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【発明の名称】 微生物固定化担体
【発明者】 【氏名】奥村 親弘

【要約】 【課題】微生物の生育に適して、その固定化量を多く保有でき、通気抵抗を小さくしてガスの高速処理を可能にし、そして、長期に安定して物理化学的に優れ、また、表面形状を保つ。

【解決手段】担体として、アセタール化度75モル%以上のポリビニルアセタール樹脂で平均孔径および平均孔口径300〜1000μmの多数の連通孔を有する一辺5〜20mmの粒に作られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アセタール化度75モル%以上のポリビニルアセタール樹脂で平均孔径および平均孔口径300〜1000μmの多数の連通孔を有する一辺5〜20mmの粒に作られるところの微生物固定化担体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の関係する分野】この発明は、し尿、下水、汚泥などの処理施設で発生する悪臭ガスを微生物学的に処理するところの微生物脱臭装置に使用される微生物固定化担体に関する。
【0002】
【背景技術】通常、これらの処理施設で利用される微生物脱臭装置は、微生物を高密度に繁殖させて住まわせるところの無数の担体を充填した微生物担体層を用いるのが一般的である。この種の微生物脱臭は、好気性微生物による悪臭ガスの酸化分解反応によって行われる。その性能を向上させるためには、第一義に微生物担体の選定によるところが大きい。
【0003】
【発明の課題】この発明の課題は、微生物の生育に適してその固定化量を多く保有でき、生物脱臭システムとして多量のガスを効率よく処理するために通気抵抗を小さくして高速処理を可能にし、そして、長期に安定して物理化学的に優れ、また表面形状を有するところの微生物固定化担体の提供にある。
【0004】
【課題に相応する手段およびそれの作用】この発明は、アセタール化度75モル%以上のポリビニルアセタール樹脂で平均孔径および平均孔口径300〜1000μmの多数の連通孔を有する一辺5〜20mmの粒状の担体に作られ、そして、高いアセタール化によってそのポリビニルアセタール樹脂を硬化させて剛性を高め、積層高さをより大きくでき、しかも、通気抵抗を低く保つ。
【0005】その担体は、ポリビニルアルコール(PVA)と気孔形成剤との混合液に酸性アルデヒド溶液を加えてアセタール化し、そして、その気孔形成剤を取り除いて得られるアセタール成型体を適宜の大きさに裁断されるところのその多数の連通孔を有するスポンジ状粒に作られる。
【0006】そのポリビニルアルコール(PVA)は、菌との親和性に優れ、また、菌に侵食されない上に対酸、対アルカリにも優れている。そのアセタール化は、そのポリビニルアルコール(PVA)を硬化させる。生物脱臭塔内に積層されるその担体には、その担体の軟弱は微生物の生育に供給される水分の重みも加えて、それ自身の変形でガス流通径路を塞ぎ、そして、通気抵抗を大きくする。そのアセタール化によるそのポリビニルアルコール(PVA)の硬化は、その担体に剛性を高め、そして、積層高さをより大きくとることができてその担体に通気抵抗を実質的に変えない。そして、そのアセタール化は、その担体の積層高さが2mまでは75モル%以上、3m以上では80モル%以上が好ましい。
【0007】担体の形状および大きさに言及すれば、形状が小さいほどその比表面積は大きくなるが、その担体の積層を考えれば、圧力損失が増大され、また、長期使用による微生物死がいなどの残滓で目詰まりが生じる。また、その形状の大きさの増大は、比表面積の減少を意味する。連通孔について言及すれば、それ自体は、担体外表面積と相まって微生物がその連通孔内部まで微生物固定化量を多く保有でき、その上に、その連通孔の大きさは、生物活性化および悪臭ガス捕獲のための保水性と、微生物死がいが残滓の排除のために水流動性とを良好にする適宜の大きさを備える必要がある。そのように、その担体の形状、大きさ、そして、その連通孔の大きさ、孔数の条件は、この発明の微生物固定化担体の必須の条件である。そして、それらの最適条件を決定するために次に述べる実験を行った。
【0008】
【具体例の説明】以下、この発明の微生物固定化担体の特定された具体例について、図面を参照して説明する。図1は、この発明の微生物固定化担体を具体的に特定する実験が下水処理場10の微生物脱臭装置20で行われたところを示している。その微生物脱臭装置20は、塔内に微生物担体層24を備えてその微生物担体層24で塔底22と塔頂23とに区画され、そして、ガス入口室25および水溜め27にその塔底22を、ガス出口室26にその塔頂23をそれぞれ用いる脱臭塔21、フィード・ポンプ29で散水管30からその微生物担体層24に水を供給してその微生物担体層24を加湿する散水装置28、その脱臭塔21のそのガス入口室25に下水処理槽11を接続する供給ダクト31、その脱臭塔21のそのガス出口室26に接続される排出ダクト32、および送風機33などで組み立てられ、そして、その実験は、用意された種々の微生物固定化担体毎に替えてその脱臭塔21のその微生物担体層24に充填して行った。
【0009】まず、実験に必要な微生物固定化担体は、その前述された製造法により成型され、そして、その大きさについては、裁断により、一辺が3、5、10、15、20および25mmの各立方体形状に用意した。また、連通孔については、平均気孔率70〜85%とし、そして、その連通孔の平均孔径および平均孔口径を50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、および1200μmの各種を用意した。さらに、その下水処理場10では、対象とする測定悪臭成分はその成分の80%以上をしめる硫化水素(H2S)とした。さらには、実験条件として、悪臭源硫化水素濃度50ppm、脱臭装置の運転として空塔速度Lv=0.2m/sec、散水量担体1m3当り=50〜200l/hを設定し、そして、1年連続運転後の結果を表1に示す。
【0010】
【表1】

【0011】まず、実験の第一段階として、通気抵抗、すなわち圧力損失が小さく、また経年変化の少ない形状を選定した。そして、実験のための担体は、その前述された3〜25mm立方体の6種類の大きさ、そして、連通孔の大きさは、100、300、および500μmの3種類を用意して実験したが、その連通孔の大きさ別では特に有意差は見られないので、その連通孔の大きさ500μmを代表例として実験当初と一年運転経過後の変化とを図2にグラフで示した。
【0012】その実験から、形状の大きいほど圧力損失は小さい。これはガスの流通する自由空間がより大きく構成されているに他ならない。また、5mm立方体以下においては、一年経過後の圧力損失は極端に増大している。これは微生物の残滓などにより小さい自由空間がさらに制限された結果と推察される(△A参照)。この圧力損失試験は、複数回行ったが、同様の結果が得られている。ただ、3mm立方体においては、一年間連続運転経過後で図2のグラフ中△Bに示すように急激に圧力損失が減少する傾向も見られる。これは、微生物の残滓による自由空間がさらに制限された結果、その担体の正常な積載状態が破壊されてその内部に大きいバイパス経路を構成したと推察される。勿論、このようなバイパス経路においては、悪臭は処理できずに外部にそのまま放出されることになる。
【0013】その実験の第二段階として、その担体の大きさとその連通孔のその平均孔径および平均孔口径の大きさとの相関関係を脱臭除去率として求めた。また、第一段階実験の結果より3mm立方体のその担体は実用的でないので、この実験では除外した。表1および図3にその担体の大きさとその連通孔の大きさとの関係を一年間連続運転後の脱臭除去率として示している。ここで、その除去率とは、入口の原臭が担体によりどの程度の割合で処理されたかを表すもので除去率=(入口濃度−処理ガス濃度)/入口濃度×100で表している。また、表1に記載された入口濃度にばらつきが見られるが、これは、現実に稼動しているところのその下水処理場10に発生する原臭濃度が時々刻々変化していることを理解していただきたい。図3に示したグラフは、表1の実験データをグラフ化したものである。
【0014】実験から、その担体の大きさ5〜20mm立方体、その連通孔の大きさ300〜1000μmにおいて脱臭除去率の大なることが判別される。また、図3に示されたグラフから、その担体の大きさ5mm立方体の除去率が、それ自身比表面積が大きいにもかかわらず小さい結果となっている。これは、その担体の積重ねによってその担体相互間の自由空間が狭すぎて各所で積層が破壊され、そして、小さいバイパス経路が形成されていると判断される。ここでは、結果は示されてないが、別の実験で空塔速度Lv≦0.1m/secによれば5mm立方体のその担体の除去率は格段に向上することが判明している。そして、自由空間の大きさと空塔速度との間に適宜な相互関係があると推察される。
【0015】特に、その連通孔について言及すれば、この実験の全ての担体大きさにおいて、平均孔径および平均孔口径300〜1000μmの間で除去率性能がピークに達し、そして、それ以下およびそれ以上で除去率は低下している。これは、連通孔の小さい担体において保水性は優れている反面、その連通孔を通じてその担体内部への水の流動性およびガスの流動性が芳しくなく、脱臭作用は担体の表面でのみ行われていると考えられる。一方、連通孔の大きい担体は、連通孔を通じて担体内部まで水の流動性およびガスの流動性に優れているが、保水性は劣る傾向にあるので、微生物活性の効率が低下すると考えられる。担体内部への水・ガス流動性と、生物活性化のための保水性との兼合う最適正範囲の平均孔径および平均孔口径は、図3のグラフにより300〜1000μmと示される。また、下水処理場などの公共施設に設置される生物脱臭装置には、その脱臭除去率は一般的に90%以上、より好ましくは95%以上と要求されている。そのような要求も考慮してこの発明は、脱臭除去率95%以上に設定し、その担体の大きさを一辺5〜20mm、そして、その連通孔の平均孔径および平均孔口径を300〜1000μmに決定する。
【0016】先に図面を参照して説明されたところのこの発明の特定された具体例から明らかであるように、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって、この発明の内容は、その発明の性質(nature)および本質(substance)に由来し、そして、それらを内在させると客観的に認められる別の態様に容易に具体化される。勿論、この発明の内容は、その発明の課題に相応し(be commensurate with)、そして、その発明の成立に必須である。
【0017】
【発明の便益】上述から理解されるように、この発明の微生物固定化担体は、アセタール化度75モル%以上のポリビニルアセタール樹脂で平均孔径および平均孔口径300〜1000μmの多数の連通孔を有する一辺5〜20mmの粒に作られるので、この発明の微生物固定化担体では、微生物に適した生育が可能になってその微生物の固定化量が多く保有され、通気抵抗が小さく、高速処理が可能になって生物脱臭システムが多量の悪臭ガスを効率よく処理可能になり、そして、長期に安定して物理化学的に優れ、また、表面形状を有し、その結果、し尿、下水、汚泥などの処理施設にとって非常に有用で実用的である。
【出願人】 【識別番号】599161247
【氏名又は名称】株式会社奥村機械エンジニアリング
【出願日】 平成12年2月4日(2000.2.4)
【代理人】 【識別番号】100074321
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 治彌
【公開番号】 特開2001−286280(P2001−286280A)
【公開日】 平成13年10月16日(2001.10.16)
【出願番号】 特願2000−27087(P2000−27087)