トップ :: C 化学 冶金 :: C11 動物性または植物性油,脂肪,脂肪性物質またはろう;それに由来する脂肪酸;洗浄剤;ろうそく

【発明の名称】 持続性粉末香料
【発明者】 【氏名】和田 知也

【氏名】橋本 清二

【氏名】林 收一

【氏名】儀賀 利信

【氏名】植山 嘉隆

【要約】 【課題】適度な強さの香気香味が長時間持続する、持続性に優れた粉末香料を提供することである。

【解決手段】結晶性香気成分60〜90重量%と、融点が40℃以上の硬化油40〜10重量%とを溶融状態で混合し、冷却固化後、粉砕してなる持続性粉末香料である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】結晶性香気成分60〜90重量%と、融点が40℃以上の硬化油40〜10重量%とを溶融状態で混合し、冷却固化後、粉砕してなる持続性粉末香料。
【請求項2】前記結晶性香気成分が15℃以上の融点を有する請求項1記載の粉末香料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶性香気成分を主成分とし、香気香味の持続性を改善した持続性粉末香料に関する。
【従来の技術】
【0002】チューインガムは、通常、ガムベースに香料や甘味料等を添加して製造されている。このようなチューインガムは、噛んだ初期には強い香味を放出するが、しばらく噛んでいると香味が急速に低下し、その後は殆ど香味を感じなくなるのが通常である。
【0003】このため、従来より、香気香味の持続性に優れた粉末香料の開発が望まれており、種々の提案がなされている。例えば特開昭56−35967号公報、特開昭60−92209号公報、特開平6−269248号公報、特開平7−313092号公報等には、香料を油脂類またはワックス類に分散させるか、あるいはそれらでコーティングすることによって持続性を改善した香料組成物が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来提案された香料組成物は、香気香味の持続性が充分ではないか、持続性は充分であっても、香料が本来もつ香気香味が弱まり、香料本来の機能が充分に発揮されないという問題があった。従って、本発明の目的は、香気香味を適度な強さで長時間持続させることができる、持続性に優れた粉末香料を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、結晶性香料を硬化油と混合するに際して、それらを特定の割合で溶融状態で混合し、ついで冷却し粉砕する場合には、香気香味を適度な強さで長時間持続させることができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに到った。
【0006】すなわち、本発明の持続性粉末香料は、結晶性香気成分60〜90重量%と、融点が40℃以上の硬化油40〜10重量%とを溶融状態で混合し、冷却固化後、粉砕してなることを特徴とする。かかる本発明では、結晶性香料と硬化油との混合割合を上記範囲内に設定することが重要であって、この範囲を外れた場合には持続性に劣るか、あるいは持続性は具備しても香気香味の強さに劣ったものとなる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明における前記結晶性香気成分には、15℃以上の融点を有する香料を使用するのが好ましく、融点が15℃未満では香気成分の粉末化が困難になるおそれがある。15℃以上の融点を有する香料としては、例えばメントール、dl−メントール、バニリン、エチルバニリン、桂皮酸、ピペロナール、d−ボルネオール、マルトール、エチルマルトール、カンファー、アントラニル酸メチル、桂皮酸メチル、シンナミックアルコール、N−メチルアントラニル酸メチル、メチルβ−ナフチルケトン、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン(フィルメニヒ社製の商品名「フラネオール」)等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して使用される。香料を2種以上混合して本発明における結晶性香気成分とする場合、混合したときの融点が15℃以上であるのが好ましく、従って融点が15℃以下の香料の1種または2種以上を混合成分として使用してもよい。なお、出発原料として使用する香料は油溶性および水溶性のいずれであってもよい。
【0008】融点が40℃以上の前記硬化油としては、例えば硬化菜種油、硬化大豆油、硬化ゴマ油、硬化米油、硬化小麦胚芽油、硬化サフラワー油、硬化トウモロコシ油、硬化ひまわり油、硬化パーム油、硬化パーム核油、硬化ヤシ油、硬化綿実油、硬化落花生油、硬化椿油等の硬化植物油;硬化牛脂油、硬化鯨油、硬化魚油等の硬化動物油等の1種または2種以上が挙げられ、特に臭いの少ない硬化菜種油や硬化牛脂油等を使用するのが好ましい。
【0009】結晶性香気成分と硬化油とは溶融状態で混合される。すなわち、結晶性香気成分と硬化油とをそれらの融点よりも高い温度で加熱溶融し、攪拌して均一に混合する。このとき、加熱温度は硬化油の融点のみならず香気成分の融点よりも高いことが必要である。加熱温度が香気成分の融点よりも低い場合は、香気成分の表面に硬化油がコーティングされる結果となり、香気成分の揮散が抑制され香気香味が弱くなるおそれがある。また、加熱温度が硬化油の融点よりも低い場合は、結晶性香気成分と硬化油とを均一に混合することが困難になる。
【0010】すなわち、本発明の粉末香料は、香気成分と硬化油とが混在した状態で粉体を形成しているのがよい。これにより、粉体の表面に露出した香気成分から順に揮散されるため、持続性があり、しかも適度な強さの香気香味が発揮される。結晶性香気成分と硬化油との混合割合は、重量比で60:40〜90:10である。香気成分の混合割合がこの範囲を超える場合は香気香味の持続性に劣るようになる。一方、香気成分の混合割合が前記範囲を下回る場合は、相対的に硬化油の割合が多くなるため、香気成分の揮散が抑制され香気香味が弱いものとなる。
【0011】結晶性香気成分と硬化油は、混合後、冷却して固化される。冷却手段は特に制限がなく、室温下で放冷してもよく、あるいは冷所にて冷却してもよい。また、冷却温度は、両成分の融点以下であればよく、一般には室温下で冷却すればよいが、必要に応じて0℃以下に冷却してもよい。
【0012】固化した後、混合物を粉砕する。粉砕は、摩擦熱によって硬化油等が溶融しない条件にて行うのが好ましい。このため、低温下で粉砕処理を行うのが好ましく、例えば凍結粉砕法等が好適である。粉砕の程度は、特に制限されるものではなく、使用目的や用途に応じて適宜決定される。具体的には、例えば香気の持続時間を長くすることが求められる場合には、比較的粗い粉砕で粒径を大きくし、それほど長い持続時間を必要としない場合には、微粉砕して表面積を大きくし、香気成分が揮散しやすくする。一般には、粉砕物の粒度は約300〜5メッシュパス、好ましくは約200〜20メッシュパス、より好ましくは約120〜40メッシュパスであるのがよい。
【0013】このようにして得られる本発明の粉末香料は、結晶性香気成分を単独で使用する場合に比べて香気香味の持続性が著しく改善されると共に、結晶性香気成分と硬化油との混合割合が適切であるので、適度な強さの香気香味を長時間維持することができる。従って、香気香味の持続性が要望されるチューイングガム、キャンデー等の食品に使用するのに好適である。しかも、本発明では、香気の持続時間を結晶性香気成分と硬化油との混合割合、粉砕の程度等によって自在に調整可能である。
【0014】また、本発明の持続性粉末香料は、香気成分を硬化油と混合することにより、耐熱性や保存安定性が向上するという利点もある。例えば製造過程において加熱処理される食品(例えばクッキー等の焼菓子)に使用すると、加熱処理によって香料が揮散してしまうのを抑制することができる。また、調理等に加熱処理を必要とする食品(例えばレトルト食品)等にも好適に使用可能である。さらに、本発明の粉末香料は持続性に優れていることから、室内芳香剤等の香粧品にも使用可能である。
【0015】
【実施例】以下、実施例および比較例をあげて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0016】[I]粉末メントール実施例1融点42〜44℃のメントール結晶60gと、融点55〜60℃の硬化牛脂油40gとを容器に投入し、70℃まで加熱して完全に溶融させ、均一に攪拌混合した。得られた混合物を常温に冷却して固化させた後、オシレーター式製粒機((株)菊水製作所製)を用いて室温下で粉砕し、粒径が50メッシュパスのメントール・パウダー(メントール含量:60重量%)を得た。
【0017】実施例2〜4メントール結晶と硬化牛脂油との混合割合を変えた以外は実施例1と同様にして、メントール含量がそれぞれ70重量%、80重量%、90重量%のメントール・パウダーを得た。
【0018】比較例1メントール結晶50gと硬化牛脂油50gとを混合した以外は実施例1と同様にして、メントール含量が50重量%のメントール・パウダーを得た。
【0019】試験例1(メントール風味のチューイングガムの調製)下記表1に示す1〜7の原料を混合し、これに上記実施例1〜4および比較例1で得た香料をそれぞれ同表に示す割合で添加混合し、常法に従ってZσ型ミキサーを用いて約50℃で混和し、冷却後、ローラにより圧展成形し、1枚の重量が3gであるメントール風味のチューイングガムを調製した。
【0020】
【表1】

【0021】(評価)上記で得たチューイングガムについて、10人の専門パネラーにより官能評価を行った。対照として、硬化油と混合しないメントール結晶をそのまま添加して得られたチューイングガムを使用した。試験結果を表2に示す。なお、表に示す評価基準は以下のとおりである。
非常に良好・・・5良好・・・・・・4普通・・・・・・3やや不良・・・・2不良・・・・・・1【0022】
【表2】

【0023】表2から明らかなように、メントール含量50重量%の比較例1では、香気香味の溶出速さおよび持続性が普通で、香気香味の強さがやや不良という結果が得られた。これは、硬化油の含有量が多いため香気成分の揮散が抑制されているためと推測される。これに対して、実施例1〜4では、香気香味の溶出速さおよび強さを良好な状態に維持しながら、持続性が改善されていることがわかる。
【0024】[II] 粉末バニリン実施例5融点80〜83℃のバニリン結晶80gと、融点55〜60℃の硬化牛脂油20gとを容器に投入し、90℃まで加熱して完全に溶融させ、均一に攪拌混合した。得られた混合物を常温に冷却して固化させた後、実施例1で使用したのと同じ製粒機を用いて室温下で粉砕し、粒径が50メッシュパスのバニリン・パウダー(バニリン含量:80重量%)を得た。
【0025】実施例6硬化牛脂油に代えて、融点60〜65℃の硬化菜種油を使用した以外は実施例5と同様にして、バニリン含量が80重量%のバニリン・パウダーを得た。
【0026】比較例2バニリン結晶50gと硬化牛脂油50gとを混合した以外は実施例5と同様にして、バニリン含量が50重量%のバニリン・パウダーを得た。
【0027】比較例3バニリン結晶50gと硬化菜種油50gとを混合した以外は実施例6と同様にして、バニリン含量が50重量%のバニリン・パウダーを得た。
【0028】試験例2(バニリン風味のチューイングガムの調製)下記表3に示す1〜7の原料を混合し、これに上記実施例5,6および比較例2,3で得た香料をそれぞれ同表に示す割合で添加混合した以外は試験例1と同様にして、1枚の重量が3gであるバニリン風味のチューイングガムを調製した。
【0029】
【表3】

【0030】(評価)上記で得たチューイングガムについて、試験例1と同様にして10人の専門パネラーにより官能評価を行った。対照として、硬化油と混合しないバニリン結晶をそのまま添加して得られたチューイングガムを使用した。試験結果を表4に示す。
【0031】
【表4】

【0032】表4から、実施例で得られた香料は、比較例や対照の香料に比較して、香気香味の持続性が優れていることがわかる。
【0033】[III] 粉末フラネオール(前出)
実施例7水溶性香料である融点78〜83℃のフラネオール結晶80gと、融点55〜60℃の硬化牛脂油20gとを容器に投入し、90℃まで加熱して完全に溶融させ、均一に攪拌混合した。得られた混合物を常温に冷却して固化させた後、実施例1で使用したのと同じ製粒機を用いて室温下で粉砕し、粒径が50メッシュパスのフラネオール・パウダー(フラネオール含量:80重量%)を得た。
【0034】比較例4フラネオール結晶50gと硬化牛脂油50gとを混合した以外は実施例7と同様にして、フラネオール含量が50重量%のフラネオール・パウダーを得た。
【0035】試験例3(フラネオール風味のチューイングガムの調製)下記表5に示す1〜7の原料を混合し、これに上記実施例7および比較例4で得た香料をそれぞれ同表に示す割合で添加混合した以外は試験例1と同様にして、1枚の重量が3gであるフラネオール風味のチューイングガムを調製した。
【0036】
【表5】

【0037】(評価)上記で得たフラネオール風味のチューイングガムについて、試験例1と同様にして10人の専門パネラーにより官能評価を行った。対照として、硬化油と混合しないフラネオール結晶をそのまま添加した以外は同組成のチューイングガムを使用した。試験結果を表4に示す。
【0038】
【表6】

【0039】表6から、実施例7で得られた香料は、比較例4や対照の香料に比較して、香気香味の持続性が優れていることがわかる。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、結晶性香気成分60〜90重量%と、融点が40℃以上の硬化油40〜10重量%とを溶融状態で混合し、ついで冷却し粉砕することにより、適度な強さの香気香味が長時間持続するという効果がある。
【出願人】 【識別番号】591016839
【氏名又は名称】長岡香料株式会社
【出願日】 平成11年11月29日(1999.11.29)
【代理人】 【識別番号】100104318
【弁理士】
【氏名又は名称】深井 敏和
【公開番号】 特開2001−152178(P2001−152178A)
【公開日】 平成13年6月5日(2001.6.5)
【出願番号】 特願平11−338783