| 【発明の名称】 |
共生菌、共生菌のスクリーニング方法、共生菌が人工的に導入された植物、植物から得られる種子、種子から生長した植物、交雑植物、植物体への共生菌の導入方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】今田 隆弘
【氏名】比留間 直也
【氏名】栗原 庸輔
【氏名】篠崎 聡
【氏名】島池 美帆
【氏名】水谷 純也
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| 【要約】 |
【課題】感染された共生菌による家畜毒性を示さず、しかも虫に対する強度な抵抗性を有する植物体を提供することを目的とする。
【解決手段】Neotyphodium属の糸状菌から成る共生菌であって、最終的な代謝物質がカノクラビンである糸状菌を植物体に人工的に導入し、感染・共生させるようにしたものである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】糸状菌から成る共生菌において、最終的な代謝物質がカノクラビンであることを特徴とする共生菌。 【請求項2】共生菌がNeotyphodium属である請求項1に記載の共生菌。 【請求項3】共生菌が生工研寄託番号FERM P−17672、FERM P−17673、FERM P−17674の内の何れか1種または2種以上の菌であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の共生菌。 【請求項4】カノクラビンをマーカーとして最終的な代謝物質がカノクラビンである共生菌をスクリーニングすることを特徴とする共生菌のスクリーニング方法。 【請求項5】カノクラビンをマーカーとして、薄層クロマトグラフィによってスクリーニングすることを特徴とする請求項4に記載の共生菌のスクリーニング方法。 【請求項6】カノクラビンをマーカーとして、液体クロマトグラフィによってスクリーニングすることを特徴とする請求項4に記載の共生菌のスクリーニング方法。 【請求項7】最終的な代謝物質がカノクラビンである共生菌を人工的に導入した植物。 【請求項8】共生菌がNeotyphodium属の糸状菌であることを特徴とする請求項7に記載の植物。 【請求項9】共生菌を人工的に導入した植物がイネ科植物であって、Agrostis、Festuca、Poa、Loliumの何れかであることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の植物。 【請求項10】請求項7〜請求項9の何れかの植物から採取された後代種子。 【請求項11】請求項10の種子から生育した植物。 【請求項12】請求項7〜請求項11の植物または種子を交配親とする交雑植物。 【請求項13】天然に存在する植物体から共生菌を分離する工程と、分離された共生菌を人工培養する工程と、培養された共生菌を対象とする植物に導入する工程と、導入された共生菌によって植物体に感染させる工程と、感染された共生菌中の最終代謝物質がカノクラビンである植物体を選抜する工程と、を具備する植物体への共生菌の導入方法。 【請求項14】天然に存在する植物体中から共生菌を分離する工程と、分離された共生菌を人工培養する工程と、培養された共生菌から最終代謝物質がカノクラビンである共生菌を選抜する工程と、選抜された共生菌を対象とする植物に導入する工程と、導入された共生菌によって植物体に感染させる工程と、を具備する植物体への共生菌の導入方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は共生菌、共生菌のスクリーニング方法、共生菌が人工的に導入された植物、植物から得られる種子、種子から生長した植物、交雑植物、植物体への共生菌の導入方法に係るものである。とくに本発明は、カノクラビンを最終的な代謝物質とする共生菌、すなわちエンドファイトおよびこのようなエンドファイトを牧草等に利用可能な植物に感染・共生させるようにした植物とその方法とに関するものである。 【0002】 【従来の技術】例えば特開平5−317092号公報には、ペレニアルライグラスから誘導した植物体、例えばカルス中にエンドファイトが共生しているかどうかを検定し、エンドファイトが共生していないことを確認したカルスにエンドファイトを導入した後に、植物体を再生するようにしたペレニアルライグラスへのエンドファイトの人工導入方法が開示されている。 【0003】ここで共生菌、すなわちエンドファイトは植物組織内に共生する糸状菌であって、このような糸状菌が感染した植物体は、共生していない個体に比べて害虫に対する抵抗性、病原菌に対する抵抗性、生育速度、暑さや乾燥等の環境ストレスに対する抵抗性が向上することが知られている。このことから、エンドファイトの人工的な感染が、植物に対する形質の改善につながる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】植物体に感染させて共生することが可能な共生菌は、図1に示すような代謝物質を順次生合成する。そしてこのような代謝の最終物質として、エルゴバリンやエルゴタミンのようなエルゴペプチンが生合成される。 【0005】またイネ科植物に感染共生するエンドファイトの場合には、感染した植物はエルゴットアルカロイドによって毒性を示すことが知られている。このような毒性は、畜産業の分野では家畜毒性として問題視されている。とくに牧草の分野において、ペレニアルライグラスやトールフェスク等のエンドファイトに感染した牧草が流通し、エルゴットアルカロイド等が原因とする中毒が報告されている。 【0006】ライグラススラッガーは1906年にニュージーランドで最初に報告され、ニュージーランドとオーストラリアのオセアニア2国で主に発生している。夏から秋にかけての乾燥の厳しさで枯れあがった状態のペレニアルライグラスにエンドファイトが感染している場合には、この牧草を羊等の家畜が摂食した場合にライグラススラッガーが発生する。 【0007】ライグラススラッガーの症状は、摂食した家畜が四肢を硬直させ、首や肩、さらには側腹部を震わせるようになる。すなわち一種の痙攣であって、この状態が続くとやがて家畜はその身体が衰弱していき、最悪の場合には動けなくなって餓死することがある。これまでにその原因物質が、ロリトレムアルカロイドであるロリトレムBであることが判明している。 【0008】フェスクトキシコーシスは、主にアメリカ合衆国南東部で発生した。トールフェスクを摂食した牛の体重が著しく減少し、牧草を十分に食べなくなったり、産乳量が低下したり、受胎率が低下する症状を現わすことが特徴である。その原因として、牛が摂食した牧草にエンドファイトが感染しており、エンドファイト感染個体からエルゴットアルカロイドであるエルゴバリンが特異的に検出された。そしてエルゴバリンがフェスクトキシコーシスを引起す原因物質であることが明らかになった。 【0009】このように植物、とくに牧草として用いられる植物にエンドファイトを感染させることによって、害虫に対する抵抗性、病原菌に対する抵抗性、生育速度、暑さや乾燥等の環境ストレスに対する抵抗性が向上する反面、家畜に対して有毒な物質をエンドファイトが生合成し、ライグラススラッガーやフェスクトキシコーシス等の原因になるという問題がある。 【0010】本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、植物の形質が改善されるとともに、牧草に応用した場合において有毒物質を生合成することがないようにした共生菌、このような共生菌を人工的に導入した植物、および共生菌を人工的に導入するようにした共生菌の導入方法を提供することを目的とする。 【0011】 【課題を解決するための手段】共生菌それ自体に関する発明は、糸状菌から成る共生菌において、最終的な代謝物質がカノクラビン(chanoclavine)である共生菌に関するものである。ここで共生菌がNeotyphodium属であってよい。また共生菌が生工研寄託番号FERM P−17672、FERM P−17673、FERM P−17674の内の何れか1種または2種以上の菌であってよい。 【0012】共生菌のスクリーニング方法に関する発明は、カノクラビンをマーカーとして最終的な代謝物質がカノクラビンである共生菌をスクリーニングするようにした共生菌のスクリーニング方法に関するものである。ここでカノクラビンをマーカーとして、薄層クロマトグラフィあるいは液体クロマトグラフィによってスクリーニングするようにしてよい。 【0013】植物に関する発明は、最終的な代謝物質がカノクラビンである共生菌を人工的に導入した植物に関するものである。ここで共生菌がNeotyphodium属の糸状菌であってよい。また共生菌を人工的に導入した植物がイネ科植物であって、Agrostis、Festuca、Poa、Loliumの何れかであってよい。またこのような植物から採取される後代種子であってよい。また後代種子から生育した植物であってよい。あるいはまた上記のような各種の植物または種子を交配親とする交雑植物であってよい。 【0014】共生菌の導入方法に関する一発明は、天然に存在する植物体から共生菌を分離する工程と、分離された共生菌を人工培養する工程と、培養された共生菌を対象とする植物に導入する工程と、導入された共生菌によって植物体に感染させる工程と、感染された共生菌中の最終代謝物質がカノクラビンである植物体を選抜する工程と、を具備する植物体への共生菌の導入方法に関するものである。 【0015】共生菌の導入方法に関する別の発明は、天然に存在する植物体中から共生菌を分離する工程と、分離された共生菌を人工培養する工程と、培養された共生菌から最終代謝物質がカノクラビンである共生菌を選抜する工程と、選抜された共生菌を対象とする植物に導入する工程と、導入された共生菌によって植物体に感染させる工程と、を具備する植物体への共生菌の導入方法に関するものである。 【0016】共生菌のアルカロイドの代謝は図1に示される。このような代謝の中間物質としてカノクラビン(chanoclavine)が存在する。カノクラビンは図2に示す化学構造を有するクラビンアルカロイドの一種で各種の薬理効果を示すことが知られている。そしてこのようなカノクラビンから、エルゴットアルカロイド等のエルゴバリンを生産する。ところが本願発明者等が探索した共生菌の中には、エルゴットアルカロイドを生合成せず、カノクラビンを最終的な代謝物質として生産するものが存在した。そして最終的な代謝物質がカノクラビンである共生菌は、エルゴバリン毒性を示さない。従ってこのような共生菌を植物に感染・共生せることによって、エルゴバリン毒性を示さない植物を提供できるようになる。 【0017】本願発明は、カノクラビンを最終的な代謝物質として生合成する共生菌に着目し、このような共生菌を植物体に導入前または導入後にスクリーニングし、植物体に感染させるようにしたものである。とくにイネ科植物に感染・共生する共生菌として、Neotyphodium属の糸状菌が挙げられる。 【0018】このような糸状菌を利用することによって、カノクラビンを最終代謝物質として生合成する糸状菌が植物に感染・共生されることになり、エルゴバリン毒性を示さないでしかも形質が改善された植物が作出される。またカノクラビンを最終代謝物質として生合成する糸状菌に感染した植物は、カノクラビンを生体内に大量に蓄積するために、またカノクラビンをマーカーとしてスクリーニングすることによって、エルゴバリンやロリトレムBを生合成しない菌を提供することが可能になる。 【0019】 【発明の実施の形態】本発明の第1の実施の形態は、カノクラビンを特異に生合成するエンドファイト感染個体の提供と、カノクラビンをマーカーとして、エルゴットアルカロイドおよびロリトレムBを生合成しないエンドファイトのスクリーニングとを含むものである。以下にこの実施の形態をその手順に従って説明する。 【0020】段階1 エンドファイトの存在の有無の検出と分離工程(1)エンドファイトの検出工程探索等によって採取した植物の葉および葉鞘部分の表皮を剥ぎ、アニリンブルー染色液に入れて染色し、組織内のエンドファイトを光学顕微鏡下において検出し、エンドファイトの存在の有無の確認を行なう。 【0021】(2)エンドファイトの分離・培養工程エンドファイトが確認された植物片を滅菌処理後に、エンドファイト分離培地へ置床し、数ヵ月間培養を行なう。 【0022】(3)エンドファイトの分類工程分離されたエンドファイトを宿主によって分類する。あるいはまた平板培養法を用いて環境条件を変化させた状態で培養を行ない、形態的な特徴で分類する。また液体培養を行ない、形態的な特徴で分類する。またスライドカルチャーを行ない、形態的な特徴で分類する。 【0023】段階2 エンドファイトの導入工程分離したエンドファイトを目的あるいは対象とするイネ科植物であるAgrostis、Festuca、Lolium、Poaの何れかの属の植物へ人工的に導入する。エンドファイトの導入方法は、植物体に直接接種する方法、植物体を一度カルス等の未分化の細胞にした後に接種し、カルスから植物体を再生させる方法とがある。これらはエンドファイトの導入の対象となる植物の種類に応じて任意に選択されてよい。 【0024】段階3 導入確認工程エンドファイトを導入した個体は、外植片を染色液にて染色し、光学顕微鏡下において顕鏡し、さらに酵素免疫測定法を用いてエンドファイトの存在あるいは感染の有無を検出する。 【0025】段階4 エンドファイト導入植物の検定工程(1)カノクラビンの検出工程エンドファイトを感染・共生させた植物体内で生合成されるアルカロイドを分析し、カノクラビン、エルゴットアルカロイドおよびロリトレムBの検出を行なう。 【0026】(2)カノクラビンの同定工程エンドファイトに感染共生させた植物体内で特異に大量に生合成されかつ蓄積されるアルカロイドがカノクラビンかどうかによって、最終的な代謝物質がカノクラビンであるかどうかの同定を行なう。 【0027】(3)耐虫性検定工程エンドファイトを感染・共生させた植物を用いて、害虫の対象となる昆虫を飼育し、人工的に食害試験を行なう。 【0028】(4)後代を用いた検定エンドファイトが存在する種子を採取し、発芽させてエンドファイトの存在を確認後、上述の各検定を行なう。 【0029】段階5 エンドファイトの人工培地上でのカノクラビンの生合成工程(1)エンドファイトの培養工程分離されたエンドファイト菌単体を平板培養法あるいは液体培養法を用いて環境条件を変化させた状態で培養を行ない、アルカロイドを生合成させる。 【0030】(2)培養物からカノクラビンを検出する工程菌単体を培養した培養物から生合成されたアルカロイドを分析し、カノクラビン、エルゴットアルカロイド、およびロリトレムBの検出を行なう。 【0031】段階6 カノクラビンをマーカーとするエンドファイトのスクリーニング工程菌単体もしくは植物体への感染・共生において、エルゴットアルカロイドおよびロリトレムBを生合成せず、カノクラビンのみを生合成しているエンドファイトをスクリーニングする。 【0032】次に本発明の別の実施の形態について説明する。上記の段階1〜段階6の実施の形態においては、エンドファイトに感染・共生させた植物体内で生合成されるアルカロイドを分析することによって、感染された共生菌がカノクラビンを最終代謝物質として生合成する共生菌であるかどうかの同定を行なうようにしているが、このようなステップに代えて、共生菌が植物に人工的に導入される前に、上記の同定を行なうようにする。 【0033】すなわちこの実施の形態においては、探索等によって採取した植物から分離されたエンドファイトを培養した後に、このエンドファイトのアルカロイドを分析し、カノクラビンを最終的な代謝物質とする共生菌であるかどうかの同定を行なうものである。すなわち上記第1の実施の形態とは、カノクラビンによる同定の工程の順序が植物体への導入の前に行なわれる点で相違する。なおその他の手順は上記第1の実施例と同じである。 【0034】 【実施例】実施例1(1)菌の分析植物体からのエンドファイトの分離は、葉および葉鞘部分を水洗後、70%エタノール水溶液に10秒間浸漬し、次いで2.5%次亜塩素酸トリウム水溶液に10分間浸漬した後に、滅菌水で3回洗滌し、エンドファイト分離培地上に置床し、25℃暗条件下で培養を行なった。 【0035】分離培地は、pH5.6に調整したPDA(ポテト デキストロース アガー)培地を121℃、15分間で滅菌後、ペニシリンとストレプトマイシンとをそれぞれ100mg/lの濃度になるように添加し、直径が9cmのプラスチックシャーレに20mlずつ分注して使用した。 【0036】置床後約3〜8週間後に、外植片から菌糸が分離され、形成されたコロニーを直径が5mmのコルクボーラで取出し、同PDA培地およびコーンミール寒天培地に移植して増殖を行なった。 【0037】(2)平板培養法による菌叢でのエンドファイトの分類同定PDA培地に移植した菌糸は、25℃の暗条件下において培養し、形成される菌叢を調査した。調査の結果、培地上での菌叢の表面は総て白色の綿状であって、菌叢の裏面も白色であった。増殖速度は比較的遅く、コロニーは1カ月で半径が約3cm程度にまでしか増殖しなかった。コーンミール寒天培地では、PDA培地と比べてさらに生育が著しく遅く、1カ月で半径が約1cm程度の増殖であった。コロニーの形態については、PDA培地とほぼ同様であった。 【0038】分離したエンドファイトを工業技術院生命工学技術研究所へ寄託した。菌の表示および寄託番号は次の通りである。 【0039】 FERM P−17672FERM P−17673FERM P−17674(3)スライドカルチャーによる菌糸の状態スライドガラス上に厚さが2〜3mmのPDA培地を載せ、その上で菌糸を増殖させて菌糸の形態と分生子の形成とを調査した。なおこの培養は25℃暗条件下において行なった。結果の1例を図3に示す。 【0040】調査の結果、菌糸は総て無色であって、幅が1〜2μm程度で総てに隔壁が観察された。分生子は、総てのエンドファイトで容易に形成することが可能であった。また分生子の菌糸の先端あるいは側方より直立した単生のフィアライドの先端に形成され、ほとんどが単生の分生子であった。 【0041】分生子の色は総て無色で、細胞も1細胞性であった。分生子の形状はほとんどが腎臓形の形状をなし、大きさは3〜8×1〜3μmであった。また形成されたフィアライドは、総て円筒形で、先端に行くに従って細くなり、隔壁によって菌糸から区切られていた。 【0042】(4)エンドファト導入方法接種は水に0.8%のAgarを添加したWA培地(Water Agar培地)に種子を滅菌して播種し、暗条件下で培養した。培養開始から3〜7日後に、植物体の生長点部分にメスで切込みを入れ、PDA培地で培養した菌糸を挿入した。 【0043】これらを25℃および30℃の暗条件下で8日間培養した後に、15℃、16時間照明下に移して4日間培養し、さらに25℃、16時間照明下に移して2日以上培養し、緑色に生長してきた個体を鉢上げ馴化した。 【0044】植物の葉および葉鞘部分の表皮を剥ぎ、光学顕微鏡下において組織内のエンドファイトの有無の確認を行なった。この確認は、スライドガラスに乳酸5ml、グリセリン10ml、水5ml、アニリンブルー水溶液0.02gの染色液を数滴滴下する。そして葉鞘部分を剥がし、裏面表皮をピンセットで葉脈方向に向って剥いだ。剥ぎ取った表皮をスライドガラスの上に置き、カバーガラスで覆い、ガスバーナの炎で沸騰させ、光学顕微鏡下において組織を観察した。この条件でエンドファイトが存在すれば菌糸が青色に呈色するために、これによってエンドファイトの検出が行なわれる。 【0045】検出の結果、イネ科植物であって、Agrostis、Festuca、Poa、Loliumのそれぞれの属の植物からエンドファイトが検出された。そして菌のライフサイクルから、植物体外へ出ることがない無性世代のみのNeotyphodium型エンドファイトであることが判明した。 【0046】接種したエンドファイトの内、生工研寄託番号FERM P−17672、FERM P−17673、FERM P−17674の菌株がイネ科植物であって、Agrostis、Festuca、Poa、Loliumのそれぞれの属の植物に感染・共生することが明らかであることが確認されている。 【0047】(5)カルスを用いた人工接種人工接種用の試料として、イネ科植物であって、Agrostis、Festuca、Poa、Loliumのそれぞれのカルスの誘導を行なった。MS基本培地に2.0mg/lの2,4−D(2,4−ジクロロフェノキシン酢酸)と0.2mg/lのBAP(6−ベンジルアミノプリン)を添加し、これらの植物のカルス誘導培地とした。 【0048】MS培地において発芽直後の種子をカルス誘導培地へ移植し、25℃の暗条件下において2カ月間培養することにより、再分化能を有するカルスを得た。各カルスは上記の誘導培地で誘導したものであって、得られたカルスを植物ホルモン無添加のMS基本培地へ移植した。 【0049】これらの植物のカルスに対して、生工研寄託番号FERM P−17672、FERM P−17673、FERM P−17674のそれぞれの菌を人工接種した。人工接種はメスの先に微量の菌糸を取り、カルスの中央に置床した。 【0050】カルスは25℃および30℃の暗条件下においてそれぞれ数週間培養した後に、16時間照明下に移すか、あるいは直ちに16時間証明下に移して培養し、再生したできた個体をフレッシュなMS培地に移植し、1カ月間培養した。これらを上記(1)項の方法を用いてエンドファイトの導入を確認した結果、導入が確認された。 【0051】(6)植物体内でカノクラビンを特異的に生合成する菌のスクリーニング方法生工研寄託番号FERM P−17672、FERM P−17673、FERM P−17674のそれぞれの菌を人工的に感染・共生させた植物およびそれ以外の菌が感染・共生させた植物の葉および葉鞘をフリーズドライ処理したものを、クロロホルム/メタノール/25%アンモニア水=75/25/0.5溶液で室温で一昼夜撹拌抽出し、その後瀘紙にて瀘過してエバポレートした。これをTLC(薄層クロマトグラフィ)分析を行なうことによってカノクラビンの存在を確認した。 【0052】シリカゲル60プレート、クロロホルム/メタノール/酢酸/水=20/10/1/1の展開溶液により展開した後に、Rf値が0.5〜0.6付近にUVおよびEherlich呈色(青紫色に呈色)で検出されるスポットが図4に示すTLC分析によって確認されている。このスポットはカノクラビンと全く同じRf値を示し、また図5に示すように、エンドファイト感染植物抽出物とカノクラビンを重打ちしたTLC分析でも全く同じRf値にスポットが確認された。 【0053】しかしながら図5中のレーン2およびレーン15に見られるように、寄託菌以外のエンドファイト感染植物においては、カノクラビンのスポットは確認されなかった。同図においてレーン3およびレーン16のように、レーン2およびレーン15の抽出物にカノクラビンを重打ちしたものには、カノクラビンが検出されたレーンと同様に、カノクラビンのスポットが確認された。 【0054】以上の結果から、Neotyphodium sp. FERM P−17672を含む寄託菌が、感染・共生した植物体内でカノクラビンを特異に生合成するとともに蓄積していることが明らかになった。またこのことから、カノクラビンの生合成および蓄積の有無をマーカーとして、植物に感染・共生している菌をスクリーニングすることが可能であることが証明された。 【0055】またNeotyphodium sp. FERM P−17672を含む寄託菌を感染・共生させた植物の後代種子から生育した植物であって、エンドファイトの伝播が確認されたものについても、カノクラビンの有無をTLC分析で確認した。その結果後代の植物体においても、もとの植物体と同様にカノクラビンの生合成が行なわれていることが示された。 【0056】(7)人工培地上でカノクラビンを特異に生合成する菌のスクリーニング方法。 【0057】エンドファイト感染植物体内でカノクラビンが生合成された植物体からエンドファイト、例えばNeotyphodium sp. FERM P−17672を分離した。分離はエンドファイト感染植物の葉および葉鞘組織を70%エタノール水溶液に10秒間浸漬し、次いで2.5%次亜塩素酸ナトリウム水溶液に10分間浸漬した後に、滅菌水で3回洗滌し、5mm角の大きさに切断し、エンドファイト分離培地上に置床し、25℃暗条件下で培養を行なった。 【0058】分離培地は、PDA(ポテト デキストロース アガー)にペニシリンおよびストレプトマイシンをそれぞれ100mg/lを添加し、直径が9cmのプラスチックシャーレに20mlずつ分注して使用した。 【0059】培養開始後3〜8週間で植物組織から菌糸が分離された。さらに増殖させるために液体培地により培養した。使用した培地は例えばPD(ポテト デキストロース)培地、M102培地、エルゴットアルカロイド生産培地としても知られているSM培地等である。上述の培地100mlにPDA培地で分離した菌糸塊5mm角を入れ、2週間から長いもので6カ月間培養した。 【0060】カノクラビンの生合成を確認するために、植物体と同様に培養物をフリーズドライ処理し、クロロホルム/メタノール/25%アンモニア水=75/25/0.5の溶液に入れ、室温で一昼夜撹拌抽出し、その後瀘紙にて瀘過してエバポレートし、TLC分析を行なった。 【0061】また上記の試験と同様にシリカゲル60プレート、クロロホルム/メタノール/酢酸/水=20/10/1/1の展開溶液により展開した後に、Rf値が0.5〜0.6付近にUVおよびEherlich呈色(青紫色に呈色)で検出されるスポットが上記と同様に、TLC分析によって確認され、カノクラビンを生合成していることが証明された。 【0062】(8)カノクラビンの同定フリーズドライ処理したエンドファイト感染植物体、例えば生工研寄託菌FERM P−17672、FERM P−17673、FERM P−17674感染・共生植物、および非感染個体の葉および葉鞘部分を80%メタノール水溶液を用いて室温で30分以上振とう抽出した。抽出液を瀘紙にて瀘過し、その瀘液を80%メタノール水溶液でサスペンドした陰イオン交換樹脂(AG2×8200〜400mesh)を充填し、25%アンモニア水で置換したVARIAN BOND ELUT CBAカラムに載せ、純水で洗滌した。そして5%ぎ酸溶液によって溶出し、得られた分画をTLC(薄層クロマトグラフィ)分析およびHPLC(高速液体クロマトグラフィ)分析に供した。 【0063】得られた分画をC18カラム(5μm particle size、100×8mm)、UV280nm 検出を用いたHPLCで分析した結果、エンドファイト感染植物から得られた分画のみに、図7に示すようにリテンションタイム12分付近に特異的に顕著なピークが確認されている。なおエンドファイトに感染していない植物の場合は、図6に示すようにこのようなピークが確認されていない。 【0064】またシリカゲル60プレート、クロロホルム/メタノール/酢酸/水=20/10/1/1の展開溶液により展開した後に、Rf値0.5〜0.6付近にUVおよびEherlich呈色(青紫色に呈色)で検出されるスポットがTLC分析によって確認された。TLCで確認されたスポットもエンドファイト感染植物体特異なものであって、非感染個体にはこのスポットは見られなかった。 【0065】このフラクションをHPTLCで分取を行なった。その結果、フリーズドライサンプルから平均して0.06〜0.08%の回収率で回収することができた。このフラクションはHPLCの蛍光検出による分析でも陽性を示し、インドール構造を持つことが示唆された。そこでNMR、MSおよびIR(赤外線分析法)を測定した。 【0066】FD−MS(電界脱離イオン化分子量測定法)の結果、M+ 256が観測され、EI−MSによるフラグメントイオンは分子ピークの256の他に、−H3O+ のm/z237、tricyclic stable ion に起因するm/z155、154等クラビンアルカロイドに特徴的な解裂パターンを示した。またEI−HR−MSから示唆された分子式から検索を行なったところ、カノクラビンが分子式、EIによるフラグメンテーションパターンともによく一致することが解った。さらにNMR測定結果を図2のように帰属し、単離したフラクションはカノクラビンと同定した。IRでは3400(−OH)、1605(C=C)、1420、1380cm−1に吸収を示した。 【0067】(9)エルゴバリンの同定ここでは、エンドファイトに感染した植物中の共生菌であるエンドファイトがエルゴバリンを生産するかどうかを確認するものである。まずフリーズドライ処理したエンドファイト感染・共生植物体の葉および葉鞘部分、または穂の部分を0.01N水酸化ナトリウム水溶液:クロロホルム=1:9の混合液を用い、室温で30分以上振とう抽出した。抽出液を瀘紙にて瀘過した。ここでクロロホルムでコンディショニングしたシリカゲルカラム(Water Sep−PakPlas Silica)に瀘液を載せ、クロロホルムで洗滌した。そしてアセトン:クロロホルム:酢酸=80:20:0.05の混合液で溶出した。その溶出液を濃縮乾燥固化させ、0.1%アスコルビン酸含有33%メタノール水溶液に再溶出し、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)分析に供した。 【0068】HPLC分析は、C18カラム(3μm particle size, 4.6X75mm)、Ex(励起波長)310nm、Em(蛍光波長)415nm蛍光検出を用いた。エルゴバリンの標品である酒石酸エルゴバリンをHPLC分析した結果、図8に示すように、リテンションタイム12分付近にエルゴバリンのピークが確認された。すなわち標品エルゴバリンの場合には、リテンションタイム12.35のピークを示すことになる。 【0069】エンドファイト感染植物体のエルゴバリン生合成の有無は、エンドファイト感染植物から上記の方法で得られた溶出液に、HPLC分析で標品と同様なリテンションタイム12分付近にピークが確認されるかどうかで判断した。その結果、寄託菌以外のエンドファイト感染植物では、図9に示すように、リテンションタイム12分付近にエルゴバリンが約1ppm(乾燥重量当り)オーダーで検出された。すなわち寄託菌以外のエンドファイト感染植物においては、標品エルゴバリンと同様なリテンションタイム付近、すなわち12.51にピークがあり、これがエルゴバリンであることを確認した。なおここで濃度は乾燥重量当り約1ppmであった。 【0070】これに対して生工研寄託番号FERM P−17672の寄託菌が感染したエンドファイト感染植物を用い、上記と同様の方法によってHPLC分析を行なったところ、図10に示すようにエルゴバリンが検出されなかった。すなわちFERM P−17672の寄託菌が感染した感染植物体においては、リテンションタイム12分付近に全くピークがなく、エルゴバリンが生産されないことが確認された。よって以上の結果から、FERM P−17672に感染した植物体は、家畜毒性物質であるエルゴバリンを生合成していないことが明白になった。FERM P−17673、FERM P−17674においても同様の結果が得られた。 【0071】(10)耐虫性による他の菌との比較検証例えばNeotyphodium sp. FERM P−17672を上述の方法で感染・共生させたPoa属植物および寄託菌以外の菌株を感染・共生させた植物を用いて、芝草の主要害虫であるスジキリヨトウに対する耐虫性検定を行なった。 【0072】耐虫性検定は上述のそれぞれの切葉片を静置した9cmシャーレに、ふ化直後のスジキリヨトウの幼虫を約200匹放ち、25℃の室内に静置し、24時間後、48時間後にそれぞれ摂食程度を調査した。48時間後には寄託菌以外の菌株を感染・共生させた植物体はほとんど食害されたのに対して、Neotyphodium sp. FERM P−17672を感染・共生させた植物体は、ほとんど葉が残って強い抵抗性を示していた。PoaおよびLoliumについての結果が図11および図12にそれぞれ示される。 【0073】また例えばNeotyphodium sp. FERM P−17672を上記の方法で感染・共生させたLolium属植物および寄託菌以外の菌株を感染・共生させた同じ植物を用いて、芝草の主要害虫であるスジキリヨトウに対する耐虫性検定を上述のPoa属の植物と同様に行なった。 【0074】検定開始から24時間後のスジキリヨトウの摂食程度を調査したところ、上記Poa属植物と全く同様に、寄託菌以外の菌株を感染・共生させた植物体はほとんど食害されたのに対して、Neotyphodium sp. FERM P−17672を感染・共生させた植物体は、ほとんど葉が残り、強い抵抗性を示した。 【0075】このような結果は、その他の寄託菌FERM P−17673、FERM P−17674を用いた場合も同様であった。 【0076】以上の結果から、生工研寄託番号FERM P−17672、FERM P−17673、FERM P−17674は感染・共生させた植物体に強度な耐虫性を付与する特性があることが表1に示すように確認された。 【0077】 【表1】
実施例2この実施例は、植物体に感染・共生する前のエンドファイトを上記実施例1の(7)項のスクリーニング方法によってスクリーニングし、カノクラビンが生合成され、しかも最終的な代謝物質がカノクラビンであるエンドファイトを選抜している。そしてこのようにしてスクリーニングされた共生菌を上記実施例1の(4)項の方法によって上記実施例1と同様の植物、すなわちイネ科のAgrostis、Festuca、Poa、Loliumのそれぞれの植物に感染させたものである。感染させた植物について、実施例1の(6)項の方法によってスクリーニングを行なったところ、カノクラビンを最終的な代謝物質とする共生菌が感染・共生されていることが確認された。またこのような植物について、実施例1の(10)項の方法によって耐虫性の検定を行なったところ、実施例1とほぼ同様の結果が得られている。 【0078】 【発明の効果】以上のように本発明は、糸状菌から成る共生菌であって、最終的な代謝物質がカノクラビンである共生菌、およびこのような共生菌が人工的に導入された植物、および植物に対する共生菌の導入方法に関するものである。 【0079】従ってこのような発明によれば、共生菌が人工的に感染・共生された植物がエルゴバリン等のエルゴットアルカロイドおよびロリトレムB等の毒性物質を生合成することがなく、このために牧草に応用した場合に家畜毒性を生ずることがなくなる。従ってライグラススラッガーやフェスクトキシコーシスの発生を未然に防止することが可能になる。しかも感染・共生されたエンドファイトによってとくに虫に対して強度な抵抗性を示すことになり、耐虫性に優れるとともに家畜毒性をもたない植物体が提供されることになる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000148357 【氏名又は名称】株式会社前川製作所 【識別番号】594067081 【氏名又は名称】社団法人植物情報物質研究センター
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| 【出願日】 |
平成12年4月5日(2000.4.5) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100078145 【弁理士】 【氏名又は名称】松村 修
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| 【公開番号】 |
特開2001−286277(P2001−286277A) |
| 【公開日】 |
平成13年10月16日(2001.10.16) |
| 【出願番号】 |
特願2000−103599(P2000−103599) |
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