGIES社製、Photogene development folder)に封入した。標識RNAに基づき発せられたフォトン数をアルガス50(浜松ホトニクス社製)で計測し、スタンダードIL-2 RNAのフォトン数から検量線を作成し、それを基にして細胞の全RNA中のIL-2 mRNAを定量した。得られたIL-2 mRNA量(モル)と全RNA抽出に用いた細胞数から単一細胞あたり大体のIL-2 mRNA分子数を求めた(図19)。 【0106】図19に示すように、0、24、48、72、96時間IL-2発現誘導処理を施された細胞の細胞内IL-2 mRNA分子数(×104)は、<0.29×10-4、0.76±0.17、1.11±0.40、1.22±0.67、1.20±0.28であり、72時間(3日間)処理された細胞において最もIL-2 mRNAが多く存在することが判明した。また、上記各時間処理した細胞の培養液中のIL-2含量(pg/ml/107 cells)は順に<0.32、1032±25、2433±533、2688±194、2531±283であることから、IL-2の遺伝子発現の活発化にともない、より多くのIL-2分子が分泌されることが示唆された。 【0107】(8)個々のプローブとIL-2遺伝子発現が誘導されたヒトT細胞白血病株細胞Jurkat E6-1細胞のIL-2 mRNAとの細胞内ハイブリダイゼーション前記(5)と同様に抗CD3抗体、抗CD28抗体、PMAで3日間処理することによってIL-2遺伝子発現を誘導させたIL-2発現誘導細胞と、IL-2発現未誘導細胞について、細胞内のIL-2 mRNAと個々のIL-2プローブとのハイブリダイゼーションを以下のようなIST(In Situ Transcription)法により検出した。 【0108】各Jurkat E6-1細胞(5×105 cells/ml)をPBS(-)で3回洗い、1 mlのPBS(-)で懸濁し、12mmのカバーガラス(poly-L-lysineが底面にコート)上にマウントし、単層細胞を調製した。0.5% Triton-X100溶液に細胞を90秒間室温で曝すことによって細胞膜に物質透過性を付与した。細胞を速やかにPBS(-)で洗い、10 μM(最終濃度)の上記表1に示した配列番号1〜10の塩基配列を有するプローブ(非色素標識体)、オリゴdT(デオキシチミジンオリゴヌクレオチド、非色素標識体)またはオリゴdA(デオキシアデニンオリゴヌクレオチド、非色素標識体)を添加し、1時間室温でインキュベートした。細胞を速やかにPBS(-)で洗い、4%パラホルムアルデヒド溶液で室温で15分間固定した。 【0109】細胞を1×SSCで3回洗い、0.35 mMのDIG(ジゴキシゲニン)標識dUTPを含む1mM デオキシリボヌクレオチド溶液(Boehringer Mannheim社製)を1 u/μlの逆転写酵素(東洋紡社製)とともに細胞に加え、30℃で2時間インキュベートした。細胞を1×SSCで3回洗い、Blocking buffer(Blocking Reagent(Boehringer Mannheim社製) を1(w/v)%になるようにマレイン酸緩衝液で溶解したもの)で室温で1時間処理した。細胞をマレイン酸緩衝液で3回洗い、FITC(Fluorescein-isothiocyanate)標識抗DIG抗体(Blocking bufferで1 μg/mlになるように溶解したもの)を添加し、30分間室温でインキュベートした。カバーガラスをPBS(-)で3回洗い、蛍光顕微鏡観察し、1視野あたりの総蛍光強度(相対値)を測定した。 【0110】そのときに得られた蛍光顕微鏡写真を図20および21に示す。図20は、固定された状態のIL-2発現誘導細胞およびIL-2発現未誘導細胞の細胞中の全てのmRNAとオリゴdTとの間で形成される複合体を蛍光検出した蛍光顕微鏡写真であり、オリゴdTの代わりにオリゴdAを細胞に添加した場合や、複合体を蛍光標識するのに必要なDIG標識dUTPと逆転写酵素の両者を添加しなかった場合の対照実験結果も示している。図21は、固定された状態のIL-2発現誘導細胞およびIL-2発現未誘導細胞の細胞中のIL-2 mRNAと上記プローブ(非蛍光標識体)との間で形成されるハイブリッド体を蛍光検出した蛍光顕微鏡写真である。なお、図21においては、IL-2発現誘導細胞およびIL-2発現未誘導細胞のそれぞれにおいて、各プローブの蛍光像を2枚表示してある。また、蛍光強度と細胞数から、1細胞あたりの蛍光強度(平均値±SE)を算出し、オリゴdTを細胞に添加したときの蛍光強度を基準(100%)に各プローブによる値を規格化し、図22に示す。 【0111】その結果、IL-2 342-356およびIL-2 357-371が個別で最も効率良く細胞内IL-2mRNAとハイブリダイズすることが示された。これらはIL-2 mRNA分子内の連続した30塩基配列に相補的であることから、それぞれがエネルギードナー蛍光色素、エネルギーアクセプター蛍光色素で標識されれば、細胞内ハイブリダイゼーションにともなうFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)に基づく蛍光を特異的に検出することが可能となることが示唆された。 【0112】(9)ドナープローブ、アクセプタープローブとIL-2発現誘導細胞におけるIL-2mRNAとの細胞内ハイブリダイゼーション(ISH法)(8)のIST法による実験結果において、蛍光顕微鏡視野全体の細胞にほぼ均一にプローブが導入されていたことに着目し、このプローブ導入方法をドナーおよびアクセプターの蛍光標識プローブにも応用し、これらのプローブと細胞内IL-2 mRNAとのハイブリダイゼーションをFRETに基づく蛍光として測定し、各組のプローブについて比較検討した。この方法はIST法からヒントを得て発展させたことからISH(In Situ Hybridization)法と呼ぶ。 【0113】(8)で記した方法によって細胞膜表面に物質透過性を付与されたIL-2発現誘導細胞およびIL-2発現未誘導細胞に、Bodipy493/503で標識したドナープローブおよびXRITC標識したアクセプタープローブの溶液を2 μM(最終濃度)添加し、1時間室温でインキュベートした。ドナープローブとアクセプタープローブの組としては、IL-2 228-242(D)とIL-2 243-257(A)、IL-2 198-212(D)とIL-2213-227(A)、IL-2 77-91(D)とIL-2 92-106(A)、IL-2 287-301(D)とIL-2 302-316(A)、IL-2 342-356(D)とIL-2 357-371(A)を用いた。蛍光標識プローブをPBS(−)で洗い除き、4%パラホルムアルデヒド溶液で15分間室温で細胞を固定した。カバーガラスをPBS(−)で3回洗って蛍光顕微鏡観察を行い、細胞にA(エネルギーアクセプター色素)の励起光を照射したときに細胞から発せられるAの蛍光(以下、場合によりA/A像と呼ぶ)、細胞にD(エネルギードナー色素)の励起光を照射したときに細胞から発せられるDの蛍光(以下、場合によりD/D像と呼ぶ)、細胞にDの励起光を照射したときに蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により細胞から発せられるAの蛍光(以下、場合によりD/A像と呼ぶ)を得た。この結果、IL-2 342-356(D)をドナープローブ、IL-2 357-371(A)をアクセプタープローブとしたときに最大レベルのFRETに基づく蛍光が検出された。この蛍光顕微鏡写真を図23に示す。なお、図23においては、IL-2発現誘導細胞およびIL-2発現未誘導細胞のそれぞれにおいて、各プローブの組のA/A像、D/D像、D/A像を2枚表示してある。また、対照実験としてプローブを導入しなかった結果も示してある。 【0114】次に、得られた蛍光像の1視野全体の D/A(D励起によるFRETに基づくAの蛍光)およびA/A(A励起によるAの蛍光)を測定し、これらの測定値と1視野あたりの細胞数から1細胞あたりの蛍光強度値(平均値±SE)を算出した。以上の計算結果から細胞内ハイブリダイゼーションの効率を求めるために、細胞内全体のアクセプタープローブに対するIL-2 mRNAとハイブリダイズしたプローブの割合{(1細胞あたりのD/A)/(1細胞あたりのA/A)}を百分率に換算した。この(D/A)/(A/A)(%)を指標にプローブの各組を比較した結果を図24に示す。以上(8)、(9)の結果を総合すると、IL-2 342-356(D)、IL-2 357-371(A)は個別で、かつ連続して標的mRNAに細胞内でハイブリダイズすることが示唆された。 【0115】(10)生きたIL-2発現誘導細胞にドナープローブおよびアクセプタープローブを導入したときの細胞内ハイブリダイゼーション(3A)〜(9)の結果を踏まえ、IL-2 342-356(D)、IL-2 357-371(A)を生細胞内のIL-2 mRNA検出に使用するプローブとして選定した。蛍光色素で標識されたこれらのプローブをIL-2遺伝子を発現する生きた細胞に導入し、FRETによる蛍光の変化を指標にハイブリダイゼーションを特異的に検出することを試みた。 【0116】前記(5)と同様に抗CD3抗体、抗CD28抗体、PMAで3日間処理することによって得られたIL-2発現誘導細胞と、IL-2発現未誘導細胞を回収し、氷冷PBS(-)で2回洗った後、同PBS(-)で細胞密度が1×107 cells/mlになるように懸濁した。0.9mlの同細胞懸濁液を、エレクトロポレーション用キュべット内にいれ、5.4 nmol(最終濃度6.0 μM)のBodipy493/503標識されたドナープローブIL-2 342-356(D)、および5.3 nmol(同終濃度5.86 μM)のXRITC標識されたアクセプタープローブIL-2 357-371(A)を添加して250 V、975 μFで細胞にパルスをかけた。細胞懸濁液を70μmのセルストレイナー(Falcon)を通過させ、軽く遠心後、細胞をPBS(-)で再度懸濁した。さらに通過液を40μmのストレイナー(Falcon社製)を通し、通過液を遠心後、再度懸濁して多くの死細胞を巻き込んだデブリ等を可及的に除いた後に、蛍光顕微鏡で観察した。 【0117】その結果を図25に示す。図25にはIL-2発現誘導細胞およびIL-2発現未誘導細胞における、A/A像、D/D像、D/A像、および位相差顕微鏡観察による透過像が示されている。なお、図25においては、IL-2発現誘導細胞およびIL-2発現未誘導細胞のそれぞれにおいて、各プローブの組のA/A像、D/D像、D/A像、および位相差顕微鏡観察による透過像を2枚表示してある。IL-2発現誘導細胞においては、視野全体の細胞20〜22個の中で1〜3個の細胞に、ドナープローブおよびアクセプタープローブがIL-2 mRNAに対して隣接してハイブリダイズしたことに基づく、D/Aが検出された。一方、IL-2発現未誘導細胞にはこのようなFRETによる蛍光は全く検出されなかった。 【0118】(11)フローサイトメトリーによるIL-2遺伝子を発現する細胞の選択的分離IL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞に、ドナープローブとアクセプタープローブを導入し、これらのプローブとIL-2 mRNAの生細胞内ハイブリダイゼーションに基づくFRETによる蛍光強度の格差を利用して、IL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞とを選択的に分離することを以下のように試みた。 【0119】(9)と同様に調製したIL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞の細胞懸濁液をそれぞれ100対0、0対100、50対50、20対80%の割合で混合して得られた懸濁液0.9mlをエレクトロポレーション用キュべット内にいれ、16.2 nmol(最終濃度18.0 μM)のBodipy493/503標識されたドナープローブIL-2 342-356(D)、および14.7 nmol(同終濃度16.4 μM)のCy5標識されたアクセプタープローブIL-2 357-371(A)を添加して(9)と同じ条件でパルスをかけた。生細胞を集め、フローサイトメトリー用実験装置(FACSCalibur、BECTON DICKINSON社製)に注入した。 【0120】流路の一カ所で、細胞にエネルギードナー蛍光色素(Bodipy493/503)の励起光を照射したときに、前記ハイブリダイゼーションに基づいてアクセプター(Cy5標識体)から発せられる相対的蛍光強度(FL3-Height)をBodipy493/503による相対的蛍光強度(FL1-Height)とともにドットプロットとして検出した。このプロットの中でFL3-Heightが高い値をとる細胞群を選択し、R2として領域指定した。一方、ヒトリンパ球系細胞としての細胞のサイズ(FSC-Height;前方散乱光)ならびに内部構造の複雑さ(SSC-Height;側方散乱光)を有する集団を参考値(FACSCalibur Training Manual, BECTON DICKINSON社)に基づいて選択し、R1として領域指定した。 【0121】以上により得られたドットプロットを図26〜33に示す。なお、図26はIL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞の混合比率が100対0の場合のFSC-HeightおよびSSC-Heightに基づくドットプロットを示し、図27は同様の混合比率の場合のFL1-HeightおよびFL3-Heightに基づくドットプロットを示す。図28はIL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞の混合比率が0対100の場合のFSC-HeightおよびSSC-Heightに基づくドットプロットを示し、図29は同様の混合比率の場合のFL1-HeightおよびFL3-Heightに基づくドットプロットを示す。また、図30はIL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞の混合比率が50対50の場合のFSC-HeightおよびSSC-Heightに基づくドットプロットを示し、図31は同様の混合比率の場合のFL1-HeightおよびFL3-Heightに基づくドットプロットを示す。さらに、図32はIL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞の混合比率が20対80の場合のFSC-HeightおよびSSC-Heightに基づくドットプロットを示し、図33は同様の混合比率の場合のFL1-HeightおよびFL3-Heightに基づくドットプロットを示す。 【0122】前記R2の条件を満たし、かつR1の条件も満たす集団をセルソーテイング機能(セルソーター)を利用して選択的に分取した。分取した細胞群を再びFACSCaliburに注入し、目的通りに蛍光標識された細胞群であることを確認するために同様のドットプロットとして検出した。得られたドットプロットを図34〜39に示す。図34はIL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞の混合比率が100対0の場合のFSC-HeightおよびSSC-Heightに基づくドットプロットを示し、図35は同様の混合比率の場合のFL1-HeightおよびFL3-Heightに基づくドットプロットを示す。また、図36はIL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞の混合比率が50対50の場合のFSC-HeightおよびSSC-Heightに基づくドットプロットを示し、図37は同様の混合比率の場合のFL1-HeightおよびFL3-Heightに基づくドットプロットを示す。さらに、図38はIL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞の混合比率が20対80の場合のFSC-HeightおよびSSC-Heightに基づくドットプロットを示し、図39は同様の混合比率の場合のFL1-HeightおよびFL3-Heightに基づくドットプロットを示す。 【0123】図27、図31、図33を比較することにより、細胞懸濁液中のIL-2発現誘導細胞の割合を100から50、20%と減少させるのにともない、FL3-Heightが高くR2に属する細胞群のドットプロット全体の中で占める割合が減少することがわかった。これに対して、同じドナープローブおよびアクセプタープローブをIL-2発現未誘導細胞に導入しても、FL3-Heightの値が高い細胞群は全く認められなかった(図29)。また、セルソーテイング機能によりソートアウト(選択的分離)した細胞の大多数はゲートR1ならびにR2の条件を満たす集団であることから、IL-2発現誘導細胞が充分なFRET蛍光を発する細胞群として分取されたことが確認された(図34〜39参照)。 【0124】(12)蛍光顕微鏡観察によるフローサイトメトリー前後の細胞群の比較フローサイトメトリー前後の細胞の一部をガラス底ディッシュに移し、蛍光顕微鏡を用いて視野全体の細胞の中で、D/A、A/A、D/Dの蛍光を発する細胞の割合について調べた。 【0125】その結果を図40〜46に示す。図40、42、44、46には、フローサイトメトリー前の細胞群における、IL-2 mRNAとドナープローブおよびアクセプタープローブの3者で形成されるハイブリッド体のFRETに基づくアクセプター色素の蛍光像(D/A像)、細胞中の全てのドナープローブの存在を示すドナー色素の励起によるドナー色素の蛍光像(D/D像)、アクセプタープローブの存在を示すアクセプター色素の励起によるアクセプター色素の蛍光像(A/A像)、および前記細胞群の位相差顕微鏡観察による透過像が示されている。図41、43、45はフローサイトメトリー後(セルソーテイング機能によって選択的に分取された後)の、上記と同様の像が示されている。なお、図40〜46においては、細胞の蛍光像と透過像間の位置合わせのために、一部の細胞を指し示す矢印が記載されている。 【0126】図40および41の細胞群は、IL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞(いずれも生きた状態)を100対0の比率で混合したものであり、図42および43の細胞群は、これらの比率が50対50のものである。また、図44および45の細胞群は、IL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞(いずれも生きた状態)を20対80の比率で混合したものであり、図46の細胞群はこれらの比率が0対100のものである。 【0127】図40において、位相差顕微鏡観察による透過像に20cellsとの記載があることからわかるように、視野全体に20個の細胞が存在している。また、A/A像、D/A像およびD/D像に、それぞれ5cells、4cellsおよび7cellsとの記載があることからわかるように、A/A、D/A、D/Dの蛍光を発する細胞の個数はそれぞれ5、4、7個であることがわかる。 【0128】また、図42においては、20cells、3cells、1cellsおよび10cellsとの記載があることからわかるように、視野全体の細胞は20個であり、このなかでA/A、D/A、D/Dの蛍光を発する細胞の個数はそれぞれ3、1、10個である。同様に、図44において、36cells、7cells、1cellsおよび20cellsとの記載があることからわかるように、視野全体の細胞は36個であり、このなかでA/A、D/A、D/Dの蛍光を発する細胞の個数はそれぞれ7、1、20個である。更に、IL-2発現誘導細胞を含まない図46においては、21cells、2cells、0cellsおよび3cellsとの記載があることからわかるように、視野全体の細胞は21個であり、このなかでA/A、D/A、D/Dの蛍光を発する細胞の個数はそれぞれ2、0、3個である。 【0129】以上のことから、IL-2発現誘導細胞の割合を100から50、20%と減少させるのにともないフローサイトメトリー前にはハイブリダイゼーションに基づいてIL-2mRNAが蛍光標識されている細胞(D/Aの蛍光を発する細胞)の視野全体の細胞に対する割合が減少することがわかった。 【0130】図41は、IL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞(いずれも生きた状態)を100対0の比率で混合したものに対してフローサイトメトリーによる選択的分離を行った後の像を示すものであるが、位相差顕微鏡観察による透過像に7cellsとの記載があることからわかるように、視野全体に7個の細胞が存在している。また、A/A像、D/A像およびD/D像に、それぞれ7cells、7cellsおよび7cellsとの記載があることからわかるように、A/A、D/A、D/Dの蛍光を発する細胞の個数はいずれも7個であった。 【0131】また、図43の全てにおいて6cellsとの記載があることからわかるように、視野全体の細胞は6個であり、このなかでA/A、D/A、D/Dの蛍光を発する細胞の個数はいずれも6個であった。同様に、図45の全てにおいて5cellsとの記載があることからわかるように、視野全体の細胞は5個であり、このなかでA/A、D/A、D/Dの蛍光を発する細胞の個数はいずれも5個であった。 【0132】図40と41、図42と43、図44と45を比較することにより、フローサイトメトリーのセルソーテイング機能(セルソーター)によって、IL-2 mRNAが蛍光標識されている細胞のみを選択的に分離することが可能であることがわかった。 【0133】(13)In situ Hybridization法によるフローサイトメトリー前後の細胞群の比較フローサイトメトリー前後の細胞の一部を別のガラス底ディッシュに移し、4%パラホルムアルデヒド/PBS (pH7.4) で室温で30分間細胞を固定し、FISH(Fluorescent in situ Hybridization)法により視野全体の細胞の中でIL-2 mRNAを保有する細胞(IL-2 mRNA (+))の割合を求めた。このFISH法に用いるリボプローブは、未反応のリボプローブが細胞内に止まることに起因する高バックグラウンドを防ぐために、(7)(c)で記した方法で取得された全長のIL-2リボプローブを次の方法で細かく断片化したものを実験に用いた。 【0134】10 μgのリボプローブを100 μlのアルカリ変性用溶液(42 mM NaHCO3, 63 mMNa2CO3, 5 mM DTT)に溶かし、60℃で10〜15分間インキュベートした後に、10μlの3 M 酢酸ナトリウムとともに350 μlのエタノールを加え、リボプローブをエタノール沈殿させた。-20℃で30分間放置後、16 krpmで20分冷却遠心し、得られた沈殿を70% エタノールで沈殿を洗い、乾燥させた後、50 μlのRNase を含有しない滅菌蒸留水で溶解し、アルカリ変性IL-2リボプローブ溶液とした。 【0135】ディッシュ底面に固定された細胞をPBS (-)で3回洗い、0.1% Triton X-100/PBS溶液で室温にて5分間処理し細胞膜に物質透過性を付与した後にPBS (-)で3回洗い、0.2N HClで室温にて10分間処理した。単層細胞をPBS (-)で洗った後、1μg/ml Proteinase K/PBS溶液で5分間37℃でインキュベートした。単層細胞をPBS (-)で洗った後、4% パラホルムアルデヒド/PBS (pH7.4)で30分間再度固定した。2 mg/ml グリシン/PBSで2回洗い(15分/回)、50% 脱イオン済ホルムアミド/2×SSC溶液(溶液A、後出)で30分間処理し、ハイブリダイゼーション溶液(50% 脱イオン処理済ホルムアミド、5×denhardt、2×SSC、アルカリ変性処理済IL-2リボプローブ(1 μg/ml))を調製し、90℃で10分間熱変性処理後氷冷し、同溶液100 μlをディッシュに添加し、45℃で一晩反応させた。 【0136】ハイブリダイゼーション後の単層細胞を溶液 Aで5分間45℃で洗い、続いて溶液 B(10 mM Tris・HCl (pH8.5), 500 mM NaCl)で2回洗い(5分/回)、20 μg/ml RNase A/溶液 B(90℃10分間熱処理したもの)で37℃で20分間処理した。溶液 A、溶液 C(50% 脱イオン処理済ホルムアミド/1×SSC)の順で45℃で各30分間、さらに溶液 Cで室温で20分間洗った。さらに、Buffer 1(100 mM マレイン酸、150 mM NaCl(pH7.5))で洗った(5分×2回)後、Buffer 2(1% Blocking Reagent (Boehringer Mannheim社製) in Buffer I)で室温で20分間ブロッキングを行った。 【0137】Buffer 1で2回洗った後、 FITC標識抗DIG抗体(Fab、Buffer 2で100倍希釈したもの、蛋白質濃度にして〜1 μg/ml)を単層細胞に加え30分間以上インキュベートし、PBS (-)で3回洗浄後蛍光顕微鏡観察し、視野全体の細胞に対するIL-2 mRNAを保有する細胞の割合を求めた。 【0138】図47および48は、IL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞の混合比率が100対0である場合の蛍光顕微鏡写真であり、図47はフローサイトメトリー前、図48はフローサイトメトリー後を示す。また、図49は、IL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞の混合比率が0対100である場合のフローサイトメトリー前の蛍光顕微鏡写真である。図50および51は、IL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞の混合比率が50対50である場合の蛍光顕微鏡写真であり、図50はフローサイトメトリー前、図51はフローサイトメトリー後を示す。また、図52および53は、IL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞の混合比率が20対80である場合の蛍光顕微鏡写真であり、図52はフローサイトメトリー前、図53はフローサイトメトリー後を示す。 【0139】なお、図中に記載された数字は視野全体の細胞数あたりの蛍光を発する細胞の個数を示しており、例えば、図47の48/48は、視野を占める48細胞全てに蛍光が観察され、IL-2 mRNAが含まれることを示すのに対して、図49の0/32は、32個の細胞の中でIL-2 mRNAを保有する細胞が皆無であることを示す。また、図50の18/35は、35個の細胞中に18個のIL-2 mRNA保有細胞が検出されたことを示し、図52の8/39は、39個の細胞中に8個のIL-2 mRNA保有細胞が検出されたことを示すことから、図50においては50対50の比率で、図52においては20対80の比率でIL-2発現誘導細胞とIL-2発現未誘導細胞を混合したことがよく反映されている。一方、図48、図51、図53における数字はそれぞれ9/9、7/7、8/8であり、このことから、フローサイトメトリー前には多くても50%もしくは約20%しか存在しなかったIL-2 mRNA保有細胞はすべてフローサイトメトリー後に100%に濃縮されることが確認された。 【0140】(14)特定の遺伝子を発現する生細胞の蛍光強度の格差を利用した分離法(11)〜(13)の実験結果を整理し、IL-2 mRNAが蛍光標識されることに基づく蛍光強度の格差を利用した分離法の成績を以下の表8に示す。フローサイトメトリー前には多くても50%もしくは約20%しか存在しなかったIL-2 mRNA保有細胞は、この蛍光強度の格差を利用した分離法によって100%に濃縮された。すなわち、IL-2 mRNA保有細胞を含む生細胞群から100%の純度で当該IL-2 mRNA保有細胞が選択的に分離された。 【0141】 【表8】
【0142】(15) ヒト末梢血からのリンパ球の分離終濃度10 U/mlのヘパリンを加えた血液を、健常人から200ml採取後、2倍容の3%デキストランin PBS(phosphate buffered saline)溶液と50mlの遠心チューブ(Falcon2070)内で混和し、室温で15分間静置し、赤血球を沈降させた。上清21.5 mlを15 mlのフィコールパック(ファルマシア)に静かに重層し、490×g(1,600 rpm)で30分間遠心した。上清において白色の浮遊物として観察されるリンパ球層をピペットにより採取した。リンパ球層を3倍容のHBSS(Hanks' Balanced Salt Solution, GIBCO BRL製)と50mlの遠心チューブ(Falcon2070)内で混和し、1,200 rpmで10分間遠心後、リンパ球から成る沈殿を30 mlのPBS(-)で2回洗浄後、細胞密度が約2.5×107 cells/mlになるように懸濁した。 【0143】(16)末梢血リンパ球からヘルパーT細胞(CD4陽性細胞)の分離および蛍光抗体染色CD4陽性細胞の分離には、ヒトCD4陽性細胞回収用カラムキット(HumanCD4 cell Recovery Column Kit、CEDARLANE社製)を使用し、同キットに備え付けのプロトコールに従い、以下のように分離操作を行った。 【0144】CD4陽性細胞分離用カラム (CEDARLANE社)をカラムスタンドにセットし、カラム内ガラスビーズを15mlのPBS(-)を注ぎ加え、洗い流し、PBS(-)がビーズの真上に僅かに残った状態で止めた。同ビーズにヤギ抗ヒトIgG (H+L)およびヤギ抗マウスIgG (H+L)血清を付加するために、カラムリエージェント(Column Reagent, CEDARLANE社)内の試薬粉末を1〜1.5mlのPBS(-)で溶かし、同リエージェント溶液をカラム内ビーズに加え、流し、ビーズの真上に僅かに残った状態で止め、室温で1-8時間静置した。 【0145】セルリエージェント(Cell Reagent, CEDARLANE社)内の粉末を1.5mlのPBS(-)で溶かし、同セルリエージェント全量と(15)で調製した3.5-4.5mlのリンパ球懸濁液を50mlの遠心チューブ(Falcon 2070)内で混和し、30分間以上氷上でインキュベートし、細胞群中のCD8陽性細胞を同リエージェントに含まれるCD8に対する特異抗体(マウス抗ヒトCD8)で中和した。このリンパ球懸濁液に15mlのPBS(-)を加え、4℃で200×g(約1,200 rpm)で5-10分間遠心し、上清をピペッテイングにより除いた。 【0146】得られた細胞沈殿を15mlのPBS(-)で洗った後、沈殿を細胞密度が約5×107 cells/mlになるように懸濁した。PBS(-)で平衡化されたカラムのビーズに20mlのPBS(-)を注ぎ加え、洗い流しながら、流速を6-8滴/分(1滴/8秒間)に合わせた後、細胞懸濁液をカラムビーズに加え流し、15mlのFalconチューブで溶出液を回収し、細胞懸濁液がビーズの真上に僅かに残った状態で流入を停止した。さらにPBS(-)をビーズに注ぎ加え、15mlのFalconチューブで10〜15mlの溶出液を回収した。得られた溶出液を4℃で1,200 rpmで10分間遠心し、上清をピペッテイングにより除き、得られた細胞沈殿を細胞密度が1.0×107 cells/mlになるように胎児ウシ血清(FBS)が10%含まれるPBS(-)で懸濁した。 【0147】細胞懸濁液中にCD4陽性T細胞が占める割合を調べる目的で、得られた細胞懸濁液の一部(50μl)に対して、抗CD4/CD8抗体(サイマルテスト(Leu-3A/2a)、Becton Dickinson社)とコントロール抗体(サイマルテストコントロール、Becton Dickinson社)20μlを2mlのマイクロチューブ内で混合し、30-45分間遮光しながら氷中でインキュベートし、細胞表面のCD4およびCD8を蛍光染色した。2mlのPBS(-)を前記混合液に加え、ボルテックスミキサーで混和し、300×gで5分間遠心し、上清をピペッテイングもしくはアスピレーションにより除去後、細胞沈殿を1mlのPBS(-)で懸濁後、フローサイトメトリー用実験装置(FACSCalibur、Becton Dickinson社)に注入し、CD4およびCD8に関するフローサイトメトリーを実施した。その結果、前記カラムにかける前の末梢血リンパ球中には多くのCD8陽性細胞が確認された(図56)。これに対して、前記CD4陽性細胞分離操作を経て得られた細胞懸濁液には50%程度のCD4陰性ならびに弱陽性細胞が含まれることが判明したが、CD8陽性細胞の混入は認められなかった(図59)。 【0148】(17)ヘルパーT細胞(CD4陽性細胞)の活性化(16)で得られた細胞懸濁液(細胞密度は1.0×107 cells/ml)に1 μg/ml(終濃度)のイオノマイシン(SIGMA)、30 nM PMA(SIGMA)を添加して37℃、5% CO2存在下で2時間インキュベートした。 【0149】(18)ヘルパーT細胞(CD4陽性細胞)の細胞内IL-2 mRNAの蛍光標識(17)で得られた活性化CD4陽性細胞の懸濁液0.9 mlを、エレクトロポレーション用キュべット(Gene Pulser専用キュベット(電極間距離=0.4cm)、BIO-RAD社)内に容れ、5.4 nmol(最終濃度6.0 μM)のBodipy493-503で標識されたドナープローブIL-2 342-356(D)および5.3 nmol(同終濃度5.86 μM)のCy5で標識されたアクセプタープローブIL-2 357-371(A)を添加して250 V、975 μFで細胞にパルスをかけた。細胞懸濁液を70μmのセルストレイナー(Falcon)を通過させ、軽く遠心後、細胞をPBS(-)で再度懸濁した。さらに通過液を40μmのストレイナー(Falcon)を通し、通過液を遠心後、再度懸濁して多くの死細胞を巻き込んだデブリ等を可及的に除いた後に、細胞の一部をカバーガラスチャンバー(Lab-Tek II Chambered Coverglass#155409、NUNC社)に移し、蛍光顕微鏡を用いて視野全体の細胞の中で、下記の蛍光を発する細胞の割合について調べた。 ■A/A{細胞にA(アクセプター色素)の励起光を照射したときに細胞から発せられるAの蛍光} ■D/A{細胞にD(ドナー色素)の励起光を照射したときに細胞から発せられるAの蛍光、FRETによる蛍光} ■D/D{細胞にDの励起光を照射したときに細胞から発せられるDの蛍光} 【0150】その結果、視野全体(25細胞)の中で3個の細胞がD/Aの蛍光を発していることが観察され、IL-2 mRNAがドナーおよびアクセプタープローブとのハイブリダイゼーションに基づいて特異的に蛍光標識されたことが確認された。この結果から、活性化CD4陽性細胞群中にTH1が12%程度存在することが示唆された(図60)。 【0151】(19)活性化CD4陽性細胞群からのフローサイトメトリーによるTH1の選択的分離IL-2 mRNAとドナーおよびアクセプタープローブとの生細胞内ハイブリダイゼーションに基づくFRETによる蛍光によって生じる(IL-2 mRNAを保有する細胞としない細胞間の)蛍光強度の格差を利用して、TH1を選択的に分離することを以下のように試みた。 【0152】(18)で得られたIL-2 mRNAが蛍光標識された細胞が含まれる細胞群の懸濁液を、フローサイトメトリー用実験装置(FACSCalibur)に注入した。流路の一カ所で、細胞にドナー色素(Bodipy)の励起光を照射したときに、前記ハイブリダイゼーションに基づいてアクセプター(Cy5標識体)から発せられる相対的蛍光強度(FL3-Height)をBodipyによる相対的蛍光強度(FL1-Height)とともにドットプロットとして検出した。このブロットの中でFL3-Heightが高い値をとる細胞集団を選択し、R2として領域指定した(図63)。 【0153】一方、ヒトリンパ球系細胞としての細胞のサイズ(FSC-Height;前方散乱光)ならびに内部構造の複雑さ(SSC-Height;側方散乱光)を有する集団を参考値(FACSCalibur Training Manual, BECTON DICKINSON)に基づいて選択し、R1として領域指定した(図62)。前記R2の条件を満たし、かつR1の条件も満たす集団をセルソーテイング機能を利用して選択的に分取した。分取した細胞集団を再びFACSCaliburに注入し、目的通りに蛍光標識された細胞集団であることを確認するために同様のドットプロットとして検出した結果、セルソーテイング機能によりソートアウトされた細胞の大多数はゲートR1ならびにR2の条件を満たす集団であり、IL-2 mRNAが蛍光標識された細胞は充分なFRET蛍光を発する細胞群として分取されたことが確認された(図65)。これに対して、蛍光標識プローブを導入しなかった対照実験の細胞群のドット解析の結果、FL1-Heightについて微弱な蛍光を発する細胞群が検出されたものの、FL3-Heightについては総てのドットがベースライン付近に密集したため、IL-2 mRNAが特異的に蛍光標識された細胞群とはドットプロット上で容易に識別されることが確認された(図67)。 【0154】次に、ソートアウトされた細胞群の一部を(18)と同様に蛍光顕微鏡で観察した。その結果、ソートアウトされた細胞群は視野全体の8個の細胞総てがD/A(FRETによる蛍光)を発しており、IL-2 mRNAが蛍光標識されていることが観察された(図61)。この結果と、(18)のフローサイトメトリーにかける前の結果をIL-2 mRNAが蛍光標識された細胞の存在比率を指標に比較したところ、フローサイトメトリーに基づくセルソーテイングによってTH1が選択的に分離されたことが示唆された。 【0155】(20)ヘルパーT細胞(CD4陽性細胞)の細胞内IL-4 mRNAの蛍光標識(17)で得られた活性化CD4陽性細胞の懸濁液0.9 mlを、(18)と同様にエレクトロポレーション用キュべット(BIO-RAD社)内に容れ、15.1 nmol(最終濃度16.8 μM)のBodipy493-503で標識されたドナープローブIL-4 265-279および13.6 nmol(同終濃度15.1 μM)のCy5で標識されたアクセプタープローブIL-4 280-294を添加して250 V、975 μFで細胞にパルスをかけた。細胞懸濁液を(18)と同様に70μmのセルストレイナー(Falcon)を通過させ、軽く遠心後、細胞をPBS(-)で再度懸濁した。さらに通過液を40μmのストレイナー(Falcon)を通し、通過液を遠心後、再度懸濁して多くの死細胞を巻き込んだデブリ等を可及的に除いた後に、細胞の一部をカバーガラスチャンバー(NUNC社)に移し、蛍光顕微鏡を用いて視野全体の細胞の中で、(18)と同様にA/A、D/A、D/Dの蛍光を発する細胞の割合について調べた。その結果、視野全体(41細胞)の中で2個の細胞がD/Aの蛍光を発していることが観察され、IL-4 mRNAがドナーおよびアクセプタープローブとのハイブリダイゼーションに基づいて特異的に蛍光標識されたことが確認された(図68)。この結果から、活性化CD4陽性細胞群中にTH2が5%近く存在することが示唆された。 【0156】(21)活性化CD4陽性細胞群からのフローサイトメトリーによるTH2の選択的分離IL-4 mRNAとドナーおよびアクセプタープローブとの生細胞内ハイブリダイゼーションに基づくFRETによる蛍光によって生じる(IL-4 mRNAを保有する細胞としない細胞間の)蛍光強度の格差を利用して、TH2を選択的に分離することを以下のように試みた。 【0157】(20)で得られたIL-4 mRNAが蛍光標識された細胞が含まれる細胞群の懸濁液を、フローサイトメトリー用実験装置(FACSCalibur)に注入した。(19)と同様に、細胞にドナー色素(Bodipy)の励起光を照射したときに、前記ハイブリダイゼーションに基づいてアクセプター(Cy5標識体)から発せられる相対的蛍光強度(FL3-Height)をBodipyによる相対的蛍光強度(FL1-Height)とともにドットプロットとして検出した。このプロットの中でFL3-Heightが高い値をとる細胞集団を選択し、R2として領域指定した(図71)。 【0158】一方、ヒトリンパ球系細胞としての細胞のサイズ(FSC-Height;前方散乱光)ならびに内部構造の複雑さ(SSC-Height;側方散乱光)を有する集団を選択し、R1として領域指定した(図70)。前記R2の条件を満たし、かつR1の条件も満たす集団をセルソーテイング機能を利用して選択的に分取した。分取した細胞集団を再びFACSCaliburに注入し、目的通りに蛍光標識された細胞集団であることを確認するために同様のドットプロットとして検出した結果、セルソーテイング機能によりソートアウトされた細胞の大多数はゲートR1ならびにR2の条件を満たす集団であり(図72および73)、IL-4 mRNAが蛍光標識された細胞は充分なFRET蛍光を発する細胞群として分取されたことが確認された。 【0159】次に、ソートアウトされた細胞群の一部を(20)と同様に蛍光顕微鏡で観察した。その結果、ソートアウトされた細胞群は視野全体の7個の細胞総てがD/A(FRETによる蛍光)を発しており、IL-2 mRNAが蛍光標識されていることが観察された(図69)。この結果と、(20)のフローサイトメトリーにかける前の結果をIL-4 mRNAが蛍光標識された細胞の存在比率を指標に比較したところ、フローサイトメトリーに基づくセルソーテイングによってTH2が選択的に分離されたことが示唆された。 【0160】(22) ヘルパーT細胞(CD4陽性細胞)におけるTH2の誘導健常な生体内ではTH1とTH2の均衡が保たれており、両者のバランスがとれた関係が生体内免疫調節の恒常性が維持されていると考えられる。これとは反対に、TH1とTH2の均衡の破綻は多くの免疫病発症の要因となる。生体内で発生する均衡を破綻させる要素こそが当該疾病に至らしめる根源に違いないが、発病に至るまでの機構は試験管内で再構成させるにはあまりに複雑である。しかしながら、両者の均衡が破綻した状態を人為的に再構成することは以前から知られている。例えば、TH2がTH1に対して圧倒的に優位である場合には、生体内では代表的な液性免疫機能であるB細胞による免疫グロブリン(抗体分子)の過剰な産生と分泌が促され、その結果、通常では産生されない自己抗体(自己成分に反応し組織障害を引き起こす抗体)が作られ、自己免疫疾患の原因となることが考えられる。 【0161】このような病態を模倣し、TH2優位なヘルパーT細胞群を人為的に構成するには、「自らが産生するサイトカイン(IL-4)によって、自らを活性化する」というTH2の性質を利用した高濃度のIL-4でヘルパーT細胞群を処理してTH2を誘導する方法がとられている(Openshaw, P. et al. J. Exp. Med. 182(5), 1357, 1995)。そこで、(16)で得られたCD4陽性細胞の細胞懸濁液に(17)で記載したイオノマイシン、PMAとともに20 ng/ml(終濃度)のヒトリコンビナントIL-4(Genzyme社)を添加して37℃で2時間インキュベートした。 【0162】(23)TH2優位なヘルパーT細胞におけるTH1の細胞内IL-2 mRNAの蛍光標識TH2優位なヘルパーT細胞群の中では少数派と思われるTH1を選択的に分離取得することを試みた。(22)でTH2が誘導されたCD4陽性細胞の懸濁液0.9 mlを、(18)と同様にエレクトロポレーション用キュべット(BIO-RAD社)に容れ、5.4 nmol(最終濃度6.0 μM)のBodipy493-503で標識されたドナープローブIL-2 342-356および5.3 nmol(同終濃度5.86 μM)のCy5で標識されたアクセプタープローブIL-2 357-371を添加して250 V、975 μFで細胞にパルスをかけた。(18)と同様に細胞懸濁液から多くの死細胞を巻き込んだデブリ等を除去した後、細胞の一部をカバーガラスチャンバー(NUNC社)に移し、蛍光顕微鏡を用いて視野全体の細胞の中で、A/A、D/A、D/Dの蛍光を発する細胞の割合について調べた。その結果、視野全体(23細胞)の中で1個の細胞がD/Aの蛍光を発していることが観察され、IL-2 mRNAが特異的に蛍光標識された細胞が存在することが確認された(図74)。この結果から、TH2優位なCD4陽性細胞群中でTH1は4%程度にまで減少したことが示唆された。 【0163】(24)TH2優位なヘルパーT細胞群からのフローサイトメトリーによるTH1の選択的分離(19)と同様にIL-2 mRNAが蛍光標識されることによって生じる(IL-2 mRNAを保有する細胞としない細胞間の)蛍光強度の格差を利用して、TH1を選択的に分離することを以下のように試みた。 【0164】(23)で得られたIL-2 mRNAが蛍光標識された細胞が含まれる細胞群の懸濁液を、フローサイトメトリー用実験装置(FACSCalibur)に注入した。(19)と同様に、細胞にドナー色素(Bodipy)の励起光を照射したときに、アクセプター(Cy5標識体)から発せられる相対的蛍光強度(FL3-Height)をBodipyによる相対的蛍光強度(FL1-Height)とともにドットプロットとして検出した。このプロットの中でFL3-Heightが高い値をとる細胞集団を選択し、R2として領域指定した(図77)。一方、ヒトリンパ球系細胞としての細胞のサイズ(FSC-Height;前方散乱光)ならびに内部構造の複雑さ(SSC-Height;側方散乱光)を有する集団を選択し、R1として領域指定した(図76)。前記R2の条件を満たし、かつR1の条件も満たす集団をセルソーテイング機能を利用して選択的に分取した。分取した細胞集団において目的通りに蛍光標識された細胞が存在することを確認するために、細胞を再びFACSCaliburに注入し、同様にドットの分布を調べた結果、セルソーテイング機能によりソートアウトされた細胞の大多数はゲートR1ならびにR2の条件を満たす集団であり(図78および79)、IL-2 mRNAが蛍光標識された細胞は充分なFRET蛍光を発する細胞群として分取されたことが確認された。 【0165】次に、ソートアウトされた細胞群の一部を(20)と同様に蛍光顕微鏡で観察した。その結果、ソートアウトされた細胞群は視野全体の5個の細胞総てがD/A(FRETによる蛍光)を発しており、IL-2 mRNAが蛍光標識されていることが観察された(図75)。この結果と、(23)のフローサイトメトリーにかける前の結果をIL-2 mRNAが蛍光標識された細胞の存在比率を指標に比較したところ、フローサイトメトリーに基づくセルソーテイングによってTH1が選択的に分離されたことが示唆された。 【0166】(25)ヘルパーT細胞(CD4陽性細胞)におけるTH1の誘導(22)とは反対に、TH1がTH2に対して圧倒的に優位である場合には、結核様癩のような慢性疾患に罹患することが知られている(Mitra, D.K. et al. Int.Immunol. 11(11), 1801, 1999)。このような病態を模倣し、TH1優位なヘルパーT細胞群を人為的に構成するには、TH1を活性化するサイトカインIL-12を細胞外液中のIL-4を中和して不活化するためのIL-4に対する特異抗体でヘルパーT細胞群を処理してTH1を誘導する方法がとられている(Openshaw, P. et al. J. Exp.Med. 182(5), 1357, 1995)。 【0167】そこで、(16)で得られたCD4陽性細胞の細胞懸濁液に(17)で記載したイオノマイシン、PMAとともに10 ng/ml(終濃度)のヒトリコンビナントIL-12(Genzyme社)を抗ヒトIL-4マウスモノクローナル抗体(Genzyme社)とともに添加して37℃で2時間インキュベートした。 【0168】(26)TH1優位なヘルパーT細胞におけるTH2の細胞内IL-4 mRNAの蛍光標識TH1優位なヘルパーT細胞群の中では少数派と思われるTH2を選択的に分離取得することを試みた。(25)でTH1が誘導されたCD4陽性細胞の懸濁液0.9 mlを、(18)と同様にエレクトロポレーション用キュべット(BIO-RAD社)に容れ、15.1 nmol(最終濃度16.8 μM)のBodipy493-503で標識されたドナープローブIL-4 265-279(D)および13.6 nmol(同終濃度15.1 μM)のCy5で標識されたアクセプタープローブIL-4 280-294(A)を添加して250 V、975 μFで細胞にパルスをかけた。 【0169】(18)と同様に細胞懸濁液から多くの死細胞を巻き込んだデブリ等を除去した後、細胞の一部をカバーガラスチャンバー(NUNC社)に移し、蛍光顕微鏡を用いて視野全体の細胞の中で、A/A、D/A、D/Dの蛍光を発する細胞の割合について調べた。その結果、視野全体(42細胞)の中で1個の細胞がD/Aの蛍光を発していることが観察され、IL-4 mRNAが特異的に蛍光標識された細胞が存在することが確認された(図80)。この結果から、TH1優位なCD4陽性細胞群においてTH2が2%程度の割合で残っていることが示唆された。 【0170】(27)TH1優位なヘルパーT細胞群からのフローサイトメトリーによるTH2の選択的分離(21)と同様にIL-4 mRNAが蛍光標識されることによって生じる(IL-4 mRNAを保有する細胞としない細胞間の)蛍光強度の格差を利用して、TH2を選択的に分離することを以下のように試みた。 【0171】(26)で得られたIL-4 mRNAが蛍光標識された細胞が含まれる細胞群の懸濁液を、フローサイトメトリー用実験装置(FACSCalibur)に注入した。(19)と同様に、細胞にドナー色素(Bodipy)の励起光を照射したときに、アクセプター(Cy5標識体)から発せられる相対的蛍光強度(FL3-Height)をBodipyによる相対的蛍光強度(FL1-Height)とともにドットプロットとして検出した。このブロットの中でFL3-Heightが高い値をとる細胞集団を選択し、R2として領域指定した(図83)。一方、ヒトリンパ球系細胞としての細胞のサイズ(FSC-Height;前方散乱光)ならびに内部構造の複雑さ(SSC-Height;側方散乱光)を有する集団を選択し、R1として領域指定した(図82)。前記R2の条件を満たし、かつR1の条件も満たす集団をセルソーテイング機能を利用して選択的に分取した。分取した細胞集団において目的通りに蛍光標識された細胞が存在することを確認するために、再び細胞をFACSCaliburに注入し、同様にドットの分布を調べた結果、セルソーテイング機能によりソートアウトされた細胞の大多数はゲートR1ならびにR2の条件を満たす集団であり(図84および85)、IL-4 mRNAが蛍光標識された細胞は充分なFRET蛍光を発する細胞群として分取されたことが確認された。 【0172】次に、ソートアウトされた細胞群の一部を(20)と同様に蛍光顕微鏡で観察した。その結果、ソートアウトされた細胞群は視野全体の細胞総てがD/A(FRETによる蛍光)を発しており、IL-4 mRNAが蛍光標識されていることが観察された(図81)。この結果と、(23)のフローサイトメトリーにかける前の結果をIL-4 mRNAが蛍光標識された細胞の存在比率を指標に比較したところ、フローサイトメトリーに基づくセルソーテイングによってTH2が選択的に分離されたことが示唆された。 【0173】(28)In situ Hybridization法によるフローサイトメトリー前の細胞集団中のIL-2 mRNAもしくはIL-4 mRNA保有細胞の検出フローサイトメトリー(セルソーターで分離する)前の細胞の一部をカバーガラスチャンバー(Lab-Tek II Chambered Coverglass#155409、NUNC社)に移し、4% パラフォルムアルデヒド/PBS (pH7.4) で室温で30分間細胞を固定し、以下に記載したFISH(Fluorescent in situ Hybridization)法により視野全体の細胞におけるIL-2 mRNAもしくはIL-4 mRNAを保有する細胞(IL-2 mRNA (+)もしくはIL-4 mRNA (+))の存在割合を求めた。 【0174】第一に、固定された前記細胞の細胞内IL-2 mRNAを検出するのに必要なジゴキシゲニン(以下DIG)標識IL-2リボプローブを、DIG RNA Labeling Kit(Boehringer Mannheim)を用いて同キット専用のプロトコールに従って合成した。(2A)で記載した方法でヒトIL-2 RNA合成用に作成された組換体プラスミド(pTCGF#2)10 μgをEcoRI消化により完全に線状化し、得られたDNA溶液中の線状DNAを、phenol/chloroform抽出による蛋白質変性除去後にエタノール沈殿により精製し、リボプローブ合成のための鋳型とした。同鋳型DNA(5 μg)と1.8 mM ATP、0.9 mM CTP、0.7 mM GTP、1.1 mM UTP、0.58 mM UTP(DIG標識体)をT7 RNA polymerase存在下で混和し、37℃で2時間インキュベートした後、DNase I溶液を加え10分間反応させ、鋳型DNAを破壊した。同反応溶液に1/10倍容の5 Mの酢酸ナトリウムと1倍容のイソプロパノールを加え、15,000×gで15分間遠心することにより沈殿物として回収された合成RNAは、RNase freeの滅菌蒸留水に溶解された。 【0175】第二に、固定された前記細胞の細胞内IL-4 mRNAを検出するのに必要なDIG標識IL-4リボプローブを、IL-2の場合と同様にDIG RNA Labeling Kit(Boehringer Mannheim)を用いて次の方法で合成した。(2B)で記載した方法でヒトIL-4 RNA合成用に作成された組換体プラスミド(phIL-4#9)をSma Iで完全に消化して線状化し、得られたDNA溶液中の線状DNAをphenol/chloroformで処理後、エタノール沈殿により精製し、リボプローブ作成のための鋳型とした。同鋳型DNA(5 μg)と1.2 mM ATP、1.0 mM CTP、1.1 mM GTP、0.8 mM UTP、0.5 mM UTP(DIG標識体)をT7 RNA polymerase存在下で混和し、37℃で2時間インキュベートした後、DNase I溶液を加え10分間反応させ、鋳型DNAを破壊した。同反応溶液に1/10倍容の5 Mの酢酸ナトリウムと1倍容のイソプロパノールを加え、15,000×gで15分間の遠心により沈殿物として回収された合成RNAは、RNase freeの滅菌蒸留水に溶解された。 【0176】第三に、上記の通り得られた全長のIL-2もしくはIL-4のリボプローブを直接ハイブリダイゼーションに用いると、未反応のリボプローブが細胞内に止まることに起因する高バックグラウンド(ノイズ)が予想されたため、(13)と同様に、次の方法により細かく断片化されたものをハイブリダイゼーション実験に用いた。10 μgのIL-2もしくはIL-4リボプローブを100 μlのアルカリ変性用溶液(42 mM NaHCO3, 63 mM Na2CO3, 5 mM DTT)に溶かし、60℃で10-15分間インキュベートした後に、10 μlの3 M 酢酸ナトリウムとともに350 μlのEtOHを加え、リボプローブをエタノール沈殿させた。-20℃で30分間放置後、16 krpmで20分間冷却遠心し、得られた沈殿を70% エタノールで洗い、乾燥させた後、50 μlのRNase free滅菌蒸留水で溶解し、アルカリ変性IL-2もしくはIL-4リボプローブ溶液とした。 【0177】チャンバーの底面に固定された細胞をPBS (-)で3回洗い、0.1% Triton X-100/PBS溶液で室温で5分間処理して細胞膜に物質透過性を付与した後にPBS (-)で3回洗い、0.2 N HClで室温で10分間処理した。単層細胞をPBS (-)で洗った後、1μg/ml Proteinase K/PBS溶液で5分間37℃でインキュベートした。単層細胞をPBS (-)で洗った後、4% パラフォルムアルデヒド/PBS (pH7.4)で30分間再度固定した。2 mg/ml グリシン/PBSで2回洗い(15分/回)、50% 脱イオン済フォルムアミド/2×SSC溶液(以下Soln. A)で30分間処理し、ハイブリダイゼーション溶液(50% 脱イオン処理済フォルムアミド、5×denhardt、2×SSC、アルカリ変性処理済IL-2もしくはIL-4リボプローブ(1 μg/ml))を調製し、90℃で10分間変性処理後氷冷し、同溶液100 μlをチャンバーに添加し、45℃で一晩反応させた。 【0178】ハイブリダイゼーション後の単層細胞をSoln. Aで5分間45℃で洗い、続いてSoln. B(10 mM Tris・HCl (pH8.5), 500 mM NaCl)で2回洗い(5分/回)、20 mg/ml RNase A/Soln. B(90℃で10分間熱処理したもの)で37℃20分間処理した。 Soln. A、Soln. C(50% 脱イオン処理済フォルムアミド/1×SSC)の順で45℃で各30分間、さらにSoln. Cで室温で20分間洗った。さらに、Buffer 1(100 mM マレイン酸、150 mM NaCl(pH7.5))で洗った(5分×2回)後、Buffer 2(1%Blocking Reagent (Boehringer Mannheim) in Buffer I)で室温で20分間ブロッキングを行った。 Buffer 1で2回洗った後、 FITC標識抗DIG抗体(Fab、Buffer 2で100倍希釈したもの、蛋白質濃度にして〜1 μg/ml)を単層細胞に加え30分間以上インキュベートし、PBS (-)で3回洗浄後蛍光顕微鏡観察し、視野全体の細胞に対するIL-2 mRNAもしくはIL-4 mRNAを保有する細胞(TH1もしくはTH2)の存在割合を求めた。 【0179】その結果、TH1を選択的に分離するためにIL-2 mRNAを蛍光標識した(18)の実験で使用した細胞群において、24細胞中5個のIL-2 mRNA、43細胞中3個のIL-4 mRNAを保有する細胞が検出された(図86)。この結果においてIL-2 mRNA保有細胞の存在比率(20.8%)は(18)で記載した蛍光顕微鏡観察結果(12.0%)をかなり上回ったが、この原因として(18)の実験では顕微鏡視野下の総てのTH1に均一に蛍光プローブが導入されなかったことが考えられた。 【0180】一方、TH2を選択的に分離するためにIL-4 mRNAを蛍光標識した(20)の実験で使用した細胞群において、28細胞中6個のIL-2 mRNA、42細胞中3個のIL-4 mRNAを保有する細胞が検出された(図88)。この結果におけるIL-4 mRNA保有細胞の存在比率(7.1%)は(20)で記載した蛍光顕微鏡観察結果(4.9%)を僅かに上回る程度であった。 【0181】さらに、TH2優位な細胞群からTH1を選択的に分離するためにIL-2 mRNAを蛍光標識した(23)の実験で使用した細胞群において、28細胞中2個、別の視野では35細胞中3個のIL-2 mRNA、41細胞中8個、別の視野では42細胞中9個のIL-4 mRNAを保有する細胞が検出された(図90)。この結果においてIL-2mRNA保有細胞の存在比率(7.9%)は(23)で記載した蛍光顕微鏡観察結果(4.3%)を上回ったが、この原因も(23)の実験で総てのTH1に均一に蛍光プローブが導入されなかったことが考えられた。 【0182】また、TH1優位な細胞群からTH2を選択的に分離するためにIL-4 mRNAを蛍光標識した(26)の実験で使用した細胞群において、24細胞中9個、別の視野では29細胞中11個のIL-2 mRNA、48細胞中1個、別の視野では41細胞中1個のIL-4 mRNAを保有する細胞が検出された(図92)。この結果においてIL-4mRNA保有細胞の存在比率(2.2%)は(26)で記載した蛍光顕微鏡観察結果(2.4%)と同等であった。このようにIL-4 mRNAについて蛍光顕微鏡観察結果とFISHの結果の整合性が高いことは、IL-2と比較して高濃度のIL-4蛍光プローブ存在下で細胞に電気パルスを加えたため比較的均一にプローブがTH2に導入された可能性が考えられた。 【0183】(29)In situ Hybridization法によるフローサイトメトリー後の(セルソーターによって選択的に分離された)細胞集団中のIL-2、γ-IF、TNF-β、 IL-4、IL-5、IL-10 mRNA保有細胞の検出(24)−(27)で取得したフローサイトメトリー後の(セルソーターによって選択的に分離された)細胞の一部をカバーガラスチャンバー(NUNC社製)に移し、 4% パラフォルムアルデヒド/PBS (pH7.4) で室温で30分間細胞を固定し、(28)で詳細に記載したFISH法により視野全体の細胞におけるTH1型のサイトカインであるIL-2、γ-IF、TNF-βならびにTH2型のサイトカインである IL-4、IL-5、IL-10のmRNAを保有する細胞(IL-2 mRNA (+)、γ-IF mRNA (+)、TNF-βmRNA (+)、 IL-4 mRNA (+)、IL-5 mRNA (+)、IL-10 mRNA (+) )の存在割合を求めた。以上のサイトカインの中で、IL-2およびIL-4については、アルカリ変性されたリボプローブを既に(28)で取得済みであるため、固定された細胞におけるIL-2およびIL-4以外の上記サイトカインのmRNAを検出するのに必要なリボプローブ(DIG標識体)を、DIG RNA Labeling Kit(Boehringer Mannheim)を用いて同キット専用のプロトコールに従って合成した。 【0184】第一に、γ-IFに関しては、ヒトγ-IF cDNAを有するプラスミドDNA、pPLc28-HIIF52を、28℃で培養した同プラスミド保有大腸菌株(ATCC#39278)の培養液50 mlからPlasmid Midi Kit(QIAGEN)を用いて抽出・精製した。同プラスミドを制限酵素BamHIおよびClaIで消化し、切り出されたγ-IF cDNA断片を、RNA合成用ベクターpBluescript KS(+)のAccIおよびBamHI消化部位にライゲーションキット(タカラ)を用いて連結した。得られた組換体プラスミドを大腸菌JM109株のコンピテントセル(タカラ)に導入し、得られた同大腸菌の形質転換体を培養し、100 mlの同培養液からPlasmid Midi Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを抽出・精製した。得られた組換体プラスミド(phγ-IF#1)を制限酵素KpnIで消化し、得られたDNA溶液中の線状DNAをphenol/chloroformで処理後、エタノール沈殿により精製し、リボプローブ作成のための鋳型とした。同鋳型DNA(5 μg)と1.3 mM ATP、0.7 mM CTP、0.8 mM GTP、0.8 mM UTP、0.43 mM UTP(DIG標識体)をT7 RNA polymerase存在下で混和し、37℃で7時間インキュベートした後、DNase I溶液を加え10分間反応させ、鋳型DNAを破壊した。同反応溶液に1/10倍容の5Mの酢酸ナトリウムと1倍容のイソプロパノールを加え、15,000×gで15分間の遠心により沈殿物として回収された合成RNAは、RNase freeの滅菌蒸留水に溶解された。 【0185】第二に、TNF-βに関しては、ヒトTNF-β cDNAを有するプラスミドDNAを保有する大腸菌株HILBI37(ATCC#104607)の培養液50 mlからPlasmid Midi Kit(QIAGEN)を用いて抽出・精製した。同プラスミドを制限酵素BamHIで消化し、得られたDNA溶液中の線状DNAをphenol/chloroformで処理後、エタノール沈殿により精製し、リボプローブ作成のための鋳型とした。同鋳型DNA(5 μg)と0.7 mM ATP、1.4 mM CTP、1.1 mM GTP、0.4 mM UTP、0.24 mM UTP(DIG標識体)をT7 RNA polymerase存在下で混和し、37℃で6時間インキュベートした後、DNase I溶液を加え10分間反応させ、鋳型DNAを破壊した。同反応溶液に1/10倍容の5 Mの酢酸ナトリウムと1倍容のイソプロパノールを加え、15,000×gで15分間の遠心により沈殿物として回収された合成RNAは、RNase freeの滅菌蒸留水に溶解された。 【0186】第三に、IL-5に関しては、ヒトIL-5 cDNAを有するプラスミドDNA、phIL-5-115.1(ATCC#59395)2 μgの凍結乾燥粉末を20 μlの滅菌蒸留水に溶解後、同プラスミド1 ngを大腸菌JM109株のコンピテントセル(タカラ)に導入し、得られた同大腸菌の形質転換体を培養し、50 mlの同培養液からPlasmid Midi Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを抽出・精製した。同プラスミドを制限酵素BamHIで消化し、切り出されたIL-5 cDNA断片を、RNA合成用ベクターpBluescript KS(+)のBamHI消化部位にライゲーションキット(タカラ)を用いて連結した。 【0187】得られた組換体プラスミドを大腸菌JM109株のコンピテントセル(タカラ)に導入し、得られた同大腸菌の形質転換体を培養し、100 mlの同培養液からPlasmid Midi Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを抽出・精製した。得られた組換体プラスミド(phIL-5#8)を制限酵素Not Iで消化し、得られたDNA溶液中の線状DNAをphenol/chloroformで処理後、エタノール沈殿により精製し、リボプローブ作成のための鋳型とした。同鋳型DNA(5 μg)と1.3 mM ATP、0.7 mM CTP、0.8mM GTP、0.8 mM UTP、0.42 mM UTP(DIG標識体)をT3 RNA polymerase存在下で混和し、37℃で6時間インキュベートした後、DNase I溶液を加え10分間反応させ、鋳型DNAを破壊した。同反応溶液に1/10倍容の5 Mの酢酸ナトリウムと1倍容のイソプロパノールを加え、15,000×gで15分間の遠心により沈殿物として回収された合成RNAは、RNase freeの滅菌蒸留水に溶解された。 【0188】第四に、IL-10に関しては、ヒトIL-10 cDNAを有するプラスミドDNA、pH15Cを保有する大腸菌株(ATCC#104607)の培養液50 mlからPlasmid Midi Kit(QIAGEN)を用いて抽出・精製した。得られたプラスミドを制限酵素BamHIで消化し、切り出されたIL-10 cDNA断片を、RNA合成用ベクターpBluescript KS(+)のBamHI消化部位にライゲーションキット(タカラ)を用いて連結した。得られた組換体プラスミドを大腸菌JM109株のコンピテントセル(タカラ)に導入し、得られた同大腸菌の形質転換体を培養し、50 mlの同培養液からPlasmid Midi Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを抽出・精製した。 【0189】得られた組換体プラスミド(phIL-10#10)を制限酵素Sma Iで消化し、得られたDNA溶液中の線状DNAをphenol/chloroformで処理後、エタノール沈殿により精製し、リボプローブ作成のための鋳型とした。同鋳型DNA(5 μg)と1.1 mM ATP、0.9 mM CTP、0.9 mM GTP、0.6 mM UTP、0.50 mM UTP(DIG標識体)をT7 RNA polymerase存在下で混和し、37℃で6時間インキュベートした後、DNase I溶液を加え10分間反応させ、鋳型DNAを破壊した。同反応溶液に1/10倍容の5 Mの酢酸ナトリウムと1倍容のイソプロパノールを加え、15,000×gで15分間の遠心により沈殿物として回収された合成RNAは、RNase freeの滅菌蒸留水に溶解された。 【0190】以上で取得したγ-IF、TNF-β、IL-5、IL-10の全長リボプローブについても、IL-2、IL-4の場合と同様に細かく断片化するために、10 μgのリボプローブを100 μlの前記アルカリ変性用溶液に溶かし、60℃で10-15分間インキュベートした後に、10 μlの3 M 酢酸ナトリウムとともに350 μlのエタノールを加え、リボプローブを沈殿させた。-20℃で30分間放置後、16 krpmで20分間冷却遠心し、得られた沈殿を70% エタノールで洗い、乾燥させた後、50 μlのRNase free滅菌蒸留水で溶解し、アルカリ変性γ-IF、TNF-β、IL-5、IL-10リボプローブ溶液を調製した。チャンバーの底面に固定された細胞をPBS (-)で3回洗い、0.1% Triton X-100/PBS溶液で室温で5分間処理して細胞膜に物質透過性を付与した後にPBS(-)で3回洗い、0.2 N HClで室温で10分間処理した。 【0191】単層細胞をPBS (-)で洗った後、1 μg/ml Proteinase K/PBS溶液で5分間37℃でインキュベートした。単層細胞をPBS (-)で洗った後、4% パラフォルムアルデヒド/PBS (pH7.4)で30分間再度固定した。2 mg/ml グリシン/PBSで2回洗い(15分/回)、50% 脱イオン済フォルムアミド/2×SSC溶液(以下Soln. A)で30分間処理し、ハイブリダイゼーション溶液(50% 脱イオン処理済フォルムアミド、5×denhardt、2×SSC、アルカリ変性処理済IL-2、γ-IF、TNF-β、IL-4、IL-5、IL-10リボプローブ(1 μg/ml))を調製し、90℃10分間変性処理後氷冷し、同溶液100 μlをチャンバーに添加し、45℃で一晩反応させた。 【0192】ハイブリダイゼーション後の単層細胞をSoln. Aで5分間45℃で洗い、続いてSoln. B(10 mM Tris・HCl (pH8.5), 500 mM NaCl)で2回洗い(5分/回)、20 mg/ml RNase A/Soln. B(90℃で10分間熱処理したもの)で37℃で20分間処理した。 Soln. A、Soln. C(50% 脱イオン処理済フォルムアミド/1×SSC)の順で45℃で各30分間、さらにSoln. Cで室温で20分間洗った。さらに、Buffer 1(100mM マレイン酸、150 mM NaCl(pH7.5))で洗った(5分×2回)後、Buffer 2(1% Blocking Reagent (Boehringer Mannheim) in Buffer I)で室温で20分間ブロッキングを行った。 Buffer 1で2回洗った後、 FITC標識抗DIG抗体(Fab、Buffer 2で100倍希釈したもの、蛋白質濃度にして〜1 μg/ml)を単層細胞に加え30分間以上インキュベートし、PBS (-)で3回洗浄後蛍光顕微鏡観察し、視野全体の細胞に対するIL-2、γ-IF、TNF-β、IL-4、IL-5、IL-10 mRNAを保有する細胞の存在割合を求め、セルソーターで分離された細胞のタイプ(TH1もしくはTH2)を同定した。 【0193】その結果、(19)と(24)でセルソーターにより分離された細胞集団はIL-2、γ-IF、TNF-βのmRNAについて陽性、 IL-4、IL-5、IL-10については陰性であり(図87および91)、調べた範囲内で総ての細胞がTH1特有のサイトカイン産生細胞であることが示された。一方、(21)と(27)でセルソーターにより分離された細胞集団はIL-2、γ-IF、TNF-βのmRNAについては陰性、反対にIL-4、IL-5、IL-10について陽性であり(図89および93)、TH2特有のサイトカイン産生細胞であることが判明した。 【0194】(30)特定の遺伝子を発現する生きたTH1もしくはTH2の蛍光強度の格差を利用した選択的分離法(24)−(29)の実験結果を整理し、IL-2もしくはIL-4 mRNAが蛍光標識されることに基づく蛍光強度の格差を利用した、換言すれば、これらのmRNAをマーカーとして利用したTH1もしくはTH2の選択的分離実験を、(18)、(20)、(23)、(26)の各実験結果毎に整理し、選択的分離の成績として示した(表9)。 【0195】 【表9】
【0196】(18)において、12%(図60、生細胞の蛍光観察結果)もしくは20%(図86、FISH実験の結果)程度しか存在しなかったIL-2発現細胞(TH1)は、(19)で記載されたようにこの蛍光強度の格差を利用した分離法によって100%に濃縮された。フローサイトメトリーにかける前の細胞集団におけるIL-4発現細胞(TH2)は(20)で記載されたように、4.9%(図68、生細胞の蛍光観察結果)もしくは7.1%(図88、FISH実験の結果)程度しか存在しなかった。しかし、IL-4 mRNAをマーカーに利用した(21)の選択的分離法によって取得された細胞は総てIL-4 mRNAを保有していた。 【0197】さらに、TH2が過剰に活性化された免疫疾患を想定してTH1とTH2の存在比率を人為的にTH2に偏らせた(バランスを破綻させた)(23)において、4.3%(図74、生細胞の蛍光観察結果)もしくは7.9%(図90、FISH実験の結果)と(18)と比較して顕著に減少したTH1が、フローサイトメトリーによる選択的分離法によって100%の純度で取得されることが(24)で示された。また、(23)とは反対に、TH1が圧倒的に優位となった免疫疾患を想定してTH1とTH2のバランスを人為的にTH1に偏らせた(26)において、2.4%(図80、生細胞の蛍光観察結果)もしくは2.3%(図92、FISH実験の結果)と(25)と比較してさらに減少したTH2が、前記選択的分離法によって(27)では100%の純度で取得された。 【0198】以上の結果についてさらに確認するために前記(29)で実施したTH1もしくはTH2特有のサイトカインのmRNAを検出してタイプ解析の結果から、(18)と(23)の細胞から(19)と(24)でセルソーターにより分離された細胞集団は総てがTH1であり、(20)と(26)の細胞から(21)と(27)で選択的に分離された細胞集団はTH2であることが証明された。 【0199】これら総ての結果を総合すると、TH1もしくはTH2特有のサイトカインであるそれぞれIL-2もしくはIL-4のmRNAをマーカーとして利用した前記分離方法によって、TH1もしくはTH2が、これら両者を含む細胞集団から100%の純度で選択的に分離されることが結論された。 【0200】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、細胞にマーカーとして使用可能な細胞表面分子が存在しない場合や、存在しても細胞間で区別ができない場合、さらにはマーカーとなるべき分子が細胞外液中に遊離してしまう場合であっても、目的とする細胞、すなわち特定の遺伝子を発現した細胞を生きたままの状態で選択的に分離取得することが可能な分離方法を提供することが可能となる。 【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Laboratory of Molecular Biophotonics<120> Method for selectively separating live cells that have expressed a specific gene<130> MBP-179<140><141><160> 20<170> PatentIn Ver. 2.1<210> 1<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 1gtaaaactta aatgt 15 <210> 2<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 2ggccttcttg ggcat 15 <210> 3<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 3tttgggattc ttgta 15 <210> 4<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 4gagcatcctg gtgag 15 <210> 5<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 5gcaagactta gtgca 15 <210> 6<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 6ctgtttgtga caagt 15 <210> 7<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 7ggtttgagtt cttct 15 <210> 8<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 8agcacttcct ccaga 15 <210> 9<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 9cctgggtctt aagtg 15 <210> 10<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 10attgctgatt aagtc 15 <210> 11<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 11cagttgggag gtgag 15 <210> 12<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 12gaacagaggg ggaag 15 <210> 13<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 13cgtggacaaa gttgc 15 <210> 14<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 14tatcgcactt gtgtc 15 <210> 15<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 15ctgtgaggct gttca 15 <210> 16<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 16acagagtctt ctgct 15 <210> 17<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 17agccctgcag aaggt 15 <210> 18<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 18ccggagcaca gtcgc 15 <210> 19<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 19ccgtttcagg aatcg 15 <210> 20<211> 15<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Probe<400> 20gaggttcctg tcgag 15 |
| 【出願人】 |
【識別番号】595047385 【氏名又は名称】株式会社分子バイオホトニクス研究所
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| 【出願日】 |
平成12年4月28日(2000.4.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100088155 【弁理士】 【氏名又は名称】長谷川 芳樹 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−286285(P2001−286285A) |
| 【公開日】 |
平成13年10月16日(2001.10.16) |
| 【出願番号】 |
特願2000−130793(P2000−130793) |
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